(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転体を、前記加熱手段での加熱温度よりも高く、且つ前記定着手段での定着温度よりも低い温度となるように加熱する補助加熱手段が設けられている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の定着装置。
前記温度収束手段、又は前記加熱手段と前記温度収束手段との間には、前記回転体から現像剤像を離れさせる離型剤を前記回転体に塗布する塗布手段が設けられている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の定着装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
以下、第1実施形態の定着装置及び画像形成装置の一例を図面に基づき説明する。先ず、画像形成装置の全体構成及び動作を説明し、次いで、本実施形態の要部である定着装置の構成及び動作について説明する。
【0024】
なお、以下の説明では、
図1に矢印Zで示す方向を装置高さ方向、
図1に矢印Xで示す方向を装置幅方向とする。また、装置高さ方向及び装置幅方向のそれぞれに直交する方向(Yで示す)を装置奥行き方向とする。そして、画像形成装置10をユーザ(図示省略)が立つ側から見て(正面視して)、装置高さ方向、装置幅方向、装置奥行き方向をZ方向、X方向、Y方向と記載する。
【0025】
さらに、X方向、Y方向、Z方向のそれぞれ一方側と他方側を区別する必要がある場合は、画像形成装置10を正面視して、上側を+Z側、下側を−Z側、右側を+X側、左側を−X側、奥側を+Y側、前側を−Y側と記載する。
【0026】
〔全体構成〕
図1に示すように、画像形成装置10は、現像剤像形成手段の一例としての4つの画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kと、搬送装置(図示省略)の一部を構成する搬送ロール30と、定着装置40とを有している。なお、添え字の「Y」はイエロー用、「M」はマゼンタ用、「C」はシアン用、「K」は黒(ブラック)用であることを示している。また、画像形成装置10における各色に対応する各ユニットの配置は、後述する用紙Pの搬送方向に沿って上流側から順に、Y、M、C、Kとなっている。
【0027】
搬送装置(図示省略)は、記録媒体の一例としての用紙Pを予め定められた搬送速度で図示の矢印A方向(搬送方向)に搬送するようになっている。用紙Pは、連帳紙であり、一例として、搬送方向における搬送ロール30よりも上流側では−Z側から+Z側へ搬送され、搬送ロール30よりも下流側では+Z側から−Z側へ搬送されるようになっている。一例として、用紙Pの搬送速度は、80[m/min]となっている。
【0028】
また、用紙Pの搬送方向において、搬送ロール30は、4つの画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kの下流側に配置され、定着装置40は、搬送ロール30の下流側に配置されている。画像形成装置10の各部の動作は、制御部(図示省略)により制御されるようになっている。
【0029】
画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kは、それぞれ、静電潜像を保持する円筒状の感光体12Y、12M、12C、12Kと、帯電装置14Y、14M、14C、14Kと、露光装置16Y、16M、16C、16Kとを有している。さらに、画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kは、それぞれ、現像装置18Y、18M、18C、18Kと、転写装置20Y、20M、20C、20Kとを有している。
【0030】
(感光体)
感光体12Y、12M、12C、12Kは、それぞれ、図中の矢印+R方向(時計回り方向)に回転可能とされている。また、帯電装置14Y、14M、14C、14K、露光装置16Y、16M、16C、16K、及び現像装置18Y、18M、18C、18Kは、+R方向において、この順番で、感光体12Y、12M、12C、12Kの周囲に配置されている。さらに、転写装置20Y、20M、20C、20Kは、感光体12Y、12M、12C、12Kの周囲で、+R方向において、現像装置18Y、18M、18C、18Kと帯電装置14Y、14M、14C、14Kとの間に配置されている。
【0031】
(帯電装置及び露光装置)
帯電装置14Y、14M、14C、14Kは、一例として、電圧が印加されるロールであり、感光体12Y、12M、12C、12Kの外周面を帯電させるものである。露光装置16Y、16M、16C、16Kは、帯電装置14Y、14M、14C、14Kにより帯電された感光体12Y、12M、12C、12Kの外周面を画像データに基づいて露光して、静電潜像を形成するためのものである。
【0032】
(現像装置)
現像装置18Y、18M、18C、18Kは、露光装置16Y、16M、16C、16Kによって感光体12Y、12M、12C、12Kの外周面に形成された静電潜像を現像剤Gにより現像することで、可視のトナー像TAを得るためのものである。なお、トナー像TAは、現像剤像の一例である。現像装置18Y、18M、18C、18Kにおいて用いられる現像剤Gは、一例として、ワックスWX(
図3参照)を9[wt%]含み、ポリエステル樹脂(バインダー樹脂)を主成分とする粉体のトナーT(
図3参照)で構成されている。
【0033】
ワックスWXは、天然ワックスでも合成ワックスでもよい。例えば、石油ワックスであるパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、植物系ワックスであるカルナウバワックス、キャンデリラワックス、動物系ワックスである蜜蝋、鯨蝋、合成ワックスであるポリエチレンワックス、アミドワックスがあげられる。また、これらの変性物あるいは混合物を用いることも可能である。本実施形態では、ワックスWXが、一例として、パラフィンワックスとなっている。
