(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記モータは、固定子と前記駆動部に連結される回転子とを具備し、駆動電圧により、前記回転子が回転され、前記プランジャを移動する際に生じる抗力に応じて、モータを流れる電流の値が変わるモータであり、
前記制御装置は、前記モータを流れる電流を検出する検出回路を具備し、前記検出回路によって検出された前記電流に極大値が発生したときを、前記プランジャが前記上死点に達したときとする、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の留め具打込機。
前記処理装置は、前記回転位置検出センサからの検出信号に基づいて、前記留め具を打込む打込の指示から、前記モータを流れる電流に極大値が発生するまでの、前記モータの回転量を算出し、
算出した回転量に基づいて、前記モータを停止させる回転量を変更する、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の留め具打込機。
前記コントローラは、前記ブラシレスモータを動作させてから前記判定した時刻までの間における前記ブラシレスモータの回転子の回転量を、前記磁極センサからの検出信号に基づいて、算出し、該算出した回転子の回転量に従って、前記所定の値を変更する、請求項9に記載の留め具打込機。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部分には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は、原則として省略する。
【0024】
(実施の形態1)
以下の説明においては、被打込み部材に打込まれる留め具が、水平方向に、留め具打込機から被打込み部材へ射出される例を述べる。この場合、留め具打込機において、プランジャ等も水平方向に移動するが、説明の便宜上、上下方向として表現する。しかしながら、あくまでも便宜上であって、これに限定されるものではない。例えば、留め具打込機から被打込み部材へ鉛直方向に、留め具が射出される場合であれば、鉛直方向を上下方向と見なせばよい。
【0025】
留め具打込機の構成およびその動作について、以下順次説明する。
【0026】
<留め具打込機の構成>
図1は、ばね駆動式留め具打込機の全体構成を示す側面図である。この側面図は、留め具打込機の断面を、側面から見た図である。同図において、1は留め具打込機である。留め具打込機1は、胴体ハウジング部2、胴体ハウジング部2から分岐して設けられたハンドルハウジング部3、ハンドルハウジング部3の端部に着脱可能に装着された電池パック(蓄電池)4を備えている。また、留め具打込機1は、胴体ハウジング部2における留め具の打込方向の先端側(下端側)に設けられたノーズ(射出部)5と、互いに連結された複数本の留め具(例えば、釘)23が装填され、ノーズ5の射出部通路5a内に、留め具23を一本毎に供給するためのマガジン6を備えている。
【0027】
電池パック4は、ハンドルハウジング部3に装着されることにより、後で述べるインバータ51(
図11)を介してモータ7(
図2、3、11および14)に電気的に接続される。また、後で述べる制御装置50にも、電池パック4は、装着されることにより、電気的に接続される。
【0028】
胴体ハウジング部2は、プランジャ8と、プランジャ8に打撃力(弾発力)を与えるための打込みばね(コイルばね9)と、モータ7と、モータ7の回転速度を減速して大きなトルクを得るための減速機構部80(
図3)とを内蔵している。さらに、胴体ハウジング部2は、減速機構部80を介してモータ7により駆動され、打込みばね(以下、ばねとも称する場合がある)9を圧縮および解放(伸張)するためのばね圧縮解放機構部81(以下、ばね圧縮駆動部と称する)を内蔵している。後で、
図3を用いて説明するが、ばね圧縮駆動部81は、ワイアあるいはロープ(巻上接続線)16と、ドラム(回転体)13と、ドラムフック22と、ピン支持プレート21と、動力伝達ピン17と、ガイドプレート18とを具備している。
【0029】
ハンドルハウジング部3は、
図1に示されている様に、胴体ハウジング部2の側面を基端部として、胴体ハウジング部2の外周面から延出されている。ハンドルハウジング部3の基端部には、モータ7の起動を制御するトリガ10が設けられている。トリガ10に対する操作は、トリガスイッチ54により検知され、トリガスイッチ54により検知された結果は、制御装置50に電気的に伝えられる。ハンドルハウジング部3には、制御装置50が設けられ、ハンドルハウジング部3の他端部には、電池パック4が装着され、ハンドルハウジング部3内に配された配線によって、電池パック4からの電力が、制御装置50とインバータ51を介してモータ7に供給される。
【0030】
マガジン6は、
図1に示されている様に、ノーズ5に位置する一端から、ハンドルハウジング部3に位置する他端へ延在する様に設けられている。マガジン6内には、留め具23である釘が、複数本、マガジン6の延在方向に連接する様に装填されている。互いに連接された複数本の釘(留め具23)は、その最端部が常に、ノーズ5の射出部通路5a内に位置する様に、給送部材6aによってノーズ5側に押圧されている。これによって、射出部通路5a内に位置する留め具23は、後述する様に、ブレード8aの先端部がノーズ5の射出部通路5a内に移動する際、ブレード8aの先端部により打撃を受け、ノーズ5の射出部通路5aより押し出されて被打込み部材(図示せず)に打込まれる。また、ノーズ5の射出部通路5aの長さを、打込む留め具23(釘)の長さよりも長くすることにより、打撃される釘が被打込み部材に接触するまでプランジャ8(プレート8a)を加速させ、強い打撃力を留め具23である釘に与えることができる。
【0031】
ノーズ5の先端には、ノーズ5の先端が実質的に被打込み部材に当接したことを検知するためのプッシュスイッチ(プッシュレバー)55が設けられている。後で説明するが、このプッシュスイッチ55と、トリガ10の操作を検知するトリガスイッチ54とは、モータ7の動作を制御する操作スイッチとして機能し、プッシュスイッチ55とトリガスイッチ54のオン/オフは、制御信号として制御装置50に供給される。
【0032】
図1に示されている様に、プランジャ8は、胴体ハウジング部2の上死点(第1点)側と下死点(第2点)側との間を、上方向A(実線矢印)あるいは下方向B(破線矢印)で上下移動可能に配置されている。すなわち、プランジャ8は、
図1の中央部分に示されている胴体ハウジング部2の円筒部内に配置され、上死点と下死点との間を移動可能にされている。ここで、下死点側は、ノーズ5側を意味し、上死点側はノーズ5とは反対側を意味する。プランジャ8は、ブレード(ドライバブレード)8aを有し、プランジャ本体8が、下死点側へ移動(下方向B)したとき、ブレード8aの先端は、ノーズ5内に画成された留め具(釘)23が装填される射出通路5aの先端まで移動する(延びる)。
【0033】
プランジャ8のプランジャプレート8bの上死点側上面部と、後述するばね圧縮機動部81を囲む壁部2aとの間には、ばね(コイルばね)9が圧縮可能な状態で設置されている。後で述べるが、ばね圧縮駆動部81によってワイア16が巻き上げられる。この巻き上げ動作によって、プランジャ8は、上死点側へ移動(上方向A)させられる。すなわち、プランジャ8は、巻き上げ動作により、上死点側へ巻き上げられる。プランジャ8が、上死点側へ巻き上げられることにより、ばね9は圧縮される。圧縮された後、ばね9は解放される。これにより、プランジャ8は、ばね9によって付勢される。すなわち、プランジャ8は、上死点側から下死点側へ向かう方向(打込方向:下方向B)に、ばね9により、より強い付勢力で押圧される。
【0034】
図2は、
図1に示した留め具打込機1を上面から見た上面図である。
図1と同様に、
図2は、留め具打込機1の断面を上面から見た図である。
図2において、
図1と同じ部分には、同じ符号が付してあるので、
図1において説明していない部分のみを説明する。
【0035】
図2において、7は、上記したモータである。
図2において、12はダンパ、13Cはドラムダンパである。ダンパ12は、胴体ハウジング部2において、下死点側に設置されている。ばね9によって付勢されたプランジャ8が下死点側に移動し、胴体ハウジング部2の下死点側に衝突したときの衝撃を、ダンパ12は緩和する機能を有する。一方、ドラムダンパ13cは、後で説明するがドラム13が逆回転したときに発生する衝撃を緩和する機能を有する。
【0036】
図3は、留め具打込機1を後ろから見た後面図である。この
図3も、留め具打込機1の断面を後ろから見た図である。
図3には、先に述べたモータ7、減速機構部80およびばね圧縮駆動部81の構成が、より詳細に示されている。
【0037】
図3に示されている様に、モータ7は、その両端に回転出力軸7aを有している。減速機構部80は、モータ7に連携して設けられている。すなわち、モータ7の回転出力軸7a(
図3において上側)に取り付けられた第1のプーリー14が、減速機構部80を構成する部品とされている。減速機構部80は、上記した第1のプーリー14と、ベルト40と、第2のプーリー15と、遊星ギア11とにより構成されている。
【0038】
第1のプーリー14の回転は、ベルト40によって第2のプーリー15に伝達される。これにより、第1のプーリー14と第2のプーリー15は、モータ7の回転出力軸7aの回転を、第2のプーリー15の回転出力軸15aに伝える。第1のプーリー14と第2のプーリー15の比を設定することにより、モータ7の回転出力軸7aの回転速度は、減速され、第2のプーリー15の回転出力軸15aの回転速度は、減速された回転速度となる。すなわち、第1のプーリー14と第2のプーリー15とによって、モータ7の回転出力軸7aの回転速度を減衰させる第1の減速部が構成される。
【0039】
遊星ギア11は、第2のプーリー15の回転出力軸15aに連携された3段の遊星ギア部を含んでいる。第2のプーリー15の回転出力軸15aの回転速度は、遊星ギア11の回転出力軸19において、より減速された回転速度となる。すなわち、この実施の形態においては、遊星ギア11によって、第2の減速部が構成されている。
【0040】
