(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6123896
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
H02M 3/00 20060101AFI20170424BHJP
【FI】
H02M3/00 W
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-529255(P2015-529255)
(86)(22)【出願日】2013年7月30日
(86)【国際出願番号】JP2013070644
(87)【国際公開番号】WO2015015570
(87)【国際公開日】20150205
【審査請求日】2015年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆二
(72)【発明者】
【氏名】川口 剛司
(72)【発明者】
【氏名】小口 博之
【審査官】
戸次 一夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−079069(JP,A)
【文献】
国際公開第02/061917(WO,A1)
【文献】
特開2009−232674(JP,A)
【文献】
特開2009−232675(JP,A)
【文献】
特開平09−103032(JP,A)
【文献】
特開2012−253933(JP,A)
【文献】
特開2013−013176(JP,A)
【文献】
特開2005−168090(JP,A)
【文献】
特開2005−168107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M3/00−3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源または直流電源からの入力電力を直流電力に変換して負荷に供給する電源システムであって、
前記電源システムは、少なくとも1台の第1の電源装置、少なくとも1台の第2の電源装置、蓄電池を備えるとともに、前記第1の電源装置の出力部と前記第2の電源装置の出力部とを並列接続して構成されており、
前記第1の電源装置は、第1の制御装置の指令に対応して、前記入力電力を前記直流電力に変換し、
前記第2の電源装置は、第2の制御装置の指令に対応して、前記蓄電池から供給される電力を前記直流電力に変換し、
前記第1と第2の制御装置は、協働して、前記第1の電源装置と前記第2の電源装置とを、前記第1の電源装置が負荷に全電力を供給する通常モード、前記第2の電源装置が負荷に全電力を供給するバックアップモード、前記第1の電源装置が一部の電力を供給し、前記第2の電源装置が残りの電力を供給するアシストモードのいずれかで、前記第1と第2の電源装置を動作させるとともに、前記第2の制御装置は、前記通常モード、前記バックアップモード、前記アシストモードそれぞれに対して、出力電流に応じて出力電圧を低減するための個別の特性を有している、
ことを特徴とする電源システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電源システムであって、
前記第1の制御装置は、通常モードで無負荷時の電圧指令値が設定されるドループ特性に基づいて、前記第1の電源装置の出力電流の増加に応じて出力電圧を低減するように前記第1の電源装置を動作させ、
前記第2の制御装置は、通常モード、バックアップモード、アシストモードに応じて切替え可能な無負荷時の電圧指令値が設定されるドループ特性に基づいて、前記第2の電源装置の出力電流の増加に応じて出力電圧を低減するように前記第2の電源装置を動作させる、
ことを特徴とする電源システム。
【請求項3】
請求項1に記載の電源システムであって、前記第2の制御装置は、前記アシストモードにおける無負荷時の出力電圧が、前記バックアップモードにおける無負荷時の出力電圧よりも低い値になるように、前記第2の電源装置の出力電圧を制御する、
ことを特徴とする電源システム。
【請求項4】
請求項1に記載の電源システムであって、前記第2の制御装置は、前記アシストモードにおける出力電流に対する出力電圧の低減値を、前記バックアップモードにおける出力電流に対する出力電圧の低減値よりも大きい値に設定して、前記第2の電源装置の出力電圧を制御することを特徴とする電源システム。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の電源システムであって、前記第2の制御装置は、前記出力電圧の低減値を出力電流に比例するように設定していることを特徴とする電源システム。
【請求項6】
