(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1〜第8のスイッチング素子、第1および第2のコンデンサ、第1〜第4のダイオードによってマルチレベル電圧変換部を構成し、該マルチレベル電圧変換部を三相交流の各相に各々設け、前記三相各相のマルチレベル電圧変換部の、第2の共通接続点どうしを中性点として共通接続し、前記第1の共通接続点をU相、V相、W相の各出力端としたことを特徴とする請求項1に記載のマルチレベル電力変換器。
前記制御手段のオン、オフ制御は、同一電圧レベルの出力時に前記コンデンサを充電させる制御モードと放電させる制御モードとを有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のマルチレベル電力変換器。
【背景技術】
【0002】
従来、マルチレベル電力変換器として、例えば非特許文献1に記載の5レベルインバータが知られている。
図7は非特許文献1に記載の5レベルインバータの主回路1相分の構成図を示している。
図7の回路において、5レベルインバータ1の直流側に設けたダイオード整流器2の直流出力電圧を5分圧するために4台の直流リンクコンデンサCdc1〜Cdc4が直列接続され、これらコンデンサCdc1〜Cdc4に蓄えられたエネルギーを用いて、インバータ1には5分圧に対応する5レベルの電位を有する交流出力が生成される。
【0003】
上記の5レベルインバータ1の動作を説明する。コンデンサCdc1〜Cdc4で分圧する電圧の中性点をM点とし、インバータ1の出力端をA点とし、直流電圧を均一に4分圧した電圧をEとすると、スイッチング素子S1〜S8を以下のオン・オフパターン制御の組み合わせ(スイッチングモードSM1〜SM5)によって制御することで、端子間AMに5レベルの電圧出力が生成される。
(SM1)S1,S2,S3とS4がオン、S5,S6,S7とS8がオフのとき、端子間AMには電圧+2Eが出力される。
【0004】
(SM2)S2,S3,S4とS5がオン、S1,S6,S7とS8がオフのとき、端子間AMには電圧+Eが出力される。
【0005】
(SM3)S3,S4,S5とS6がオン、S1,S2,S7とS8がオフのとき、端子間AMには電圧0が出力される。
【0006】
(SM4)S4,S5,S6とS7がオン、S1,S2,S3とS8がオフのとき、端子間AMには電圧−Eが出力される。
【0007】
(SM5)S5,S6,S7とS8がオン、S1,S2,S3とS4がオフのとき、端子間AMには電圧−2Eが出力される。
【0008】
また、従来の電力変換装置の一例として、特許文献1に記載のものが提案されていた。
図8は特許文献1に記載の電力変換装置の1相分の構成を示している。直流電源Eには、コンデンサC1,C2の直列回路と、半導体スイッチS
1,S
2の直列回路が並列に接続され、コンデンサC3には半導体スイッチS
5,S
6の直列回路と、S
7,S
8の直列回路と、双方向スイッチS
3D,S
4Dの直列回路とが並列に接続されている。
【0009】
前記スイッチS
1,S
2の共通接続点とS
5,S
6の共通接続点は共通に接続され、スイッチS
7,S
8の共通接続点と双方向スイッチS
3D,S
4Dの共通接続点は端子Uに共通に接続され、コンデンサC
1,C
2の共通接続点M(中点)は前記端子Uに共通に接続されている。
【0010】
直流電源Eの電圧をE
d、コンデンサC
1の電圧をV
C1、コンデンサC
2の電圧をV
C2、コンデンサC
3の電圧をV
C3とすると、中点Mから観測した出力電圧V
UMと各スイッチS
1,S
2,S
3D,S
4D,S
5〜S
8のオン、オフ状態との関係は、
図9のようになる。
【0011】
なお、
図9では各スイッチS
1,S
2,S
3D,S
4D,S
5〜S
8のオン、オフ状態に応じた動作モードを、それぞれモード1〜12としている。この
図9に基づいて、
図8における適切なスイッチを選択してオン、オフすると、出力電圧V
UMは、
図10に示すように9つの電圧レベル(V
C1+V
C3,V
C1,V
C1−V
C3,V
C3,0,−V
C3,−V
C2+V
C3,−V
C2,−V
C2−V
