特許第6124097号(P6124097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6124097
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】排ガス処理装置及び排ガス処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/64 20060101AFI20170424BHJP
   B01D 53/83 20060101ALI20170424BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20170424BHJP
   F27D 19/00 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   B01D53/64 100
   B01D53/83ZAB
   F27D17/00 104A
   F27D17/00 104G
   F27D19/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-151491(P2016-151491)
(22)【出願日】2016年8月1日
(62)【分割の表示】特願2016-519397(P2016-519397)の分割
【原出願日】2016年2月2日
【審査請求日】2016年10月5日
(31)【優先権主張番号】特願2015-29417(P2015-29417)
(32)【優先日】2015年2月18日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-225556(P2015-225556)
(32)【優先日】2015年11月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 努
(72)【発明者】
【氏名】長尾 厚志
(72)【発明者】
【氏名】平山 敦
(72)【発明者】
【氏名】三浦 崇
(72)【発明者】
【氏名】臼井 祐人
【審査官】 松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−259992(JP,A)
【文献】 特開2010−137163(JP,A)
【文献】 特開2009−291734(JP,A)
【文献】 特開2014−213308(JP,A)
【文献】 特開2010−158670(JP,A)
【文献】 特開平09−308817(JP,A)
【文献】 特開2014−100670(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/136714(WO,A1)
【文献】 特開2015−196127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34−53/85
53/92,53/96
F27D 17/00,19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉から排出され水銀を含む排ガスを除塵処理する集塵装置と、炉から集塵装置へ排ガスを導く排ガス流路へ活性炭を吹き込む活性炭供給装置とを備える排ガス処理装置において、
炉の下流側でかつ活性炭を吹き込む位置の上流側で排ガス中の水銀濃度を測定する上流側水銀濃度計と、活性炭供給装置の活性炭供給量を制御する制御装置を備え、
制御装置は、活性炭供給量を所定の最小値以上に維持するとともに、上流側水銀濃度計による水銀濃度測定値に基づき、上記集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御し、
制御装置における制御は、排ガス中の水銀濃度測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、第一の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、所定の最小値の活性炭供給量のもとに活性炭を供給し、水銀濃度測定値が上記第一の所定水銀濃度に達した後に、水銀濃度測定値の増加にしたがって、所定の最小値から直線的に活性炭供給量を増大させ、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の最大値の供給量とし、水銀濃度測定値が上記第二の所定水銀濃度に達した後には、水銀濃度測定値の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つことを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項2】
炉から排出され水銀を含む排ガスを除塵処理する集塵装置と、炉から集塵装置へ排ガスを導く排ガス流路へ活性炭を吹き込む活性炭供給装置とを備える排ガス処理装置において、
炉の下流側でかつ活性炭を吹き込む位置の上流側で排ガス中の水銀濃度を測定する上流側水銀濃度計と、活性炭供給装置の活性炭供給量を制御する制御装置を備え、
制御装置は、活性炭供給量を所定の最小値以上に維持するとともに、上流側水銀濃度計による水銀濃度測定値に基づき、上記集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御し、
制御装置における制御は、排ガス中の水銀濃度測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、第一の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、所定の最小値で第一の供給量とする活性炭供給量のもとに活性炭を供給し、水銀濃度測定値が上記第一の所定水銀濃度に達したときに、階段状に活性炭供給量を所定の第二の供給量にまで増大させ、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、活性炭供給量を第二の供給量で一定に保ち、さらに、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の第三の供給量にまで増大させるように、水銀濃度測定値の増加にしたがって、階段状に活性炭供給量を増大させることを繰り返し、活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させた後は、水銀濃度測定値の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つことを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項3】
炉から排出され水銀を含む排ガスを除塵処理する集塵装置と、炉から集塵装置へ排ガスを導く排ガス流路へ活性炭を吹き込む活性炭供給装置とを備える排ガス処理装置において、
