【実施例1】
【0026】
以下、図面に基づいて、この発明の実施例1を詳細に説明する。
【0027】
<全体構成の説明>
実施例1に係る移動型X線撮影装置1は、
図1に示すように台車3と、駆動車輪5と、前輪7と、支柱9と、支持機構11と、水平アーム13と、X線管15と、コリメータ17と、コンソールパネル19と、操作ハンドル21と、ビデオカメラ23と、接触センサ25と、金属探知センサ27とを備えている。
【0028】
駆動車輪5は台車3の後方下部の左右に1つずつ設けられており、台車3の内部に設けられた電動モータによって回転する。台車3は駆動車輪5の回転に従って前進・後退し、左右の駆動車輪5の回転速度差によって左右に旋回する。前輪7は台車3の前方下部の左右に1つずつ設けられており、台車3の旋回方向に従って左右に旋回する。
【0029】
支柱9は台車3の前部に立設されており、鉛直軸周りに回転可能となるように構成されている。支持機構11は支柱9に設けられており、鉛直方向へ移動が可能となるように構成されている。また、支持機構11には、水平アーム13の一端が接続されている。水平アーム13は、水平方向に伸縮可能となるように構成されている。水平アーム13の他端にはX線管15が設けられている。X線管15は、水平アーム13の軸周りに回転可能となるように構成されており、設定されたX線撮影条件に従ってX線を照射させる。
【0030】
コリメータ17はX線管15の下部に設けられており、X線管15から照射されるX線をコーン状にコリメートさせてX線の照射野を調整する。コンソールパネル19は撮影時間を一例とするX線撮影条件を設定する操作器や、X線撮影用のスイッチなどを備えている。操作ハンドル21は移動型X線撮影装置1の前部および後部に設けられており、各々の操作ハンドル21の内部には複数の圧力センサが設けられている。圧力センサは操作者が操作ハンドル21を握って台車3を操作する場合に、操作ハンドル21に加える圧力を検出し、駆動車輪5の回転速度を制御させる。圧力センサの配置は前記特許文献1などに詳述されているので、ここではこれ以上の説明を省略する。
【0031】
移動型X線撮影装置1は2台のビデオカメラ23を備えており、一方のビデオカメラ23aは支持機構11に設けられ、他方のビデオカメラ23bはコリメータ17に設けられている。ビデオカメラ23aは移動型X線撮影装置1の前方を随時撮影し、ビデオカメラ23bは移動型X線撮影装置1の後方を随時撮影する。接触センサ25は台車3の前後左右の外装にそれぞれ設けられ、障害物との接触を検知する。金属探知センサ27は台車3の底部前方に設けられ、床面に敷設された金属テープを検知する。なお、ビデオカメラ23は本発明における標識検知手段に相当する。
【0032】
移動型X線撮影装置を移動させる際には、
図2(a)に示すように操作者Coは背部、左肩部、右肩部にマーカ29を1つずつ装着する。背部に装着されるマーカ29をマーカ29a、左肩部に装着されるマーカ29をマーカ29b、右肩部に装着されるマーカ29をマーカ29cとする。
図2(b)に示すように、各々のマーカ29には2次元コード31が印加されており、各々のマーカ29に印加される2次元コード31は全て異なっている。なお、2次元コード31について、図に示すx方向の長さをP、図に示すy方向の長さをQとする。実施例1において、長さPと長さQは略同じである。マーカ29を操作者Coに装着させる際、2次元コード31を視認できるように、安全ピンなどを用いて衣服の上から装着させる。また操作者Coは小型の入出力端末33を携帯する。なお、マーカ29は本発明における標識に相当し、入出力端末33は本発明における警告音発信手段に相当する。
【0033】
図3は移動型X線撮影装置1を自動追随走行させる概略を示している。
図3(a)に示すように、移動型X線撮影装置1の前方にいる操作者Coが矢印Aで示す方向へ移動する場合、ビデオカメラ23aは操作者Coの背部に装着されるマーカ29aを撮影する。そして移動型X線撮影装置1は、マーカ29aに印加された2次元コード31の映像に基づいて操作者Coに追随しつつ矢印Aの方向へ自動で走行する。
【0034】
