(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
紙基材の両面に熱可塑性樹脂層を有し、紙容器の胴部材に用いられる積層体であって、この紙容器が筒状の前記胴部材と、この胴部材の下部に一体化した底部材とを備えて構成されるものであり、前記胴部材は、前記積層体の一方の側端縁を他方の側端縁に重ねて筒状に構成されていると共に、それぞれの側端縁は前記熱可塑性樹脂層によって覆われており、さらに前記胴部材の上端縁を1周以上巻き込んでフランジ部を形成させたものである前記積層体において、
前記熱可塑性樹脂層がポリエチレン樹脂層を含む多層構造を有しており、かつ、このポリエチレン樹脂層がエポキシ化大豆油、エポキシ樹脂、ポリイソシアネートから選択される1種以上を含む融点122℃以上のポリエチレン樹脂から構成されていて、しかも、押し出し法によって形成されたものであり、
前記ポリエチレン樹脂層が、融点122℃未満の低密度ポリエチレン樹脂を含まないことを特徴とする積層体。
多層構造の前記熱可塑性樹脂層が前記ポリエチレン樹脂層に対して別の多層フィルムが積層されて構成されており、この多層フィルムが、あらかじめ未延伸ポリプロピレンフィルムとポリエチレンテレフタレートフィルムとが貼り合わされた多層フィルムか、または、バリアフィルムと未延伸ポリプロピレンフィルムとが貼り合わされた多層フィルムのいずれかから選択される1種以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の積層体。
前記バリアフィルムがベースフィルムに無機酸化物または金属を蒸着したフィルムであって、このベースフィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムまたはナイロンフィルムであることを特徴とする請求項5に記載の積層体。
【背景技術】
【0002】
コーヒー等の飲料を充填し、上部の開口部を蓋材で密封して使用するカップ状紙容器は、紙を基材とし、両面にポリエチレン等の熱可塑性樹脂層を設けた積層材料を所定の形状としたブランクを、胴部に接合部を設けて成形したカップ状紙容器が一般的であった。
【0003】
酸素や水蒸気等に対するバリア性を必要とする場合には胴部の積層材料として、例えば、表側から、ポリエチレン(PE)/紙基材/ポリエチレン(PE)/アルミニウム箔/ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム/ポリエチレン(PE)のような層構成、またはポリエチレン(PE)/紙基材/ポリエチレン(PE)/金属酸化物蒸着層を有するプラスチックフィルム/ポリエチレン(PE)のような層構成の積層材料を用いてカップ状に成形していた。
【0004】
そして、カップ状紙容器の接合部のバリア性を確保するため、例えば、カップ状紙容器の胴部を構成する胴部材の接合部の内側は、先端から所定の長さだけ、積層材料の厚みの半分を削除(スカイブ)し、削り取った残りの半分を削除面が内側になるように折り返し(ヘミング)、紙基材の端面が露出しないようにして保護を行う方法が知られている。
【0005】
しかしながら、紙基材の端面にスカイブヘミング加工を行うためには、あらかじめ打ち抜いた胴部材ブランクをカップ状紙容器に成形する前に、ブランクの側端縁を特別の機械を用いてスカイブヘミング加工をする必要がある。そのため複雑な加工工程を経なければならず、また、紙を削除することによる紙粉の発生があり、周囲の汚染の改善が要望されていた。
【0006】
また、スカイブ端面を一直線上にそろえる必要があるため、カップ成形機でスカイブヘミング加工をすると同時にカップ成形をすることは困難であった。
【0007】
そこで、スカイブヘミング加工を行わずにバリア性に優れたカップ状紙容器を作製する方法として、胴部材を構成する紙基材の端面がフィルムで覆われたブランクを用いてカップ状紙容器を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、少なくとも内面に熱可塑性樹脂層が設けられた紙を基材とする積層シートを所定の形状に打ち抜き、一方の側端縁に外方に延出する樹脂部を、基材の端面に沿って、密着被覆させたブランクを、前記ブランクの樹脂部を密着被覆させた側端縁を、他方の側端縁の内側となるように重ね合わせ、密着することにより胴部貼り合わせ部を形成することが提案されている(特許文献2参照)。
【0009】
しかし、この紙基材の端面を保護したバリア性を有するカップ状紙容器においては、胴部貼り合わせ部の内側の端縁は、全体にわたって熱可塑性樹脂層が紙基材から延出して作製されている。このように、紙基材から延出した熱可塑性樹脂層のフィルムは、カップ成形する際に,不規則に成形されてしまい、紙基材の端面を十分に被覆するという本来の目的を十分果たせないことがあった。
【0010】
また、カップ状容器としての仕上がりが悪く、外観的に不具合が生じてしまう等の問題があった。
【0011】
さらに、カップ状紙容器にはその開口部に胴部材の上端縁部を1周以上外側に巻き込ん
