(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分は、単一粒子内にアクリル樹脂とウレタン樹脂との異相構造を有するウレタンアクリル複合粒子を含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載の化粧板。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の化粧板について、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0018】
《化粧板》
まず、本発明の化粧板の好適な実施形態について説明する。
【0019】
本発明の化粧板は、エレベーターや電車の車両等の金属製の壁面や、机や本棚等の金属製の家具等に貼り付けることで、審美性を付与することができるものである。
【0020】
図1は、本発明の化粧板の実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、化粧板100は、メラミン化粧シート12と、磁性層30と、メラミン化粧シート12と磁性層30とを接合する粘着剤層20と、を有している。
【0021】
磁性層30は、メラミン化粧シート12を支持する機能を有するとともに、磁性を帯びていることにより、化粧板100を金属製の部材に取り付ける機能を有する層である。
磁性層30は、磁石粉末をバインダー(結合樹脂)で結合してなる層である。
【0022】
磁石粉末は、優れた磁気特性を有するものが好ましい。
このような磁石粉末としては、例えば、R(ただし、Rは、Yを含む希土類元素のうちの少なくとも1種)を含む合金、特にR(ただし、Rは、Yを含む希土類元素のうちの少なくとも1種)とTM(ただし、TMは、遷移金属のうちの少なくとも1種)とB(ボロン)とを含む合金が挙げられる。
【0023】
特に、(1)Smを主とする希土類元素と、Coを主とする遷移金属とを基本成分とするもの(以下、Sm−Co系合金と言う)、(2)R(ただし、Rは、Yを含む希土類元素のうちの少なくとも1種)と、Feを主とする遷移金属(TM)と、Bとを基本成分とするもの(以下、R−TM−B系合金と言う)、(3)Smを主とする希土類元素と、Feを主とする遷移金属と、Nを主とする格子間元素とを基本成分とするもの(以下、Sm−Fe−N系合金と言う)、(4)R(ただし、Rは、Yを含む希土類元素のうち少なくとも1種)とFe等の遷移金属とを基本成分とし、ソフト磁性相とハード磁性相とが相隣接して存在する複合組織を有するものが好ましい。
【0024】
Sm−Co系合金の代表的なものとしては、例えば、SmCo
5、Sm
2TM
17(ただしTMは、遷移金属)等が挙げられる。
【0025】
R−Fe−B系合金の代表的なものとしては、例えば、Nd−Fe−B系合金、Pr−Fe−B系合金、Nd−Pr−Fe−B系合金、Nd−Dy−Fe−B系合金、Ce−Nd−Fe−B系合金、Ce−Pr−Nd−Fe−B系合金、これらにおけるFeの一部をCo、Ni等の他の遷移金属で置換したもの等が挙げられる。
【0026】
Sm−Fe−N系合金の代表的なものとしては、例えば、Sm
2Fe
17合金を窒化して作製したSm
2Fe
17N
3、TbCu
7型相を主相とするSm−Zr−Fe−Co−N系合金等が挙げられる。
【0027】
希土類元素としては、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、ミッシュメタルが挙げられ、これらを1種または2種以上含むことができる。また、遷移金属としては、Fe、Co、Ni等が挙げられ、これらを1種または2種以上含むことができる。
【0028】
また、耐熱性、耐食性を向上させるために、磁石粉末中には、必要に応じ、Al、Cu、Ga、Si、Ti、V、Ta、Zr、Nb、Mo、Hf、Ag、Zn、P、Ge等を含有することもできる。
【0029】
複合組織(ナノコンポジット組織)は、ソフト磁性相とハード磁性相とを有し、各相の厚さや粒径がナノメーターレベル(例えば1〜100nm)で存在している。そして、ソフト磁性相とハード磁性相とが相隣接し、磁気的な交換相互作用を生じる。
【0030】
前述したR−TM−B系合金において、ハード磁性相およびソフト磁性相としては、例えば、ハード磁性相:R
2TM
14B系(TMは、FeまたはFeとCo)、またはR
2TM
14BQ系(Qは、Al、Cu、Ga、Si、Ti、V、Ta、Zr、Nb、Mo、Hf、Ag、Zn、P、Ge等のうちの少なくとも1種)、ソフト磁性相:TM(特にα−Fe,α−(Fe,Co))、またはTMとQとの合金相等が挙げられる。
【0031】
バインダーとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66、ナイロン6T、ナイロン9T)、熱可塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0032】
