特許第6123313号(P6123313)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ベークライト株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6123313-フェノール濃縮方法 図000004
  • 特許6123313-フェノール濃縮方法 図000005
  • 特許6123313-フェノール濃縮方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6123313
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】フェノール濃縮方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/04 20060101AFI20170424BHJP
   B01D 61/36 20060101ALI20170424BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20170424BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20170424BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20170424BHJP
   B01D 7/02 20060101ALI20170424BHJP
   C07C 39/04 20060101ALI20170424BHJP
   C07C 37/84 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   C02F1/04 D
   B01D61/36
   B01D61/58
   B01D61/02 500
   C02F1/44 F
   B01D7/02
   C07C39/04
   C07C37/84
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-17711(P2013-17711)
(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公開番号】特開2014-147882(P2014-147882A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】橋本 龍馬
(72)【発明者】
【氏名】宮内 啓行
【審査官】 高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−057151(JP,A)
【文献】 特開平07−136665(JP,A)
【文献】 特開平06−296831(JP,A)
【文献】 特開昭63−178804(JP,A)
【文献】 特開昭63−264190(JP,A)
【文献】 特開昭51−090157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/04、 1/44、 1/58
B01D 61/36、61/02、61/58、
7/02
C07C 37/84、39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノールおよび水の混合物を、圧力150Pa以上4000Pa以下、温度20℃以上120℃以下の雰囲気下に置くことにより、前記混合物を気体状態にする気化工程と、
前記気体状態にした前記混合物を、圧力150Pa以上4000Pa以下、温度0℃以上30℃以下の雰囲気下に置き、フェノール析出物を回収するフェノール回収工程と、
前記フェノール回収工程の後に、前記フェノール回収工程を経て得られたフェノール析出物を除いた処理残渣を、圧力150Pa以上4000Pa以下、温度−200℃以上0℃以下の雰囲気下に置き、水析出物を回収する水回収工程と、を有することを特徴とするフェノール濃縮方法。
【請求項2】
前記気化工程は、液体状態の前記混合物を、浸透気化法により前記気体状態にする工程である請求項1に記載のフェノール濃縮方法。
【請求項3】
前記浸透気化法では、前記混合物を透過させる浸透気化膜を用いており、
前記浸透気化膜には、電子線照射処理が施されている請求項2に記載のフェノール濃縮方法。
【請求項4】
前記浸透気化法では、前記混合物を透過させる浸透気化膜を用いており、
前記浸透気化膜は、押出法で形成されている請求項2または3に記載のフェノール濃縮方法。
【請求項5】
前記浸透気化法では、前記混合物を透過させる浸透気化膜を用いており、
前記浸透気化膜は、ポリアミドを含む請求項2ないし4のいずれか1項に記載のフェノール濃縮方法。
【請求項6】
前記気化工程の前に、前記混合物を加熱する加熱工程を有する請求項1ないし5のいずれか1項に記載のフェノール濃縮方法。
【請求項7】
前記加熱工程における加熱温度は、20℃以上95℃以下である請求項6に記載のフェノール濃縮方法。
【請求項8】
前記気化工程の前に、逆浸透膜を用いて前記混合物を処理する前処理工程を有する請求項1ないし7のいずれか1項に記載のフェノール濃縮方法。
【請求項9】
前記混合物は、無機イオン性物質を含むものである請求項1ないし8のいずれか1項に記載のフェノール濃縮方法。
【請求項10】
