(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、この発明の実施の態様を説明する。
図1には
参考例の乗用型芝刈り機の全体側面図を示し、
図2には
図1の乗用型芝刈り機の全体平面図を示し、
図3には
図1の乗用型芝刈り機の全体正面図を示す。また、
図4には乗用型芝刈り機のモーアの伝動機構を説明するための全体平面図を示す。
【0019】
この乗用型芝刈り機は車体フレーム1の前後に前輪2,2と後輪3,3を備え、更に車体前部のボンネット4内にエンジンEを搭載支持している。
エンジンEの回転動力は、静油圧式無段変速装置(以下、HSTと言う)7等からなる変速装置を介して適宜減速され、その減速された回転動力は車体左右のチェンケース8,8内に設けたチェン・スプロケット等の伝動部材により後輪3,3に伝達されて車体を走行させる。
【0020】
車体の前後進はフロア10の右側前部に設けた前後進操作ペダル11(
図2)によって行われ、座席12前部のステアリングハンドル13を回動操作することによって前輪2,2が操舵される。
【0021】
前輪2,2と後輪3,3の間の車体フレーム1下部には、草や芝を刈り取るモーア15がリンク機構16により昇降自在に取り付けられている。このリンク機構16は前後2本のリンク片16a,16bを左右一対にして設けたもので平行リンクを構成し、昇降油圧シリンダ14の昇降操作によって、モーア15を地面に対して略平行な状態で昇降させることができる。なお、この昇降操作は昇降操作レバー17で行うが、スイッチ操作でも良い。昇降操作レバー17の基部に設けた昇降操作レバーセンサ17aから入力される信号に基づいて制御装置100からは昇降油圧シリンダ14の昇降油圧バルブ(図示せず)に信号が出力され、昇降油圧シリンダ14が作動する。
【0022】
次にモーア15の詳細構造について説明する。
モーア15のケーシングを構成するモーアデッキ全体は平面から見ると円形のハウジング18a,18bを左右に並べて一体化したような形をしており、これらのハウジング18a,18bにより回転軸19L,19Rを回転自在に支持すると共に、ハウジング18a,18bの上面と外周縁とにより、回転軸19L,19Rに固着されたブレード(刈刃)20L,20Rの周囲を覆うように構成している。
【0023】
個々のハウジング18a,18b上面外周には、回転するブレード20L,20Rによって刈り取られた刈草を排出すべく回転方向に沿って次第に隆起する草排出通路23,23が形成され、これらの通路23,23は左右方向の中央部で合流して後方が開放された1つの草排出通路24を形成する。
【0024】
なお、この実施例では、右側のブレード20Rは平面から見て反時計方向に回動し、左側のブレード20Lは時計方向に回転し、両ブレード20R,20Lは位相差が約90度ずれた状態で回転するようになっている。2枚のブレード20R,20Lに対する動力の伝達は次のように行なわれる。
【0025】
エンジンE前部の第1出力軸25にプーリ26を固着して設け、このプーリ26と車体前下部に設けられたプーリ27との間にベルト28を掛け回し、プーリ27と一体で回転する第2出力軸29(
図4)とモーア15側の入力軸(PTO軸とも言う)30との間に自在継手軸32を介装連結し、入力軸30にプーリ33を設け、一側(図例では左側)の回転軸19Lを伝動支持するベベルギヤ機構を内装するギヤボックス34にベルト35を介して動力を伝達すべく構成する。他側(図例では右側)の回転軸19Rを伝動支持するベベルギヤ機構を内装するギヤボックス36に向けシャフトにより伝動する構成としている。なお、両ブレード20L,20Rを互いに逆向きに回転駆動するように構成している。
【0026】
2枚のブレード20L,20Rで刈り取られた刈草は草排出通路24を通って後方に排出される。この草排出通路24には断面が角筒状のシュータ(搬送経路)37が連設され、シュータ37後端はコレクタ(収容容器)40の前面開口部に連通する。このシュータ37は予め車体の腹下部において車体フレーム1にボルト等によって締付固着されており、その横断面は左右のチェンケース8,8が形成する間隔と略等しい断面積を有し、後下部は三角状に切り欠かれている。