これらのうちでも、成形性が特に優れており、機械的強度が高いことから、ポリアミド、耐熱性向上の点から、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイドを主とするものが好ましい。また、これらの熱可塑性樹脂は、磁石粉末との混練性にも優れている。
【0033】
このような熱可塑性樹脂は、その種類、共重合化等により、例えば成形性を重視したものや、耐熱性、機械的強度を重視したものというように、広範囲の選択が可能となるという利点がある。
【0034】
一方、熱硬化性樹脂としては、例えば、ビスフェノール型、ノボラック型、ナフタレン系等の各種エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル(不飽和ポリエステル)樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0035】
これらのうちでも、成形性が特に優れており、機械的強度が高く、耐熱性に優れるという点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂が好ましく、エポキシ樹脂が特に好ましい。また、これらの熱硬化性樹脂は、磁石粉末との混練性、混練の均一性にも優れている。
【0036】
なお、使用される熱硬化性樹脂(未硬化)は、室温で液状のものでも、固形(粉末状)のものでもよい。
【0037】
磁性層30の厚さ(平均厚さ)は、審美的な観点から適宜変更されるが、0.15〜6mmであるのが好ましく、0.6〜2mmであるのがより好ましい。
磁性層30の大きさ・形状は、壁面のデザイン等によって適宜変更することができる。
【0038】
メラミン化粧シート12は、
図1に示すように、粘着剤層20を介して、磁性層30の表面に接合されている。メラミン化粧シート12は、表面に木目等の意匠が施されている。
【0039】
また、メラミン化粧シート12は、不燃性のシートであり、化粧板100に優れた防火性を付与するものである。なお、メラミン化粧シート12の材料等については、後に詳細に説明する。
【0040】
粘着剤層20は、
図1に示すように、磁性層30とメラミン化粧シート12との間に設けられており、磁性層30とメラミン化粧シート12とを接合する機能を備えている。
【0041】
粘着剤層20は、主として、粘着剤で構成されている。この粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を挙げることができる。
【0042】
アクリル系粘着剤としては、粘着性を与える低Tgの主モノマー成分、接着性や凝集力を与える高Tgのコモノマー成分、架橋や接着性改良のための官能基含有モノマー成分を主とする重合体または共重合体よりなる。
【0043】
主モノマー成分としては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸アルキルエステルや、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アルキルエステル等を挙げることができる。
【0044】
コモノマー成分としてはアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0045】
官能基含有モノマー成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノマーや、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、N−メチロールアクリルアミド等のヒドロキシル基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0046】
また、ゴム系粘着剤としては、例えば、天然ゴム系、イソプレンゴム系、スチレン−ブタジエン系、再生ゴム系、ポリイソブチレン系のものや、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン等のゴムを含むブロック共重合体を主とするもの等を挙げることができる。
【0047】
また、シリコーン系粘着剤としては、例えば、ジメチルシロキサン系、ジフェニルシロキサン系のもの等を挙げることができる。
【0048】
以上のような粘着剤は、非架橋型、架橋型のいずれのものも使用可能である。後者の場合、必要に応じ、架橋剤を添加することができる。架橋剤としては、例えば、エポキシ系化合物、イソシアナート系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩、アミン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド系化合物等が挙げられる。
このような粘着剤は、有機溶剤系、エマルション系のいずれでもよい。
【0049】
また、粘着剤層20には、例えば、可塑剤、粘着付与剤、増粘剤、充填剤、老化防止剤、防腐剤、防カビ剤、染料、顔料等の各種添加剤が必要に応じ添加されていてもよい。
【0050】