【0034】
ただし、トナーTのバインダー樹脂の軟化点を考慮して、適正な融点を有するワックスWXを選定する必要がある。また、ワックスWXを含まないトナーTを用いる場合は、後述する温度収束部100(
図2参照)において、未定着のトナー像TAと接触する部材あるいはトナー像TA自体に離型オイルを塗布する手段を設けることで、対応が可能である。なお、ワックスWXに換えて、オイルで構成されたキャリア液を含む液体現像剤を用いてもよい。
【0035】
(転写装置)
転写装置20Y、20M、20C、20Kは、中間転写ロール22Y、22M、22C、22Kと、転写ロール24Y、24M、24C、24Kとを有している。なお、転写装置20Yと、転写装置20M、20C、20Kとは、トナーT(
図3参照)を除く他の構成が同様となっているため、ここでは、転写装置20Yについて説明し、転写装置20M、20C、20Kの説明を省略する。
【0036】
中間転写ロール22Yは、感光体12Yの回転方向における帯電装置14Yの上流側で、且つ現像装置18Yの下流側の一次転写位置X1において、感光体12Yに接触し、矢印−Rで示す方向(反時計回り方向)に従動回転するようになっている。これにより、転写装置20Yでは、感光体12Yの外周面に現像により形成されたトナー像TAが、一次転写位置X1において、中間転写ロール22Yへと一次転写される。なお、感光体12Yと中間転写ロール22Yとの間には、電源(図示省略)により一次転写電圧(バイアス電圧)が印加されるようになっている。
【0037】
転写ロール24Yは、感光体12Yとは反対側において、中間転写ロール22Yに対向して配置されている。そして、転写ロール24Yは、中間転写ロール22Yと転写ロール24Yとの間に用紙Pが供給されるとき、矢印+Rで示す方向に回転する。ここで、中間転写ロール22Yと用紙Pとが接触する位置が二次転写位置X2であり、中間転写ロール22Yに一次転写されたトナー像TAが、二次転写位置X2において、用紙Pへと二次転写される。なお、中間転写ロール22Yと転写ロール24Yとの間には、二次転写電圧(バイアス電圧)が印加されるようになっている。
【0038】
(画像形成動作)
画像形成装置10では、以下のようにして画像が形成される。
【0039】
画像形成ユニット11Yにおいて、感光体12Yが回転し、帯電装置14Yにより感光体12Yの外周面が帯電される。次いで、帯電された感光体12Yの外周面を露光装置16Yによって露光走査することで、感光体12Yの外周面には、第一色(Y)の静電潜像(図示省略)が形成される。この静電潜像は、現像装置18Yによって現像され、感光体12Yの表面には、可視化されたトナー像TAが形成される。
【0040】
トナー像TAは、感光体12Yの回転により一次転写位置X1に至り、一次転写電圧により中間転写ロール22Yに一次転写される。中間転写ロール22Yに転写されたトナー像TAは、中間転写ロール22Yの回転で二次転写位置X2に至り、二次転写電圧により用紙Pに二次転写される。
【0041】
同様にして、画像形成ユニット11M、11C、11Kによって形成される第二色(M)、第三色(C)、及び第四色(K)のトナー像TAが、中間転写ロール22M、22C、22Kを介して、用紙Pに重なるように順次転写される。なお、用紙Pにおいて、各色のトナー像TAの位置がずれないように、用紙Pの搬送速度と、感光体12Y、12M、12C、12Kの回転速度とが同期されている。これにより、用紙Pには、多重のトナー像TAが形成されることとなる。多重のトナー像TAは、後述する定着装置40において加熱処理及び加圧処理され、用紙Pに定着される。
【0042】
中間転写ロール22Yへのトナー像TAの一次転写が終了した感光体12Yは、クリーナー(図示省略)により清掃される。また、用紙Pへのトナー像TAの二次転写が終了した中間転写ロール22Yの外周面もクリーナー(図示省略)により清掃される。
【0043】
なお、用紙Pに単色画像を形成する場合、例えば、黒色(K)の画像を形成する場合には、他の画像形成ユニット11Y、11M、11Cが、中間転写ロール22Y、22M、22Cから離れる(リトラクトされる)ようになっている。
【0044】
〔要部構成〕
次に、定着装置40について説明する。
【0045】
図2に示すように、定着装置40は、一例として、加熱手段の一例としての加熱部50と、定着手段の一例としての定着部60と、加熱部50と定着部60との間に配置された温度収束手段の一例としての温度収束部100とを有している。
【0046】
<加熱部>
加熱部50は、一例として、8つのカーボンヒータ53を有している。カーボンヒータ53は、用紙Pの搬送方向における温度収束部100及び定着部60よりも上流側で、用紙Pの+X側と−X側にそれぞれ4つずつ設けられており、用紙Pに対して非接触配置となっている。そして、カーボンヒータ53は、通電により用紙Pに向けて赤外線を放射し、用紙P及びトナー像TAを加熱するようになっている。
【0047】
本実施形態では、一例として、用紙Pの白地部が90[℃]、用紙P上のトナー像TAが110[℃]となるように、カーボンヒータ53の出力及び加熱温度が設定されている。すなわち、加熱部50が、後述する定着部60の定着温度よりも低い温度でトナー像TAを加熱するようになっている。具体的には、カーボンヒータ53は、定格4[KW]、Y方向長さが600[mm]となっている。
【0048】
<定着部>
定着部60は、定着ロール62と、定着ロール62と共に用紙Pを挟んで加圧する加圧ロール64とを有している。また、定着部60は、一例として、定着ロール62及び加圧ロール64が、用紙Pの搬送方向(Z方向)に間隔をあけて2組配置されている。