【0027】
図1に示す乗用型芝刈り機は、いわゆるハイダンプ仕様のコレクタ40を取り付けている。ハイダンプ仕様のコレクタ40はトラック等への荷台に刈った草を落とし込むために放出位置を高くしたものである。
【0028】
前後方向に沿う車体フレーム1,1の後端部には中間部を縦長台形状に切欠いて形成した2枚の支持板44,44が固着され、この支持板44,44にコレクタ40を回動自在に支持するマスト状の支持フレーム46,46が固着されている。
【0029】
上記支持フレーム46,46の上部には、チャネル部材48,49を背中合わせで一体化した左右一対の連結体50,50のうち、前側チャネル部材48,48を後方側から重ねて2箇所において各々横ピン51,51で着脱自在に連結している。一方後側チャネル部材49,49に設けた2つの回動支点58,58,59,59には上下2本の昇降リンク60,60,62、62が左右対に枢着されている。
【0030】
上記2本のリンク60,62は後部が下向に屈曲していてそれらの後端部には側面から見てく字型の縦リンク63,63が取り付けられている。リンク60,62の前側の上部回動支点58,59間の距離に比べて下部回動支点64,65間の距離は短く、また、上リンク60の支点58,64間の距離に比べて下リンク62の支点59,65間の距離の方が短い構成となっている。
【0031】
このため、作業時にはコレクタ40の後部が前部よりも高く傾斜し、昇降リンク60,62を上昇させたときにはコレクタ40の前部側が後部側よりも高く傾斜するように形成される。
【0032】
前記縦リンク63,63の中間部に設けた支点68(
図5)によりコレクタ40を回動枢支する。マスト状支持フレーム46,46下部と下リンク62,62との間には昇降用の油圧シリンダ(リフトシリンダとも言う)69を取り付け、油圧昇降レバー101を操作して作動油を昇降用油圧シリンダ69内に導けばコレクタ40が上昇し、反対に油圧昇降レバー101を下げ側に操作すると昇降用油圧シリンダ69内の作動油がタンク側に排出されてコレクタ40が下降するように構成している。
【0033】
図5には、コレクタ40のリフト時の作用説明図を示し、
図6には、コレクタ40のダンプ時の作用説明図を示す。なおリフトとは、コレクタ40が作業位置から排出位置まで上昇することであり、
図5には、コレクタを上昇させるときのコレクタの側面図を示している。ダンプとは、コレクタ40が傾いて、内部の刈草をコレクタ40の外に排出することであり、
図6には、
図5の上昇状態からコレクタ40を傾けて、収容した芝草を排出するときのコレクタ40の側面図を示している。
【0034】
コレクタ40の外側にはコレクタ40と一体に形成された枠体70があり、側面から見るとT字を90度寝かしたような形状をしている。この長辺70a部分にコレクタ40の回動支点68を設け、縦リンク63,63の上部と枠体70の短辺70bとの間にダンプ用油圧シリンダ(ダンプシリンダとも言う)72を介装連結している。ダンプレバー72L(
図2)を操作して、このダンプ用油圧シリンダ72を伸ばすと支点68を中心としてコレクタ40が時計方向に回動する。
【0035】
なお、このコレクタ40は上面と背面が大きく開口しており、収容している刈草をこの開口部から放出するものである。常態では上面も背面も樹脂製のカバー部材76で覆われており、草がこれら上部開口77と背面開口78から零れ落ちることはない。前記樹脂カバー76は上面水平部76aと後面垂直部76bが一体でも良いが、途中で前後に2分割しても良い。
【0036】
