(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板の端子と電子部品の端子とを異方性導電接続させるための異方性導電フィルムであって、膜形成成分、硬化成分、硬化剤、及び導電性粒子を含有し、更にセルロースエステル誘導体を含有することを特徴とする異方性導電フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の異方性導電フィルムは、基板の端子と電子部品の端子とを異方性導電接続させるための異方性導電フィルムであって、膜形成成分、硬化成分、硬化剤、及び導電性粒子を含有し、更にセルロースエステル誘導体を含有することを特徴とするものである。
【0013】
(セルロースエステル誘導体)
本発明の異方性導電フィルムを特徴づけるセルロースエステル誘導体は、膜形成成分として機能すると共に、異方性導電フィルムに溶媒溶解性を付与し、リペア性を向上させるための成分である。
【0014】
このようなセルロースエステル誘導体としては、セルロースの水酸基に飽和脂肪族アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、イソプロピオニル基、ブチロイル基、イソブチロイル基、ペンタノイル基、イソペンタノイル基、ヘキサノイル基等)が結合したセルロースアルカノエート誘導体、不飽和脂肪族アシル基(例えば、アクロイル基、メタクロイル基、プロペノイル基等)が結合したセルロースアルケノエート誘導体、芳香族アシル基(例えば、ベンゾイル基等)が結合したセルロースアリールカルボン酸エステル誘導体等が挙げられる。
【0015】
以上説明したセルロースエステル誘導体の中でも、他の材料との相溶性及び耐水性の観点からセルロースアルカノエート誘導体を好ましく使用することができる。このようなセルロースアルカノエート誘導体の特に好ましい具体例として、セルロースアセテート、あるいはそのアセチル基の一つ以上がプピオニル基又はブチロイル基で置換されたセルロースアセテートプロピオネート又はセルロースアセテートブチレート等を挙げることができる。
【0016】
セルロースアルカノエート誘導体等のセルロースエステル誘導体の置換度DS(セルロース1ユニット中の水酸基の置換数)は、耐水性の観点から、好ましくは2.00〜2.99、より好ましくは2.50〜2.99である。
【0017】
本発明において、セルロースエステル誘導体の異方性導電フィルム中の含有量は、実用的なリペア性を獲得し且つ異方性導電フィルムの製造の際の塗布液の粘度が上がり過ぎないようにするために、質量基準で好ましくは5〜50%、より好ましくは10〜30%である。
【0018】
また、セルロースエステル誘導体の重量平均分子量は、接着力向上のために、好ましくは6000以上、より好ましくは30000以上である。他方、良好なリペア性及び塗布性のために、好ましくは75000以下である。
【0019】
本発明において、セルロースエステル誘導体中の水酸基価は、溶媒溶解性の向上と電極や基板への密着性の向上のために、好ましくは15〜150mgKOH/g、より好ましくは30〜60mgKOH/gである。
【0020】
(膜形成成分)
本発明の異方性導電フィルムに使用する膜形成成分としては、従来の異方性導電フィルムにおいて使用されている膜形成成分の中から、異方性導電フィルムの適用対象やセルロースエステル誘導体との相溶性等を考慮して適宜選択することができる。例えば、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。これらの中でも、成膜性、加工性、接続信頼性の点からフェノキシ樹脂を好ましく採用することができる。
【0021】
膜形成成分の異方性導電フィルム中の含有量は、膜強度と異方性導電性とを良好に保つために、質量基準で好ましくは30〜80%、より好ましくは40〜70%である。
【0022】
(硬化成分)
本発明の異方性導電フィルムに使用する硬化成分としては、従来の異方性導電フィルムにおいて使用されている硬化成分の中から異方性導電フィルムの適用対象や硬化した硬化成分のセルロースエステル誘導体との相溶性等を考慮して適宜選択することができる。中でもラジカル重合性アクリル系モノマー又はオリゴマーを好ましく使用することができる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロ(メタ)ピルアクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、リン酸基含有(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールテトラ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、2種以上を併用してもよい。ここで、“(メタ)アクリレート”は、アクリレートとメタクリレートの双方を包含する。
【0023】
硬化成分の異方性導電フィルム中の含有量は、膜強度と異方性導電性とを良好に保つ等のために、質量基準で好ましくは5〜50%、より好ましくは10〜40%である。
【0024】
(硬化剤)