前記混合物は、アルカリ性を示すものである請求項1ないし9のいずれか1項に記載のフェノール濃縮方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール濃縮方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール樹脂は、自動車のブレーカー等の部品、電子部品など多くの工業分野に利用されているが、水中にフェノール類がごく微量でも含まれていると、塩素処理の際にクロロフェノール類を生成して異臭を発するため、排水基準が定められている。そのため、排水中に含まれるごく微量のフェノールを分離する必要がある。
【0003】
このように、排水等の水に含まれるごく微量のフェノールを分離する方法として、分離膜を用いた方法が利用されている。特に、フェノールの選択性に優れているとして、浸透気化膜を用いた方法が用いられている(特許文献1参照)。これにより、フェノールを含む混合物からフェノールを分離することができる。
【0004】
しかしながら、分離膜を用いた方法では、フェノールを含む混合物から高純度のフェノールを収率よく回収することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−57151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、フェノール含有混合物中から、高濃度のフェノールを効率良く、かつ、容易に回収することができるフェノール濃縮方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)〜(10)に記載の本発明により達成される。
(1) フェノールおよび水の混合物を、圧力150Pa以上4000Pa以下、温度20℃以上120℃以下の雰囲気下に置くことにより、前記混合物を気体状態にする気化工程と、
前記気体状態にした前記混合物を、圧力150Pa以上4000Pa以下、温度0℃以上30℃以下の雰囲気下に置き、フェノール析出物を回収するフェノール回収工程と、
前記フェノール回収工程の後に、前記フェノール回収工程を経て得られたフェノール析出物を除いた処理残渣を、圧力150Pa以上4000Pa以下、温度−200℃以上0℃以下の雰囲気下に置き、水析出物を回収する水回収工程と、を有することを特徴とするフェノール濃縮方法。
【0009】
(2) 前記気化工程は、液体状態の前記混合物を、浸透気化法により前記気体状態にする工程である上記(1)に記載のフェノール濃縮方法。
(3) 前記浸透気化法では、前記混合物を透過させる浸透気化膜を用いており、
前記浸透気化膜には、電子線照射処理が施されている上記(2)に記載のフェノール濃縮方法。
(4) 前記浸透気化法では、前記混合物を透過させる浸透気化膜を用いており、
前記浸透気化膜は、押出法で形成されている上記(2)または(3)に記載のフェノール濃縮方法。
(5) 前記浸透気化法では、前記混合物を透過させる浸透気化膜を用いており、
前記浸透気化膜は、ポリアミドを含む上記(2)ないし(4)のいずれかに記載のフェノール濃縮方法。
【0010】
(6) 前記気化工程の前に、前記混合物を加熱する加熱工程を有する上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のフェノール濃縮方法。
【0011】
(7) 前記加熱工程における加熱温度は、20℃以上95℃以下である上記(6)に記載のフェノール濃縮方法。
【0013】
(8) 前記気化工程の前に、逆浸透膜を用いて前記混合物を処理する前処理工程を有する上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のフェノール濃縮方法。
【0014】
(9) 前記混合物は、無機イオン性物質を含むものである上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のフェノール濃縮方法。
【0015】
(10) 前記混合物は、アルカリ性を示すものである上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のフェノール濃縮方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フェノール含有混合物中から、高濃度のフェノールを効率良く、かつ、容易に回収することができる
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のフェノール濃縮方法を行うためのフェノール濃縮装置の一例を示す図である。
図2】フェノール濃縮装置のうち、浸透気化膜モジュールを拡大した図である。
図3】本発明のフェノール濃縮方法の好適な実施形態を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のフェノール濃縮方法の好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明のフェノール濃縮方法は、フェノールおよび水を含む混合物中のフェノールを濃縮する方法である。本発明のフェノール濃縮方法によれば、混合物から、高濃度のフェノールを効率良く、かつ、容易に回収することができる。特に、フェノール濃度が希薄な混合物であっても、本発明のフェノール濃縮方法を用いれば、混合物におけるフェノールの濃度を高めることができる。また、得られたフェノール析出物は、フェノールの純度が高いため、様々な工業製品の原料等として利用することができる。
【0019】
