特許第6124083号(P6124083)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6124083
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】階段構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/16 20060101AFI20170424BHJP
【FI】
   E04F11/16 Z
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-119319(P2014-119319)
(22)【出願日】2014年6月10日
(65)【公開番号】特開2015-232230(P2015-232230A)
(43)【公開日】2015年12月24日
【審査請求日】2015年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】川口 範幸
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−187828(JP,U)
【文献】 実開平02−139256(JP,U)
【文献】 実開平07−038382(JP,U)
【文献】 特開2002−070275(JP,A)
【文献】 特開2001−049818(JP,A)
【文献】 特開2001−182266(JP,A)
【文献】 特開2002−167932(JP,A)
【文献】 特開平09−279799(JP,A)
【文献】 特開2006−152536(JP,A)
【文献】 実開平03−089823(JP,U)
【文献】 実開平02−040836(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の側端が壁面に沿って設けられる階段構造の施工方法であって、
踏み面を形成する段板本体と、該段板本体の側端部に固定される水平幅木と、該水平幅木の前記段板本体と反対側の面に固定される軟質の水平隙間隠し部と、を備える幅木付き段板、及び、
蹴込み板本体と、該蹴込み板本体の側端部に固定される鉛直幅木と、該鉛直幅木の前記蹴込み板本体と反対側の面に固定される軟質の鉛直側隙間隠し部と、を備える幅木付き蹴込み板、を、
前記水平隙間隠し部の外部に露出する側の側縁に前記壁面側に突出するように形成された突出部が、前記壁面に当接し、前記水平幅木と前記壁面との間の間隙を隠すとともに、
前記鉛直側隙間隠し部の外部に露出する側の側縁に前記壁面側に突出するように形成された突出部が、前記壁面に当接し、前記鉛直幅木と前記壁面との間の間隙を隠すように、
下方から上方に向けて順次、階段下地に固定することを特徴とする階段構造の施工方法。
【請求項2】
少なくとも一方の側端が壁面に沿って設けられる階段構造の施工方法であって、
踏み面を形成する段板本体と、該段板本体の側端部に固定される水平幅木と、該水平幅木の前記段板本体と反対側の面に固定される軟質の水平隙間隠し部と、を備える幅木付き段板、及び、
蹴込み板本体と、該蹴込み板本体の側端部に固定される鉛直幅木と、該鉛直幅木の前記蹴込み板本体と反対側の面に固定される軟質の鉛直側隙間隠し部と、を備える幅木付き蹴込み板、を、
前記水平隙間隠し部の外部に露出する側の側縁に前記壁面側に突出するように形成された突出部が、前記壁面に当接し、前記水平幅木と前記壁面との間の間隙を隠すとともに、
前記鉛直側隙間隠し部の外部に露出する側の側縁に前記壁面側に突出するように形成された突出部が、前記壁面に当接し、前記鉛直幅木と前記壁面との間の間隙を隠すように、
側面視L字状又は側面視逆L字状に相互に固定した状態で、階段下地に順次固定することを特徴とする階段構造の施工方法。
【請求項3】
少なくとも一方の側端が壁面に沿って設けられる階段構造の施工方法であって、
踏み面を形成する段板本体と、前記段板本体の側端部に固定される軟質の水平緩衝部と、前記水平緩衝部の前記段板本体と反対側に固定される水平幅木と、を備える幅木付き段板、及び、
蹴込み板本体と、該蹴込み板本体の側端部に固定される軟質の鉛直緩衝部と、前記鉛直緩衝部の前記蹴込み板本体と反対側に固定される鉛直幅木と、を備える幅木付き蹴込み板、を、
前記水平幅木が前記壁面に当接し、前記鉛直幅木が前記壁面に当接するように、