C3)を持ち、かつ、平均電圧が正弦波状の波形となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前記の
図7の構成では、5レベルインバータの直流側の電源電圧(ダイオード整流器2の出力電圧)を4分圧するために4つの直流リンクコンデンサC
dc1〜C
dc4が直列接続されており、これらのコンデンサに蓄えられたエネルギーを用いて5レベル電圧の交流出力が生成される。
【0015】
原理上、出力電圧波形に合わせた電圧レベルとなるように、5レベルインバータには有効電力が流入もしくは流出するため、4つのコンデンサC
dc1〜C
dc4に生じる直流電圧の各平均値が等しくならないという問題が発生する。交流出力の各レベルについての波高を全て等しくするためには、各コンデンサC
dc1〜C
dc4に生じる直流電圧の平均値が全て等しくなるよう制御する必要がある。
【0016】
そのため、
図7に示す非特許文献1の回路では、各コンデンサC
dc1〜C
dc4に生じる直流電圧の平均値を昇降圧チョッパ動作によって均一にするための電圧均一回路3をインバータ1の直流側に設けている。この電圧均一回路3は、半導体スイッチの他に、結合巻線をもつ大型の直流リアクトルL
Cや逆流阻止用ダイオードを必要とし、これら回路素子の増加が装置の大形化及びコスト高になるという問題があった。
【0017】
また、
図7に示す5レベルインバータ1には、半導体スイッチの他に、高耐圧大電流容量のクランプ用ダイオードを多く必要とし、それらが回路の大形化及びコスト高の要因になる。
【0018】
また
図8の回路におけるスイッチングモードを示す
図9において、ゼロ電圧を出力するモードはモード6とモード7の2つのモードが存在する。したがって、例えば電圧指令値が正弦波で与えられるとき、電圧指令値の正の半周期で用いるゼロ電圧と、負の半周期で用いるゼロ電圧を切り換える必要がある。つまり、ゼロ電圧を出力している間にスイッチングモードを切り換えるので、制御が複雑になるという問題が生じる。
【0019】
本発明は上記課題を解決するものであり、その目的は、電圧均一回路を用いることなく、半導体素子の必要個数を減らし、装置の小型化及びコスト低減ができるマルチレベル電力変換器を提供することにある。さらに、ゼロ電圧を出力するモードを唯一として制御の簡単化を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するための請求項1記載のマルチレベル電力変換器は、直流電源の電圧を複数の電圧レベルに変換した交流出力を生成するマルチレベル電力変換器であって、直流電源と、第1〜第4のスイッチング素子を直列接続したスイッチング素子直列回路と、前記スイッチング素子直列回路の第1のスイッチング素子側端と第4のスイッチング素子側端との間に順次直列接続された第1および第2のコンデンサと、前記第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子の共通接続点と、第3のスイッチング素子および第4のスイッチング素子の共通接続点との間に順次直列接続された第1および第2のダイオードと、前記直流電源の正、負極端間に順次直列接続された第3および第4のコンデンサと、前記直流電源の正極と、前記第1のコンデンサおよび第1のスイッチング素子の共通接続点との間に接続された第5のスイッチング素子と、前記直流電源の負極と、前記第2のコンデンサおよび第4のスイッチング素子の共通接続点との間に接続された第6のスイッチング素子と、第3のダイオードおよび第4のダイオードを直列接続したダイオード直列回路と、前記ダイオード直列回路の両端間に直列接続された第7および第8のスイッチング素子と、前記第1〜第8のスイッチング素子のオン、オフ制御によって複数の電圧レベルを出力させる制御手段とを備え、前記第1および第2のダイオードの共通接続点と、第1および第2のコンデンサの共通接続点と、第3および第4のダイオードの共通接続点とを接続し、前記第7および第8のスイッチング素子の共通接続点を第3および第4のコンデンサの共通接続点に接続し、前記第2のスイッチング素子および第3のスイッチング素子の第1の共通接続点と、第3のコンデンサおよび第4のコンデンサの第2の共通接続点とを複数の電圧レベルの交流出力端