また、カバー部材76は側面から見て逆L字型に折曲したカバーフレーム80に着脱自在に装着されており、このカバーフレーム80の前部はコレクタ40の骨組みをなす枠組部材81の前側上部にピン82にて枢支されている。また、縦リンク63,63の上端と前記カバーフレーム80との間には上方に向かって中間部が湾曲する湾曲リンク83が枢着されており、ダンプ用油圧シリンダ72の伸長動作に連動させてこの湾曲リンク83がコレクタ40に対して起立し、カバー部材76はピン82を中心として上方に回動してコレクタ40の上部開口77と背面開口78を開放するようにしている(
図6)。
【0037】
このように構成することによってコレクタ40内に収容されている刈草は地上に放出されるものである。ダンプ用油圧シリンダ72の外側にはこの油圧シリンダ72やリンク片の一部を覆う矩形状のカバー85が設けられ、
図5に示すようにダンプ用油圧シリンダ72を短縮させているときにはこのカバー85が前記カバー部材76のコーナー部に納まり、ダンプ用油圧シリンダ72を伸長させると
図6に示すようにコーナー部から相対的に移動してカバー部材76が開くようにしている。ダンプ用油圧シリンダ72を短縮させてカバー部材76が閉じて両カバーが1箇所にまとまった状態にあるときには湾曲リンク83はカバーによって覆われており、外側方からは見えない状態になっている。このため、従来のようにコレクタの開口部を開閉させるためのリンク類が表の部分に現れて見栄えを悪くするといった不具合を招くことがない。
【0038】
図7には、コレクタ40の昇降用油圧シリンダ69やダンプ用油圧シリンダ72の油圧配管概要図を示す。
コレクタ40の昇降用油圧シリンダ69やダンプ用油圧シリンダ72に対する油圧配管構成についてであるが、支持フレーム46の前側で走行車体の後部適所に配管支持ブラケット86を備え、該ブラケット86に乗用型芝刈り機の本体側油圧バルブ(これは二つあり、それぞれダンプ用油圧シリンダ72の作動用のダンプバルブ(図示せず)と昇降用油圧シリンダ69の作動用のリフトバルブ(図示せず)になる)を経由した一対2組の第1配管87,87及び第2配管88,88を支持している。配管支持ブラケット86の上側には、配管ごとにカプラ87a,87a,88a,88aを介在して各々延長されている。
【0039】
そしてこのうち、第1配管87,87は、T字継管87b,87bを介して分岐し、前記昇降用油圧シリンダ69,69それぞれに配管接続される。一方第2配管88,88は、左右一方のダンプ用油圧シリンダ72に接続し、該接続部にはT字継管88b,88bを用いて余りの端部を接続用配管89,89によって他方のダンプ用油圧シリンダ72に接続する構成である。配管87,87の前記T字継管以後は支持フレーム46の中間部左右に連結状態に設ける支持兼用カバー(図示せず)の内側に収容状態に保護される。配管88,88の一方のダンプ用油圧シリンダ72への支持は支持フレーム46の一側に沿う状態から前記上下のリンクのうち上リンク60に沿って保持され、さらに接続用配管89,89はコレクタ40の後側下部に設ける断面コの字型のカバー部材(図示せず)で保護する構成である。
【0040】
図8には、
図1の乗用型芝刈り機の制御ブロック図の一例を示す。また、
図9には、
図1の乗用型芝刈り機の制御ブロック図の他の例を示す。
モーア15の昇降用リンク機構16には、モーア15の刈高さを検出する刈高さセンサ(刈高さ検出手段)107が設けられている。なお、刈高さとは、圃場表面からモーア15のブレード20L,20Rまでの高さを言う。
【0041】
そして、本実施形態の乗用型芝刈り機には、刈高さセンサ107により検出されるモーア15の刈高さが予め設定された設定値以下である場合に前輪2及び後輪3の走行速度を所定速度以下に規制する速度規制機能を有する制御装置100を設けている。なお、走行速度を規制する基準となる刈高さの設定値はメモリMに記憶されており、通常は下降時のモーア15の最低位置である。また、上昇時のモーア15の最高位置もメモリMに記憶されている。これらの設定値を変更スイッチ(図示せず)により変更して変更値をメモリMに記憶させることも可能である。
【0042】