硬化剤としては、硬化成分の種類に応じて公知の硬化剤の中から適宜選択して使用することができる。例えば、硬化成分がラジカル重合性アクリル系モノマー又はオリゴマーである場合には、熱又は光によって遊離ラジカルを発生する硬化剤(重合開始剤とも称される)を好ましく使用することができ、有機過酸化物やアゾ化合物を例示することできる。前者の有機過酸化物の具体例としては、過酸化ベンゾイル、ターシャリーブチルパーオキシド、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ジラウロイルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロへキサン等が挙げられる。アゾ化合物としては、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド〕、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メトキシプロピオネート)等が挙げられる。その他、アルキルフェノン、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ジカルボニル化合物、チオキサントン、アシルホスフィンオキサイド、これらの誘導体等も硬化剤として使用することができる。
【0025】
これらの硬化剤の異方性導電フィルム中の含有量は、異方性導電フィルムの硬化率を向上させ且つ粒子捕捉率の低下を抑制するために、硬化成分100質量部に対し、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは3〜7質量部である。
【0026】
(導電性粒子)
本発明の異方性導電フィルムが含有する導電性粒子としては、異方性導電接続に適用されている公知の導電性粒子の中から、異方性導電フィルムの使用目的に応じて適宜選択使用することができる。このような導電性粒子としては、金属粒子、金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。金属粒子としては、ニッケル粒子、コバルト粒子、銀粒子、銅粒子、金粒子、パラジウム粒子などが挙げられる。金属被覆樹脂粒子としては、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、スチレン−シリカ複合樹脂粒子などのコア樹脂粒子の表面を、ニッケル、銅、金、及びパラジウム等の金属で被覆したものが挙げられる。これらの金属粒子や金属被覆樹脂粒子の表面には、必要に応じて、金やパラジウムの薄膜や、異方性導電接続時には破れてしまうような絶縁樹脂薄膜を形成してもよい。
【0027】
導電性粒子の平均粒子径は、異方性導電フィルムの使用目的に応じた確実な異方性導電接続を実現するために、好ましくは1〜10μm、より好ましくは2〜5μmである。
【0028】
導電性粒子の異方性導電フィルム中の含有量は、異方性導電フィルムの使用目的に応じた確実な異方性導電接続を実現するために、質量基準で好ましくは0.1〜20%、より好ましくは0.2〜10%である。
【0029】
(シランカップリング剤)
本発明の異方性導電フィルムは、ガラス基板等への密着性を向上させるために公知のシランカップリング剤を含有することができる。例えば、エポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤、チオール系シランカップリング剤、アミン系シランカップリング剤等の中から、異方性導電フィルムの使用目的等に応じて適宜選択することができる。
【0030】
シランカップリング剤の異方性導電フィルム中の含有量は、シランカップリング剤の確実な添加効果を実現するために、膜形成成分と硬化成分との合計100質量部に対し、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは1〜3質量部である。
【0031】
(その他の成分)
本発明の異方性導電フィルムは、必要に応じて、着色剤、酸化防止剤、防錆剤、溶媒等の各種添加剤を含有することができる。
【0032】
(異方性導電フィルムの製造)
本発明の異方性導電フィルムは、上述のセルロースエステル誘導体、膜形成成分、硬化成分、硬化剤、導電性粒子、更に必要に応じてシランカップリング剤などの他の添加成分とを、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートやトルエンなどの溶媒と共に、公知の混合手法により均一に混合して塗布液を調製し、この塗布液を公知のコート手法により剥離シート上に所定の乾燥厚み、通常、30〜45μmの厚みとなるように塗布し、60〜80℃に調整された乾燥炉中で乾燥することにより製造することができる。また、本発明の異方性導電フィルムは、導電性粒子を含有しない以外は同様の材料から作成した絶縁性フィルムを積層して2層構造の異方性導電フィルムを構成することもできる。
【0033】
このように得られる本発明の異方性導電フィルムは、例えば、ITOガラス基板、フレキシブル基板、リジッド基板、ICモジュール、マザーボードなどの基板に、ICチップ、TABテープ、液晶パネル、各種基板などの電子部品を異方性導電接続して接続構造体を製造する際に好ましく適用することができる。本発明の接続構造体の製造方法について以下に説明する。
