(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法では、内外輪の温度差を用いてゼーベック効果により発電させるため、内外輪の回転の当初から、所期の大きさの発電量を得ることができない。
そこで、本発明の目的は、転がり軸受の回転の当初から、潤滑剤吐出装置を作動させるための電力を良好に発生させることができる転がり軸受装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するための請求項1に記載の発明は、内輪(10)、外輪(11)、およびこれら内外輪間に配置された複数の転動体(12)を有する転がり軸受(3)と、前記内外輪の固定側または当該固定側に隣接する部材(17)に形成されて、潤滑剤を溜めておくための潤滑剤溜り(4)と、前記潤滑剤溜りに溜められている潤滑剤を、前記内外輪間に向けて吐出するための潤滑剤吐出装置(5)と、前記潤滑剤吐出装置の作動に用いられる電力を発生するための電力発生部(6;106)とを含み、前記電力発生部は、前記内外輪の固定側または当該固定側に隣接する部材に配置され、動圧を受けることにより発電する圧力発電部(6;106)と、前記内外輪の回転側の回転に伴って前記圧力発電部に動圧を生じさせる動圧発生手段(31;31A;41)とを有する、転がり軸受装置(1,101)である。
【0006】
なお、この項において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符合を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を実施形態に限定する趣旨ではない。
この構成によれば、内外輪の回転側の回転に伴って、圧力発電部において動圧発生手段が動圧を発生する。そして、この動圧を受けて圧力発電部が発電する。圧力発電部において発生された電力を用いて潤滑剤吐出装置が作動される。
【0007】
動圧発生手段において発生される電力の大きさは、圧力発電部に与えられる動圧の大きさ、すなわち、内外輪の回転側の回転速度に依存している。内外輪の相対回転の当初から、所期の大きさの電力を発電することができる。これにより、転がり軸受の回転の当初から、潤滑剤吐出装置を作動させるための電力を良好に発生させることができる。
請求項2に記載の発明は、前記圧力発電部は、動圧を受けて変形するシート状のダイヤフラム(21)と、前記ダイヤフラムに取り付けられた圧電素子(22)とを含む、請求項1に記載の転がり軸受装置である。
【0008】
この構成によれば、動圧発生手段が発生する動圧を受けて、シート状のダイヤフラムが変形する。ダイヤフラムの変形に伴って、ダイヤフラムに取り付けられた圧電素子が振動する結果、圧電素子が電圧を発生する。
請求項3に記載の発明は、前記内外輪の回転側と同伴回転可能な回転部材(14)とを含み、前記回転部材の外周に前記動圧発生手段が形成されており、前記ダイヤフラムは、前記回転部材の外周と対向するように配置されており、前記圧電素子は、前記ダイヤフラムに対し前記回転部材とは反対側に配置されている、請求項2に記載の転がり軸受装置である。
【0009】
この構成によれば、ダイヤフラムに対し、動圧を発生する回転部材の外周と反対側に、圧電素子が配置される。そのため、回転部材からの動圧をダイヤフラムが受ける。これにより、ダイヤフラムのより広範囲で動圧を受けることができるので、ダイヤフラムが受ける動圧の大きさを増大させることができる。ゆえに、圧力発電部による発電効率を高めることができる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記内外輪の固定側または当該固定側に隣接する部材には、前記ダイヤフラムを変形可能に収容する空間(23)が形成されている、請求項
2または3に記載の転がり軸受装置。
この構成によれば、ダイヤフラムは変形可能に設けられる。そのため、動圧発生手段からの動圧を受けたときに、ダイヤフラムの挙動が阻害されるおそれがない。これにより、ダイヤフラムに与えられる動圧を、圧電素子の変形振動に高効率で変換することができる。ゆえに、圧力発電部による発電効率を高めることができる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記圧力発電部は、動圧を受けて変形するシート状の圧電素子(121)を含む、請求項1に記載の転がり軸受装置である。