炉の下流側でかつ活性炭を吹き込む位置の上流側で排ガス中の水銀濃度を測定する上流側水銀濃度計と、活性炭供給装置の活性炭供給量を制御する制御装置を備え、
制御装置は、活性炭供給量を所定の最小値以上に維持するとともに、上流側水銀濃度計による水銀濃度測定値に基づき、上記集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御し、上記活性炭供給量の所定の最小値を、上流側水銀濃度計による水銀濃度測定値の、集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度の設定値に対する比率である上流側水銀濃度比率に対して、上記上流側水銀濃度比率の区分ごとに定める対応関係に基づき定め、上記上流側水銀濃度比率と活性炭供給量の所定の最小値との対応関係を次の関係とし、上記上流側水銀濃度比率が20〜200の範囲であるとき、上記活性炭供給量の所定の最小値を10〜200mg/Nmの範囲で制御することを特徴とする排ガス処理装置。
【表1】
【請求項4】
炉から排出され水銀を含む排ガスを除塵処理する集塵装置と、炉から集塵装置へ排ガスを導く排ガス流路へ活性炭を吹き込む活性炭供給装置とを備える排ガス処理装置において、
炉の下流側でかつ活性炭を吹き込む位置の上流側で排ガス中の水銀濃度を測定する上流側水銀濃度計と、活性炭供給装置の活性炭供給量を制御する制御装置を備え、
制御装置は、活性炭供給量を所定の最小値以上に維持するとともに、上流側水銀濃度計による水銀濃度測定値に基づき、上記集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御し、さらに、上流側水銀濃度計による水銀濃度測定値の、集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度の設定値に対する比率である上流側水銀濃度比率が予め定める比率以上であるとき、活性炭供給量を所定の最大値に保つように制御し、上記活性炭供給量の所定の最大値を、上記上流側水銀濃度比率に対して、上記上流側水銀濃度比率の区分ごとに定める対応関係に基づき定め、上記上流側水銀濃度比率と活性炭供給量の所定の最大値との対応関係を次の関係とし、上記上流側水銀濃度比率が20〜200の範囲であるとき、上記活性炭供給量の所定の最大値を300〜1000mg/Nmの範囲で制御することを特徴とする排ガス処理装置。
【表2】
【請求項5】
炉から排出され水銀を含む排ガスを集塵装置で除塵処理し、炉から集塵装置へ排ガスを導く排ガス流路へ活性炭を活性炭供給装置から吹き込むこととする排ガス処理方法において、
炉の下流側でかつ活性炭を吹き込む位置の上流側で排ガス中の水銀濃度を上流側水銀濃度計で測定する測定工程と、制御装置で活性炭供給装置の活性炭供給量を制御する制御工程を備え、
制御工程で、活性炭供給量を所定の最小値以上に維持するとともに、上流側水銀濃度計による水銀濃度測定値に基づき、上記集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御し、
制御工程は、排ガス中の水銀濃度測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、第一の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、所定の最小値の活性炭供給量のもとに活性炭を供給し、水銀濃度測定値が上記第一の所定水銀濃度に達した後に、水銀濃度測定値の増加にしたがって、所定の最小値から直線的に活性炭供給量を増大させ、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の最大値の供給量とし、水銀濃度測定値が上記第二の所定水銀濃度に達した後には、水銀濃度測定値の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つことを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項6】
炉から排出され水銀を含む排ガスを集塵装置で除塵処理し、炉から集塵装置へ排ガスを導く排ガス流路へ活性炭を活性炭供給装置から吹き込むこととする排ガス処理方法において、
炉の下流側でかつ活性炭を吹き込む位置の上流側で排ガス中の水銀濃度を上流側水銀濃度計で測定する測定工程と、制御装置で活性炭供給装置の活性炭供給量を制御する制御工程を備え、
制御工程では、活性炭供給量を所定の最小値以上に維持するとともに、上流側水銀濃度計による水銀濃度測定値に基づき、上記集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御し、
制御工程は、排ガス中の水銀濃度測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、第一の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、所定の最小値で第一の供給量とする活性炭供給量のもとに活性炭を供給し、水銀濃度測定値が上記第一の所定水銀濃度に達したときに、階段状に活性炭供給量を所定の第二の供給量にまで増大させ、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、活性炭供給量を第二の供給量で一定に保ち、さらに、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の第三の供給量にまで増大させるように、水銀濃度測定値の増加にしたがって、階段状に活性炭供給量を増大させることを繰り返し、活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させた後は、水銀濃度測定値の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つことを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項7】
炉から排出され水銀を含む排ガスを集塵装置で除塵処理し、炉から集塵装置へ排ガスを導く排ガス流路へ活性炭を活性炭供給装置から吹き込むこととする排ガス処理方法において、
炉の下流側でかつ活性炭を吹き込む位置の上流側で排ガス中の水銀濃度を上流側水銀濃度計で測定する測定工程と、制御装置で活性炭供給装置の活性炭供給量を制御する制御工程を備え、