後で説明するが、回転体であるドラム13は、遊星ギア11(第2の減速部)の回転出力軸19に連結され、回転出力軸19で得られる減速された回転力によって、駆動される。ドラム13は、駆動されることにより、ワイア16を巻き上げて、プランジャ8を上死点側へ移動させる。減速機構部80によって、モータ7の回転出力軸7aにおける回転は、ドラム13の回転軸19において減速される。この減速したぶん、ドラム13の回転軸19のトルク(回転力)は、モータ7のトルクより増幅される。そのため、モータ7として小型のモータを適用して、ばね9を圧縮するところの圧縮機構部を構成することが可能となる。例えば、モータ7の回転出力軸7aとドラム13の回転出力軸19(減速機構部80の回転出力軸19)との減速比は150〜300とされる。
【0041】
モータ7の回転出力軸7a(
図3において下側)には、胴体ハウジング部2の取付部2bに固定された一方向性クラッチ(逆回転防止機構)24が設置されている。一方向性クラッチ24は、後で説明する様に、モータ7(ドラム13)が正回転方向(A方向:所定の方向)のみに回転することを許容し、逆回転方向(B方向)の回転を抑制(禁止)するために設けられている。すなわち、モータ7の回転出力軸7aに、ドラム13がワイア16を巻き上げる方向Aとは逆方向Bに回転させる様なトルクが加わった場合、その様な逆方向トルクに打ち勝って、逆方向Bの回転を阻止する機能を持たせるものである。
【0042】
また、ドラム13が、後で説明するばね圧縮駆動部81および減速機構部80によって、モータ7の回転出力軸7aに連結されている場合、モータ7が停止していても、ドラム13に、それを逆方向Bへ回転させるトルクが加わったとき、一方向性クラッチ24により、モータ7の回転出力軸7aおよびドラム13が、逆方向Bへ回転することが阻止される。すなわち、一方向性クラッチ24は、モータ7が動作しているか否かにかかわらず、逆方向Bへの回転を阻止する機能を有する。一方、後で説明するばね圧縮駆動部81によって、モータ7の回転出力軸7aとドラム13との連結が解除された場合には、ドラム13は、それを逆方向Bへ回転させるトルクが加わった場合、逆方向Bへ回転することが可能である。
【0043】
勿論、一方向性クラッチ24は、正方向Aへ回転させるトルクが加わった場合には、一方向性クラッチでの損失トルクを超えるトルクに対しては、正方向Aの回転(空転)を許容する。一方向性クラッチ24としては、コロ式(ローラ式)クラッチあるいはラチェット式クラッチを適用することができる。例えば、特許文献1に開示されている様な一方向性クラッチを、一方向性クラッチ24として用いることができる。
【0044】
<ばね圧縮駆動部81の構成>
図4は、ばね圧縮駆動部81の構成を示す斜視図、
図5は、ばね圧縮駆動部81の一部を分解した分解斜視図、
図6は、ばね圧縮駆動部81の全体を分解した分解斜視図である。
【0045】
当該ばね圧縮駆動部81は、ばね9(
図1および
図2)の圧縮および解放を行う。
図4から
図6において、ばね圧縮駆動部81は、ガイドプレート18、ピン支持プレート21、ドラムフック22、ドラム13、動力伝達ピン17、ワイア16を備えている。なお、
図6には、ドラムフック22からドラム13を取り外した状態(分解した状態)が示されている。
【0046】
ガイドプレート18は、ガイド溝18aおよびガイド突起部18bを有しており、遊星ギア11の回転出力軸19の一端を、それを回転可能に支持している。遊星ギア11の回転出力軸19は、キー20を有しており、キー20は、回転出力軸19の回転により、回転する。ピン支持プレート21は、ピン支持スライド部21aおよびキー溝21bを有しており、キー溝21bに出力回転軸19のキー20が連結され、ピン支持プレート21は、回転出力軸19の回転により、回転する。動力伝達ピン17は、ピンスライド部17aおよびピン引掛部17bを有しており、ピンスライド部17aは、ピン支持プレート21のピン支持スライド部21aにスライド可能にはめ込まれ、支持されている。
【0047】
ドラムフック22は、フック部22aおよびベアリング22bを有しており、ドラムフック22の外周面はドラム13に結合され、ドラムフック22の内周面はベアリング22bを介して回転出力軸19に結合されている。ドラムフック22のフック部22aは、後で説明するが、回転出力軸19の回転に同期して動力伝達ピン17が回転している期間の内、動力伝達ピン17のピン引掛部17bに引っ掛かっている(係合している)期間と、外れている期間とがある。ピン引掛部17bが動力伝達ピン17に引っ掛かっている(係合している)期間においては、回転出力軸19の回転によって、ドラムフック22は駆動され、ドラムフック22に結合されたドラム13も駆動される。一方、ピン引掛部17bが動力伝達ピン17から外れている期間においては、ドラムフック22およびドラム13は、回転出力軸19とは分離され、回転出力軸19に対して自由に回転する。すなわち、この期間においては、回転出力軸19による駆動力は切断され、ドラム13は自由に回転する。
【0048】
ドラム13は、ドラムダンパ係合部13aおよびドラム谷部(溝部)13bを有している。ドラム谷部13bには、ワイア16が接合され、ドラム13が所定の方向へ回転することにより、ワイア16はドラム13に巻き上げられる。後で説明するが、回転出力軸19によってドラム13が駆動されているとき、ドラム13は所定の方向へ回転することになる。ドラム13が回転出力軸19から分離されたとき、ドラム13は上記した所定の方向とは逆の方向へ回転することが可能となる。逆の方向へドラム13が回転したとき、ドラム13が所定の位置で停止する様に、ドラムダンパ係合部13aが設けられている。ドラム13が所定の位置に到達したとき、ドラムダンパ係合部13aは、
図1に示したドラムダンパ13cに到達し、ドラムダンパ13cによって、ドラム13は停止させられる。
【0049】
ばね圧縮駆動部81においては、減速機構部80を介して伝達されたモータ7の駆動力が、ドラム13に伝達される。ドラム13は、モータ7の駆動力により所定の方向へ回転し、それの基準状態(回転角度が約0度)から所定の回転角度(例えば、約270度を超える所定の回転角度)へ回転しながら、ワイア16を、実線の矢印Aで示した方向に巻き上げて、打込みばね9を圧縮する。ドラム13が、所定の回転角度(約270度を超える所定の回転角度)に達すると、回転出力軸19とドラム13の回転軸との結合が切断され、ドラム13は、回転出力軸19に対して回転自由(フリー)に支持される。これにより、圧縮されていた打込みばね9の付勢力により、ワイア16は、破線で示した方向Bへ動き、ドラム13は、上記した所定の方向とは逆の方向に回転する。このとき、圧縮されていた打込みばね9は、急激に解放される。この解放された打込みばね9のばねエネルギーによって、
図1および
図2に示したところのプランジャ8のブレード8aは、留め具23である釘を打撃する。
【0050】
この様に、ばね圧縮駆動部81は、ドラム(回転体)13の回転位置が、基準状態から所定の回転角度(所定の位置)までは、打込みばね9を圧縮する機能を有し、ドラム13の回転位置が所定の位置に到達すると、打込みばね9を解放する機能を有する。すなわち、ばね圧縮駆動部81は、減速機構部80の回転出力軸19に得られたモータ7の駆動力を、ドラム13に伝達して、ばね9を圧縮する機能と、モータ7の駆動力の伝達を切断して、圧縮されたばね9を解放する機能とを有する。この場合、2つの機能の切替は、ドラム(回転体)13の回転位置(回転角度)が、所定の位置に達するか否かで行われる。
【0051】
さらに、このばね圧縮駆動部81について、
図4から
図6を用いて、詳細に説明する。打込みばね9を圧縮するために、ばね9は、プランジャ8を介して巻上接続線によりドラム13に結合されている。実施の形態では、巻上接続線としてワイア16が用いられている。ワイア16は、複数の金属線材を束ねて構成されており、しなやかさと強度とを兼ね備える様にされている。また、ワイア16の表面には、樹脂がコーティングされており、ワイア16と接触するドラム溝部13bの部材等の摩耗の低減を図っている。
【0052】
ドラムフック22の円筒部の外周面は、
図6に示されている様に、ドラム13の中心穴に圧入され、
図4および
図5に示されている様に、ドラムフック22とドラム13は一体化されている。ドラムフック22の円筒部の内周面には、ベアリング(例えば、ボールベアリング)22bが圧入され、該ベアリング22bは回転出力軸19に設置されている。すなわち、ドラムフック22の円筒部の内周面は、ベアリング22bを挟んで、回転出力軸19に接している。これにより、ドラム13およびドラムフック22は、両者一体となって、回転出力軸19に対し回転可能に支持されている。
【0053】
動力伝達ピン17は、ピン支持プレート21に設けられたピン支持スライド部21aと係合するピンスライド部(溝部)17aと、ドラムフック22のフック部22aに係合するピン引掛部17bとを有している。ここで、ピンスライド部17aは、ピン支持プレート21が有するピン支持スライド部21aに対しスライド可能に係合されている。また、動力伝達ピン17は、その側端面がガイドプレート18に設けられたガイド溝18a内の壁部に当接する様に設置され、動力伝達ピン17の移動方向および移動量は、ガイド溝18aの平面形状によって制御される。動力伝達ピン17の他端面であるピン引掛部17bは、回転出力軸19の軸方向においてフック部22aの高さと同じ高さに設置されており、ピン支持プレート21と同期して動力伝達ピン17が回転しているときは、ピン引掛部17bとフック部22aとが係合している。
【0054】
ピン支持プレート21は、キー溝21bを有し、回転出力軸19に設けた突起部であるキー20に該キー溝21bが係止されている。これにより、回転出力軸19、ピン支持プレート21および動力伝達ピン17の三者は、常に同期して回転する様に構成されている。
【0055】
図5および