【0049】
(定着ロール)
定着ロール62は、円筒状に形成され、用紙Pの+X側にY方向を軸方向として回転可能に設けられている。また、定着ロール62は、径方向内側から外側へ向けて、コアロール62A、弾性層62B、及び離型層62Cを有する多層構造となっている。すなわち、定着ロール62は、弾性層62Bの外周面にトナー像TBと接触する離型層62Cが形成されている。なお、本実施形態では、後述する温度収束部100により温度が収束したものをトナー像TBとし、温度が収束する前のものをトナー像TAとして、トナー像を区別している。
【0050】
コアロール62Aは、アルミ合金製のパイプ材の軸方向両端部にSUS製(ステンレス鋼)のハブ(軸受けを取り付ける部位)が設けられた構成となっている。弾性層62Bは、一例として、径方向の厚みが4[mm]、ショアA硬度がA30のシリコーンゴム製となっている。離型層62Cは、一例として、径方向の厚みが100[μm]のPFA(4フッ化エチレン−パーフルオロアルコキシエチレンン共重合体)製となっている。そして、定着ロール62は、一例として、外径が108[mm]、軸方向長さが580[mm]となっている。
【0051】
さらに、定着ロール62は、内側にハロゲンヒータ66が設けられている。ハロゲンヒータ66は、電源(図示省略)からの通電によって発熱し、定着ロール62を内側から加熱するようになっている。また、ハロゲンヒータ66は、一例として、定着ロール62の外周面の温度が130[℃]に維持されるように、定着ロール62の温度を検出する温度センサ(図示省略)の出力に基づいて、フィードバック制御されるようになっている。
【0052】
(加圧ロール)
加圧ロール64は、円筒状に形成され、用紙Pの−X側にY方向を軸方向として回転可能に設けられている。また、加圧ロール64は、径方向内側から外側へ向けて、コアロール64A、弾性層64B、及び離型層64Cを有する多層構造となっている。さらに、加圧ロール64は、バネなどの付勢手段(図示省略)を用いて定着ロール62に向けて付勢されている。なお、本実施形態では、一例として、コアロール64Aはコアロール62Aと、弾性層64Bは弾性層62Bと、離型層64Cは離型層62Cと、それぞれ同様の構成であるため、説明は省略する。また、加圧ロール64は、内側にハロゲンヒータ67が設けられている。
【0053】
ハロゲンヒータ67は、電源(図示省略)からの通電によって発熱し、加圧ロール64を内側から加熱するようになっている。また、ハロゲンヒータ67は、一例として、定着ロール62の外周面の温度(定着温度)が130[℃]に維持されるように、定着ロール62の温度を検出する温度センサ(図示省略)の出力に基づいて、フィードバック制御されるようになっている。
【0054】
加圧ロール64には、定着ロール62に対して接離動作を行うラッチ機構(図示省略)が設けられており、定着ロール62と加圧ロール64との接触、及び定着ロール62に対する加圧ロール64の退避が可能となっている。定着ロール62と加圧ロール64とが接触するニップ部への荷重付与は、定荷重方式であり、一例として、荷重値が2450[N]となっている。
【0055】
<温度収束部>
温度収束部100は、回転体の一例としての金属ロール102と、対向ロール104と、金属ロール102を加熱する補助加熱手段の一例としてのハロゲンヒータ106と、対向ロール104を加熱するハロゲンヒータ108とを有している。また、温度収束部100は、金属ロール102の外周面に接触してワックスWXを除去するクリーニングウェブ109を有している。
【0056】
(金属ロール)
金属ロール102は、一例として、SUS製のパイプ材の軸方向両端部にSUS製のハブが設けられた構成となっており、外径が80[mm]、径方向の厚みが2.5[mm]、軸方向の長さが580[mm]となっている。そして、金属ロール102は、用紙Pの+X側(トナー像TA側)にY方向を軸方向として回転可能に設けられている。また、金属ロール102は、用紙Pの搬送方向(Z方向)に等間隔で6本設けられており、各金属ロール102の内側には、ハロゲンヒータ106が設けられている。
【0057】
(対向ロール)
対向ロール104は、円筒状に形成され、用紙Pの−X側にY方向を軸方向として回転可能に設けられている。また、対向ロール104は、径方向内側から外側へ向けて、コアロール104A、弾性層104B、及び離型層104Cを有する多層構造となっている。さらに、対向ロール104は、バネなどの付勢手段(図示省略)を用いて金属ロール102に向けて付勢されている。加えて、対向ロール104は、用紙Pの搬送方向(Z方向)に等間隔で6本設けられており、各対向ロール104の内側には、ハロゲンヒータ108が設けられている。
【0058】
コアロール104Aは、アルミ合金製のパイプ材の軸方向両端部にSUS製のハブが設けられた構成となっている。弾性層104Bは、一例として、径方向の厚みが2.5[mm]、ショアA硬度がA30のシリコーンゴム製となっている。離型層104Cは、一例として、径方向の厚みが100[μm]のPFA製となっている。そして、対向ロール104は、一例として、外径が80[mm]、軸方向長さが580[mm]となっている。
【0059】
金属ロール102と対向ロール104は、接触して用紙Pを挟持した状態において用紙Pが搬送されることにより従動回転するようになっている。なお、用紙Pが無い状態で金属ロール102と対向ロール104とが接触する部位(用紙Pが挟まれる部位)を接触部Nと記載する。
【0060】
(ハロゲンヒータ)
