(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
貫通する透孔を有する回転ターレットと、前記回転ターレットに対向して固定フレーム側に設けられる可動板と、缶体の胴部を支持する缶体保持部材と、缶体の内部に漏れ出た光を検出する光検出器と、前記缶体の外周面に光を照射する光源と、を備える缶体のピンホール検査装置であって、
前記回転ターレットの全外周領域に、所定の間隔を有して対峙して設置される一対の遮蔽部から形成し、前記一対の遮蔽部は、第1遮蔽部及び第2遮蔽部からなり、第1遮蔽部は回転する回転ターレットに、第2遮蔽部は回転ターレットの側面部と略対向する位置に固定的に設置させて迂回路を遮蔽する機構として設けたことを特徴とする缶体のピンホール検査装置。
前記一対の遮蔽部は、第1遮蔽部及び第2遮蔽部からなり、前記各遮蔽部に設けられる遮蔽部材が、対向する前記各遮蔽部の筒部に向けて交互に突出するよう配列される請求項1に記載の缶体のピンホール検査装置。
【背景技術】
【0002】
金属缶体、例えば、絞りしごき成形によって作られるシームレス缶体(以下、単に缶体と略称する。)の製造工程において、前記缶体の胴部等に孔や亀裂等のピンホールが発生することがある。前記ピンホールの有無は、前記缶体の検査工程において用いられるピンホール検査装置によって検査されることが一般的である。
【0003】
特許文献1に示されたピンホール検査装置は、
図10に示されるように、右側が検査される缶体を保持する検査ターレット、左側が缶体内部検出装置で構成されている。また、摺動リング板と摺接して摺接面をシールする封緘リング板が固定されているピストン状封緘部材が、摺動リング板側の第1フレームの先端面に摺動可能に設けられている。これにより、ピンホール検査時に高速回転する摺動リング板に対しピストン状封緘部材をエアー圧により付勢させて、摺接面におけるシール効果を高め、外光及び光源光等からなる外乱光が、前記摺動面から光検出器側に漏れ入ることを阻止している。
【0004】
前述の通り、ピンホール検査中は、高速回転する摺動リング板に封緘リング板を押圧状態とするため、通常は封緘リング板と摺動リング板の摺動面から外乱光が光検出器に到達することはない。しかしながら、種々の要素、例えば何らかの外力が加わる、又は封緘リング板及び摺動リング板の表面状態等に起因して、両部材の間に瞬間的に間隙を生じて、前記間隙からの外乱光が光検出器に到達し、良品を不良品として誤検出してしまうおそれがあった。
【0005】
また、光検出器の性能上、従来の缶体のピンホール検査装置の検査対象となるピンホール径は20μm程度であり、更に小径のピンホールの有無を検査する場合、ピンホールから缶体内へ侵入する光が微弱となり、検知可能な光量に達しないおそれがある。ここで、従来よりも高光度の光源を用いて光検出器が検知可能な光量を確保する方法が考えられるが、従来の装置構成では外乱光の対策が十分に取られておらず、光量の増加に起因する誤検出の発生率が高まるおそれがあった。
尚、特許文献2には、黒色シリコーン樹脂が塗布されたアルミニウムからなる周縁部及び内縁部が光源からの光を遮蔽することが、また特許文献3には、光源からの光を遮断して可動板と回転ディスクとの間に光が侵入することを防止できる光遮蔽部(カバー)が記載されているが、前述の各構成では外乱光が周縁部及び内縁部、及び光遮蔽部(カバー)を迂回して、可動板と回転ディスクとの間から光検出器側に到達するおそれがあり、未だ前述の問題を十分に解決するには至っていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の問題を踏まえ、本発明の第一の目的は、表面状態等に起因して生ずる可動板と回転ターレットとの間隙から光検出器側に外乱光が入ることを有効に防止することができる缶体のピンホール検査装置を提供することにある。