でフランジ部が形成されている。このように、開口部にフランジ部を設けることにより、外側から力が加わった場合でも、紙容器の変形を抑えることができる。フランジ部の強度が十分であれば、このフランジ部の上面に蓋材を重ね、密封することができる。
【0012】
また、蓋材を密封しやすくするため、フランジ部を上下方向から加圧し、扁平状態にすることが行われている。この扁平にする手段には、加熱加圧する方法や超音波による方法が用いられている。
【0013】
開口部に胴部材の上端縁部を巻き込んでフランジ部が形成されたカップ状容器は、フランジ部で、基材の紙の厚みによる段差が生じる。そのため、フランジ部の上面に蓋材を重ね、そのまま加熱シールした場合、前記段差により密封を確実に行うことが出来ない場合があった。特に、フランジ部を扁平状態にした場合には基材の厚みによる影響が大きかった。
【0014】
前記の蓋材による密封を確実に行うためにはフランジ部の上面の段差を埋めるための別の樹脂等からなる充填部材を設け、段差を解消する方法や段差部の位置の密封シールを、部分的に行なう方法もあるが、工程と材料の増加は避けられなかった。
【0015】
そこで特許文献3では、開口部に胴部材を巻き込んでフランジ部が形成されているカップ状容器、特に、扁平状態のフランジ部が形成されているカップ状容器において、蓋材の密封が容易で、かつ、密封性やバリア性が優れたカップ状容器を提供する方法が提案されている。
【0016】
ここでは、重ね合わせ部の内側に位置する側端縁に、延出した熱可塑性樹脂層からなる樹脂部フィルムがはみだして形成されている胴部材を用いて、容器を成形する際に、紙基材端面の被覆に支障をきたさず、かつ、仕上がり、外観の綺麗な紙カップを、連続状の紙基材から直接製造する方法が開示されている。
【0017】
ここで提案されている紙容器は、少なくとも内面に熱可塑性樹脂層が設けられた紙を基材とする積層シートから構成されたブランクの、一方の側端縁を他方の側端縁に重ね合わせて胴部貼り合わせ部、および上端縁を1周以上巻き込み、フランジ部を形成させた筒状の胴部材と、該胴部材の下部に底部材を一体化したカップ状紙容器において、前記ブランクの重ね合わせ部の内側に位置する側端縁は、前記基材の側端縁から延出する樹脂部を有し、かつ、両側端縁上部にそれぞれ切欠き部を設けたことを特徴とするカップ状紙容器である。
【0018】
上記の構成の紙容器をレトルト殺菌時の加熱に耐えるようにした紙容器の構成、特に紙に穴あけ加工しエクストルーダーでフィルムを窓貼りし、フィルムを折り、紙端面を保護し、耐水性をあげたカップを作成するレトルトカップの積層体の層構成としては、作成工程での熱可塑性樹脂層の発泡防止と密着性確保の必要とレトルト殺菌時の耐熱性の観点から、たとえば現在は、(CPP)/押出しPP/(CPP//PET//紙//PET//CPP)/押出しPP/(CPP//バリアフィルム//CPP)のような複雑な構成となっている(
図2(B)参照)。なおCPPは無延伸ポリプロピレンの、PPはポリプロピレンの略である。
【0019】
このような複雑な構成であると、積層体が硬く(剛性があり過ぎ)胴部材の端面保護のための端面延設フィルム折りやボトム形成等の成形性が悪く、液洩れするカップ等の不良が発生するという問題がある。
【0020】
このように複雑な構成となる理由は、レトルト殺菌時の温度に耐えるためには、通常の押出しPEを用いることができず、押出しPPを用いざるを得ないためである。ところが
押出しPPは、PETに対する接着性がないため、間にCPPを介在させる必要が生じるのである。
【0021】
出願人の出願になる特願2012−132628は、この問題を解決する目的でなされたものであり、押出しPPの替わりに融点が122℃以上の押出しPEを用いることにより、層構成の簡素化を目指したものである。
【0022】
この発明によれば、層構成は、例えば以下のようになる。なおEXPEは押出しPEの意味である(以下同じ)。また//は、接着剤またはアンカー剤を示す。
すなわち、(CPP//PET//EXPE)/EXPE//紙//EXPE/(EXPE//バリアフィルム//CPP)となり、従来に比較すると層数が減少した。
【0023】
しかしながら、依然として複雑な構成であることは否めず、積層体の層構成のさらなる簡素化が望まれていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の解決しようとする課題は、レトルト用紙容器において、積層体に柔軟性があり、胴部材の端面保護のための端面延設フィルム折りやボトム形成等の成形性が良好で、レトルト殺菌時にも液洩れのしない紙容器を作成することができる簡素な層構成の積層体とそれを用いた紙容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、紙基材の両面に熱可塑性樹脂層を有し、紙容器の胴部材に用いられる積層体であって、この紙容器が筒状の前記胴部材と、この胴部材の下部に一体化した底部材とを備えて構成されるものであり、前記胴部材は、前記積層体の一方の側端縁を他方の側端縁に重ねて筒状に構成されていると共に、それぞれの側端縁は前記熱可塑性樹脂層によって覆われており、さらに前記胴部材の上端縁を1周以上巻き込んでフランジ部を形成させたものである前記積層体において、
