特許第6123886号(P6123886)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6123886
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】吸音材付きワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20170424BHJP
   G10K 11/162 20060101ALI20170424BHJP
   B60R 13/08 20060101ALI20170424BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20170424BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   G10K11/16 D
   G10K11/16 A
   B60R13/08
   B60R16/02 620Z
   H02G3/04
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-513479(P2015-513479)
(86)(22)【出願日】2013年8月21日
(86)【国際出願番号】JP2013072292
(87)【国際公開番号】WO2014174696
(87)【国際公開日】20141030
【審査請求日】2015年5月12日
(31)【優先権主張番号】特願2013-93567(P2013-93567)
(32)【優先日】2013年4月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100095669
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 登
(72)【発明者】
【氏名】高田 裕
(72)【発明者】
【氏名】田中 成幸
【審査官】 武田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/019783(WO,A1)
【文献】 特開2007−152585(JP,A)
【文献】 特開2003−019930(JP,A)
【文献】 特開2006−256566(JP,A)
【文献】 特開2003−216158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/16
B60R 13/08
B60R 16/02
G10K 11/162
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、該基材シートよりも目付が小さい表皮材シートが積層され、
前記基材シートが少なくとも第一基材シートと第二基材シートを有し、前記表皮材シートが前記第一基材シートと前記第二基材シートの間に配置され、
前記表皮材シートの目付が10〜100g/mの範囲内であり、前記基材シートの目付が100〜600g/mの範囲内である吸音材の、
前記表皮材シートと前記基材シートの間にワイヤーハーネスが挟まれた状態で、前記吸音材と前記ワイヤーハーネスが一体化されていることを特徴とする吸音材付きワイヤーハーネス。
【請求項2】
前記基材シートが不織布であることを特徴とする請求項1記載の吸音材付きワイヤーハーネス。
【請求項3】
前記表皮材シートが不織布であることを特徴とする請求項1又は2記載の吸音材付きワイヤーハーネス。
【請求項4】
少なくとも前記積層シートの最表面に前記表皮材シートとは別の表皮材シートを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸音材付きワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布を用いた吸音材、及び吸音材とワイヤーハーネスが一体化された吸音材付きワイヤーハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、自動車や住宅等の内装には、室内の静粛性を高めるために、吸音材が設けられている(例えば、特許文献1参照)。吸音材としては、従来、グラスウール、ロックウール、多孔質セラミックス、屑綿等が使用されていた。