(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6124003
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】温泉熱発電システム
(51)【国際特許分類】
F03G 4/00 20060101AFI20170424BHJP
F01K 25/10 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
F03G4/00 511
F03G4/00 521
F01K25/10 C
F01K25/10 K
F01K25/10 R
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-80032(P2013-80032)
(22)【出願日】2013年4月7日
(65)【公開番号】特開2014-202150(P2014-202150A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】515034998
【氏名又は名称】ソリューション・クリエイターズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松島 廣明
(72)【発明者】
【氏名】志田 貴行
(72)【発明者】
【氏名】川端 康晴
【審査官】
瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−235537(JP,A)
【文献】
特開平2−267304(JP,A)
【文献】
特開昭57−112697(JP,A)
【文献】
特開2010−169369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 23/00−27/02
F03G 4/00
F22B 1/16
F24F 5/00
F24J 3/08
F25B 27/00
F28D 1/00
F28G 1/00−15/10
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電用媒体を温泉熱によって蒸発させ、膨張タービン等に導いて発電機を駆動した後に、タービン通過後の媒体蒸気を冷却して凝縮液化させ、再び温泉熱によって蒸発させる循環閉ループ流路を構成する温泉熱発電システムのうち、
前記発電システムを構成する媒体加熱用の熱交換器が、温泉貯湯タンク内への挿入及び貯湯タンクからの取り出しを容易に行えるように構成した熱交換器であり、発電用媒体を、貯湯タンク内で直接熱交換によって蒸発させることを特徴とする、温泉熱発電システム。
【請求項2】
発電用媒体を温泉熱によって蒸発させ、膨張タービン等に導いて発電機を駆動した後に、タービン通過後の媒体蒸気を冷却して凝縮液化させ、再び温泉熱によって蒸発させる循環閉ループ流路を構成する温泉熱発電システムのうち、
前記発電システムの発電用媒体を蒸発させるための熱媒が、温泉貯湯タンク内への挿入及び貯湯タンクからの取り出しを容易に行えるように構成した熱交換器と、前記発電システム内の発電用媒体蒸発器とを結ぶ閉ループ流路を循環し、この熱媒と発電システム内を循環する発電用媒体とを熱交換させることで、貯湯タンク内の温泉湯を熱源として、発電用媒体を蒸発させることを特徴とする、温泉熱発電システム。
【請求項3】
発電用媒体を温泉熱によって蒸発させ、膨張タービン等に導いて発電機を駆動した後に、タービン通過後の媒体蒸気を冷却して凝縮液化させ、再び温泉熱によって蒸発させる循環閉ループ流路を構成する温泉熱発電システムのうち、
前記媒体蒸気冷却用の冷却水を得るために駆動する、温泉熱利用型冷凍機の駆動熱源が、温泉貯湯タンク内への挿入及び貯湯タンクからの取り出しを容易に行えるように構成した熱交換器と、前記冷凍機内の熱交換器とを結ぶ閉ループ流路内を循環する熱媒とし、この熱媒を利用することで、貯湯タンク内の温泉湯を熱源として、発電用媒体の冷却水を得ることを特徴とする、温泉熱発電システムの冷却水調達方法
【請求項4】
発電用媒体を温泉熱によって蒸発させ、膨張タービン等に導いて発電機を駆動した後に、タービン通過後の媒体蒸気を冷却して凝縮液化させ、再び温泉熱によって蒸発させる循環閉ループ流路を構成する温泉熱発電システムのうち、
