(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記情報処理装置は、前記負荷指標値と前記繰出長指標値をそれぞれ複数の区分に分類するとともに、前記負荷指標値及び前記繰出長指標値の各区分毎に対応する前記時間の長さを蓄積して、その各区分毎の前記累積時間の分布を示す累積時間分布データを前記負荷繰出長統計情報として作成する、請求項1に記載のクレーンの情報提示システム。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
まず、
図1を参照して、発明の一実施形態による情報提示システム1で情報を提示する対象となるクレーン2について説明する。
【0023】
クレーン2(
図1参照)は、自走可能な下部走行体40と、その下部走行体40上に縦軸回りに旋回可能となるように搭載された上部旋回体45とを備える。
【0024】
上部旋回体45には、クレーン作業を行うための作業装置50が設けられている。この作業装置50は、起伏部材としてのブーム51と、マスト52と、ガントリ53と、マスト側スプレッダ55と、ガントリ側スプレッダ56と、巻上ウインチ61と、起伏ウインチ62と、フック装置64と、吊ロープ66と、起伏ロープ67と、ガイライン68と、を有する。
【0025】
ブーム51は、起伏可能となるように上部旋回体45の前部に取り付けられている。ブーム51の先端にはトップシーブ51aが設けられている。
【0026】
マスト52は、上部旋回体45においてブーム51の後方の位置に設けられている。マスト52は、その下端部を支点として回動可能となるように設けられている。このマスト52の上端部にマスト側スプレッダ55が設けられている。また、マスト52の先端は、ガイライン68を介してブーム51の先端部に接続されている。
【0027】
ガントリ53は、上部旋回体45においてマスト52のさらに後方の位置、すなわち上部旋回体45の後部に立設されている。このガントリ53の上端部にガントリ側スプレッダ56が設けられている。
【0028】
巻上ウインチ61は、本発明におけるウインチの一例であり、上部旋回体45に搭載されている。巻上ウインチ61は、ワイヤロープである吊ロープ66が巻かれた巻上ドラム61aを有する。巻上ドラム61aから引き出された吊ロープ66は、ブーム51の先端へ延び、そのブーム51の先端からフック装置64を吊り下げる。フック装置64は、吊荷100を吊るものである。フック装置64は図略のフックシーブを備えており、このフックシーブとトップシーブ51aとに吊ロープ66が所定の掛数で巻き掛けられている。
【0029】
巻上ウインチ61は、巻上ドラム61aを回転させて吊ロープ66の巻き取り及び繰り出しを行うことによりフック装置64及びそれに吊られた吊荷100の巻き上げ及び巻き下げを行う。
【0030】
起伏ウインチ62は、本発明におけるウインチの別の一例であり、ガントリ53の下部に設けられている。起伏ウインチ62は、ワイヤロープである起伏ロープ67が巻かれた起伏ドラム62aを有する。起伏ドラム62aから引き出された起伏ロープ67は、ガントリ側スプレッダ56のシーブとマスト側スプレッダ55のシーブとに掛け回されている。起伏ウインチ62は、起伏ドラム62aを回転させて起伏ロープ67を巻き取ることによりマスト側スプレッダ55をガントリ側スプレッダ56側へ引き寄せ、それによってマスト52を後方へ回動させるとともにガイライン68を介してブーム51の先端部を後方へ引っ張ってブーム51を起立させる。また、起伏ウインチ62は、起伏ドラム62aを回転させて起伏ロープ67を繰り出すことによりマスト側スプレッダ55がガントリ側スプレッダ56から前方へ離反することを許容し、それによってマスト52が前方へ回動しつつブーム51が倒伏するようになっている。
【0031】
本実施形態による情報提示システム1は、以上のようなクレーン2の吊ロープ66及び起伏ロープ67についての交換時期の判断の指針となる情報を提示するものである。
図2には、この情報提示システム1の概略的な全体構成が示されており、
図3には、情報提示システム1を構成するクレーン2の情報取得システム4の構成が示されている。
【0032】
情報提示システム1は、複数のクレーン2についての情報を取得して提示し得るように構成されている。情報提示システム1は、
図2に示すように、各クレーン2に搭載された情報取得システム4と、携帯電話網6と、提示手段9と、を備える。
【0033】
情報取得システム4は、それが搭載されたクレーン2についての各種情報を取得するためのシステムである。情報取得システム4は、
図3に示すように、検出器群18と、過負荷防止装置19と、巻残量導出部20と、ECU(Engine Control Unit)24と、データロガー28と、CAN−bus(Control Area Network bus)30と、を備える。
【0034】
検出器群18は、クレーン2の各作動部の動作に関する値を検出する複数の検出器からなる。具体的には、検出器群18には、巻上ドラム61aの回転量を検出する近接センサ41、起伏ドラム62aの回転量を検出する近接センサ42、巻上ドラム61aにかかる負荷を検出するロードセル43、及び、起伏ドラム62aにかかる負荷を検出するロードセル44等が含まれる。
【0035】
近接センサ41は、巻上ドラム61aの近傍に設けられている。巻上ドラム61aの軸方向の端面の周縁部には、その周縁部の周方向に並ぶ複数の突起部が当該周縁部の全周に亘って設けられており、近接センサ41は、その突起部に対向するように配置されている。近接センサ41は、巻上ドラム61aの回転に伴って当該近接センサ41に近接した位置を通過する各突起部を検知し、その検知した突起部の数に応じたパルス信号を巻上ドラム61aの回転量を示す検出信号として出力する。