しかし、上記の吸音材は、施工性、人体への安全性、リサイクル性、環境負荷等の問題から、近年は、不織布が用いられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−216158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1枚の不織布を吸音材として用いた場合、特定の周波数帯域における吸音性能を高めることが可能である。しかしながら1枚の不織布だけでは、低周波から高周波まで幅広い吸音性能を発揮することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決しようとするものであり、低周波から高周波まで幅広い周波数の音を吸音することが可能である吸音材、及び吸音材付きワイヤーハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吸音材は、
基材シートと、該基材シートよりも目付が小さい表皮材シートが積層されている積層シートであって、
前記基材シートが少なくとも第一基材シートと第二基材シートを有し、前記表皮材シートが前記第一基材シートと前記第二基材シートの間に配置されていることを要旨とするものである。
【0007】
前記吸音材において、前記基材シートが不織布であることが好ましい。
【0008】
前記吸音材において、前記表皮材シートが不織布であることが好ましい。
【0009】
前記吸音材において、少なくとも前記積層シートの最表面に前記表皮材シートとは別の表皮材シートを有することが好ましい。
【0010】
前記吸音材において、前記表皮材シートの目付が10〜100g/mの範囲内であり、前記基材シートの目付が100〜600g/mの範囲内であることが好ましい。
【0011】
本発明の吸音材付きワイヤーハーネスは、前記吸音材と、ワイヤーハーネスが一体化されていることを要旨とするものである。
【0012】
前記吸音材付きワイヤーハーネスにおいて、前記ワイヤーハーネスが、前記表皮材シートと前記基材シートの間に挟まれた状態で、前記吸音材と前記ワイヤーハーネスが一体化されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の吸音材は、基材シートと、該基材シートよりも目付が小さい表皮材シートが積層されている積層シートであって、前記基材シートが少なくとも第一基材シートと第二基材シートを有し、前記表皮材シートが前記第一基材シートと前記第二基材シートの間に配置されている構成を有することにより、低周波から高周波まで幅広い周波数の音を吸音することが可能である。
【0014】
また本発明の吸音材付きワイヤーハーネスは、上記の吸音材とワイヤーハーネスが一体化されている構成を採用したことにより、低周波から高周波まで幅広い周波数の音を吸音することが可能な吸音材をワイヤーハーネスと別に取り付ける手間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は本発明の吸音材の一例を示す外観斜視図である。
図2図2図1のA−A線縦断面図である。
図3図3は本発明の吸音材の他の態様を示す断面図である。
図4図4は本発明の吸音材付きワイヤーハーネスの一例を示す外観斜視図である。
図5図5は吸音材付きワイヤーハーネスを車体に取り付けた状態を示す断面図である。
図6図6(a)〜(d)は比較例1〜4の吸音材を示す外観斜視図である。
図7図7は実施例1〜2、比較例1〜4の残響室法吸音率の測定結果を示すグラフである。
図8図8は残響室法吸音率測定方法の説明図である。
図9図9は垂直入射吸音率測定方法の説明図である。
図10図10は実施例3〜4、比較例5〜6の残響室法吸音率の測定結果を示すグラフである。
図11図11(a)、(b)は消音性能測定方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は本発明の吸音材の一例を示す外観斜視図であり、図2図1のA−A線縦断面図である。図1及び図2に示す吸音材1は、基材シートとして不織布を用い、表皮材シートとして表皮材を用いて、複数の不織布が積層された不織布積層体の形態に積層シートが構成されている。