請求項1に記載の電源システムであって、前記第1と第2の制御装置は、前記通常モードから前記アシストモードへの移行を、前記第1の電源装置の出力電流の合計が第1の規定値に達したときに行う、ことを特徴とする電源システム。
【請求項7】
請求項1に記載の電源システムであって、前記第1と第2の制御装置は、前記アシストモードから前記通常モードへの移行を、前記第2の電源装置の出力電流の合計が第2の規定値以下になったこと、前記第1の電源装置の出力電流の合計が第3の規定値以下となったこと、の少なくともいずれかの条件が成立したときに行う、ことを特徴とする電源システム。
【請求項8】
請求項1に記載の電源システムにおいて、前記第1と第2の制御装置は、前記通常モードから前記アシストモードへの移行を、所定台数の前記第1の電源装置の出力電流が第4の規定値に達したときに行う、ことを特徴とする電源システム。
【請求項9】
請求項1に記載の電源システムにおいて、前記第1と第2の制御装置は、前記アシストモードから前記通常モードへの移行を、所定台数の前記第2の電源装置の出力電流が第5の規定値以下になったこと、所定台数の前記第1の電源装置の出力電流が第6の規定値以下になったこと、の少なくともいずれかの条件が成立したときに行う、ことを特徴とする電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源ユニットとバッテリユニットを組み合わせて構成される電源システムにおいて、一時的にバッテリユニットから電力を供給することで、電源ユニットの合計出力よりも大きい電力を負荷に供給することが可能、つまりパワーアシスト機能を有する電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、特許文献1に開示された電源システムの構成を示す図である。
図1に示した電源システムは、3相の商用電源E,直流電源装置501および負荷RLとで構成されており、そのうち、直流電源装置501は、蓄電装置60と、複数の直流電源装置ユニット1〜Nと、1つの充電兼予備ユニットと、運転状態判定部82,出力電圧監視部83,垂下動作制御部84,充電電圧検出部85及び定電流充電制御部86を有する監視部81とで構成される。
【0003】
直流電源装置501は、通常運転時には、n台の直流電源ユニット1〜Nを作動させて定電力特性を有する負荷RLに電力を供給しており、直流電源ユニット1〜Nのいずれかが故障した場合に、充電兼予備ユニットを故障したユニットの代替のユニットとして使用する。図示例では3相交流を入力電源とするように構成してあるが、単相交流を入力電源とする構成であってもよい。
【0004】
停電により商用電源EからのAC入力が失われた場合は、蓄電池61からダイオードDX1を通して負荷RLに電力が供給される。また、この直流電源装置501では、充電兼予備ユニットが、予備の電源ユニットとして使用されるとともに、蓄電池61への充電器を兼ねている。
【0005】
直流電源ユニット1〜Nから負荷RLに出力電圧が供給されている場合は、充電兼予備ユニットおよび蓄電池61を負荷RL側から切り離すため、ダイオードDX1に逆バイアス電圧が印加されるようにしている。
【0006】
直流電源ユニット1〜Nおよび充電兼予備ユニットは、通常運転時(通常運転時)においては、ユニットの破損防止のために出力電流を所定の定格電流(100%連続定格電流)に制限する定電流垂下特性を有しており、また所定のトリガ条件(直流電源装置501の運転状態に応じて設定される条件)の発生時、例えば停電後の電源復旧時などのトリガ条件の発生時に、定電流垂下特性を一時的に定電力垂下特性に切り替えることができる構成となっている。
【0007】
電圧センサVT1は、直流電源装置501の出力電圧Vo(=負荷電圧VL)を検出する。電圧センサVT2は、蓄電池61の充電電圧を検出する。電流センサCT1は、蓄電池61の充電電流を検出する。
【0008】
監視部81は、各直流電源ユニット1〜Nおよび充電兼予備ユニットと相互に通信を行い、各直流電源ユニット1〜Nおよび充電兼予備ユニットの運転状態を監視するとともに、各直流電源ユニット1〜Nおよび充電兼予備ユニットに対して制御指令信号(例えば、垂下特性の切り替え指示信号)を送信する。
【0009】
運転状態判定部82は、各直流電源ユニット1〜Nから運転状態信号St1〜StNを入力し、充電兼予備ユニットから運転状態信号Stcを入力する。これにより、運転状態判定部82は、直流電源ユニット及び充電兼予備ユニットの運転状態や、故障の発生と復旧や、停電後の復電などを検出(判定)する。
【0010】