下方から上方に向けて順次、階段下地に固定することを特徴とする階段構造の施工方法。
【請求項4】
少なくとも一方の側端が壁面に沿って設けられる階段構造の施工方法であって、
踏み面を形成する段板本体と、前記段板本体の側端部に固定される軟質の水平緩衝部と、前記水平緩衝部の前記段板本体と反対側に固定される水平幅木と、を備える幅木付き段板、及び、
蹴込み板本体と、該蹴込み板本体の側端部に固定される軟質の鉛直緩衝部と、前記鉛直緩衝部の前記蹴込み板本体と反対側に固定される鉛直幅木と、を備える幅木付き蹴込み板、を、
前記水平幅木が前記壁面に当接し、前記鉛直幅木が前記壁面に当接するように、
側面視L字状又は側面視逆L字状に相互に固定した状態で、階段下地に順次固定することを特徴とする階段構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一方の側端が壁面に沿って設けられる階段に用いられる幅木付き段板、幅木付き蹴込み板、及びこれら幅木付き段板又は幅木付き蹴込み板を用いた階段構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より例えば住宅等の階段構造には、壁面の保護や見栄えの観点から、壁面に沿って幅木が設けられている。例えば、特許文献1には、段板及び蹴込み板を備えた階段の壁際に階段幅木が設けられる例が記載されており、段板用の水平幅木と、蹴込み板用の鉛直幅木がそれぞれ設けられる階段幅木が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−231484号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の階段幅木の施工は、段板及び蹴込み板が階段下地に固定された後に、段板及び蹴込み板にそれぞれ沿うように、水平幅木及び鉛直幅木を例えば接着剤などで壁面に固定していた。したがって、段板及び蹴込み板の施工の後に、さらに
幅木を施工する必要があるので、階段構造の施工に手間が掛かっていた。
【0005】
そこで、本発明は、施工の省力化を図ることができる幅木付き段板、幅木付き蹴込み板、及び階段構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の階段構造の施工方法は、少なくとも一方の側端が壁面に沿って設けられる階段構造の施工方法であって、踏み面を形成する段板本体と、該段板本体の側端部に固定される水平幅木と、該水平幅木の前記段板本体と反対側の面に固定される軟質の水平隙間隠し部と、を備える幅木付き段板、及び、蹴込み板本体と、該蹴込み板本体の側端部に固定される鉛直幅木と、該鉛直幅木の前記蹴込み板本体と反対側の面に固定される軟質の鉛直側隙間隠し部と、を備える幅木付き蹴込み板、を、前記水平隙間隠し部の外部に露出する側の側縁に前記壁面側に突出するように形成された突出部が、前記壁面に当接し、前記水平幅木と前記壁面との間の間隙を隠すとともに、前記鉛直側隙間隠し部の外部に露出する側の側縁に前記壁面側に突出するように形成された突出部が、前記壁面に当接し、前記鉛直幅木と前記壁面との間の間隙を隠すように、下方から上方に向けて順次、階段下地に固定することを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の階段構造の施工方法は、少なくとも一方の側端が壁面に沿って設けられる階段構造の施工方法であって、踏み面を形成する段板本体と、該段板本体の側端部に固定される水平幅木と、該水平幅木の前記段板本体と反対側の面に固定される軟質の水平隙間隠し部と、を備える幅木付き段板、及び、蹴込み板本体と、該蹴込み板本体の側端部に固定される鉛直幅木と、該鉛直幅木の前記蹴込み板本体と反対側の面に固定される軟質の鉛直側隙間隠し部と、を備える幅木付き蹴込み板、を、前記水平隙間隠し部の外部に露出する側の側縁に前記壁面側に突出するように形成された突出部が、前記壁面に当接し、前記水平幅木と前記壁面との間の間隙を隠すとともに、前記鉛直側隙間隠し部の外部に露出する側の側縁に前記壁面側に突出するように形成された突出部が、前記壁面に当接し、前記鉛直幅木と前記壁面との間の間隙を隠すように、側面視L字状又は側面視逆L字状に相互に固定した状態で、階段下地に順次固定することを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載の階段構造の施工方法は、少なくとも一方の側端が壁面に沿って設けられる階段構造の施工方法であって、踏み面を形成する段板本体と、前記段板本体の側端部に固定される軟質の水平緩衝部と、前記水平緩衝部の前記段板本体と反対側に固定される水平幅木と、を備える幅木付き段板、及び、蹴込み板本体と、該蹴込み板本体の側端部に固定される軟質の鉛直緩衝部と、前記鉛直緩衝部の前記蹴込み板本体と反対側に固定される鉛直幅木と、を備える幅木付き蹴込み板、を、前記水平幅木が前記壁面に当接し、前記鉛直幅木が前記壁面に当接するように、下方から上方に向けて順次、階段下地に固定することを特徴としている。
