【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例、比較例を示す。
【0050】
実施例1〜2、比較例1〜4
図1に示す下記の構成の吸音材を実施例1とし、
図3に示す下記の構成の吸音材を実施例2とした。また比較のために、
図6(a)〜(d)に示す構成の吸音材を、それぞれ比較例1、2、3、4の吸音材とした。実施例、比較例の吸音材について、残響室法吸音率を測定して吸音性能を評価した。吸音率の測定結果を
図7に示す。実施例、比較例の吸音材の構成及び残響室法吸音率試験方法の詳細は以下の通りである。
【0051】
各吸音材における音源側からの不織布の配置は下記の通りである。
実施例1:基材不織布(厚み10mm)/表皮材不織布(厚み1mm)/基材不織布(厚み10mm)、全厚み21mm
実施例2:表皮材不織布(厚み1mm)/基材不織布(厚み10mm)/表皮材不織布(厚み1mm)/基材不織布(厚み10mm)、全厚み22mm
比較例1:基材不織布(厚み10mm)
比較例2:基材不織布(厚み20mm)
比較例3:表皮材不織布(厚み1mm)/基材不織布(厚み10mm)、全厚み11mm
比較例4:表皮材不織布(厚み1mm)/基材不織布(厚み20mm)、全厚み21mm
【0052】
表皮材不織布と基材不織布は、積層した後、180℃で貼り合わせて一体化して吸音材とした。
【0053】
[表皮材不織布]
・繊維の種類:ポリオレフィン長繊維、繊維径4μm
・作成方法:ニードルパンチ又はスパンボンドで作成
・目付:50g/m
2
・厚み:1mm
【0054】
[基材不織布]
・繊維の種類:ポリエステル短繊維、繊維径20μm
・作成方法:ニードルパンチ又はスパンボンドで作成
・目付:300g/m
2
・厚み:10mm
【0055】
[残響室法吸音率測定方法]
吸音率の測定は、JIS A 1409の残響室法吸音率の測定方法に準拠して行い、下記の(1)式に示す算出式により求めた。吸音率の値が大きい程、音を良く吸収する。試験は、
図8に示すように、パーソナルコンピュータ20にオーディオインターフェイス21を介して、パワーアンプ22を通して接続されたスピーカ23と、マイクロホンアンプ24を介して接続されたマイクロホン25が所定の位置に配置されている残響室26を用いた。まず、残響室26内に試料(吸音材)を配置しない状態で、スピーカ23から電気的なノイズ音を放射し、音を止め、音の減衰過程をマイクロホン25で測定する。測定された減衰曲線から音が−5〜−35dBの範囲で減衰する時間を残響時間Τ
1として求めた。測定は中心周波数400Hzから10000Hzの1/3オクターブ帯域毎に行った。次いで、試料27を残響室26の床面に配置し、上記と同様に残響時間Τ
2を求めた。下記(1)式より吸音率(α
S)を算出した。
【0056】
α
S(吸音率)=A/S・・・(1)
S:試料の面積(m
2)
A:等価吸音面積(m
2)であり、下記の(2)式により求めた。
A=55.3V/c・[1/Τ
2−1/Τ
1]・・・(2)
V:試料を入れない状態における残響室の容積(m
3)
c:空気中の音速(m/s)
Τ
1:試料を入れない状態における残響室の残響時間(s)
Τ
2:試料を入れた状態における残響室の残響時間(s)
【0057】
[吸音率測定結果について]
図7のグラフに示すように、基材不織布のみから構成した比較例1は、全体の周波数域において吸音率が最も低い。比較例1の基材不織布の厚みのみを2倍にした比較例2は、全体の周波数域において吸音率が向上しているが、比較例1と同じ基材不織布を2枚用い、基材不織布の間に表皮材不織布を挟んだ形態の実施例1は、比較例2と比較して、全体に高い吸音率を示している。また実施例1は、比較例2よりも高周波域における吸音率の向上が著しい。
【0058】
また比較例3は、比較例1の基材不織布に表皮材不織布を積層したことにより、高周波数域における吸音率は向上しているが、低周波数域の吸音率はあまり変化がなかった。比較例4は比較例3の基材不織布の厚みを2倍にしたものであるが、低周波数域における吸音率が向上しているが、実施例1と比較して高周波数域の吸音率が低かった。
【0059】
図7に示すように実施例1、2は、比較例1〜4と比較して、低周波数域から高周波数域まで、全体にわたり吸音率が良好であった。また実施例2は、実施例1と比較して、表皮材不織布を表面にも有することにより、低周波の吸音率が更に向上している。
【0060】
[実験例]
図3に示す態様の、第二表皮材不織布22、第一基材不織布31、第二表皮材不織布21、第二基材不織布32が順次積層された不織布積層体を用いた吸音材1について、各不織布の目付と吸音性能の関係を試験した。第一基材不織布31と第二基材不織布32は同一の不織布を用いた。また第一表皮材不織布21と第二表皮材不織布22は同一の不織布を用いた。吸音性能の試験は、表1に示す基材不織布の目付と吸音率の関係(実験例1−1〜1−6)と、表2に示す表皮材不織布の目付と吸音率の関係(実験例2−1〜2−6)について行った。試験結果を表1及び表2に合わせて示す。
【0061】
上記実験例の吸音性能の評価は、垂直入射吸音率の測定により行った。垂直入射吸音率の試験方法の詳細は下記の通りである。また試験に用いた基材不織布と表皮材不織布は、目付以外の条件は実施例1と同じ構成としたものを用いた。
【0062】
[垂直入射吸音率測定方法]
JIS A 1405−2に準拠して、垂直入射法にて500〜5000Hzの吸音率(垂直入射吸音率)を測定した。
図9は、垂直入射吸音率測定方法の説明図である。