運転状態判定部82では、直流電源ユニット1〜Nおよび充電兼予備ユニットから受信した運転状態の信号を基に、例えば、全てのユニットが正常に運転している通常運転中の状態か、停電から復電後の起動状態か、或いは、故障した直流電源ユニットが復旧して運転を開始した状態であるかなどを判定する。
【0011】
出力電圧監視部83は、電圧センサVT1から電圧検出信号を入力し、直流電源装置501の出力電圧Voを監視する。また、垂下動作制御部84は、直流電源ユニット1〜Nおよび充電兼予備ユニットの運転状態に応じて、直流電源ユニット1〜Nおよび充電兼予備ユニットの垂下特性を制御する。また、充電電圧検出部85は、電圧センサVT2から電圧検出信号を入力し、蓄電池61の充電電圧を監視する。
【0012】
定電流充電制御部86は、充電兼予備ユニットから蓄電池61に定電流充電を行う場合に、充電兼予備ユニットに対して定電流出力動作を行うように制御する。上記定電流充電において、監視部81内の定電流充電制御部86は、充電兼予備ユニットの出力電流を制御することにより蓄電池61への定電流充電を行う。この場合、定電流充電制御部86は、電流センサCT1により蓄電池61へ流れる充電電流を検出し、所定の定電流値になるように充電兼予備ユニットの出力電流を制御する。
【0013】
このように下記特許文献1に開示されている電源システムは、複数の直流電源ユニットを並列接続し、停電時にその出力ラインをバッテリによりバックアップするとともに、電源ユニットの垂下特性を制御して、一時的に定格電流以上の電流を供給するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2013−046454号公報(
図1、
図2)
【発明の開示】
【0015】
ところでデータセンター内のサーバー等を負荷とする電源システムにおいては、サーバー等の情報処理量によって消費電力が変化する。電源容量としてはピーク負荷を上回る値を定格電力として設定する必要があるが、結果として、大半の時間は定格を大きく下回る出力で運転することになり、平均消費電力に対して電源設備の容量が過大となり、設備コストが大きくなっているという課題がある。
【0016】
一方、上記するサーバー等を負荷とする電源システムは、停電に備えたバッテリバックアップ設備を持つのが常套である。そこでバッテリ容量の一部を利用して、ピーク負荷時にバッテリが電力の一部を担当することができれば理論的に電源設備容量を小さくすることができる。
【0017】
しかしながら
図1に示される特許文献1に開示の電源システムは、バッテリ61が電力制御手段を介さずに直流母線に接続されており、電力の分担量を制御することができない。充電兼予備ユニットが設けられているとはいえ、ピーク負荷時にバッテリが負荷全ての電力を担うと、実際に停電が起こったときにバックアップを行うための電力量が不足する恐れがあり、また頻繁にバッテリが全負荷放電を行うことは寿命の観点から望ましくない。
【0018】
この問題は、バッテリ側に電力制御手段を設ければ解決可能であるが、この場合にも、電源ユニット群とバッテリの間で負荷分担を適切に行わせるために、たとえば全負荷量を検出して共通の制御装置に伝達し、電源ユニット、バッテリユニットの出力分担を決めて指令を出すような方法を採用したのでは連続量のデータを高速で伝送する必要があるために、部品増加によるコスト増を招くだけでなく、共通の制御装置に不具合が発生したときには全ユニットの動作に支障を生じる恐れもある。
【0019】
本発明は、上記の点に鑑みて創案されたものであり、複雑な共通制御装置や大規模な相互通信手段を設けずにピーク負荷時のバッテリによる電力分担量を適切に制御可能とする電源システムを提供することを目的とする。
【0020】
上記目的を達成するために本発明は、交流または直流電源から電力の供給を受け、負荷に電圧を一定範囲に調整して供給する、1台以上の第1の電源装置と、蓄電池から電力の供給を受け、負荷に電圧を一定範囲に調整して供給する、1台以上の第2の電源装置との出力部を並列接続した電源システムであって、該電源システムは、
通常モード、バックアップモード、アシストモードの3つの動作モードを持ち、
上記通常モードは、上記交流または直流電源が健全で、かつ負荷が電源システムの定格範囲内であるときに、上記第1の電源装置から電力を供給するものであり、
上記バックアップモードは、上記交流または直流電源が停電した際に上記第2の電源装置から電力を供給するものであり、
上記アシストモードは、上記負荷が上記第1の電源装置の定格出力の総和を上回った場合、あるいは上記交流または直流電源の電圧低下、若しくは複数の上記第1の電源装置の内、稼動可能な数が減少した場合において、不足分の電力を上記第2の電源装置から供給するものであり、