【0009】
請求項4に記載の階段構造の施工方法は、少なくとも一方の側端が壁面に沿って設けられる階段構造の施工方法であって、踏み面を形成する段板本体と、前記段板本体の側端部に固定される軟質の水平緩衝部と、前記水平緩衝部の前記段板本体と反対側に固定される水平幅木と、を備える幅木付き段板、及び、蹴込み板本体と、該蹴込み板本体の側端部に固定される軟質の鉛直緩衝部と、前記鉛直緩衝部の前記蹴込み板本体と反対側に固定される鉛直幅木と、を備える幅木付き蹴込み板、を、前記水平幅木が前記壁面に当接し、前記鉛直幅木が前記壁面に当接するように、側面視L字状又は側面視逆L字状に相互に固定した状態で、階段下地に順次固定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1及び請求項2に記載の階段構造の施工方法によると、幅木付き段板が、段板本体の側端部に水平幅木が固定されており、この水平幅木の段板本体と反対側の面に軟質の水平隙間隠し部を有するので、段板を施工するだけで幅木も施工することができ、別途幅木を施工する必要がなく、階段の施工を省力化することができる。また、水平隙間隠し部が軟質であることから、段板などの寸法に若干の誤差があるような場合でも壁面に確実に密着することができ、壁面と水平幅木との間の隙間を確実に隠すことができる。さらに、段板本体及び水平幅木が軟質の水平隙間隠し部を介して壁面に当接しているので、段板本体や水平幅木と壁面が擦れることがなく、音鳴りの発生を防止することができる。
【0013】
さらに請求項1及び請求項2に記載の階段構造の施工方法によると、幅木付き蹴込み板が、蹴込み板本体の側端部に鉛直幅木が固定されており、この鉛直幅木の蹴込み板本体と反対側の面に軟質の鉛直隙間隠し部を有するので、蹴込み板を施工するだけで幅木も施工することができ、別途幅木を施工する必要がなく、階段の施工を省力化することができる。また、鉛直隙間隠し部が軟質であることから、蹴込み板などの寸法に若干の誤差があるような場合でも壁面に確実に密着することができ、壁面と鉛直幅木との間の隙間を確実に隠すことができる。さらに、蹴込み板本体及び鉛直幅木が軟質の鉛直隙間隠し部を介して壁面に当接しているので、蹴込み板本体や鉛直幅木と壁面が擦れることがなく、音鳴りの発生を防止することができる。
また、請求項1及び2に記載の階段構造の施工方法によると、壁面に水平隙間隠し部を当接させた場合に、水平隙間隠し部が確実に壁面に当接するとともに、この突出部が変形しやすく、階段構造の寸法誤差を吸収しやすくなっている。また、壁面に鉛直隙間隠し部を当接させた場合に、確実に壁面に当接するとともに、この突出部が変形しやすく、階段構造の寸法誤差を吸収しやすくなっている。
【0014】
請求項3及び請求項4に記載の階段構造の施工方法によると、幅木付き段板が、段板本体の側端部に軟質の水平緩衝部が固定されており、この水平緩衝部の前記段板本体と反対側に壁面に当接する水平幅木が固定されているので、段板を施工するだけで幅木も施工することができ、別途幅木を施工する必要がなく、階段の施工を省力化することができる。また、段板本体及び水平幅木の間に軟質の水平緩衝部が設けられているので、段板などの寸法に若干の誤差があるような場合でもこの水平緩衝部がその誤差を吸収することができ、水平幅木を確実に壁面に密着させることができる。そして、水平幅木が壁面に密着した状態になることから、壁面にクロスを施工する際に、水平幅木を定規代わりに利用することで、クロスを精度よく切断することができる。さらに、段板本体と水平幅木との間に軟質の水平緩衝部が設けられているので、段板本体と水平幅木とが擦れることがなく、音鳴りの発生を防止することができる。
【0015】