前記膨張タービン下流の筐体表面を、前記請求項3に記載の冷却水を循環供給して水冷するか、膨張タービン排気口に接続された水冷式熱交換器に、前記冷却水を循環供給して水冷することにより、タービン通過後の媒体蒸気を、温泉熱利用によって得られる冷却水を用いて直接水冷することを特徴とする、温泉熱発電システムの発電用媒体冷却方法。
【請求項5】
請求項1に記載の温泉熱発電システムのうち、前記熱交換器を、貯湯タンクの天面から出し入れできるようにするとともに、この熱交換器の鉛直上方に膨張タービンを接続配置させ、さらにこの膨張タービンの鉛直上方にタービン発電機を配置させる一方、前記膨張タービンの筐体表面か、前記膨張タービンの下方で、かつ前記貯湯タンク天面の上方に、タービン通過後の媒体蒸気を冷却する熱交換器を配置することで、貯湯タンク内の熱交換器に凝縮液化した媒体を流下させて気化上昇させ、タンク上部の膨張タービンを駆動した後にタンク上部で熱交換器を介して凝縮液化させ、液化した媒体をタンク内の熱交換器に再び流下させて気化上昇させる、閉ループ循環流路型の温泉熱発電を貯湯タンクの上部に構成できるよう、発電システムの構成機器を貯湯タンク上部に配置したことを特徴とする、
温泉貯湯槽活用型の温泉熱発電システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温泉熱を利用して水やペンタンなどの低沸点媒体を蒸発気化させ、膨張タービン等を駆動して発電を行う、温泉熱発電システムに関する。特に、既存の源泉施設内に充分な機器設置スペースがなく、また発電媒体の冷却水確保が困難な場所においても簡易に利用できる、高効率な温泉熱発電システムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
地熱発電の一種である温泉熱発電は、地球の高温マグマ層を熱源とし、発電過程において燃料消費や温室効果ガスの排出を伴わないことから、エネルギー自給率の向上や温暖化防止に資する発電手段として近年注目されている。
【0003】
温泉熱発電の代表としては、アンモニア水や代替フロンなどの低沸点媒体を、源泉湯との熱交換により蒸発気化させ、蒸気タービンを駆動して発電を行うバイナリー発電方式が広く知られているが、源泉湯に炭酸カルシウム等の成分が多量に含まれる場合、これらが発電システム内の蒸発器や温泉配管内でスケールとして析出付着することが多い。
【0004】
発電システムの温泉配管や熱交換器内でスケールが付着すると、流路面積の減少や閉塞によって発電用媒体を加熱する温泉の供給量が減少して熱交換効率が低下するため、発電出力が減少するとともに、機器が故障するリスクも高まってしまう。
【0005】
このようなスケール付着の防止法としては、加水や薬剤注入などが挙げられるが、何れも冷却水の確保や薬剤の常時供給などに多大なコストを要する。特に加水によるスケール防止については、水の確保や常時供給が必要となるとともに、加水自体が源泉温度を低下させてしまうため、温泉発電では発電出力をさらに低下させてしまうという課題がある。
【0006】
近年、これらの課題を解決するため、発電用の低沸点媒体を加熱するための熱媒を循環させ、この熱媒と源泉湯を、発電システムの外側に別途設置する熱交換器を用いて熱交換させる、間接熱交換方式も提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「株式会社神戸製鋼所/マイクロバイナリーの発電システムフロー」、[平成25年4月6日検索]、インターネット、<URL:http://www.kobelco.co.jp/machinery/products/rotation/microbinary/systemflow.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記の通り、従来技術の間接熱交換方式を採用すれば、スケール付着による影響を防止することが可能となるものの、解決すべき5つの課題がある。
【0009】
まず、発電用媒体を蒸発気化させるための熱交換が間接熱交換となるため、それぞれの熱交換部分や熱媒配管流路などで熱損失が生じ、源泉熱を直接利用する場合よりも熱交換効率が低下し、結果として発電効率が低下してしまうという課題がある。
【0010】
また、間接熱交換器と発電システム内の蒸発器とを循環させる、熱媒循環ポンプの駆動動力が必要となるほか、源泉施設から間接熱交換器にポンプを用いて温泉を圧送する場合には、温泉送出ポンプの動力が必要となり、これらも発電効率を低下させる課題がある他、温泉送出ポンプにはスケール析出による故障発生リスクが伴うという課題がある。
【0011】