制御工程では、活性炭供給量を所定範囲の最小値以上に維持するとともに、上流側水銀濃度計による水銀濃度測定値に基づき、上記集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御し、上記活性炭供給量の所定の最小値を、上流側水銀濃度計による水銀濃度測定値の、集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度の設定値に対する比率である上流側水銀濃度比率に対して、上記上流側水銀濃度比率の区分ごとに定める対応関係に基づき定め、上記上流側水銀濃度比率と活性炭供給量の所定の最小値との対応関係を次の関係とし、上記上流側水銀濃度比率が20〜200の範囲であるとき、上記活性炭供給量の所定の最小値を10〜200mg/Nmの範囲で制御することを特徴とする排ガス処理方法。
【表3】
【請求項8】
炉から排出され水銀を含む排ガスを集塵装置で除塵処理し、炉から集塵装置へ排ガスを導く排ガス流路へ活性炭を活性炭供給装置から吹き込むこととする排ガス処理方法において、
炉の下流側でかつ活性炭を吹き込む位置の上流側で排ガス中の水銀濃度を上流側水銀濃度計で測定する測定工程と、制御装置で活性炭供給装置の活性炭供給量を制御する制御工程を備え、
制御工程では、活性炭供給量を所定の最小値以上に維持するとともに、上流側水銀濃度計による水銀濃度測定値に基づき、上記集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御し、さらに、上流側水銀濃度計による水銀濃度測定値の、集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度の設定値に対する比率である上流側水銀濃度比率が予め定める比率以上であるとき、活性炭供給量を所定の最大値に保つように制御し、上記活性炭供給量の所定の最大値を、上記上流側水銀濃度比率に対して、上記上流側水銀濃度比率の区分ごとに定める対応関係に基づき定め、上記上流側水銀濃度比率と活性炭供給量の所定の最大値との対応関係を次の関係とし、上記上流側水銀濃度比率が20〜200の範囲であるとき、上記活性炭供給量の所定の最大値を300〜1000mg/Nmの範囲で制御することを特徴とする排ガス処理方法。
【表4】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物焼却施設、セメント製造工場、火力発電所、非鉄金属製錬工場等の各種工場から排出される水銀を含む排ガスの処理装置及び排ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントキルン炉、非鉄金属製錬炉から排出される排ガスや、水銀を含んだ廃棄物が廃棄物焼却炉で焼却され排出される排ガス中に水銀が含まれることがあり、そのまま大気に放出されると、大気汚染を引き起こし問題となる。そこで、排ガス中の水銀を除去することが求められている。
【0003】
さらに、「水銀に関する水俣条約」が2013年に採択され、世界的な水銀管理強化の動きが進行している。この条約発効後、水銀排出規制対象施設に対して水銀の排出を抑制する対策が検討されている。水銀排出規制対象施設としては、石炭火力発電所、石炭焚きボイラ、非鉄金属製錬施設、廃棄物焼却施設、セメント製造施設が挙げられる。かかる状況において、これらの施設から排出される排ガス中の水銀を効率的に除去する処理方法の要望が高まっている。
【0004】
例えば、廃棄物焼却炉やボイラ火炉から排出される排ガス中の水銀の一般的な除去方法としては、排ガス中のダストを除塵するバグフィルタや電気集塵機へ排ガスを導くダクト内へ、バグフィルタ等に対して上流側位置で粉粒状の活性炭を吹き込み、該活性炭に水銀を吸着させ、この水銀を吸着した活性炭をダストとともにバグフィルタ等で集塵して排ガスから除去する方法が特許文献1、2で知られている。
【0005】
また、排ガス中の酸性ガスを中和して除去するための消石灰に活性炭を予め混合した混合粉を用意し、この混合粉をバグフィルタの上流側でダクト内の排ガスを吹き込んで、酸性ガスと消石灰の反応生成物そして水銀を吸着した活性炭をダストとともにバグフィルタ等で集塵して処理する方法が用いられることもある。かくして、排ガス中の水銀は活性炭により吸着された後、バグフィルタ等で集塵除去される。
【0006】
特許文献2には、水銀を含む排ガスが流通される煙道の途中に集塵器が設けられ、集塵器の上流側の煙道に活性炭を投入する活性炭投入装置が付設され、排ガス中の水銀濃度が所定濃度を超えたときに活性炭を瞬間的に大量投入する排ガス中の水銀除去システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−221085
【特許文献2】特開2014−213308
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
焼却炉で焼却処理される廃棄物の種類や、セメントキルン炉、非鉄金属製錬炉で製錬される原料の種類によっては、排ガス中の水銀濃度が一時的に高くなるような変動が生じる場合がある。この場合においても煙突から排出する排ガス中の水銀濃度を低く維持するためには、ダクトへ吹き込む活性炭の供給量を常時多量に吹き込む必要か、あるいは、消石灰と活性炭とが予め混合された混合粉をダクト内へ供給する際、混合粉の供給量を常時多量に吹き込む必要がある。
【0009】
このように、一時的に高くなる水銀濃度を想定して活性炭又は混合粉を常時多量にダクト内へ供給すると、上記一時的な時間帯を除いた多くの時間帯で活性炭そして混合粉を過度に供給する結果となってしまい、活性炭や混合粉の使用量が多大となり、排ガス処理費用が嵩むという問題や、集塵したダスト等の量が多大となり、除塵処理費用が嵩むという問題が生じる。特許文献2に記載の排ガス中の水銀除去システムでは、排ガス中の水銀濃度が所定濃度を超えたときのみ活性炭を投入して、集塵器内のろ布上に堆積させ水銀を吸着除去するため、無駄な活性炭の使用を避けることができるとしているが、瞬間的に活性炭を投入しただけではろ布上に活性炭層を十分に形成できず水銀を吸着除去できない懸念がある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑み、排ガス中の水銀を確実に吸着除去し、排ガス中の水銀濃度が変動してもこれに適切な活性炭量で活性炭を供給する排ガス処理装置及び排ガス処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によると、上述の課題は、次の排ガス処理装置さらにはその方法により解決される。
【0012】
[排ガス処理装置]
本発明における排ガス処理装置は、次の第一発明、第二発明そして第三発明のごとく構成され、いずれによっても上記課題は解決される。
【0013】
<第一発明>
炉から排出され水銀を含む排ガスを除塵処理する集塵装置と、炉から集塵装置へ排ガスを導く排ガス流路へ活性炭を吹き込む活性炭供給装置とを備える排ガス処理装置において、集塵装置の下流側で排ガス中の水銀濃度を測定する下流側水銀濃度計と、活性炭供給装置の活性炭供給量を制御する制御装置を備え、制御装置は、活性炭供給量を所定の最小値以上に維持するとともに、下流側水銀濃度計による水銀濃度測定値に基づき、上記集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御することを特徴とする排ガス処理装置。