とし、前記制御手段のオン、オフ制御は、ゼロレベルの電圧を出力させる唯一の制御モードを有していることを特徴としている。
【0021】
上記構成によれば、少ない部品素子数で5レベルの電圧を出力するマルチレベル電力変換器を実現することができる。
また、ゼロ電圧を出力するモードは1つでよいため、制御を簡単化することができる。
【0022】
また、請求項2に記載のマルチレベル電力変換器は、請求項1において、前記第1〜第8のスイッチング素子、第1および第2のコンデンサ、第1〜第4のダイオードによってマルチレベル電圧変換部を構成し、該マルチレベル電圧変換部を三相交流の各相に各々設け、前記三相各相のマルチレベル電圧変換部の、第2の共通接続点どうしを中性点として共通接続し、前記第1の共通接続点をU相、V相、W相の各出力端としたことを特徴としている。
【0023】
上記構成によれば、少ない部品素子数で5レベルの電圧を出力する三相のマルチレベル電力変換器を実現することができる。また、三相に限らず任意の相数や、Δ結線やY結線などの任意の結線方法が可能である。
【0024】
また、請求項3に記載のマルチレベル電力変換器は、請求項1又は2において、前記制御手段のオン、オフ制御は、同一電圧レベルの出力時に前記コンデンサを充電させる制御モードと放電させる制御モードとを有していることを特徴としている。
【0025】
上記構成によれば、制御モードの選択によって、第1および第2のコンデンサを各々任意の電圧に調整することができる。
【発明の効果】
【0028】
(1)請求項1
〜3に記載の発明によれば、従来のような電圧均一回路を用いることなく第1および第2のコンデンサの電圧を制御できるため、交流出力の各電圧レベルの波高値を等しくすることができ、且つ少ない素子数でマルチレベル電力変換器を実現することができる。これによって、装置の小型化及びコスト低減を実現することができる。
また、ゼロ電圧を出力するモードは唯一の制御モードのみとなるので、制御手段が行う制御を簡単化することができる。
(2)請求項2に記載の発明によれば、少ない素子数で三相のマルチレベル電力変換器を実現することができる。
(3)請求項3に記載の発明によれば、制御モードの選択によって第1および第2のコンデンサを各々任意の電圧に調整することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施形態例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0031】
図1に本発明の実施例1の回路構成を示す。
図1において、第1〜第4のスイッチング素子S1〜S4を順次直列接続してスイッチング素子直列回路を構成している。このスイッチング素子直列回路の第1のスイッチング素子S1側端と第4のスイッチング素子S4側端との間には、第1および第2のコンデンサC1,C2が順次直列に接続されている。
【0032】
前記スイッチング素子S1,S2の共通接続点とスイッチング素子S3,S4の共通接続点には第1および第2のダイオードD1,D2が順次直列に接続されている。
【0033】
V
DCは直流電源であり、直流電源V
DCの正極と、前記スイッチング素子S1およびコンデンサC1の共通接続点との間には、第5のスイッチング素子を構成するスイッチング素子S5,S6が順次直列に接続されている。直流電源V
DCの負極と、前記スイッチング素子S4およびコンデンサC2の共通接続点との間には、第6のスイッチング素子を構成するスイッチング素子S8,S7が順次直列に接続されている。
【0034】
直流電源V
DCの正、負極端間には第3および第4のコンデンサC3,C4が順次直列に接続されている。
【0035】
第3および第4のダイオードD3,D4を順次直列接続してダイオード直列回路を構成している。このダイオード直列回路の両端間には、第7のスイッチング素子S11および第8のスイッチング素子S12が順次直列に接続されている。
【0036】
前記ダイオードD3およびスイッチング素子S11の共通接続点は、スイッチング素子S13を介して前記スイッチング素子S6およびコンデンサC1の共通接続点に接続され、前記ダイオードD4およびスイッチング素子S12の共通接続点は、スイッチング素子S14を介して前記スイッチング素子S7およびコンデンサC2の共通接続点に接続されている。