前記熱可塑性樹脂層がポリエチレン樹脂層を含む多層構造を有しており、かつ、このポリエチレン樹脂層がエポキシ化大豆油、エポキシ樹脂、ポリイソシアネートから選択される1種以上を含む融点122℃以上のポリエチレン樹脂から構成されていて、しかも、押し出し法によって形成されたものであ
り、
前記ポリエチレン樹脂層が、融点122℃未満の低密度ポリエチレン樹脂を含まないことを特徴とする積層体である。
【0027】
紙基材の両面に施される熱可塑性樹脂層として、エポキシ化大豆油、エポキシ樹脂、ポリイソシアネートから選択される1種以上を含む融点が122℃以上の押出し法によるポリエチレン樹脂を用いることによって、レトルト殺菌時の温度で完全に溶融しないで紙基材および隣接層との接着状態を維持し、ポリプロピレン樹脂を用いた場合の問題点である容器形成工程での発泡等も防止することができる積層体が、より簡素な、層構成(
図2(A)参照)の少ない工程で容易に得られる。
【0029】
押出し成形性を向上させるために押出し成膜に用いるポリエチレン樹脂には通常より低融点
の低密度ポリエチレン樹脂をブレンドする場合が多い。
【0030】
このように低融点のポリエチレン樹脂成分を含む樹脂を用いた場合には低溶融粘度のために容器の成型時やレトルト殺菌加工時に流出や発泡を起こして層間の剥離を来たすことが考えられる。
【0031】
本発明の積層体にあっては、前記熱可塑性樹脂層に用いるポリエチレン樹脂が122℃よりも低融点
の低密度ポリエチレン樹脂を含まないポリエチレン(EXPE)樹脂の層を用いることによってこのような層間剥離を回避することが出来るようになる。
【0032】
本発明の請求項
2に係る積層体は、前記ポリエチレン樹脂が複数の融点を持たないポリエチレン樹脂であることを特徴とする請求項
1に記載の積層体である。
【0033】
前記熱可塑性樹脂層に用いるポリエチレン樹脂が複数の融点を含まないポリエチレン樹脂であることによって、この樹脂層が前記ポリエチレン樹脂以外の樹脂成分を含まないブロードな分子量分布を有するポリエチレン樹脂からなるものと同様な熱溶融挙動を示すことが推定され、低溶融粘度のために容器の成型時やレトルト殺菌加工時に流出や発泡を起こして層間の剥離を起こすという問題を効果的に防止できる。
【0034】
本発明の請求項
3に係る積層体は、前記ポリエチレン樹脂の密度が0.928以上であることを特徴とする請求項1
または2に記載の積層体である。
【0035】
前記熱可塑性樹脂層に用いるポリエチレン樹脂の密度を通常の低密度ポリエチレン樹脂あるいは中密度ポリエチレン樹脂と同等の密度とすることによって上記以外の作業性や物性を通常のポリエチレン樹脂と同様のものとすることが出来る。
【0036】
本発明の請求項
4に係る積層体は、多層構造の前記熱可塑性樹脂層が前記ポリエチレン樹脂層に対して別の多層フィルムが積層されて構成されており、この多層フィルムが、あらかじめ未延伸ポリプロピレンフィルムとポリエチレンテレフタレートフィルムとが貼り合わされた多層フィルムか、または、バリアフィルムと未延伸ポリプロピレンフィルムとが貼り合わされた多層フィルムのいずれかから選択される1種以上であることを特徴とする請求項1から
3のいずれか1項に記載の積層体である。
【0037】
本発明の請求項
5に係る積層体は、層構成中に、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロンフィルムまたはバリアフィルムから選択される1種以上が積層されていることを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の積層体である。
【0038】
層構成中にPETフィルム、Nyフィルムまたはバリアフィルムが積層されていることでバリア性を確保できると同時に成型時あるいは搬送時に傷つき防止の効果も期待できる。また、層構成中にPETフィルム、Nyフィルムまたはバリアフィルムが積層されていることで、仮にレトルト殺菌時にポリエチレン樹脂が溶融したとしても内容物中あるいはレトルト釜に溶け出すことがない。
【0039】
本発明の請求項
6に係る積層体は、前記バリアフィルムがベースフィルムに無機酸化物または金属を蒸着したフィルムであって、このベースフィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムまたはナイロンフィルムであることを特徴とする請求項
5に記載の積層体である。
【0040】
上記の効果を確実にするためには、バリアフィルムはPETフィルムまたはNyフィルムをベースとした無機酸化物蒸着フィルムまたは金属蒸着フィルムであることが好ましい。
【0041】
また、請求項
7に記載の発明は、請求項1から
6のいずれか1項に記載の積層体を用いたレトルト用の紙容器である。
【発明の効果】
【0042】