ハロゲンヒータ106は、各金属ロール102の内側にY方向に沿って1本ずつ挿入されている。そして、各ハロゲンヒータ106は、電源(図示省略)からの通電によって発熱し、金属ロール102を内側から加熱するようになっている。また、各ハロゲンヒータ106は、一例として、金属ロール102の外周面の温度が120[℃]となるように、金属ロール102の温度を検出する温度センサ(図示省略)の出力に基づいて、フィードバック制御されるようになっている。すなわち、ハロゲンヒータ106は、加熱部50での加熱温度よりも高く、且つ定着部60での定着温度よりも低い温度で、金属ロール102を加熱するようになっている。
【0061】
ハロゲンヒータ108は、各対向ロール104の内側にY方向に沿って挿入されている。そして、ハロゲンヒータ108は、電源(図示省略)からの通電によって発熱し、対向ロール104を内側から加熱するようになっている。また、ハロゲンヒータ108は、一例として、金属ロール102の外周面の温度が120[℃]に維持されるように、対向ロール104の温度を検出する温度センサ(図示省略)の出力に基づいて、フィードバック制御されるようになっている。
【0062】
ここで、6本の金属ロール102は、外周面が用紙Pから離れた位置を原点位置として、ラッチ機構部(図示省略)により、−X側(接触側)及び+X側(退避側)の一方に移動可能となっている。同様に、6本の対向ロール104は、外周面が用紙Pから離れた位置を原点位置として、ラッチ機構部(図示省略)により、+X側(接触側)及び−X側(退避側)の一方に移動可能となっている。
【0063】
ラッチ機構部(図示省略)は、定着部60で定着を行うときに、6本の金属ロール102を原点位置から−X側に移動させ、6本の対向ロール104を原点位置から+X側に移動させて、用紙Pを挟ませる。また、ラッチ機構部は、定着部60で定着が行われないときに、6本の金属ロール102を接触部Nから+X側に移動させ、6本の対向ロール104を接触部Nから−X側に移動させて、用紙Pから退避させる。
【0064】
なお、ハロゲンヒータ106及びクリーニングウェブ109は、金属ロール102に対する配置を維持した状態で移動され、ハロゲンヒータ108は、対向ロール104に対する配置を維持した状態で移動されるようになっている。また、金属ロール102と対向ロール104とが接触する接触部Nへの荷重付与は、定荷重方式であり、一例として、荷重値が735[N]となっている。
【0065】
<比較例>
図2に示す第1実施形態の定着装置40において、温度収束部100が無い構成を比較例とする。この比較例では、加熱部50の加熱により、トナーTのバインダー樹脂(一例として、ポリエステル樹脂)が用紙Pに粘着すると共に、ワックスWXがトナーTの表面に析出して離型膜を形成する。そして、比較例では、用紙Pが定着部60に進入するとき、各色での熱吸収率の差により、トナーTの温度が色によって異なっているため、光沢度の差(グロス差)が発生する場合がある。
【0066】
詳細には、比較例では、トナー像TBが、色の熱吸収率の違いにより生じる温度差が収束されない状態で、定着部60により、一定の定着温度で用紙Pに定着されることになる。ここで、定着ロール62及び加圧ロール64は、離型層62C、64C、及び弾性層62B、64Bを有しているが、これらは、比較的、熱伝導性が低い材料で構成されている。このため、比較例では、定着部60による定着後のトナー像TBに温度履歴が残ってしまい、これが光沢度差(光沢ムラ)として顕在化する場合がある。
【0067】
〔作用〕
次に、第1実施形態の作用について説明する。
【0068】
図1に示すように、搬送ロール30の回転により用紙Pの搬送が開始されると共に、画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kにおいて、用紙P上にトナー像TAが形成される。
【0069】
続いて、
図2に示すように、加熱部50のカーボンヒータ53が点灯される。そして、温度収束部100の金属ロール102と対向ロール104とのラッチ動作(接触動作)、及び定着部60の定着ロール62と加圧ロール64とのラッチ動作が行われる。これにより、金属ロール102、対向ロール104、定着ロール62、及び加圧ロール64は、用紙Pの移動に従動して回転する。
【0070】
続いて、
図3に示すように、用紙P上のトナー像TAは、加熱部50により加熱される。ここで、既述のように、加熱部50のカーボンヒータ53(
図2参照)は、用紙Pの白地部PWで90[℃]となるように出力が設定されており、トナー像TAは、黒色部(K)で110[℃]となる。用紙Pの両面(+X側及び−X側)にトナー像TAの黒色部が存在する場合は、黒色部の温度は130[℃]となる。また、トナー像TAは、イエロー色部、マゼンタ色部、シアン色部では、黒色部とは異なる温度となる。これは、既述のように、各色によって熱吸収率(赤外線の吸収効率)が異なるためである。なお、
図3において、用紙Pの裏側(−X側)の加熱部50及び対向ロール104(
図2参照)の図示は省略している。
【0071】
加熱部50の加熱により、トナーTは、溶融されて用紙Pに粘着すると共に、含有されているワックスWXも溶融される。ここで、トナーTのバインダー樹脂とワックスWXとの相溶性の違いから、トナーTのバインダー樹脂は、用紙Pに粘着する。一方、ワックスWXは、トナーTの表面(金属ロール102側)に析出して、離型膜を形成する。このように、用紙P上のトナーTは、バインダー樹脂と離型膜とに分離した状態で温度収束部100に進入する。
【0072】
続いて、
図2に示すように、温度収束部100では、用紙Pが6つの接触部Nを通過することで、温度差の大きかった用紙P及びトナー像TBが、設定温度(例えば120[℃])まで段階的に収束していく。このとき、トナー像TBの表面には、ワックスWX(
図3参照)による離型層があるため、金属ロール102へのトナーTのオフセットは発生しにくくなっている。ただし、金属ロール102の設定温度を過剰に高くしてしまうと、ワックスWXが、金属ロール102とトナーTとの間から外側へ流出し易くなり、オフセットが生じ易くなるため、配慮が必要である。