≪フェノール濃縮装置≫
まず、本実施形態のフェノール濃縮方法を説明するのに先立って、本実施形態のフェノール濃縮方法に用いるフェノール濃縮装置について説明する。
【0020】
図1は、本発明のフェノール濃縮方法を行うためのフェノール濃縮装置の一例を示す図であり、図2は、フェノール濃縮装置のうち、浸透気化膜モジュールを拡大した図である。
【0021】
図1に示すフェノール濃縮装置100は、混合物タンク110と、浸透気化膜モジュール120と、フェノール析出物回収ユニット130と、不透過物貯留タンク140と、水析出物回収ユニット170を有している。
【0022】
このうち、混合物タンク110と浸透気化膜モジュール120とは、供給管路115により接続されている。また、供給管路115の途中には、前処理モジュール150と加熱ユニット160とが設けられている。前処理モジュール150としては、例えば、凝集剤を用いた沈降処理、ろ過処理、逆浸透膜処理、共沸処理、蒸留処理等を行うモジュールが挙げられる。また、加熱ユニット160としては、ヒーター等の加熱手段を備えたものが挙げられる。
【0023】
一方、浸透気化膜モジュール120の透過側(二次側)とフェノール析出物回収ユニット130とは、透過管路125により接続されている。さらに、フェノール析出物回収ユニット130と水析出物回収ユニット170とは、透過管路135により接続されている。また、浸透気化膜モジュール120の供給側(一次側)と不透過物貯留タンク140とは、排出管路126により接続されている。
【0024】
また、浸透気化膜モジュール120は、図2に示すように、筐体121と、筐体121の内部空間を隔てるよう設けられた浸透気化膜1とを備えている。筐体121の内部空間のうち、浸透気化膜1の一次側が供給側空間122であり、浸透気化膜1の二次側が透過側空間123である。
【0025】
フェノール濃縮装置100で処理される混合物10は、フェノールおよび水の混合物である。
【0026】
ここで、フェノールおよび水の混合物とは、少なくともフェノールと水とを含む混合物のことをいい、水およびフェノール以外のその他の成分を含むものであってもよい。例えば、混合物10は、ナトリウムイオン、硫酸イオン、リン酸イオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン等の無機イオンを有する無機イオン性物質やその塩等を含むものであってもよい。
【0027】
また、混合物10中におけるフェノールの濃度は、特に限定されず、例えば、0.1質量%以上20質量%以下である。特に、フェノール濃度が10質量%以下のような希薄な混合物10であっても、本実施形態のフェノール濃縮方法を用いれば、高濃度のフェノールを効率良く、かつ、容易に回収することができる。
【0028】
また、フェノール濃縮方法は、いかなるイオン指数(pH)の混合物にも用いることが可能だが、特に、アルカリ性を示すものに好適に用いることができる。具体的には、混合物の水素イオン指数(pH)が7.5以上9.5以下のものに適用することができる。
【0029】
≪フェノール濃縮方法≫
以下に、図1図2に示すフェノール濃縮装置100を用いて行うフェノール濃縮方法の好適な実施形態について説明する。
【0030】
図3は、本発明のフェノール濃縮方法の好適な実施形態を示す工程図である。
本実施形態のフェノール濃縮方法は、図3に示すように、[1]前処理工程S1と、[2]加熱工程S2と、[3]気化工程S3と、[4]フェノール回収工程S4と、[5]水回収工程S5とを有している。
【0031】
なお、以下に説明するフェノール濃縮方法では、[3]気化工程S3としては、浸透気化法を気化工程の場合について、代表に説明する。
【0032】
また、以下に説明するフェノール濃縮方法では、[1]混合物10から主に水を除去して混合物20を得た後、[2]混合物20を加熱し、[3]混合物25中のフェノールと水とが気体状態になる温度および圧力の雰囲気下に、混合物25を置くことにより、気化状態の混合物30を得た後、[4]気化状態の混合物30から、フェノール析出物40を回収し、その後さらに、[5]混合物30からフェノール析出物40を回収することで残った処理残渣41から、水析出物50を回収する方法について主に説明する。
【0033】
以下、各工程について詳細に説明する。
[1]前処理工程S1
まず、フェノールおよび水を含む混合物10を用意する。
【0034】
なお、本実施形態では、混合物10として以下のものを用いた場合について、中心的に説明する。
【0035】
混合物10は、フェノール、水で構成されたものとする。また、混合物10は、室温で液体状態のものとする。
【0036】
次に、混合物10に前処理を施す。前処理では、混合物10中の異物を除去したり、混合物10の減容化を図る。
【0037】
図1に示すように、混合物タンク110中に貯留された混合物10が、供給管路115を経て前処理モジュール150に送られると、そこで前処理が行われる。
【0038】
前処理モジュール150としては、前述したように、例えば、凝集剤を用いた沈降処理、ろ過処理、逆浸透膜処理、共沸処理、蒸留処理等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、特に、逆浸透膜処理を用いることが好ましい。これにより、混合物10を効率的に減容することができる。
【0039】