本発明に係る積層体を用いた紙容器は、たとえば低圧スラリー法により製造された特殊なポリエチレン樹脂にエポキシ化大豆油、エポキシ樹脂、ポリイソシアネートから選択される1種以上を添加した融点122℃以上のポリエチレン樹脂を紙基材の両面に積層することによって従来のポリプロピレン樹脂を用いた場合よりもはるかに簡素な製造工程を実現することができる。
【0043】
レトルト殺菌時の加工温度に耐える押出しポリプロピレン樹脂を用いた従来の方法では紙基材と直接積層するのに困難があるため、たとえばPETフィルムにCPPフィルムを貼り合せたフィルムを介在させる必要があり、構成が複雑であり、さらに加工性にも問題があった。
【0044】
たとえば前記熱可塑性樹脂の紙基材の胴部接合部に延設された樹脂部を、前記基材の外面側に折り返した構成とする場合に、さらに、ガスバリア層を含む熱可塑性樹脂層の場合等に構成層が多く厚みや剛性も大きいので折り曲げ加工が困難であった。
【0045】
本発明によれば、従来の構成に比べて上記部分のCPPフィルムとPETフィルムの積層が省略できる上、さらに従来のEXPEでは直接PETに接着することができないため、予めPET面にEXPE層を形成しておく必要があったが、上記添加物を添加することにより、直接PET面に接着するため、さらに積層数が少なくて済み、紙容器を形成する積層体の剛性が小さく加工性が向上した積層体を得ることが出来る。
【0046】
また、紙基材に直接押出し法で積層する熱可塑性樹脂層として従来のポリエチレンに代えて特殊な押出し用ポリエチレンを使用しているために、カップ加工時の熱による流れ出しが少なく、カップ加工時に樹脂層がなくなり、接着が弱くなる等の問題がなく安定して加工することが出来る。
【0047】
この効果は特殊な押出し用ポリエチレン樹脂として、分子量分布の広い樹脂を用いることによって、ネックインが小さいなど押出し適性が良好であるようにすることが出来るのでさらに向上することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明の実施形態の一例としてカップ状紙容器の場合について、必要に応じて図面を参照しながら以下に説明する。
【0050】
本実施形態の紙容器は、両面に熱可塑性樹脂層が設けられた紙を基材とする積層体から構成されたブランクの、一方の側端縁を他方の側端縁に重ね合わせて胴部貼り合わせ部、および上端縁を1周以上巻き込み、フランジ部を形成させた筒状の胴部材と、該胴部材の下部に底部材を一体化したカップ状紙容器であって、前記ブランクの重ね合わせ部の内側に位置する側端縁は、前記基材の側端縁から延出する樹脂部を有し、かつ、両側端縁は、前記熱可塑性樹脂層によって覆われており、両側端縁の上部にそれぞれ切欠き部を設けたカップ状紙容器である。
【0051】
本発明に係る積層体は、前記熱可塑性樹脂層がポリエチレン樹脂層を含む多層構造を有しており、かつ、このポリエチレン樹脂層がエポキシ化大豆油、エポキシ樹脂、ポリイソシアネートから選択される1種以上を含む融点122℃以上のポリエチレン樹脂から構成されていて、しかも、押し出し法によって形成されたものであることを特徴とする。
【0052】
前記内面に設けられた熱可塑性樹脂層を、ガスバリア性層が含まれた構成とすることにより、内容物の保存性が優れたカップ状紙容器が得られる。また、 前記樹脂部を、前記基材の外面側または内面側に折り返した構成とすることにより、胴部貼り合わせ部の紙基材端部からの浸水を防止するために必要な被覆樹脂量が確保でき、さらに、ガスバリア層を含む熱可塑性樹脂層の場合、前記ガスバリア層の端面が露出しないカップ状紙容器が得られる。
【0053】
また、前記樹脂部を、側端縁の全長に設けることで、フランジ部以外の胴部貼り合わせ部の密封性の優れたカップ状紙容器が得られる。また、前記樹脂部は、前記切欠き部を含む箇所に設けることで、フランジ部の密封性がさらに優れたカップ状紙容器が得られる。
【0054】
図5、
図6、
図7に示したように、本発明の紙容器はたとえば紙基材(1)に胴部貼り合わせ部となる側端縁部の所定の位置に所定の形状の長窓(13、14)を打ち抜く第一の打ち抜き工程と、紙基材(1)の両面に長窓を含めて熱可塑性樹脂層(40、41)を形成する樹脂部形成工程と、ブランクの胴部側端縁部に外方に延出する樹脂部を残してさらに、ブランクの両側端縁上部に切欠き部を設けて外寸を枚葉に打ち抜き成型用のブランク(10)とする第二の打ち抜き工程と、さらに、必要に応じて前記外方に延出する樹脂部を紙基材の外側または内側に折り返す、折り返し工程(
図8、
図9参照)と、前記ブランクの樹脂部を形成した側端縁を、他方の側端縁の内側となるように重ね合わせ、密着して胴部貼り合わせ部(15)を形成する胴部形成工程と、前記胴部下部に、両面に熱可塑性樹脂層が設けられた紙を基材とする積層体を所定の形状に打ち抜いた底部材(20)を
一体化する底部形成工程と、前記胴部上端縁を1周以上巻き込み、フランジ部(16)を形成するフランジ部形成工程と、前記巻き込んだフランジ部上面をたとえば超音波によって平坦にする平坦化工程により作成することが出来る。このカップ状紙容器はさらに内容物を充填した後に熱圧等で蓋材をフランジ部(16)に接着してからレトルト殺菌を行い商品とする。
