特許第6123610号(P6123610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カシオ計算機株式会社の特許一覧 ▶ カシオ電子工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6123610-台紙付きラベルの製造方法 図000003
  • 特許6123610-台紙付きラベルの製造方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6123610
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】台紙付きラベルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B31D 1/02 20060101AFI20170424BHJP
   G09F 3/10 20060101ALI20170424BHJP
   G09F 3/00 20060101ALI20170424BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   B31D1/02 A
   G09F3/10 J
   G09F3/00 E
   G09F3/10 A
   C09J7/02 Z
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-197087(P2013-197087)
(22)【出願日】2013年9月24日
(65)【公開番号】特開2015-63032(P2015-63032A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000104124
【氏名又は名称】カシオ電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】佐野 智文
【審査官】 高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−108300(JP,A)
【文献】 特開2010−184470(JP,A)
【文献】 特開2007−283745(JP,A)
【文献】 特開2006−323126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31D 1/02
C09J 7/02
G09F 3/00
G09F 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層が設けられた剥離シートにおける前記粘着剤層上に所定の樹脂によりコート層を形成する工程と、
トナーを用いた電子写真方式で前記コート層上にラベル基材層を形成する工程と、
を有し、
前記所定の樹脂は、軟化点温度が前記ラベル基材層を形成する際の定着温度よりも低い樹脂であり、
前記トナーには、軟化点温度が前記所定の樹脂よりも低い結着樹脂が含まれていることを特徴とする台紙付きラベルの製造方法。
【請求項2】
粘着剤層上に所定の樹脂によりコート層が形成されたシートにおける前記コート層上に、トナーを用いた電子写真方式で少なくとも一部が前記コート層に接するようにラベル基材層を形成する工程と、
前記ラベル基材層上、または、前記コート層と前記ラベル基材層との間に位置するように、表示パターン層を形成する工程と、
を有し、
前記所定の樹脂は、軟化点温度が前記ラベル基材層を形成する際の定着温度よりも低い樹脂であり、
前記トナーには、軟化点温度が前記所定の樹脂よりも低い結着樹脂が含まれていることを特徴とする台紙付きラベルの製造方法。
【請求項3】
前記所定の樹脂は、軟化点温度が前記ラベル基材層を形成する際の定着温度よりも10℃以上低い樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の台紙付きラベルの製造方法。
【請求項4】
前記所定の樹脂は、アクリル樹脂であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の台紙付きラベルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台紙付きラベルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
台紙付きラベルは、一般的に以下の方法で製造される。まず、片面に粘着剤層が設けられ、この粘着剤層が剥離紙によって覆われたラベル用紙を準備する。次いで、ラベル用紙上に絵柄を印刷し、その後、ラベル用紙を任意の形にカットする。