図6に示されている様に、ガイド溝18aは、回転出力軸19の周りに設けられているが、回転出力軸19の周辺部にはガイド突起部18bが設けられており、回転出力軸19とガイド溝18bの壁部との間の平面的な距離は、ガイド溝18bの平面的な位置において異なっている。回転出力軸19の回転に同期して、ピン支持プレート21と動力伝達ピン17が回転するとき、回転出力軸19とガイド溝18aの壁部との間の平面的な距離が変わり、これに合わせて、動力伝達ピン17は、ピン支持プレート21のピン支持スライド部21aを径方向にスライドする。スライドすることにより、回転出力軸19と動力伝達ピン17との間の平面上における距離が変化する。すなわち、回転出力軸19の回転に同期して、動力伝達ピン17が回転しているとき、ガイド溝18aの平面的な形状に合わせて、回転出力軸19と動力伝達ピン17との間の平面における距離が変化する。
【0056】
ドラムフック22のフック部22aは、回転出力軸19と動力伝達ピン17との間の平面上における距離が所定の値よりも小さいとき、動力伝達ピン17のピン引掛部17bに係合する。一方、回転出力軸19と動力伝達ピン17との間の平面距離が所定の値よりも大きくなったとき、動力伝達ピン17のピン引掛部17bとフック部22aとの間に平面上で距離(隙間)が発生し、ピン引掛部17bとフック部22aとの間の係合は、解除される。ピン引掛部17bとフック部22aとの間に係合が解除されることにより、ドラムフック22と一体化されたドラム13は、回転出力軸19から分離され、自由な方向に回転が可能となる。言い換えるならば、ドラム(回転体)13は、モータ7の駆動力により、所定の位置まで回転すると、フック部22aが、動力伝達ピン17から外れ、モータ7の駆動力から解放され、自由な方向へ回転可能となる。
【0057】
<ばね圧縮駆動部81の動作>
図7から
図9のそれぞれは、ばね圧縮駆動部81が動作しているときのドラム13の回転状態を示す斜視図である。また、
図10は、ドラム13が逆回転をしている状態を示す斜視図である。
図7から
図10においては、それぞれの状態を分かり易くするために、圧入によってドラムフック22と一体化されたドラム13は省略されている。すなわち、ドラム13がドラムフック22から外された状態が、これらの斜視図には示されている。この実施の形態においては、特に制限されないが、ドラム(回転体)13の回転位置(回転角度)を、ドラム13と一体化されたドラムフック22のフック部22aの回転位置(回転角度)で表し、
図7において、下側を0度とし、反時計回りに回転角度が90度、180度、270度と増えるものとして、説明する。
【0058】
図7には、ドラム13が基準状態にある状態が示されている。基準状態では、ドラム13と一体化されたドラムフック22のフック部22aの回転角度は約0度であり、ドラム13の回転位置は約0度である。この基準状態においては、フック部22aと動力伝達ピン17が係合しているため、ピン支持プレート21の回転角度も0度の位置にある。この基準状態では、プランジャ8(
図1および
図2)は下死点側に停止している。同図において、矢印Aは、回転出力軸19、言い換えるならばピン支持プレート21および動力伝達ピン17が回転する方向を示しており、この実施の形態においては、矢印Aの回転方向を正回転方向Aと称し、矢印Aとは逆の方向を逆回転方向B(破線矢印B)と称する。
【0059】
図8には、モータ7の駆動力により回転出力軸19が回転し、フック部22a(ドラム13)が、基準状態から、正回転方向Aに、約135度回転したときの状態が示されている。また、
図9には、
図8からさらに回転し、フック部22a(ドラム13)が、基準状態から、正回転方向Aに、約270度回転したときの状態が示されている。このように、回転出力軸19が、正回転方向Aに回転することにより、フック部22aとピン引掛部17bとの間で係合している領域が、徐々に少なくなる。
図10には、回転出力軸19が回転することにより、フック部22aとピン引掛部17bとの間を係合している領域が無くなり、フック部22aが、ピン引掛部17bとの間の係合から解放され、圧縮されたばね9(
図1および
図2)によって、プランジャ8へ付勢力が与えられ、ドラム13が逆回転方向Bに逆回転している状態が示されている。
【0060】
プランジャ8を下死点側から上死点側へ移動させることにより、プランジャ8は、ばね9の付勢力を受けることになる。上記したばね圧縮駆動部81は、この付勢力に抗しながら、プランジャ8を下死点側(基準状態)から上死点側の方向へ移動させ、ばね9を圧縮する。すなわち、ばね9によってばね付勢されるプランジャ8を、モータ7、減速機構部80およびばね圧縮駆動部81の動作によって、ばね付勢力(弾発力)に抗しながら上死点側の所定位置まで押し上げる。押し上げた後、ばね圧縮駆動部81の動作によって、圧縮されたばね9を解放し、解放時に得られるばね9の弾発力(打撃力)が、プランジャ8に取り付けられたブレード8aに与えられる。ブレード8aは、与えられた打撃力を、マガジン6(
図1)に装填された留め具(釘)23へ与える。これによって、ノーズ5(
図1および
図2)から被打込み部材へ向けて留め具(釘)23が打込まれる。次に、ばね圧縮駆動部81の動作を、
図7から
図10を用いてより詳細に説明する。
【0061】
プランジャ8(
図1および
図2)が、下死点側に停止している基準状態では、当該プランジャ8は、ばね9の付勢力によって下死点側へ押し付けられている。このとき、ばね9を圧縮するために用いられるところのワイア16を巻き上げるドラム13を駆動するピン引掛部17bは、例えば
図7に示す様な基準状態にある。例えば、この様な基準状態において、作業者が、留め具打込機1のハンドルハウジング部3(
図1)を把持し、トリガ10を引き込んで、トリガスイッチ54をオン状態にさせる。このとき、ノーズ5の先端に設けられたプッシュスイッチ55が被打込み部材に押し付けられると、制御装置50(
図2)の機能によって、電池パック4からモータ7へ電力が供給され、モータ7が正回転方向Aへ回転する。
【0062】
図3の説明で述べた様に、モータ7の回転力は、その回転出力軸7aに取り付けられた第1のプーリー14と、第2のプーリー15と、第1のプーリー14と第2のプーリー15との間に巻き掛けられたベルト40とによって構成される第1の減速部の回転出力軸15aに伝達される。第1の減速部の回転出力軸15aの回転力は、3段の遊星ギア11で構成される第2の減速部によって、回転出力軸19に伝達される。回転出力軸19の回転力は、当該回転出力軸19に機械的に結合されたピン支持プレート21および動力伝達ピン17に伝達される。このとき、モータ7は、正回転方向Aへ回転しているため、モータ7の回転出力軸7aに結合された一方向性クラッチ24は空転する。すなわち、このとき、一方向性クラッチ24は、モータ7が正回転方向Aへ回転するのを許容する。
【0063】
ばね圧縮駆動部81が基準状態にあるとき(ドラム13の回転位置が約0度のとき)、すなわち
図7に示した状態では、動力伝達ピン17とフック部22aは係合している。このため、ピン支持プレート21が、モータ7の回転力を受けて、回転すると、ドラムフック22およびドラム13は正回転方向Aへ回転する。ドラム13が正回転方向Aへ回転することにより、その外周面に設けられたドラム溝部13bに、ワイア16を巻き込む。すなわち、ワイア16は、
図1、
図2および
図4に実線の矢印で示した方向Aへ移動する様に、ドラム13に巻き込まれる。ワイア16が方向Aへ移動することにより、
図1および
図2に示されている様にワイア16の端部に結合されたプランジャ8は、ばね9の付勢力に抗して上死点側へ押し上げられ、上死点側へ移動する。プランジャ8が上死点側へ移動するのに応じて、プランジャ8の上端面に設けられたプランジャプレート8b(
図1、
図2)によりばね9がより圧縮される。
【0064】
図8には、
図7に示した基準状態から、モータ7が正回転方向Aへ回転し、フック部22a(ドラム13)が
図7の基準状態から約135度回転した状態が示されている。この状態においては、動力伝達ピン17は、フック部22aに係合している。そのため、ピン支持プレート21の回転に同期して、ドラム13も約135度回転している。ドラム13が約135度回転することにより、ワイア16は、ドラム13のドラム溝部13bにさらに巻き込まれ、ワイア16は、さらに方向Aへ移動する。これにより、ばね9はさらに圧縮されることになる。
【0065】
モータ7がさらに正回転方向Aへ回転することにより、フック部22a(ドラム13)は、
図8に示した約135度の状態から
図9に示した約270度の状態へと回転する。約135度の状態から約270度の状態へ回転するのに従って、ガイド溝18aの内周壁部を規定するガイド突起部18bに、動力伝達ピン17の側端部が接触する様になる。このガイド突起部18bは、その平面形状が回転出力軸19の中心から、
図7〜
図10においては左側の径方向に、約5〜15mm膨らんだ、ほぼ楕円形状を有している。楕円形状と見なした場合、ガイド突起部18は、回転出力軸19から、
図7〜
図10においては左側に偏芯している。ピン支持プレート21(ドラム13)が、約135度から約270度へ回転するのに従い、動力伝達ピン17は、ガイド突起部18bの外周形状に沿って移動する。ガイド突起部18bの外周形状に沿って移動するのに従い、動力伝達ピン17は、ピン支持スライド部21a(
図6)をスライドし、回転出力軸19から遠のく径方向へ移動する。
【0066】
ピン支持プレート21(ドラム13)が、
図7に示した基準状態から、
図9に示した約270度の状態へ回転することにより、動力伝達ピン17は、径方向に約5〜15mm移動し、約270度を超えると、動力伝達ピン17とフック部22aとの間の引掛り(係合)が外れる。動力伝達ピン17がフック部22aと係合している期間、すなわち基準状態(
図7)から約270度(
図9)までの期間、ドラム13は、ピン支持プレート21と同期して回転する。ドラム13が、約270度まで回転したとき、プランジャ8は、ワイア16によって、上死点側の最高位置まで吊り上げられるようにする。すなわち、ドラム13が、約270度まで回転したときに、ばね9が最も圧縮された状態となる様にする。
【0067】
ピン支持プレート21(ドラム13)が、約270度を超えて回転すると、動力伝達ピン17とフック部22aとの間の引掛り(係合)が外れる。これにより、圧縮されたばね9が解放され、ばね9の解放力(弾発力)によってプランジャ8が下死点側へ移動する。プランジャ8が下死点側へ移動すると、ワイア16に引っ張られて、ドラム13およびドラムフック22は、回転出力軸19の正回転方向Aとは反対の逆回転方向Bへ回転を始める(