【0055】
本発明の一実施形態について以下に詳細に説明する。本発明の特徴は上記樹脂部形成工程で用いる熱可塑性樹脂の限定にあるので、熱可塑性樹脂層の設けられた積層体を中心に説明してその他は必要に応じて省略する。
【0056】
本発明の紙容器は、例えば、表裏両面に熱可塑性樹脂層(40、41)が設けられた紙を基材(1)とする積層体(3)から構成されている。
【0057】
図1に示すように、胴部材(18)は、両側端縁上部にそれぞれ切欠き部(31)(32)を設けた胴部材ブランク(10)の、一方の端縁(11)をもう一方の端縁(12)に重ね合わせて胴部貼り合わせ部(15)を形成させて円筒形状とする。
【0058】
また、底部材(20)は、円形状で、下向きに起立させた周縁部(21)を有する。そして、前記胴部材(18)の下部内面に、底部材(20)の周縁部(21)の外面を接合させる。
【0059】
さらに周縁部(21)を覆うように、前記胴部材(18)の下端縁部を内方に折り曲げ、底部材の周縁部(21)内面に接合させて環状脚部(22)を形成させる。
【0060】
一方、胴部材の上部周縁を外方に、1周以上巻き込み、フランジ部(16)を形成させたカップ状紙容器とする。
【0061】
なお、このような構造は、テーパー状のカップ状紙容器に限定されず、円筒状のカップ状紙容器であっても同様である。また、胴部材ブランク(10)の胴部貼り合わせ部(15)の構造は角柱状の紙容器においても紙基材に対するバリア性を確保する上で応用できる。
【0062】
そして、
図3に示すように、胴部材ブランクの一方の端縁(11)には、熱可塑性樹脂層(40)が、紙基材(1)の側端縁より外方に延出した樹脂部(4a)が形成されている。
【0063】
この紙基材(1)の側端縁より外方に延出した熱可塑性樹脂層(40、41)は通常胴部材ブランクの側端縁に相当する部分に長窓状の穴を形成したのちに紙基材(1)の両面からポリプロピレン樹脂等のレトルト殺菌温度に耐えられる熱可塑性樹脂を押出し法で形成した後に所定の形状に打ち抜いて作成される。
【0064】
該熱可塑性樹脂層としてポリプロピレン樹脂を用いた従来のレトルト用紙容器においては、ポリプロピレン樹脂の押出し温度が高いために紙基材の表面に直接押出すと紙基材中の水分が発泡する等の現象を引き起こし、層間での剥離などの不都合が発生することが多かった。
【0065】
このポリプロピレン樹脂の代わりに通常の押出し用の低密度ポリエチレン樹脂を用いた場合には紙基材との密着性は確保されるが耐熱性の不足から成型時やレトルト殺菌時にやはり層間での剥離などの不都合を引き起こしてしまうことがあった。
【0066】
そのために、従来は紙基材と直接貼り合せる面にポリプロピレン樹脂と例えばPETフィルムを積層したフィルムを介在させてポリプロピレン樹脂の押出しによってその外側に配置されるバリアフィルム等を貼り合せることが出来るようにしていた。
【0067】
しかしながら、この方法では積層体を構成する層の数が多くなって積層体の剛性が上がってしまい、胴部材ブランクの打ち抜きやその後の端縁貼り合せ時の熱可塑性樹脂層の折り曲げ等の加工が困難になり紙容器の成形に支障を来たすことがあった。
【0068】
紙容器に用いる積層体の加工工程と構成の簡素化のために、鋭意検討の結果、本発明者は、紙基材と押出し法で直接貼り合せる熱可塑性樹脂として融点と融点ピークについて限定されたポリエチレン樹脂を用い、さらにこのポリエチレン樹脂にエポキシ化大豆油、エポキシ樹脂、ポリイソシアネートから選択される1種以上を添加することにより、紙とPETとを直接貼り合わせることが可能となることを見出し、本発明の完成に至った。
【0069】
本発明に係る積層体(3)は、紙基材(1)の両面に熱可塑性樹脂層(40、41)を有し、紙容器の胴部材(18)に用いられる積層体であって、この紙容器が筒状の胴部材(18)と、この胴部材の下部に一体化した底部材(20)とを備えて構成されるものであり、胴部材(18)は、積層体(3)の一方の側端縁を他方の側端縁に重ねて筒状に構成されていると共に、それぞれの側端縁は前記熱可塑性樹脂層によって覆われており、さらに前記胴部材の上端縁を1周以上巻き込んでフランジ部(16)を形成させたものである前記積層体(3)において、前記熱可塑性樹脂層がポリエチレン樹脂層を含む多層構造を有しており、かつ、このポリエチレン樹脂層がエポキシ化大豆油、エポキシ樹脂、ポリイソシアネートから選択される1種以上を含む融点122℃以上のポリエチレン樹脂から構成されていて、しかも、押し出し法によって形成されたものであることを特徴とする積層体である。
【0070】
さらに、該熱可塑性樹脂層に用いるポリエチレン樹脂は密度が0.928以上で融点のピークが単一であり、分子量分布が広いほうが望ましい。これによって溶融粘度が高く、ネックインが小さい等押し出し適性が良好なポリエチレン樹脂が得られる。融点のピークが単一であるためには、通常押し出し適性の改善のために行われる低融点樹脂のブレンドがないことを意味している。
【0071】