【0003】
台紙付きラベルは、他の方法でも製造することができる。まず、片面に粘着剤層が設けられた剥離紙を準備し、次に、電子写真法を利用してトナーからなるパターンを粘着剤層上に設け、その後、熱及び圧力を加えて、このパターンを、それ自体で取り扱うことが可能なフィルムにする(例えば、特許文献1参照)。トナーの結着樹脂として紫外線硬化性樹脂を使用し、上記パターンへ熱及び圧力を加えるのと同時に紫外線を照射する方法もある(例えば、特許文献2参照)。これら方法によると、刃を使用することなしに、オンデマンドでラベルを任意の形状に作成することが可能である。
【0004】
これら電子写真法を利用した方法では、台紙付きラベルを製造する際に、粘着剤を塗布した剥離紙を用意する必要がある。粘着剤を塗布した剥離紙は、粘着剤が表面に露出した状態にあると、例えばプリンタ内における搬送等に支障をきたす可能性があるため、取扱いに不便である。それ故、粘着剤の表面を粘着性の低い層(以下、コート層という)でコートしておくと実用的には使用し易い。
【0005】
また、一般に、台紙付きラベルは、剥離紙から剥がして対象物に貼付後、それを剥がす際(以下、再剥離という)に粘着剤等が対象物に残ることなくラベル部分と共にきれいに剥がれると、ラベルとしての使い易さが向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−283745号公報
【特許文献2】特開2010−184470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、再剥離の際に粘着剤層やコート層が比較的残らないようにラベルを剥がすことができる台紙付きラベルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る台紙付きラベルの製造方法は、粘着剤層が設けられた剥離シートにおける前記粘着剤層上に所定の樹脂によりコート層を形成する工程と、トナーを用いた電子写真方式で前記コート層上にラベル基材層を形成する工程と、を有し、前記所定の樹脂は、軟化点温度が前記ラベル基材層を形成する際の定着温度よりも低い樹脂であり、前記トナーには、軟化点温度が前記所定の樹脂よりも低い結着樹脂が含まれていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る他の態様の台紙付きラベルの製造方法は、粘着剤層上に所定の樹脂によりコート層が形成されたシートにおける前記コート層上に、トナーを用いた電子写真方式で少なくとも一部が前記コート層に接するようにラベル基材層を形成する工程と、前記ラベル基材層上、または、前記コート層と前記ラベル基材層との間に位置するように、表示パターン層を形成する工程と、を有し、前記所定の樹脂は、軟化点温度が前記ラベル基材層を形成する際の定着温度よりも低い樹脂であり、前記トナーには、軟化点温度が前記所定の樹脂よりも低い結着樹脂が含まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、再剥離の際に粘着剤層やコート層が比較的残らないようにラベルを剥がすことができる台紙付きラベルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施形態に係る方法により製造される台紙付きラベルの一例を概略的に示す断面図である。
図2図2は、図1に示す台紙付きラベルから剥離シートを剥離して製造される粘着ラベルの一例を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明者は、コート層樹脂の軟化点を、トナーからなるラベル基材の定着温度より低くすることにより、コート層とラベル基材の結着性が高まり、再剥離の際の上記問題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
すなわち、本発明の実施形態に係る台紙付きラベルの製造方法は、
剥離シートに粘着剤層を形成する工程と、
前記粘着剤層の上に、ラベル基材の定着温度より10℃以上低い軟化点を有する樹脂で形成されたコート層と接するように、前記定着温度で定着させてラベル基材を形成する工程と
を含む。
【0016】
本実施形態に係る方法は、前記コート層またはラベル基材の上に印刷層を形成する工程を更に含むことができる。
【0017】
本実施形態に係る方法により製造される台紙付きラベルの一例を図1に示す。