【0014】
<第二発明>
炉から排出され水銀を含む排ガスを除塵処理する集塵装置と、炉から集塵装置へ排ガスを導く排ガス流路へ活性炭を吹き込む活性炭供給装置とを備える排ガス処理装置において、炉の下流側でかつ集塵装置の上流側で排ガス中の水銀濃度を測定する上流側水銀濃度計と、活性炭供給装置の活性炭供給量を制御する制御装置を備え、制御装置は、活性炭供給量を所定の最小値以上に維持するとともに、上流側水銀濃度計による水銀濃度測定値に基づき、上記集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御することを特徴とする排ガス処理装置。
【0015】
<第三発明>
炉から排出され水銀を含む排ガスを除塵処理する集塵装置と、炉から集塵装置へ排ガスを導く排ガス流路へ活性炭を吹き込む活性炭供給装置とを備える排ガス処理装置において、炉の下流側でかつ集塵装置の上流側で排ガス中の水銀濃度を測定する上流側水銀濃度計と、集塵装置の下流側で排ガス中の水銀濃度を測定する下流側水銀濃度計と、活性炭供給装置の活性炭供給量を制御する制御装置を備え、制御装置は、活性炭供給量を所定の最小値以上に維持するとともに、上流側水銀濃度計による水銀濃度測定値と下流側水銀濃度計による水銀濃度測定値とに基づき、上記集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御することを特徴とする排ガス処理装置。
【0016】
第一ないし第三発明においては、制御装置は、上流側水銀濃度計又は下流側水銀濃度計による水銀濃度測定値が所定水銀濃度以上であるとき、活性炭供給量を所定の最大値に保つように制御することが好ましい。時間平均としてはさほど水銀濃度が高くないにも拘らず一時的に急激に水銀濃度が高くなったときに、この高い水銀濃度に合せて多量の活性炭を供給すると、その後の時間にわたり過剰に活性炭を供給してしまう結果になる。このような過剰な供給となることを、上記活性炭供給量を所定の最大値に保つように制御することにより防止できる。
【0017】
また、第一発明においては、制御装置は、下流側水銀濃度計による集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度測定値の、集塵装置の下流側における排ガス中の水銀濃度設定値に対する比率が予め定める比率以上であるとき、活性炭供給量を所定の最大値に保つように制御し、上記予め定める比率が0.4〜0.8の範囲内で定められるようにすることができる。こうすることで、上記予め定める比率が0.4〜0.8の範囲内で、活性炭供給量を所定の最大値に保持するタイミングが定められる。このように定める理由は、上記予め定める比率が0.4より小さいときには、必要以上に多量の活性炭を供給する結果となり、活性炭を過剰に使用するために処理コストが嵩むという問題を生じてしまうこと、また、上記予め定める比率が0.8より大きいときには、活性炭供給量が不足して十分に水銀を吸着除去できず、水銀濃度を水銀濃度設定値以下にまで低減できないという問題を生じてしまうからである。
【0018】
また、第二発明においては、制御装置は、上流側水銀濃度計による集塵装置の上流側での排ガス中の水銀濃度測定値の、集塵装置の下流側における排ガス中の水銀濃度設定値に対する比率が予め定める比率以上であるとき、活性炭供給量を所定の最大値に保つように制御し、上記予め定める比率が20〜200の範囲内で定められるようにすることができる。こうすることで、上記予め定める比率が20〜200の範囲内で、活性炭供給量を所定の最大値に保持するタイミングを定められる。このように定める理由は、上記予め定める比率が20より小さいときに、必要以上に多量の活性炭を供給する結果となり、活性炭を過剰に使用するために処理コストが嵩むという問題を生じてしまうこと、また、上記予め定める比率が200より大きいときには、活性炭供給量が不足して十分に水銀を吸着除去できず、水銀濃度を水銀濃度設定値以下にまで低減できないという問題を生じてしまうからである。
【0019】
また、第三発明において、制御装置は、下流側水銀濃度計による集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度測定値の、集塵装置の下流側における排ガス中の水銀濃度設定値に対する下流側水銀濃度比率が予め定める比率以上であるとき、又は、上流側水銀濃度計による集塵装置の上流側での排ガス中の水銀濃度測定値の、集塵装置の下流側における排ガス中の水銀濃度設定値に対する上流側水銀濃度比率が予め定める比率以上であるとき、活性炭供給量を所定の最大値に保つように制御し、上記予め定める下流側水銀濃度比率が0.4〜0.8の範囲内で定められ、上記予め定める上流側水銀濃度比率が20〜200の範囲内で定められるようにすることができる。こうすることで、第一には、上記予め定める下流側水銀比率が0.4〜0.8の範囲内で、活性炭供給量を所定の最大値に保持するタイミングを定められる。このように定める理由は、上記予め定める下流側水銀濃度比率が0.4より小さいときには、必要以上に多量の活性炭を供給する結果となり、活性炭を過剰に使用するために処理コストが嵩むという問題を生じてしまうこと、また、上記予め定める下流側水銀濃度比率が0.8より大きいときには、活性炭供給量が不足して十分に水銀を吸着除去できず、水銀濃度を水銀濃度設定値以下にまで低減できないという問題を生じてしまうからである。また、第二には、上記予め定める上流側水銀濃度比率が20〜200の範囲内で活性炭供給量を所定の最大値に保持するタイミングを定められる。このように定める理由は、上記予め定められた上流側水銀濃度比率が20より小さいときには、必要以上に多量の活性炭を供給する結果となり、活性炭を過剰に使用するために処理コストが嵩むという問題を生じてしまうこと、また、上記予め定める上流側水銀濃度比率が200より大きいときには、活性炭供給量が不足して十分に水銀を吸着除去できず、水銀濃度を水銀濃度設定値以下にまで低減できないという問題を生じてしまうからである。
【0020】