【0017】
本発明において、表皮材シート及び基材シートは、上記不織布以外に、樹脂シート、樹脂フィルム、グラスウール、フェルト等を用いてもよい。
【0018】
図1及び図2に示すように吸音材1は、表皮材不織布2と該表皮材不織布2よりも目付の大きい基材不織布3とを有している。基材不織布3は、第一基材不織布(第一基材シート)31と、第二基材不織布(第二基材シート)32の2枚の不織布が用いられる。表皮材不織布2は、第一基材不織布31と、第二基材不織布32の間に配置されている。
【0019】
第一基材不織布31又は第二基材不織布32等の基材不織布3は、表皮材不織布2よりも目付が大きく形成されている。図1の態様の吸音材において、第一基材不織布31及び第二基材不織布32は、同一の構成の基材不織布3を用いた。このように第一基材不織布31及び第二基材不織布32の目付は、同じであっても良いが、異なっていても良い。第一基材不織布31及び第二基材不織布32の目付が異なる場合は、目付の小さい方の基材不織布が、表皮材不織布2よりも目付が大きければよい。
【0020】
表皮材不織布2と基材不織布3は、目付が異なることにより、吸音する音の吸収と反射の特性が、周波数帯により異なる。吸音材1は、2枚の基材不織布31、32と、表皮材不織布2を組み合わせたことにより、幅広い周波数帯の音を吸音することが可能である。更に基材不織布31、32の間に表皮材不織布2が配置されていることにより、高周波数の帯域にて高い吸音効果が得られる。
【0021】
吸音材を構成する各不織布は、単に重ね合わせただけでも良いし、熱融着、接着等により一体化させても、いずれでもよい。好ましくは、熱溶着やニードルパンチ等である。
【0022】
また、各不織布どうしは、隙間なく密着していても、或いは各不織布の間に多少の空間が設けられていても、いずれでもよい。
【0023】
図3は、本発明吸音材の他の例を示す断面図である。吸音材1は図2に示す第一基材不織布31、表皮材不織布2(第一表皮材不織布21)、第二基材不織布32が順次積層されている不織布積層体の最表面に、図3に示すように、更に前記第一表皮材不織布21とは別の表皮材不織布2(第二表皮材不織布22)を有するように構成してもよい。
【0024】
不織布積層体の最表面に有する表皮材不織布2は、図3に示すように吸音材1の最表面の一方の面だけでも良いが、特に図示しないが、吸音材の最表面の一方の面と他方の面に設けて、表皮材不織布2が吸音材1の両表面に有するように構成してもよい。
【0025】
不織布積層体の最表面の一面のみに第二表皮材不織布21を設ける場合、図3に示すように第一基材不織布31の表面に第二表皮材不織布22を設けてもよいが、特に図示しないが第二基材不織布32側の表面に設けてもよい。
【0026】
図3に示すように、不織布積層体の最表面に第二表皮材不織布22を有するように構成した場合、低周波数帯にて高い吸音効果を有する。
【0027】
表皮材不織布2は、目付10〜100g/mの範囲内であるのが好ましい。表皮材不織布2の目付が大きくなりすぎると、一般的な吸音材の吸音作用と同等となり、表皮材の効果が得られ難くなる虞がある。表皮材不織布2の目付が小さくなりすぎると、表皮材の吸音効果が十分発揮されない虞がある。
【0028】
表皮材不織布2は、厚みが0.1〜3mmの範囲内が好ましい。表皮材不織布2の厚みが厚くなりすぎると、一般的な吸音材の吸音作用と同等となり、表皮材不織布2の効果が得られ難くなる虞がある。表皮材不織布2の厚みが薄くなりすぎると、表皮材不織布2の吸音効果が発揮されない虞がある。
【0029】
表皮材不織布2に用いる繊維の繊維径は、1〜50μmの範囲内が好ましい。繊維径が細くなりすぎると、吸音性能は高いが材料が脆くなる虞がある。また、繊維径が太くなりすぎると、表皮材不織布2の吸音効果が発揮されない虞がある。
【0030】
表皮材不織布2に用いる繊維の形状は、芯鞘型、円筒型、中空型、サイドバイサイド型、通常の繊維とは形状の異なる異型断面繊維を使用してもよい。表皮材不織布2に用いる繊維は、短繊維、長繊維、いずれでもよい。
【0031】