刈高さセンサ107は、リンク機構16の後方のリンク片16bの車体フレーム1に対する角度を検出するセンサであり、この刈高さセンサ107によって、車体フレーム1に対するリンク片16bの上下位置を測定する。そして、この測定値から刈高さが算出される。
【0043】
具体的には、
図1の拡大図に示すように、車体フレーム1側に固着したブラケット108に回動自在に連結するアーム110の後端部が後方のリンク片16bの上面に接しており、後方のリンク片16bの昇降に連動してアーム110がブラケット108との連結部102を支点として回動する。モーア15の刈高さはアーム110が回動する角度(θ)に対応しており、アーム110の角度が予め設定された刈高さに対応する所定角度に達すると 刈高さセンサ107からの速度規制信号が制御装置100に入力され、前輪2及び後輪3の走行速度が所定速度(例えば、6km)以下の低速域に規制される。
【0044】
刈高さセンサ107により設定値以下の高さが検出されると乗用型芝刈り機の作業時の走行速度が規制されることで、高速走行とはならない。したがって、刈り取った芝草がモーア15の周辺やシュータ37内に溜まったり詰まったりすることを防止でき、刈取り集草作業の効率が向上する。
【0045】
また、刈高さセンサ107により検出されるモーア15の刈高さに応じて前輪2及び後輪3の作業時の走行速度を規制すると共に、該規制速度をモーア15の刈高さに応じて変更する規制速度変更機能を有する制御装置100を設けても良い。
【0046】
例えば、モーア15の刈高さが低いほど、すなわちアーム110の回動角度(θ)が大きいほど規制速度を小さくする。モーア15の刈高さが低い場合は、多くの芝草を刈り取る場合を意味しており、その分、刈草が後方のシュータ37やコレクタ40に詰まりやすくなる。したがって、モーア15の刈高さが低いほど、より低速走行とすることで、刈草の詰まりを防止できる。
【0047】
そして、刈高さセンサ107により検出される高さに応じて、乗用型芝刈り機の作業時の走行速度が規制されると共に、この規制速度もモーア15の高さに応じて変更されるため、刈高さによって乗用型芝刈り機の走行速度が細かく規制され、作業内容に応じた走行速度となる。そして、高速走行とはならないことで、刈り取った芝草がモーア15周辺やシュータ37内に溜まったり詰まったりすることを防止でき、刈取り集草作業の効率が向上する。
【0048】
なお、この走行速度の規制は、
図8に示すように、HST7から出力する油圧を調整するための斜板(図示せず)の傾斜角度を変更するトラニオン軸109の角度を調整することで、容易に、且つ細かい精密な速度制御が可能となる。すなわち、刈高さセンサ107により設定値以下の高さが検出されると、制御装置100によりトラニオン軸109の角度を、走行速度が所定速度以下になるように調整したり、刈高さセンサ107により検出される高さに応じて、制御装置100によりトラニオン軸109の角度を調整したりする。制御装置100は、このようなトラニオン軸規制機能を有する。
【0049】
トラニオン軸109は前後進操作ペダル11を操作することで、その操作量(踏み込み量)が前後進操作ペダルセンサ11aで検出される。そして、その検出値に対応してHST7のトラニオン軸109を、制御装置100によりトラニオン軸109を駆動するためのモータ109a(正転で前進側、逆転で後進側)で回動させる。踏み込み量が大きいと速度が大きくなるような構成である。
【0050】
具体的には、前後進操作ペダル11の操作量の電圧値をVp、刈高さセンサ107により検出されるモーア15の高さの電圧値をVmhとし、モータ109aにはVp+Vmhの電圧値の出力がされる構成とする。モーア15の高さ電圧値(Vmh)は刈高さセンサ107により検出される刈高さが低ければ低く、刈高さセンサ107により検出される刈高さが高ければ高く設定される。
【0051】