図9に示すように、吸音率は吸音材1の表皮材不織布22側が音源と対向する位置となるように吸音管30の内部に配置した。垂直入射吸音率αは、下記(3)式に示すように、垂直入射の平面波の入射音(li)と、そのうち試験体の表面から入って戻らない音(li−lr)との比で表される。上記lrは反射音である。すなわち垂直入射吸音率は、音響管の中に試料を配置して、入射音(li)と反射音(lr)をマイクロホンで測定することにより求めることができる。
α=(li−lr)/(li)・・・(3)
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
表1に示すように、基材の目付が100〜600g/m
2の範囲内では、1000〜4000Hzの周波数帯域の吸音率が、概ね良好であった。また表2に示すように、表皮材の目付が10〜150g/m
2の範囲内では、1000〜4000Hzの周波数帯域の吸音率が、概ね良好であった。
【0066】
上記垂直入射吸音率の目安として、1000Hzの吸音率が0.25以上、2000Hzの吸音率が0.4以上、3000Hzの吸音率が0.6以上、4000Hzの吸音率が0.8以上であると、良好な吸音性能を発揮可能と判断することができる。
【0067】
自動車用ワイヤーハーネスは、自動車のあらゆる隙間に配策されている。自動車用ワイヤーハーネスの配策は、設計上、車両と緩衝する部位に搭載されることが多い。そのような部位には、自動車の車体とワイヤーハーネスが緩衝して音を発することを防止するための部材が搭載されていた。この部材は、一般にワイヤーハーネス用消音材と呼ばれる。
【0068】
従来、ワイヤーハーネス用消音材は、自動車用吸音材とは別の材料から構成された部材が用いられ、自動車用吸音材とは別々に搭載されていた。このように吸音機能と消音機能は別々の材料を用いて、車両に搭載されていた。これに対し本発明の吸音材は、消音材としての効果を有するため、ワイヤーハーネス用吸音材として用いた場合、上記ワイヤーハーネス消音材としての機能を兼ねることが可能である。本発明の吸音材が、ワイヤーハーネス吸音材とワイヤーハーネス消音材の機能を有することを、以下の実施例3、4、比較例5、6を用いて示す。
【0069】
実施例3は、
図3に示す不織布の積層構造とし、実施例4は
図1に示す不織布の積層構造とし、表皮材不織布と基材不織布を積層した後、180℃で貼り合わせて一体化して吸音材とした。また比較例3、4は市販の自動車用消音材と呼ばれる商品を用いた。詳細は下記の通りである。
【0070】
実施例3:表皮材不織布(厚み1mm)/基材不織布(厚み10mm)/表皮材不織布(厚み1mm)/基材不織布(厚み10mm)、全厚み22mm
実施例4:基材不織布(厚み10mm)/表皮材不織布(厚み1mm)/基材不織布(厚み10mm)、全厚み21mm
【0071】
実施例3、4で用いた表皮材不織布と基材不織布の詳細は下記の通りである。
[表皮材不織布]
・繊維の種類:ポリプロピレン繊維、繊維径(直径)5〜10μm
・作成方法:スパンボンド法で作成
・目付:50g/m
2
・厚み:1mm
【0072】
[基材不織布]
・繊維の種類:ポリエステル繊維、繊維径(直径)14μm
・作成方法:ニードルパンチ法で作成
・目付:300g/m
2
・厚み:10mm
【0073】
比較例3:市販の自動車用消音材:日東電工社製、商品名「エプトシーラーNo.685」
比較例4:市販の自動車用消音材:フェデラルモーグル社製、商品名「ツイストチューブ」(PET繊維で構成されている)
【0074】
実施例3、4、比較例5、6の吸音材について、吸音性能と消音性能を評価した。吸音性能は実施例1と同様に残響室法吸音率試験により吸音率を測定して評価した。測定結果を
図10のグラフに示す。
図10に示すように、実施例3、4は比較例5、6と比較して、良好な吸音特性が得られた。
【0075】
実施例3、4、比較例5,6の消音性能は、ドイツ自動車メーカー各社の統合規格であるLV312により測定した。消音性能の測定方法の詳細は下記の通りである。
【0076】
〔消音性能評価方法〕
図11(a)に示すように、厚さ3mmのアルミニウム板30を間隔290mmの間に湾曲させた状態で、アルミニウム板30の上方20mmからスチール棒31を荷重0.16Nで落下させて(同図(b))、アルミニウム板30に衝突させ、衝突の際の衝突音をアルミニウム板30の上方50mmの位置に配置した騒音計32のマイクロホン33で測定した。測定は、スチール棒31のアルミニウム板30との衝突部分に吸音材又は消音材のサンプル34を巻きつけた状態、或いは巻きつけない状態で、アルミニウム板30に衝突させて衝突音の測定を行った。騒音計32の測定条件は、A特性周波数重み付け音圧レベルで、3秒間測定し、オーバーオール値を算出した。測定は、周囲の騒音を拾わないように、遮音箱中で実施した。各測定は3回繰り返し行い、その平均値を音圧(dB)とした。測定結果を表3に示す。
【0077】
消音性の評価は、10dB以上を良好(○)とし、1dB以上10dB未満をやや不良(△)、1dB未満を不良(×)として評価した。
【0078】
【表3】
【0079】
表3に示すように、実施例3、4は、消音性の評価が良好であり消音性能を有することが確認できた。また比較例5は、消音性が良好であったが実施例3、4と比較すると音圧は高かった。また比較例6は音圧が消音材なしの場合よりも低くなっているが、消音性の評価はやや不良であった。
【0080】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【0081】
本発明の吸音材は、例えば、3枚以上の基材不織布を用いて構成してもよいし、3枚以上の表皮材不織布を用いて構成してもよい。