さらには、第一ないし第三発明においては、制御装置は、処理排ガス流量に対する活性炭吹込み重量として定められる活性炭供給量の所定の最小値を、10〜200mg/Nm3に設定して制御することができる。このように活性炭供給量の所定の最小値を10〜200mg/Nm3の範囲で、排ガス中の水銀濃度が低い場合には該範囲のなかで低域の値とし、水銀濃度が高い場合には高域の値とすればよい。活性炭供給量を、排ガス中の水銀濃度が所定値より低い場合には、所定の最小値を保つようにすることで、集塵装置のバグフィルタには、活性炭の吸着層が常に形成されているようになるので、上記所定値よりも高濃度の水銀を含む排ガスが排出された際にも、予め形成された上記吸着層による吸着除去作用とその際に吹き込まれる活性炭による吸着除去作用とにより水銀を速やかにかつ確実に吸着除去でき、集塵後の排ガスの水銀濃度を十分に低濃度とする。上記所定の最小値を10mg/Nm3未満とすることは、集塵装置のバグフィルタに活性炭の吸着層を十分に形成することが困難であるため不適であり、上記所定の最小値を200mg/Nm3以上とすることは、活性炭供給量が過剰となりコストが嵩むので得策ではない。
【0021】
さらには、第一ないし第三発明において、制御装置は、処理排ガス流量に対する活性炭吹込み重量として定められる活性炭供給量の所定の最大値を、300〜1000mg/Nm3に設定して制御することができる。このように活性炭供給量の設定最大値を300〜1000mg/Nm3の範囲で、排ガス中の水銀濃度が低い場合には該範囲のなかで低域の値とし、水銀濃度が高い場合には高域の値とすればよい。上記設定最大値を300mg/Nm3未満とすることは、活性炭が排ガス中の水銀を吸着除去できない不具合が生じることがあるため不適であり、上記設定最大値を1000mg/Nm3以上とすることは、活性炭供給量が過剰となりコストが嵩むので得策ではない。
【0022】
また、第一ないし第三発明において、活性炭供給量の最小値から最大値へ向けた増大に関しては、制御装置は、排ガス中の水銀濃度測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、第一の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、所定の最小値の活性炭供給量のもとに活性炭を供給し、水銀濃度測定値が上記第一の所定水銀濃度に達した後に、水銀濃度測定値の増加にしたがって、所定の最小値から直線的に活性炭供給量を増大させ、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の最大値の供給量とし、水銀濃度測定値が上記第二の所定水銀濃度に達した後には、水銀濃度測定値の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つようにすることができる。
【0023】
さらに、第一ないし第三発明において、活性炭供給量の最小値から最大値に向けた増大に関しては、制御装置は、排ガス中の水銀濃度測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、第一の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、所定の最小値で第一の供給量とする活性炭供給量のもとに活性炭を供給し、水銀濃度測定値が上記第一の所定水銀濃度に達したときに、階段状に活性炭供給量を所定の第二の供給量にまで増大させ、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、活性炭供給量を第二の供給量で一定に保ち、さらに、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の第三の供給量にまで増大させるように、水銀濃度測定値の増加にしたがって、階段状に活性炭供給量を増大させることを繰り返し、活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させた後は、水銀濃度測定値の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つようにすることもできる。
【0024】
上記のように、排ガス中の水銀濃度測定値に基づき、活性炭供給量を最小値から最大値へ向けて増大させることにより、活性炭供給装置の供給量調整機構にとって不具合が生じることもなく、活性炭供給量を円滑に制御することができる。
【0025】
[排ガス処理方法]
本発明における排ガス処理方法は、次の第四発明、第五発明そして第六発明のごとく構成され、いずれによっても上記課題は解決される。
【0026】
<第四発明>
炉から排出され水銀を含む排ガスを集塵装置で除塵処理し、炉から集塵装置へ排ガスを導く排ガス流路へ活性炭供給装置から活性炭を吹き込むこととする排ガス処理方法において、集塵装置の下流側で排ガス中の水銀濃度を下流側水銀濃度計で測定する測定工程と、制御装置で活性炭供給装置の活性炭供給量を制御する制御工程を備え、制御工程で、活性炭供給量を所定の最小値以上に維持するとともに、下流側水銀濃度計による水銀濃度測定値に基づき、上記集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御することを特徴とする排ガス処理方法。
【0027】
<第五発明>
炉から排出され水銀を含む排ガスを集塵装置で除塵処理し、炉から集塵装置へ排ガスを導く排ガス流路へ活性炭供給装置から活性炭を吹き込むこととする排ガス処理方法において、炉の下流側でかつ集塵装置の上流側で排ガス中の水銀濃度を上流側水銀濃度計で測定する測定工程と、制御装置で活性炭供給装置の活性炭供給量を制御する制御工程を備え、 制御工程で、活性炭供給量を所定の最小値以上に維持するとともに、上流側水銀濃度計による水銀濃度測定値に基づき、上記集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御することを特徴とする排ガス処理方法。
【0028】
<第六発明>
炉から排出され水銀を含む排ガスを集塵装置で除塵処理し、炉から集塵装置へ排ガスを導く排ガス流路へ活性炭供給装置から活性炭供給装置から活性炭を吹き込むこととする排ガス処理方法において、炉の下流側でかつ集塵装置の上流側で排ガス中の水銀濃度を上流側水銀濃度計で測定するとともに集塵装置の下流側で排ガス中の水銀濃度を下流側水銀濃度計で測定する測定工程と、制御装置で活性炭供給装置の活性炭供給量を制御する制御工程を備え、制御工程で、活性炭供給量を所定の最小値以上に維持するとともに、上流側水銀濃度計による水銀濃度測定値と下流側水銀濃度計による水銀濃度測定値とに基づき、上記集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御することを特徴とする排ガス処理方法。
【0029】
第四ないし第六発明においては、制御工程は、上流側水銀濃度計又は下流側水銀濃度計による水銀濃度測定値が所定水銀濃度以上であるとき、活性炭供給量を所定の最大値に保つように制御することが好ましい。時間平均としてはさほど水銀濃度が高くないにも拘らず一時的に急激に水銀濃度が高くなったときに、この高い水銀濃度に合せて多量の活性炭を供給すると、その後の時間にわたり過剰に活性炭を供給してしまう結果になる。このような過剰な供給となることを、上記活性炭供給量を所定の最大値に保つように制御することにより防止できる。