請求項3及び請求項4に記載の階段構造の施工方法によると、幅木付き蹴込み板が、蹴込み板本体の側端部に軟質の鉛直緩衝部が固定されており、この水平緩衝部の蹴込み板本体と反対側に壁面に当接する鉛直幅木が固定されているので、蹴込み板を施工するだけで幅木も施工することができ、別途幅木を施工する必要がなく、階段の施工を省力化することができる。また、蹴込み板本体及び鉛直幅木の間に軟質の水平緩衝部が設けられているので、蹴込み板などの寸法に若干の誤差があるような場合でもこの鉛直緩衝部がその誤差を吸収することができ、鉛直幅木を確実に壁面に密着させることができる。そして、鉛直幅木が壁面に密着した状態になることから、壁面にクロスを施工する際に、鉛直幅木を定規代わりに利用することで、クロスを精度よく切断することができる。さらに、蹴込み板本体と鉛直幅木との間に軟質の鉛直緩衝部が設けられているので、蹴込み板本体と鉛直幅木とが擦れることがなく、音鳴りの発生を防止することができる。
【0016】
請求項1及び請求項3に記載の階段構造の施工方法によると、幅木付き段板及び幅木付き蹴込み板を階段下地に固定するだけで、別途幅木を施工することなく、階段構造を施工することができ、階段の施工を省力化することができる。また、段板や蹴込み板の寸法に若干の誤差があるような場合でも、水平隙間隠し部、鉛直隙間隠し部、水平緩衝部、又は鉛直緩衝部によって、寸法誤差を吸収することができ、水平隙間隠し部、鉛直隙間隠し部、水平幅木、又は鉛直幅木を壁面に隙間なく密着させることができる。さらに、水平隙間隠し部、鉛直隙間隠し部、水平緩衝部、又は鉛直緩衝部を有することで、部材同士が擦れることがなく、音鳴りを防止することができる。
【0017】
請求項2及び請求項4に記載の階段構造の施工方法によると、幅木付き段板及び幅木付き蹴込み板を、側面視L字状又は側面視逆L字状に相互に固定した状態で、階段下地に固定するので、幅木付き段板と幅木付き蹴込み板とを別々に施工する場合に比べて施工手順を簡単にすることができ、いっそう階段の施工を省力化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第一実施形態の階段構造を説明する階段構造の施工途中の状態を示す斜視図。
図2】(A)は第一実施形態の幅木付き段板の外観構成を示す斜視図、(B)はその一部拡大斜視図。
図3】(A)は図2(B)におけるI−I断面部分拡大図、(B)は幅木付き段板を設置した状態を示す部分拡大断面図。
図4】(A)は、第一実施形態の幅木付き蹴込み板の外観構成を示す斜視図、(B)はその一部拡大斜視図。
図5】(A)は図4(B)におけるII−II断面部分拡大図、(B)は幅木付き蹴込み板を設置した状態を示す部分拡大断面図。
図6】(A)は第二実施形態の一段の階段要素を示す斜視図、(B)はその一部拡大斜視図。
図7】第二実施形態の階段構造を施工する途中の状態を示す斜視図。
図8】第二実施形態の階段構造を施工する途中の状態を側面から見た図。
図9】(A)は第三実施形態の一段の階段要素を示す斜視図、(B)はその一部拡大斜視図。
図10】第三実施形態の階段構造を施工する途中の状態を側面から見た図。
図11】(A)は第四実施形態の幅木付き段板の外観構成を示す斜視図、(B)はそのIII−III部分拡大断面図。
図12】(A)は第四実施形態の幅木付き蹴込み板の外観構成を示す斜視図、(B)はそのIV−IV部分拡大断面図。
図13】第四実施形態の階段構造を施工する途中の状態を示す斜視図。
図14】第四実施形態の幅木付き段板を設置した状態を示す断面図。
図15】第四実施形態の幅木付き蹴込み板を設置した状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第一実施形態〕
以下、本発明に係る幅木付き段板2、幅木付き蹴込み板3、及び階段構造1の第一実施形態について、図1から図5を参照しつつ説明する。階段構造1は、少なくとも一方の側端が壁面4に添って設けられる階段の構造である。なお、本発明における壁面4は例えば石膏ボードであるがこれに限定されるものではなく、合板やその他の板材で形成されていてもよい。階段構造1は、階段下地5の上に幅木付き段板2及び幅木付き蹴込み板3を固定して形成している。
【0020】
階段下地5は、図1に示すように、補助柱8により傾斜するように設置されるささら桁6と、ささら桁6の上に上面が水平面を形成するように固定される複数段の段板支持部7とにより形成されている。
【0021】