図1に示す台紙付きラベル1は、ラベル台紙2と、ラベル台紙2の上に設けられたラベル層3を含む。ラベル台紙2は、剥離シート21と粘着剤層22とコート層23とからなる。ラベル層3は、ラベル基材31と印刷層32とからなる。
【0018】
以下、図1を参照しながら本実施形態の方法を説明する。
本実施形態では、コート層23の樹脂の軟化点を、ラベル基材31の定着温度より10℃以上低くする。これにより、コート層23に含有される樹脂は、ラベル基材31の熱定着の際に溶融し、コート層23とラベル基材31の結着性を高めることができる。その結果、再剥離の際に、コート層23とラベル基材31の間で剥がれて、対象物に粘着剤層22やコート層23が残ることがなくなる。本明細書において、「コート層とラベル基材の結着性」とは、熱によりコート層の樹脂とラベル基材の樹脂の両方が溶融することにより、相互の結びつきが増して相互に離れにくくなる性質をいう。
【0019】
以下、本実施形態の方法を、工程順に説明する。
最初の工程で、剥離シート21の一方の主面に粘着剤を塗布して粘着剤層22を形成する。
【0020】
剥離シート21としては、剥離紙やプラスチック製シートなどを使用することができる。粘着剤としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤などの一般的に使用される粘着剤を使用することができる。粘着剤層22の粘着力やタック等のパラメータは、ラベルの用途に応じて適宜変更することができる。粘着剤層22の形成は、粘着剤含有液を剥離シートに塗布して乾燥させることにより行うことができる。
【0021】
次の工程で、粘着剤層22の上に、ラベル基材31の定着温度より10℃以上低い軟化点を有するコート層樹脂を含むコート層23を形成する。これによりラベル台紙2がつくられる。コート層23は、粘着剤層22を覆うことにより、ラベル台紙2の取扱いを容易にする。
【0022】
コート層樹脂は、ラベル基材31の定着温度より10℃以上、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上低い軟化点を有するコート層樹脂とすることができる。具体的には、コート層樹脂は、ラベル基材31の定着温度より10〜80℃、好ましくは20〜80℃、より好ましくは30〜80℃低い軟化点を有するコート層樹脂とすることができる。
【0023】
「ラベル基材31の定着温度」は、一般に150〜180℃、好ましくは160〜180℃とすることができる。したがって、「ラベル基材31の定着温度より10℃以上低い軟化点」は、一般に170℃以下、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下とすることができる。具体的には、「ラベル基材31の定着温度より10℃以上低い軟化点」は、100〜170℃、好ましくは100〜160℃、より好ましくは100〜150℃、更に好ましくは100〜130℃とすることができる。
【0024】
コート層樹脂は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン-酢酸ビニル、アイオノマー樹脂、ポリスチレン、エチレン-アクリレート樹脂、などを使用することができる。アクリル樹脂は、粘着剤としてアクリル系粘着剤を使用した場合、アクリル系粘着剤との結着性がよく塗布しやすいという利点を有する。アクリル樹脂は、アクリル骨格を有するアクリル酸、および/または、アクリル酸エステルの重合体と定義される。例えば、アクリル酸骨格としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、2-ペンテン酸、2-ヘキセン酸、メチルクロトン酸、メチルイソクロトン酸、デシレン酸、などが考えられ、エステル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリーブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、ビニル、アリル、シクロヘキシル、ドデシル、ドデセニル、などの官能基を有するものが考えられる。
【0025】
コート層樹脂は、公知の合成方法に従って重合により合成してもよいし、市販のものを使用してもよい。コート層樹脂を合成により調製する場合、反応条件を変化させて重合度を変えることにより、所望の軟化点を有するコート層樹脂を得ることができる。予め種々の反応条件で種々の重合度のコート層樹脂を調製し、そのなかから所望の軟化点を有するコート層樹脂を選抜することにより、所望の軟化点を有するコート層樹脂を調製するための反応条件を決定することができる。