この構成によれば、動圧発生手段が発生する動圧を受けて、シート状の圧電素子が変形して振動する。シート状の圧電素子の振動により、当該圧電素子が電圧を発生する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の第1実施形態に係る転がり軸受装置1の断面図である。
図2は、後述する外輪間座(固定側に隣接する部材)17を、切断面線A−Aから見た図である。転がり軸受装置1は、たとえば工作機械の主軸2を支持する装置である。
図1および
図2を参照して、転がり軸受装置1は、転がり軸受3と、転がり軸受3に内蔵された潤滑剤溜り4と、潤滑剤を転がり軸受3内に向けて吐出するための潤滑剤吐出装置5と、潤滑剤溜り4に溜められた潤滑剤を潤滑剤吐出装置5に供給するための供給管9と、潤滑剤吐出装置5を作動するための電力を発生する圧力発電部6と、二次電池(蓄電池)7とを備えている。転がり軸受装置1は、潤滑剤を自動的に転がり軸受3に補給する潤滑剤自動補給型の装置である。
【0014】
転がり軸受3はたとえばアンギュラ玉軸受である。
図1に示すように、転がり軸受3は、内輪10、外輪11、複数の転動体(玉)12および保持器13を備え、複数の転動体12は、内外輪10,11の軌道面10a,11a間に介在する。各転動体12は、円筒状の保持器13により円周方向に一定間隔おきに保持されている。なお、
図1では、転がり軸受3としてアンギュラ型玉軸受を採用しているが、転がり軸受3として深溝玉軸受を採用してもよい。
【0015】
内輪10、およびその一方端面(
図1では左端面)に接する円筒状の内輪間座(回転部材)14が、主軸1に外嵌固定されている。より具体的には、内輪10および内輪間座14は、主軸1にそれぞれ固定された第1および第2筒体15,16との間で挟み止められている。また、外輪11、およびその一方端面(
図1では左端面)に接する円筒状の外輪間座(回転部材)17が、それぞれ、静止部材であるハウジング8に固定されている。潤滑剤溜り4、潤滑剤吐出装置5、圧力発電部6および二次電池7は、外輪間座17内に収容配置されている。
【0016】
潤滑剤溜り4は、その周方向形状に沿って延び、円弧状(軸方向円弧状)をなしている。潤滑剤溜り4は、外輪間座17の内部に着脱可能に取り付けられたタンクであってもよいし、外輪間座17の内部に形成された空間であってもよい。潤滑剤溜り4には潤滑剤が溜められている。潤滑剤溜り4に溜められる潤滑剤として、オイル(潤滑油)やグリースなどを例示することができる。外輪間座17の周方向の所定位置において、潤滑剤溜り4よりも転動体12側には、潤滑剤吐出装置5が配置されている。
【0017】
潤滑剤溜り4としてタンクを用いる場合、そのタンクの材質として、熱硬化性樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂などを採用することができる。
供給管9は、その一端(
図1では左端)が潤滑剤溜り4に接続されており、他端がポンプ18に接続されている。供給管9として、熱硬化性樹脂製のチューブや、ナイロンチューブなどを採用することができる。
【0018】
潤滑剤吐出装置5は、潤滑剤溜り4から供給管9を介して潤滑剤を汲み出すためのポンプ18と、ポンプ18によって汲み出された潤滑剤を吐出するノズル19とを備えている。
ポンプ18は、たとえば、ダイヤフラム(振動膜。図示しない)に圧電素子(図示しない)が取り付けられたダイヤフラム弁をポンプ室内に有するダイヤフラム式のマイクロポンプを採用している。ポンプ18の材質として、熱硬化性樹脂、ケイ素、ステンレス、セラミックスなどを採用することができる。また、前記のダイヤフラムの材質として、熱硬化性樹脂、ケイ素、高分子膜、セラミックスなどを採用することができる。さらに、前記の圧電素子の材質として、積層型のピエゾ素子や、積層型の熱硬化性樹脂を採用することができる。なお、潤滑剤吐出装置5を作動させるための電力は小電力で足りる。
【0019】
ノズル19は小径の円筒状をなし、基端(
図1に示す左端)がポンプ18のポンプ室に接続されており、先端側が転動体12に向けて延びている。ノズル19の先端には吐出口20が開口している。吐出口20は、転動体12および内輪10の軌道面10aに対向している。ノズル19の材質として、熱硬化性樹脂、ケイ素、ステンレス、セラミックスなどを採用することができる。
【0020】
ポンプ18から汲み出された潤滑剤はノズル19に供給され、ノズル19の吐出口20から転動体12および内輪10の軌道面10a(内外輪10,11の間)に向けて吐出される。