上記第1の電源装置および上記第2の電源装置は、それぞれ独立した電圧検出手段と、自身の出力電流を検出する出力電流手段と、上記3つのモードの指定を受信する通信手段を有し、
上記アシストモードにおける上記第2の電源システムの電力供給量を電源システムの出力電圧により調整する。
【0021】
本発明によれば、複雑な共通制御装置や、大規模な相互通信手段を設けずにピーク負荷時のバッテリによる電力分担が可能となり、電源設備容量を削減することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】特許文献1に開示された従来の電源システムの構成を示す図である。
【0023】
【
図2】本発明の実施形態に係る電源システムの構成例を示すブロック図である。
【0024】
【
図3】本発明の実施形態に係る制御系を含めた電源ユニット、バッテリユニットの構成を示す図である。
【0025】
【
図4】本発明の実施形態に係るドループ特性の内容を説明する図である。
【0026】
【
図5】本発明の実施形態に係る電源システムの動作例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0028】
図2は、本発明の実施形態に係る電源システムの構成例を示すブロック図である。
図2に示す本発明の実施形態に係る電源システムは、交流電源1と、負荷2と、交流電源1を入力して負荷2にほぼ一定電圧、たとえば12Vを供給する電源ユニット3〜5と、内蔵するバッテリから電力を供給するバッテリユニット6〜8と、により構成される。
【0029】
上記において電源ユニット3〜5およびバッテリユニット6〜8は、両者につながる共通の直流母線に並列に接続される。なお、
図2では電源ユニット3〜5、バッテリユニット6〜8の並列数は各々3としているが、これに限定されるものではない。
【0030】
電源ユニット3〜5の構成要素としては、AC/DC変換回路10〜12、DC/DC変換回路13〜15を有することができる。上記DC/DC変換回路13〜15としては一般的に入出力絶縁型のものが用いられる。またバッテリユニット6〜8の構成要素としては、バッテリ16〜18、DC/DC変換回路19〜21を有することができる。DC/DC変換回路19〜21は、絶縁型、非絶縁型どちらでもかまわない。またDC/DC変換回路19〜21は、ここではバッテリユニット側から直流母線側へ、一方向の電力変換を行うものとし、バッテリの充電手段(図示しない)は別途設けるものとするが、双方向の電力変換が可能なものとして充電回路を兼用することもできる。
【0031】
図2に示す本発明の実施形態に係る電源システムは、通常モード、バックアップモード、アシストモードのいずれかで動作する。通常モードは、電源ユニット3〜5によって負荷2に電力を供給するモードである。バックアップモードは、交流電源1が停電したとき、バッテリユニット6〜8が負荷2に給電を行うモードである。アシストモードは、電源ユニット3〜5から負荷に供給する電力が不足した場合、不足分をバッテリユニット6〜8が供給するモードである。例えば、この電源システムは、負荷2の電力が電源ユニット3〜5の定格電力の合計を超えた場合、停電に至らなくても入力電圧が低下して十分な電力供給できなくなった場合、あるいは故障やメンテナンス等で電源ユニット3〜5の一部が停止した場合などに、アシストモードで動作する。なお、アシストモードについては後でさらに詳しく説明する。
【0032】
一般にバッテリは放電により電圧が低下する。低下量は放電電流が大きいほど大きく、また放電が進むにつれ増加していく性質がある。DC/DC変換回路19〜21はバッテリの電圧変化にかかわらず、直流母線電圧をほぼ一定に保つ動作を行う。
【0033】
図3は、本発明の実施形態に係る制御系を含めた電源ユニット、バッテリユニットの構成を示す図である。
図3では、代表例として電源ユニットを1つおよびバッテリユニットを1つ有する例について示しているが、
図2に示したと同様に、各々2以上の任意の数の並列接続が可能である。
【0034】
図3において、101、102、202は電圧検出器を、103、203は電流検出器を、104、204は電圧指令値設定手段を、105、106、205、206は加算器を、それぞれ示している。107、207は電圧調節器(Auto Voltage Regulator)を示しており、PI(比例・積分)調節器(Proportional & Integral・regulator)等で構成される。また108、208は電流調節器(Auto Current Regulator)を示しており、上記電圧調節器と同様、PI(比例・積分)調節器等で構成される。
【0035】