【0037】
ダイオードD3およびD4の共通接続点はコンデンサC1およびC2の共通接続点NP´(浮動中点)に接続され、スイッチング素子S11およびS12の共通接続点は、コンデンサC3およびC4の共通接続点NP(中性点)に接続されている。
【0038】
前記スイッチング素子S2およびS3の共通接続点(第1の共通接続点)を出力端子A、前記中性点NP(第2の共通接続点)を出力端子Bとしている。
【0039】
尚、前記第5のスイッチング素子(S5,S6)、第6のスイッチング素子(S7,S8)は高耐圧のスイッチング素子を用いる場合は、各々1個のスイッチング素子で構成してもよい。
【0040】
前記スイッチング素子S1〜S8およびS11〜S14は、例えば双方向スイッチ、IGBT等で構成されている。
【0041】
前記スイッチング素子S1〜S8およびS11〜S14は、図示省略の制御部(制御手段)によって、5レベルの電圧を出力するためのスイッチングパターンに従ってオン、オフ制御され、その結果出力端子A,B間に5レベルの電圧が出力されるものである。
【0042】
尚、前記直流電源V
DCの電源電圧は固定でも可変でもよい。
【0043】
上記構成において、直流電源V
DCの電圧を例えば4Eとすると、コンデンサC3,C4には2Eの電圧が各々充電されるものとする。
【0044】
スイッチング素子S1〜S8およびS11〜S14のオン、オフは、例えば表1に示すモード1〜モード7を有するスイッチングパターンに従って制御される。
【0045】
【表1】
【0046】
表1はスイッチング素子S1〜S8およびS11〜S14のオン・オフのモード1〜7(表1中ではMode1〜7と表記している)により出力端子A,B間に出力される電圧V
ABとコンデンサC1,C2の充放電の有無を示している。
【0047】
直流電源V
DCの電圧が4E、コンデンサC3,C4の電圧が2Eのとき、出力端子A,B間の電圧は2E,E,0,−E,−2Eの5レベルの電圧を出力可能である。
【0048】
ここで、表1のスイッチングパターンの各モード1〜モード7と出力端子A,B間の電流Iの経路を以下に説明する。尚表1は電流I>0のときを示しており、また、以下の説明では、コンデンサC3における直流電源V
DCの正極端側の端部をP、コンデンサC4における直流電源V
DCの負極端側の端部をNと表現する。
【0049】
<モード1>
スイッチング素子S3,S4,S7,S8,S11,S13が各々オフ、スイッチング素子S1,S2,S5,S6,S12,S14が各々オンとなり、電流Iは、出力端子B→NP→C3→P→S5→S6→S1→S2→出力端子Aの経路で流れる。出力端子A,B間の電圧は2Eとなる。
【0050】
<モード2>
スイッチング素子S1,S4,S7,S8,S11,S13が各々オフ、スイッチング素子S2,S3,S5,S6,S12、S14が各々オンとなり、電流Iは、出力端子B→NP→C3→P→S5→S6→C1→D1→S2→出力端子Aの経路で流れる。出力端子A,B間の電圧はEとなる。このモード2においてコンデンサC1は充電される。
【0051】
<モード3>
スイッチング素子S3〜S8,S13,S14が各々オフ、スイッチング素子S1,S2,S11,S12が各々オンとなり、電流Iは、出力端子B→NP→S12→D4→C1→S1→S2→出力端子Aの経路で流れる。出力端子A,B間の電圧はEとなる。このモード3においてコンデンサC1は放電される。
【0052】
<モード4>
スイッチング素子S1,S4〜S8,S13,S14が各々オフ、スイッチング素子S2,S3,S11,S12が各々オンとなり、電流Iは、出力端子B→NP
→S12→D4→D1→S2→出力端子Aの経路で流れる。出力端子A,B間の電圧は0となる。
【0053】
<モード5>
スイッチング素子S1,S2,S5〜S8,S13,S14が各々オフ、スイッチング素子S3,S4,S11,S12が各々オンとなり、電流Iは、出力端子B→NP→S12→D4→C2→S4→S3→出力端子Aの経路で流れる。出力端子A,B間の電圧は−Eとなる。このモード5においてコンデンサC2は充電される。
【0054】
<モード6>