表皮材不織布2の繊維の素材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリオレフィン、ナイロン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、レーヨン、アクリル、アクリロニトリル、セルロース、ケナフ、ガラス等が挙げられる。
【0032】
表皮材不織布2は、ニードルパンチ、スパンボンド、スパンレース、メルトブローン等で作製された不織布を使用することができる。
【0033】
基材不織布3は、目付が100〜600g/mの範囲内が好ましい。基材不織布3の目付が大きくなると、全周波数帯の吸音率が高くなり、目付が小さくなると、全周波数帯の吸音率が低くなる傾向がある。
【0034】
また基材不織布3は、厚みが5〜40mmの範囲内であるのが好ましい。基材不織布3の厚みが厚くなると、低周波の吸音性能が高くなり、厚みが薄くなると、高周波の吸音性能が高くなる傾向がある。基材不織布3の厚みを変化させることにより、周波数帯における吸収ピークが変化する。基材不織布3の厚みは、吸音しようとする周波数帯域に応じて適宜選択することができる。
【0035】
また基材不織布3に用いる繊維の繊維径は、9〜100μmの範囲内が好ましい。基材不織布3に用いる繊維の繊維径が細くなると、吸音性能が高くなり、繊維径が太くなると吸音性能が低くなる傾向がある。
【0036】
基材不織布3に用いる繊維の形状は、芯鞘型、円筒型、中空型、サイドバイサイド型、通常の繊維とは形状の異なる異型断面繊維を使用してもよい。基材不織布3に用いる繊維は、短繊維、長繊維、いずれでもよい。
【0037】
基材不織布3の繊維の素材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリオレフィン、ナイロン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、レーヨン、アクリル、アクリロニトリル、セルロース、ケナフ、ガラス等が挙げられる。
【0038】
基材不織布3は、ニードルパンチ、スパンボンド、スパンレース、メルトブローン等で作製された不織布を使用することができる。
【0039】
表皮材不織布2又は基材不織布3を構成する各不織布の目付は、所望とする周波数帯の吸音率等に応じて、適宜選択することができる。
【0040】
吸音材1を車両等に設置する場合、音源側に最も近い位置に配置される表皮材不織布2は、密度が最も高くなるように構成することが好ましい。これは、吸音材1に入射した音が内部で反射した際に、表皮材不織布2を通して再度音源側に出て行くのを防止することができるからである。
【0041】
不織布の密度は、見掛け密度(嵩密度)のことであり、目付と厚みの値から求めることができる。目付の測定は、JIS L1913の単位面積当たりの質量を求める試験方法を用いることができる。また厚みは、圧力0.1kPaで加圧時の厚みを用いることができる。
【0042】
図4は、本発明の吸音材付きワイヤーハーネスの一例を示す外観斜視図である。図4に示すように吸音材付きワイヤーハーネス6は、図3に示す吸音材1とワイヤーハーネス7を組み合わせた例である。吸音材付きワイヤーハーネス6は、吸音材1とワイヤーハーネス7が一体化されている。ワイヤーハーネス7は、その一部が吸音材1の第一基材不織布31と第一表皮材不織布21の間に挟まれた状態で一体化されている。
【0043】
吸音材付きワイヤーハーネス6は、ワイヤーハーネス7を固定する位置は、上記形態に特に限定されない。ワイヤーハーネス7は、吸音材1を構成する不織布積層体のどの位置に配置してもよい。このようにワイヤーハーネス7が吸音材1の不織布積層体の内部に位置するように、不織布でワイヤーハーネスを挟み込んだ状態となるように形成した場合は、不織布による緩衝効果が得られる。
【0044】
ワイヤーハーネス7は、例えば、芯線の周囲を絶縁体により被覆した電線を複数本束にした電線束の周囲をワイヤーハーネス保護材により被覆したもの等が挙げられる。ワイヤーハーネス7は、特に上記構成に限定されず、1本の電線のみから構成してもよいし、ワイヤーハーネス保護材を使用せずに、結束材等で複数の電線を一纏めにしたものでもよい。
【0045】