また、第二の目的は、前記第一の目的を達成することで高光度の光源を用いることが可能となって、更に小径のピンホールを検出することが可能となり、検査精度が更に向上した缶体のピンホール検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の缶体のピンホール検査装置は、貫通する透孔を有する回転ターレットと、前記回転ターレットに対向して固定フレーム側に設けられる可動板と、缶体を載置する缶体保持部材と、缶体の内部に漏れ出た光を検出する光検出器と、前記缶体に光を照射する光源と、を備える缶体のピンホール検査装置であって、前記回転ターレットの全外周領域に、所定の間隔を有して対峙して設置される一対の遮蔽部から形成される迂回路を遮蔽機構として設けたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の缶体のピンホール検査装置は、以下の形態を採用することができる。
1.前記一対の遮蔽部は、第1遮蔽部及び第2遮蔽部からなり、第1遮蔽部は回転する回転ターレットに、第2遮蔽部は回転ターレットの側面部と略対向する位置に固設される。
2.前記一対の遮蔽部は、第1遮蔽部及び第2遮蔽部からなり、前記各遮蔽部に設けられる遮蔽部材が、対向する前記各遮蔽部の筒部に向けて交互に突出するよう配列される。
3.前記遮蔽部材が、対向する前記各遮蔽部の筒部に向けて垂直に突出するように形成された遮蔽板である。
4.前記遮蔽部材と対峙する遮蔽部材との間隔が5mm以下である。
5.前記遮蔽部材と、対峙する遮蔽部材とのオーバーラップ量が9mm以上である。
6.前記可動板の表面に、該可動板の貫通孔と同心円状に複数の断面矩形状の環状溝を遮蔽機構として設ける。
7.缶体の外周面に光を照射する光源を備え、前記光源に白色LED光を用いる。
8.前記缶体保持部材は、ロッドを介してチャックの支持軸に固定される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の缶体のピンホール検査装置は、入り組んだ構造の迂回路を遮蔽機構として設けたことにより、迂回路の伝搬過程で外乱光を減衰又は遮蔽することが可能となり、可動板と回転ターレットの間隙から光検出器側に外乱光が入ることを有効に防止することができる。
【0011】
また、前記一対の遮蔽部は、第1遮蔽部及び第2遮蔽部からなり、第1遮蔽部は回転する回転ターレットに、第2遮蔽部は固定フレームを覆うケース端部に取り付けられる構成とすることにより、前記一対の遮蔽部の有する所定の間隔が安定して、迂回路の伝搬過程で外乱光を安定して減衰又は遮蔽することが可能となるとともに、遮蔽部同士の接触を有効に防止することができる。
また、第1遮蔽部及び第2遮蔽部に設けられる遮蔽部材が、対向する前記各遮蔽部の筒部に向けて交互に突出するよう配列されることにより、外乱光の伝搬経路を長くとることができ、効果的に外乱光を減衰又は遮蔽することが可能となる。
また、前記遮蔽部材が、対向する前記各遮蔽部の筒部に向けて垂直に突出するように形成された遮蔽板であるので、対峙して設置される一対の遮蔽部の取り付け作業が容易、かつ前記遮蔽部同士の接触が防止される。また、遮蔽部材を薄い板状部材とすることで、各遮蔽部に形成可能な遮蔽部材の個数を増やし、限られた範囲内で迂回路をより入り組んだ構造とすることができ、外乱光の減衰又は遮蔽効果をより高めることが可能となる。
【0012】
また、前記遮蔽部材と対峙する遮蔽部材との間隔が5mm以下であることにより、回転ターレットの回転に起因する第1遮蔽部及び第2遮蔽部の接触を防止するとともに、迂回路の伝搬経路を幅狭とすることができ、より効果的に外乱光を減衰又は遮蔽することができる。
また、前記遮蔽部材と、対峙する遮蔽部材とのオーバーラップ量が9mm以上であることにより、外乱光の減衰又は遮蔽効果を更に高めることができる。