【0036】
また、近接センサ42は、起伏ドラム62aの近傍に設けられており、近接センサ41と同様に構成されている。すなわち、起伏ドラム62aには、巻上ドラム61aの場合と同様に複数の突起部が設けられ、近接センサ42は、起伏ドラム62aの回転に伴って当該近接センサ42に近接した位置を通過する各突起部を検知し、その検知した突起部の数に応じたパルス信号を起伏ドラム62aの回転量を示す検出信号として出力する。
【0037】
過負荷防止装置19は、クレーン作業中に作業装置50にかかる負荷が過負荷状態になるのを防止するための装置である。過負荷防止装置19は、巻上ドラム61aにかかる負荷を検出するロードセル43の検出値に基づいて吊ロープ66にかかる実荷重を算出する。また、過負荷防止装置19は、起伏ドラム62aにかかる負荷を検出するロードセル44の検出値に基づいて起伏ロープ67にかかる実荷重を算出する。そして、過負荷防止装置19は、算出した吊ロープ66にかかる実荷重に基づいて、吊ロープ66の定格荷重に対する算出した実荷重の比率である吊ロープ66についての負荷率を算出する。また、過負荷防止装置19は、算出した起伏ロープ67にかかる実荷重に基づいて、起伏ロープ67の定格荷重に対する算出した実荷重の比率である起伏ロープ67についての負荷率を算出する。各ロープ66,67についての負荷率は、各ロープ66,67にかかる負荷の指標値に相当するものであり、本発明における負荷指標値の一例である。また、この負荷率を算出する過負荷防止装置19は、本発明における負荷指標導出部の一例である。
【0038】
過負荷防止装置19は、算出した吊ロープ66についての負荷率又は算出した起伏ロープ67についての負荷率が105%以上になった場合に過負荷状態が発生したと判断してクレーン2の稼働を停止させる。過負荷防止装置19は、過負荷状態が発生したと判断した場合には、その過負荷状態が発生した時点のクレーン2の作業状態を後に把握できるようにするため、その時点のクレーン2の作業状態を含む各種データを当該過負荷防止装置19の図略のメモリに保存する。具体的には、過負荷防止装置19は、過負荷状態が発生したと判断した場合には、その時点における日付、時刻、ブーム51の起伏角度、定格荷重、実荷重、作業半径、負荷率、メインコントローラ21,22(後述)の入出力信号、各ウインチ61,62やその他のクレーン2の作動部を操作するための操作レバーの操作信号などを当該過負荷防止装置19のメモリに保存する。また、過負荷防止装置19は、過負荷状態が発生したと判断した場合には、そのメモリに保存したデータと同じデータをデータロガー28へ送信する。
【0039】
巻残量導出部20は、巻上ウインチ61の巻上ドラム61aに巻かれている吊ロープ66の残量(以下、吊ロープ66の巻残量と称する)と、起伏ウインチ62の起伏ドラム62aに巻かれている起伏ロープ67の残量(以下、起伏ロープ67の巻残量と称する)とを導出する。巻残量導出部20は、本発明による繰出長指標導出部の一例であり、この巻残量導出部20によって導出される各ロープ66,67の巻残量は、本発明における繰出長指標値の一例である。各ロープ66,67の巻残量が多い場合には各ウインチ61,62からの各ロープ66,67の繰出長が少なくなり、各ロープ66,67の巻残量が少ない場合には各ウインチ61,62からの各ロープ66,67の繰出長が多くなるため、各ロープ66,67の巻残量は、各ウインチ61,62から繰り出された各ロープ66,67の長さの指標値である繰出長指標値として用いることができる。巻残量導出部20は、第1メインコントローラ21と、第2メインコントローラ22と、を含む。
【0040】
第1及び第2メインコントローラ22は、それぞれ、クレーン2の対応する各作動部の制御を行う。具体的に、第1メインコントローラ21は、巻上ウインチ61の動作の制御を行い、第2メインコントローラ22は、起伏ウインチ62の動作の制御を行う。
【0041】
第1メインコントローラ21には、近接センサ41から巻上ドラム61aの回転量を示すパルス信号が入力される。第1メインコントローラ21は、入力されたパルス信号に基づいてその時点で巻上ドラム61aに巻かれている吊ロープ66の巻残量を算出する。すなわち、第1メインコントローラ21は、吊ロープ66の巻残量の導出装置としての機能を有する。
【0042】
具体的に、第1メインコントローラ21は、入力されたパルス信号から巻上ドラム61aの回転量を算出する。また、第1メインコントローラ21には、巻上ドラム61aの回転量と巻上ドラム61aに巻かれている吊ロープ66の巻層及び巻列との相関関係を示す換算情報が予め組み込まれている。第1メインコントローラ21は、算出した巻上ドラム61aの回転量に対応する吊ロープ66の巻層及び巻列を換算情報に基づいて導出する。そして、第1メインコントローラ21は、導出した吊ロープ66の巻層及び巻列に基づいて、吊ロープ66の巻残量、すなわち巻上ドラム61aに巻かれて残っている吊ロープ66の長さを算出する。
【0043】
第2メインコントローラ22には、近接センサ42から起伏ドラム62aの回転量を示すパルス信号が入力される。第2メインコントローラ22は、入力されたパルス信号に基づいてその時点で起伏ドラム62aに巻かれている起伏ロープ67の巻残量を算出する。すなわち、第2メインコントローラ22は、起伏ロープ67の巻残量の導出装置としての機能を有する。