図3(b)に示すように、移動型X線撮影装置1の後方にいる操作者Coが矢印Bで示す方向へ移動する場合、ビデオカメラ23bがマーカ29aを撮影する。そして移動型X線撮影装置1は、2次元コード31の映像に基づいて操作者Coに追随しつつ矢印Bの方向へ自動で走行する。従って、操作者Coが移動型X線撮影装置1の前方と後方のどちらにいる場合であっても、移動型X線撮影装置1を操作者Coに対して自動的に追随させることができる。
<機能ブロック図の説明>
【0035】
続いて移動型X線撮影装置1のブロック図について
図4を用いて説明する。移動型X線撮影装置1は画像処理演算装置35と制御回路37を備えている。ビデオカメラ23が撮影したマーカ29の画像は、画像処理演算装置35へと送られる。画像処理演算装置35は送られた画像に映し出された2次元コード31に基づいて操作者Coの位置や向きなどを算出し、算出された結果に応じて制御回路37へ信号を出力させる。制御回路39は出力された信号に基づいて駆動車輪5の回転速度を制御する。そして駆動車輪5の制御に応じて移動型X線撮影装置1の前進、後退、停止、あるいは左右への旋回が行われる。なお、制御回路37は本発明における標識追随制御手段に相当する。
【0036】
ビデオカメラ23が一定時間いずれのマーカ29をも撮影できない場合、画像処理演算装置35は制御回路37へ信号を出力させる。制御回路37は信号に基づいて駆動車輪5の回転を停止させるとともに、入出力端末33へ信号を出力させる。入出力端末33は信号に基づいて警告音を発信させ、移動型X線撮影装置1が自動追随走行できないことを操作者Coに知らせる。
【0037】
接触センサ25は障害物との接触を検知し、制御回路37へ信号を出力させる。制御回路37は信号に基づいて駆動車輪5の回転を停止させるとともに、入出力端末33へ信号を出力させる。入出力端末33は信号に基づいて警告音を発信させ、移動型X線撮影装置1が障害物に接触したことを操作者Coに知らせる。なお、接触センサ25は本発明における障害物検知手段に相当する。
【0038】
金属探知センサ27は床面に敷設された金属テープを検知し、制御回路37へ信号を出力させる。制御回路37は信号に基づいて駆動車輪5の回転を停止させるとともに、入出力端末33へ信号を出力させる。入出力端末33は信号に基づいて警告音を発信させ、移動型X線撮影装置1が進入禁止区域に進入したことを操作者Coに知らせる。なお、金属探知センサ27は本発明における敷設物検知手段に相当する。
<自動追随走行機能の説明>
実施例1に係る移動型X線撮影装置について、操作者を検知し、操作者に追随するように自動走行する機能について説明する。以下、自動追随走行機能が作動している状態を自動追随モードとする。なお、
図3(a)に示すように、操作者は移動型X線撮影装置の前方を歩きながら回診を行うものとする。
【0039】
自動追随モードにおいて、ビデオカメラ23が作動して画像を撮影する。
図5(a)に示すように、操作者Coは移動型X線撮影装置1の前方を歩いている。そのため、
図5(b)に示すように、ビデオカメラ23aが撮影した画像に操作者Coの背部に装着されたマーカ29aと、マーカ29aに印加された2次元コード31が映り込む。以下、ビデオカメラ23aが撮影した画像を画像Mとする。
【0040】
画像Mは画像処理演算装置37に送られ、画像処理演算装置37は画像Mに映し出された2次元コード31を認識する。そして画像Mに映し出された2次元コード31の大きさや座標などに基づいて、操作者Coと移動型X線撮影装置1との距離、移動型X線撮影装置1に対する操作者Coのx方向の座標、および操作者Coが向いている方向の3つについて算出される。
【0041】
まず操作者Coと移動型X線撮影装置1との距離は、画像に映る2次元コード31のy方向の長さ、すなわち長さQに基づいて算出される。すなわち
図5(a)に示すように操作者Coと移動型X線撮影装置1が離れている場合、
図5(b)に示すように画像に映る2次元コード31の長さQは短くなる。そして
図5(c)に示すように操作者Coと移動型X線撮影装置1が近づいている場合、
図5(d)に示すように画像に映る2次元コード31の長さQは長くなる。
【0042】
画像処理演算装置35は制御回路37を介して、画面に映る2次元コード31の長さQが、予め決められた基準値となるように駆動車輪5の回転速度を制御する。長さQが基準値より短い場合、画像処理演算装置35は操作者Coが移動型X線撮影装置1から離れ過ぎていると判断し、制御回路37へ信号を出力させる。制御回路37は信号に基づいて駆動車輪5に制御信号を送り、駆動車輪5を回転させる。駆動車輪5の回転によって移動型X線撮影装置1は自動走行を開始し、操作者Coに追随する。