スイッチング素子S1,S4,S5,S6,S12,S14が各々オフ、スイッチング素子S2,S3,S7,S8,S11,S13が各々オンとなり、電流Iは、出力端子B→NP→C4→N→S8→S7→C2→D1→S2→出力端子Aの経路で流れる。出力端子A,B間の電圧は−Eとなる。このモード6においてコンデンサC2は放電される。
【0055】
<モード7>
スイッチング素子S1,S2,S5,S6,S12,S14が各々オフ、スイッチング素子S3,S4,S7,S8,S11、S13が各々オンとなり、電流Iは、出力端子B→NP→C4→N→S8→S7→S4→S3→出力端子Aの経路で流れる。出力端子A,B間の電圧は−2Eとなる。
【0056】
上記モード1〜7のスイッチングパターンによるオン、オフ制御によって、コンデンサC3とC4の電圧が2Eのとき、出力端子A,B間の電圧は2E,E,0,−E,−2Eの5レベルの電圧を出力することが可能である。
【0057】
上記モード1〜7と出力端子A,B間の電圧V
ABの関係は
図2のとおりである。
【0058】
また、A,B間の電圧がEのときにコンデンサC1を充電するモード(モード2)と放電するモード(モード3)を選択できるため、コンデンサC1の電圧を任意に調整することが可能である。
【0059】
同様に、A,B間の電圧が−EのときにコンデンサC2を充電するモード(モード5)と
放電するモード(モード6)を選択できるため、コンデンサC2の電圧を任意に調整することが可能である。
【0060】
電流Iの極性によりコンデンサC1とC2の充放電の極性が変化するが、表1は電流I>0のときを示している。
【0061】
また、A,B間の電圧V
ABをゼロとするモードは表1のモード4だけであるので、制御を簡単化することが可能である。例えば電圧ゼロを出力するモードが多数存在する場合には、ゼロを出力するスイッチングパターンを複数のモードから選択しなければならないので制御が複雑になるという問題が生じる。
【0062】
また、
図1の回路を低電圧用途に適用する場合、耐圧の低い(例えば直流電源V
DCの電圧の1/2耐圧)、2個のスイッチング素子S5およびS6(第5のスイッチング素子)と2個のスイッチング素子S7およびS8(第6のスイッチング素子)を使用することができるので、コスト低減を図ることができる。
【0063】
以上のように実施例1によれば、直流電源1個、スイッチング素子12個、コンデンサ4個、ダイオード4個のみで、5レベル電力変換器を実現することができる。
【実施例2】
【0064】
図3に実施例2の回路構成を示す。本実施例2は実施例1(
図1)の回路からスイッチング素子S13,S14を除去したものであり、その他の部分は
図1と同一に構成されている。
【0065】
前記スイッチング素子S1〜S8,S11,S12は、図示省略の制御部(制御手段)によって、5レベルの電圧を出力するためのスイッチングパターンに従ってオン、オフ制御され、その結果出力端子A,B間に5レベルの電圧が出力されるものである。
【0066】
スイッチング素子S1〜S8,S11,S12のオン、オフは、例えば表2に示すモード1〜モード7を有するスイッチングパターンに従って制御される。
【0067】
【表2】
【0068】
表2はスイッチング素子S1〜S8,S11,S12のオン・オフのモード1〜7(表2中ではMode1〜7と表記している)により出力端子A,B間に出力される電圧V
ABとコンデンサC1,C2の充放電の有無を示している。
【0069】
直流電源V
DCの電圧が4E、コンデンサC3,C4の電圧が2Eのとき、出力端子A,B間の電圧は2E,E,0,−E,−2Eの5レベルの電圧を出力可能である。
【0070】
ここで、表2のスイッチングパターンの各モード1〜モード7と出力端子A,B間の電流Iの経路を以下に説明する。尚表2は電流I>0のときを示しており、また、以下の説明では、コンデンサC3における直流電源V
DCの正極端側の端部をP、コンデンサC4における直流電源V
DCの負極端側の端部をNと表現する。
【0071】
<モード1>
スイッチング素子S3,S4,S7,S8,S11,S12が各々オフ、スイッチング素子S1,S2,S5,S6が各々オンとなり、電流Iは、出力端子B→NP→C3→P→S5→S6→S1→S2→出力端子Aの経路で流れる。出力端子A,B間の電圧は2Eとなる。