図10)。動力伝達ピン17とフック部22aとの間の引掛り(係合)が外れるまでは、ドラム13は、一方向性クラッチ24によって、逆回転方向Bへ回転しない。しかしながら、動力伝達ピン17とフック部22aとの間の引掛り(係合)が外れることにより、ドラム13は、一方向性クラッチ24による制限が取り除かれ、逆回転方向Bへ回転することが可能となる。
【0068】
圧縮されたばね9の解放力によってドラム13が逆回転方向Bへ回転し、プランジャ8が下死点側へ移動すると、プランジャ8に取り付けられたブレード8aは、ノーズ5の射出部通路5aを貫通して、留め具(釘)23を被打込み部材へ打込むことができる。この打込みと同時期に、ドラム13は基準状態(
図7)へ戻る。基準状態へ戻ると、ドラム13に設けられているドラムダンパ係合部13a(
図8)と胴体ハウジング部2内に固定されたドラムダンパ13cとが係合し、ドラム13およびドラムフック22のフック部22aが、
図7に示した基準状態の位置で再び係合することになる。
【0069】
後で説明するが、留め具(釘)23を被打込み部材に打込んだ後も、制御装置50によって、モータ7は所定時間駆動させられる。これにより、フック部22a(ドラム13)は、それが再係合された動力伝達ピン17によって、正回転方向Aへ再び回転を始める。ドラム13が、正回転方向Aへ再び回転することにより、上記した様に、ワイア16が、ドラム13に巻き込まれ、プランジャ8が上死点側へ移動し、ばね9が付勢力を持つ様に圧縮させられる。
【0070】
この実施の形態においては、留め具23を打込んだ後、プランジャ8が、上死点側の所定の位置に到達するまでの時間(所定時間)、モータ7が駆動される。ここで、所定の位置とは、留め具23を打込むために、圧縮されたばね9を解放するときのプランジャ8の位置よりも、下死点側に近い位置である。ばね9の付勢力に抗してプランジャ8を、上死点側へ移動させている期間においては、プランジャ8の位置は、ドラム(回転体)13の回転位置(回転角度)に比例する。例えば、打込みを行うために、圧縮されたばね9を解放するときのプランジャ8の位置は、上記した説明では、ドラム13の回転位置が約270度を超える所定の位置に対応する。この場合、上記したプランジャ8における所定の位置は、この実施の形態においては、ドラム13の回転位置が約200度の位置に対応する。すなわち、ドラム13の回転位置(回転角度)が、約200度に到達するまでの時間が、所定時間とされる。勿論、モータ7の駆動トルク等によって、回転体(ドラム13)の回転位置が約200度に到達するための所定時間は変わる。
【0071】
プランジャ8を上死点側の所定の位置で停止させた状態、すなわち、ドラム13を所定の回転位置で停止させた状態が、次の打込みサイクルの初期状態とされる。例えば、プッシュスイッチ55がオン状態にされ、次の打込サイクルが開始されると、モータ7によって、ドラム13は、初期状態として保持していた所定の回転位置(約200度)からばね9を解放する回転位置(約270度を超える所定の位置)へ向けて回転する様に駆動される。これにより、プランジャ8も、初期状態として保持されていた所定の位置から、上死点側に向けて移動させられる。ドラム13が、ばね9を解放する回転位置に到達すると、ばね9の付勢力によりプランジャ8が下死点側へ移動し、留め具23の打込みが行われる。以下、同様の動作が繰り返される。
【0072】
上記した様に、この実施の形態においては、ドラム13を再び回転させ、ドラム13の回転位置が所定の回転位置に到達したとき、モータ7が停止される。モータ7が停止することにより、圧縮されたばね9の付勢力がプランジャ8およびドラム13に働く。すなわち、プランジャ8を下死点側へ移動させ、ドラム13を逆回転方向Bへ回転させる様に、圧縮されたばね9の付勢力が働く。しかしながら、この実施の形態においては、動力伝達ピン17が、ピン支持スライド部21aのスリットに係合されている。そのため、圧縮されたばね9の付勢力は、プランジャ8、ワイア16、ドラム13、ピン支持プレート21、動力伝達ピン17、および回転出力軸19を経由して、モータ7の回転出力軸7aに伝達される。すなわち、このときのばね9の付勢力は、モータ7の回転出力軸7aを逆方向へ回転させる様に働く。このとき、一方向性クラッチ24によって、回転出力軸7aが逆方向へ回転するのが阻止される。これにより、ドラム13を再び回転させた後、モータ7を停止させても、ドラム13の回転位置およびプランジャ8の位置は、初期状態として維持される。
【0073】
なお、モータ7を停止させても、モータ7の回転子、遊星ギア11、回転出力軸19等が回転慣性により、ドラム13は回転を続ける様に動く。この回転慣性によるドラム13の回転位置を考慮して、モータ7を停止させる際のタイミングが定められる。
【0074】
<制御装置50の構成>
次に、制御装置50の構成を説明する。
図11は、制御装置50の構成を示すブロック図である。
図11には、理解を容易にするために、制御装置50だけでなく、モータ7、インバータ51、磁極センサ(ホール素子)52および電池パック4(
図11では、電池と記載)が示されている。
【0075】
電池パック4は、例えばリチウムイオン二次電池を有しており、インバータ51および制御装置50に電力を供給する電源として働く。この実施の形態においては、モータ7として、ブラシレスモータが用いられている。ブラシレスモータは、固定子と回転子とを有し、固定子には、互いに位相の異なる三相電圧(駆動電圧)が印加される複数の界磁巻線(例えば、3個の界磁巻線)が設けられ、回転子は回転出力軸7aと一体に形成されている。回転子は磁石により形成されている。インバータ51は、電池パック7から供給される直流電圧Vccを受け、互いに位相の異なる三相電圧(駆動電圧)を形成する。形成された三相電圧は、固定子に設けられている複数の界磁巻線に印加される。これにより、固定子の界磁巻線には回転磁界が発生する。回転子である磁石により形成される磁界と、固定子の界磁巻線に発生する回転磁界との相互作用により、回転子が回転し、回転子と一体となっているモータ7の回転出力軸7aが回転する。
【0076】
回転子を継続的に回転させるために、回転子の回転位置に応じて、固定子の界磁巻線に印加される三相電圧を順次切り替える必要がある。そのため、回転子の回転位置を検知するために、ブラシレスモータには、磁極センサ52が取り付けられている。
【0077】
図11において、56は電流検出用抵抗素子である。電流検出用抵抗素子56の一端は、インバータ51に接続され、その他端は回路の接地電圧GNDに接続されている。インバータ51は、固定子の界磁巻線に流れる電流に従った電流(駆動電流)を、電流検出用抵抗素子56の一端に供給する。回転子の界磁巻線に流れる電流の値は、回転子と一体となっている回転出力軸7aの回転力(トルク)に比例して変わる。ばね9を圧縮するために、プランジャ8を上死点側へ移動させていくと、ばね9の発生する付勢力が次第に高くなる。次第に高くなるばね9の付勢力に抗するために、モータ7の回転力も次第に高くなり、界磁巻線を流れる電流の値も上昇する。一方、ばね9が解放されると、必要とされる回転力が低下するため、界磁巻線を流れる電流の値も低下する。
【0078】
この様に、その値が、回転力に従って変化する界磁巻線を流れる電流に基づいた駆動電流が、電流検出用抵抗素子56によって、検出電圧に変換される。すなわち、電流検出用抵抗素子56における電圧降下として検出される。電流検出用抵抗素子56により形成された検出電圧は、電流検出回路57に供給される。電流検出回路57は、検出電圧を増幅して、マイクロプロセッサ53(
図11では、マイコンと記載し、以下マイコンと称する)に供給する。
【0079】
図11において、制御装置50は、上記したマイコン53、電流検出回路57および電流検出用抵抗素子56を具備する。さらに、制御装置50は、電池電圧検出回路63、プッシュスイッチ55、トリガスイッチ54、モードスイッチ58、電源スイッチ59、電源スイッチ検知回路60、15分タイマ62、釘残量センサスイッチ64、検知回路65、表示回路66およびスイッチ61を具備している。また、制御装置50は、図示されていないがマイコン53を動作させるためのプログラムを格納した記憶装置を具備している。マイコン53は、当該記憶装置に格納されたプログラムを読み出し、プログラムに従って、以下に述べる複数の機能を実行する。
【0080】
スイッチ61は、電源電圧Vccと制御装置50内に具備された各回路、例えばマイコン53、電流検出回路57等との間に結合され、電源スイッチ検知回路(図では、電源SW検知回路と記載)60からの検知信号に従って、オン/オフ制御される。電源スイッチ検知回路60は、電源スイッチ(図では、電源SWと記載)59からのオンオフ信号と15分タイマ62からのオフ信号とを受け、これらのオンオフ信号とオフ信号とに従って、スイッチ61をオン/オフ制御する。電源スイッチ59は、
図1には示されていないが、留め具打込機1に搭載された電源スイッチである。
【0081】
図11に示したプッシュスイッチ55およびトリガスイッチ54は、
図1および
図2に示したプッシュスイッチ55およびトリガスイッチ54を示している。プッシュスイッチ55は、ノーズ部5が被打込み部材へプッシュされたか否かを検知し、検知した結果をマイコン53に通知する。また、トリガスイッチ54は、トリガ10(
図1)の引き込み操作を検知し、トリガ10の引き込み操作が行われたとき、それをマイコン53に通知する。モードスイッチ(図では、モードSW(単/連)と記載)58は、
図1には示されていないが、留め具打込機1に設けられ、打込みモードを選択するスイッチであり、例えば留め具(釘)23を単発で打込むのか連発で打込むのかを選択するスイッチである。このモードスイッチ58によって選択されたモードは、マイコン53に通知される。
【0082】
釘残量センサスイッチ(図では、釘残量センサSWと記載)64は、マガジン6(
図1)のノーズ部5側端部において給送部材6a(
図1)に係合する様に設けられ、マガジン6に装填された連接釘(連接留め具)23の残量(例えば、残量0〜5本)を検出する釘残量センサスイッチである。検知回路65は、釘残量センサスイッチ64の出力を検知し、検知結果をマイコン53および表示回路66に供給する。電池電圧検出回路63は、電池パック4に接続され、電池パック7の電圧を検知して、マイコン53に通知する。