図3の電源ユニット3において、出力電圧を電圧検出器102によって検出し、これと電圧指令値設定手段104からの電圧指令値の差をとって電圧調節器107により電流指令値を出力する。電流指令値は出力電圧が不足している場合は大きく、出力電圧が過剰な場合は小さくなるようにする。この電流指令値と電源ユニット3に備えられる電流検出器103で検出される出力電流の差を取り、これが0に近づくようDC/DCコンバータ13の内部起電力を増減する。
【0036】
一方、バッテリユニット6の場合は、電圧調節器207から出力される電流指令値とバッテリユニット6に備えられる電流検出器203で検出される出力電流の差を取り、これが0に近づくようDC/DCコンバータ19の内部起電力を増減する。
【0037】
また電流指令値には電流調節器108、208に入力する際に図示しないリミッタが設けられており、負荷量に関わらず定格電流を上回る電流を出力しないようにする。
【0038】
図2に示すように本発明の実施形態に係る電源システムは、電源ユニットおよびバッテリユニットを複数台並列接続して使用する場合が多い。この際に各ユニットの電流バランスを取るために、各ユニットにいわゆるドループ(droop)特性に基づく制御を実施する。
【0039】
図4は、本発明の実施形態に係るドループ特性の内容を説明する図である。
図4に示すようにドループ特性は、出力電流に応じて出力電圧を低減するようにする。特定のユニットの出力電流が大きい場合、そのユニットはドループ特性により電圧を絞ることになるため電流が減少する。結果として、各ユニットの出力電流は、全負荷電流を並列数分の1にした値付近でバランスする。これによる出力電圧の変動範囲は、装置仕様で規定される出力電圧精度の範囲に収まるようにする。
【0040】
図4を用いて、バッテリユニット6〜8のドループ特性についてさらに説明する。いま、バッテリユニット6〜8では動作モードに応じて無負荷時の電圧指令値(以下、これを“V0C”の記号で表記する)をV01、V02、V03の間で切替えるものとする。また説明を簡略化するため、各電源ユニット3〜5とバッテリユニット6〜8の出力定格が同じで、かつ並列数も同じとする。なお、出力電流の定格値を100%としている。
【0041】
バックアップモード時には、全ての電力負荷をバッテリユニット6〜8が担うことになる。したがって、バックアップモード時におけるバッテリユニット6〜8のドループ特性は、通常モード時における電源ユニット3〜5のドループ特性と同じに設定する(
図4上段参照)。
【0042】
アシストモード時には、たとえば電源ユニット3〜5が100%の電流を出力するときの出力電圧値と、バッテリユニット6〜8が20%の電流を出力するときの出力電圧値が等しくなるように、V0C(電圧指令値)をV02に下げておく。たとえば負荷2の入力電流が定格値の120%相当の場合、電源ユニット3〜5が100%の電流を出力し、バッテリユニット6〜8が20%の電流を出力する点で両ユニットの出力電流がバランスし、この比率で運転が行われる。これにより、バッテリユニット6〜8の不必要な放電が回避される(
図4中段参照)。
【0043】
通常モード時には、バッテリユニット6〜8のV0C(電圧指令値)は電源ユニット3〜5の100%の電流を出力するときの出力電圧値より低い値V03まで下げておく。これにより、バッテリユニット6〜8から、連続的に放電が行われないようにすることができる。一方、負荷急変等で電源ユニット3〜5が通常の出力範囲を逸脱した際には、バッテリユニット6〜8からの放電で電圧変動量を抑制できるようにする(
図4下段参照)。
【0044】
なお、
図4では無負荷時の電圧指令値(V0C)により電流分担を調整したが、ドループ量すなわち出力電流に対する出力電圧低減量で調整することも可能である。あるいは、無負荷時の電圧指令値(V0C)とドループ量とを併用して、電流分担を調整しても良い。
【0045】
次にバッテリユニットにおけるV0C設定方法について、
図3を用いて説明する。109は、入力の停電を検出する停電検出手段である。110は、電源ユニット内の電流指令値が規定値、たとえば100%出力相当を上回ったときにアシスト要求信号を出力するアシスト要求発生手段である。210は、バッテリユニット内の電流指令値が規定値、たとえば10%を下回ったときにアシストモードの解除を要求する信号を出力するアシスト解除要求発生手段である。
【0046】
停電が発生せず、アシスト要求がないときには、電圧指令値設定手段204はV0C(電圧指令値)をV03に設定し、既定のドループ設定にしたがって電流指令値を出力する(
図4下段参照)。停電が発生した場合、アシスト要求の有無に関わらず電圧指令値設定手段204はVOC(電圧指令値)をV01に設定する(