ここで、逆浸透膜処理とは、逆浸透膜(RO膜)を用いて、混合物10中に含まれる水を除去し、混合物10を減容する処理をいう。具体的には、例えば、逆浸透膜を隔てて供給側(一次側)に混合物10を供給し、供給側に圧力をかけることにより、混合物10中の水が、供給側から逆浸透膜を透過して透過側に移動する。このような逆浸透膜処理を用いることにより、混合物10から主に水を除去することができ、混合物10よりも水の量が少ない混合物20を得ることができる。すなわち、混合物10を減容することができる。また、逆浸透膜は、水は透過するが、フェノールは透過しにくい性質を有する膜である。そのため、混合物10に逆浸透膜処理を施すことにより、逆浸透膜処理が施された混合物20のフェノール濃度を、逆浸透膜処理を施す前の混合物10よりも高くすることができる。
【0040】
また、逆浸透膜の形状としては、特に限定されず、例えば、平膜、中空糸膜、スパイラル膜、チュブラー膜等いかなるものを用いてもよい。
【0041】
また、逆浸透膜の材質としては、特に限定されないが、例えば、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスルホン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
また、前処理モジュール150として、いかなる前処理を用いるかは、混合物10中に含まれる物質に応じて適宜選択することができる。例えば、混合物10が、水およびフェノール以外のその他の成分を含むものである場合には、その他の成分を選択的に分離するような分離膜等を用いたろ過処理を用いることができる。
【0043】
なお、前処理を行う時間は、用いる混合物10の量や種類等によって適宜変更すればよいが、例えば、5分以上24時間以下である。
【0044】
また、本前処理工程S1は、混合物の種類や量等によって、適宜省略してもよい。例えば、混合物中におけるフェノール濃度が比較的高いものである場合には、本前処理工程S1を省略してもよい。
【0045】
[2]加熱工程S2
次に、液体状態の混合物20を加熱し、混合物25を得る。
【0046】
図1に示すように、前処理に供された混合物20は、供給管路115を経て加熱ユニット160に送られ、加熱ユニット160で加熱される。これにより、混合物25を得る。このような加熱工程S2を設けることで、後述する[3]浸透気化膜を用いた気化工程S3において、混合物20の処理効率をさらに高めることができる。これについては、[3]気化工程S3にて詳述する。
【0047】
また、加熱ユニット160としては、特に限定されないが、ヒーター等の加熱手段を備えたものが挙げられる。
【0048】
また、混合物20を加熱する温度(加熱温度)は、特に限定されないが、20℃以上95℃以下が好ましく、30℃以上70℃以下がより好ましく、40℃以上60℃以下がさらに好ましい。これにより、後述する[3]浸透気化法による気化工程S3において、浸透気化膜1が劣化するのを防ぐとともに、混合物20の処理効率をさらに高めることができる。
【0049】
なお、前処理を行う時間は、用いる混合物20の量や種類等によって適宜変更すればよいが、例えば、5分以上24時間以下である。
【0050】
また、本加熱工程S2は、混合物の種類や量等によって、適宜省略してもよい。また、例えば、後述する気化工程S3において、浸透気化法を用いない場合には、本加熱工程S2を省略してもよい。
【0051】
[3]気化工程S3
次に、液体状態の混合物25を、浸透気化法により処理する。これにより、液体状態の混合物25から、気体状態の混合物30を得ることができる。
【0052】
ここで、本実施形態は、フェノール回収工程S4の前に、フェノールおよび水の混合物を、フェノールと水とが気体状態になる温度および圧力の雰囲気下に置く気化工程S3を有することに特徴がある。
【0053】
具体的には、本実施形態は、フェノール回収工程S4の前に、フェノールおよび水の混合物を、圧力130Pa以上4000Pa以下、温度20℃以上120℃以下の雰囲気下に置くことにより、混合物を気体状態にする気化工程S3を有するものである。特に、気化工程S3において、混合物25を、圧力150Pa以上3500Pa以下、温度30℃以上110℃以下の雰囲気下に置くのがより好ましく、圧力180Pa以上3000Pa以下、温度40℃以上100℃以下の雰囲気下に置くのがさらに好ましい。
【0054】
混合物25を、前記範囲内の圧力および温度の雰囲気下に置くことにより、温度および圧力を制御することのみで、混合物25から、容易にかつ確実に気体状態の混合物30を得ることができる。このように、後に詳述するフェノール析出物40を回収するフェノール回収工程S4に先立ち、本気化工程S3において、混合物25を確実に気体状態にすることで、最終的に得られるフェノール析出物40の、フェノール濃度を特に高くすることができる。
【0055】
これに対し、圧力が前記下限値未満である場合、減圧するのに多大なエネルギーを消費するおそれがあり、フェノール濃縮装置100の安定性を十分に保つことができない場合がある。また、圧力が前記上限値を超えると、混合物25を気化状態とするのが困難な場合がある。その結果、[4]フェノール回収工程S4において、フェノール析出物40を回収することができない可能性がある。
【0056】
一方、温度が前記下限値未満である場合、混合物25を気体状態とするのが困難となり、処理効率が低下するおそれがある。また、温度が前記上限値を超えると、加温するのに多大なエネルギーを消費するおそれがある。また、浸透気化法を用いて、液体状態の混合物25から、気体状態の混合物30を得る場合は、浸透気化膜1が劣化し耐久性が低下する可能性がある。