【0044】
具体的に、第2メインコントローラ22は、入力されたパルス信号から起伏ドラム62aの回転量を算出する。また、第2メインコントローラ22には、起伏ドラム62aの回転量と起伏ドラム62aに巻かれている起伏ロープ67の巻層及び巻列との相関関係を示す換算情報が予め組み込まれている。第2メインコントローラ22は、算出した起伏ドラム62aの回転量に対応する起伏ロープ67の巻層及び巻列を当該第2メインコントローラ22に組み込まれた換算情報に基づいて導出する。そして、第2メインコントローラ22は、導出した起伏ロープ67の巻層及び巻列に基づいて、起伏ロープ67の巻残量、すなわち起伏ドラム62aに巻かれて残っている起伏ロープ67の長さを算出する。
【0045】
ECU24は、クレーン2のエンジンの回転数を制御するものである。
【0046】
CAN−bus30は、第1及び第2メインコントローラ21,22と、ECU24と、過負荷防止装置19と、データロガー28とをそれらの間でデータが転送可能となるように相互に接続している。以下、CAN−bus30のことを単にbus30と称する。第1メインコントローラ21は、算出した吊ロープ66の巻残量のデータをbus30へ所定時間周期で出力する。第2メインコントローラ22は、算出した起伏ロープ67の巻残量のデータをbus30へ所定時間周期で出力する。また、過負荷防止装置19は、各ロープ66,67についての定格荷重、実荷重及び負荷率のデータをbus30へ所定時間周期で出力する。
【0047】
データロガー28は、bus30に流れるデータをそのbus30から取得して蓄積する装置である。データロガー28は、情報処理装置31を有する。
【0048】
情報処理装置31は、吊ロープ66についての負荷率のデータと、起伏ロープ67についての負荷率のデータと、吊ロープ66の巻残量のデータと、起伏ロープ67の巻残量のデータと、クレーン2の稼働に関するデータ(稼働情報)とをbus30から取得して蓄積する。そして、本実施形態では、情報処理装置31が、取得した各データに基づいて、吊ロープ66についての負荷率及び巻残量と累積時間との対応関係を示す吊ロープ統計情報を作成するとともに、起伏ロープ67についての負荷率及び巻残量と累積時間との対応関係を示す起伏ロープ統計情報を作成する。
【0049】
吊ロープ統計情報における累積時間は、ある負荷率に対応する負荷が吊ロープ66にかかるとともに、ある巻残量の吊ロープ66が巻上ドラム61aに巻かれて残っている状態での経過時間に相当する。また、起伏ロープ統計情報における累積時間は、ある負荷率に対応する負荷が起伏ロープ67にかかるとともに、ある巻残量の起伏ロープ67が起伏ドラム62aに巻かれて残っている状態での経過時間に相当する。吊ロープ統計情報及び起伏ロープ統計情報は、本発明における負荷繰出長統計情報の一例である。以下、情報処理装置31の構成について詳述する。
【0050】
情報処理装置31は、情報処理部32と、不揮発メモリ34とを有する。情報処理部32は、bus30から取得した各データの処理を行うものである。また、不揮発メモリ34は、情報処理部32によって処理された情報及びデータを保存して蓄積するものである。
【0051】
具体的に、情報処理部32は、吊ロープ66及び起伏ロープ67についての負荷率のデータをbus30から特定周期で取得する。また、情報処理部32は、吊ロープ66及び起伏ロープ67の巻残量のデータを、負荷率のデータを取得するのと同じ周期でbus30から取得する。
【0052】
情報処理部32は、各ロープ66,67についての負荷率及び巻残量の各データを取得する毎に、時間をカウントアップする。そして、情報処理部32は、取得した吊ロープ66についての負荷率のデータと、その負荷率のデータの取得と同じタイミングで取得した吊ロープ66の巻残量のデータと、それらのデータの取得に応じて時間をカウントアップして得た累積時間のデータとを互いに対応付けて不揮発メモリ34に記憶させる。また、情報処理部32は、取得した起伏ロープ67についての負荷率のデータと、その負荷率のデータの取得と同じタイミングで取得した起伏ロープ67の巻残量のデータと、それらのデータの取得に応じて時間をカウントアップして得た累積時間のデータとを互いに対応付けて不揮発メモリ34に記憶させる。
【0053】
具体的には、情報処理部32は、吊ロープ66についての負荷率と巻残量をそれぞれ複数の区分に分類し、その負荷率の各区分と巻残量の各区分とを対応付けた下記の統計表の形態で累積時間tのデータを不揮発メモリ34に記憶させる。
【0055】
本実施形態では、吊ロープ66についての負荷率xを、0%以上20%未満の区分、20%以上40%未満の区分、40%以上60%未満の区分、60%以上80%未満の区分、及び、80%以上100%以下の区分に分類している。また、吊ロープ66の巻残量yを吊ロープ66の所定長さ毎の多数の区分に分類している。情報処理部32は、取得した吊ロープ66についての負荷率のデータが該当する負荷率xの区分と、算出した吊ロープ66の巻残量のデータが該当する巻残量yの区分とを特定し、その特定した負荷率x及び巻残量yの両区分に対応する上記統計表中の1つのセル(特定した負荷率xの区分の横列と特定した巻残量yの区分の縦列とが交わった箇所のセル)に累積時間tのデータを登録する。情報処理部32は、吊ロープ66についての負荷率及び巻残量のデータを取得する毎にこのような登録を行ってデータを蓄積し、それによって吊ロープ66についての負荷率及び巻残量と累積時間との対応関係を示す吊ロープ統計情報を作成する。吊ロープ統計情報は、吊ロープ66についての負荷率及び巻残量の各区分毎の累積時間の分布を示し、本発明における累積時間分布データの概念に含まれる。情報処理部32は、作成した吊ロープ統計情報を不揮発メモリ34に保存する。