図2(A)に示したように、紙基材(1)の表裏面に設けられた熱可塑性樹脂層(40、41)を構成する層としては上記の押し出し用ポリエチレン(EXPE)樹脂に加えて通常容器の外面と内面の機械的強度の補強や酸素や水蒸気等のバリア性の強化のためにいくつかの層を設けることが出来る。
【0072】
図3に示した、端部から延出する樹脂部(4a)は、紙基材(1)の端部から外方に延出しただけでなく、
図3(c)に示すように、紙基材(1)の近傍で、紙基材(1)の外面側に折り返した折り返し樹脂部(4b)の構成とすることが好ましい。このように、樹脂部(4b)を、基材(1)の外面側に折り返した構成とすることで、貼り合わせ部(15)における樹脂量が確保でき、貼り合わせ部の密封性が良好となる。と同時に紙基材および樹脂部端面のバリア性を強化することが出来るようになる。
【0073】
図4には、端部から延出する樹脂部(4c)を、基材(1)の端部から外方に延出しただけでなく、図に示すように、基材(1)の近傍で、基材(1)の内面側に折り返した折り返し樹脂部(4d)の構成とした場合を示した。このように、樹脂部(4d)を、基材(1)の内面側に折り返した構成とすることで、貼り合わせ部(15)における樹脂量が確保でき、貼り合わせ部の密封性が良好となる。と同時に紙基材および樹脂部端面のバリア性を強化することが出来るようになる。
【0074】
このような構造を有している本発明のカップ状紙容器は、胴部貼り合わせ部(15)の内側に位置する紙基材の端面が、樹脂部(4a)または折り返し樹脂部(4b)で保護されているので、容器に充填された内容物が紙基材端面から浸透することがない。
【0075】
前記熱可塑性樹脂層は、
図3に示すように、内面側だけでなく、外面側にも設けた構成が通常である。このように、紙基材(1)の両面に熱可塑性樹脂層(40)(41)を設けることにより、基材端面に形成される樹脂部(4a)が、前記両面の熱可塑性樹脂層(40)(41)が外縁で一体化された状態で形成される。
【0076】
図4に示す例では、胴部材ブランク(10)は、胴部貼り合わせ部(15)において容器内面側に位置する一方の端縁(11)が、紙基材内面側の熱可塑性樹脂層(40)と紙基材外面側の熱可塑性樹脂層(41)が、紙基材(1)の側端縁より外方に延出した樹脂部(4a)を、基材(1)の近傍で、基材(1)の外面側に折り返した折り返し樹脂部(4b)を備えた構成とする。
【0077】
また、胴部貼り合わせ部(15)において容器外面側に位置するもう一方の端縁(12)が、紙基材内面側の熱可塑性樹脂層(40)と紙基材外面側の熱可塑性樹脂層(41)が、紙基材(1)の側端縁より外方に延出した樹脂部(4c)を、基材(1)の近傍で、基材(1)の外面側に折り返した折り返し樹脂部(4d)を備えた構成とする。
【0078】
このように、樹脂部(4b)は、樹脂部(4a)を基材(1)の外面側に折り返した構成とすることで、胴部貼り合わせ部(15)における樹脂量が確保でき、貼り合わせ部内面の密封性が良好となる。
【0079】
また、樹脂部(4d)は、樹脂部(4c)を基材(1)の内面側に折り返した構成とすることで、胴部貼り合わせ部(15)における樹脂量が確保でき、貼り合わせ部外面の密封性が良好となる。この樹脂部(4a)の端部と樹脂部(4c)の端部との間は空隙であってももちろん重なっていても構わない。
【0080】
もしくは、図示していないが樹脂部(4d)は、樹脂部(4c)を基材(1)の外面側に折り返した構成とすることも可能である。
【0081】
さらに、胴部貼り合わせ部の外部に対するエッジプロテクトの必要性の程度によっては、
図3(c)に示したように胴部貼り合わせ部(15)において容器外面側に位置する紙基材のもう一方の端縁(12)が、紙基材内面側の熱可塑性樹脂層(40)と紙基材外面側の熱可塑性樹脂層(41)が、紙基材(1)の側端縁より外方に延出した樹脂部(4c)を、容器内面側の基材(1)の外面側の熱可塑性樹脂(41)に重ねて圧着した構成とすることも出来る。
【0082】
このような構造を有している本発明のカップ状紙容器は、胴部貼り合わせ部(15)の内側に位置する紙基材の端面が、折り返し樹脂部(4b)により保護されており、胴部貼り合わせ部(15)の外側に位置する紙基材の端面が、折り返し樹脂部(4d)または熱圧着により封止された樹脂部(4c)で保護されているので、容器に充填された内容物が紙基材端面から浸透することがないのみならず、容器外部からの浸透をも防止するエッジプロテクト効果を得ることが出来る。
【0083】
さらに、紙基材の両面に熱可塑性樹脂層(40)、(41)を設けることと、特に外面の熱可塑性樹脂層の層構成中に耐熱耐磨耗性の優れたポリエチレンテレフタレート又はナイロン層を設けることによって紙基材のエッジのみならず表面ピンホール等からの水の浸透をも効果的に防止することが出来る。
【0084】
このように、紙基材の両面に熱可塑性樹脂層(40)、(41)を設けることにより、基材端面に外延した樹脂部(4a)、(4c)が、前記両面の熱可塑性樹脂層(40)(41)が外縁で一体化された状態で形成される。
【0085】