【0043】
一方、長さQが基準値より長い場合、画像処理演算装置35は移動型X線撮影装置1が操作者Coに近づき過ぎていると判断し、制御回路37へ信号を出力させる。制御回路37は信号に基づいて駆動車輪5に制御信号を送り、駆動車輪5の回転を停止させる。駆動車輪5の停止により、移動する操作者Coと停止する移動型X線撮影装置1の距離は適切に離れることとなる。上述の構成を備えることにより、移動型X線撮影装置1は操作者Coとの距離を常に一定に保ちつつ、前方を歩く操作者Coに追随しつつ自走することができる。
【0044】
次に移動型X線撮影装置1に対する操作者Coのx方向の座標は、画像に映る2次元コード31のx方向の座標に基づいて算出される。例えば
図5(a)に示すように操作者Coが移動型X線撮影装置1の左前方にいる場合、
図5(b)に示すように2次元コード31は画像Mの左側に映し出される。
【0045】
画像処理演算装置35は、画像Mに映る2次元コード31がx方向に対して常に中央に位置するように駆動車輪5の回転速度を制御する。操作者Coが移動型X線撮影装置1の左前方にいる場合、右側の駆動車輪5の回転速度を左側の駆動車輪5の回転速度より高くする。その結果、
図5(d)に示すように移動型X線撮影装置1を左前方に走行させて操作者Coに追随させることができる。
【0046】
そして操作者Coが向いている方向は画面に映る2次元コード31の種類、および画像Mに映る2次元コード31の、長さPと長さQの比に基づいて算出される。
図6(a)に示すように、操作者Coの背部と移動型X線撮影装置1が対向している場合、マーカ29aの2次元コード31は画像Mに映るが、マーカ29bおよびマーカ29cの2次元コード31は映らない。そしてビデオカメラ23aはマーカ29aの2次元コード31を正面から撮影するので、
図6(b)に示すように、長さPと長さQは略同じである。
【0047】
一方
図6(c)に示すように、移動型X線撮影装置1の進行方向に対して操作者Coが左向きとなった場合、
図6(d)に示すように、画像Mにはマーカ29aの2次元コード31に加えて、マーカ29bの2次元コード31が映ることとなる。また操作者Coが左向きとなっているので、ビデオカメラ23aはマーカ29aの2次元コード31を斜め方向から撮影することとなる。そのため画像Mに映るマーカ29aの2次元コード31について、長さPは長さQに比べて短くなる。
【0048】
移動型X線撮影装置1の進行方向に対して操作者Coが向く方向が左へ変化するほど、マーカ29aにおける長さPと長さQとの比は小さくなり、マーカ29bにおける長さPと長さQとの比は大きくなる。なお、操作者Coが右を向いている場合、マーカ29cの2次元コードが画像Mに移ることとなる。従って、画像Mに映るマーカ29の種類、および2次元コード31の長さPと長さQの比に基づいて操作者Coが向いている方向を算出できる。
【0049】
例えば操作者Coが角を左に曲がる場合、
図7(a)に示すように操作者Coは点線の位置から実線の位置まで直進して体の向きを左に向け、その後に左方向へ移動する。そこで画像処理演算装置35は画像Mに映る2次元コード31に基づいて操作者Coが左に体を向けた位置を算出し、制御回路37へ信号を出力させる。制御回路37は信号に基づき、
図7(b)に示すように、移動型X線撮影装置1が点線の位置から実線の位置まで直進し、左に旋回するように駆動車輪5の回転速度を制御させる。左に旋回した移動型X線撮影装置1は左方向へ移動した操作者Coをビデオカメラ23aで撮影し、操作者Coに追随するように走行する。上述の操作を行うことにより、移動型X線撮影装置1は角を曲がる操作者Coに追随することができる。
【0050】
<進入禁止区域の識別>
次に、実施例1に係る移動型X線撮影装置が進入禁止区域を識別して自動追随モードを解除させる機能について説明する。
【0051】
図8(a)に示すように、移動型X線撮影装置1の進入可能区域Hと進入禁止区域Jとの境界に金属テープKを予め敷設する。移動型X線撮影装置1の底面には金属探知センサ27が設けられている。そのため移動型X線撮影装置1が進入可能区域Hから進入禁止区域Jへと進入すると、