【0072】
<モード2>
スイッチング素子S1,S4,S7,S8,S11,S12が各々オフ、スイッチング素子S2,S3,S5,S6が各々オンとなり、電流Iは、出力端子B→NP→C3→P→S5→S6→C1→D1→S2→出力端子Aの経路で流れる。出力端子A,B間の電圧はEとなる。このモード2においてコンデンサC1は充電される。
【0073】
<モード3>
スイッチング素子S3〜S8が各々オフ、スイッチング素子S1,S2,S11,S12が各々オンとなり、電流Iは、出力端子B→NP→S12→D4→C1→S1→S2→出力端子Aの経路で流れる。出力端子A,B間の電圧はEとなる。このモード3においてコンデンサC1は放電される。
【0074】
<モード4>
スイッチング素子S1,S4〜S8が各々オフ、スイッチング素子S2,S3,S11,S12が各々オンとなり、電流Iは、出力端子B→NP→S12→D4→D1→S2→出力端子Aの経路で流れる。出力端子A,B間の電圧は0となる。
【0075】
<モード5>
スイッチング素子S1,S2,S5〜S8が各々オフ、スイッチング素子S3,S4,S11,S12が各々オンとなり、電流Iは、出力端子B→NP→S12→D4→C2→S4→S3→出力端子Aの経路で流れる。出力端子A,B間の電圧は−Eとなる。このモード5においてコンデンサC2は充電される。
【0076】
<モード6>
スイッチング素子S1,S4,S5,S6,S11,S12が各々オフ、スイッチング素子S2,S3,S7,S8が各々オンとなり、電流Iは、出力端子B→NP→C4→N→S8→S7→C2→D1→S2→出力端子Aの経路で流れる。出力端子A,B間の電圧は−Eとなる。このモード6においてコンデンサC2は放電される。
【0077】
<モード7>
スイッチング素子S1,S2,S5,S6,S11,S12が各々オフ、スイッチング素子S3,S4,S7,S8が各々オンとなり、電流Iは、出力端子B→NP→C4→N→S8→S7→S4→S3→出力端子Aの経路で流れる。出力端子A,B間の電圧は−2Eとなる。
【0078】
上記モード1〜7のスイッチングパターンによるオン、オフ制御によって、コンデンサC3とC4の電圧が2Eのとき、出力端子A,B間の電圧は2E,E,0,−E,−2Eの5レベルの電圧を出力することが可能である。
【0079】
上記モード1〜7と出力端子A,B間の電圧V
ABの関係は
図2のとおりである。
【0080】
また、A,B間の電圧がEのときにコンデンサC1を充電するモード(モード2)と放電するモード(モード3)を選択できるため、コンデンサC1の電圧を任意に調整することが可能である。
【0081】
同様に、A,B間の電圧が−EのときにコンデンサC2を充電するモード(モード5)と
放電するモード(モード6)を選択できるため、コンデンサC2の電圧を任意に調整することが可能である。
【0082】
電流Iの極性によりコンデンサC1とC2の充放電の極性が変化するが、表2は電流I>0のときを示している。
【0083】
また、A,B間の電圧V
ABをゼロとするモードは表2のモード4だけであるので、制御を簡単化することが可能である。例えば電圧ゼロを出力するモードが多数存在する場合には、ゼロを出力するスイッチングパターンを複数のモードから選択しなければならないので制御が複雑になるという問題が生じる。
【0084】
また、
図3の回路を低電圧用途に適用する場合、耐圧の低い(例えば直流電源V
DCの電圧の1/2耐圧)、2個のスイッチング素子S5およびS6(第5のスイッチング素子)と2個のスイッチング素子S7およびS8(第6のスイッチング素子)を使用することができるので、コスト低減を図ることができる。
【0085】
以上のように実施例2によれば、直流電源1個、スイッチング素子10個、コンデンサ4個、ダイオード4個のみで、5レベル電力変換器を実現することができる。
【実施例3】
【0086】
図4に実施例3の回路構成を示す。本実施例3は、実施例1(
図1)のスイッチング素子S1〜S8,S11〜S14、ダイオードD1〜D4およびコンデンサC1,C2によって5レベル電圧変換部400を構成し、該5レベル電圧変換部400を三相分(400U,400V,400W)設けて直流電源V