二次電池7は、外輪間座17内の潤滑剤溜り4が形成されていない領域に配設されている。すなわち、二次電池7は、潤滑剤溜り4と周方向に並んでいる。二次電池7は圧力発電部6において発生した電力を蓄える。そして、二次電池7に蓄えられた電力は、潤滑剤吐出装置5の作動のための電力として用いられるようになっている。
【0021】
二次電池7として、全固体リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ、コンダクタ(キャパシタ)、インダクタ、レドックスキャパシタ、ナトリウムイオン電池、リチウム空気電池等が採用される。
図3は、圧力発電部6の構成を示す拡大断面図である。
図2および
図3を参照して、圧力発電部6は、外輪間座17の内周に取り付けられたダイヤフラム21と、ダイヤフラム21の外表面21aに固定的に取り付けられた圧電素子22とを含む。
【0022】
ダイヤフラム21は可撓性を有するシートであり、熱硬化性樹脂、ケイ素、高分子膜、セラミックスなどを用いて形成されている。ダイヤフラム21のシート厚みはほぼ均一である。
外輪間座17の内周面17aには、ダイヤフラム21および圧電素子22を収容するための収容溝24が形成されている。この収容溝24がダイヤフラム21によって全て覆われ、かつダイヤフラム21の周縁部各所が外輪間座17の内周面17aに固定されている。収容溝24の深さはダイヤフラム21の厚みよりも大きく設定されている。取付け後のダイヤフラム21の内表面21bは、外輪間座17の内周面17aと面一である。換言すると、ダイヤフラム21は、内輪間座14の外周面14bに対向している。
【0023】
ダイヤフラム21と収容溝24とによって、収容空間23が区画されている。収容空間23の径方向幅は、動圧発生部31からの動圧に伴う、ダイヤフラム21の変形や圧電素子22の変形振動を許容できるような大きさを有している。
圧電素子22の材質として、積層型のピエゾ素子や、積層型の熱硬化性樹脂を採用することができる。ダイヤフラム21の取付け状態において、圧電素子22は収容空間23内に収容されている。圧電素子22は、変形により電圧(電力)を発生する(圧電効果)。
【0024】
内輪間座14の次に述べる動圧発生部(動圧発生手段)31が、動圧を発生し、ダイヤフラム21に付与する。シート状のダイヤフラム21は、動圧発生部31が発生する動圧を受けて撓む(変形する)。ダイヤフラム21の撓みに伴って、ダイヤフラム21に配設されている圧電素子22が変形振動し、その結果圧電素子22が発電する。
ところで、ダイヤフラム21の外表面21aに圧電素子22を配置したのは、以下の理由による。すなわち、ダイヤフラム21の外表面21aに圧電素子22を配置することにより、内輪間座14からの動圧をダイヤフラム21の内表面21bの全域で受けることができ、これにより、ダイヤフラム21が受けることができる動圧の大きさを増大させたものである。
【0025】
また、ダイヤフラム21が収容空間23内で変形可能に設けられているので、動圧発生部31から動圧を受けたときに、ダイヤフラム21の変形の挙動が阻害されるおそれがない。これにより、ダイヤフラム21に与えられる動圧を、圧電素子22の変形振動に高効率で変換することができる。ゆえに、圧力発電部6による発電効率を高めることができる。
【0026】
図4は、動圧発生部31を説明するための内輪間座14の概略図である。
図3および
図4を参照して、動圧発生部31は、内輪間座14の外周面14bと、外周面14bに形成された複数の圧力溝32とを含む。
内輪間座14の外周面14bには、軸方向に延びる複数(
図4では8つ)の圧力溝32が、周方向に等間隔に形成されている。各圧力溝32はV溝であり、内輪間座14の軸方向の全域にわたって延びている。各圧力溝32の諸元は共通している。各圧力溝32の底面33の底頂部34は各圧力溝32の周方向の中間位置よりも回転方向側に位置している。
【0027】
内輪間座14の外周面14bと、外輪間座17の内周面17aとの間は微小隙間Sに設定されている。
内輪間座14が
図4に示す回転方向に向けて回転すると、各圧力溝32に溜められた空気が、圧力溝32の底面33を伝って移動し、当該圧力溝32に隣接する外周面14bと内周面17aとの間の狭空間に流入する。その結果、当該狭空間で動圧が発生する。このとき、各圧力溝32の底面33の底頂部34が各圧力溝32の周方向の中間位置よりも回転方向側に位置しているので、前記の狭空間に流入する空気の量が大きくなり、その結果、発生する動圧が増大する。
【0028】