また、前記可動板の表面に、断面矩状の環状溝から成る遮蔽機構を形成することにより、高速回転する回転ターレットと可動板との間隙から侵入した外乱光が、前記環状溝の空間に到達する毎に減衰又は吸収されて、可動板に形成された貫通孔に至る光量を効果的に低減して、光検出器側に外乱光が到達することを有効に防止することができる。このため、前記した回転ターレットの全外周領域に設けた遮蔽機構と併設することにより、前記外乱光の減衰又は遮蔽効果を更により一層高めることができる。
また、本発明の缶体のピンホール検査装置によれば、高光度の光源を用いることが可能となったので、缶体の外周面に光を照射する光源を備え、前記光源に従来の蛍光灯に換え白色LED光を用いることにより、光検出器側に外乱光が入ることを有効に防止しつつ、更に小径(数μm程度)のピンホールの検出を可能となる。
さらに、チャックの支持軸に固定されたロッドに取付けられる缶体保持部材を用いることで、検査ターレット(スターホイール)が不要となって缶体に光を照射する光源(特に下部光源)の設置の自由度が広がるため、光源を増設して光量を増加させることが可能となる。また、回転ターレットに対して軸方向に移動する缶体の胴部が、検査ターレットのポケットの端面と摺動して生じる不具合、例えば缶体の胴部の傷、凹み等、を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の缶体のピンホール検査装置の一実施形態を説明する。
図1は、本発明の缶体のピンホール検査装置で、缶体の検査形態を説明する概略図であって、供給ターレット2によって検査ターレット3のポケット3aに供給された缶体1が、X方向に連続回転する検査ターレット3によって後述する光源10a,bが配置された検査ステーションAに搬送されて良否判定が行われた後、送出ターレット4によって次工程に送出される手順を示している。
【0016】
図2は、本発明の缶体のピンホール検査装置の検査領域を示す図である。
本発明の缶体のピンホール検査装置は、検査ターレット3、回転ターレット5、チャック6、光源10(10a,10b)を備えている。検査ターレット3は、一般的にスターホイールと称され、缶体1を戴置する缶体保持部材であり、その外周縁部には缶体1の胴部を戴置可能な凹部であるポケット3aが複数形成されている。回転ターレット5は、その両面間を貫通する透孔8を複数有し、一端が開放した缶体1の開口端が押しつけられるスポンジ質の開口部受け部7が、透孔8の一方の周縁に取付リング7aを介して取り付けられている。チャック6は、缶体1の底部をバキューム吸引によって支持する部材であり、支持軸9に固定して回転ターレット5に対向するように設けられる。また、図示しないカム及びカムフォロワーにより、回転ターレット5の開口受け部7に缶体1の開口端が密着するよう、チャック6及び支持軸9は回転ターレット5に対して軸方向に移動可能となっている。
さらに、固定フレーム11はケーシング12で覆われ、その内部には、回転ターレット5と対向し、缶体1の内部に漏れ出た光を検出する高感度の光電子増倍管(フォトマル)等の光検出器13が、透孔8及び後述する可動板20の貫通孔21と同軸上に設けられている。
【0017】
また、前記形態において、ポケット3a及びチャック6によって、保持及び支持された缶体1が固定フレーム11側に設置された光検出器13に対峙する位置(検査ステーションA)に移動した時に、缶体1の胴部に上下方向から光を照射する光源10a,10bが配置されている。光源10aには、光源からの光が装置外方に漏れることを防止するカバー10cが取付けられている。
この種のピンホール検査の光源としては、紫外線から赤外線までの全領域波長を有する白色光が好ましく、本実施形態では高光度の光源として白色LEDライトを採用し、それを複数個配列させている。これにより、後述の遮蔽機構によって光検出器13側に外乱光が入ることを有効に防止しつつ、検査精度を上げてより小さなピンホールの検出を可能としている。
【0018】