DCに対して2分圧したコンデンサの中性点を基準にY結線に接続したものである。
【0087】
図4において、
図1と同一部分は同一符号をもって示している。
【0088】
三相各相の5レベル電圧変換部400U,400V,400Wの、出力端子Bどうしを中性点NPとして共通接続し、出力端子Aを三相各相の出力端U,V,Wとしている。
【0089】
図4の構成では、三相各々に個別の直流電源は不要であり、直流電源V
DCは1個でよい。
【0090】
図4の5レベル電圧変換部400U,400V,400Wの各動作は
図1の回路と同一である。
【0091】
図4の回路では、2分圧したコンデンサの中性点NPを基準に、三相U,V,Wに任意の5レベルの電圧(2E,E,0−E,−2E)を出力することができる。
【0092】
以上のように実施例3によれば、直流電源1個、スイッチング素子36個、コンデンサ8個、ダイオード12個によって、三相の5レベル電力変換器を実現することができる。
【実施例4】
【0093】
図5に実施例4の回路構成を示す。本実施例4は、実施例2(
図3)のスイッチング素子S1〜S8,S11,S12、ダイオードD1〜D4およびコンデンサC1,C2によって5レベル電圧変換部500を構成し、該5レベル電圧変換部500を三相分(500U,500V,500W)設けて直流電源V
DCに対して2分圧したコンデンサの中性点を基準にY結線に接続したものである。
【0094】
図5において、
図3と同一部分は同一符号をもって示している。
【0095】
三相各相の5レベル電圧変換部500U,500V,500Wの、出力端子Bどうしを中性点NPとして共通接続し、出力端子Aを三相各相の出力端U,V,Wとしている。
【0096】
図5の構成では、三相各々に個別の直流電源は不要であり、直流電源V
DCは1個でよい。
【0097】
図5の5レベル電圧変換部500U,500V,500Wの各動作は
図3の回路と同一である。
【0098】
図5の回路では、2分圧したコンデンサの中性点NPを基準に、三相U,V,Wに任意の5レベルの電圧(2E,E,0−E,−2E)を出力することができる。
【0099】
以上のように実施例4によれば、直流電源1個、スイッチング素子30個、コンデンサ8個、ダイオード12個によって、三相の5レベル電力変換器を実現することができる。
【0100】
尚、前記第5のスイッチング素子を構成するスイッチング素子S5およびS6を、該素子S5,S6よりも耐圧の大きい1個の双方向スイッチで構成し、第6のスイッチング素子を構成するスイッチング素子S7およびS8を、該素子S7,S8よりも耐圧の大きい1個の双方向スイッチで構成してもよい。
【0101】
このように構成した場合、高圧出力時に少ない素子数の5レベル電力変換器を実現することができる。
【0102】
ここで、本発明を三相回路に適用した実施例4(
図5)における各スイッチング素子S1〜S8、S11,S12を制御する制御部(制御手段)の一例を
図6とともに説明する。
図6は制御部の一例である5レベル電圧切換用スイッチングパターン生成回路300の制御ブロック図を示している。
【0103】
図6において、5レベル電圧切換用スイッチングパターン生成回路300には、三相各相の電圧指令値V
U*,V
V*,V
W*と、5レベル電圧変換部500U,500V,500Wの各コンデンサC1の検出電圧値VC
U1,VC
V1,VC
W1および各コンデンサC2の検出電圧値VC
U2,VC
V2,VC
W2が入力される。
【0104】
前記検出電圧値VC
U1,VC
V1,VC
W1,VC
U2,VC
V2,VC
W2はV
DC/2との偏差がとられ、それら偏差と電圧指令値V
U*,V
V*,V
W*とによって、5レベルの電圧を出力するスイッチングパターンを例えば表2から選択し、各スイッチング素子S1〜S8、S11,S12のゲート指令を出力する。
【0105】
また、実施例3(
図4)における各スイッチング素子S1〜S8、S11〜S14を制御する制御部(制御手段)も
図6と同様に構成され、
図6のスイッチングパターン生成回路300において、スイッチング素子S13,S14のゲート指令がさらに出力されるものである。