図8(b)に示すように、金属探知センサ27は床面に敷設された金属テープKを検知することとなる。
【0052】
金属探知センサ27が金属テープKを検知すると、金属探知センサ27から制御回路37へ信号が出力される。制御回路37は出力された信号に基づいて駆動車輪5の回転を停止させるとともに、入出力端末33へと信号を出力させる。入出力端末33は制御回路37から出力された信号に基づいて警告音を発信し、進入禁止区域Jに進入したために自動追随モードが解除されたことを操作者Coに知らせる。上述の構成により、移動型X線撮影装置1の進入禁止区域Jへの進入を回避できる。
【0053】
しかしながら、上述の構成だけでは移動型X線撮影装置1の安全を十分に確保できないことがある。その一例として移動型X線撮影装置1が階段へ進入する場合が挙げられる。階段を昇降する操作者Coに追随して移動型X線撮影装置が階段に進入すると、大型の移動型X線撮影装置1が階段を転落する可能性が高い。この場合、階段の手前に金属テープKを敷設するだけでは移動型X線撮影装置1の停止が間に合わず、階段に進入して転落する場合も考えられる。そこで金属探知センサ27とは別に、操作者Coが階段に進入したことを識別して自動追随走行を停止させる機能が移動型X線撮影装置1に要求される。
【0054】
操作者Coが階段を昇降すると、
図9(a)に示すように、操作者Coは点線で示される位置から実線で示される位置へと移動する。そして操作者の移動に伴い、マーカ29aの位置は、点線で示される位置から実線で示される位置へと移動する。すなわちマーカ29aの位置は図で示されるy方向、すなわち高さ方向に対して大きく変化する。
【0055】
これに対して、操作者に追随している移動型X線撮影装置1の位置はy方向に対して変化しない。すなわち、ビデオカメラ23aの位置もy方向に対して変化しない。そのため画像Mに映る2次元コード31の座標は、操作者Coの階段昇降前(
図9(b))と階段昇降後(
図9(c))を比較すると、y方向に大きく変化する。つまり、画像Mに映る2次元コード31のy方向における座標の変化は、操作者Coが階段に進入したことを判断する指標となる。
【0056】
ただし、物を落とした等の理由で操作者Coが屈んだ場合も画像Mに映る2次元コード31のy方向の座標が大きく変化する。そのため2次元コード31のy座標が大きく変化したからといって操作者Coが階段に進入したとは限らない。しかしながら、操作者Coが屈んだ場合は短時間で元の体勢に戻るので、2次元コード31のy座標も短時間で戻ることとなる。
【0057】
そこで画像Mに映る2次元コード31の位置がy方向に一定値以上変化した場合、画像処理演算装置35はこれを認識して制御回路37へと信号を出力させる。制御回路37は出力された信号に基づいて、一時的に駆動車輪5の回転を停止させる。なぜならば操作者Coが屈んでいる場合と階段に進入している場合のどちらであっても、移動型X線撮影装置1に自動追随走行を続行させるのは危険だからである。
【0058】
そして一定時間以内に画像Mに映る2次元コード31のy座標が元に戻った場合、画像処理演算装置35は操作者Coが一時的に屈んでいたと判断する。そして画像処理演算装置35は制御回路37を介して再び駆動車輪5を回転させ、移動型X線撮影装置1の自動追随走行を再開させる。
【0059】
一方、一定時間以内に画像Mに映る2次元コード31のy座標が元に戻らない場合、画像処理演算装置35は操作者Coが階段に進入したと判断する。そして画像処理演算装置35は、制御回路37を介して入出力端末33へ信号を出力させる。入出力端末33は制御回路37から出力された信号に基づいて警告音を発信し、進入禁止区域に進入したために自動追随モードが解除されたことを操作者Coに知らせる。上述の構成により、操作者Coが誤って階段を昇降しても、移動型X線撮影装置1は自動的に階段への進入を回避できるので、移動型X線撮影装置1をより安全に運用することができる。
【0060】
なお実施例1に係る移動型X線撮影装置1において、進入禁止区域へ進入した場合以外に自動追随モードの解除を行う機能について、
図4のブロック図を用いて説明する。
【0061】