加えて、温泉を流す間接熱交換器の流路内にスケール付着が起こるため、定期的に間接熱交換器を点検、清掃する必要性が生じてしまう。特に間接熱交換器の内部は流路が狭く複雑なため、温泉成分の滞留によるスケール析出が起こりやすく、温泉成分や使用条件によっては分解清掃作業の頻度が多くなり、大きな負担となってしまう課題がある。
【0012】
また、従来技術では発電媒体を凝縮液化させるために多量の冷却水を必要とする一方、温泉地帯によっては地下水温度が上昇するため、充分な冷却水確保ができずに発電が困難となる課題や、冷却水輸送に多大な動力を消費して発電効率が大幅に低下する課題がある。
【0013】
さらに従来技術では、発電媒体を内部循環させるため、凝縮液化した媒体を循環ポンプにより蒸発器に圧送するが、この搬送動力によって発電効率が更に低下する課題がある。
【0014】
本発明は、これらの課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、機器の設置場所が狭い既存の源泉施設でも、また、温泉熱発電に必要な多量の冷却水確保が困難な場所でも発電が可能で、間接熱交換器のスケール閉塞に伴う故障リスクと分解清掃の負担を軽減し、さらに発電媒体の冷却や搬送動力による発電効率の低下を抑えながら高効率に発電を行う、温泉貯湯槽活用型の新しい温泉熱発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
発電用媒体を温泉熱によって蒸発させ、膨張タービン等に導いて発電機を駆動した後に、タービン通過後の媒体蒸気を冷却して凝縮液化させ、再び温泉熱によって蒸発させる循環閉ループ流路を構成する温泉熱発電システムのうち、
前記発電システムを構成する媒体加熱用の熱交換器が、温泉貯湯タンク内への挿入及び貯湯タンクからの取り出しを容易に行えるように構成した熱交換器であり、発電用媒体を、貯湯タンク内で直接熱交換によって蒸発させることを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明は、
発電用媒体を温泉熱によって蒸発させ、膨張タービン等に導いて発電機を駆動した後に、タービン通過後の媒体蒸気を冷却して凝縮液化させ、再び温泉熱によって蒸発させる循環閉ループ流路を構成する温泉熱発電システムのうち、
前記発電システムの発電用媒体を蒸発させるための熱媒が、温泉貯湯タンク内への挿入及び貯湯タンクからの取り出しを容易に行えるように構成した熱交換器と、前記発電システム内の発電用媒体蒸発器とを結ぶ閉ループ流路を循環し、この熱媒と発電システム内を循環する発電用媒体とを熱交換させることで、貯湯タンク内の温泉湯を熱源として、発電用媒体を蒸発させることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明は、
発電用媒体を温泉熱によって蒸発させ、膨張タービン等に導いて発電機を駆動した後に、タービン通過後の媒体蒸気を冷却して凝縮液化させ、再び温泉熱によって蒸発させる循環閉ループ流路を構成する温泉熱発電システムのうち、
前記媒体蒸気冷却用の冷却水を得るために駆動する、温泉熱利用型冷凍機の駆動熱源が、温泉貯湯タンク内への挿入及び貯湯タンクからの取り出しを容易に行えるように構成した熱交換器と、前記冷凍機内の熱交換器とを結ぶ閉ループ流路内を循環する熱媒とし、この熱媒を利用することで、貯湯タンク内の温泉湯を熱源として、発電用媒体の冷却水を得ることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明は、
発電用媒体を温泉熱によって蒸発させ、膨張タービン等に導いて発電機を駆動した後に、タービン通過後の媒体蒸気を冷却して凝縮液化させ、再び温泉熱によって蒸発させる循環閉ループ流路を構成する温泉熱発電システムのうち、
前記膨張タービン下流の筐体表面を、前記請求項3に記載の冷却水を循環供給して水冷するか、膨張タービン排気口に接続された水冷式熱交換器に、前記冷却水を循環供給して水冷することにより、タービン通過後の媒体蒸気を、温泉熱利用によって得られる冷却水を用いて直接水冷することを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明は、
