【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様において、例えばトモシンセシス・システムにおいて、ターゲット・オブジェクトの対象領域の三次元表現を生成する方法が提供される。本方法は、
a)ターゲット・オブジェクトの対象領域において、又は対象領域に対して固定された可動表面上に、既知の幾何学的形状の基準マーカーを特定するステップと、
b)対象領域及び基準マーカーが放射線源に対して第1の位置にあり、検出器が放射線源に対して第1の検出位置にあるときに、検出器により放射線源からの放射線を検出することにより、基準マーカーの第1の画像及び対象領域の第1の画像を作成するステップと、
c)基準マーカー及び対象領域を、放射線源に対して第2の位置に移動させ、検出器を放射線源に対する第2の検出位置に移動させるステップと、
d)対象領域及び基準マーカーが放射線源に対して第2の位置にあり、検出器が放射線源に対して第2の検出位置にあるときに、検出器により放射線源からの放射線を検出することにより、基準マーカーの第2の画像及び対象領域の第2の画像を作成するステップと、
e)基準マーカーの第2の画像と基準マーカーの予測される第2の画像に関する情報との比較を用いて、対象領域についての修正された第2の画像データを生成するステップと、
f)第1の画像又は修正された第1の画像データ、及び対象領域に関する修正された第2の画像データを用いて、対象領域の三次元表現を生成するステップと、
を含む。
【0007】
第1の態様による方法は、画像処理中に位置の不正確さを修正することによって、比較的正確ではない、従って安価な位置決め機構を使用することを可能にする。典型的には、放射線源は固定されており、ターゲット・オブジェクト及び検出器は、放射線源に対する所定位置を通って移動する。本発明の第1の態様による方法は、ターゲット・オブジェクトの対象領域上又はその付近の既知の幾何学的形状の基準マーカーを用いて、対象領域及び基準マーカーのキャプチャされた画像を調整し、放射線源に対する検出器及び対象領域の位置決めにおける不正確さを補償する。この方法では、対象領域及び基準マーカーの両方が所定位置を通って移動される。各々の所定位置における放射線源、対象領域(及び基準マーカー)、及び検出器の間の意図される空間関係は既知である。基準マーカーの幾何学的形状は既知である(又は、既知であると推定される)。この情報を基準マーカーの既知の又は測定された初期位置と併せて使用し、基準マーカー及び検出器の所定位置の各々について、基準マーカーの予測される画像を計算することができる。
【0008】
次いで、画像変換を計算し、各々の所定位置において、基準マーカーのキャプチャされた画像を基準マーカーの予測される画像にマッピングすることができる。この画像変換を後で用いて、所定位置の各々についてのキャプチャされた対象領域の画像を変換し、各々の所定位置についての対象領域の対応する修正された画像を生成することができる。事実上、画像は、画像形成システムの要素に対して、それらが各々の所定位置において理想的な空間関係にあった場合に撮られたであろう画像に対応するように変換される。
【0009】
次いで、各々の所定位置についてのこれらの修正された画像をトモシンセシス技術により結合して、対象領域の3Dモデル又は画像を作成する。
【0010】
このように、本方法は、良好な品質の三次元画像を生成するために、他の場合には十分に正確な機械的位置決め部品をもたない既存のx線画像形成機械と共に、トモシンセシス技術を用いることを可能にする。従来のトモシンセシス・システムにおいては、検出器及びターゲット・オブジェクトの位置が、検出器上のピクセルの何分の1、典型的にはミクロンの何分の1かの範囲内まで正確に知られる必要がある。このことは、移動機構内の機械部品の全てを、非常に厳しい公差の範囲内に非常に正確に機械加工することを必要とする。これがトモシンセシス機械のコストの主要な要因である。本発明においてはこうした厳しい公差は必要とされず、従って、本方法は、ユーザに著しいコスト削減を提供する。
【0011】
本方法は、対象領域内に既に存在する特徴を基準マーカーとして特定することを含むことができる。例えば、対象領域内のはんだボール又ははんだボールのアレイを基準マーカーとして選択することができる。各々のはんだボールは回転対称であると推定することができ、そのサイズ(ボールのアレイが用いられる場合はその空間関係)を第1の画像内に定めることができる。この情報を用いると、放射線源、対象領域、及び検出器が異なる所定位置にある状態で、キャプチャされた対象領域の投影内で、基準マーカーがどのように見えるかを計算することは容易である。基準マーカーは、適切なユーザ・インターフェースを用いて、スクリーン上でユーザにより選択することができる。ユーザ・インターフェースは、ユーザが、例えばカーソルを用いて基準マーカーの周囲にボックスを描くことを可能にする、例えば、マウス、ジョイスティック、キーボード、又はタッチ・センシティブ・スクリーンを含むことができる。
【0012】