幅木付き段板2は、図2及び図3に示すように、階段構造1の踏み面を形成する平板状の段板本体21と、段板本体21の側端部に固定される水平幅木22と、水平幅木22の段板本体21と反対側の面に固定される水平隙間隠し部23とを備えている。段板本体21は、例えば木製の平板状に形成されている。水平幅木22は、段板本体21の側端部に例えば接着剤によって固定されており、段板本体21の踏み面から上方にはみ出す水平部24と、段板本体21の段鼻を囲うようにはみ出す段鼻部25とを有している。水平幅木22は硬質の樹脂により形成されている。なお、水平幅木22の材料は、硬質の樹脂に限定されるものではなく、例えば木材やその他の材料であってもよいが、汚れがつきにくくまた耐衝撃性を有する材料が好ましい。
【0022】
そして、水平隙間隠し部23は、水平幅木22の段板本体21と反対側の面に接着される細長い軟質の樹脂である。ここで、本発明において「軟質」とは、形状が床材などの建築材料に比べて容易に変形可能であることをいい、軟質の樹脂としては、特に弾性を有するエラストマーが好適である。なお、水平隙間隠し部23は水平幅木22に接着されるものに限定されるものではなく、押出成形により一体的に形成してもよい。水平隙間隠し部23は、水平幅木22の水平部24の上縁及び段鼻部25の上縁、先端縁、及び下縁に跨って設けられている。すなわち、水平隙間隠し部23は、階段構造1を施工した後に、壁面4と水平幅木22との間の境界の外側に露出する位置に設けられている。水平隙間隠し部23は、図3(A)(B)に示すように、水平幅木22の縁側が水平方向に突出する突出部26を形成している。この突出部26により、壁面4に水平隙間隠し部23を当接させた場合に、水平隙間隠し部23が確実に壁面4に当接するとともに、この突出部26が変形しやすく、階段構造1の寸法誤差を吸収しやすくなっているが、水平隙間隠し部23の形状はこれに限定されるものではなく、壁面4に当接することができ、壁面4と水平幅木22との間の隙間を埋めることができる形状であれば、如何なる形状であってもよい。
【0023】
幅木付き蹴込み板3は、図4及び図5に示すように、平板状の蹴込み板本体31と、蹴込み板本体31の側端部に固定される鉛直幅木32と、鉛直幅木32の蹴込み板本体31と反対側の面に固定される鉛直隙間隠し部33とを備えている。蹴込み板本体31は、例えば木製の平板状に形成されている。鉛直幅木32は、蹴込み板本体31の側端部に例えば接着剤によって固定されており、蹴込み板本体31から鼻の出方向にはみ出すように形成されている。鉛直幅木32は蹴込み板本体31の上端から下方に延びており、蹴込み板本体31の下端近くまで延びている。なお、水平幅木22及び鉛直幅木32は、階段構造1が施工された際に、幅木が連続するように形成されていればよく、水平幅木22及び鉛直幅木32は互いに干渉することなく連続するように配置されている。なお、鉛直幅木32は硬質の樹脂により形成されているが、硬質の樹脂に限定されるものではなく、例えば木材やその他の材料であってもよいが、汚れがつきにくくまた耐衝撃性を有する材料が好ましい。
【0024】
そして、鉛直隙間隠し部33は、鉛直幅木32の蹴込み板本体31と反対側の面において、鉛直幅木32の鼻の出方向の縁に接着される細長い軟質の樹脂である。なお、鉛直隙間隠し部33は鉛直幅木32に接着されるものに限定されるものではなく、押出成形により一体的に形成してもよい。鉛直隙間隠し部33は、階段構造1を施工した後に、壁面4と鉛直幅木32との間の境界の外側に露出する位置に設けられている。鉛直隙間隠し部33は、水平隙間隠し部23と同様の断面形状であり、図5(A)(B)に示すように、鉛直幅木32の縁側が水平方向に突出する突出部35を形成している。この突出部35により、壁面4に鉛直隙間隠し部33を当接させた場合に、確実に壁面4に当接するとともに、この突出部35が変形しやすく、階段構造1の寸法誤差を吸収しやすくなっている。なお、鉛直隙間隠し部33の形状はこれに限定されるものではなく、壁面4に当接することができ、壁面4と鉛直幅木32との間の隙間を埋めることができる形状であれば、如何なる形状であってもよい。
【0025】