以上、説明したような化粧板100は、エレベーターや電車の車両等の金属製の壁面や、机や本棚等の金属製の家具等に容易に貼り付けることができるとともに、磁性層により貼着しているため、容易に取り外すことが可能である。このため、模様替えやメンテナンスを容易に行うことができる。また、化粧板100は、不燃性のメラミン化粧シート12を備えている。これにより、化粧板100は、防火性に特に優れたものとなる。
【0051】
《メラミン化粧シート》
次に、化粧板100を構成するメラミン化粧シートについて、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0052】
図2は、化粧シートの構成の一例を表す概念図、
図3は、化粧シートの製造方法の一例を説明する図、
図4は、化粧シートの構成の他の一例を表す概念図、
図5は、化粧シートの構成の他の一例を表す概念図である。
【0053】
メラミン化粧シート12は、
図2に示すように、表面層15と芯材層16とが積層された構造を有するものあり、表面層15は、意匠面となる第1の面側151にメラミン樹脂を含有する樹脂を担持し、芯材層16と接する第2の面側152に熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分を担持する表面層基材からなる表面層材料で構成され、芯材層16は、ガラスクロスまたはガラスクロスを基材とするプリプレグからなる芯材層材料で構成されている。
【0054】
このようなメラミン化粧シート12は、例えば、
図3に示すように、表面層材料15Aと芯材層材料16Aとを重ね合わせ、これを加熱加圧成形して積層することにより得られる。
【0055】
以下、各層について詳細に説明する。
<1.表面層>
表面層15は、表面層材料15Aで構成されている。
【0056】
この表面層材料15Aは、メラミン化粧シート12の意匠面(露出される側の面)側に配置されている。この表面層材料15Aは、意匠面となる第1の面側151にメラミン樹脂を含有する樹脂を担持し、芯材層16と接する第2の面側152に熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分を担持する表面層基材からなるものである。
【0057】
なお、本明細書中において、表面層基材が樹脂を担持するとは、樹脂が基材(担体)の表面に付着し、または、基材内部の空隙部に含浸され、表面層材料の成形後に担持させた樹脂の性能を発現することを可能にする状態であることを意味する。なお、樹脂は、基材の表面および基材の内部に均一に分布していなくてもよい。
【0058】
表面層基材は、第1の面側151に意匠面が形成されたシート状の基材である。表面層基材の材質は特に限定されず、例えば、パルプ、リンター、合成繊維、ガラス繊維等を用いることができる。また、必要に応じて、酸化チタンなどの顔料を含有する酸化チタン含有化粧紙などを用いることができる。
【0059】
表面層基材の坪量は、特に限定されないが、40〜150g/m
2であることが好ましい。坪量が前記下限値未満であると、樹脂含浸工程での切れ、しわの問題から、塗工処理が困難であり、さらに第1の面と第2の面それぞれに担持させる樹脂含浸量を調整することも困難である。一方、坪量が前記上限値を超えると、表面層基材が担持する樹脂の含浸量にムラが生じ、メラミン化粧シート12の柔軟性を低下させると共に、生産性低下、コスト高の原因となる場合がある。
【0060】
表面層材料15Aは、表面層基材の第1の面側151にはメラミン樹脂を含有する樹脂が担持されてなる。これにより、表面層材料15Aの第1の面側151の表面、すなわち、メラミン化粧シート12表面に好適な表面硬度を付与することができる。
【0061】
メラミン樹脂としては、特に限定されず、例えば、メラミンとホルムアルデヒドを中性または弱アルカリ下において反応させて得られるものを用いることができる。
【0062】
メラミンに対するホルムアルデヒドの反応モル比((ホルムアルデヒドのモル量)/(メラミンのモル量)の値であり、以下、単に「反応モル比」ということがある。)は、特に限定されないが、1.0〜4.0、好ましくは1.0〜2.0、さらに好ましくは1.1〜1.8として、反応させて得られたものを好適に用いることができる。反応モル比が前記下限値未満であると、未反応成分が増加し保存性低下、コスト高となる場合がある。また、前記上限値を超えると、硬化後の樹脂柔軟性低下が著しくなる場合がある。なお、メラミン樹脂としては、1種類が単独で含まれるものを用いることもできるし、反応モル比や重量平均分子量等が異なる2種類以上のメラミン樹脂を混合して含むものを用いることもできる。
【0063】
また、メラミン樹脂としては、住友化学(株)製のメラミン樹脂等、市販のものを用い
ることもできる。
【0064】
メラミン樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、200〜500であるのが好ましく、250〜350であるのがより好ましい。分子量が前記下限値よりも小さいと、未反応分が多くなり、保存性が低下する場合がある。また、前記上限値よりも大きいと、基材への含浸性が低下する場合がある。なお、前記重量平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、標準物質:ポリスチレン換算)で測定することができる。