【0056】
また、情報処理部32は、起伏ロープ67について、吊ロープ66の場合と同様にデータを蓄積し、それによって起伏ロープ67についての負荷率及び巻残量と累積時間との対応関係を示す起伏ロープ統計情報を作成する。この起伏ロープ統計情報は、起伏ロープ67についての負荷率及び巻残量の各区分毎の累積時間の分布を示し、本発明における累積時間分布データの概念に含まれる。情報処理部32は、作成した起伏ロープ統計情報を不揮発メモリ34に保存する。
【0057】
また、情報処理部32は、過負荷状態が発生したときに過負荷防止装置19からデータロガー28に送信されたデータを受信して不揮発メモリ34に保存する。
【0058】
情報処理部32は、不揮発メモリ34に保存された吊ロープ統計情報、起伏ロープ統計情報、クレーン2の位置情報及びクレーン2の稼働情報を携帯電話網6を通じて提示手段9(
図2参照)の後述の情報蓄積サーバ10へ送信する。情報処理部32は、この情報の送信を、予め設定された所定の期間で不揮発メモリ34に保存されている情報をまとめた期間データを送信することによって行う。
【0059】
提示手段9は、情報処理部32から送信された吊ロープ統計情報、起伏ロープ統計情報、クレーン2の位置情報及び稼働情報を提示するものである。すなわち、提示手段9は、情報処理部32から送信された期間データを提示する。この提示手段9は、
図2に示すように、情報蓄積サーバ10及び蓄積情報閲覧端末14を有する。
【0060】
情報蓄積サーバ10は、各クレーン2のデータロガー28(
図3参照)の情報処理部32から受信した情報を各クレーン2毎に保存して蓄積する。情報蓄積サーバ10は、受信した吊ロープ統計情報の期間データを処理して、吊ロープ66についての負荷率及び巻残量の各区分毎の累積時間の分布を示す分布図のデータを作成する。また、情報蓄積サーバ10は、受信した起伏ロープ統計情報の期間データを処理して、起伏ロープ67についての負荷率及び巻残量の各区分毎の累積時間の分布を示す分布図のデータを作成する。情報蓄積サーバ10は、作成した各ロープ66,67についての分布図のデータを保存する。
【0061】
蓄積情報閲覧端末14は、インターネット回線12を介して情報蓄積サーバ10にアクセス可能な端末である。蓄積情報閲覧端末14としては、例えばパーソナルコンピュータが用いられる。蓄積情報閲覧端末14は、情報蓄積サーバ10に保存された情報及びデータを表示可能であり、本発明における表示手段の一例である。すなわち、この蓄積情報閲覧端末14により、情報蓄積サーバ10に保存された情報及びデータを閲覧可能となっている。
【0062】
図4及び
図5には、吊ロープ統計情報から作成されて蓄積情報閲覧端末14で表示される吊ロープ66についての分布図の一例が示されている。
図4は、吊ロープ66の繰出長が比較的小さい状態、すなわち巻上ウインチ61における吊ロープ66の巻残量が比較的大きい状態でクレーン作業を行った場合についての分布図である。
図5は、吊ロープ66の繰出長が比較的大きい状態、すなわち巻上ウインチ61における吊ロープ66の巻残量が比較的小さい状態でクレーン作業を行った場合についての分布図である。なお、
図4及び
図5に記載されたL1〜L10は、巻上ウインチ61における吊ロープ66の巻残量を示しており、L1からL10へ向かうにつれて吊ロープ66の巻残量が大きくなる。
【0063】
吊ロープ66の繰出長が比較的小さい状態でクレーン作業を行った場合には、
図4に示されているように、吊ロープ66の巻残量が比較的大きい範囲(L8以上の範囲)での累積時間が大きく、吊ロープ66の繰出長が比較的大きい状態でクレーン作業を行った場合には、
図5に示されているように、吊ロープ66の巻残量が比較的小さい範囲(L2〜L4の範囲)での累積時間が大きくなっている。すなわち、クレーン作業が、吊ロープ66の繰出長が比較的小さい状態で行われる作業であるか又は吊ロープ66の繰出長が比較的大きい状態で行われる作業であるかによって、吊ロープ66の巻残量に対する累積時間の分布に差異が生じる。
【0064】
累積時間が吊ロープ66の巻残量の特定の範囲のみに固まっていて他の範囲にほぼ存在しない場合、すなわち吊ロープ66の巻残量における累積時間の偏りが大きい場合には、吊ロープ66の使用部位の偏りが大きいことが示唆される。吊ロープ66の使用部位の偏りが大きい場合には、吊ロープ66の限られた部位に疲労が蓄積されている(吊ロープ66が局所的に痛んでいる)可能性があり、吊ロープ66の交換時期が早くなる可能性がある。一方、分布図において累積時間が分散していてその分布図がなだらかな様相を示している場合には、吊ロープ66の使用部位が分散しており、吊ロープ66の特定の部位に局所的に疲労が蓄積している可能性は低いことが示唆される。
【0065】
また、負荷率が大きい範囲の累積時間が突出している場合には、吊ロープ66に大きな負荷が長時間かかったことが示唆される。この場合も、吊ロープ66の交換時期が早くなる可能性がある。以上のことから、吊ロープ統計情報から得られる分布図は、吊ロープ66の交換時期の判断の指針となる。
【0066】
また、起伏ロープ統計情報についても、吊ロープ統計情報から得られる分布図と同様の形態の分布図を得ることができ、その得られた分布図は、起伏ロープ67の交換時期の判断の指針となる。
【0067】
次に、