このように構成される階段構造1を施工する際には、図1に示すように、幅木付き段板2と幅木付き蹴込み板3とを下方から上方に向けて順次、階段下地5に固定していく。このように、本実施形態の階段構造1によると、段板本体21に水平幅木22が固定されており、蹴込み板本体31に鉛直幅木32が固定されているので、別途幅木を施工する必要がなく、階段の施工を省力化することができる。また、軟質の水平隙間隠し部23及び鉛直隙間隠し部33を有していることで、段板本体21や蹴込み板本体31などの寸法に若干の誤差があるような場合でも、これら水平隙間隠し部23及び鉛直隙間隠し部33が寸法誤差を吸収し、壁面4に確実に密着することができ、壁面4と水平幅木22及び鉛直幅木32との間の隙間を確実に隠すことができる。さらに、軟質の水平隙間隠し部23及び鉛直隙間隠し部33を有することで、壁面4と水平幅木22や鉛直幅木32が擦れることがなく、音鳴りの発生を防止することができる。
【0026】
〔第二実施形態〕
次に、図6から図8を参照しつつ、本発明の階段構造1の第二実施形態について説明する。なお、第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態においては、階段構造1は、幅木付き段板2及び幅木付き蹴込み板3を、側面視逆L字状に相互に固定し、一段の階段要素9aを形成し、この階段要素9aを階段下地5に固定して形成している。すなわち、幅木付き蹴込み板3の上端に幅木付き段板2を固定して一段の階段要素9aを形成している。そして、水平幅木22及び鉛直幅木32は、硬質の樹脂を一体成形している。なお、水平幅木22及び鉛直幅木32は、一体形成されるものに限定されるものではなく、それぞれ段板本体21又は蹴込み板本体31に固定することで互いに固定するものであってもよい。そして、水平隙間隠し部23及び鉛直隙間隠し部33は、水平幅木22の水平部24の上縁から段鼻部25の周縁を通って、鉛直幅木32の鼻の出方向の縁に亘って設けられている。これら水平隙間隠し部23及び鉛直隙間隠し部33は、階段構造1を施工した後に、壁面4と水平幅木22及び鉛直幅木32との間の境界の外側に露出する位置に設けられている。
【0027】
階段構造1を施工する際には、図7及び図8に示すように、幅木付き段板2及び幅木付き蹴込み板3から成る階段要素9aを下方から上方に向けて順次、階段下地5に固定していく。このように、本実施形態の階段構造1によると、幅木付き段板2と幅木付き蹴込み板3とをそれぞれ施工する構成に比べて、工数を半分に減らすことができ、施工手順を簡略化し、いっそう階段の施工を省力化することができる。
【0028】
〔第三実施形態〕
次に、図9及び図10を参照しつつ、本発明の階段構造1の第三実施形態について説明する。本実施形態においては、階段構造1は、幅木付き段板2及び幅木付き蹴込み板3を、側面視L字状に相互に固定し、一段の階段要素9bを形成し、この階段要素9bを階段下地5に固定して形成している。すなわち、幅木付き蹴込み板3の下端に幅木付き段板2を固定して一段の階段要素9bを形成している。そして、その他の構造については、第一実施形態及び第二実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0029】
階段構造1を施工する際には、図10に示すように、幅木付き段板2及び幅木付き蹴込み板3から成る階段要素9bを下方から上方に向けて順次、階段下地5に固定していく。このように、本実施形態の階段構造1によると、第二実施形態の場合と同様に、幅木付き段板2と幅木付き蹴込み板3とをそれぞれ施工する構成に比べて、工数を半分に減らすことができ、施工手順を簡略化し、いっそう階段の施工を省力化することができる。
【0030】
〔第四実施形態〕
次に本発明の幅木付き段板2、幅木付き蹴込み板3、及び階段構造1の第四実施形態について、図11から図15を参照しつつ説明する。なお、第一実施形態、第二実施形態、及び第三実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0031】
本実施形態の幅木付き段板2は、図11に示すように、階段構造1の踏み面を形成する平板状の段板本体21と、段板の側端部に固定される軟質の樹脂からなる水平緩衝部27と、この水平緩衝部27の段板本体21と反対側に固定される水平幅木22とを備えている。段板本体21は、例えば木製の平板状に形成されている。水平緩衝部27は段板本体21の側端部に例えば接着により固定される軟質の樹脂であるが、これに限定されず、段板本体21などの若干の寸法誤差を吸収することができる程度に変形可能な材料であれば、樹脂に限定されるものではない。
【0032】