ワイヤーハーネス7を吸音材1に固定して一体化する手段として、上記のワイヤーハーネス保護材等と吸音材を、接着剤を介して接着する方法が挙げられる。また図4に示すように不織布31、21の間にワイヤーハーネス7を挟んだ場合は、ワイヤーハーネス保護材と不織布を熱溶着して一体化することも可能である。また特に図示しないが、別体の取り付け部材等を用いて、吸音材1にワイヤーハーネス7を固定して一体化してもよい。ワイヤーハーネス7は、第一表皮材不織布21、第二表皮材不織布22、第一基材不織布31、第二基材不織布32のいずれの不織布に固定してもよい。
【0046】
図5は、吸音材付きワイヤーハーネスを車体に取り付けた状態を示す断面図である。図5に示すように、吸音材付きワイヤーハーネス6は、車体8に吸音材1の一方の面が接触した状態で固定されている。図中上方が、エンジンルーム等の音源となる方向であり、図中下方が室内側となる方向である。吸音材1を車体8に取り付けるには、車体8に設置した支持部材(図示せず)にワイヤーハーネス7又は吸音材1のいずれか一方、或いはワイヤーハーネス7及び吸音材1の両方を固定することができる。
【0047】
吸音材1又は吸音材付きワイヤーハーネス6は、自動車等のダッシュボードの内側等、自動車のエンジンルームと室内との間のように騒音を遮断しようとする箇所に設置することができる。
【0048】
本発明の吸音材は自動車等の車両用吸音材として好適に用いることができる。本発明の吸音材付きワイヤーハーネスは、自動車用ワイヤーハーネスとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例、比較例を示す。
【0050】
実施例1〜2、比較例1〜4
図1に示す下記の構成の吸音材を実施例1とし、図3に示す下記の構成の吸音材を実施例2とした。また比較のために、図6(a)〜(d)に示す構成の吸音材を、それぞれ比較例1、2、3、4の吸音材とした。実施例、比較例の吸音材について、残響室法吸音率を測定して吸音性能を評価した。吸音率の測定結果を図7に示す。実施例、比較例の吸音材の構成及び残響室法吸音率試験方法の詳細は以下の通りである。
【0051】
各吸音材における音源側からの不織布の配置は下記の通りである。
実施例1:基材不織布(厚み10mm)/表皮材不織布(厚み1mm)/基材不織布(厚み10mm)、全厚み21mm
実施例2:表皮材不織布(厚み1mm)/基材不織布(厚み10mm)/表皮材不織布(厚み1mm)/基材不織布(厚み10mm)、全厚み22mm
比較例1:基材不織布(厚み10mm)
比較例2:基材不織布(厚み20mm)
比較例3:表皮材不織布(厚み1mm)/基材不織布(厚み10mm)、全厚み11mm
比較例4:表皮材不織布(厚み1mm)/基材不織布(厚み20mm)、全厚み21mm
【0052】
表皮材不織布と基材不織布は、積層した後、180℃で貼り合わせて一体化して吸音材とした。
【0053】
[表皮材不織布]
・繊維の種類:ポリオレフィン長繊維、繊維径4μm
・作成方法:ニードルパンチ又はスパンボンドで作成
・目付:50g/m
・厚み:1mm
【0054】
[基材不織布]
・繊維の種類:ポリエステル短繊維、繊維径20μm
・作成方法:ニードルパンチ又はスパンボンドで作成
・目付:300g/m
・厚み:10mm
【0055】
[残響室法吸音率測定方法]
吸音率の測定は、JIS A 1409の残響室法吸音率の測定方法に準拠して行い、下記の(1)式に示す算出式により求めた。吸音率の値が大きい程、音を良く吸収する。試験は、図8に示すように、パーソナルコンピュータ20にオーディオインターフェイス21を介して、パワーアンプ22を通して接続されたスピーカ23と、マイクロホンアンプ24を介して接続されたマイクロホン25が所定の位置に配置されている残響室26を用いた。まず、残響室26内に試料(吸音材)を配置しない状態で、スピーカ23から電気的なノイズ音を放射し、音を止め、音の減衰過程をマイクロホン25で測定する。測定された減衰曲線から音が−5〜−35dBの範囲で減衰する時間を残響時間Τとして求めた。測定は中心周波数400Hzから10000Hzの1/3オクターブ帯域毎に行った。次いで、試料27を残響室26の床面に配置し、上記と同様に残響時間Τを求めた。下記(1)式より吸音率(α)を算出した。
【0056】
α(吸音率)=A/S・・・(1)