まずビデオカメラ23が撮影する画像Mに、いずれの2次元マーカ31も一定時間以上映らない場合、画像処理演算装置35は操作者Coを見失ったと判断し、制御回路37へと信号を出力させる。制御回路37は出力された信号に基づいて駆動車輪5の回転を停止させ、自動追随モードを解除させる。それと同時に制御回路37は入出力端末33へ警告音を発信させ、操作者Coを見失ったために自動追随モードが解除されたことを操作者Coに知らせる。このような構成を備えることで、操作者Coに追随できないにもかかわらず移動型X線撮影装置1が自動走行を続行することを防止できる。
【0062】
次に操作者Coが操作ハンドル21のいずれかを操作した場合、操作ハンドル21の内部に設けられた圧力センサは制御回路37へと信号を出力させる。制御回路37は出力された信号に基づいて自動追随モードを解除させる。このような構成を備えることで、操作者Coは操作ハンドル21による操作を自動追随モードによる操作に優先させることが可能となる。
【0063】
さらに、接触センサ25のいずれかが障害物との接触を検知した場合、障害物を検知した接触センサ25は制御回路37へと信号を出力させる。制御回路37は出力された信号に基づいて自動追随モードを解除させる。それと同時に制御回路37は入出力端末33へ警告音を発信させ、障害物との接触により自動追随モードが解除されたことを操作者Coに知らせる。このような構成により、移動型X線撮影装置1が障害物に接触した場合に速やかに自動追随モードを解除させ、危険な事態の発生を回避することができる。
【0064】
最後に、操作者Coはコンソールパネル19または入出力端末33を手動で操作することにより、制御回路37を介して自動追随モードを任意に解除できる。このような構成により、移動型X線撮影装置1の自動追随モードを解除すべき事態に陥った場合、操作者Coは速やかに自動追随モードを解除させ、安全を確保することが可能となる。
【0065】
<実施例1の構成による効果>
【0066】
実施例1に係る移動型X線撮影装置は、ビデオカメラによりマーカを装着した操作者を撮影する。そして撮影された画像に写るマーカに印加された2次元コードに基づいて、操作者の後ろに追随しつつ自動で走行する。すなわち操作者は両手で操作ハンドルを操作することなく、移動型X線撮影装置の前方を歩いて回診することができる。つまり、実施例1に係る移動型X線撮影装置を用いて回診する場合、操作者は両手にカルテやX線撮影用のフィルム、診療器具などを持ち運ぶことができる。従って、一度の回診でより多くの患者を診ることができ、かつ、より多岐にわたる診療を行うことが可能となる。
【0067】
さらに実施例1に係る移動型X線撮影装置では、操作者は台車の前方を歩いて回診できるので、前方の視界が移動型X線撮影装置によって遮られることがない。そのため、往来する患者やその他の障害物を速やかに確認できるので、移動型X線撮影装置を障害物と接触させることなく、より安全に回診を行うことができる。
【実施例2】
【0068】
次に、図面を参照して本発明の実施例2を説明する。なお、実施例1に係る移動型X線撮影装置と同じ構成については同符号を付して詳細な説明については省略する。
【0069】
実施例2に係る移動型X線撮影装置1Aは、台車3の底部前方に光学センサ39が設けられている。
図10(a)に示すように、金属探知センサ27は台車3の底部前方の左右に設けられているのに対し、光学センサ39は台車3の底部前方の中央に設けられている。なお、光学センサ39は本発明における移動経路検知手段に相当する。
【0070】
移動型X線撮影装置1Aの自動追随モードにおいて、光学センサ39は床面に敷設された着色テープLを検知し、
図4に示すように制御回路37へ信号を出力させる。制御回路37は出力させた信号に基づいて移動型X線撮影装置1Aが、敷設された着色テープLをトレースしながら移動するように駆動車輪5の回転速度を制御させる。
【0071】
移動型X線撮影装置1Aにおいて、光学センサ39から出力される信号は、画像処理演算装置35から出力される信号よりも優先されるよう構成されている。すなわち移動型X線撮影装置1Aは、ビデオカメラ23が撮影する画像Mに基づいて算出される経路よりも、着色テープLが敷設されている経路をより優先的に移動すべき経路と認識する。
【0072】
着色テープLは床面とは異なる色に着色されており、