また、可動板20は回転ターレット5に対向して設けられ、中央に貫通孔を有するピストン部材22、リング板25及び摺動部材26からなる各部材の総称であり、筒状の脚部23と頂面板24からなるピストン部材22の前記頂面板24には、リング板25がボルトによって固定されている。さらに、このリング板25の天面には、回転ターレット5との摺動がスムーズに行われるよう、黒色非光沢かつ低摩擦係数で比較的柔軟なプラスチック、例えば弗素樹脂系軟質プラスチックからなる摺動部材26が接着されている。
尚、本実施形態のように、摺動部材26はピストン部材22の頂面板24に固定されるリング板25に接着させることが望ましいが、ピストン部材22の頂面板24に直接摺動部材26を接着することも可能である。
【0019】
また、ピストン部材22の脚部23は、固定フレーム11に形成された嵌合ガイド溝に嵌合されており、エアー圧によってピストン作用で回転ターレット5側に進退可能とされている。また、脚部23と該嵌合ガイド溝の摺動部の密封を図るために、脚部23の内外周部には一対のオーリングが設けられている。このような構成とすることにより、可動板20を付勢して回転ターレット5と摺接させて摺接面をシールし、外乱光が摺動面から光検出器13側に漏れ入ることを防止している。
【0020】
そして、連続回転により順次搬送されてくる缶体1を検査する場合、ポケット3aに保持された缶体1はチャック6によって自転可能に支持されつつ、その開口端が回転ターレット5の開口部受け部7に密接した状態となる。その後、検査ステーションAにおいて光源10a,bの照明を受けながら、回転ターレット5の透孔8が、可動板20の貫通孔21と同軸上で一致したタイミング(検出位置)で、缶体1内に漏れ出た光が光検出器13で受光され、その明度によってピンホールの有無を判定する構成が採られている。
【0021】
また、本実施形態では、回転ターレットの全外周領域に、所定の間隔を有して対峙して設置される一対の遮蔽部から形成される迂回路を遮蔽機構として設けている。すなわち、入り組んだ構造の迂回路を遮蔽機構として設けたことにより、迂回路の伝搬過程で外乱光を減衰又は遮蔽することが可能となり、可動板と回転ターレットとの間から光検出器側に外乱光が入ることを有効に防止することができる。
【0022】
図2及び
図3に示すように、前記一対の遮蔽部は、回転ターレット5側にボルト等を介して取り付けられる第1遮蔽部30と、回転ターレット5の側面部と略対向する位置、本実施形態では固定フレーム11を覆うケーシング12の先端部に固設される第2遮蔽部40からなる。これにより、前記一対の遮蔽部の有する所定の間隔が安定して、迂回路の伝搬過程で外乱光を安定して減衰又は遮蔽することが可能となるとともに、遮蔽部同士の接触を有効に防止することができる。
【0023】
より具体的には、第1遮蔽部30は、回転ターレット5の全外周領域を取り巻くとともに、回転ターレット5の厚み方向に沿って所定の長さを有する筒部31、及びその筒部31の表面から第2遮蔽部40に向けて突出するように取り付けられる複数の遮蔽部材32a,32bを有している。また、第2遮蔽部40は、回転ターレット5の側面部の外周領域を取り巻くとともに、回転ターレット5の厚み方向に沿って所定の長さを有する筒部41、及びその筒部41の表面から第1遮蔽部30に向けて突出するように取り付けられる複数の遮蔽部材42a,42bからなる。
そして、第1遮蔽部30及び第2遮蔽部40、すなわち、筒部31, 41、各々の遮蔽部材32a,32b及び遮蔽部材42a,42b(以下遮蔽部材32,42と称す)は、各々が所定の間隔を有して非接触かつ対峙するように配置されており、回転ターレット5の回転に干渉しない構造となっている。また、本遮蔽機構はアルミニウム、スチール等の金属部材からなり、外乱光を吸収し反射率が低くなるように非光沢の黒色に表面処理がなされている。
【0024】
図4を用いて、本発明の回転ターレットの全外周領域に設けた第1遮蔽部及び第2遮蔽部からなる遮蔽機構の効果を考察する。