【0030】
また、第四発明においては、制御工程は、下流側水銀濃度計による集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度測定値の、集塵装置の下流側における排ガス中の水銀濃度設定値に対する比率が予め定める比率以上であるとき、活性炭供給量を所定の最大値に保つように制御し、上記予め定める比率が0.4〜0.8の範囲内で定められるようにすることができる。こうすることで、上記予め定める比率が0.4〜0.8の範囲内で、活性炭供給量を所定の最大値に保持するタイミングが定められる。このように定める理由は、上記予め定める比率が0.4より小さいときには、必要以上に多量の活性炭を供給する結果となり、活性炭を過剰に使用するために処理コストが嵩むという問題を生じてしまうこと、また、上記予め定める比率が0.8より大きいときには、活性炭供給量が不足して十分に水銀を吸着除去できず、水銀濃度を水銀濃度設定値以下にまで低減できないという問題を生じてしまうからである。
【0031】
また、第五発明においては、制御工程は、上流側水銀濃度計による集塵装置の上流側での排ガス中の水銀濃度測定値の、集塵装置の下流側における排ガス中の水銀濃度設定値に対する比率が予め定める比率以上であるとき、活性炭供給量を所定の最大値に保つように制御し、上記予め定める比率が20〜200の範囲内で定められるようにすることができる。こうすることで、上記予め定める比率が20〜200の範囲内で、活性炭供給量を所定の最大値に保持するタイミングを定められる。このように定める理由は、上記予め定める比率が20より小さいときに、必要以上に多量の活性炭を供給する結果となり、活性炭を過剰に使用するために処理コストが嵩むという問題を生じてしまうこと、また、上記予め定める比率が200より大きいときには、活性炭供給量が不足して十分に水銀を吸着除去できず、水銀濃度を水銀濃度設定値以下にまで低減できないという問題を生じてしまうからである。
【0032】
また、第六発明において、制御工程は、下流側水銀濃度計による集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度測定値の、集塵装置の下流側における排ガス中の水銀濃度設定値に対する下流側水銀濃度比率が予め定める比率以上であるとき、又は、上流側水銀濃度計による集塵装置の上流側での排ガス中の水銀濃度測定値の、集塵装置の下流側における排ガス中の水銀濃度設定値に対する上流側水銀濃度比率が予め定める比率以上であるとき、活性炭供給量を所定の最大値に保つように制御し、上記予め定める下流側水銀濃度比率が0.4〜0.8の範囲内で定められ、上記予め定める上流側水銀濃度比率が20〜200の範囲内で定められるようにすることができる。こうすることで、第一には、上記予め定める下流側水銀比率が0.4〜0.8の範囲内で、活性炭供給量を所定の最大値に保持するタイミングを定められる。このように定める理由は、上記予め定める下流側水銀濃度比率が0.4より小さいときには、必要以上に多量の活性炭を供給する結果となり、活性炭を過剰に使用するために処理コストが嵩むという問題を生じてしまうこと、また、上記予め定める下流側水銀濃度比率が0.8より大きいときには、活性炭供給量が不足して十分に水銀を吸着除去できず、水銀濃度を水銀濃度設定値以下にまで低減できないという問題を生じてしまうからである。また、第二には、上記予め定める上流側水銀濃度比率が20〜200の範囲内で活性炭供給量を所定の最大値に保持するタイミングを定められる。このように定める理由は、上記予め定められた上流側水銀濃度比率が20より小さいときには、必要以上に多量の活性炭を供給する結果となり、活性炭を過剰に使用するために処理コストが嵩むという問題を生じてしまうこと、また、上記予め定める上流側水銀濃度比率が200より大きいときには、活性炭供給量が不足して十分に水銀を吸着できず、水銀濃度を水銀濃度設定値以下にまで低減できないという問題を生じてしまうからである。
【0033】
さらには、第四ないし第六発明において、制御工程は、処理排ガス流量に対する活性炭吹込み重量として定められる活性炭供給量の所定の最小値を、10〜200mg/Nm3に設定して制御することができる。このように活性炭供給量の所定の最小値を10〜200mg/Nm3の範囲で、排ガス中の水銀濃度が低い場合には該範囲のなかで低域の値とし、水銀濃度が高い場合には高域の値とすればよい。かくして活性炭供給量を、排ガス中の水銀濃度が所定値より低い場合には、所定の最小値を保つようにすることで、集塵装置のバグフィルタには、活性炭の吸着層が常に形成されているようになるので、上記所定値よりも濃度の高い高濃度の水銀を含む排ガスが排出された際にも、予め形成された上記吸着層による吸着除去作用とその際に吹き込まれる活性炭による吸着除去作用とにより水銀を速やかにかつ確実に吸着除去でき、集塵後の排ガスの水銀濃度を十分に低濃度とする。上記所定の最小値を10mg/Nm3未満とすることは、集塵装置のバグフィルタに活性炭の吸着層を十分に形成することが困難であるため不適であり、上記所定の最小値を200mg/Nm3以上とすることは、活性炭供給量が過剰となりコストが嵩むので得策ではない。
【0034】
さらには、第四ないし第六の発明においては、制御工程は、処理排ガス流量に対する活性炭吹込み重量として定められる活性炭供給量の所定の最大値を、300〜1000mg/Nm3に設定して制御することができる。このように活性炭供給量の設定最大値を300〜1000mg/Nm3の範囲で、排ガス中の水銀濃度が低い場合には該範囲のなかで低域の値とし、水銀濃度が高い場合には高域の値とすればよい。上記設定最大値を300mg/Nm3未満とすることは、活性炭が排ガス中の水銀を吸着除去できない不具合が生じることがあるため不適であり、上記設定最大値を1000mg/Nm3以上とすることは、活性炭供給量が過剰となりコストが嵩むので得策ではない。
【0035】
また、第四ないし第六発明において、活性炭供給量の最小値から最大値へ向けた増大に関しては、制御工程は、排ガス中の水銀濃度測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、第一の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、所定の最小値の活性炭供給量のもとに活性炭を供給し、水銀濃度測定値が上記第一の所定水銀濃度に達した後に、水銀濃度測定値の増加にしたがって、所定の最小値から直線的に活性炭供給量を増大させ、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の最大値の供給量とし、水銀濃度測定値が上記第二の所定水銀濃度に達した後には、水銀濃度測定値の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つようにすることができる。