そして、水平幅木22は、水平緩衝部27の段板本体21と反対側に例えば接着によって固定されており、段板本体21の踏み面よりも上方にはみ出す水平部24と、段板本体21の段鼻を囲うようにはみ出す段鼻部25とを有している。水平幅木22は硬質の樹脂により形成されている。なお、水平幅木22の材料は、硬質の樹脂に限定されるものではなく、例えば木材やその他の材料であってもよいが、汚れがつきにくくまた耐衝撃性を有する材料が好ましい。
【0033】
幅木付き蹴込み板3は、図12に示すように、平板状の蹴込み板本体31と、蹴込み板本体31の側端部に固定される軟質の樹脂からなる鉛直緩衝部34と、この鉛直緩衝部34の蹴込み板本体31と反対側に固定される鉛直幅木32とを備えている。蹴込み板本体31は、例えば木製の平板状に形成されている。鉛直緩衝部34は蹴込み板本体31の側端部に例えば接着により固定される軟質の樹脂であるが、これに限定されず、蹴込み板本体31などの若干の寸法誤差を吸収することができる程度に変形可能な材料であれば、樹脂に限定されるものではない。
【0034】
そして、鉛直幅木32は、鉛直緩衝部34に例えば接着剤によって固定されており、蹴込み板本体31よりも鼻の出方向にはみ出すように形成されている。また、鉛直幅木32は上下方向において、蹴込み板本体31の上端から下方に延びており、蹴込み板本体31の下端近くまで延びるように鉛直緩衝部34に固定されている。なお、水平幅木22及び鉛直幅木32は、階段構造1が施工された際に、幅木が連続するように形成されていればよく、水平幅木22及び鉛直幅木32は互いに干渉することなく連続するように配置されている。また、鉛直幅木32は水平幅木22と同様に、硬質の樹脂により形成されているが、硬質の樹脂に限定されるものではなく、例えば木材やその他の材料であってもよいが、汚れがつきにくくまた耐衝撃性を有する材料が好ましい。
【0035】
本実施形態の階段構造1は、図13に示すように、幅木付き段板2と幅木付き蹴込み板3とを下方から上方に向けて順次、階段下地5に固定していく。このとき、図14及び図15に示すように、幅木付き段板2の水平幅木22及び幅木付き蹴込み板3の鉛直幅木32がそれぞれ壁面4に当接する。段板本体21や蹴込み板本体31の寸法の僅かな誤差に応じて水平緩衝部27及び鉛直緩衝部34が変形することで、水平幅木22及び鉛直幅木32は確実に壁面4に当接することができる。このように、本実施形態の階段構造1によると、段板本体21に水平幅木22が固定されており、蹴込み板本体31に鉛直幅木32が固定されているので、別途幅木を施工する必要がなく、階段の施工を省力化することができる。そして、水平幅木22及び鉛直幅木32と、段板本体21及び蹴込み板本体31との間に、軟質の水平緩衝部27及び鉛直緩衝部34を有することで、段板本体21や蹴込み板本体31が受けた外力を水平緩衝部27及び鉛直緩衝部34で吸収することができ、壁面4と水平幅木22や鉛直幅木32が擦れることがなく、音鳴りの発生を防止することができる。
【0036】
さらに、水平幅木22及び鉛直幅木32が壁面4に密着することで、壁面4にクロスを施工する際に、水平幅木22及び鉛直幅木32が定規となってクロスを適切な位置で切断することができる。
【0037】
なお、第四実施形態の階段構造1においては、幅木付き段板2及び幅木付き蹴込み板3を別々に階段下地5に施工する例を説明したが、本発明の階段構造1は、第二実施形態や第三実施形態と同様に、幅木付き段板2及び幅木付き蹴込み板3を、側面視L字状又は側面視逆L字状に相互に固定した状態で、階段下地5に固定する構成であってもよい。
【0038】
なお、本発明の実施の形態は上述の第一実施形態、第二実施形態、第三実施形態、及び第四実施形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る幅木付き段板2、幅木付き蹴込み板3、及び階段構造1は、例えば住宅の階段構造1として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 階段構造
2 幅木付き段板
3 幅木付き蹴込み板
4 壁面
5 階段下地
21 段板本体
22 水平幅木
23 水平隙間隠し部
27 水平緩衝部
31 蹴込み板本体
32 鉛直幅木
33 鉛直隙間隠し部
34 鉛直緩衝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15