【0073】
金属ロール102は、既述のように、SUS製のパイプ材で構成されているので、温度履歴が、既述の比較例に比べて残り難い。また、温度収束部100では、金属ロール102及び対向ロール104を6組配置しているため、用紙Pの搬送方向で下流側に進むほど、各色のトナー像TBの温度差が低減される。このようにして、温度収束部100では、用紙P上のトナー像TBの温度が設定温度に収束される。なお、金属ロール102の外周面に付着したワックスWXは、クリーニングウェブ109により除去されるので、用紙Pに付着することが抑制される。
【0074】
続いて、各色部の温度が設定温度に収束されたトナー像TBは、定着部60において加熱及び加圧され、用紙Pに定着される。ここで、トナー像TBの各色部の温度が設定温度に収束している(搬送方向と直交する幅方向の温度差が低減されている)ので、定着後の用紙P上のトナー像の光沢度は、各色部で同程度の値となる。
【0075】
(温度測定結果)
図4(A)には、用紙Pの搬送方向における1つの接触部N(
図2参照)の幅を5[mm]とし、設定温度(収束の目標温度)を120[℃]としたときの時間に対する各部の温度変化が示されている。
図4(A)において、グラフG1は、用紙Pの白地部PW(
図3参照)の温度であり、グラフG2は、用紙Pの片面のみ黒色部(片面トナー部)の温度である。さらに、グラフG3は、用紙Pの両面が黒色部(両面トナー部)の温度である。
【0076】
一方、
図4(B)には、用紙Pの搬送方向における1つの接触部N(
図2参照)の幅を15[mm]とし、設定温度(収束の目標温度)を120[℃]としたときの時間に対する各部の温度変化が示されている。
図4(B)において、グラフG4は、用紙Pの白地部PW(
図3参照)の温度であり、グラフG5は、用紙Pの片面のみ黒色部(片面トナー部)の温度である。さらに、グラフG6は、用紙Pの両面が黒色部(両面トナー部)の温度である。
【0077】
なお、各温度は、熱伝導計算による計算値である。また、グラフG1、G2、G3、G4、G5、G6において、温度がほとんど変化していない(安定している)時間が6つあるが、これは、接触部N(
図2参照)を通過後次の接触部Nまでの間の用紙P温度に対応している。この領域で実際に放射温度計を用いて用紙Pの温度を実測して計算値と対応をとっている。
【0078】
ここで、
図4(A)に示すように、接触部N(
図2参照)の幅が5[mm]のときは、用紙Pが6つの接触部Nを通過しても、各部の温度が120[℃]に収束しきれていない。一方、
図4(B)に示すように、接触部Nの幅が15[mm]のときは、用紙Pが6つの接触部Nを通過した時点で、各部の温度がほぼ120[℃]に収束することが確認された。つまり、接触部Nの幅と数を調整することで、用紙P上の各部の温度を設定温度に収束可能であることが確認された。
【0079】
図5(A)には、1つの接触部N(
図2参照)の幅を5[mm]とし、設定温度を130[℃]としたときのグラフG7、G8、G9が示されている。
図5(A)において、グラフG7は、用紙Pの白地部PW(
図3参照)の温度であり、グラフG8は、用紙Pの片面のみが黒色部(片面トナー部)の温度である。さらに、グラフG9は、用紙Pの両面が黒色部(両面トナー部)の温度である。
【0080】
図5(B)には、1つの接触部Nの幅を15[mm]とし、設定温度を130[℃]としたときのグラフG10、G11、G12が示されている。
図5(B)において、グラフG10は、用紙Pの白地部PW(
図3参照)の温度であり、グラフG11は、用紙Pの片面のみが黒色部(片面トナー部)の温度である。さらに、グラフG12は、用紙Pの両面が黒色部(両面トナー部)の温度である。
【0081】
図5(A)に示すように、接触部Nの幅が5[mm]のときは、用紙Pが6つの接触部Nを通過しても、各部の温度が130[℃]に収束しきれていない。一方、
図5(B)に示すように、接触部Nの幅が15[mm]のときは、用紙Pが6つの接触部Nを通過した時点で、各部の温度がほぼ130[℃]に収束することが確認された。つまり、設定温度が高くなっても、接触部Nの幅と数を調整することで、用紙P上の各部の温度を設定温度に収束可能であることが確認された。
【0082】
(定着装置及び画像形成装置の作用)
図2に示すように、非接触式の加熱部50でトナー像TAが加熱されると、トナーTの色や用紙Pへの付着量の違いなどにより、用紙Pの各部(各色部)でトナー像TAの温度に差が生じる。
【0083】
ここで、第1実施形態の定着装置40では、温度収束部100が、用紙Pの温度及びトナー像TBの温度を段階的に設定温度に収束させる。これにより、定着装置40では、定着部60でトナー像TBを定着するとき、用紙Pの各部(各色部)でトナー像TBの温度がほぼ均一となるので、トナーTの色やトナーTの付着量の違いにより生じる定着後の光沢度のムラ(光沢ムラ)が抑制される。
【0084】
また、定着装置40では、温度収束部100に金属ロール102を用いている。金属ロール102は、ゴムロールに比べて熱伝導性が高い(軸方向の熱伝導時間が短い)ので、例えば、用紙Pが1[m/s]のような高速で搬送される場合であっても、トナー像TBの温度が設定温度に収束される。
【0085】
さらに、定着装置40では、温度収束部100において、金属ロール102が複数本(6本)設けられている。このため、用紙Pの接触部Nの通過回数が1回増える毎に、トナー像TBの温度が設定温度となるように収束するので、金属ロール102が1本のみ(接触部Nが1つのみ)の構成に比べて、用紙P及びトナー像TBの温度の収束が高速で行われる。
【0086】