【0036】
さらに、第四ないし第六発明において、活性炭供給量の最小値から最大値に向けた増大に関しては、制御工程は、排ガスの水銀濃度測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、第一の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、所定の最小値で第一の供給量とする活性炭供給量のもとに活性炭を供給し、水銀濃度測定値が上記第一の所定水銀濃度に達したときに、階段状に活性炭供給量を所定の第二の供給量にまで増大させ、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、活性炭供給量を第二の供給量で一定に保ち、さらに、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の第三の供給量にまで増大させるように、水銀濃度測定値の増加にしたがって、階段状に活性炭供給量を増大させることを繰り返し、活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させた後は、水銀濃度測定値の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つようにすることもできる。
【0037】
上記のように、排ガスの水銀濃度測定値に基づき、活性炭供給量の最小値から最大値へ向けて増大させることにより、活性炭供給装置の供給量調整機構にとって不具合が生じることもなく、活性炭供給量を円滑に制御することができる。
【0038】
このような本発明によれば、第一発明そして第四発明では、集塵装置の下流側で、活性炭による水銀吸着除去後の排ガス中の実際の水銀濃度を水銀濃度計で測定して活性炭供給量を調整するので、活性炭供給量を過不足なく調整することで、この水銀濃度を許容される設定値以下とすることができる。
【0039】
第二発明そして第五発明では、炉よりも下流側で集塵装置よりも上流側で、水銀濃度を水銀濃度計で測定し、その測定値に基づき活性炭供給量を調整して集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を許容される設定値以下とする。炉からの排ガス中の水銀濃度が変動した場合に、排ガスの集塵装置への流入前に水銀濃度を測定しその測定値に基づき、速やかに活性炭供給量を適正量に調整することができ、水銀濃度の変動に対して遅れが生じることなく確実に煙突から排出される排ガス中の水銀濃度を許容される設定値以下とすることができる。
【0040】
さらに第三発明そして第六発明では、炉よりも下流側で集塵装置より上流側で水銀濃度を水銀濃度計で測定するとともに、集塵装置の下流側でも水銀濃度を水銀濃度計で測定し、これらの二つの測定値に基づき活性炭供給量を調整して集塵装置の下流側での水銀濃度を許容される設定値以下とする。炉よりも下流側で集塵装置よりも上流側での水銀濃度測定値に基づき、活性炭供給量のベース値を定める制御を行い、さらに、集塵装置の下流側での水銀濃度測定値に基づき、活性炭供給量をベース値に対して増減して調整するように、活性炭供給量を補完して制御する。このようにすることにより、水銀濃度の変動に対して遅れが生じることなくより確実に煙突から排出される排ガス中の水銀濃度を許容される設定値以下にできる。
【0041】
第一発明そして第四発明では、集塵装置の下流側での実際の水銀濃度を測定するので、確実に煙突から排出される排ガス中の水銀濃度が設定値以下になるが、炉からの排ガス中の水銀濃度が変動したときには、その変動に対して活性炭供給量の調整に遅れが伴う。一方、第二発明そして第五発明では、集塵装置よりも上流側で水銀濃度を測定するので、上記変動に対しても速やかに対応できる。さらに、第三発明および第六発明では、集塵装置よりも上流側で水銀濃度を測定し、さらに集塵装置の下流側で水銀濃度を測定し、これらの二つの測定値に基づき活性炭供給量を調整することで、水銀濃度の変動に対して遅れが生じることなく、より確実に煙突から排出される排ガス中の水銀濃度を許容される設定値以下にできる。
【発明の効果】
【0042】
このように本発明によれば、排ガス中の水銀濃度を集塵装置の下流側の位置で測定し、あるいは集塵装置の上流側で測定し、あるいは集塵装置の上流側そして下流側で測定して、活性炭量を所定の最小値以上に維持しつつ水銀濃度測定値にもとづき吹き込む活性炭の供給量を調整するので、煙突から排出される排ガス中水銀濃度は確実に所定値以下となり、しかも活性炭は過不足なく供給されることとなり、活性炭の使用量を抑制できるとともに、排ガス処理費用の低減化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の第一実施形態装置を示し、(A)はその概要構成図、(B)は活性炭供給装置の概要構成図である。
図2】本発明の第二実施形態装置の概要構成図である。
図3】本発明の第三実施形態装置の概要構成図である。
図4】(A)〜(H)は排ガス中水銀濃度と活性炭供給量との関係として、採用可能な各種パターンを示している。
図5】本発明の実施例において用いられた、煙突水銀濃度と活性炭供給量との関係を示す図である。
図6】本発明の実施例において用いられた、バグフィルタ入口水銀濃度と活性炭供給量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態を説明する。
【0045】
以下に示される本実施形態では、水銀を含む排ガスを排出する炉として、廃棄物を焼却する焼却炉について説明しているが、本発明は、これに限らず、セメントキルン炉、非鉄金属製錬炉等の各種炉から排出される水銀を含む排ガスの処理装置及び処理方法として用いることができる。
【0046】
廃棄物を焼却する焼却炉からの排ガスに対して、集塵のために設置したバグフィルタの上流位置で排ガス流路へ活性炭を吹き込むことで、バグフィルタの下流側での水銀濃度を極低濃度レベルに抑制することが可能であるが、従来は廃棄物の種類や量の変動により、焼却炉からの排ガス中の水銀濃度が変動しバグフィルタの下流側において一時的に水銀濃度が上昇する場合に備え、活性炭を常時、多量に吹き込む必要があり、排ガス処理費用が嵩むことになっている。そこで、本実施形態では、水銀濃度計により水銀濃度を測定し、測定された水銀濃度にもとづき、過不足ない活性炭量を排ガス流路へ吹き込むこととしている。水銀濃度計は、連続的に測定する形式が好ましい。
【0047】
<第一実施形態>