そして、前記樹脂部(4a)を、前述のように紙基材の端縁から外方に延出した構成でなく、紙基材の外面側に折り返した折り返し樹脂部(4b)の構成とするとともに、前記樹脂部(4c)を、紙基材の端縁から外方に延出して熱圧着する構成かまたは、紙基材の外面側もしくは内面側に折り返した折り返し樹脂部(4d)の構成とする。
【0086】
このように、容器内面側の胴部材の貼り合わせ樹脂部を、基材の外面側もしくは内面側に折り返した折り返し樹脂部(4b)の構成とすることによって、胴部貼り合わせ部の段差が、前記折り返し樹脂部(4b)で埋まり、段差のない構成とすることができるうえ、紙基材(1)と前記樹脂部の端面が紙容器内部に露出しない構成とすることができる。
【0087】
また、前記樹脂部(4c)を、紙基材の端縁から外方に延出して熱圧着する構成とすることによって、胴部貼り合わせ部の段差が、前記外延樹脂部(4c)で埋まり、段差のない構成とすることができるうえ、紙基材(1)が紙容器外部に露出しない構成とすることができる。
【0088】
また、前記樹脂部(4c)を、紙基材の端縁から紙基材の内面側に折り返した折り返し樹脂部(4d)の構成とすることによって、胴部貼り合わせ部の段差が、前記折り返し樹脂部(4d)で埋まり、段差のない構成とすることができるうえ、紙基材(1)とさらに前記樹脂部の端面が紙容器外部に露出しない構成とすることができる。
【0089】
本発明の紙容器でカップ状の紙容器には通常フランジ部(16)が設けられており、胴部材(18)の貼り合わせ部(15)の上端においては、両側端縁上部にそれぞれ切欠き部(31)(32)を設けた胴部材ブランク(10)を用いることによって、胴部材の上部周縁を外方に1周以上巻き込んで、少なくとも3重構成のフランジ部を形成した際、貼り合わせ部においても、基材が、前記貼り合せ部以外の部分と同様の3重構成の巻き込み状態となる。
【0090】
また、バリア層を含めた樹脂部(4a)を折り返した樹脂部(4b)の構成とすることで、バリア層(2a)の端面が、容器内部に露出しない構成となり、内容物がバリア層と接触することがないようにすることができ、内容物の保存に悪影響を及ぼさない。
【0091】
このように、折り返し樹脂部(4b)、(4d)を、樹脂部先端が、貼り合わせ部内側基材外面側もしくは貼り合わせ部外側基材外面側もしくは内面側に折り返した構成となっていることにより、前記熱可塑性樹脂層(40)が、異なる材料のバリア層(2a)を含む構成であっても、胴部を形成した際、胴部貼り合わせ部(15)において貼り合わせのための一定の樹脂量が確保でき、紙基材(1)の端面の保護ばかりでなく、胴部貼り合わせ部(15)の紙基材による段差を解消することができる。
【0092】
ここで、この切欠き部(31)(32)の形状を異なる形状とすることにより、少なくとも3重構成のフランジ部(16)の上面を平坦にしても、フランジ部上面に、前記貼り合せ部の位置に生じる段差を解消することができる。
【0093】
本発明の紙容器においては、前記熱可塑性樹脂層(40)が、バリア層を含む層とする構成とすることもできる。このように、バリア層(2a)を含む構成とすることにより、紙基材(1)の表面及び端面もバリア層によって保護されるので、バリア性に優れたカップ状紙容器とすることができる。
【0094】
また、バリア層を含めた樹脂部(4a)を折り返した樹脂部(4b)の構成とすることで、バリア層(2a)の端面が、容器内部に露出しない構成となり、内容物がバリア層と接触することがないようにすることができ、内容物の保存に悪影響を及ぼさない。
【0095】
このように、折り返し樹脂部(4b)、(4d)を、樹脂部先端が、貼り合わせ部内側
基材外面側もしくは貼り合わせ部外側基材外面側もしくは内面側に折り返した構成となっていることにより、前記熱可塑性樹脂層(40)が、異なる材料のバリア層(2a)を含む構成であっても、胴部を形成した際、胴部貼り合わせ部(15)において貼り合わせのための一定の樹脂量が確保でき、紙基材(1)の端面の保護ばかりでなく、胴部貼り合わせ部(15)の紙基材による段差を解消することができる。
【0096】
次に、本発明の紙容器の製造方法の一例について、カップ状紙容器の場合について、胴部材ブランクの製造方法を含めて説明する。
【0097】
先ず、ウェブ状の紙基材(1)に扇形状の胴部材ブランク(10)を複数個並べて割付け、印刷すると共に、胴部材ブランクの両方の端縁(11)、(12)に、その端縁を含めて外方の部分を長窓(13)、(14)として穿設する(
図5(a),(b)参照)第1打ち抜き工程を行う。
【0098】
次に胴部材ブランク(10)の印刷と長窓(13)、(14)の穿設がなされた紙基材(1)の内側面に熱可塑性樹脂層(40)、外側面に熱可塑性樹脂層(41)を形成する。
【0099】
図2(A)に示したように、内側面に形成する熱可塑性樹脂層(40)は、内側からCPP//バリアフィルム//EXPEの層からなり、あらかじめ準備したCPP//バリアフィルムの構成のフィルムを紙基材(1)にEXPEで貼り合せる。
【0100】
外面側に形成する熱可塑性樹脂層(41)は外側からCPP//PET//EXPEの層からなり、あらかじめ準備したCPP//PETの構成のフィルムを紙基材(1)にEXPEで貼り合せて積層体を作成する。