加えて、定着装置40では、金属ロール102をハロゲンヒータ106で加熱しており、金属ロール102の温度が、定着温度よりも低く且つ定着温度に近い温度で軸方向に一定となっている。このため、定着装置40では、金属ロール102を加熱しない構成に比べて、金属ロール102がトナーTから急速に熱量を奪うことが抑制される。これにより、定着装置40では、用紙Pの搬送速度が高速の場合でも、トナーTが溶融して用紙Pへの粘着力(付着力)が確保される。そして、定着装置40では、金属ロール102へのトナーTのコールドオフセット(トナーTの用紙Pへの粘着力が金属ロール102への粘着力よりも低いことにより生じるオフセット)が抑制される。
【0087】
また、画像形成装置10では、定着部60でトナー像TBを定着するとき、用紙Pの各部でトナー像TBの温度がほぼ均一となる。これにより、画像形成装置10では、トナー像TBの温度を設定温度に収束させない構成に比べて、定着後のトナー像TBの光沢ムラが抑制され、且つ光沢ムラに起因する画像不良が抑制される。
【0088】
[変形例]
次に、第1実施形態の定着装置40の変形例として、第1、第2、第3変形例について説明する。なお、前述した第1実施形態の定着装置40と基本的に同一の部材及び部位には、定着装置40と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0089】
<第1変形例>
図6には、第1変形例に係る定着装置120が示されている。定着装置120は、画像形成装置10(
図1参照)において、定着装置40(
図1参照)に換えて設けられる。また、定着装置120は、加熱部50と、温度収束手段の一例としての温度収束部122と、定着部60とを有している。なお、第1変形例では、ワックスWXを含むトナーT(
図3参照)に換えて、トナーTをキャリア液(オイル)に分散させた液体現像剤(図示省略)が用いられている。
【0090】
温度収束部122は、金属ロール102と、対向ロール104と、金属ロール102の外周面からオイルを除去するクリーニングブレード124と、金属ロール102に離型剤を塗布する塗布手段の一例としての塗布ロール126とを有している。また、温度収束部122は、クリーニングブレード124によって掻き落とされたオイルを案内する回収板127を有している。さらに、温度収束部122は、回収板127に案内されたオイルを貯留する貯留部128を有している。
【0091】
塗布ロール126は、金属ロール102とトナー像TAとの付着力を低下させる離型剤(一例として、動粘度が10000cStのシリコーンオイル)が、外周面に供給される構成となっており、金属ロール102の外周面に接触して従動回転するようになっている。なお、塗布ロール126は、金属ロール102に接触するものに限らず、二点鎖線で示すように、加熱部50と温度収束部122との間に設けられ、用紙P及びトナー像TAに離型剤を塗布するものであってもよい。
【0092】
このように、定着装置120では、金属ロール102に付着したキャリア液を回収しつつ、金属ロール102又はトナー像TAに離型剤を塗布する。これにより、定着装置120では、離型剤を金属ロール102に塗布しない構成に比べて、接触部Nにおける金属ロール102へのトナーTの付着が抑制される。
【0093】
<第2変形例>
図7には、第2変形例に係る定着装置130が示されている。定着装置130は、画像形成装置10(
図1参照)において、定着装置40(
図1参照)に換えて設けられる。また、定着装置130は、加熱部50と、温度収束手段の一例としての温度収束部132と、定着部60とを有している。なお、第2変形例では、ワックスWXを含むトナーT(
図3参照)に換えて、トナーTをキャリア液(オイル)に分散させた液体現像剤が用いられている。また、
図7では、対向ロール104の外周面に離型剤を塗布する塗布ロールの図示は省略している。
【0094】
温度収束部132は、金属ロール102が用紙Pの−X側に配置され、対向ロール104が用紙Pの+X側に配置されている。すなわち、温度収束部132は、温度収束部122(
図6参照)の金属ロール102と対向ロール104を入れ換えた構成となっている。そして、温度収束部132では、クリーニングブレード124が対向ロール104の外周面からオイルを除去するようになっている。このように、金属ロール102をトナー像TA側とは反対側である用紙Pの裏側に配置して、用紙Pの裏側から加熱することで、用紙P及びトナー像TAの温度を収束させてもよい。用紙Pの裏側から加熱した場合は、トナー像TA側に、トナー像TAに対して離型性がよい部材を配置することが可能となる。
【0095】
<第3変形例>
図8には、第3変形例に係る画像形成装置140及び定着装置150が示されている。画像形成装置140は、用紙Pの+X側(表側)にトナー像TAを形成する画像形成ユニット142と、用紙Pの−X側(裏側)にトナー像TAを形成する画像形成ユニット144と、定着装置150とを有している。
【0096】
画像形成ユニット142及び画像形成ユニット144は、一例として、それぞれ、感光体12K、帯電装置14K、露光装置16K、現像装置18K、及び転写装置19Kを有している。転写装置19Kは、コロトロン方式の転写装置であり、用紙Pとは非接触となるように配置されている。そして、画像形成装置140では、用紙Pが画像形成ユニット142及び画像形成ユニット144を通過することで、用紙Pの両面にトナー像TAが形成されるようになっている。
【0097】
定着装置150は、加熱部50と、温度収束手段の一例としての温度収束部152と、定着部60とを有している。
【0098】
温度収束部152は、金属ロール102及び対向ロール104が、用紙Pの+X側(表側)と−X側(裏側)に交互に配置されている。一例として、用紙Pの+X側では、3本の金属ロール102と3本の対向ロール104が1本おきに設けられており、用紙Pの−X側では、3本の対向ロール104と3本の金属ロール102が1本おきに設けられている。すなわち、用紙Pは、交互に配置された6組の金属ロール102及び対向ロール104で挟まれるようになっている。なお、