コート層23の形成は、コート層樹脂を含有するエマルションを粘着剤層22の上に塗布して乾燥させることにより行うことができる。
【0026】
次の工程で、電子写真法により形成したトナー層を、コート層23と接するように定着させてラベル基材31を形成する。更に、必要に応じて、ラベル基材31の上に印刷層32を形成する。あるいは、印刷層32は、ラベル基材とコート層との間に形成されてもよい。これにより、台紙付きラベル1がつくられる。
【0027】
ラベル基材31および印刷層32のそれぞれは、トナーからなり、当該技術分野で公知の電子写真法を利用して形成する。
【0028】
ラベル基材31は、一般的には、コート層23を部分的に被覆するように形成する(図1参照)。ラベル基材31を定着させる温度は、上述のとおり、一般に150〜180℃、好ましくは160〜180℃とすることができる。印刷層32の定着温度も、ラベル基材31の定着温度と同じ温度を採用することができる。印刷層32の定着は、ラベル基材31の定着とは別の定着工程により行ってもよいし、ラベル基材31の定着と同時に行ってもよい。
【0029】
ラベル基材31を上記温度で定着すると、コート層23の樹脂が溶融し、コート層23とラベル基材31の結着性が高まる。これにより、ラベルを貼付した後に剥がす際(再剥離の際)に、コート層23とラベル基材31の間で剥がれて、対象物に粘着剤層22やコート層23が残ることがなくなる。
【0030】
以下、ラベル基材31および印刷層32を形成するためのトナーの組成について説明する。
ラベル基材31の形成に使用するトナーは、結着樹脂及び帯電制御剤と、典型的には離型剤などとを、混合、溶融混練及び粉砕してなるものである。
【0031】
結着樹脂としては、一般的にフィルム用として用いられる熱可塑性樹脂を使用する。例えば、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、ポリエステル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ポリイミド、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状オレフィン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、およびそれらの共重合体を使用する。これらの樹脂を単独で用いてもよく、二種類以上組み合わせて用いてもよい。結着樹脂の軟化点は、80〜150℃とすることができる。
【0032】
帯電制御剤は、トナーの帯電量及び帯電速度を調節するために添加する。帯電制御剤としては、通常、電子写真用トナーに使用される任意のものを使用可能である。
【0033】
離型剤は、熱ローラ定着などの接触加熱定着により現像したトナーを剥離性シートに定着させる際に、トナーの一部が分断して加熱面に付着するオフセット現象を防ぐために添加する。離型剤としては、通常、電子写真用トナーに使用される任意のものを使用可能である。離型効果を付与する必要がなければ、離型剤は省くことができる。
【0034】
印刷層32の形成に使用するトナーは、例えば、用紙などへの印刷に使用する通常のトナーである。印刷層32の形成には、ラベル基材31について上述したトナーに着色剤を添加してなるものを使用してもよい。
【0035】
ラベル層3の印刷層32側の面を表示面とする場合、ラベル基材31は、光透過性を有していてもよく、遮光性であってもよい。ラベル層3の印刷層32側とは反対側の面を表示面とする場合、ラベル基材31、コート層23及び粘着剤層22は、光透過性を有している必要がある。
【0036】
印刷層32は、ラベル基材31とコート層23との間に介在していてもよい。このような構造を採用し且つラベル層3の印刷層32側の面を表示面とする場合、コート層23及び粘着剤層22は、光透過性を有している必要がある。また、このような構造を採用し且つラベル層3の印刷層32側とは反対側の面を表示面とする場合、ラベル基材31は、光透過性を有している必要がある。
【0037】
上記説明に従って製造された台紙付きラベル1から剥離シート21を剥離することにより粘着ラベルが製造される。粘着ラベルの一例を図2に示す。図2において、粘着ラベル4は、ラベル層3を、コート層23のうちラベル層3の下方に位置した部分23’および粘着剤層22のうちラベル層3の下方に位置した部分22’とともに、剥離シート21から剥離することにより製造される。