すなわち、各圧力溝32に関して動圧が発生する。そして、圧力溝32に溜められた空気が、外輪間座17の内周面17aと面一のダイヤフラム21と内輪間座14の外周面14bとに流入することにより、ダイヤフラム21と内輪間座14の外周面14bとの間でも動圧が発生する。つまり、ダイヤフラム21に対向する位置を各圧力溝32が通過する毎に、動圧発生部31がダイヤフラム21に動圧を繰り返し与えるようになる。
【0029】
再び
図1を参照して、転がり軸受装置1は、半導体チップ型のマイクロコンピュータにより構成された制御装置25を備えている。制御装置25は、潤滑剤吐出装置5のポンプ18の作動を制御する。
図1〜
図4を参照して、主軸2の回転に伴って、内輪間座14が外輪間座17に対して相対回転する。内輪間座14および外輪間座17の相対回転に伴って、ダイヤフラム21に動圧が繰り返し間欠的に与えられる。
【0030】
これにより、ダイヤフラム21では、径方向外方に向けての撓み(変形)とその復元とが繰り返される。ダイヤフラム21の撓み/復元に伴って、ダイヤフラム21に配設された圧電素子22が振動し続け、その結果、圧電素子22が電圧(電力)を発生し続ける(圧電効果)。これにより、圧力発電部6による発電が行われる。
そして、圧力発電部6において発電された電力は二次電池7に蓄えられ、二次電池7に蓄えられた電力により導電機構(図示しない)を介して潤滑剤吐出装置5に供給され、潤滑剤吐出装置5の作動が行われる。制御装置25は、ポンプ18を作動して、潤滑剤溜り4から潤滑剤を汲み出させる。そして、制御装置25は、汲み出された潤滑剤をノズル19の吐出口20から吐出する。このとき、ノズル19の吐出口20から吐出される潤滑剤の量は、転がり軸受3の回転速度や転がり軸受3周辺の雰囲気温度に基づいて、制御装置25により調節される。
【0031】
以上により、この実施形態によれば、内外輪10,11の相対回転に伴って動力発生部31が動圧を発生する。そして、この動圧を受けて、ダイヤフラム21が変形/復元を繰り返す結果、圧電素子22が電圧を発生することにより、圧力発電部6で発電が行われる。圧力発電部6により発生された電力を用いて潤滑剤吐出装置5が作動される。
圧力発電部6で発生される電力の大きさは、圧力発電部6に与えられる動圧の大きさ、すなわち内輪10の回転速度に依存している。そのため、内輪10の回転の当初から、所期の大きさの電力を発電することができる。これにより、主軸2の回転の当初から、潤滑剤吐出装置5を作動させるための電力を良好に発生させることができる。
【0032】
図5は、本発明の第2実施形態に係る転がり軸受装置101の外輪間座17の断面図である。
第2実施形態に係る転がり軸受装置101が、
図1〜
図4に示す転がり軸受装置1と共通する部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
相違する第2実施形態に係る転がり軸受装置101が第1実施形態に係る転がり軸受装置1と相違する点は、圧力発電部6(
図1等参照)に代えて圧力発電部106を設けた点にある。
【0033】
圧力発電部106は、外輪間座17の内周に取り付けられた可撓性を有するフィルム状(シート状)の圧電素子フィルム(圧電素子)121を含む。圧電素子フィルム121として、たとえばMeasurement Specialties社製のピエゾフィルムや、株式会社スライブ製の振動発電素子(たとえば型番OMR251005)を採用することができる。圧電素子フィルム121の形状等は、圧力発電部6のダイヤフラム21(
図1等参照)と同等である。圧電素子フィルム121は、圧電素子22(
図1等参照)と同様、振動により電圧(電力)を発生する(圧電効果)。なお、圧電素子フィルム121として、単一の圧電素子からなる1層状のものを採用するが、互いに材質の異なる圧電素子を積層した2層構造の圧電素子フィルムを採用することもできる。
【0034】
圧電素子フィルム121は収容溝24の全域を覆っており、かつ圧電素子フィルム121の周縁部各所が外輪間座17の内周面17aに固定されている。取付け後の圧電素子フィルム121の内表面121bが、外輪間座17の内周面17aと面一である。換言すると、圧電素子フィルム121は、内輪間座14の外周面14bに対向している。なお、収容空間23の径方向幅は、動圧発生部31からの動圧に伴う圧電素子フィルム121の振動を許容できるような大きさを有している。
【0035】
内輪間座14の動圧発生部31が、動圧を発生し、圧電素子フィルム121に付与する。フィルム状の圧電素子フィルム121は、動圧発生部31が発生する動圧を受けて撓み、これにより圧電素子フィルム121が発電する。