図6のフローチャートを参照して、データロガー28で行われる処理について説明する。
【0068】
まず、クレーン2のエンジンキーがオンされる(ステップS1)。
【0069】
このエンジンキーのオンに応じて、データロガー28では、情報処理部32によって前回データの復元処理が行われる(ステップS2)。具体的に、データロガー28の不揮発メモリ34には、クレーン2の前回の稼動の終了時点(前回のエンジンキーのオフ時点)でその前回の稼働中の各種データが不揮発メモリ34に保存されており、情報処理部32は、今回のエンジンキーのオンに応じて、不揮発メモリ34に保存されている前回の最終データを読み出して復元する。より具体的には、情報処理部32は、不揮発メモリ34に保存されている前回の最終データのうちの吊ロープ統計情報及び起伏ロープ統計情報を読み出して復元する。
【0070】
その後、データロガー28によるデータの取得サイクルが開始される(ステップS3)。
【0071】
まず、データロガー28がbus30に流れる各種データを受信する(ステップS4)。
【0072】
そして、情報処理部32は、データロガー28が受信したデータから吊ロープ統計情報及び起伏ロープ統計情報を作成するための対象データを取り出す(ステップS5)。具体的には、情報処理部32は、各ロープ66,67についての負荷率のデータ及び各ロープ66,67の巻残量のデータを対象データとして取り出す。
【0073】
次に、情報処理部32は、取得した各ロープ66,67についての負荷率のデータ及び各ロープ66,67の巻残量のデータの解析を行う(ステップS6)。具体的に、情報処理部32は、上記ステップS2で復元した吊ロープ統計情報の負荷率の複数の区分のうち取得した吊ロープ66についての負荷率が該当する区分を特定するとともに、その吊ロープ統計情報の巻残量の複数の区分のうち取得した吊ロープ66の巻残量が該当する区分を特定する。また、情報処理部32は、上記ステップS2で復元した起伏ロープ統計情報の負荷率の複数の区分のうち取得した起伏ロープ67についての負荷率が該当する区分を特定するとともに、その起伏ロープ統計情報の巻残量の複数の区分のうち取得した起伏ロープ67の巻残量が該当する区分を特定する。
【0074】
その後、情報処理部32は、吊ロープ統計情報のうち特定した負荷率の区分及び特定した巻残量の区分の両方に対応する時間を情報処理部32によるデータの取得周期(1sec)に相当する時間の分だけカウントアップするとともに、起伏ロープ統計情報のうち特定した負荷率の区分及び特定した巻残量の区分の両方に対応する時間を前記データの取得周期に相当する時間の分だけカウントアップする(ステップS7)。
【0075】
次に、情報処理部32は、時間をカウントアップした後の新たな吊ロープ統計情報及び新たな起伏ロープ統計情報を不揮発メモリ34に記憶させる(ステップS8)。すなわち、情報処理部32は、不揮発メモリ34に記憶されていた吊ロープ統計情報及び起伏ロープ統計情報を、時間をカウントアップした後の新たな吊ロープ統計情報及び新たな起伏ロープ統計情報に更新する。
【0076】
その後、情報処理部32は、エンジンキーがオフされたか否かの判断を行い(ステップS9)、エンジンキーがまだオフされていないと判断した場合には、上記ステップS4以降のデータ取得サイクルを繰り返し実行する。一方、情報処理部32は、エンジンキーがオフされたと判断した場合には、上記ステップS8で更新された不揮発メモリ34の吊ロープ統計情報及び起伏ロープ統計情報の保存処理を行い(ステップS10)、データロガー28における処理が終了する。
【0077】
不揮発メモリ34の吊ロープ統計情報及び起伏ロープ統計情報は、エンジンキーのオフ毎に、上記ステップS10で保存処理される吊ロープ統計情報及び起伏ロープ統計情報に更新される。また、情報処理部32は、エンジンキーのオフ毎に、その時点までに不揮発メモリ34に蓄積されたクレーン2の稼働情報の保存処理を行う。
【0078】
そして、本実施形態では、情報処理部32は、予め設定された所定の期間で不揮発メモリ34に保存されている吊ロープ統計情報及び起伏ロープ統計情報とクレーン2の稼働情報とをまとめた期間データを作成し、その作成した期間データを情報蓄積サーバ10へ携帯電話網6を通じて送信する。
【0079】
本実施形態では、吊ロープ66についての負荷率及び巻残量と、その負荷率に相当する負荷が吊ロープ66にかかり且つその巻残量に相当する長さの吊ロープ66が巻上ドラム61aに巻かれて残っている状態での累積時間との対応関係を示す吊ロープ統計情報が、提示手段9によって提示される。また、起伏ロープ67についての負荷率及び巻残量と、その負荷率に相当する負荷が起伏ロープ67にかかり且つその巻残量に相当する長さの起伏ロープ67が起伏ドラム62aに巻かれて残っている状態での累積時間との対応関係を示す起伏ロープ統計情報が、提示手段9によって提示される。
【0080】
吊ロープ統計情報は、巻上ドラム61aにどの程度の長さの吊ロープ66が巻かれて残っている状態、すなわち巻上ドラム61aからどの程度の長さの吊ロープ66が繰り出された状態でその吊ロープ66にどの程度の負荷がどの程度の累積時間だけかかったかを示すから、この吊ロープ統計情報は、蓄積疲労の観点から吊ロープ66の交換時期を判断するための指針となる。また、起伏ロープ統計情報は、起伏ドラム62aにどの程度の長さの起伏ロープ67が巻かれて残っている状態、すなわち起伏ドラム62aからどの程度の長さの起伏ロープ67が繰り出された状態でその起伏ロープ67にどの程度の負荷がどの程度の累積時間だけかかったかを示すから、この起伏ロープ統計情報は、蓄積疲労の観点から起伏ロープ67の交換時期を判断するための指針となる。従って、本実施形態では、吊ロープ66及び起伏ロープ67の蓄積疲労の観点からそれらのロープ66,67の交換時期を判断するための指針となる情報を提示できる。