S:試料の面積(m
A:等価吸音面積(m)であり、下記の(2)式により求めた。
A=55.3V/c・[1/Τ−1/Τ]・・・(2)
V:試料を入れない状態における残響室の容積(m
c:空気中の音速(m/s)
Τ:試料を入れない状態における残響室の残響時間(s)
Τ:試料を入れた状態における残響室の残響時間(s)
【0057】
[吸音率測定結果について]
図7のグラフに示すように、基材不織布のみから構成した比較例1は、全体の周波数域において吸音率が最も低い。比較例1の基材不織布の厚みのみを2倍にした比較例2は、全体の周波数域において吸音率が向上しているが、比較例1と同じ基材不織布を2枚用い、基材不織布の間に表皮材不織布を挟んだ形態の実施例1は、比較例2と比較して、全体に高い吸音率を示している。また実施例1は、比較例2よりも高周波域における吸音率の向上が著しい。
【0058】
また比較例3は、比較例1の基材不織布に表皮材不織布を積層したことにより、高周波数域における吸音率は向上しているが、低周波数域の吸音率はあまり変化がなかった。比較例4は比較例3の基材不織布の厚みを2倍にしたものであるが、低周波数域における吸音率が向上しているが、実施例1と比較して高周波数域の吸音率が低かった。
【0059】
図7に示すように実施例1、2は、比較例1〜4と比較して、低周波数域から高周波数域まで、全体にわたり吸音率が良好であった。また実施例2は、実施例1と比較して、表皮材不織布を表面にも有することにより、低周波の吸音率が更に向上している。
【0060】
[実験例]
図3に示す態様の、第二表皮材不織布22、第一基材不織布31、第二表皮材不織布21、第二基材不織布32が順次積層された不織布積層体を用いた吸音材1について、各不織布の目付と吸音性能の関係を試験した。第一基材不織布31と第二基材不織布32は同一の不織布を用いた。また第一表皮材不織布21と第二表皮材不織布22は同一の不織布を用いた。吸音性能の試験は、表1に示す基材不織布の目付と吸音率の関係(実験例1−1〜1−6)と、表2に示す表皮材不織布の目付と吸音率の関係(実験例2−1〜2−6)について行った。試験結果を表1及び表2に合わせて示す。
【0061】
上記実験例の吸音性能の評価は、垂直入射吸音率の測定により行った。垂直入射吸音率の試験方法の詳細は下記の通りである。また試験に用いた基材不織布と表皮材不織布は、目付以外の条件は実施例1と同じ構成としたものを用いた。
【0062】
[垂直入射吸音率測定方法]
JIS A 1405−2に準拠して、垂直入射法にて500〜5000Hzの吸音率(垂直入射吸音率)を測定した。図9は、垂直入射吸音率測定方法の説明図である。図9に示すように、吸音率は吸音材1の表皮材不織布22側が音源と対向する位置となるように吸音管30の内部に配置した。垂直入射吸音率αは、下記(3)式に示すように、垂直入射の平面波の入射音(li)と、そのうち試験体の表面から入って戻らない音(li−lr)との比で表される。上記lrは反射音である。すなわち垂直入射吸音率は、音響管の中に試料を配置して、入射音(li)と反射音(lr)をマイクロホンで測定することにより求めることができる。
α=(li−lr)/(li)・・・(3)
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
表1に示すように、基材の目付が100〜600g/mの範囲内では、1000〜4000Hzの周波数帯域の吸音率が、概ね良好であった。また表2に示すように、表皮材の目付が10〜150g/mの範囲内では、1000〜4000Hzの周波数帯域の吸音率が、概ね良好であった。
【0066】
上記垂直入射吸音率の目安として、1000Hzの吸音率が0.25以上、2000Hzの吸音率が0.4以上、3000Hzの吸音率が0.6以上、4000Hzの吸音率が0.8以上であると、良好な吸音性能を発揮可能と判断することができる。
【0067】
自動車用ワイヤーハーネスは、自動車のあらゆる隙間に配策されている。自動車用ワイヤーハーネスの配策は、設計上、車両と緩衝する部位に搭載されることが多い。そのような部位には、自動車の車体とワイヤーハーネスが緩衝して音を発することを防止するための部材が搭載されていた。この部材は、一般にワイヤーハーネス用消音材と呼ばれる。