【0083】
15分タイマ62は、電源スイッチ59から制御信号を受け、電源スイッチ59がオン状態にされると、時間のカウントを開始するカウンタである。15分タイマ62は、電源スイッチ59かオン状態、すなわち電源が投入されたときから所定時間(15分)経過すると、15分経過信号をオフ信号として、電源スイッチ検知回路60に供給する。また、15分タイマ62は、マイコン53からカウントリセット信号を受ける。カウントリセット信号が供給されると、15分タイマ62は、カウント値をリセットし、リセット後に時間のカウントを再開する。なお、所定時間として、15分を例としているが、特にこの時間に限定されるものではない。
【0084】
表示回路66は、
図1には示されていないが、留め具打込機1に設けられ、マイコン53および検知回路65からの信号を受け、表示を行う。表示する情報としては、電源が投入されたことを示す電源表示、電池パック4の電池残量、単発/連発のモード表示(図では、単発連発と表示)および釘残量等がある。ここで、釘残量については、検知回路65から検知結果が表示回路66に供給される様にしている。これにより、表示回路66は、供給されている検知結果である釘の残量を、釘残量として表示する。
【0085】
マイコン53は、プログラムを実行することにより、上記した各種のスイッチからの制御信号、各種の検知回路からの検知結果、電流検出回路57からの検出結果および磁極センサ52からの検出信号を処理し、インバータ51への制御信号、表示回路66への表示信号、およびカウントリセット信号等を形成する。
【0086】
例えば、マイコン53は、電池電圧検出回路63から供給される検知結果に基づいて、電池パック4の電圧を把握し、電池残量として表示回路66に表示させる。また、モードスイッチ58からの制御信号を基にして、打込みのモードを把握し、指定された打込みモードを実行するとともに、単発連発を表示回路66で表示する。さらに、電源スイッチ59がオン状態にされたことを検知して、マイコン53は電源が投入されたことを把握し、電源表示を表示回路66において行う。
【0087】
マイコン53は、電源スイッチ59がオン状態にされたことを検知した後、所定時間(15分)以内に、トリガスイッチ54、プッシュスイッチ55あるいはモードスイッチ58が操作された場合、15分タイマ62に対してカウントリセット信号を発行する。すなわち、電源スイッチ59がオン状態にされた後、所定時間内にトリガ10の引き込み操作が行われたことを示す制御信号が、トリガスイッチ54から、マイコン53に供給された場合には、15分タイマ62に対してカウントリセット信号を発行する。同様に、所定時間内にプッシュスイッチ55から、プッシュスイッチ55が被打込み部材に接触されたことを示す制御信号が、マイコン53に供給された場合、あるいは所定時間内にモードの切替を示す制御信号が、モードスイッチ58から、マイコン53に供給された場合、マイコン53は、カウントリセット信号を発行する。カウントリセット信号により、15分タイマ62は、カウント値をリセットし、リセット後に再度カウント動作を開始する。
【0088】
上記した電源スイッチ検知回路60は、電源スイッチ59からのオンオフ信号が、オンを示しているとき(電源スイッチ59がオン)、スイッチ61をオン状態にし、オンオフ信号が、オフを示しているとき(電源スイッチ59がオフ)、スイッチ61をオフさせる。電源スイッチ検知回路60は、スイッチ61をオンさせた後、オンオフ信号がオフを示すまで、あるいは15分タイマ62からオフ信号が供給されるまで、スイッチ61をオン状態で維持する。これにより、所定時間(15分)内に、留め具打込機1の操作が行われなかった場合の消費電量を低減することが可能となり、留め具打込機1の使用可能時間を延ばすことが可能となる。
【0089】
マガジン6における留め具(釘)23の残量が少なくなると、検出回路65からマイコン53へ、留め具23の残量が減った旨を示す制御信号が供給される。この制御信号に基づいて、マイコン53は、マガジン6に留め具(釘)23が無くなったときの空打込みを事前に防止するために、インバータ51によるモータ7の駆動を停止する。これにより、モータ7は回転をしなくなり、空打込みを防ぐことが可能となる。また、このときには、マイコン53から表示回路66に対し、留め具(釘)残量が少ないことを示す表示を行う様に指示が行われる。
【0090】
マイコン53は、上記した各スイッチからの制御信号、各検知回路からの検知結果、および電流検出回路57からの検出信号によりインバータ51を制御するだけでなく、磁極センサ52からの検出信号によってもインバータ51を制御する。
【0091】
すなわち、マイコン53は、磁極センサ52からの検出信号に基づいて、ブラシレスモータにおける回転子の位置を検知する。回転子の発生する磁界と固定子に取り付けられている界磁巻線により生じる回転磁界との間の作用により、回転子が回転する様に、インバータ51から界磁巻線へ供給する三相電圧が、検知した回転子の位置に基づいて時間的に切り替わる様に、インバータ51内のスイッチ素子(図示せず)をオン/オフ制御する。マイコン53は、上記した各スイッチからの制御信号、各検知回路からの検知結果、電流検出回路57からの検出信号および磁極センサ52からの検出信号に基づいて、ブラシレスモータの回転子を回転あるいは停止させる様な三相電圧をインバータ51によって発生させる。また、マイコン53は、供給される上記した制御信号、検知結果および検出信号に基づいて、回転子の回転速度を変更するために、インバータ51に対して、それが発生する三相電圧の切り替わる時間等を変更させる。
【0092】
<制御装置50の動作>
図12の(A)〜(F)は、制御装置50による留め具打込み装置1の動作を示すタイミングチャート図である。
図12の(A)〜(F)を参照にしながら、留め具打込装置1およびマイコン53の動作を、次に説明する。
【0093】
図12において、(A)はトリガスイッチ54(トリガSW)の出力波形、(B)はプッシュスイッチ55(プッシュSW)の出力波形、(C)はドラム13の回転量(ドラム回転角)、(D)はプランジャ8の位置(プランジャ位置)を示している。また、
図12において、(E)はモータ7を流れる電流(モータ電流)、(F)はモータ7の回転量(モータ回転量)を示している。なお、
図12の(A)〜(F)において、横軸は時間である。
【0094】
図12の時刻t0において、トリガ10が引き込まれる。これにより、トリガスイッチ54は、時刻t0においてオフからオンへ変わる出力信号を形成する。時刻t0よりも前の時刻は、打込み前の状態である。この打込み前の状態は、上記した初期状態である。すなわち、ばね圧縮駆動部81のドラム13は、
図7に示した基準状態(ドラム13の回転角度が約0度)から約200度回転した状態で、停止している(
図12の(C))。ドラム13が約200度回転して、停止しているため、プランジャ8は、
図12の(D)に示されている様に、下死点Pdではなく、上死点Pmに近い位置で停止している。
【0095】
次に時刻t1において、プッシュスイッチ55が、被打込み部材に接触される。これにより、プッシュスイッチ55からは、時刻t1において、オフからオンへ変化する出力信号が、マイコン53に供給される。制御装置50内のマイコン53は、トリガスイッチ54からのオン状態の出力信号と、プッシュスイッチ55からのオン状態の出力信号を検出して、インバータ51に対して、モータ7の駆動を開始させる。モータ7においては、インバータ51により駆動されることにより、回転子の回転が始まる。モータ7における回転子の回転は、上記した様に、磁極センサ52からの検出信号に基づいて、回転子の位置をマイコン53が検知し、適切な回転磁界が発生する様に、インバータ51をマイコン53が制御することにより行われる。
【0096】
モータ7が回転することにより、その回転出力軸7aの回転力(駆動力)は、減速機構部80を介してばね圧縮駆動部81のドラム13に伝達される。この伝達により、ばね圧縮駆動部81におけるドラム13は、正回転方向Aに回転し、ワイア16を巻き上げる。ドラム13が正回転方向Aへ回転するため、
図12の(C)に示されている様に、初期状態のドラム回転位置から回転量(回転角)が増加する(時刻t1)。また、ワイア16が巻き上げられることにより、ワイア16に結合されたプランジャ8は、
図12の(D)に示されている様に、初期状態の位置から上死点Pm側へ移動する。プランジャ8が、上死点Pm側へ引っ張り上げられるため、これに応じて、ばね9が圧縮される。
【0097】
時刻t1から、モータ7が回転することにより、ドラム13の回転角度が徐々に増加し、所定の回転角度(回転位置)に到達すると、前記した様に、ばね圧縮駆動部81における動力伝達ピン17とフック部22aの係合が外れ、ドラム13は逆回転することが可能となる。
【0098】
この実施の形態においては、上記した所定の回転位置(回転角度)は、約270度を超える所定の回転角度である。時刻t1から回転を始めたドラム13の回転角度が、時刻t2において所定の回転角度である約270度を超える所定の回転角度に到達したとして説明すると、プランジャ8は、上死点Pmに近い打込み開始位置に、時刻t2で移動することになる。また、時刻t2において、モータ7によって駆動される動力伝達ピン17と、ドラム13と一体化されたフック部22aとの間の係合が外れる。係合が外れることにより、ドラム13は、モータ7の駆動力を受けること無く、回転軸19に対してフリーに回転することが可能な状態となる。すなわち、ドラム13は、ばね圧縮駆動部81におけるクラッチ機能により、モータ7により駆動される回転出力軸19から分離される。時刻t1から時刻t2までの時間は、打込み時のフィーリングに影響するので、200ms以下とすることが望ましい。この実施の形態においては、この時間は、例えば100ms以下に設定されている。
【0099】
時刻t2において、ドラム13が回転フリーとなることにより、圧縮されたばね9により付勢力が与えられているところのプランジャ8は解放され、圧縮されたばね9の付勢力によってプランジャ8およびそれに結合されたブレード8aは、下死点Pd側へ移動する。この下死点側への移動により、ブレード8aが留め具(釘)23を打撃し、留め具23を被打込み部材へ打込む。プランジャ8の位置は、時刻t2において、