通常、作業者は、モーア15の刈高さが低いとブレード20L,20Rに掛かる負荷が大きくなるので作業走行速度を遅くし、モーア15の刈高さが高いとブレード20L,20Rに掛かる負荷が小さいか移動時などで負荷がないときなので作業走行速度を速くする。
【0052】
したがって、本構成により、モーア15の刈高さが高いほど、モータ109aに出力される電圧値が高くなってトラニオン軸109の回動角度が大きくなり、作業走行速度が大きくなる。反対に、モーア15の刈高さが低いほど、モータ109aに出力される電圧値が低くなってトラニオン軸109の回動角度が小さくなり、作業走行速度が小さくなる。
【0053】
モーア15の刈高さが低いと、モーア15のブレード20L,20Rに掛かる負荷が大きくなるが、作業走行速度を遅めにすることで、刈り取った芝草がモーア15周辺やシュータ37内に溜まったり詰まったりすることを防止でき、刈取り集草作業の効率が向上する。
【0054】
また、
図9に示すように、HST7を設けずに、トランスミッションケース内にギア機構を介して変速する主変速装置115及び副変速装置117からなる複数段式変速装置を設け、主変速装置115と副変速装置117とによる複数段の変速機構により乗用型芝刈り機の走行速度を変速しても良い。
【0055】
副変速装置117と主変速装置115との変速段数の組み合わせにより全体の変速段数を選択できる。例えば主変速装置115が2段の変速段数を持ち、副変速装置117が2段の変速段数を持つ場合は、組み合わせにより全体で4通りの変速段数を選択できる。
【0056】
主変速装置115による主変速を低速側と高速側に操作する主変速レバー(主変速操作手段)112には、操作位置を検出する主変速レバーセンサ(主変速操作検出手段)112H,112Lが設けられている。高速側の主変速レバーセンサ112Hからの信号が制御装置100に入力されると、主変速高速側油圧クラッチ(図示せず)を接続するための信号が主変速高速側油圧クラッチソレノイド120Hに出力される。一方、低速側の主変速レバーセンサ112Lからの信号が制御装置100に入力されると、主変速低速側油圧クラッチ(図示せず)を接続するための信号が主変速低速側油圧クラッチソレノイド120Lに出力される。
【0057】
また、前記副変速装置117による副変速を低速側と高速側に操作する副変速レバー(副変速操作手段)113には、操作位置を検出する副変速レバーセンサ(副変速操作検出手段)113H,113Lが設けられている。高速側の副変速レバーセンサ113Hからの信号が制御装置100に入力されると、副変速高速側油圧クラッチ(図示せず)を接続するための信号が副変速高速側油圧クラッチソレノイド122Hに出力される。一方、低速側の副変速レバーセンサ113Lからの信号が制御装置100に入力されると、副変速低速側油圧クラッチ(図示せず)を接続するための信号が副変速低速側油圧クラッチソレノイド122Lに出力される。
【0058】
制御装置100は、刈高さセンサ107により設定値以下の高さが検出されると、副変速レバー113が高速位置の場合でも低速位置側に移行させることで走行速度を規制する変速規制機能を有する。
【0059】
ギア機構を介して変速する主変速装置115及び副変速装置117からなる複数段式変速装置を設けた場合も、HST7とした場合と同様に、より細かい精密な速度制御が可能となる。なお、主変速ではなく、副変速の高速側とした場合の理由は、副変速のほうが速度の差異が大きいためである。
【0060】
刈高さセンサ107によって検出される高さがモーア15の最低位置である場合に、副変速装置117が自動的に低速側になるため、走行速度が所定速度以下になって高速走行ができなくなる。また、刈高さセンサ107により検出される高さに応じて、副変速装置117が高速側と低速側に切り替わるような構成でも良い。そして、このような複数段式変速装置(主変速装置115及び副変速装置117)では、主変速と副変速の組合せを変えることで、モーア15の刈高さが低いほど、規制速度を小さくすることもできる。
【0061】