図8では、4組の金属ロール102及び対向ロール104を示しており、残り2組の金属ロール102及び対向ロール104の図示を省略している。
【0099】
ここで、両面にトナー像TAが形成された用紙Pは、加熱部50で加熱されることでトナー像TAの溶融が始まり、温度収束部152に搬送される。そして、温度収束部152では、+X側の3本の金属ロール102と、−X側の3本の金属ロール102とが、用紙P及びトナー像TAに接触することにより、用紙Pの+X側及び−X側のトナー像TAの温度が、設定温度となるように収束される。さらに、設定温度に収束した両面のトナー像TAは、定着部60により用紙Pに定着される。
【0100】
このように、定着装置150では、用紙Pの両面にトナー像TAが形成される構成であっても、温度収束部152によって、両面のトナー像TAの温度が段階的に設定温度となるように収束される。これにより、定着装置150では、温度収束部152を有していない構成に比べて、定着後の両面のトナー像TBの光沢ムラが抑制される。
【0101】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る定着装置及び画像形成装置の一例について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部材及び部位には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0102】
図9には、第2実施形態に係る定着装置160が示されている。定着装置160は、第1実施形態の画像形成装置10(
図1参照)において、定着装置40(
図1参照)に換えて設けられている。また、定着装置160は、加熱部50と、温度収束手段の一例としての温度収束部162と、定着部60とを有している。
【0103】
温度収束部162は、用紙Pの+X側に配置されたベルトユニット164と、用紙Pを挟んでベルトユニット164と対向するように配置された対向ロール104とを有している。また、温度収束部162は、後述する第1ロール166内に設けられたハロゲンヒータ106と、対向ロール104内に設けられたハロゲンヒータ108とを有している。さらに、温度収束部162は、後述するベルト165の外周面を清掃するクリーニングウェブ109と、清掃後のベルト165の外周面に既述の離型剤を塗布する塗布ロール126とを有している。
【0104】
ベルトユニット164は、回転体の一例としてのベルト165と、ロール166と、第1加熱ロール167と、第2加熱ロール168と、ハロゲンヒータ106、169A、169Bとを有している。
【0105】
ロール166は、用紙Pを挟んで対向ロール104と対向配置され、Y方向を軸方向として回転可能に設けられている。また、ロール166は、一例として、SUS製のパイプ材の両端部にSUS製のハブを設けたものであり、外径が80[mm]、厚みが2.5[mm]、軸方向の長さが580[mm]となっている。さらに、ロール166は、内側にハロゲンヒータ106が設けられている。
【0106】
第1加熱ロール167は、X方向におけるロール166と第2加熱ロール168との間で−Z側(下側に)ずれた位置に配置され、Y方向を軸方向として回転可能に設けられている。また、第1加熱ロール167は、一例として、アルミ合金製のパイプ材の両端部にSUS製のハブを設けたものであり、外径が50[mm]、厚みが5[mm]、軸方向の長さが580[mm]となっている。さらに、第1加熱ロール167の内側には、ハロゲンヒータ169Aが配置されている。
【0107】
第2加熱ロール168は、ロール166の+X側に間隔をあけて配置され、Y方向を軸方向として回転可能に設けられている。また、第2加熱ロール168は、一例として、アルミ合金製のパイプ材の両端部にSUS製のハブを設けたものであり、外径が60[mm]、厚みが5[mm]、軸方向の長さが580[mm]となっている。さらに、第2加熱ロール168の内側には、ハロゲンヒータ169Bが配置されている。
【0108】
ベルト165は、一例として、厚みが100[μm]のポリイミド樹脂製である。なお、ベルト165には、トナー像TAの離型性、及びトナー像TAへの密着性を向上させるため、一例として、ポリイミド樹脂の表面に厚み数百[μm]のシリコーンゴムの弾性層と、厚み数十[μm]のPFAの離型層とを設けてもよい。
【0109】
また、ベルト165は、ロール166及び第2加熱ロール168に巻き掛けられると共に、外周面に第1加熱ロール167が押し付けられることで、周回移動可能に張架されている。さらに、ベルト165は、第2加熱ロール168に巻き掛けられた部位の外周面にクリーニングウェブ109が接触しており、移動方向でクリーニングウェブ109よりも下流側の外周面には、塗布ロール126が接触している。そして、ベルト165は、用紙Pが無い状態において、対向ロール104と接触して接触部Nを形成している。
【0110】
ここで、温度収束部162では、一例として、ベルトユニット164及び対向ロール104が、用紙Pの搬送方向(Z方向)に間隔をあけて6組設けられている。また、温度収束部162では、温度センサ(図示省略)によりベルト165の外周面の温度が測定されており、一例として、ベルト165の外周面の温度が120[℃]となるように、ハロゲンヒータ106、108、169A、169Bに通電される。
【0111】
〔作用〕
次に、第2実施形態の作用について説明する。
【0112】
図9に示すように、加熱部50でトナー像TAが加熱されると、トナーTの色や用紙Pへの付着量の違いなどにより、用紙Pの各部(各色部)でトナー像TAの温度に差が生じる。
【0113】