【0081】
しかも、本実施形態では、吊ロープ統計情報は、吊ロープ66についての負荷率と巻残量の各区分毎の累積時間の分布を示し、起伏ロープ統計情報は、起伏ロープ67についての負荷率と巻残量の各区分毎の累積時間の分布を示す。すなわち、巻上ドラム61aにどの程度の長さの吊ロープ66が巻かれて残っている状態でその吊ロープ66にどの程度の負荷がかかった状態での累積時間が大きかったかを表す累積時間の分布を吊ロープ統計情報によって提示することができ、起伏ドラム62aにどの程度の長さの起伏ロープ67が巻かれて残っている状態でその起伏ロープ67にどの程度の負荷がかかった状態での累積時間が大きかったかを表す累積時間の分布を起伏ロープ統計情報によって提示することができる。
【0082】
さらに、本実施形態では、情報蓄積サーバ10が、吊ロープ統計情報及び起伏ロープ統計情報に基づいて、各ロープ66,67についての負荷率と巻残量の各区分毎の累積時間の分布を示す分布図のデータを作成し、蓄積情報閲覧端末14が、情報蓄積サーバ10によって作成された分布図のデータに基づいて、各ロープ66,67についての前記分布図を表示する。このため、各ロープ66,76にかかった負荷の程度と各ロープ66,67の巻残量と累積時間との相関関係を視覚的に一度に把握することができる。
【0083】
また、本実施形態では、各ロープ66,67のうち負荷がかかっている部位を別途新たな測定機器等を用いることなく現実的な実用性で特定できるとともに、クレーン2の姿勢等に左右されない吊ロープ統計情報及び起伏ロープ統計情報を提示できる。
【0084】
具体的に、各ロープ66,67のうち負荷がかかっている部位をクレーン作業中に直接検出することは困難である一方、ウインチ61,62の各ドラム61a,62aに巻かれているロープ66,67の量は各種方法によって一般的に測定されている値であり、また、各ロープ66,67の全長は既知の値である。よって、ロープ66,67のうちドラム61a,62aから繰り出されている部分の長さは、ドラム61a,62aにおけるロープ66,67の巻残量から判る値である。このため、巻残量の値に基づいて、ロープ66,67のうち負荷がかかっている極めて局所的な部位そのものは把握できないものの、負荷がかかっているのがロープ66,67全体におけるどの辺りの部位であるかは把握できる。従って、本実施形態では、ドラム61a,62aにおけるロープ66,67の巻残量を繰出長指標値として導出することで、別途測定機器等を用いることなく、ロープ66,67のうち負荷のかかっている部位を現実的な実用性で特定できる。また、ドラム61a,62aにおけるロープ66,67の巻残量はクレーン2の姿勢等に左右されない値であるので、本実施形態では、この巻残量を繰出長指標値として導出することで、クレーン2の姿勢等に左右されない吊ロープ統計情報及び起伏ロープ統計情報を提示できる。
【0085】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含む。
【0086】
参考例として、吊ロープ統計情報及び起伏ロープ統計情報から各ロープ66,67の巻残量のデータを省略してもよい。すなわち、吊ロープ統計情報及び起伏ロープ統計情報は、各ロープ66,67についての負荷率とその負荷率に対応する負荷が各ロープ66,67にかかった累積時間との対応関係のみを示すものであってもよい。
【0087】
データロガー28の情報処理部32は、クレーン2の稼働停止時、すなわちエンジン停止時における作業装置50の状態の情報及びクレーン2の作業姿勢の情報を取得して不揮発メモリ34に保存するとともに、その保存した情報を提示手段9へ送信してもよい。この場合、提示手段9は、受信したクレーン2の稼働停止時の作業装置50の状態及びクレーン2の作業姿勢の情報を提示する。
【0088】
クレーン2が稼働を停止している状態では、各ロープ66,67は移動せずに一定の位置で保持されているが、対応するドラム61a,62aから繰り出された各ロープ66,67のうち所定の部位には負担がかかっている。例えば、吊ロープ66のうち巻上ドラム61aの巻き取り口にあたる部位や、トップシーブ51aに沿って曲がった部位、フックシーブに沿って曲がった部位などには、吊ロープ66が一定の位置で保持されている状態であっても負担がかかっている。また、起伏ロープ67のうち起伏ドラム62aの巻き取り口にあたる部位や、ガントリ側スプレッダ56のシーブに沿って曲がった部位、マスト側スプレッダ55のシーブに沿って曲がった部位などには、起伏ロープ67が一定の位置で保持されている状態であっても負担がかかっている。
【0089】
クレーン2の稼働停止中に負担がかかる各ロープ66,67の各部位は、クレーン2の稼働停止中の作業装置50の状態及びクレーン2の作業姿勢に応じて異なるが、その作業装置50の状態及びクレーン2の作業姿勢が判明することによって、その負担がかかる各部位を概ね特定できる。そのため、上記のように提示手段9が提示するクレーン2の稼働停止時の作業装置50の状態及びクレーン2の作業姿勢の情報は、クレーン2の稼働停止中に吊ロープ66及び起伏ロープ67に負担がかかった部位を示唆する情報となる。
【0090】