本構成により、刈草の詰まりを防止でき、刈り取り作業能率が向上する。また、モーア15のブレード20L,20Rに負荷が掛かることを防止できる。
また、刈高さセンサ107によって検出される高さが制御装置100のメモリMに記憶されているモーア15の最高位置である場合に、副変速装置117が自動的に高速側になるような変速緩和機能を制御装置100に設けても良い。通常はモーア15が最高位置であれば、移動時である場合が多いため、負荷が軽いので高速走行が可能となる。
【0062】
そして、このようなモーア15の刈高さによる速度制御を行うか行わないかを選択する選択スイッチ(選択操作手段)125を座席12近傍に設けると、作業者や作業内容に応じて乗用型芝刈り機の走行速度を規制する場合と規制しない場合とを適宜選択できるため、使い勝手が良い。例えば、作業者によっては自分の好みに合わせて操縦したい場合もあり、また乾燥している圃場や丈の短い草の圃場を刈り取る場合は、走行速度を規制しないことで、刈取り集草作業の効率を向上させることができる。
【0063】
すなわち、選択スイッチ125を例えば切り側にすると、刈高さセンサ107によって検出される高さがどんな値でも乗用型芝刈り機の走行速度は規制されず、その時の速度を保つ。例えば、変速装置としてHST7を設けた場合は前後進操作ペダル11の操作量に応じた速度となり、変速装置として主変速装置115及び副変速装置117を設けた場合は副変速レバー113及び主変速レバー112の操作位置に応じた速度となる。したがって、作業者や作業内容に応じて適切な刈取り集草作業が可能となる。
【0064】
図10には、
本発明の実施形態の乗用型芝刈り機の全体側面図を示し、
図11には
図10の乗用型芝刈り機の全体平面図を示し、
図12には
図10の乗用型芝刈り機の全体正面図を示す。
【0065】
これらの図に示す乗用型芝刈り機は、側面視で後方上り傾斜であって、且つ平面視で機体前方から後方に掛けて左右中央から左右外側に傾斜するガイド130を配置した点で、
図1〜
図3の乗用型芝刈り機と異なり、それ以外の構成は同様である。
【0066】
刈取り集草作業中に樹木の周囲を至近距離で旋回した場合、樹木の枝が作業者(操縦者)や機体に接触して枝が折れたり、作業者の方に倒れてきたりすることも考えられる。
そこで、
図10〜
図12に示すようなガイド130を設けると良い。このガイド130は、前側が低く左右中央寄りに、後ろ側が高く左右外側寄りに傾斜するように設置されているため、乗用型芝刈り機の前方では至近距離で低い枝がガイド130に当たることで、枝と作業者との接触を防止できる。そして乗用型芝刈り機が前進走行するにつれて、枝はスムーズに上方且つ左右外側へ案内された後、ガイド130から離れる。
【0067】
したがって、本構成のガイド130によって樹木の枝が作業者や機体に接触することを防止でき、安全性が向上する。またガイド130に接触した枝は、そのまま上方且つ左右外側へ案内された後、ガイド130から離れるため、樹木の損傷を防止できる。
通常、狭い間隔の樹木間を走行することはないので、左右一側にガイド130を設ければ良く、左右一側を開放することで作業者の乗降を妨げない。
【0068】
また、エンジンEのオーバーヒートを検出するオーバーヒートセンサ(検出すると入り、不検出では切りとなるスイッチセンサで良い)133を設け、オーバーヒートセンサ133からの検出値に応じてPTO軸(入力軸30)への出力を制御するPTO出力機能を制御装置100に設けても良い。
【0069】
エンジンEがオーバーヒートしていない通常の状態では、オーバーヒートセンサ133のスイッチが入りとなっていないため、PTO軸30への出力がなされ、PTO軸30が回転することでモーア15が作動する。一方、エンジンEがオーバーヒートすると、オーバーヒートセンサ133のスイッチが入りとなって、PTO軸30への出力が遮断されてPTO軸30の回転が停止してモーア15も停止する。PTO軸30の作動の有無は、PTO軸30に設けたPTO軸入切センサ135で検出される。