【実施例】
【0038】
以下に本発明の例を示し、本発明の効果について具体的に説明する。
まず、後述する物性値の測定方法を示す。
【0039】
<1.物性値の測定方法>
(軟化点の測定)
軟化点の測定には、フローテスター((株)島津製作所製、CFT−500D)を用い、試料は1g、昇温温度は6℃/分、荷重を20kgとし、ノズルは直径1mmで長さ1mmのものを用い、1/2法で試料の半分が流出した温度を軟化点とした。
エマルションの軟化点は、エマルションを十分に乾燥させた後、樹脂の不揮発分のみを測定した。
【0040】
(トナー粒径の測定)
トナー粒径の測定には、FPIA−2100(シスメックス(株)製)を用いた。ここでは、少量の試料を精製水及び界面活性剤とともにビーカーに入れ、超音波洗浄機にて分散させてなる分散液を測定に使用した。測定結果としては、体積平均粒径(D50)を得た。
【0041】
(粘着剤層およびコート層の厚みの測定)
粘着剤層およびコート層の厚みの測定には、マイクロメーター(SONY(株)製、μ-mate)を用いた。
【0042】
(ラベルの引きはがしによる結着性の測定)
コート層とラベル基材の結着性を測定するために、(株)島津製作所製オートグラフAGS−Jを用いて、20Nのロードセルを取り付け、JIS Z0237の90度引きはがし法により剥離試験を行った。サンプルサイズは600mm×250mmのものを用いた。30mm/secの速度でラベルをSUS板から引きはがした。
【0043】
次に、ラベルの作製例を示す。
<2.ラベルの作製例>
(アクリルエマルションの作製)
アクリルエマルション1の作製
三井化学(株)製ケミパールS75N 40質量部をイオン交換水56mlで希釈した後、窒素雰囲気下において80℃に加熱し、過硫酸カリウム0.45質量部を添加して、ケミパールを含む混合液を調製した。
【0044】
これとは別に、アクリル酸2−エチルヘキシル40質量部、グリシジルメタアクリレート10質量部、イオン交換水20mlの混合液に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.20質量部を添加して、乳化混合物を調製した。
【0045】
この乳化混合物を、ケミパールを含む混合液に3時間かけて滴下した。その後さらに4時間反応させて、不揮発分44%のアクリルエマルション1を得た。得られたアクリルエマルション1の軟化点は181℃であった。
【0046】
アクリルエマルション2〜6の作製
アクリルエマルション1の作製と同様の方法で、過硫酸カリウムの添加量を0.45〜7.0質量部の範囲で徐々に多くしていき、乳化混合物の滴下時間を0.3〜3時間の範囲で徐々に短くしながら、下記の軟化点を有するアクリルエマルション2〜6を作製した。
アクリルエマルション2 不揮発分42% 軟化点 170℃
アクリルエマルション3 不揮発分39% 軟化点 158℃
アクリルエマルション4 不揮発分40% 軟化点 150℃
アクリルエマルション5 不揮発分42% 軟化点 141℃
アクリルエマルション6 不揮発分40% 軟化点 134℃。
【0047】
(ラベル台紙の作製)
ラベル台紙1の作製
アクリル系粘着剤である綜研化学製粘着剤SKダイン1811L 100質量部と綜研化学製硬化剤TD−75 0.2質量部を混合し、室温で2時間撹拌した。その混合物をセパレーター上にアプリケーターを用いて塗布し、100℃で2分間、その後室温で1週間エージング処理を行った。
【0048】
不揮発分15%になるようにイオン交換水で希釈したアクリルエマルション1を、上記の台紙の粘着剤表面に塗布した後、室温で一晩乾燥して、ラベル台紙1を得た。
【0049】
ラベル台紙2〜6の作製
アクリルエマルション2〜6を用いて、作製例1と同様の方法でラベル台紙2〜6を作製した。
【0050】
ラベル台紙7の作製
ラベル台紙1を作製した後にアクリルエマルション6をさらに塗布し、ラベル台紙7を作製した。
【0051】
(ポリブチレンコハク酸の合成)
コハク酸100質量部と1,4−ブタンジオール89質量部に対して、リンゴ酸0.4質量部と二酸化ゲルマニウム1質量部を溶解させた88%乳酸水溶液を5質量部添加した。反応系内を窒素雰囲気にした後、220℃にて1時間反応させて、次に230℃に昇温を行いながら1.5時間かけて70Paまで減圧した。さらに2時間重合を進行させて、ポリブチレンコハク酸を得た。
【0052】
(ラベル基材となるトナーの製造)