ここで、第2実施形態の定着装置160では、温度収束部162が、6組のベルト165及び対向ロール104で形成された6つの接触部Nによって、用紙Pの温度及びトナー像TBの温度を段階的に設定温度に収束させる。これにより、定着装置160では、定着部60でトナー像TBを定着するとき、用紙Pの各色部でトナー像TBの温度がほぼ均一となるので、トナーTの色やトナーTの付着量の違いにより生じる定着後の光沢ムラが抑制される。
【0114】
なお、ベルト165には、温度差がある用紙P及び各部のトナー像TAとの接触により温度履歴が生じるが、この温度履歴は、ベルト165が第1加熱ロール167及び第2加熱ロール168と接触することにより解消される(設定温度に収束される)。
【0115】
また、定着装置160を有する画像形成装置10では、定着部60でトナー像TBを定着するとき、用紙Pの各部でトナー像TBの温度がほぼ均一となる。これにより、画像形成装置10では、トナー像TBの温度を設定温度に収束させない構成に比べて、定着後のトナー像TBの光沢ムラが抑制され、且つ光沢ムラに起因する画像不良が抑制される。
【0116】
<第4変形例>
図10には、第4変形例に係る定着装置170が示されている。定着装置170は、画像形成装置10(
図1参照)において、定着装置40(
図1参照)に換えて設けられる。また、定着装置170は、加熱部50と、温度収束手段の一例としての温度収束部172と、定着部60とを有している。なお、第4変形例では、ワックスWXを含むトナーT(
図3参照)に換えて、トナーTをキャリア液(オイル)に分散させた液体現像剤(図示省略)が用いられている。また、
図10では、対向ロール104の外周面に離型剤を塗布する塗布ロールの図示は省略している。
【0117】
温度収束部172は、ベルトユニット164が用紙Pの−X側に配置され、対向ロール104が用紙Pの+X側に配置されている。すなわち、温度収束部172は、温度収束部162(
図9参照)のベルトユニット164と対向ロール104を入れ換えた構成となっている。そして、温度収束部172では、クリーニングブレード124が、対向ロール104の外周面からオイルを除去するようになっている。このように、ベルトユニット164をトナー像TA側(+X側)とは反対側である用紙Pの裏側(−X側)に配置して、用紙Pの裏側から加熱することで、用紙P及びトナー像TAの温度を収束させてもよい。
【0118】
なお、本発明は上記の実施形態及び変形例に限定されない。
【0119】
カーボンヒータ53は、用紙Pの両側に配置するものに限らず、片側のみに配置してもよい。さらに、加熱部50は、カーボンヒータ53以外に、石英ランプやフラッシュランプあるいはオーブンヒーターなどを用いてもよい。
【0120】
複数の金属ロール102及び複数のベルト165の温度は、それぞれ同じ温度としたものに限らず、各段で異なる温度としてもよい。一例として、設定温度±10[℃]の範囲内で温度が異なっていてもよい。また、用紙P及びトナー像TAの温度が設定温度に収束すれば、金属ロール102及びベルト165が1、2、3、4、5組、あるいは、7組以上あってもよい。トナーTは、ポリエステル樹脂に限らず、他の樹脂であってもよい。
【0121】
金属ロール102は、SUS製に限らず、アルミ合金製や、他の金属で構成されていてもよい。なお、アルミ合金製の場合は、一例として、ロールの撓みを考慮してパイプ部の肉厚を7.5[mm]程度とした方がよい。さらに、離型性を向上させるために、表面に数十[μm]程度のフッ素樹脂層を設けてもよい。また、ベルト165は、ポリイミド樹脂製に限らず、他の樹脂や金属製ベルトを用いてもよい。さらに、金属ロール102及びベルト165は、従動するものに限らず、モータで駆動してもよい。加えて、対向ロール104を回転しない固定部材で構成してもよい。
【0122】
また、各温度収束部について、金属ロール102やベルト165に換えて、ヒートパイプを用いてもよい。ヒートパイプは、温度が高い部位から温度が低い部位へ、軸方向に熱を伝える。なお、ヒートパイプは、トナー像TA側に配置する場合は、回転する部材の内側に接触して配置するか、ヒートパイプ自体を回転させる必要があるが、用紙Pの裏側(トナー像TA側とは反対側)に接触させる場合は、回転させなくてもよい。
【0123】
さらに、各温度収束部について、ハロゲンヒータ106を用いずに、金属ロール102又はベルト165との接触によって、トナー像TAの温度をコールドオフセットが生じない設定温度に収束させてもよい。つまり、トナー像TAを加熱して設定温度に収束させるものに限らず、トナー像TAを冷却して設定温度に収束させてもよい。
【0124】
定着部60は、定着ロール62を用いたロール方式に限らず、ベルト方式であってもよい。また、定着部60は、2組のロールを用いるものに限らず、1組、あるいは3組以上のロールを用いてもよい。さらに、定着部60は、トナー像TBのグロス(光沢度)が設定値まで得られる場合は、接触加熱方式に限らず、非接触加熱方式であってもよい。
【0125】
第1実施形態の定着装置40について、金属ロール102の外周面に塗布ロール126を接触させてもよい。また、離型剤の塗布手段は、ロール方式に限らず、パッドなどの固定された部材を用いてもよい。第2実施形態の定着装置160について、両面定着の場合、ベルトユニット164と対向ロール104を用紙Pに対して交互に配置してもよい。
【0126】
金属ロール102、ベルト165の用紙Pに対する+X側、−X側の交互配置は、両面定着の場合に限らず、片面定着の場合に用いてもよい。また、金属ロール102、ベルト165は、交互配置に限らず、用紙Pの搬送方向で+X側に連続して複数配置された後、−X側に連続して複数配置されてもよい。さらに、金属ロール102、ベルト165は、両面定着の場合は、+X側と−X側とで数を一致させるとよいが、片面定着の場合は、+X側と−X側とで数が異なっていてもよい。