代替的に又は付加的に、本方法は、対象領域内、又はターゲット・オブジェクト上若しくは、ターゲット・オブジェクトのための支持部上の対象領域に近接して、基準マーカーを配置するステップを含むことができる。例えば、回路基板の対象領域内で、はんだボール又は他のマーカーを回路基板の上に取り付けることができる。代替的に、例えば対象領域が部品で密に覆われている場合には、基準マーカーを、対象領域の外ではあるがターゲット・オブジェクト又は支持部上に配置することができる。次いで、画像キャプチャ方法は、放射線源、対象領域、及び検出器が第1の位置にあるとき、即ち第1の空間関係を有するとき、対象領域の画像をキャプチャし、次いで、検出器を固定状態にしながらターゲット・オブジェクトのための支持部を移動させて、基準マーカーが対象領域の場所に来るようにし、その結果、放射線源、基準マーカー、及び検出器が第1の空間関係を有するようにするステップを含むことができる。この対象領域及び基準マーカーの一方の画像をキャプチャし、続いて対象領域及び基準マーカーの他方の画像をキャプチャするプロセスは、各々の対象領域、基準マーカー、及び検出器の所定位置について繰り返される。次いで、基準マーカーが対象領域内にある場合と同様に、基準マーカー及び対象領域の画像を使用して、修正された画像データを提供することができる。このことは、著しいエラーをもたらすことなく可能であり、それは、検出器及びターゲット・オブジェクトのための支持部の移動は、サーボ・モータなどのこれらの部品に対して安価な移動機構を使用するときでさえ、必ずしも非常に正確であるとは限らないが、典型的には一貫した方法で繰り返すことができるためである。
【0013】
また、取り付けられた基準マーカーを含むように、既にターゲット・オブジェクト上に存在するが対象領域の外部に位置する、この目的のために設けられた基準マーカーを使用すること、又はさらに支持部のために設けられた基準マーカーを使用することも可能である。例えば、回路基板の製造者にとって、製造中に各々の回路基板上の所定位置に基準マーカーを含ませることが望ましいことがある。基準マーカーを、回路基板上の比較的空いた位置に有利に配置することができる。この場合、基準マーカーが対象領域の外部にある場合、本方法は、対象領域、基準マーカー、及び検出器の所定位置の各々について、対象領域及び基準マーカーの一方の画像をキャプチャし、続いて対象領域及び基準マーカーの他方の画像をキャプチャするステップを含む。
【0014】
本方法は、例えば、対象領域及び基準マーカーが放射線源に対して第3の位置にあり、検出器が放射線源に対して第3の位置にあるときに、検出器により放射線源からの放射を検出することによって、基準マーカーの第3の画像及び対象領域の第3の画像を作成するステップなど、対象領域、基準マーカー、及び検出器の後の所定位置に対して修正された画像データを作成するステップ、及び、基準マーカーの第3の画像と基準マーカーの予測される第3の画像に関する情報との比較を用いて、対象領域に関する修正された第3の画像データを生成するステップをさらに含むことができ、対象領域の三次元表現を生成するステップは、修正された第3の画像データを用いる。
【0015】
本方法は、多数の異なる位置から対象領域及び基準マーカーの画像を生成するステップ、及び、各々の位置について、対象領域に関する対応する修正された画像データを生成するステップを有利に含むことができる。対象領域、基準マーカー、及び検出器に関する所定位置の数が多いほど、対象領域の三次元表現内に、より多くの情報を含ませることができる。
【0016】
基準マーカーは、複数の基準マーカー要素を含むことができる。例えば、基準マーカーは、2つ、3つ、又はそれ以上のはんだボールを含むことができる。基準マーカー要素は、対象領域の全体にわたって離間配置することができる。画像全体にわたる、又は画像全体に典型的なエラーを示す画像領域からの情報を与えるように配置された基準マーカーのアレイは、回転、縮尺、台形歪みの修正、又はより高次の変換のための情報を提供することができる。対象領域の内部に配置された単一の基準マーカーが、やむを得ず、対象領域内の他の部品により覆い隠されることもある。それにより、基準の検出、及び後の画像の変換が不正確になる可能性がある。しかしながら、基準マーカーのアレイを有することで精度が向上し、検出がずっとロバストなものとなる。全ての基準が同時に他の部品により覆い隠される可能性は極めて低い。正確な検出のためには、一度に少なくとも1つの閉塞されない基準を有することで十分である。
【0017】
基準マーカーは、所定の非対称な形状を有することができる。例えば、基準マーカーは1つのアームが欠けた星の形態をとることができる。非対称な形状は、高度に対称的な基準マーカーと比べて、絶対的な位置指標を与えることによる回転のエラー及び支持部又は検出器のピッチ又は傾斜に起因する歪みについて、より多くの情報を提供することができる。このような独特の形状はまた、各々の画像において明確に認識することができるという利点をも有し得る。
【0018】
しかしながら、処理を簡単にするために、はんだボールのような球状のマーカーを使用することができる。次いで、基準マーカー又は各々の基準マーカー要素が回転対称を有するという推定に基づいて、基準マーカーの予測される第2の画像を計算することができる。これにより、必要とされる画像処理が簡略化される。