【0057】
本実施形態では、本気化工程S3において、前述したように、浸透気化法を用いて、液体状態の混合物25を、前記の圧力および温度の雰囲気下に置くことで、液体状態の混合物25から、気体状態の混合物30を得ることができる。
【0058】
ここで、浸透気化法とは、浸透気化膜1を用い、浸透気化膜1を透過させることで気体状態の混合物30を得る方法をいう。具体的には、図1、2に示すように、混合物25が、供給管路115を経て浸透気化膜モジュール120の供給側空間122に送られる。そして、浸透気化膜モジュール120の透過側空間123を透過管路125に接続された減圧ポンプ(図示せず)により前記範囲内の圧力にする。また、この際に、供給側空間122および透過側空間123の温度を、前記範囲内の温度に保つ。これにより、混合物25が供給側空間122から浸透気化膜1を透過して透過側空間123に移動する。その結果、透過側空間123に、気体状態の混合物30を得ることができる。このように、浸透気化法を用いて前記温度および圧力の雰囲気下に置くことにより、混合物25から気体状態の混合物30をさらに容易かつ確実に得ることができる。
【0059】
また、浸透気化膜1は、水よりもフェノールを優先的に透過する機能を有する。したがって、混合物25中のフェノールが、水よりも優先的に、供給側空間122から浸透気化膜1を透過して透過側空間123に移動する。その結果、透過側空間123に得られた混合物30は、混合物25よりもフェノール濃度の高いものとなる。このように、浸透気化法を用いることにより、混合物25から気化状態の混合物30を得るとともに、得られた混合物30中のフェノール濃度を混合物25よりも高くすることができる。
【0060】
さらに、[2]加熱工程S2において、混合物20を、[2]加熱工程S2で説明した温度に加熱しておくことにより、浸透気化法を用いた本気化工程S3における混合物25の処理効率を、より高めることができる。
【0061】
浸透気化膜1の形状としては、特に限定されず、例えば、袋状型、平膜型、中空糸型、管状型、スパイラル型等の緻密質膜を採用することができる。
【0062】
このような浸透気化膜1の平均厚さは、特に限定されないが、10〜500μm程度であるのが好ましく、20〜400μm程度であるのがより好ましい。浸透気化膜1の平均厚さを前記範囲内に設定することにより、供給側空間122と透過側空間123とを確実に隔てることができ、混合物25から気化状態の混合物30をより確実に得ることができる。
【0063】
また、浸透気化膜の材質は、特に限定されないが、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド等の高分子膜またはこれらの複合膜などが挙げられる。これらの中でも特に、ポリアミドを含むものが好ましい。これにより、フェノールの分離性能を高めつつ、浸透気化膜1の機械的特性を高めることができる。
【0064】
なお、浸透気化膜1の成形方法は、特に限定されないが、例えば、乾式製膜法、湿式製膜法、押出法等が挙げられる。これらの中でも特に、押出法であるのが好ましい。押出法により浸透気化膜を成形する場合には、例えば、溶融温度100℃以上300℃以下の範囲で、浸透気化膜を構成する材料を含むものを押出成形することにより、浸透気化膜1を得ることができる。
【0065】
また、浸透気化膜1は、必要に応じて、電子線照射処理、コロナ放電処理、アーク放電処理、エキシマ光の照射処理、プラズマ処理、エッチング処理、フェノールと親和性の高い官能基を導入するコーティング処理等を施してなるものであってもよい。これらの中でも特に、電子線照射処理を施してなるものが好ましい。これにより、フェノールの透過性を大きく阻害することなく、浸透気化膜1の耐久性等の機械的特性の向上を図ることができる。
【0066】
また、浸透気化法を用いて得られた混合物30中におけるフェノールの含有率は、例えば、2質量%以上95質量%以下である。前述したような浸透気化法を用いることで、フェノール濃度が0.1質量%以上10質量%以下のような希薄な混合物25を用いた場合であっても、フェノールの含有率を前記の範囲内の含有率まで高めることができる。
【0067】
また、混合物25中に無機イオン性物質を含む場合には、本気化工程S3にて、無機イオン性物質は、浸透気化膜モジュール120の供給側空間122から排出管路126を経て不透過物貯留タンク140に送られ、フェノールから分離されることから、回収するフェノールの純度を高めることができる。
【0068】
[4]フェノール回収工程S4
次に、気化工程S3にて気体状態の混合物30を、所定の温度および圧力の雰囲気下に置く。これにより、主にフェノールを含むフェノール析出物40を得ることができる。
【0069】
本実施形態では、気化工程S3の後、気化工程S3での温度および圧力のうちの少なくとも一方を変更することにより、気化工程S3により得られた気体状態の混合物から、フェノール析出物を回収するフェノール回収工程S4とを有することを特徴とする。
【0070】
具体的に、本実施形態は、気化工程S3により得られた気体状態の混合物を、圧力130Pa以上4000Pa以下、温度0℃以上30℃以下の雰囲気下に置き、フェノール析出物を回収するフェノール回収工程S4とを有するものである。特に、フェノール回収工程S4において、混合物30を、圧力150Pa以上3500Pa以下、温度5℃以上27℃以下の雰囲気下に置くのがより好ましく、圧力180Pa以上3000Pa以下、温度10℃以上25℃以下の雰囲気下に置くのがさらに好ましい。