図10(b)に示すように廊下や交差点の中央に敷設される。すなわち着色テープLが敷設されている領域では、移動型X線撮影装置1Aは操作者Coの動きに影響を受けることなく、中央に敷設された着色テープLをトレースしながら自動走行を行う。すなわち操作者Coが廊下の壁に沿って角を曲がっても、移動型X線撮影装置1Aは操作者Coの後ろに追随せず、着色テープLが敷設された経路に沿って走行する。そのため移動型X線撮影装置1Aが操作者Coに追随し、点線で示される位置へ走行して壁に衝突するという可能性 X線撮影装置本体を搭載する台車と、
前記台車を移動させる駆動車輪と、
操作者に装着される複数の標識と、
前記標識を検知する標識検知手段と、
前記標識検知手段が検知した結果に基づいて前記台車が前記標識に追随するよう前記駆動車輪の駆動を制御させる標識追随制御手段とを備えることを特徴とするを回避できる。
【0073】
また、操作者Coが左右にぶれながら歩いても、移動型X線撮影装置1Aは画像Mに映る2次元コード31から算出される経路より、着色テープLが敷設された経路を優先させて走行するよう制御される。つまり移動型X線撮影装置1Aは操作者Coの動きに影響されることなく予め決められた経路に従って移動する。従って、移動型X線撮影装置1Aが往来する患者やその他障害物に接触する危険性を大きく低減できる。なお、着色テープLが敷設されていない領域では、実施例1と同様に画像Mに映る2次元コード31に基づいて、操作者Coに追随するように自動走行を行う。上述のような構成を有することにより、実施例2に係る移動型X線撮影装置1Aはより安定した移動経路に沿って自動追随走行を行うことができる。
【0074】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0075】
(1)上述した各実施例では、操作者に2次元コードが印加されたマーカを装着させ、これをビデオカメラで撮影させて操作者の位置などを識別させたが、これに限られない。すなわち、ビデオカメラの代わりに超音波発振器および超音波センサを移動型X線撮影装置に設けるとともに、マーカの代わりに超音波反射器を標識として操作者の背部および両肩部に装着させてもよい。超音波発振器から発振される超音波は各々の超音波反射器に反射され、超音波センサによって検知される。すなわち超音波センサは、発振された超音波が反射される時間に基づいて、操作者と移動型X線撮影装置との距離、移動型X線撮影装置に対する操作者の座標、および操作者が向いている方向について算出できる。
【0076】
(2)上述した各実施例では、自動追随モードの解除を操作者に知らせる構成として、入出力端末を用いたがこれに限られない。すなわち、操作者が入出力端末を携帯する代わりに外部出力スピーカを台車の内部に設けてもよい。外部出力スピーカは制御回路から出力される信号に基づいて警告音を発信させ、自動追随モードが解除されたことを操作者に知らせる。このような構成により、操作者は入出力端末を携帯する必要が無くなるので、より荷物を減らした状態で回診を行うことができる。
【0077】
(3)上述した各実施例では、進入禁止区域への進入を検知するため、境界の床面に金属テープを敷設し、これを金属探知センサで検知させる構成を設けたがこれに限られない。すなわち、境界の床面に床面の色と異なる着色テープを敷設し、これを光学センサで検知させる構成としてもよい。
【0078】
(4)上述した各実施例では、警告音の発信によって操作者に自動追随モードの解除を知らせる構成を備えているが、これに限られない。すなわち入出力端末にバイブレーション機能を備えさせ、バイブレーションによって操作者に知らせる構成としてもよい。この場合、警告音が周囲に対して騒音となることを回避できる。
【0079】
(5)上述した各実施例では、コンソールパネルまたは入出力端末を手動で操作することにより、任意に自動追随モードを解除できる構成としたがこれに限られない。すなわち、音声入力による操作によって自動追随モードを任意で解除できる構成としてもよい。
【0080】
(6)上述した実施例2では、移動型X線撮影装置がトレースしつつ自動追随走行させるため、移動経路として床面に着色テープを敷設し、これを光学センサで検知させる構成を設けたがこれに限られない。すなわち、移動経路として床面に金属テープを敷設し、これを金属探知センサで検知させる構成としてもよい。