【0034】
(接続構造体の製造方法)
本発明の接続構造体の製造方法は、基板の端子と電子部品の端子とが異方性導電フィルムで異方性導電接続された接続構造体の製造方法であって、以下の工程(A)〜(C)を有する。
【0035】
(工程(A)の仮貼り工程)
まず、既に説明したような基板の端子上に本発明の異方性導電フィルムを仮貼りする。仮貼りの手法と条件は、公知の手法と条件の中から適宜選択することができる。通常は、異方性導電フィルムが本硬化しない程度に加熱加圧することで仮貼りする。
【0036】
(工程(B)の載置工程)
次に、仮貼りされた異方性導電フィルム上に電子部品を、その端子が基板の端子と対向するように載置する。載置の手法としては、公知の手法を採用することができる。通常は、異方性導電フィルムが本硬化しない程度に加熱加圧することで基板と電子部品を一時的に固定する。
【0037】
(工程(C)の接続工程)
工程(B)の載置工程を経て、基板に載置された電子部品を加熱押圧部材により加熱及び押圧することにより、基板の端子と電子部品の端子とを異方性導電接続させて接続構造体を得る。このようにして得られる接続構造体も本発明の一部である。ここで、加熱及び押圧するための手法としては、異方性導電接続の際に従来より用いられている加熱加圧装置を用いて行うことができる。また、加熱条件、押圧条件も、異方性導電フィルムに使用した材料の種類などに応じて適宜設定することができる。
【0038】
なお、得られた接続構造体における電子部品のアライメント精度に問題があった場合、電子部品を基板から引き剥がし、更に、基板又は電子部品から異方性導電フィルムを引き剥がすと、基板又は電子部品の表面に小量の異方性導電フィルムが付着して残る場合がある。本発明の異方性導電フィルムは、セルロースエステル誘導体を含有しているので、アセトンやプロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどの溶媒に対して良好な溶解性を示す。このため、基板や電子部品の表面の異方性導電フィルムの付着物は、アセトンやプロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどの溶媒を含浸させた綿棒やウエスで拭き取ることができる。このようにして清浄化された基板や電子部品は、再度工程(A)の仮貼り工程に投入できる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0040】
実施例1(セルロース誘導体Aを含む異方性導電フィルムの作成)
表1に示す配合に従って、フェノキシ樹脂(YP50、新日鐵化学(株)製)50質量部と、アクリル系のラジカル重合性樹脂(EB−600、ダイセル・サイテック(株)製)30質量部と、セルロースエステル誘導体A(セルロースアセテートブチレート、重量平均分子量約30000、水酸基価56mgKOH/g)10質量部とで構成された接着剤中に、平均粒径5μmの導電性粒子(AUL705、積水化学工業(株)製)3質量部を均一に分散させた。得られた分散物に、硬化剤として有機過酸化物(パーヘキサC、日油(株)製)5質量部と、シランカップリング剤(KBM−503、信越化学工業(株)製)2質量部とを投入し、トルエンを固形分濃度が50%になるように加え、均一に混合することにより、異方性導電フィルム形成用組成物を得た。この組成物を、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に、乾燥厚で35μm厚となるように塗布し、70℃の乾燥炉中で5分間乾燥させることにより異方性導電フィルムを得た。
【0041】
実施例2(セルロース誘導体Bを含む異方性導電フィルムの作成)
セルロースエステル誘導体Aに代えてセルロースエステル誘導体B(セルロースアセテートブチレート、重量平均分子量約75000、水酸基価56mgKOH/g)を10質量部使用すること以外は、実施例1と同様に、異方性導電フィルム形成用組成物を調製し、更に35μm厚の異方性導電フィルムを得た。
【0042】
実施例3(セルロース誘導体Aを含む異方性導電フィルムの作成)
フェノキシ樹脂の配合量を50質量部から55質量部とし、セルロースエステル誘導体Aの配合量を10質量部から5質量部とすること以外は、実施例1と同様に、異方性導電フィルム形成用組成物を調製し、更に35μm厚の異方性導電フィルムを得た。
【0043】
実施例4(セルロース誘導体Aを含む異方性導電フィルムの作成)
フェノキシ樹脂の配合量を50質量部から10質量部とし、セルロースエステル誘導体Aの配合量を10質量部から50質量部とすること以外は、実施例1と同様に、異方性導電フィルム形成用組成物を調製し、更に35μm厚の異方性導電フィルムを得た。
【0044】
実施例5(セルロース誘導体Cを含む異方性導電フィルムの作成)
セルロースエステル誘導体Aに代えてセルロースエステル誘導体C(セルロースアセテートブチレート、重量平均分子量約6000、水酸基価56mgKOH/g)を10質量部使用すること以外は、実施例1と同様に、異方性導電フィルム形成用組成物を調製し、更に35μm厚の異方性導電フィルムを得た。