【0071】
[3]気化工程S3を経て、気体状態となった混合物30を、前記範囲内の圧力および温度の雰囲気下に置くことにより、水は気体状態のままで、フェノールのみを気体状態から固体状態または液体状態に状態変化させることができる。このように、フェノールの状態と水の状態とを、それぞれ異なる状態とすることで、フェノールと水とを相分離することができる。このように、本フェノール回収工程S4において、気化工程S3での温度および圧力のうちの少なくとも一方を変更することにより、水とフェノールとを確実かつ容易に分離することができる。その結果、主にフェノールを含む、液体状態または固体状態のフェノール析出物40と、主に水を含む、気体状態の処理残渣41とを得ることができる。なお、この処理残渣41は、後述する[5]水回収工程S5に供される。
【0072】
これに対し、圧力が前記下限値未満である場合、減圧するのに多大なエネルギーを消費するおそれがあり、フェノール濃縮装置100の安定性を十分に保つことができない場合がある。また、圧力が前記上限値を超えると、本来、気体状態のままとしておくべき水が、液体状態または固体状態となってしまうおそれがある。そのため、混合物30中の水およびフェノールの双方が、液体状態または固体状態となってしまい、混合物30を、水とフェノールとに分離することができなくなる可能性がある。その結果、得られたフェノール析出物40には、フェノールだけでなく、比較的多量の水が混在してしまい、フェノール析出物40のフェノール濃度を高くすることができない可能性がある。
【0073】
一方、温度が前記下限値未満である場合、本来、気体状態のままとしておくべき水が、液体状態または固体状態となってしまうおそれがあり、混合物30中の水およびフェノールの双方を相分離することができなくなるおそれがある。その結果、得られたフェノール析出物40には、フェノールだけでなく、比較的多量の水が混在してしまい、フェノール析出物40のフェノール濃度を高くすることができない可能性がある。また、温度が前記上限値を超えると、本来、液体状態または固体状態とするべきフェノールが、気体状態のままとなってしまい、フェノール析出物40を得ることができない場合がある。
【0074】
このように、本実施形態では、フェノール回収工程S4に先立ち、前記のような気化工程S3を設ける点に特徴を有している。さらに、[3]気化工程S3および[4]フェノール回収工程S4の前に、[1]前処理工程S1を設けることで、予め混合物10中の異物を除去したり、混合物10の減容化をすることができるため、水とフェノールとをより効率よく分離することができる。そのため、フェノール濃縮処理の処理時間を短縮することができる。また、[1]前処理工程S1において、逆浸透膜を用いた前処理を施すことにより、混合物10中の水を優先的に除去することができるため、混合物10の減容化の効果がさらに顕著に発揮される。
【0075】
また、本フェノール回収工程S4では、気化工程S3での温度および圧力のうちの少なくとも一方を変更すればよいが、特に、温度を変更するほうがより好ましい。これにより、工程ごとに圧力を変更するよりも、各工程の制御を容易に行うことができるため、一連のフェノール濃縮工程をより簡便に行うことができる。そのため、フェノール析出物40の回収効率を向上させることができる。
【0076】
また、本フェノール回収工程S4にて温度を変更する場合には、本フェノール回収工程S4における温度が、気化工程S3での温度よりも低くなるように変更するのが好ましい。また、本フェノール回収工程S4にて圧力を変更する場合には、本フェノール回収工程S4における圧力が、気化工程S3での圧力よりも低くなるように変更するのが好ましい。これにより、本フェノール回収工程S4において、フェノールの状態と水の状態とをより確実に異なる状態とすることができる。
【0077】
このようなフェノール回収工程S4は、図1に示す装置を用いて行うことができる。具体的には、図1に示すように、混合物30が、浸透気化膜モジュール120の透過側空間123から透過管路125を経てフェノール析出物回収ユニット130に送られる。そして、フェノール析出物回収ユニット130において、混合物30を、所定の温度および圧力の雰囲気下に置く。これにより、主にフェノールを含むフェノール析出物40を得ることができる。
【0078】
フェノール析出物回収ユニット130としては、圧力および温度を、前述した範囲内の温度および圧力に調整するものであればよく、例えば、各種温度調整手段や、真空ポンプ等を備えているものが挙げられる。
【0079】
また、得られたフェノール析出物40中におけるフェノールの含有率は、例えば、85質量%以上である。特に、フェノール濃度が0.1質量%以上10質量%以下のような希薄な混合物を用いた場合であっても、本実施形態のフェノール濃縮方法を用いれば、フェノールの含有率を前記の範囲内の含有率まで高めることができる。このように高濃度のフェノールを回収することができる。
【0080】