請求項1に記載の温泉熱発電システムのうち、前記熱交換器を、貯湯タンクの天面から出し入れできるようにするとともに、この熱交換器の鉛直上方に膨張タービンを接続配置させ、さらにこの膨張タービンの鉛直上方にタービン発電機を配置させる一方、前記膨張タービンの筐体表面か、前記膨張タービンの下方で、かつ前記貯湯タンク天面の上方に、タービン通過後の媒体蒸気を冷却する熱交換器を配置することで、貯湯タンク内の熱交換器に凝縮液化した媒体を流下させて気化上昇させ、タンク上部の膨張タービンを駆動した後にタンク上部で熱交換器を介して凝縮液化させ、液化した媒体をタンク内の熱交換器に再び流下させて気化上昇させる、閉ループ循環流路型の温泉熱発電を貯湯タンクの上部に構成できるよう、発電システムの構成機器を貯湯タンク上部に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、温泉熱発電に必要な機器の設置場所が狭い既存の源泉施設でも、また、温泉熱発電に必要な多量の冷却水確保が困難な場所でも、間接熱交換器のスケール閉塞に伴う故障のリスクと分解清掃の負担を軽減し、更に発電媒体の冷却や搬送動力による発電効率の低下を抑えながら、高効率に温泉熱発電を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る第1実施形態の温泉熱発電システムの概略構成例を示す断面模式図である。
【
図2】
図1の発電システムを構成する貯湯タンク挿入型熱交換器の配置と、凝縮媒体の供給内管配置、および発電媒体の蒸気を集める蒸気ヘッダーの詳細を示す模式図である。
【
図3】
図1の発電システムを構成する膨張タービンと、前記タービンから排出される媒体蒸気を凝縮液化させる水冷式熱交換器の配置と、前記熱交換器に供給する冷却水の循環流路の詳細を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、本実施形態に限定されるものではない。
【0024】
まず、本発明の第1実施形態に係る温泉熱発電システムの概略構成および機能について、図に基づき説明する。
【0025】
図1に示すように、本発明の温泉熱発電システムは、温泉を貯湯する源泉施設内の貯湯タンク1のタンク内に、前記貯湯タンクの天面から挿入され、タンク内への挿入やタンクからの取り出しを容易に行えるように構成した、発電媒体の直接熱交換器2と、前記直接熱交換器から生じる発電媒体蒸気を集める蒸気ヘッダー3と、この蒸気ヘッダーの集合管に接続された膨張タービン4と、この膨張タービンに接続された発電機5と、前記膨張タービンの排気蒸気を凝縮液化させる水冷式熱交換器6と、前記熱交換器から出る発電媒体の液体を前記直接熱交換器2の中に流下あるいは滴下させる媒体供給管7から構成される。
【0026】
なお、前記の水冷式熱交換器6に供給される循環冷却水は、前記貯湯タンクの側面から挿入された熱媒循環流路8に接続された、温泉熱駆動型の吸着式冷凍機9と、前記冷凍機に接続された密閉式クーリングタワー10の駆動によって得られるものである。
【0027】
ここで、前記発電媒体の直接熱交換器2と、その上部に接続された蒸気ヘッダー3と、さらにその上部に接続された膨張タービン4と、この膨張タービン軸に接続された発電機5と、前記膨張タービンから排出された媒体蒸気を凝縮液化するための水冷式熱交換器6は、全て温泉を貯湯する源泉施設内の貯湯タンク1の蓋となる貯湯タンク天板11の上に配置固定され、さらにこの貯湯タンク天板11は、貯湯タンク周囲に設置したガイドレール付きの天板支柱12によって保持されており、必要時にはチェーンブロック等を用いて直接熱交換器2を含む発電システム構成機器をタンク上部に吊り上げ、直接熱交換器2の表面に付着した温泉スケールの除去等、メンテナンスを容易に行えるよう構成している。
【0028】
このように、発電システムの構成機器を配置し、発電媒体の熱交換器を貯湯タンク内に挿入設置することで、温泉熱による媒体直接交換を行うことで、発電システム内のスケール析出リスクをなくし、更に温泉の流動や空気接触による熱交換器表面のスケール析出も抑えながら、発電媒体をタンク内で蒸発気化させて速やかに膨張タービンに導入して発電させ、発電後の媒体蒸気を温泉熱利用によって得た冷却水によって効率よく直接冷却することで凝縮液化し、得られた媒体をそのまま流下させて再び貯湯タンク内の媒体熱交換器に還流させる閉ループ循環流路を構成することで、発電システム全体の熱交換効率を高め、媒体循環流路の短縮により搬送動力も削減し、高効率な温泉熱発電を行えるようになる。
【0029】
また、温泉熱発電に不可欠な冷却水についても、密閉式クーリングタワーの補水だけとすることで、冷却水必要量を大幅に削減し、さらに温泉熱を活用することで得られる冷熱を発電システムに利用するように構成することで、冷却水の確保が困難な地域でも温泉熱発電を容易に行うことができるようになる。