図4上段参照)。停電が発生せず、アシスト要求発生手段110がアシスト要求を出力した場合、電圧指令値設定手段204はV0C(電圧指令値)をV02に設定する(
図4中段参照)。これによって定格の100%を超えた負荷2に対し所定の比率でバッテリユニット6〜8からの出力が行われる。
【0047】
電源ユニット3〜5の電流指令値が100%を超えるのは負荷2の入力電流が100%を超えた場合に限らない。停電に至らないまでも交流電源1の電圧が低下した場合、電源ユニット3〜5のAC/DC変換部10〜12は規定以上の電流が入力できないことから電力が不足し、結果として出力電圧が低下する。
【0048】
また100%負荷付近で電源ユニット3〜5の内の一台が故障停止した場合、あるいはメンテナンスのために電源ユニットのいずれかが取り外された場合においては、残りのユニットでは供給電力が不足し、同様に出力電圧が低下する。
【0049】
電源ユニット3〜5の電圧調節器107はこの電圧低下を回復しようとして電流指令値を増加させるため、定格を超えた電流が出力されることになる(ただし上述したリミッタにより、実際に定格を上回る電流は出力されない)。このような場合においても上述したと同様に、バッテリユニット6〜8によるアシスト動作が行われることは勿論である。
【0050】
ところで、電源ユニット3〜5の出力電流が100%以下に減少した場合、上記の設定では80%まではバッテリユニット6〜8から電流が出力されることになる。本来アシスト動作が不要な領域でバッテリユニット6〜8の放電が行われることになり望ましくない。アシスト解除要求発生手段210はこれを回避するためのものであり、たとえばバッテリユニット6〜8の出力電流が10%を下回った場合、アシストモード解除要求の信号をアシスト要求発生手段110に向かって出力する。アシスト要求発生手段110はこのとき自身の電源ユニットの出力電流が90%を下回っていれば、合計した負荷電流は100%以下であると判断してアシスト要求を解除する。自身の電源ユニットの出力電流が90%を下回っていない場合、電流検出誤差やユニット間アンバランス等により、アシストモード解除により電流不足が発生する危険があるためアシストモードを維持する(解除しない)。
【0051】
図5は、本発明の実施形態に係る電源システムの動作波形を示す図である。
図5の上半に示すように、負荷電流が増加して100%を超えると、電源ユニット3〜5の出力電流は上記リミッタにより100%に制限される一方、アシストモードに入った場合には、
図5の下半に示すようにバッテリユニット6〜8からの出力が加わり、100%を上回る電流が供給される。負荷電流が100%を下回ると
上記したドループ設定に従ってバッテリユニット6〜8の出力電流が10%を下回り、かつ電源ユニット3〜5の出力電流が90%を下回る
ことになるので、アシストモードが解除され、負荷電流は全て電源ユニット3〜5から供給される。
【0052】
電源ユニット3〜5、バッテリユニット6〜8を複数台直流母線に並列接続する場合のモード切替として、最も簡単な方法はワイヤードOR等の方法により、電源ユニット3〜5が一台でもアシスト要求を出した場合をアシスト要求発生とし、バッテリユニット6〜8の全部がアシスト解除要求を出した場合にアシスト解除要求発生とする。これは出力不足を回避する上で最も安全な方法であるが、たとえば電流検出や制御の誤差範囲が明確であり、並列アンバランスで出力電流が最小の電源ユニットがアシスト要求を出すまで待っても、出力電圧低下範囲が許容値内に収まると判断できる場合、又は、全ての電源ユニット3〜5がアシスト要求を出した場合をアシスト要求発生としても良い。あるいは、一定数または一定割合の電源ユニット3〜5がアシスト要求を出した場合をアシスト要求発生としても良い。アシスト解除要求についても同様である。
【0053】
なお、上記各ユニットは、電流指令値を用いてアシスト要求またはアシスト解除要求を出力しているが、出力電流を用いてアシスト要求またはアシスト解除要求を出力するようにしても良い。
【0054】
以上に説明した本発明の実施形態に係る電源システムによれば、ユニット間あるいは上位の制御装置との間で、電流・電圧などの連続量を伝送して、アシスト動作の有無や、各バッテリユニットのアシスト量の調整などを行うといった複雑な制御が不要であるため、従来の方法に比べて信号伝達系、制御系を大幅に簡素化した構成で所望の動作を実現することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、通信機用電源装置や大型コンピュータ用電源装置にも適用することが可能である。