また、上記実施形態では、データロガー28の情報処理部32が吊ロープ統計情報及び起伏ロープ統計情報を作成し、その情報処理部32によって作成された統計情報に基づいて情報蓄積サーバ10が吊ロープ66についての累積時間の分布図のデータ及び起伏ロープ67についての累積時間の分布図のデータを作成したが、本発明による情報処理の構成は必ずしもこのような構成に限定されない。
【0091】
例えば、情報処理部32が、各ロープ66,67についての負荷率及び巻残量のデータの取得、吊ロープ統計情報及び起伏ロープ統計情報の作成、及び、各ロープ66,67についての累積時間の分布図のデータの作成を全て行ってもよい。この場合、情報処理部32は、作成した各ロープ66,67についての累積時間の分布図のデータを提示手段9の情報蓄積サーバ10へ送信する。そして、情報蓄積サーバ10は、受信した分布図のデータを蓄積して保存し、その保存された分布図のデータを蓄積情報閲覧端末14で閲覧できるようにすればよい。
【0092】
また、この場合、情報処理部32は、作成した各ロープ66,76についての累積時間の分布図のデータに基づいて、そのデータに対応する分布図をクレーン2に設けられた操作パネルに表示させてもよい。
【0093】
また、
図7に示すように、クレーン情報閲覧端末36をUSB(Universal Serial Bus)等の通信ライン37経由でデータロガー28の不揮発メモリ34に接続し、その不揮発メモリ34に保存された吊ロープ統計情報及び起伏ロープ統計情報をクレーン情報閲覧端末36へコピーしてもよい。クレーン情報閲覧端末36としては、例えばパーソナルコンピュータが用いられる。そして、コピーした統計情報をクレーン情報閲覧端末36においてアプリケーションソフトウェアで解析して各ロープ66,67についての累積時間の分布図のデータを作成してもよい。クレーン情報閲覧端末36で作成された分布図は、その端末36で閲覧できる。クレーン情報閲覧端末36は、本発明による提示手段の概念に含まれる。
【0094】
また、この場合には、情報蓄積サーバ10へ吊ロープ統計情報及び起伏ロープ統計情報の期間データが送信されるのを待つことなく、現時点で不揮発メモリ34に記憶されている吊ロープ統計情報及び起伏ロープ統計情報から作成した各ロープ66,67についての分布図(例えば
図8参照)をクレーン情報閲覧端末36で閲覧することが可能である。
【0095】
なお、不揮発メモリ34からクレーン情報閲覧端末36に吊ロープ統計情報及び起伏ロープ統計情報をコピーする手段として、USBメモリ等の記憶媒体を用いてもよい。
【0096】
また、データロガー28の情報処理部32は、取得した各ロープ66,67についての負荷率及び巻残量のデータを解析することなく提示手段9の情報蓄積サーバ10へ送信してもよい。この場合、情報蓄積サーバ10が、受信した各ロープ66,67についての負荷率及び巻残量のデータに基づいて吊ロープ統計情報及び起伏ロープ統計情報を作成し、その作成した統計情報から各ロープ66,67についての累積時間の分布図のデータを作成するようにしてもよい。この場合、情報蓄積サーバ10は、本発明における情報処理装置の概念に含まれる。
【0097】
また、この構成において、情報蓄積サーバ10が分布図のデータを作成する替わりに、蓄積情報閲覧端末14が分布図のデータを作成してもよい。すなわち、情報蓄積サーバ10から蓄積情報閲覧端末14へ吊ロープ統計情報及び起伏ロープ統計情報をダウンロードし、そのダウンロードした統計情報を蓄積情報閲覧端末14にてアプリケーションソフトウェアで解析して各ロープ66,67についての累積時間の分布図のデータを作成してもよい。
【0098】
また、データロガー28(情報処理部32)から情報蓄積サーバ10へデータを送信するために用いる通信網は、必ずしも携帯電話網6に限定されない。例えば、LAN(Local Area Network)やその他の通信網を用いてもよい。
【0099】
また、情報処理部32は、大負荷状態が発生した累積時間を各ロープ66,67の繰出長の区分毎に示す負荷情報を作成して不揮発メモリ34に保存し、吊ロープ統計情報及び起伏ロープ統計情報に加えてこの負荷情報も情報蓄積サーバ10へ送信してもよい。そして、情報蓄積サーバ10は、受信した負荷情報から
図9に示すような負荷分布図のデータを作成し、その作成された負荷分布図を蓄積情報閲覧端末14で閲覧できるようにしてもよい。
【0100】
具体的に、前記大負荷状態は、負荷率が80%以上で且つ100%以下になった状態であり、情報処理部32は、吊ロープ統計情報及び起伏ロープ統計情報のうちの80%以上100%以下の負荷率の区分の累積時間と各ロープ66,67の巻残量との対応関係のデータを抜き出して負荷情報を作成する。また、情報処理部32は、大負荷状態の発生回数、すなわち取得した負荷率が80%以上で且つ100%以下になった回数をカウントするとともに、各回の大負荷状態の継続時間をカウントし、それによって得た大負荷状態の発生回数及び各回の大負荷状態の継続時間のデータを負荷情報に加える。情報処理部32により取得された負荷情報は、データロガー28の不揮発メモリ34に保存され、情報蓄積サーバ10へ送信される。情報蓄積サーバ10は、受信した負荷情報に基づいて負荷分布図(
図9参照)のデータを作成する。
【0101】
負荷分布図は、各ロープ66,67の巻残量の各区分毎に大負荷状態が発生した累積時間がバーで示されたグラフであり、巻残量の各区分の累積時間のバーに大負荷状態の発生回数を表す識別表示(色分け等)が付されるとともに、その識別表示された各発生回の縦軸(累積時間軸)方向の長さがその発生回の大負荷状態の継続時間を表すようになっている。
【0102】