得られたポリブチレンコハク酸96.5質量部と、帯電制御剤として日本カーリット製LR−147 1質量部と、カルナバワックス(加藤洋行製)2.5質量部とを混合し、それを2軸押出混練機にて混練した。混練物をホソカワミクロン製リンレックスミルにて液体窒素下にて粉砕して、D50(体積平均粒径)37μmの粉末を得た。
【0053】
その後、得られた粒子100質量部を疎水化処理したシリカ粒子;日本アエロジル製RY200 0.2質量部と、日本アエロジル製NY50 0.7質量部をヘンシェルミキサーにて攪拌して外添して、ラベル基材となるトナーを得た(D50(体積平均粒径)37μm、軟化点 125℃)。
【0054】
(台紙付きラベルの作製)
例1
例1A
得られたトナーを、電子写真プロセスにより、A4サイズのラベル台紙1上に現像し、トナーが現像されたラベル台紙1を180℃の定着器に17mm/秒で通すことにより、ラベル台紙上に80μmの厚みのラベル基材を得た。
【0055】
その後、ラベル基材上に、カシオ計算機(株)製N5300プリンタにて画像を現像し、180℃で定着させ、台紙付きラベル1Aを作製した。
【0056】
例1B〜1F
定着器のヒートロールの温度設定を170℃、160℃、150℃、140℃、130℃にそれぞれ設定して、例1Aと同様の手法で、台紙付きラベル1B〜1Fを作製した。
140℃以下の温度で定着した場合、トナー自体が十分に溶融せずにラベルが形成できなかった。
【0057】
例2〜7
ラベル台紙2を用いて、例1と同様に定着器の設定温度を変えて、台紙付きラベル2A〜2Fを作製した。
同様に、ラベル台紙3〜7を用いて、台紙付きラベル3A〜3F、4A〜4F、5A〜5F、6A〜6F、7A〜7Fを作製した。
【0058】
以下に、作製された台紙付きラベルの評価結果を示す。
<3.評価結果>
(評価方法)
作製したラベルをSUS板に貼り付け、そのラベルを引きはがしたときの粘着剤やコート層のSUS板への残留量から、ラベル基材とコート層の結着性を評価した。
【0059】
(評価基準)
〇:コート層および粘着剤が、SUS板に残留しなかった
△:コート層および粘着剤が、ラベル面積の10%未満の面積で、SUS板に残留した
×:コート層および粘着剤が、ラベル面積の10%以上の面積で、SUS板に残留した
−:トナーが溶融しなかった
【0060】
(結果)
評価結果を下記表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
例1は、181℃の軟化点を有するコート層樹脂を含むラベル台紙1の上に、180℃、170℃、160℃、150℃、140℃、130℃の定着温度でラベル基材を定着させて作製した台紙付きラベル1A〜1Fの結果を示す。例1では、使用したコート層樹脂の軟化点が181℃であったため、いずれの定着温度を採用した場合にも、コート層樹脂は溶融しなかった。このため、コート層とラベル基材との結着性は弱く、ラベルを引きはがした際に粘着剤やコート層がSUS板に残留した。
【0063】
例2は、170℃の軟化点を有するコート層樹脂を含むラベル台紙2の上に、180℃、170℃、160℃、150℃、140℃、130℃の定着温度でラベル基材を定着させて作製した台紙付きラベル2A〜2Fの結果を示す。例2では、使用したコート層樹脂の軟化点が170℃であったため、180℃の定着温度を採用した場合のみ、コート層樹脂が溶融して、コート層とラベル基材との結着性の向上がみられた。
【0064】
例3は、158℃の軟化点を有するコート層樹脂を含むラベル台紙3の上に、180℃、170℃、160℃、150℃、140℃、130℃の定着温度でラベル基材を定着させて作製した台紙付きラベル3A〜3Fの結果を示す。例3では、使用したコート層樹脂の軟化点が158℃であったため、170℃の定着温度を採用した場合には、コート層樹脂が溶融して、コート層とラベル基材との結着性の向上がみられ、180℃の定着温度を採用した場合には、コート層とラベル基材との結着性が更に向上した。
【0065】
例4は、150℃の軟化点を有するコート層樹脂を含むラベル台紙4の上に、180℃、170℃、160℃、150℃、140℃、130℃の定着温度でラベル基材を定着させて作製した台紙付きラベル4A〜4Fの結果を示す。例4では、使用したコート層樹脂の軟化点が150℃であったため、160℃の定着温度を採用した場合には、コート層樹脂が溶融して、コート層とラベル基材との結着性の向上がみられ、170℃および180℃の定着温度を採用した場合には、コート層とラベル基材との結着性が更に向上した。
【0066】