本実施形態では、第1遮蔽部30に遮蔽部材32が2箇所(32a,32b)、第2遮蔽部40に遮蔽部材42が2箇所(42a,42b)に取り付けられ、一方の遮蔽部材と対峙する他方の遮蔽部材との間隔l1を有するとともに、対向する前記各遮蔽部の筒部に向けて交互に突出するよう配列されている。このような構成とすることで、外乱光の伝搬経路を長くとることができ、効果的に外乱光を減衰又は遮蔽することが可能となる。
【0025】
さらに、遮蔽部材32,42を、対向する各遮蔽部30,40の筒部31,41に向けて垂直に突出するように形成された遮蔽板とすることで、対峙して設置される一対の遮蔽部30,40の取り付け作業が容易、かつ遮蔽部30,40同士の接触が防止される。また、遮蔽部材32,42を薄い板状部材とすることで、各遮蔽部30,40に形成可能な遮蔽部材32,42の個数を増やし、限られた範囲内で迂回路をより入り組んだ構造とすることができ、外乱光の減衰又は遮蔽効果をより一層高めることが可能となる。
【0026】
前記間隔l1は、その間隔が短いほど遮光効果は高くなり、また、遮蔽部材32,42の個数が多いほど遮光効果は高くなる。さらに、遮蔽部材32,42は、筒部31及び41間の距離l2の1/2以上の長さを有し、遮蔽部材32a,32bと、対峙する遮蔽部材42a,42bとがオーバーラップするように形成されており、このオーバーラップ量l3は、その量が大きいほど遮光効果は高くなる。
本実施形態では、間隔l1が5mm以下、また、間隔l1を5mmと設定した場合にオーバーラップ量l3を9mm以上とすることで、回転ターレット5の回転に起因する第1遮蔽部30及び第2遮蔽部40の接触を防止するとともに、迂回路の伝搬経路を幅狭とすることができ、より効果的に外乱光を減衰又は遮蔽することができる。間隔l1が5mmを越えると、迂回路の伝搬経路が大きくなり、またオーバーラップ量l3が9mm未満であると、迂回路の伝搬経路の長さが短くなり、効果的に外乱光を減衰又は遮蔽することが難しくなるおそれがある。
尚、遮蔽部材32,42は、回転ターレット5の回転を阻害しない範囲に於いて、適宜の長さ、間隔、及び角度で設定することができる。
【0027】
また、遮蔽対象となる外乱光は光源10a,10bから照射された直接光、及び缶体1又はピンホール検査装置の各部材からの反射光であり、第1遮蔽部30及び第2遮蔽部40からなる遮蔽機構へ侵入する外乱光は、
図4において下方からの光線A,B,Cとなる。ここで、前記3方向からの光線をサンプルとし、ガウス分布に基づき、もっとも強い反射となる正反射方向の光線がどの様に伝搬するか検証する。尚、
図2及び4において、光源10a,10b側から遮蔽部材42a〜遮蔽部材32a間を第一領域、遮蔽部材32a〜遮蔽部材42b間を第二領域、遮蔽部材42b〜遮蔽部材32b間を第三領域、遮蔽部材32b以降を第四領域として説明する。
【0028】
光線Aは、遮蔽部材32aの表面に低い角度で入射し、第2遮蔽部40の筒部41の内面及び遮蔽部材32aの先端面間を複数回反射した後、第二領域内を複数回反射する。すなわち、光線Aは第二領域を越えることができず、しかも反射率が1/nとすれば、例えば10回の反射後の光量は入射光の光量の(1/n)
10となり、十分に低い光量となる。
また、光線Bは、遮蔽部材32aの表面にやや高い角度で入射し、前述と同様に、第2遮蔽部40の筒部41の内面及び遮蔽部材32aの端面間を複数回反射した後、遮蔽部材42bを経由して第二領域内を複数回反射する。すなわち、この光線Bも第二領域を越えることができず、例えば10回の反射時点で光量は入射光の光量の(1/n)
10となり、十分に低い光量となる。
【0029】
また、光線Cは、遮蔽部材32aの表面に高い角度で入射し、第一領域内を複数回反射した後、筒部41の内面を経由して、第二領域内を複数回反射、その後、筒部31の外面を経由して、第三領域内を複数回反射して、再び筒部41の内面を経由して第四領域に達する。すなわち、光線Cは本来侵入を防止すべき第四領域に達しているが、遮蔽機構内での反射回数が多いため(本実施形態の場合は15回)、その光量は入射光の光量の(1/n)