図12の(D)の様に、下死点側へと移る。また、このプランジャ8の移動は、ワイア16を介してドラム13に伝達され、ドラム13は、逆回転方向Bへ回転し、ドラム13の回転位置は、
図12の(C)に示されている様に、0度へ戻る。すなわち、ドラム13は、
図7に示した基準状態へ戻り、モータ7によって駆動される動力伝達ピン17と、ドラム13と一体化されたフック部22aとの間が、再び係合される。
【0100】
この実施の形態においては、モータ7は、時刻t1から回転を始め、時刻t2においてドラム13の回転位置が約0度に戻っても、回転を継続している。時刻t2において、ばね圧縮駆動部81におけるドラム13は、
図7に示す基準状態となるため、モータ7により駆動される動力伝達ピン17と、ドラム13と一体化されたフック部22aとの間が再係合する。そのため、モータ7が回転することにより、ドラム13が正回転方向Aに回転し、ワイア16がドラム13に巻き上げられる。ワイア16が巻き上げられることにより、プランジャ8が上死点側へ移動し、ばね9が圧縮される。
【0101】
磁極センサ52は、回転子の所定の位置を検出する毎に、検出信号を出力する。そのため、磁極センサ52から出力される検出信号を積分することにより、モータ7の回転子(モータ7の回転出力軸)が回転した回数(回転量)を把握することができる。この実施の形態においては、マイコン53に磁極センサ52の出力、すなわち検出信号が供給されている。マイコン53は、モータ7を回転させ、磁極センサ52から供給される検出信号を積分する演算を実行し、モータ7の回転量を求める。この演算により求めたモータ7の回転量の変化が、
図12の(F)に示されている。モータ7により駆動される動力伝達ピン17と、ドラム13と一体化されたフック部22aとの間が係合されている期間においては、ドラム13の回転位置(回転角度)とモータ7の回転量は比例関係にある。また、プランジャ8の位置は、ドラム13の回転位置に依存する。従って、動力伝達ピン17とフック部22aとが係合している期間においては、モータ7の回転量から、ドラムの回転位置とプランジャ8の位置を求めることが可能である。
【0102】
特に制限されないが、この実施の形態においては、モータ7を回転させ始めた時刻t1から、マイコン53は、モータ7の回転量の算出を行う。次の打込みサイクルのために行われるばね9の再圧縮を把握するために、マイコン53は、ばね9を解放した時刻t2において、モータ7の回転量の検知を開始する。モータが回転することにより、モータの回転量が、時刻t2における値から所定の値Ptに到達したとき、モータ7の回転を停止させる。すなわち、磁極センサ52からの検出信号は、時刻t1から積分され、モータ7の回転量の算出が行われ、算出された回転量を用いた回転量の検知が時刻t2から開始される。回転量の検知は、積分演算により算出したモータ7の回転量が、時刻t2における値(所定の値)から所定の値Pt(第2の値)へ到達したか否かの判定である。時刻t2におけるモータ7の回転量は、ばね圧縮駆動部81が、次の打込みサイクルにおいて、ばね9を解放するときの回転量に相当する。
【0103】
判定の結果として、所定の値Ptに到達したと判定した場合、マイコン53はインバータ51に対して、モータ7を停止させる様な三相電圧を供給させる様な制御信号を供給する。この場合、所定の値Ptは、例えば、初期状態であるドラム13の回転量(約200度)と減速ギア比で求めることが可能である。また、試行により、所定の値Ptを求める様にしてもよい。モータ7の回転量が所定に値Ptに到達したとき、モータ7を停止することにより、ドラム13およびプランジャ13は、初期状態の位置に到達している。この様に、比較的簡単な構成により、プランジャ13の位置を所望の位置で停止させることが可能となる。
【0104】
なお、モータ7を停止しても、一方向性クラッチ24により、モータ7の回転出力軸7aは逆回転方向Bへは回転しない。そのため、ドラム13の回転位置は、維持され、プランジャ13の位置も維持される。特にこの実施の形態においては、モータ7の回転子を回転させるために設けられている磁極センサ52が、モータ7の回転量を検知するためにも用いられているため、部品の増加を抑制することも可能である。
【0105】
この実施の形態においては、次の打込みサイクルに備えて、ドラム13が、予め所定の位置に停止され、その位置が次の打込みサイクルまで維持されている。次の打込みサイクルにおいては、この所定の位置からドラム13が更に正回転方向Aに回転させられ、打込み開始の位置(回転量が約270度を超える所定の値)に移動させられる。実施の形態においては、次の打込みサイクルに備えて、正確に所定の位置にドラム13を回転させることが可能である。そのため、次の打込みサイクルにおいて、プランジャ8を解放する時刻t2における打込み開始の位置に近い位置まで、ドラム13を予め回転させておくことが可能となる。これにより、次の打込みサイクルにおける打込み操作に対する実際の打込みまでの時間を早くすることができ、打込みフィーリングを向上させることができる。また、この場合、正確にドラムの位置を制御することが可能であるため、一回の打込み操作で、二発の誤打込みが発生しない様にすることが可能である。
【0106】
また、実施の形態においては、ブラシレスモータが用いられているため、モータの効率を向上させることができ、一回の充電により打込み可能な留め具の本数を増やすことが可能である。さらに、打込みを検知する打込み検知スイッチなどのスイッチを削除することが可能となる。これにより、打込み検知スイッチ等を設置する場合に考慮していた設置場所の制限を緩和することが可能となる。また、打込み検知スイッチ等を削除することが可能なため、コストの低減を図ることも可能である。
【0107】
この実施の形態においては、モータ7を回転させ始めたとき(時刻t1)から、モータ7の回転量が算出される。ドラム13の回転角度とモータ7の回転量とは比例しているため、ばね9を解放するとき(時刻t2)のドラム13の回転角度(約270度を超える所定の回転角度)に対応するモータ7の回転量(第1の値)を求めると、ばね圧縮駆動部81は、モータ7の回転量が、この回転量(第1の値)に到達したとき、ばねを解放すると見なすことも可能である。
【0108】
また、この実施の形態において、ドラム13を再び回転させるとき、ドラム13の回転速度を多段階に変更する様にしてもよい。この場合、ドラム13の回転速度を多段階に変更するために、モータ7の回転速度が変更される。特に制限されないが、ドラム13を再び回転させ、ドラム13の回転位置が初期状態の位置(約200度)よりも少ない位置(例えば、約150度)に到達したとき、モータ7の回転速度を減速させ、ドラム13の回転速度を減速させる。その後、ドラム13の回転位置が、初期状態の位置(約200度)に到達したとき、モータ7を停止させる。この様に、ドラムの回転速度を減速させた後、停止させる様にすることにより、ドラム13の回転位置をより正確に制御することが可能となる。回転位置をより正確に制御することにより、プランジャ8の位置をより正確に制御することが可能となる。
【0109】
ドラム13を再び回転させている期間においては、フック部22aと動力伝達ピン17とが、再係合しているため、ドラム13の回転位置はモータ7の回転量に比例している。従って、ドラム13の回転を減速させるときのドラム13の回転位置に対応するところのモータ7の回転量(減速回転量)を、予め求める。マイコン53により、磁極センサ52の検出信号を積分し、この積分により算出したモータ7の回転量が、減速回転量に到達したか否かの判定を行う。マイコン53は、モータ7の回転量が減速回転量に到達したと判定し場合、モータ7の回転速度を減速する様にインバータ51を制御する。これにより、ドラム13の回転速度を多段階に変更することが可能となる。なお、減速回転量は、ドラム13の初期状態の位置に対応するモータ7の回転量よりも少ない値であれば、よい。また、減速回転量は、1個でなく、任意の複数個を設定する様にしてもよい。
【0110】
(実施の形態2)
実施の形態2においては、モータ7の回転量を検知する際、検知を開始するタイミングを定めるのに好適な構成が示される。実施の形態2においては、上記した実施の形態1に変更が加えられる。以下、主に、実施の形態1と相違する部分を、
図11から
図12を用いて、説明する。
【0111】
モータ7は、実施の形態1において述べた様に、
図12において時刻t1からインバータ51によって駆動される。すなわち、時刻t1において、モータ7は、停止していた状態から、回転する状態へ変わる。停止している状態のモータ7を回転させるためには、時刻t1において、大きな値の突入電流が、インバータ51からモータ7の界磁巻線に供給されることになる。
図11で説明した様に、界磁巻線に流れる電流に基づいた駆動電流は、電流検出用抵抗素子56によって、電圧に変換され、電流検出回路57により、増幅されて、マイコン53に供給される。マイコン53に供給される電流検出回路57の出力が、
図12の(E)にモータ電流として示されている。
【0112】
時刻t1において、大きな値の突入電流が界磁巻線に流れるため、電流検出回路57からマイコン53に供給されるモータ電流は、
図12の(E)に示されている様に、時刻t1において大きな値となっている。時刻t1を過ぎると、モータ7が回転し、加速するのに従って、モータ電流の値は、徐々に低下する。ところが、ばね9を圧縮するために、圧縮するばね9により生じる抗力が徐々に増加する。徐々に増加する抗力に対抗するために、モータ7のトルクも徐々に高くなる。トルクを高くするために、界磁巻線を流れる駆動電流の値も高くなる。この結果、
図12の時刻t1から時刻t2におけるモータ電流の値は、一旦低下した後、上昇する。
【0113】
時刻t2において、ドラム13の回転がフリーになると、ばね9により生じる抗力は低下し、モータ7に要求されるトルクも低下するため、モータ電流も低下する。そのため、モータ電流は、モータ7により駆動される動力伝達ピン17と、ドラム13と一体化されたフック部22aとの間の係合が外れる時刻(時刻t2)において、極大値を有する様な変化をする。言い換えるならば、モータ電流は、プランジャ8が上死点の近辺に位置(打込み開始の位置)しているときに、極大値を持つ様な特性となる。