【0065】
表面層材料15Aの第1の面側151に担持される樹脂中の上記メラミン樹脂の含有量は、特に限定されないが、80〜100質量%であるのが好ましく、95〜100質量%であるのがより好ましい。メラミン樹脂の含有量が前記下限値未満であると、表面硬度や耐汚染性が低下する。
【0066】
メラミン樹脂を含有する樹脂を表面層基材の第1の面側151に担持させる方法としては、特に限定されず、例えば、前記樹脂を溶剤に溶解した樹脂ワニスを、例えば、スプレー装置、シャワー装置、キスコーター、コンマコーター等の公知の装置を用いて塗工した後、80〜130℃程度で加熱乾燥する方法等が挙げられる。
【0067】
なお、加熱乾燥後の樹脂含浸紙には、当該樹脂含浸紙全体の重さを100質量%としたときに、2〜6質量%の揮発分(溶剤)が残存する事が好ましい。これにより、樹脂含浸紙の取り扱いが容易になり、また、加熱成形時において、第1の面側151に担持させたメラミン樹脂の樹脂フローが向上する事でメラミン化粧シート12の意匠外観・表面光沢度が良好となる。揮発分が2質量%未満では樹脂含浸紙が割れ易く取り扱いが困難となり、樹脂フローの低下もあり外観形成に支障が生じる。また、揮発分が6%を超えた場合、成形後の乾燥環境下では、化粧シート反り(シートカール)が増大しやすくなり、7.5%以上では化粧シート外観での光沢転写性に揮発分の影響が生じて来る。
【0068】
メラミン樹脂を含有する樹脂を溶解する溶剤としては、特に限定されず、例えば、水、メタノール等が挙げられる。中でも水が好ましい。また、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。前記樹脂ワニスの固形分(溶剤を除く全成分)は、特に限定されないが、前記樹脂ワニスの30〜70質量%であるのが好ましく、45〜60質量%であるのがより好ましい。これにより、樹脂ワニスの基材への含浸性を向上できる。
【0069】
表面層材料15Aは、表面層基材の意匠面と反対側である第2の面側152には、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分が担持されてなる。なお、本明細書中おいて、熱可塑性エマルジョン樹脂とは、熱可塑性樹脂を含むが溶剤に分散してエマルジョン状態となったものである。また、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分とは、熱可塑性エマルジョン樹脂から溶剤を除いた成分を意味する。
【0070】
熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分は、エマルジョン樹脂粒子として存在する成分を含み、金属や各種素材との接着特性を有し、メラミン化粧シートに柔軟性を付与する。したがって、第2の面側152には、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分が担持することにより、表面層15と芯材層16との接着強度を向上させることができるとともに、メラミン化粧シート12の曲げ加工性を向上させることができる。
【0071】
熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分には、特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル系共重合体、ウレタンアクリル複合粒子、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)等の熱可塑性樹脂のエマルジョン粒子が挙げられる。これらの中でもウレタンアクリル複合粒子が好ましい。本明細書中において、ウレタンアクリル複合粒子とは、単一粒子内にアクリル樹脂とウレタン樹脂との異相構造を有するものを意味する。
【0072】
ウレタン樹脂とアクリル樹脂とは、各々が芯材層16との接着強度が高いため、ウレタンアクリル複合粒子を用いることで、芯材層16との良好な接着強度を発現することができる。さらに、ウレタン樹脂は、特に強靭性、弾性、柔軟性に優れ、アクリル樹脂は、特に透明性、耐久性、耐候性、耐薬品性、造膜性に優れる。
【0073】
また、本明細書中において「異相構造」とは、1個の粒子内に異なる種類の樹脂からなる相が複数存在する構造を意味し、例えば、コアシェル構造、局在構造、海島構造等が挙げられる。
【0074】