主軸2の回転に伴って、内輪間座14が外輪間座17に対して相対回転する。内輪間座14および外輪間座17の相対回転に伴って、圧電素子フィルム121に動圧が繰り返し間欠的に与えられる。
【0036】
そのため、圧電素子フィルム121では、径方向外方に向けての撓み(変形)とその復元とが繰り返される結果、圧電素子フィルム121が振動する。これにより、圧電素子フィルム121が電圧(電力)を発生し続け(圧電効果)、ゆえに、圧力発電部106による発電が行われる。
そして、圧力発電部106において発電された電力は、導電機構(図示しない)を介して潤滑剤吐出装置5に供給され、この電力を用いて潤滑剤吐出装置5の作動が行われる。
【0037】
圧力発電部106で発生される電力の大きさは、圧力発電部106に与えられる動圧の大きさ、すなわち内輪10の回転速度に依存している。そのため、内輪10の回転の当初から、所期の大きさの電力を発電することができる。これにより、第2実施形態に係る転がり軸受装置101においても、主軸2の回転の当初から、潤滑剤吐出装置5を作動させるための電力を良好に発生させることができる。
【0038】
以上、この発明の2つの実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述した動圧発生部31に限られず、他の態様の動圧発生部を採用することもできる。
図6に示す動圧発生部41(動圧発生手段)では、内輪間座14の外周面14bに形成される各圧力溝42は、平坦面からなる底面43を有している。底面43は、周方向の双方で外周面14bに連続している。圧力溝42が複数(
図6では8つ)設けられている点や、圧力溝42が周方向に等間隔に形成されている点、および圧力溝42が内輪間座14の軸方向の全域にわたって形成されている点は、動圧発生部31(
図3参照)の場合と同様である。なお、底面43を、軸方向に直角な方向から見た断面形状が径方向内方に凸となる円弧状面とすることもできる。
【0039】
この場合、各圧力溝42の形状が周方向に関して対称であるので、内輪間座14の回転方向の制約はない。
また、
図7に示す動圧発生部(動圧発生手段)31Aの各圧力溝32Aは、内輪間座14の軸方向の途中部にのみ形成されている点で、動圧発生部31の圧力溝32(
図4参照)と相違する。すなわち、各圧力溝32Aは、内輪間座14の軸方向の両端部に形成されていない。
【0040】
また、動圧発生部41(
図6参照)の圧力溝42を、
図7に示すように内輪間座14の軸方向の途中部にのみ形成することもできる。
また、
図8に示すように、ノズル19の吐出口20が径方向に関して内輪10寄りの位置に配置されており、かつ吐出口20を含むノズル19の先端部が(軸方向に関して)転がり軸受3の内部にまで入り込んでいてもよい。この場合、軌道面10a,11aに潤滑剤を良好に供給することができる。
【0041】
また、前述の各実施形態では、外輪間座17に圧力発電部6,106を1つのみ設ける構成としたが、圧力発電部6,106を外輪間座17の周方向に複数配設してもよい。
なお、圧力溝32,32A,42の数や形状や圧力発電部6,106の個数は、潤滑剤吐出装置5の作動のために必要な電力量に応じて適宜設定することができる。
また、前述の各実施形態では、発電発生部6,106を外輪間座17に配置したが、発電発生部6,106を外輪11に配置することもできる。この場合、動圧発生部31,31A,41を内輪10の外周に設ける必要がある。
【0042】
また、圧電素子121,22には、振動発電に用いられる圧電素子を用いることも可能である。この場合には、圧電素子121,22は、動圧によって生じる振動またはダイヤフラム21の駆動による振動を受けて発電することになる。振動発電に用いられる圧電素子には、たとえば、非鉛強誘電体のぺロブスカイト型複合酸化物であるBiFeO
3などが挙げられる。
【0043】
また、前述の各実施形態では、潤滑剤溜り4、潤滑剤吐出装置5、圧力発電部6および二次電池7が外輪間座17に配置されているとして説明したが、これらの少なくとも1つを外輪11に配置することもできる。
また、二次電池7として全固体リチウムイオン電池、または全固体ナトリウム二次電池を利用する場合には、潤滑剤吐出装置および二次電池を、MEMS技術を用いて一体化させることもできる。
【0044】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。