15となり、十分に低い光量の光線A,Bに比べて更に低い光量となっている。このため、可動板20と回転ターレット5との間に瞬間的に間隙を生じた場合であっても、従来の場合と比して、光線C(外乱光)による光検出器13の誤作動を有効に防止することができる。
【0030】
本発明の回転ターレットの全外周領域に設けた遮蔽機構によれば、以上3つのサンプル光線の反射形態を解析して分かるように、第一領域に入射した外乱光が反射現象によって容易に第四領域に到達できない構造となっている。また、前述したように、少なくとも第1遮蔽部30及び第2遮蔽部40の表面(迂回路を形成する面)は黒色非光沢に表面処理がなされていることから、反射は散乱光となると解され、実際の反射は第1遮蔽部30及び第2遮蔽部40の表面で四方に散乱されながら、この散乱を繰り返されるものと理解するのが相当である。従って、光の伝搬量は第一領域、第二領域、・・・と順次進むに連れて減衰してゆくことになる。
【0031】
本発明の回転ターレットの全外周領域に設けた遮蔽機構は、種々の変更を行うことができる。
例えば、
図4に示すように、遮蔽部材42aの長さ寸法を、第1遮蔽部30を取り付けるボルト近傍まで延長させることで、外乱光の伝搬経路を長くとることができ、効果的に外乱光を減衰又は遮蔽することが可能となる。
また、
図5(A)に示すように、遮蔽部30,40を回転ターレット5の軸方向に沿って取り付け、それぞれの遮蔽部材を間隔l1を有して形成することも可能である。
また、
図5(B)に示すように、第1遮蔽部30及び第2遮蔽部40の各々の筒部及び遮蔽部材は、回転ターレット5の回転を阻害しない範囲に於いて、適宜の厚みの部材を用いて構成することも可能であり、例えば、第1遮蔽部30を環状ブロック体32cとして、第2遮蔽部40の遮蔽部材42a,42b間に間隔l1を有するように配置することもできる。また、
図5(C)に示すように、逆に第2遮蔽部40を環状ブロック体42cとして構成してもよい。
さらに、第1遮蔽部30及び第2遮蔽部40の各々の筒部及び遮蔽板の表面に凹凸形状(例えば凹溝)を形成することで、遮蔽機構内に侵入してきた外乱光を更に散乱させることが可能となり、より一層の光遮蔽効果を発揮することができる。
このように、本発明の遮蔽機構は、装置構成及び所望の光遮蔽効果に応じて、光遮蔽効果が高い多様な形態を採用することができる。
【0032】
次に、前述した本発明の回転ターレットの全外周領域に設けた遮蔽機構による外乱光の減衰又は遮蔽等の遮蔽効果を確認した検査データを示す。
1.検査1
遮蔽機構の各構成は、黒色非光沢の表面処理がなされた厚さ2mmのアルミニウム金属板からなり、寸法は以下のように設定した。
<第1遮蔽部30>
筒部31の長さ=15mm
遮蔽部材32a,32bの長さ=12mm
<第2遮蔽部40>
筒部41の長さ=30mm
遮蔽部材42aの長さ=17mm
遮蔽部材42bの長さ=12mm
<その他>
間隔l1:5mm
距離l2:15mm
オーバーラップ量l3:9mm
ピンホール検査装置の検査ターレット3の任意のポケット3aに缶体1を一缶保持させ、缶体1の開口端を開口受け部7に接触状態とし、回転ターレット5を徐々に回転させて、回転ターレット5の透孔8と可動板20に形成された貫通孔21が同軸上で一致するように位置決めし、回転を止めてピンホール検査を行った。
そして、遮蔽機構の遮蔽効果を確認するため、敢えて可動板20を付勢するエアーシリンダを作動させず、前記可動板20と回転ターレット5の間に0.08mmの間隙を設け、遮蔽機構の有無による遮蔽効果を光検出器13の光検出値により確認した。
その結果、遮蔽機構を設けた場合は光検出値が125mVであり、最高瞬時値が220mVであったのに対し、遮蔽機構を設けない場合は光検出値が4900mV以上(光検出器の測定上限)であった。