【0101】
この積層体の層構成は外側から(CPP//PET)/EXPE//紙基材//EXPE/(バリアフィルム//CPP)となる(
図2(A)参照)。
【0102】
紙基材に直接押し出しても接着が確保できてレトルト殺菌時の加熱にも耐性のある特定のEXPEを用い、さらにこのEXPEにエポキシ化大豆油、エポキシ樹脂、ポリイソシアネートから選択される1種以上を添加したことにより、PETやバリア層にも直接接着するものとすることができる。
【0103】
このため、従来の押し出しラミネートにEXPPを用いた場合(
図2(C)参照)や、エポキシ化大豆油、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート等を含まないEXPEを用いた場合(
図2(B))に比べてより簡素な構成と工程での製造が可能になり、さらにブランク作成後の加工工程でも折り曲げのし易いことから安定した加工が出来るようになった。
【0104】
この時の熱可塑性樹脂貼り合わせ工程で紙基材(1)の長窓部分にも同時に、前記の熱可塑性樹脂層の積層した樹脂部(4a)、(4c)を形成させる(
図6(a),(b)参照)。
【0105】
つぎに第2打ち抜き工程で前記積層体の紙基材(1)から外方に延出して設けられた樹脂部(4a)、(4c)を含む長窓部分を形成させた胴部材ブランク(10)の不必要部分を連続してカットする。
【0106】
同時に、不必要部分が切り取られた積層体から、印刷された複数個の扇形状の胴部材ブランク(10)を打ち抜き、樹脂部(4a)、(4c)を形成させた一枚ずつの胴部材ブランク(10)を作製する(
図7(a),(b)参照)。
【0107】
このような各工程を経て紙基材(1)より所定幅外方に延出した樹脂部(4a)、(4c)を両方の側端縁に形成させた胴部材ブランク(10)を作製することができる。
【0108】
紙基材層(1)は通常のカップ原紙として用いられるものであればよく、特に限定はし
ないが、印刷適性と紙力を有し、成形性に優れ、且つ表面強度が強いカップ紙の坪量100〜500g/m
2程度のものが好んで用いられる。
【0109】
容器外側の熱可塑性樹脂層(41)を構成するシーラント層及び容器内側の熱可塑性樹脂層(40)を構成するシーラント層の膜厚は通常10μmから60μmであり、エクストルーダー等の熱溶融押出しやドライラミネート等公知の方法によって設けることが出来る。
【0110】
バリア層(2a)としては、アルミニウム箔などの金属箔、またはシリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化錫、酸化マグネシウムなどの無機酸化物の蒸着層を延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムなどの延伸ポリエステル樹脂フィルムや、延伸ナイロンフィルムなどの延伸ポリアミド樹脂フィルムに設けた蒸着フィルムを用いることが出来る。
【0111】
つぎに、この胴部材ブランク(10)の樹脂部(4a)を、紙基材端面(5)に形成させる方法の一例について、
図8、
図9に沿って説明する。
【0112】
胴部材ブランク(10)を、紙カップに成形した際に外面となる面を下に向けて載置し、櫛状に形成された押さえ突起(D11)を具備した第1部材(D1)を、上方から下方に垂直方向に移動させて、紙基材(1)より所定幅だけ延出した樹脂層(4a)を、略90°の角度に下方に押し曲げ、仮折りする(
図9(a),(b)参照)。
【0113】
ついで、第2部材(D2)に櫛状に形成された押さえ突起(D21)を、前記第1部材の押さえ突起(D11)と押さえ突起(D11)の間の間隙(D12)を目掛けて、胴部材ブランクの外側方向より内側方向に向けて水平移動させ、樹脂部(4a)を略90°押し曲げ、前記樹脂部層(4a)が、折り返し樹脂部(4b)を形成するように、胴部材ブランクの紙基材外側方向に重なるように仮折りする(
図9(c)参照)。
【0114】
最後に、第1部材の下側に配置され、櫛状に形成された押さえ突起(D31)を具備する第3部材(D3)を、垂直に上方に押しつけ圧着して、折り返し樹脂部(4b)を胴部材ブランク(10)の紙基材の外面側に仮接着させる(
図9(d)参照)。
【0115】
なお、第3部材の押さえ突起(D31)を適宜の温度に加熱しておくと樹脂部の接着性が向上してより効果的である。
【0116】
このような方法により作製した胴部材ブランク(10)を用いてカップ状紙容器を成形する成形方法の一例については既に説明したのでここでは省略する。
【0117】
本発明のカップ状紙容器の装飾についてはたとえば、紙基材の表面に印刷等により、装飾層を設けた基材を胴部ブランクとして用い、紙容器を製造する、あるいは紙基材の表面側に印刷等による装飾層および/または金属蒸着層を設けたプラスチックフィルムを積層した積層材料を用い、紙容器を製造する方法、または成形された紙容器の胴部の表面に、印刷、金属蒸着により装飾層を施したプラスチックフィルムを被覆する等の方法で施すことが出来る。