【0114】
時刻t2以後においても、モータ7が回転を継続する様に、インバータ51により駆動される。すなわち、留め具(釘)23を打込んだ後も、モータ7が回転を継続する様に、インバータ51により駆動される。そのため、ばね圧縮駆動部81の動力伝達ピン17とフック部22aが再係合され、モータ7の駆動力を伝達する回転出力軸19がドラム13に再度機械的に係合される。モータ7が回転を継続しているため、ドラム13はワイア16を巻き上げる方向である正回転方向Aに回転し、ばね9の再圧縮が行われる。このため、モータ電流は、時刻t2から時刻t3において、一旦、低下した後、ばね9の抗力に抗するために再び上昇を始める。
【0115】
この実施の形態においては、ばね圧縮駆動部81の動力伝達ピン17とフック部22aが再係合され、ドラム13が
図7に示した基準状態となったときから、モータ7の回転量が検知される。ドラム13が、基準状態に到達した時刻(タイミング)は、モータ電流が高くなり、極大値に達した時刻として検知される。すなわち、モータ電流の値が高くなり、極大値に達した時刻t2から、モータ7の回転量の検知が開始される。検知している回転量が、検知を開始した時刻t2における値から所定の値Ptに到達したとき(時刻t3)、モータ7の駆動を停止する。この様にすることにより、ドラム13が基準状態ある回転位置(約0度)から、所定の回転位置(約200度)に到達したタイミングで、モータ7を停止させることが可能となる。
【0116】
モータ7の回転量は、実施の形態1において述べた様に、磁極センサ52からの検出信号を積分することにより、算出する。すなわち、マイコン53は、モータ電流が極大となるタイミングを検知し、検知したタイミングにおいて、磁極センサ52からの検出信号の積分演算を開始する。開始した積分演算により算出したモータ7の回転量が、所定の値Pmに到達したか否かの判定を行い、到達したと判定したタイミングで、マイコン53は、インバータ51に対して、モータ7の回転を停止させる指示を行う。
【0117】
図12においては、時刻t3において、モータ7の回転量が所定の値Ptに到達したものとして示されている。そのため、時刻t3において、インバータ51によるモータ7の回転駆動を止め、モータ7の回転を停止させている。ここで、ドラム13を基準状態(約0度)から初期状態(約200度)付近まで回転させ、ばね9を圧縮させるには、200度/360度×減速ギア比で計算される値(量)を所定の値Pmとし、モータ7の回転量が、この計算で求めた所定の値Pmに到達したとき、停止させる。この様にして、モータ7の回転量が所定の値Ptに到達したとき、モータ7の回転を停止することにより、ドラム13によるワイア16の巻き上げ量、言い換えるならばプランジャ8の位置を所望の位置に到達させることが可能となる。
【0118】
例えば、モータ7の回転出力軸7aとドラム13の回転軸19(減速機構部80の回転出力軸)との減速比は、前述した様に150〜300である。ここで、減速比は、プーリー比(第1プーリー14と第2プーリー15との間の比)と遊星ギア11の減速ギア比との積とである。この例では、プーリー比は、例えば約1.5であり、遊星ギアの減速ギア比は、例えば約100〜200であるため、上記した様に減速比は150〜300となる。一方、ドラム13のドラム溝部13bの直径と、ドラム13の回転位置(回転角度)と、円周率との積が、ワイア16の巻き上げ量と等しくなる。ここで、ドラム13の回転角度は、回転出力軸19の回転角度と等しい。従って、モータ7の回転量は、ワイア16による巻き上げ量を、ドラム溝部13bの直径と円周率との積で割って求めた商に、減速比を掛けて求めた値(量)に相当する。
【0119】
すなわち、ワイア16による巻き上げ量は、モータ7の回転量に比例し、モータ7の回転量を制御することにより、ワイア16による巻き上げ量を正確に制御することができる。従って、モータ7の回転量が所定の値Ptに到達したとき、モータ7を停止することにより、ワイア16の巻き上げ量を所望の値にさせ、プランジャ8を所望の位置に停止させることが可能となる。
【0120】
モータ7を停止させると、ドラム13はばね9の付勢力によって、逆回転方向Bに回転させられようとするが、一方向性クラッチ24の逆転防止機能により、プランジャ8を引っ張った状態で、ドラム13は停止し、その状態が維持される。その結果、ドラム13は、基準状態の回転角度(約0度)から初期状態の回転角度(約200度)へ回転し、その回転角度が維持される。これにより、プランジャ8も初期状態である所定位置で停止し、維持される。この初期状態で、打込みサイクルが終了し、次の打込みサイクルは、維持されたこの初期状態から開始される。
【0121】
モータ7は、上記した様に、時刻t3で停止される。これにより、モータ電流の値は、
図12の(E)に示されている様に、時刻t3でほぼ0となる。一方、
図12の(C)および(D)に示されている様に、ドラム13の回転角およびプランジャ13のプランジャ位置は、ドラム13等の回転慣性のために、時刻t3を過ぎても緩やかに上昇している。モータ7を停止させる回転量である所定の値Ptは、ドラム13等の回転慣性を考慮して、定めることが望ましい。
【0122】
この実施の形態2によれば、モータ7の回転量を演算により求めることによって、ドラム13の回転位置を検知することができ、ドラム13およびプランジャ8を予め設定した位置で停止させることが可能となり、ドラム13およびプランジャ8の位置を正確に制御することが可能となる。この場合、磁極センサ52およびマイコン53を用いて、モータ7の回転量の演算および制御をすることが可能となるため、追加部品の増加を抑制しながら、正確に制御することが可能となる。
【0123】
また、実施の形態2においては、留め具23の打込みのタイミングからモータ7の回転量が求められる。すなわち、動力伝達ピン17とフック部22aとの間の係合が外れ、プランジャ8が下死点側へ移動したとき(
図12では、時刻t2)から、モータ7の回転量が検知される。そのため、打込み操作を行う前に停止していたドラム13の回転位置(回転角度)が、初期状態として設定した値(例では、約200度)から大きくずれていても、次の打込みサイクルのためのドラム13の回転においては、初期状態として設定した値に合う様に、ドラム13を正確に回転させることが可能となる。例えば、電池パック4からの電源電圧Vccが変動することにより、回転速度の変動あるいは機械損の変動により、ドラム13が停止している位置が変動しても、次の打込みサイクルに備えたドラム13の回転においては、初期状態の位置に停止させることが可能となる。
【0124】
また、実施の形態2において、時刻t1から時刻t2まで間におけるモータ7の回転量を、マイコン53により演算で求める様にしてもよい。時刻t1から時刻t2までのモータ7の回転量は、ドラム13の初期状態(約200度)からドラム13を解放する状態(約270度を超える回転角度)までの回転量に相当する。すなわち、初期状態から打込みまでのモータ7の回転量に相当する。一方、前回の打込みサイクルにおいて、打込み(時刻t2)後のモータ7の回転量は把握できているので、この把握しているモータ7の回転量と、時刻t1から時刻t2までのモータ7の回転量とにより、今回の打込みサイクルにおける所定の回転量を補正することができる。
【0125】
すなわち、今回の打込み操作における初期状態から打込みまでのモータの回転量と、前回の打込みサイクルにおける打込み後のモータ7の回転量との和が、減速ギア比と同一であれば、ドラム13は一回転したことになる。そのため、この場合には、今回の打込みサイクルにおける所定の回転量を変更する必要は無い。一方、上記した回転量の和が、減速ギア比よりも例えば小さい場合には、今回の打込み後における所定の回転量の値を大きくする様にして、ドラム13の初期状態における位置(回転量)を補正する。この補正により、次回の打込み操作の際には、ドラム13が適切な初期状態の位置に到達している様にできる。この結果として、次回の打込み操作のとき、プッシュスイッチがオンされてから実際に打込みが行われるまでの時間を所望の時間にすることが可能となり、打込みフィーリングの悪化を防ぐことが可能となる。
【0126】
次に、
図13を用いて、実施の形態2におけるマイコン53の動作を説明する。マイコン53は、プログラムに従って、
図13に示した各ステップを実施する。
【0127】
まず、ステップS1において、処理が開始される。ステップS2では、打込み許可か否かの判定を行う。このステップS2においては、例えば、プッシュスイッチ55からオン状態の制御信号が供給されているか否かの判定が行われる。もし、オフ状態を示している場合、ステップS2に戻り、制御信号がオン状態になるまで、ステップS2が繰り返される。ステップS2において、オン状態であると判定された場合、次にステップS3が実行される。
【0128】
ステップS3において、マイコン53は、モータ7を回転させるために、磁極センサ52から検出信号を受け、回転子の位置を判定しながら、インバータ51へ制御信号を供給する。これにより、インバータ51は、モータ7を正回転方向Aへ回転させる様な三相電圧をモータ7に印加する。マイコン53は、後で説明するステップS9において、モータ7を停止させるまで、インバータ51へ、モータ7を回転させる制御信号の供給を継続する。また、ステップS3において、マイコン53は、電流検出回路57からの検出電圧を取り込み、検出電圧の値に基づいたモータ電流(
図12の(E))の検出を開始する。(
図13では、ステップS2はモータ回転開始・電流検出開始と記載)。
【0129】
ステップS4において、マイコン53は、モータ電流に対して、時間に対する変化量の計算を行う。変化量は、モータ電流の値を、時間に対し一次微分と二次微分の計算を行うことにより、求める。ここで、モータ電流の値を、時間に対し一次微分の計算で求めた値を電流変化量とし、モータ電流の値を、時間に対し二次微分の計算で求めた値を電流二次微分値とする。なお、
図13には、ステップS4は、電流変化計算・電流二次微分値計算と記載されている。
【0130】