【0045】
実施例6(セルロース誘導体Dを含む異方性導電フィルムの作成)
セルロースエステル誘導体Aに代えてセルロースエステル誘導体D(セルロースアセテートプロピオネート、重量平均分子量約30000、水酸基価32mgKOH/g)を10質量部使用すること以外は、実施例1と同様に、異方性導電フィルム形成用組成物を調製し、更に35μm厚の異方性導電フィルムを得た。
【0046】
実施例7(セルロース誘導体Aを含む異方性導電フィルムの作成)
フェノキシ樹脂の配合量を50質量部から57質量部とし、セルロースエステル誘導体Aの配合量を10質量部から3質量部とすること以外は、実施例1と同様に、異方性導電フィルム形成用組成物を調製し、更に35μm厚の異方性導電フィルムを得た。
【0047】
比較例1(セルロース誘導体を含まない異方性導電フィルムの作成)
フェノキシ樹脂の配合量を50質量部から60質量部とし、且つセルロースエステル誘導体Aを使用しないこと以外は、実施例1と同様に、異方性導電フィルム形成用組成物を調製し、更に35μm厚の異方性導電フィルムを得た。
【0048】
比較例2(エステル化されていないセルロースを含む異方性導電フィルムの作成)
セルロースエステル誘導体Aに代えてエステル化されていないセルロースを10質量部使用すること以外は、実施例1と同様に、異方性導電フィルム形成用組成物を調製し、更に35μm厚の異方性導電フィルムを得た。
【0049】
(評価)
得られた実施例及び比較例の異方性導電フィルムについて、以下に説明するように、接続構造体(実装体)を作成し、リペア性を評価し、接着強度を測定した。また、実施例及び比較例で調製した異方性導電フィルム形成用組成物の塗布性も併せて評価した。得られた結果を表1に示す。
【0050】
(評価用の接続構造体の作成)
プリント配線基板(FR4グレード、パナソニック(株):銅配線ピッチ200μm、配線高さ35μm)の端子上に、異方性導電フィルムを仮貼りし、その仮貼りした異方性導電フィルム上に、ポリイミドフレキシブル基板(ポリイミド厚38μm、銅配線ピッチ200μm、配線高さ8μm)を、その端子がプリント配線基板の端子と対向するように配置し、プリント配線基板側から、170℃、4MPa、5secという条件でボンディングツールを用いて本圧着して異方性導電接続することにより、接続構造体を得た。
【0051】
(リペア性の評価)
接続構造体のプリント配線基板を保持固定し、ポリイミドフレキシブル基板を90度方向に50cm/秒の速度で引き剥がし、ポリイミドフレキシブル基板の端子上に残存した硬化した異方性導電フィルムの付着物を、端子と一定平行方向にアセトンを浸み込ませた綿棒で擦り、接続材料が除去できる擦り回数をカウントし、以下の基準で評価した。
【0052】
ランク 評価判断基準
○: 4回以下の擦り回数で異方性導電フィルムの付着物を除去することができた場合
△: 擦り回数5〜10回で異方性導電フィルムの付着物を除去することができた場合
×: 擦り回数10回でも異方性導電フィルムの付着物を取り去ることができなかった場合
【0053】
(接着強度の評価)
各接続構造体を引張試験機(RTC1201、AMD社製)に適用して、硬化した異方性導電フィルムの接着強度を測定した。測定は、常温において50mm/sec速度でポリイミドフレキシブル基板を90度方向に引き上げて行った。接着強度は少なくとも 7N/cm以上であることが実用上望まれる。
【0054】
(塗布性の評価)
実施例及び比較例で調製した異方性導電フィルム形成用組成物から作成した35μm厚の異方性導電フィルムの表面について、1cm×1cm角の大きさの領域を任意に5箇所選択し、顕微鏡にて観察し、以下の基準で評価した。
【0055】
ランク 評価判断基準
○: 50μm以上の相分離とみられる箇所が確認されなかった場合
△: 50μm以上の相分離とみられる箇所が1ヶ所以上確認された場合
×: 混合時に材料が溶剤に溶解せず、塗布が不可能であった場合
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示すように、実施例1〜7の異方性導電フィルムは、リペア性に優れ、接着強度も実用上問題のないレベルの数値を示した。また、塗布性も実用上問題の無いレベル以上の特性を示した。なお、塗布性に関し、実施例2の評価が「△」であった理由は、使用したセルロースエステル誘導体の重量平均分子量が相対的に小さいためと考えられ、また、実施例4の評価が「△」であった理由は、セルロースエステル誘導体の配合量が相対的に多く、異方性導電フィルム形成用組成物の粘度が相対的に高まったためであると考えられる。リペア性に関し、実施例3及び7の評価が「△」であった理由は、セルロースエステル誘導体の配合量が相対的に少なかったためと考えられる。
【0058】
それに対し、比較例1の異方性導電フィルムの場合、セルロースエステル誘導体を含有していないため、リペア性評価が「×」であった。また、セルロースエステル誘導体に代えてセルロースを使用した比較例の場合、均一なフィルムを形成することができず、塗布性の評価が「×」であった。