本フェノール回収工程S4により得られた、濃縮後のフェノール析出物40は、前記のようにフェノール濃度が高いものであるため、工業原料等として広く利用することができる。フェノール析出物40を工業原料等に用いる場合には、例えば、フェノール析出物40に必要な量の水を加えればよい。このように、フェノール析出物40は、用途に合わせた水の量で希釈すれば、高濃度フェノール水溶液を容易に得ることができるため、幅広い工業用原料として用いることができる。また、本実施形態のフェノール濃縮方法を用いれば、混合物10中のフェノールと水とを確実かつ容易に分離することができるため、フェノールの廃棄や無害化処理の効率を高めることができる。
【0081】
[5]水回収工程S5
次に、[4]フェノール回収工程S4を経て、混合物30からフェノール析出物40が分離された気体状態の水である処理残渣41を、所定の圧力下で冷却する。これにより、主に水を含む水析出物50を得ることができる。
【0082】
具体的には、図1に示しように、処理残渣41が、フェノール析出物回収ユニット130から透過管路135を経て水析出物回収ユニット170に送られる。そして水析出物回収ユニット170において、処理残渣41を、所定の温度および圧力の雰囲気下に置く。これにより、主に、固体状態または液体状態の水を含む水析出物50を得ることができる。
【0083】
具体的には、処理残渣41を、圧力130Pa以上4000Pa以下、温度−200℃以上10℃以下の雰囲気下に置くのが好ましく、圧力150Pa以上3500Pa以下、温度−150℃以上0℃以下の雰囲気下に置くのがより好ましく、圧力180Pa以上3000Pa以下、温度−100℃以上−5℃以下の雰囲気下に置くのがさらに好ましい。これにより、主に、固体状態または液体状態の水を含む水析出物50を容易かつ確実に得ることができる。このように、水析出物50を固体状態または液体状態とすることで、水析出物50が気体状態である場合に比べ、水を回収するのが容易となる。
【0084】
水析出物回収ユニット170としては、圧力および温度を、前記範囲内の温度および圧力に調整するものであればよく、例えば、各種冷却器や、液体窒素、グリコール系の不凍液等を備えたものや、真空ポンプ等を備えているものが挙げられる。
【0085】
また、[3]気化工程S3、[4]フェノール回収工程S4および[5]水回収工程S5は、それぞれ各工程で説明した温度および圧力に設定すればよいが、特に、これらの工程の圧力を一定にしつつ、各工程の温度のみをそれぞれ変更するのが好ましい、これにより、工程ごとに温度と圧力を変更するよりも、各工程の制御を容易に行うことができ、一連のフェノール濃縮工程をより効率よく、より容易に行うことができる。その結果、フェノール析出物40、水析出物50の回収効率を向上させることができる。また、圧力を制御するための真空ポンプ等を工程ごとに設ける必要がないため、装置の簡略化を図ることができる。
【0086】
なお、[3]気化工程S3、[4]フェノール回収工程S4および[5]水回収工程S5の合計処理時間は、特に限定されないが、30分以上72時間以下であるのが好ましく、1時間以上48時間以下であるのが特に好ましい。これにより、効率よくフェノール濃縮を行うことができ、フェノール析出物40および水析出物50の回収効率を向上させることができる。
【0087】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記のものに限定されるものではない。
【0088】
例えば、前述した実施形態では、気化工程は浸透気化法を用いたものについて説明したが、気化工程はこれに限定されず、例えば、減圧蒸留装置を用いて混合物を気化する減圧蒸留処理や、蒸気透過処理のように、混合物を加熱することで気化する処理等を用いてもよい。
【実施例】
【0089】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0090】
1.混合物のフェノール濃縮
(実施例1)
[1]前処理工程
まず、水、フェノール、無機イオン性物質を混合し、フェノール濃度:2質量%、無機イオン性物質:1質量%の混合物(pH8.5)を用意した。
【0091】
また、逆浸透膜を用意し、逆浸透膜の供給側に混合物を配置して、25℃で逆浸透膜処理を行った。
【0092】
[2]加熱工程
次に、混合物を、60℃で加熱した。
【0093】
[3]気化工程
次に、浸透気化膜として、ポリアミド含有ポリマー(ポリアミド含有率35〜40%、)を用い、溶融温度180〜230℃の範囲で押出法により、厚さ100μmのフィルム状(平状)に成形した膜を用意した。
【0094】
次いで、浸透気化膜を浸透気化膜モジュールに取り付け、浸透気化膜の供給側に、加熱処理された混合物を供給した。次いで、浸透気化膜モジュールの透過側を減圧ポンプにより、1330Paに減圧した。そして、供給側および透過側の双方を60℃の雰囲気下に保持し、浸透気化を施した。
【0095】
[4]フェノール回収工程
次に、気化状態となった混合物を、1330Paのまま、22℃の雰囲気下に置いた。これにより、フェノール析出物を得た。
【0096】
[5]水回収工程
次に、混合物からフェノール析出物を除いた処理残渣を、1330Paのまま、−20℃のグリコール系の不凍液で冷却されたガラストラップ内に置いた。これにより、水析出物を得た。
【0097】
(実施例2、3)
[2]加熱工程、[3]気化工程、[4]フェノール回収工程の条件をそれぞれ、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてフェノールを濃縮した。
【0098】
(実施例4)
[1]前処理工程を省略した以外は、実施例1と同様にしてフェノールを濃縮した。
【0099】