尚、前記した光検出値の値は、検出した光量を電圧(mV)に変換した値である。
【0033】
図6及び
図7に、前述した可動板20の摺接部材26の表面に貫通孔21と同心円状に複数の断面矩形状の環状溝27(ここに示す例では7本)を遮蔽機構とした実施形態例を示す。可動板20をこのような構成とすることで、高速回転する回転ターレット5と可動板20との間隙から侵入した外乱光が、可動板20の断面矩形状の環状溝27の空間に到達する毎に減衰又は吸収されて、可動板20に形成された貫通孔21に至る光量を効果的に低減して、光検出器13側に外乱光が到達することを有効に防止することができる。
そして、この可動板20の遮蔽機構を、前述した回転ターレットの全外周領域に設けた遮蔽機構と併設して設けることにより、外乱光の減衰又は遮蔽効果を更により一層高めることができる。
【0034】
図8は、可動板20の遮蔽機構による遮蔽機能を説明する図であり、回転ターレット5と可動板20の周縁部から両部材の間隙に侵入する外乱光は、上部光源10a,下部光源10bから照射された直接光、及び缶体1又はピンホール検査装置の各部材からの反射光であり、
図8において左方向からの光線A,B,Cとなる。ここで、前記左方向からの光線をサンプルとし、反射の際ガウス分布に基づき、もっとも強い反射となる正反射方向の光線がどの様に伝搬するか検証する。
【0035】
光線A乃至Cは、可動板20の摺接部材26の表面に入射し、前記間隙内にて反射を繰り返しながら中央方向に伝搬され、断面矩形状の環状溝27aに到達する。光線A乃至Cは環状溝27aの空間に到達すると、環状溝27aの壁面で多数回の反射を繰り返す際に、減衰又は吸収される。その後、光量の減少した光線A乃至Cが、更に内側(中央側)に向かって反射を繰り返し伝搬して環状溝27bに至ると、前述の場合と同様に、多数回の反射を繰り返して減衰又は吸収される。ここで、光線の入射角度はA>B>Cの順となっており、その反射回数についてもA>B>Cの順となっている。また、光線Bの場合、環状溝27aに侵入して複数回反射を繰り返した後、前記間隙の入口側に戻されて外方に放出されるようになっている。
尚、回転ターレット5と可動板20の摺接部材26表面に平行な角度から入射した外来光は、反射回数も少なく光量を減衰させることは本来難しい。しかしながら、環状溝27aは反射を繰り返してきた間隙と比較して広い空間となっているため、光線A乃至Cは環状溝27aの空間に到達すると拡散して減衰される。すなわち、平行な角度から入射した外来光においても、前述の減衰効果によって、十分に低い光量とすることができる。
【0036】
以上、3つのサンプル光線の反射形態を解析して分かるように、可動板20の摺接部材26の表面に、複数の環状溝27から成る遮蔽機構を設けたことにより、内方の環状溝27に到達する毎に光減衰効果が重畳されていき、前記間隙内に侵入した外来光を十分に低い光量とすることができる。
さらに、前述したように回転ターレット5と、摺接部材26の表面は黒色非光沢に表面処理されているので、反射光は散乱光となり、実際の反射は回転ターレット5と摺接部材26の表面で四方に散乱されながら、この散乱を繰り返されるものと理解するのが相当である。従って、光の伝搬量は環状溝27a、環状溝27b、・・・と順次進むに連れて減衰してゆくことになる。
【0037】
次に、前述した可動板20の遮蔽機構による外乱光の減衰又は遮蔽等の遮蔽効果を確認した検査データを示す。
2.検査2
可動板20の弗素樹脂系軟質プラスチックから成る黒色非光沢表面の摺接部材26の各寸法を以下のように設定した。
摺接部材26 直径:φ192mm
貫通孔21 直径:φ71mm
環状溝27a 中心位置の径:φ153mm
環状溝27b 中心位置の径:φ143mm
環状溝27c 中心位置の径:φ133mm
環状溝27d 中心位置の径:φ123mm
環状溝27e 中心位置の径:φ113mm
環状溝27f 中心位置の径:φ103mm
環状溝27g 中心位置の径:φ93mm