【0030】
さらに発電システムを簡素化し、その構成機器を貯湯タンク上部の空きスペースを活用して設置することで、貯湯タンク周囲を含む源泉施設内での機器設置は、吸着式冷凍機と密閉式クーリングタワーだけとし、機器設置面積を減少させることで、機器設置スペースを充分に確保できない場所でも温泉熱発電を行うことが可能となる。
【0031】
なお、
図1に示す発電媒体の直接熱交換器2の外側表面は、貯湯タンク内での源泉直接熱交換にあたり、高い熱効率と各種温泉成分への耐性が求められることから、熱伝導率と耐食性が良好なシリコンカーバイド製の熱交換器やシリコンカーバイド等の耐熱・耐食材で外側表面をコーティングした伝熱管を利用することが望ましい。また、媒体漏えい時の安全性から、発電用媒体としては無害な代替フロンやアルコール類のほか、水を選択することもできるが、沸点の高い水を利用する場合は、必要に応じて発電システムを構成する循環閉ループ流路全体を内部減圧することで、媒体の沸点を下げて運用しても良い。
【0032】
また、前記直接熱交換器から生じる発電媒体の蒸気を集める蒸気ヘッダー3は、
図2に示す通り複数の管式熱交換器から生じる媒体蒸気を膨張タービン入口に集約して供給する
場合に必要となるが、貯湯タンク内に蒸気排出管一つを有する大型熱交換器を挿入できる場合には、蒸気ヘッダーを省略して媒体蒸気の圧力損失を低減させて膨張タービンに導入することが望ましい。
【0033】
なお、前記膨張タービン4としては、軸流タービンの他、スクロール式の膨張タービンなど、媒体の高圧蒸気を中心から導入し、タービンの筐体外側に近づくほど低圧膨張して排出される流路を構成する機器が好ましく、この場合はタービン筐体の外側に水冷流路を設けて冷却水を供給し、タービン排気口付近で直接媒体蒸気を凝縮液化する構成とすれば、水冷熱交換部分をタービン筐体と一体化、または近接させることができ、さらなる装置のコンパクト化と効率向上を実現することができる。
【0034】
なお、前記の冷却水については、現地で充分な冷水を容易に確保できる場所においては、調達冷水の直接供給によって冷却を行えば良いが、冷水の確保が困難な場所においては、貯湯タンク内に別途設置した閉ループ熱交換器で得られる温泉熱を熱源として、吸着式か吸収式の冷凍機を駆動し、この冷凍機から得られる冷却水を循環させて媒体の凝縮液化に利用することで、温泉熱で得られる冷熱を有効活用し、冷熱必要量を最小限に抑えながら、温泉熱発電を行えるよう、機器を構成すれば良い。
【0035】
また、媒体蒸気の凝縮液は、そのまま貯湯タンク内の直接熱交換器に向けて流下あるいは滴下できることが望ましいが、搬送動力が不足して効率よく発電が行えない場合には、凝縮液流路に、発電電力を利用して駆動する、補助的な媒体循環ポンプを設置すればよい。
【0036】
このように、本発明の温泉熱発電システムを構成すれば、発電用媒体を貯湯タンク内で直接熱交換により蒸発気化させ、タンク上部で速やかに膨張タービンを駆動して発電した後に水冷して凝縮液化させ、そのままタンク上部から貯湯タンクへ流下させる、閉ループ循環流路を構成することで、コンパクトで高効率な温泉熱発電システムを構成することが可能となるのである。
【0037】
また、温泉熱発電に不可欠な多量の冷却水確保についても、温泉熱を活用して得られる冷熱を活用するシステムを構成することで、冷却水の確保が困難な場所であっても、温泉熱発電を容易に行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば太陽熱を効率良く集熱することで得られる高温の温水貯湯タンクや、森林間伐材等の燃焼によって得られる高温水の貯湯タンク、工場に設置された温水タンクやオイルタンク、薬液タンクなどでも適用可能である。このように、前記の実施形態は例示であり、本発明の特許請求範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0039】
1:源泉貯湯タンク
2:貯湯タンク内挿入型熱交換器
3:発電媒体蒸気ヘッダー
4:膨張タービン
5:発電機
6:発電媒体冷却用水冷式熱交換器
7:発電媒体供給管
8:貯湯タンク内熱交換器付き熱媒循環流路
9:温泉熱駆動型の吸着式冷凍機
10:密閉式クーリングタワー
11:発電機器を構成した源泉貯湯タンク天板
12:ガイドレール付き貯湯タンク天板支持柱