ステップS5において、ステップS4において求めた電流変化量が0か否かの判定が行われる(電流変化量=0?)。すなわち、モータ電流の電流変化量が0であれば、モータ電流は、上昇方向あるいは低下方向の極大値にあると判定し、次にステップS6を実行する。一方、電流変化量が0でなければ、極大値に達していないとして、ステップS4に戻り、モータ電流に対する一次微分および二次微分の計算を実行する。
【0131】
ステップS6において、ステップS4で求めた電流二次微分値が0よりも小さいか否かの判定が行われる(電流二次微分値<0?)。電流二次微分値は、二次微分の値であるため、それが0よりも小さい場合には、モータ電流の値は上昇方向で変化していることになる。従って、この場合には、モータ電流は、上昇方向で極大値が発生していることになる。一方、電流二次微分値が0以上の場合には、モータ電流は低下方向で変化しているときに、極大値が発生していることになる。
図12の(E)から理解される様に、モータ電流が上昇方向にあるときに、極大値となるタイミングが、打込みのタイミングを表している。そのため、電流二次微分値が0以上のときには、ステップS4に戻り、ステップS4において、一次微分および二次微分の計算が行われる。一方、電流二次微分値が0よりも小さいときには、次にステップS7が実行される。
【0132】
ステップS7において、モータの回転量の計算が開始される。モータの回転量の計算は、磁極センサ52からの検出信号を積分することにより、求める。すなわち、ステップS6において、モータ電流が上昇方向における極大値と判定されたタイミングから、検出信号の積分演算が開始され、モータ7の回転量の計算が開始される。計算により算出した回転量が、所定の回転量(値)Pmに到達したか否かの判定が、ステップS8において行われる(所定回転量?)。計算により求めたモータ7の回転量が、所定の回転量に到達していない場合には、回転量の計算が継続して実施される(ステップS8)。すなわち、ステップS8においては、磁極センサ52からの検出信号を積分した値が、所定回転量に相当する値に到達するまで、磁極センサ52からの検出信号を取り込み、計算を実施する。
【0133】
計算により算出したモータ7の回転量が、所定回転量に到達したと、ステップS8において判定されると、次にステップS9が実施される。ステップS9では、マイコン53は、インバータ51に対して、モータ7の回転を停止させる様な制御信号を供給する。これにより、モータ7は回転を停止する。
【0134】
モータ7を停止させた後、ステップS10が実施される。ステップS10では、打込み許可か否かの判定が行われる。ステップS10においては、例えば、トリガスイッチ54の状態が判定される。トリガスイッチ54がオン状態であれば、次にステップS2を実行し、トリガスイッチ54がオフ状態であれば、トリガスイッチ54がオン状態にされるまで、ステップS10が実行される。
【0135】
なお、ステップS2あるいはS10において、検知回路65からの検知信号を、打込み許可の判定条件としてもよい。検知回路65から留め具23の残量が少ない旨の検知信号が供給された場合に、打込み許可はNOであるとしてもよい。また、ステップS10において、ステップS8で算出したモータの回転量はリセットする。あるいは、ステップS7において、モータの回転量計算を開始する前に、以前のモータ回転量はリセットする。
【0136】
この様に、ステップS4からS6により、モータ電流が上昇方向で変化しているときに発生する極大値のタイミングを判定する。判定した極大値が発生しているタイミング(時刻t2)から、モータ7の回転量の算出が開始され、ステップS8において、所定回転量にモータ7の回転量が到達したとき(時刻t3)、モータ7の回転を停止させる。
【0137】
この実施の形態2においても、打込みを行った後、ドラム13を再び回転させるとき、ドラム13の回転速度を多段階に変更する様にしてもよい。この場合、例えば、ステップS8において、モータ7の回転量を、所定回転量よりも少ない回転量である第1の回転量(減速回転量)に到達したか否かを判定し、第1の回転量に到達したと判定したとき、モータ7の回転速度を高速回転から低速回転に減速させる。その後、モータ7の回転量が、所定回転量に到達したとき、モータ7を停止させる。これは、マイコン53からインバータ51に供給する制御信号を変更することにより、インバータ51からモータ7を高速回転、低速回転、停止と制御することにより達成することができる。
【0138】
この様にすることにより、プランジャ8が下死点側へ移動した後、モータ7の駆動力によって再び上死点側の所定位置へ移動させるときに、モータ7の回転速度を所定値以下に減速させ、その後、モータ7を停止させることができる。これにより、打込み終了後において、次の打込みサイクルの準備として、プランジャ8の停止位置を、打込み開始位置にできる限り近い所定位置とする様に制御することが可能となる。すなわち、次の打込みサイクルの準備として、プランジャ8の停止位置をより細かく制御することが可能となる。これにより、打込みサイクルの終了時には、打込みばね9を所定の打込エネルギーを持つ様に確実に圧縮させて、終了させることができる。そのため、次の打込みサイクルにおけるばね9の圧縮時間を短縮し、全体の打込み時間を短縮でき、打込みフィーリングを向上させることができる。
【0139】
打込み終了後のプランジャ8の停止位置は、ブレード8a下端がマガジン6内に装填された留め具23の範囲内であって留め具23の上端付近となるよう設定することが望ましい。これにより、ノーズ5の射出部通路5a内にブレード8aが位置しているため、射出部通路5a内に次の打込みのための留め具23が供給されることを防ぐことができると共に、次の打込みまでに要する時間を短くすることができる。
【0140】
この実施の形態2においては、モータの回転量(回転の回数)を算出する演算は、モータ電流が極大値を示したタイミングから開始される。そのため、時刻t1から時刻t2の間におけるモータの回転量を算出しない場合には、演算の回数を低減することが可能となり、低消費電力化を図ることが可能となる。
【0141】
図14は、ブラシレスモータの構成を示す模式図である。
図11において述べた様に、この実施の形態においては、回転子が磁石により構成され、固定子に界磁巻線が設けられている。
図14に示したブラシレスモータにおいては、回転子が4個の磁石7c〜7fにより構成されている。固定子は6極U1、V1、W1、U2、V2、W2あり、それぞれに巻線cu1、cv1、cw1、cu2、cv2、cw2が設けられている。また、磁極センサ52a、52bおよび52cが、ブラシレスモータに設けられている。
【0142】
固定子に設けられた巻線cu1、cv1、cw1、cu2、cv2、cw2には、三相電圧(U相、V相、W相)が、インバータ51から印加され、固定子は三相電圧に応じた磁界を発生する。固定子に発生した磁界と回転子7b(磁石7c〜7f)の磁界との作用により、回転子7bが回転する。
【0143】
磁極センサ52a〜52cは、回転子7bの磁石7c〜7fが、通過する際に検出信号を形成して、マイコン53に供給する。従って、磁極センサ52a〜52cのそれぞれからの検出信号を基にして、マイコン53は、回転子の位置を把握し、インバータ51からブラシレスモータに印加する三相電圧の位相を制御して、回転子7bが回転する様に駆動する。また、磁極センサ52a〜52cのそれぞれからの検出信号を積分することにより、回転子7bの回転数に相当する積分値を回転量として求めることができる。また、界磁巻線を流れる電流の値は、ブラシレスモータにより圧縮されるばね9の抗力に対抗する回転トルクを発生させるために、抗力に応じた値となる。界磁巻線を流れる駆動電流に応じた電流が電流検出用抵抗素子56に供給されるため、電流検出用抵抗素子56には、ばね9の抗力応じた電流に対応する電圧降下が発生する。なお、回転子7bは、モータ7の回転出力軸7aと一体となっている。
【0144】
上記した実施の形態1においては、モータ7を回転させたとき(時刻t1)からの回転数が、そのとき(時刻t1)からの磁極センサ52の検出信号を積分することにより、モータ7の回転量として算出される。また、実施の形態2においては、
図13から理解される様に、打込みを行ったタイミング(時刻t2)からのモータ7の回転数が、そのとき(時刻t2)からの磁極センサ52(52a〜52c)の検出信号を積分することにより、モータ7の回転量として算出される。この様に、モータ7の回転量の算出は、モータ7の回転を開始させたときからでもよいし、打込みのタイミングから開始する様にしてもよい。
【0145】
図13の説明においては、電流変化量が0になったか否かの判定が、ステップS5において行われる旨を述べた。マイコン53が、モータ電流を検出する場合、例えば、電流検出回路57の出力をサンプリングし、その値をモータ電流として判定する。電流検出回路57の出力をサンプリングするタイミングによっては、モータ電流が0となったときの値をサンプリングできないことが考えられる。この場合には、モータ電流の変化量が正から負へ変化したときを、極大値が発生したタイミングと判定する様にしてもよい。
【0146】
上記した複数の実施の形態においては、操作スイッチとしてトリガスイッチおよびプッシュスイッチを適用した場合について述べたが、他の操作スイッチを適用することができる。また、実施の形態においては、トリガスイッチをプッシュスイッチに優先させて操作させた場合について述べたが、プッシュスイッチを優先させても同様に構成できる。さらに、トリガスイッチおよびプッシュスイッチは、通常はオフ状態であるノーマリオフ型スイッチを使用したが、通常はオン状態であるノーマリオン型スイッチを適用してもよい。
【0147】
また、トリガスイッチ54が操作され、モータ7に電流が供給されているにも関わらず、釘詰りなどが発生してプランジャ8が押し上げられない状況が発生することがあるが、上記したモータ7の回転量の検出を用いて、トリガスイッチ54が操作されてから所定時間モータ7の回転量が検出されない場合には釘詰りなどの異常が発生したと判断してモータ7への電流供給を停止することが望ましい。
【0148】
以上本発明者によってなされた発明を、前記実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。