【0068】
従来、ワイヤーハーネス用消音材は、自動車用吸音材とは別の材料から構成された部材が用いられ、自動車用吸音材とは別々に搭載されていた。このように吸音機能と消音機能は別々の材料を用いて、車両に搭載されていた。これに対し本発明の吸音材は、消音材としての効果を有するため、ワイヤーハーネス用吸音材として用いた場合、上記ワイヤーハーネス消音材としての機能を兼ねることが可能である。本発明の吸音材が、ワイヤーハーネス吸音材とワイヤーハーネス消音材の機能を有することを、以下の実施例3、4、比較例5、6を用いて示す。
【0069】
実施例3は、図3に示す不織布の積層構造とし、実施例4は図1に示す不織布の積層構造とし、表皮材不織布と基材不織布を積層した後、180℃で貼り合わせて一体化して吸音材とした。また比較例3、4は市販の自動車用消音材と呼ばれる商品を用いた。詳細は下記の通りである。
【0070】
実施例3:表皮材不織布(厚み1mm)/基材不織布(厚み10mm)/表皮材不織布(厚み1mm)/基材不織布(厚み10mm)、全厚み22mm
実施例4:基材不織布(厚み10mm)/表皮材不織布(厚み1mm)/基材不織布(厚み10mm)、全厚み21mm
【0071】
実施例3、4で用いた表皮材不織布と基材不織布の詳細は下記の通りである。
[表皮材不織布]
・繊維の種類:ポリプロピレン繊維、繊維径(直径)5〜10μm
・作成方法:スパンボンド法で作成
・目付:50g/m
・厚み:1mm
【0072】
[基材不織布]
・繊維の種類:ポリエステル繊維、繊維径(直径)14μm
・作成方法:ニードルパンチ法で作成
・目付:300g/m
・厚み:10mm
【0073】
比較例3:市販の自動車用消音材:日東電工社製、商品名「エプトシーラーNo.685」
比較例4:市販の自動車用消音材:フェデラルモーグル社製、商品名「ツイストチューブ」(PET繊維で構成されている)
【0074】
実施例3、4、比較例5、6の吸音材について、吸音性能と消音性能を評価した。吸音性能は実施例1と同様に残響室法吸音率試験により吸音率を測定して評価した。測定結果を図10のグラフに示す。図10に示すように、実施例3、4は比較例5、6と比較して、良好な吸音特性が得られた。
【0075】
実施例3、4、比較例5,6の消音性能は、ドイツ自動車メーカー各社の統合規格であるLV312により測定した。消音性能の測定方法の詳細は下記の通りである。
【0076】
〔消音性能評価方法〕
図11(a)に示すように、厚さ3mmのアルミニウム板30を間隔290mmの間に湾曲させた状態で、アルミニウム板30の上方20mmからスチール棒31を荷重0.16Nで落下させて(同図(b))、アルミニウム板30に衝突させ、衝突の際の衝突音をアルミニウム板30の上方50mmの位置に配置した騒音計32のマイクロホン33で測定した。測定は、スチール棒31のアルミニウム板30との衝突部分に吸音材又は消音材のサンプル34を巻きつけた状態、或いは巻きつけない状態で、アルミニウム板30に衝突させて衝突音の測定を行った。騒音計32の測定条件は、A特性周波数重み付け音圧レベルで、3秒間測定し、オーバーオール値を算出した。測定は、周囲の騒音を拾わないように、遮音箱中で実施した。各測定は3回繰り返し行い、その平均値を音圧(dB)とした。測定結果を表3に示す。
【0077】
消音性の評価は、10dB以上を良好(○)とし、1dB以上10dB未満をやや不良(△)、1dB未満を不良(×)として評価した。
【0078】
【表3】
【0079】
表3に示すように、実施例3、4は、消音性の評価が良好であり消音性能を有することが確認できた。また比較例5は、消音性が良好であったが実施例3、4と比較すると音圧は高かった。また比較例6は音圧が消音材なしの場合よりも低くなっているが、消音性の評価はやや不良であった。
【0080】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【0081】
本発明の吸音材は、例えば、3枚以上の基材不織布を用いて構成してもよいし、3枚以上の表皮材不織布を用いて構成してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11