例5は、141℃の軟化点を有するコート層樹脂を含むラベル台紙5の上に、180℃、170℃、160℃、150℃、140℃、130℃の定着温度でラベル基材を定着させて作製した台紙付きラベル5A〜5Fの結果を示す。例5では、使用したコート層樹脂の軟化点が141℃であったため、150℃の定着温度を採用した場合には、コート層樹脂が溶融して、コート層とラベル基材との結着性の向上がみられ、160℃、170℃および180℃の定着温度を採用した場合には、コート層とラベル基材との結着性が更に向上した。
【0067】
例6は、134℃の軟化点を有するコート層樹脂を含むラベル台紙6の上に、180℃、170℃、160℃、150℃、140℃、130℃の定着温度でラベル基材を定着させて作製した台紙付きラベル6A〜6Fの結果を示す。例6では、使用したコート層樹脂の軟化点が134℃であったため、140℃の定着温度を採用した場合には、コート層樹脂が溶融して、コート層とラベル基材との結着性の向上がみられ、150℃、160℃、170℃および180℃の定着温度を採用した場合には、コート層とラベル基材との結着性が更に向上した。
【0068】
例7では、181℃の軟化点のコート層樹脂を含む第1のコート層を形成し、その上に、134℃の軟化点のコート層樹脂を含む第2のコート層を形成することにより、2層のコート層を設けた。例7は、かかる2層のコート層を備えたラベル台紙7の上に、170℃、160℃、150℃、140℃、130℃の定着温度でラベル基材を定着させて作製した台紙付きラベル7A〜7Fの結果を示す。例7では、140℃の定着温度を採用した場合には、ラベル基材と接する表面のコート層樹脂が溶融して、コート層とラベル基材との結着性の向上がみられ、150℃、160℃、170℃および180℃の定着温度を採用した場合には、コート層とラベル基材との結着性が更に向上した。
【0069】
これらの結果は、定着器の設定温度より10℃以上低い軟化点のコート層樹脂をラベル台紙の最表面に使用すると、コート層とラベル基材との結着性を高めることができることを示す。また、定着器の設定温度より20℃以上低い軟化点のコート層樹脂をラベル台紙の最表面に使用すると、コート層とラベル基材との結着性を更に高めることができることを示す。更に、定着器の設定温度より30℃以上低い軟化点のコート層樹脂をラベル台紙の最表面に使用すると、コート層とラベル基材との結着性を確実に高めることができた。
【0070】
例7のように、コート層を2層構造にすると、ラベルに充分なコシをもたせることができるという利点を有する。また、コート層を2層構造にすると、各コート層に異なる機能をもたせることもできる。
【0071】
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 剥離シートに粘着剤層を形成する工程と、
前記粘着剤層の上に、ラベル基材の定着温度より10℃以上低い軟化点を有する樹脂で形成されたコート層と接するように、前記定着温度で定着させてラベル基材を形成する工程と
を含むことを特徴とする台紙付きラベルの製造方法。
[2] 前記ラベル基材の上、または前記ラベル基材と前記コート層との間に、印刷層を形成する工程を更に含むことを特徴とする[1]に記載の台紙付きラベルの製造方法。
[3] 前記コート層樹脂が、ラベル基材の定着温度より30℃以上低い軟化点を有することを特徴とする[1]または[2]に記載の台紙付きラベルの製造方法。
[4] 前記コート層樹脂が、アクリル樹脂であることを特徴とする[1]乃至[3]の何れか1に記載の台紙付きラベルの製造方法。
[5] 前記定着温度が、150〜180℃であることを特徴とする[1]乃至[4]の何れか1に記載の台紙付きラベルの製造方法。
[6] [1]乃至[5]の何れか1に記載の方法により製造されることを特徴とする台紙付きラベル。
[7] 剥離シートと、
前記剥離シートに設けられた粘着剤層と、
170℃以下の軟化点を有するコート層樹脂を含み、前記粘着剤層の上に設けられたコート層と
を含むことを特徴とするラベル台紙。
[8] 剥離シートと、
前記剥離シートに設けられた粘着剤層と、
170℃以下の軟化点を有するコート層樹脂を含み、前記粘着剤層の上に設けられたコート層と、
前記コート層と接するように設けられたトナーからなるラベル基材と
を含むことを特徴とする台紙付きラベル。
【符号の説明】
【0072】
1…台紙付きラベル
2…ラベル台紙
3…ラベル層
4…粘着ラベル
21…剥離シート
22…粘着剤層
23…コート層
31…ラベル基材
32…印刷層
図1
図2