また、前記ウレタンアクリル複合粒子が、表面層材料15Aの第1の面側151に担持された時の粒子間の配列状態は、特に限定されず、例えば、直鎖構造等が挙げられる。粒子の構造および粒子間の配列状態は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)により確認することができる。これらの中でも、前記ウレタンアクリル複合粒子は、アクリル成分をコアとし、ウレタン成分をシェルとするコアシェル構造を有する水性クリヤータイプであることが特に好ましい。ウレタンアクリル複合粒子が上記コアシェル構造であると、表面層材料15Aの第2の面側152に担持させたときに、表面外郭がウレタン組成となるので、表面層材料15Aの第2の面側152は、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂の両方の特性を有しつつ、外郭にウレタン樹脂の特性が付与される。なお、本明細書中において「水性クリヤー」とは、樹脂液は水溶性であり水分を飛ばした後の塗膜は非水性で、かつ下地の色柄が明らかに識別出来る程の透明性を持つ樹脂水溶液を意味する。表面層材料15Aの第2の面側152に担持される樹脂が水性クリヤータイプであることにより、表面層が有する意匠面の色調に及ぼす影響を抑制することができる。
【0075】
なお、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分としては、これらの中の1種類が単独で含まれるものを用いることもできるし、異なる2種類以上の熱可塑性樹脂を混合して含むものを用いることもできる。
【0076】
また、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分には、上記熱可塑性樹脂のエマルジョン粒子以外にも、必要に応じて少量の増粘剤、浸透促進剤、消泡剤等を含んでいてもよい。
【0077】
熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分は、平均粒径が30〜100nmのエマルジョン樹脂粒子を含むことが好ましく、前記エマルジョン樹脂粒子の平均粒径は、60〜90nmであることがより好ましい。これにより、表面層基材の繊維間への含浸性が向上し、より表面層基材の内部に含浸させることができるため、表面層15に良好な柔軟性を付与することができる。
【0078】
また、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分は、非水溶性であることが好ましい。これにより、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分が表面層材料15Aの第1の面側151へと移行して、第1の面側151に担持されているメラミン樹脂と混合して、第1の面側151のメラミン樹脂による表面性能を損なうことを防止することができる。
【0079】
熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分を表面層基材の第2の面側152に担持させる方法としては、特に限定されず、メラミン樹脂を含有する樹脂を表面層基材の第1の面側151に担持させる上述の方法と同様にして行うことができる。つまり、溶剤に溶解されたエマルジョン状態の熱可塑性エマルジョン樹脂を塗工、加熱乾燥する方法等が挙げられる。
【0080】
なお、前記加熱乾燥後の樹脂含浸紙には、当該樹脂含浸紙全体の重さを100質量%としたときに、2〜6質量%の揮発分が残存することが好ましい。これにより、樹脂含浸紙の取り扱いが容易になり、また加熱成形時において、第1の面側151に担持させたメラミン樹脂の樹脂フローが向上する事でメラミン化粧シート12の意匠外観・表面光沢度が良好となるからである。
【0081】
熱可塑性エマルジョン樹脂に用いられる溶剤としては、特に限定されず、例えば、水等が挙げられる。また、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。前記熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分(溶剤を除く全成分)は、特に限定されないが、前記熱可塑性エマルジョン樹脂の25〜60質量%であるのが好ましく、30〜45質量%であるのがより好ましい。これにより、熱可塑性エマルジョン樹脂の基材への含浸性を向上できる。
【0082】
<2.芯材層>
メラミン化粧シート12は、表面層15の第2の面側152に、芯材層16を積層してなる。
【0083】
芯材層16は、ガラスクロスまたはガラスクロスを基材とするプリプレグからなる芯材層材料16Aで構成される。これにより、メラミン化粧シートに、耐熱性、不燃性、剛性などを付与することができる。
【0084】
ガラスクロスとしては、特に限定されず、例えば、ガラス織布、ガラス不織布等が挙げられ、中でも不燃性、強度の点からガラス織布が好ましい。
【0085】
また、ガラスクロスを構成するガラスとしては、例えば、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、Hガラス等が挙げられる。これらの中でもTガラスが好ましい。これにより、ガラスクロスの熱膨張係数を小さくすることができる。
【0086】
ガラスクロスの重量は、特に限定するものではないが、建築基準法第2条第9号の不燃性適合要件である「燃焼後の亀裂・貫通があってはならない」を満たす必要がある場合は、坪量100g/m