【0019】
本発明の第2の態様において、ターゲット・オブジェクト上の対象領域の三次元表現を生成するシステムであって、
x線源と、
ターゲット・オブジェクト及び既知の幾何学的形状の基準マーカーを支持するように構成された支持部、及び、支持部を移動させるように構成された支持部搬送機構と、
x線検出器、及び検出器を移動させるように構成された検出器搬送機構と、
支持部搬送機構及び検出器搬送機構に接続されたモーション・コントローラと、
を含み、モーション・コントローラは、コマンド信号を支持部搬送機構に与えて対象領域及び基準マーカーを第1の位置から第2の位置に移動させ、かつ、コマンド信号を検出器搬送機構に与えて検出器を第1の検出位置から第2の検出位置に移動させるように構成され、対象領域及び基準マーカーが第1の位置にあり、検出器が第1の検出位置にあるとき、及び、対象領域及び基準マーカーが第2の位置にあり、検出器が第2の検出位置にあるとき、x線源からのx線が対象領域及び基準マーカーを通って検出器に伝送され、
検出器から信号を受信し、対象領域及び基準マーカーの画像を生成するように構成された、検出器に結合された画像プロセッサが設けられ、画像プロセッサは、
第2の位置における基準マーカーの予測される画像を計算し、
第2の位置における基準マーカーの予測される画像と、基準マーカーの第2の画像との比較を用いて、対象領域の修正された第2の画像を生成し、
対象領域の第1の画像、又は対象領域の第1の画像についての修正された画像データ、及び対象領域の修正された第2の画像を用いて、対象領域の三次元表現を生成する、
ように構成されるシステムを提供する。
【0020】
本システムは、検出器からの信号に基づいて画像データを表示するように構成された視覚ディスプレイと、ユーザ・インターフェースとをさらに含み、ユーザ・インターフェースは、ユーザがディスプレイ上の画像内から基準マーカーを選択することを可能にするように構成される。
【0021】
検出器搬送機構は、検出器が結合されるピボット運動可能な弓状の軌道を含むことができる。支持部搬送機構は、支持部が、3つの直交方向に独立して移動するのを可能にするように構成することができる。画像プロセッサは、本発明の第1の態様の方法ステップのいずれかを実行するように構成することができる。
【0022】
本発明の第3の態様において、コンピュータ可読ストレージ媒体が提供され、これにより、ユーザがx線画像形成装置を用いて本発明の方法を実施することが可能になる。このx線画像形成装置は、x線源と、対象領域及び既知の幾何学的形状の基準マーカーのための支持部を移動させる支持部搬送機構と、x線検出器と、検出器を移動させるように構成された検出器搬送機構と、支持部搬送機構及び検出器搬送機構に接続されたモーション・コントローラとを含み、モーション・コントローラは、コマンド信号を支持部搬送機構に与えて対象領域及び基準マーカーを第1の位置から第2の位置へ移動させ、かつ、コマンド信号を検出器搬送機構に与えて検出器を第1の検出位置から第2の検出位置に移動させるように構成され、対象領域及び基準マーカーが第1の位置にあり、検出器が第1の検出位置にあるとき、及び、対象領域及び基準マーカーが第2の位置にあり、検出器が第2の検出位置にあるとき、x線源からのx線が対象領域及び基準マーカーを通って検出器に伝送される。この装置が与えられると、コンピュータ可読ストレージ媒体は、x線画像形成装置に接続されたコンピュータ・プロセッサによって実行されるときに、コンピュータ・プロセッサに、
対象領域及び基準マーカーを選択するようにユーザに要求し、
受信した画像データに基づいて、第1及び第2の位置における対象領域及び基準マーカーの画像を生成させ、
第2の位置における基準マーカーの予測される画像を生成させ、
第2の位置における基準マーカーの予測される画像と、第2の位置における基準マーカーの画像との比較を用いて、第2の位置における対象領域についての修正された画像データを生成させ、
第1の位置における対象領域の画像、又は第1の位置における対象領域についての修正された画像データ、及び第2の位置における対象領域についての修正された画像データを用いて、対象領域の三次元表現を生成させる、
実行可能命令を格納する。
【0023】
コンピュータ可読ストレージ媒体はまた、x線画像形成装置に接続されたコンピュータ・プロセッサによって実行されたときに、モーション・コントローラの動作を制御する、実行可能命令を保持することもできる。コンピュータ可読ストレージ媒体はまた、x線画像形成装置に接続されたコンピュータ・プロセッサにより実行されたときに本発明の第1の態様の方法ステップのいずれかを実行する、実行可能命令を保持することもできる。
【0024】
本発明は、基準マーカーが、対象領域と共に移動されるときに対象領域に対して定位置を保持するように、対象領域に対して定位置に取り付けることができる1つ又はそれ以上の基準マーカーと組み合わせた、第3の態様に従ったコンピュータ可読ストレージ媒体を提供する。
【0025】
ここで本発明の実施形態が、一例として添付の図面を参照して詳細に説明される。