【0070】
モーア15を作動させるためのPTOスイッチ137を入りにすると、ブレード20L,20Rが回転するが、エンジンEがオーバーヒートすると、PTOスイッチ137が入りであっても、ブレード20L,20Rが停止する。
【0071】
エンジンEがオーバーヒートすると早急な措置が必要となるため、すぐにモーア15を停止させる必要があるが、作業者がオーバーヒートに気づいていない場合もあることから、本構成により、確実にモーア15を停止させることができ、安全性の面で優れる。またモーア15を停止させることで、不要な動作を防止できる。
【0072】
また、本実施形態の乗用型芝刈り機は、ハイダンプ仕様のコレクタ40を備えているが、座席12の近傍にパーキングブレーキ140を設け、パーキングブレーキ140の操作に応じてコレクタ40のダンプ(刈草の排出)を制御しても良い。具体的には、パーキングブレーキ140が掛かっている時だけ、コレクタ40のダンプを許容する。パーキングブレーキ140の操作量はパーキングブレーキ140の基部に設けたパーキングブレーキセンサ140aによって検出される。
【0073】
通常は、ダンプレバー72Lを操作すると、ダンプレバーセンサ72Laからの入力信号に基づいて制御装置100によってダンプ用油圧シリンダ72が伸張方向に作動してコレクタ40が回動し、収容している刈草を放出する。また、この排出作業は安全性を考慮して、パーキングブレーキ140を掛けた状態で行われる。
【0074】
しかし、作業者によってはパーキングブレーキ140を掛けることを忘れていたり、また作業者の熟練度等の違いからパーキングブレーキ140を掛けずにダンプレバー72Lを操作したりすることもあり得る。
【0075】
このような場合でも、パーキングブレーキ140が掛かっていない時は、ダンプ用油圧シリンダ72を伸ばさないことで、コレクタ40のダンプを規制できる。すなわちパーキングブレーキセンサ140aによりパーキングブレーキ140が掛かっていない状態が検出されると、ダンプレバー72Lが操作されても制御装置100によってダンプ用油圧シリンダ72のバルブ(図示せず)に伸張させるための信号が出力されないことで、ダンプ用油圧シリンダ72は伸びず(短縮したままの状態)、コレクタ40のダンプを規制できる。したがって、乗用型芝刈り機が確実に停車した状態でのみコレクタ40のダンプを許容することで、安全性や操作性が向上する。
【0076】
また、同様に、パーキングブレーキ140の操作に応じてコレクタ40のリフト(コレクタ40の上昇)を制御しても良い。具体的には、パーキングブレーキ140が掛かっている時だけ、コレクタ40のリフトを許容する。
【0077】
通常は、油圧昇降レバー101を上昇側に操作すると、油圧昇降レバーセンサ101aからの入力信号に基づいて制御装置100によって昇降用油圧シリンダ69が伸張方向に作動してコレクタ40が上昇する。また、この上昇操作は安全性を考慮して、パーキングブレーキ140を掛けた状態で行われる。しかし、作業者によってはパーキングブレーキ140を掛けることを忘れていたり、また作業者の熟練度等の違いからパーキングブレーキ140を掛けずに油圧昇降レバー101を上昇側に操作したりすることもあり得る。
【0078】
このような場合でも、パーキングブレーキ140が掛かっていない時は、昇降用油圧シリンダ69を伸ばさないことで、コレクタ40のリフトを規制できる。すなわちパーキングブレーキセンサ140aによりパーキングブレーキ140が掛かっていない状態が検出されると、油圧昇降レバー101が上昇側に操作されても制御装置100によって昇降用油圧シリンダ69のバルブ(図示せず)に伸張させるための信号が出力されないことで、昇降用油圧シリンダ69は伸びず(短縮したままの状態)、コレクタ40のリフトを規制できる。したがって、乗用型芝刈り機が確実に停車した状態でのみコレクタ40のリフトを許容することで、安全性や操作性が向上する。