2以上とする事が好ましい。また、重量の上限は特に制約を必要としないが、材料コストと加工性の面から坪量250g/m
2以下が好ましい。
【0087】
プリプレグとしては、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂等を含有する樹脂組成物を上述のガラスクロスに含浸してなるものを用いることができる。
【0088】
樹脂組成物としては、表面層15の第2の面側152と芯材層16との層間接着強度が、メラミン化粧シート12を形成するために十分であれば、特に限定されないが、中でも、熱可塑性樹脂を固形分で10〜50質量%含有することが好ましく、20〜35質量%含有することがより好ましい。これにより、表面層15の第2の面側152と芯材層16との層間接着強度を向上させることができる。
【0089】
熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。中でも、アクリル樹脂および/またはウレタン樹脂を用いるのが好ましい。
【0090】
プリプレグは、従来公知の方法により製造することができ、例えば、上述したガラスクロスと同様のガラスクロスに、樹脂組成物を溶剤に溶解させたワニスを含浸、乾燥させることにより得られる。
【0091】
また、芯材層材料16Aは、表面層材料15Aと接する面側に、さらに熱可塑性エマルジョン樹脂を担持させる事で、さらに接着強度を向上させ、高い常温曲げ加工性を達成出来る。なお、芯材層材料16Aの表面層材料15Aと接する面側に担持させる熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分は、柔軟性を付与し、燃焼時の発熱量、ガス有害性に支障なければ特に限定されず、当該熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分が含むエマルジョン樹脂粒子の平均粒径は特に限定されず、水溶性でも非水溶性でもよい。
【0092】
芯材層16の厚みは、100μm以上とすることが好ましい。これにより、メラミン化粧シート12に充分な耐熱性、不燃性を付与することができる。また、厚みの上限については、特に限定されないが、厚みが大きいほどメラミン化粧シート12の厚みと重量が増大すると共に、コストも嵩むため、最終的な製品における設計上、許容される範囲で設定することが好ましく、350μm以下にすることが好ましい。
【0093】
<3.メラミン化粧シート>
メラミン化粧シート12は、上述した表面層材料15Aと芯材層材料16Aとを、所定の順序で重ね合わせ、これを加熱加圧成形して積層することにより得られる。
【0094】
メラミン化粧シート12を加熱加圧成形する条件としては特に限定されないが、一例を挙げると、温度130〜150℃、圧力2〜8MPa、時間10〜60分間で実施することができる。
【0095】
また、メラミン化粧シート12の成形時に、表面層材料15Aの第1の面側に、鏡面仕上げ板を重ねることにより鏡面仕上げとすることができ、エンボス板またはエンボスフィルム等を重ねることにより、エンボス仕上げとすることができる。
【0096】
メラミン化粧シート12は、常温(通常20〜30℃程度)での最小曲げ半径が10mmR以下の曲げ加工が可能であるが、特に限定はされない。最小曲げ半径Rとは、半径Rの湾曲部を有する型に沿わせて、一方方向に行う常温曲げ加工を繰り返し実施しても、割れ等の不具合を生じず、100%の良品が得られる最小の型の半径Rを意味する。
また、メラミン化粧シート12は、全体の厚みが0.4mm以下であるのが好ましい。
【0097】
なお、本発明の化粧板に適用可能なメラミン化粧シートは、
図2および
図3に示したメラミン化粧シート12の形態に限定されず、機械的強度等を付与したい場合には、
図4に示すように、芯材層の下側にさらに別の芯材層材料を積層して芯材層を2層積層した、表面層15、芯材層16、芯材層17の三層構成としたメラミン化粧シート13を用いることもできる。また、表面層および芯材層以外の別の層を有していてもよく、例えば、
図5に示すように、意匠面側の最外層に保護層18を有していたり、芯材層側の最外層に支持層19を有していたりするメラミン化粧シート14を用いてもよい。
【0098】
保護層18は、特に限定されず、例えば、坪量10〜50g/m
2の紙基材に、メラミン樹脂単独、あるいは、メラミン樹脂に、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、あるいはシリカから選ばれる無機充填材を含有させた樹脂組成物を含浸させ、これを乾燥することにより得ることができる。
【0099】
支持層19は、特に限定されず、例えば、表面層基材に用いられるものと同様の基材に、表面層材料の第1の面側または第2の面側に用いることができる樹脂を含浸させてなるプリプレグや、金属箔等を用いることができる。
【0100】
以上、本発明の化粧板の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。