負荷分布図を蓄積情報閲覧端末14で閲覧できることにより、閲覧者は、各ロープ66,67に大きな負荷がどれだけの時間かかったかを把握することができるとともに、その大きな負荷がかかった回数及びその各回の負荷がかかった継続時間を把握することができる。
【0103】
なお、情報蓄積サーバ10の替わりに、データロガー28の情報処理部32もしくは蓄積情報閲覧端末14が負荷分布図のデータを作成してもよい。
【0104】
また、クレーン2は、吊ロープ統計情報及び起伏ロープ統計情報に基づいて各ロープ66,67の点検を促すための報知を行う報知手段を備えていてもよい。
【0105】
例えば、クレーン2は、報知手段として、オペレータに各ロープ66,67の点検を促すメッセージを表示する表示モニタ等を備えていてもよい。この場合、例えば、データロガー28の情報処理部32が、クレーン2の吊能力が異なる作業姿勢毎に吊ロープ統計情報の累積時間を集計して吊ロープ66の使用時間を算出するとともに、その算出した使用時間が規定の時間を超えた時点で表示モニタに吊ロープ66の点検を促すメッセージを表示させればよい。また、情報処理部32は、起伏ロープ67の使用時間についても同様に起伏ロープ統計情報から算出して、その算出した使用時間が規定の時間を超えた時点で表示モニタに起伏ロープ67の点検を促すメッセージを表示させればよい。
【0106】
また、報知手段として、表示モニタの替わりに、オペレータに各ロープ66,67の点検を促す音を発するブザーや、点灯することによって各ロープ66,67の点検を促すランプ等を用いてもよい。
【0107】
また、クレーン2は、各ロープ66,67の直径を測定する測定装置を備え、データロガー28の情報処理部32は、測定装置によって測定された各ロープ66,67の直径のデータを取得して不揮発メモリ34に蓄積してもよい。そして、情報処理部32は不揮発メモリ34に蓄積した各ロープ66,67の直径のデータを提示手段9へ送信し、提示手段9は受信した各ロープ66,67の直径のデータを吊ロープ統計情報及び起伏ロープ統計情報とともに提示してもよい。
【0108】
この構成によれば、各ロープ66,67にかかった負荷の大きさ及び各ロープ66,67の巻残量についての情報に加えて、各ロープ66,67の直径の経時変化の情報を提示できる。ワイヤロープは、それにかかる負荷が大きくなるにつれて伸び、その直径が小さくなる。また、ワイヤロープに疲労が蓄積されて素線切れが生じた場合には、ワイヤロープの直径が減少する。従って、各ロープ66,67の直径の経時変化の情報は、各ロープ66,67の交換時期の指針となり、この情報が吊ロープ統計情報及び起伏ロープ統計情報に加えて提示されることによって、各ロープ66,67の交換時期をより精度良く判断するための指針となる情報を提示することができる。
【0109】
また、本発明による負荷指標値として、負荷率の代わりに、各ロープ66,67にかかる実荷重を用いてもよい。
【0110】
また、吊ロープ統計情報及び起伏ロープ統計情報の統計表において累積時間の各セル毎に各ロープ66,67の疲労についての重み付けを設定してもよい。すなわち、各ロープ66,67の過去のメンテナンス情報から各ロープ66,67が痛みやすい巻残量の条件を導出し、その導出した条件に基づいて痛みやすい巻残量の区分に属するセルは重み付けを大きくし、比較的痛みにくい巻残量の区分に属するセルは重み付けを小さくすればよい。また、負荷率が大きい区分になるほど、その区分のセルの重み付けを大きくすればよい。
【0111】
また、各ロープ66,67についての分布図において、累積時間の分布の重心を導出するとともに負荷率の軸方向における分散及び巻残量の軸方向における分散などを算出することによって、クレーン作業時の各ロープ66,67の使われ方についての特徴量を導出してもよい。例えば、あるワイヤロープを吊ロープ66として使用してクレーン作業を行っている期間に前記特徴量を導出する。その後、ワイヤロープを交換して別のワイヤロープを吊ロープ66として使用してクレーン作業を行うときに同様に前記特徴量を導出し、この導出した特徴量が交換前のワイヤロープについて導出した特徴量と等しい場合には、交換後の吊ロープ66の使われ方が交換前のワイヤロープの使われ方と同じであることが示唆される。また、起伏ロープ67についても同様である。
【0112】
また、巻上ウインチ61における吊ロープ66の巻残量に基づいて巻上ウインチ61からの吊ロープ66の繰出長を導出し、その導出した繰出長を本発明による繰出長指標値としてもよい。また、起伏ウインチ62における起伏ロープ67の巻残量に基づいて起伏ウインチ62からの起伏ロープ67の繰出長を導出し、その導出した繰出長を本発明による繰出長指標値としてもよい。
【0113】
この場合、例えば、データロガー28に繰出長演算部を設けて、その繰出長演算部が予め登録された吊ロープ66の全長から第1メインコントローラ21によって算出された吊ロープ66の巻残量を減算することにより吊ロープ66の繰出長を算出してもよい。また、繰出長演算部が予め登録された起伏ロープ67の全長から第2メインコントローラ22によって算出された起伏ロープ67の巻残量を減算することによって起伏ロープ67の繰出長を算出してもよい。また、データロガー28に繰出長演算部を設けず、第1メインコントローラ21が吊ロープ66の繰出長を算出し、第2メインコントローラ22が起伏ロープ67の繰出長を算出してもよい。そして、算出された各ロープ66,67の繰出長を各ロープ66,67の巻残量の替わりに用いて、上記した各統計情報や累積時間の分布データ、分布図等を作成して提示してもよい。