(実施例5〜17)
[2]加熱工程、[3]気化工程、[4]フェノール回収工程および[5]水回収工程の条件を、それぞれ、表1に示すようにした以外は、実施例4と同様にしてフェノールを濃縮した。
【0100】
(実施例18)
[2]加熱工程を省略し、[4]フェノール回収工程の圧力を変更した以外は、実施例4と同様にしてフェノールを濃縮した。
【0101】
(実施例19)
[2]加熱工程を変更し、[3]気化工程において、浸透気化法による処理を行なわず、代わりに、蒸気透過法を用いて、表1に示す温度および圧力で混合物を処理する蒸気透過処理を施した以外は、実施例4と同様にしてフェノールを濃縮した。
【0102】
(実施例20)
フェノール濃縮を施す混合物として、フェノール濃度:7質量%、無機イオン性物質:1質量%の混合物(pH8.0)を用いた以外は、実施例4と同様にしてフェノールを濃縮した。
【0103】
(比較例1)
[4]フェノール回収工程の温度を−20℃に変更した以外は、実施例1と同様にしてフェノールを濃縮した。
【0104】
(比較例2)
[4]フェノール回収工程の温度を−20℃に変更した以外は、実施例4と同様にしてフェノールを濃縮した。
【0105】
(比較例3)
[4]フェノール回収工程の温度を−10℃に変更した以外は、実施例4と同様にしてフェノールを濃縮した。
【0106】
(比較例4)
[4]フェノール回収工程の温度を55℃に変更した以外は、実施例4と同様にしてフェノールを濃縮した。
【0107】
(比較例5)
[3]気化工程、[4]フェノール回収工程および[5]水回収工程の圧力を5320Paに変更した以外は、実施例4と同様にしてフェノールを濃縮した。
【0108】
(比較例6)
[3]気化工程、[4]フェノール回収工程および[5]水回収工程の圧力を93Paに変更した以外は、実施例4と同様にしてフェノールを濃縮した。
【0109】
(比較例7)
[3]気化工程の温度を150℃に変更した以外は、実施例4と同様にしてフェノールを濃縮した。
【0110】
(比較例8)
[3]気化工程の温度を5℃に変更した以外は、実施例4と同様にしてフェノールを濃縮した。
【0111】
(比較例9)
[4]フェノール回収工程の圧力を5187Paに変更した以外は、実施例4と同様にしてフェノールを濃縮した。
【0112】
(比較例10)
[4]フェノール回収工程の圧力を80Paに変更した以外は、実施例4と同様にしてフェノールを濃縮した。
【0113】
(比較例11)
[3]気化工程の圧力を5187Paに変更した以外は、実施例4と同様にしてフェノールを濃縮した。
【0114】
(比較例12)
[3]気化工程、[4]フェノール回収工程の圧力を80Paに変更し、3工程の合計時間を変更した以外は、実施例4と同様にしてフェノールを濃縮した。
【0115】
前記各実施例および各比較例のフェノール水溶液の構成、フェノール濃縮条件を表1、表2にまとめて示した。
【0116】
なお、表中、逆浸透膜処理を「逆浸透」、浸透気化法による処理を「浸透気化」、蒸気透過法を用いた処理を「蒸気透過」、気化工程、フェノール回収工程および水回収工程に要した合計時間を「3工程の合計時間」として示した。
【0117】
また、フェノール濃縮に用いた混合物については、表の記載の便宜上、前処理工程の欄に記載した。
【0118】
また、混合物のフェノール濃縮を行う前の混合物のフェノール濃度は、島津製作所製、キャピラリガスクロマトグラフシステムGC−2014を用いて測定した。
【0119】
また、各実施例および比較例1〜3、9で得られたフェノール析出物は、液体状態、固体状態またはこれらが混在した状態であった。
【0120】
2.フェノール析出物の評価
以上のようにして得られたフェノール析出物について、フェノール濃度を測定した。測定結果を表1、表2に示す。
【0121】
なお、得られたフェノール析出物のフェノール濃度は、島津製作所製、キャピラリガスクロマトグラフシステムGC−2014を用いて測定した。
【0122】
3.全透過流束の評価
以上のようにして得られたフェノール析出物および水析出物について、全透過流束を算出した。測定結果および算出結果を表1、2に示す。
【0123】
なお、全透過流束は、以下の関係式から求めた。
全透過流束 = 透過量/浸透気化膜の有効面積
【0124】
【表1】
【0125】
【表2】
【0126】
表1、表2から明らかなように、本発明のフェノール濃縮方法を用いることで、高濃度のフェノールを効率よく濃縮し得ることが認められた。また、希薄なフェノールおよび水の混合物であっても、フェノールの濃縮率を高くすることが可能であった。
【0127】
一方、各比較例のフェノール濃縮方法では、フェノール濃縮率が低いことが認められた。また、比較例4〜8、10〜12では、フェノール析出物を得ることができなかった。
【符号の説明】
【0128】
1…浸透気化膜
100…フェノール濃縮装置
110…混合物タンク
115…供給管路
120…浸透気化膜モジュール
121…筐体
122…供給側空間
123…透過側空間
125…透過管路
126…排出管路
130…フェノール析出物回収ユニット
135…透過管路
140…不透過物貯留タンク
150…前処理モジュール
160…加熱ユニット
170…水析出物回収ユニット
10、20、25、30…混合物
40…フェノール析出物
41…処理残渣
50…水析出物
S1…前処理工程
S2…加熱工程
S3…気化工程
S4…フェノール回収工程
S5…水回収工程
図1
図2
図3