環状溝27a乃至g 幅:各7.3mm、深さ:各1.5mm
<測定位置>
缶体1の軸芯位置と光検出器13の軸心が一致する角度を0°とし、回転ターレット5の回転位置が時計方向に進んだ角度を+とし、反時計方向に遅れた角度を−で表示し、−12°、−6°、0°、6°、12°位置で光検出器13により検出光量を測定した。ここで、「−12°」及び「12°」の位置は、回転ターレット5の透孔8の周縁部と、可動板20の貫通孔21の周縁部が重なる始点及び終点の位置を示している。この時のデータを表1に示す。なお、本発明のピンホール検査装置において測定が行われるタイミングは−3°〜3°の範囲内である。
<測定方法>
ピンホール検査装置の検査ターレット3の任意のポケット3aに缶体1を一缶保持させ、
缶体1の開口端を開口受け部7に接触状態とし、回転ターレット5を徐々に回転させて、回転ターレット5の透孔8と可動板20に形成された貫通孔21が同軸上で一致するように位置決めし、回転を止めてピンホール検査を行った。
そして、遮蔽機構の遮光効果を確認するため、敢えて可動板20を付勢するエアーシリンダを作動させず、可動板20と回転ターレット5の間に0.12mmの間隙(シム量)を設け、遮蔽機構の有無による遮蔽効果を光検出器13の光検出値により確認した。
【0039】
表1にて示すように、角度0°となる測定タイミングで、遮蔽機構を設けた場合は光検出値が98mVであり、遮蔽機構を設けない場合は光検出値が570mVであった。
尚、前記した光検出値の値は、検出した光量を電圧(mV)に変換した値である。
【0040】
そして、前述した検査1と検査2から、両者を併設した外乱光の減衰は、検査1における一対の遮蔽部から形成される迂回路の遮蔽機構で減衰された光検出値の外乱光が、前述した検査2における可動板の遮蔽機構による減衰割合で減衰することが推察される。
【0041】
図9(A)乃至(C)は、前述した缶体を保持する検査ターレット3に替えて用いられる缶体保持部材3hを示している。尚、
図9(A)は缶体1を保持した缶体保持部材3hの底面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
缶体保持部材3hはプレート状の部材であって、その上部に缶体1を戴置可能な凹部が形成されており、ロッド3rを介して缶体の底部を支持するチャック6の支持軸9に固定されている。また、缶体1の胴部上端及び下端近傍を支持するため、缶体保持部材3hは複数のロッド3rに所定の間隔を有して取付けられている。そして、缶体保持部材3h及びチャック6は、図示しないカム及びカムフォロワーにより、回転ターレット5の開口部受け部7に缶体1の開口端が密着するよう、回転ターレット5に対して軸方向に移動可能となっている。
前記構成によれば、検査ターレット3が不要となり、缶体1に光を照射する光源10(特に下部光源10b)の設置の自由度が広がるため、光源を増設して光量を増加させることが可能となる。また、回転ターレット5に対して軸方向に移動する缶体1の胴部が、検査ターレット3のポケット3aの缶体の載置部と摺動して生じる不具合、例えば缶体1の胴部の傷、凹み等、を防止することができる。
【0042】
以上、本発明の缶体のピンホール検査装置によれば、一対の遮蔽部から形成される迂回路を遮蔽機構として設けたことにより、入り組んだ迂回路の伝搬過程で外乱光を減衰又は遮蔽することが可能となり、表面上状態等に起因して生ずる可動板と回転ターレットとの間隙から光検出器側に外乱光が入ることを有効に防止することができる。
また、本発明の缶体のピンホール検査装置において、可動板の遮蔽機構を併設することにより、外乱光の減衰又は遮蔽効果を更により一層高めることができる。
さらに、本発明の缶体のピンホール検査装置は光遮蔽効果が大きいため、高光度の光源を用いることが可能となって、より小径(数μm程度)のピンホールを検出することが可能となり、検査精度がより一層向上した缶体のピンホール検査装置を提供することができる。