本実施形態装置の概要構成を示す図1において、焼却炉1からの排ガスを煙突6まで導く排ガス流路に、上流側からボイラ2、さらに集塵装置としてバグフィルタ4が配設されており、バグフィルタ4の上流位置で排ガス流路へ、排ガス中の水銀を吸着除去するための活性炭を吹き込む活性炭供給装置3とこれを制御する制御装置7が設けられており、バグフィルタ4の下流側であるバグフィルタ4の出口又は煙突6に排ガス中の水銀濃度を測定する水銀濃度計5が設けられ、該水銀濃度計5の測定値を出力信号として上記制御装置7へ送るように、上記水銀濃度計5が該制御装置7に接続されている。
【0048】
かかる本実施形態装置では水銀濃度計5によってバグフィルタ4の下流側における排ガス中の水銀濃度が測定される。
【0049】
水銀濃度計5の測定値は制御装置7に送られ、この測定値が予め定められた所定水銀濃度値と比較されて、活性炭供給装置3が制御される。
【0050】
測定された水銀濃度が上記所定水銀濃度値に対して高い場合は活性炭供給量が増大される。活性炭供給量が増大された後、水銀濃度が上記所定水銀濃度値以下となる状態が持続している場合には、活性炭供給量を低減するように制御する。
【0051】
上記活性炭供給装置3は、具体的には、活性炭を収容するホッパ3Aと、該ホッパ3Aの下部出口に設けられたロータリ形式の切出し部材3Bと、さらにその下方に設けられたバルブまたはダンパ3Cとを有している。かかる活性炭供給装置3では、制御装置7からの指令信号を受けて、切出し部材3Bのロータリの回転数、バルブの開度及びダンパ3Cが開度のうち少なくとも一つが調整され活性炭が供給量を調整されて上記排ガス流路へ供給される。
【0052】
<第二実施形態>
図2に示される本実施形態は、既述の第一実施形態に比し、水銀濃度計5の配設位置のみが異なり他は同じである。したがって、図2では、図1の第一実施形態における部位と共通な部位について同一符号を付すことで、その説明は省略する。
【0053】
本実施形態では、図2に見られるように、水銀濃度計5は焼却炉1の下流側かつバグフィルタ4よりも上流側であって、活性炭供給装置3による活性炭吹込み位置よりも上流側の位置で排ガス中の水銀濃度を測定するように配設されている。本実施形態では、制御装置7によりこの測定位置での水銀濃度および活性炭供給量と、バグフィルタ4よりも下流位置での水銀濃度との関係が蓄積されたデータにもとづき把握されている。したがって、活性炭吹込み位置よりも上流側での水銀濃度を測定しその水銀濃度測定値と活性炭供給量とから、バグフィルタ4の下流での水銀濃度を推定できる。すなわち、制御装置7によって上記活性炭吹込み位置よりも上流側での水銀濃度測定値に基づき、バグフィルタ4の下流での水銀濃度を推定し、その推定水銀濃度を予め定める所定水銀濃度値以下とするために必要な活性炭供給量を求めることができ、活性炭供給装置3の活性炭供給量を制御する。その結果としてバグフィルタ4の下流での水銀濃度を所定水銀濃度値以下としている。
【0054】
かかる本実施形態では、焼却炉1からの排ガス中の水銀濃度に変動があった場合、この水銀濃度の変動を焼却炉1の下流側かつ活性炭供給装置3による活性炭吹込み位置よりも上流側の位置で水銀濃度計5が測定して検知するため、速やかに活性炭供給量を調整する対応ができるので、タイムラグがなく、煙突内の排ガス中の水銀濃度を確実に設定値以下に維持することができる。図2に図示された例では、水銀濃度計5による水銀濃度の測定位置は、活性炭吹込み位置よりも上流側であるが、これに限定されずに、バグフィルタ4の上流側であって、該活性炭吹込み位置よりも下流側であってもよい。
【0055】
<第三実施形態>
図3に示される本実施形態は、前第二実施形態に比し、活性炭供給装置3による活性炭吹込み位置よりも上流側に配された第一水銀濃度計5Aに加え、バグフィルタ4の下流側であるバグフィルタ4の出口又は煙突6に排ガス中の水銀濃度を測定する第二水銀濃度計5Bも設けられ、該第二水銀濃度計5Bの測定値を出力信号として制御装置7へ送られるようになっている。この点以外は第二実施形態と同じである。したがって、図3では、図2の第二実施形態における部位と共通な部位について同一符号を付すことで、その説明は省略する。
【0056】
本実施形態では、図3に見られるように、前記第二実施形態での活性炭供給装置3による活性炭吹込み位置よりも上流側に配された第一水銀濃度計5Aに加え、バグフィルタ4の出口に第二水銀濃度計5Bが設けられている。第二実施形態と同様に活性炭供給装置3による活性炭吹込み位置よりも上流側における第一水銀濃度計5Aによる測定値に基づいて活性炭供給量のベース値を制御し、さらにバグフィルタ4の出口における第二水銀濃度計5Bによる測定値に基づき、第一水銀濃度計5Aによる測定値に基づく制御を補完するようにして、活性炭供給量を増減するように制御する。
【0057】
活性炭供給装置3による活性炭吹込み位置よりも上流側での第一水銀濃度計5Aによる水銀濃度測定値が短時間で増加する現象(測定値ピークという)が検出されてから、バグフィルタ4の出口において、第二水銀濃度計5Bによる水銀濃度測定値ピークが検出されるまではタイムラグがあるので、活性炭供給装置3による活性炭吹込み位置よりも上流側の水銀濃度測定値ピークが十分に収まったときでもバグフィルタ4の出口において水銀濃度測定値ピークが検出される可能性がある。そこで、第二水銀濃度計5Bを設置しバグフィルタ4の出口の水銀濃度測定値に基づき活性炭供給量を制御することによって、第一水銀濃度計5Aの測定値に基づく制御を補完して、煙突内の排ガス中の水銀濃度をさらに確実に設定値以下にまで下げることができる。
【0058】
本発明の実施の形態では、制御装置は、水銀濃度計による水銀濃度測定値と活性炭供給量との予め定める対応関係に基づき、活性炭供給量を制御するようにしてもよい。予め定める水銀濃度測定値と活性炭供給量との対応関係としては、種々の形態を適用することができる。
【0059】
予め定める水銀濃度測定値と活性炭供給量との対応関係としては、測定した排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、活性炭供給量を、所定の最小値から始まり次第に増加して所定の最大値とする対応関係の形態にしてもよい。活性炭供給量の所定の最小値としては、焼却炉1から排ガスが排出されている運転中は排ガス中の水銀濃度が極めて低い場合にも、最低限としてこの最小値の供給量で常時活性炭を吹き込むことにより、煙突内の排ガス中の水銀濃度を設定値以下に確実に維持できるようにする活性炭供給量の値を定める。排ガス中水銀濃度測定値の増加にしたがって、活性炭供給量を所定の最小値から次第に増加させ、排ガス中水銀濃度に対して適正な量の活性炭を供給する。活性炭供給量を所定の最小値から次第に増大させる、対応関係の形態では、水銀濃度の増加にしたがって、活性炭供給量を、直線的に増大させてもよいし、複数段階に分けて階段状に増大させるようにしてもよく、種々の対応関係の形態を採用できる。活性炭の供給量を調整する手段として、活性炭供給装置のロータリ形式切出し部材のロータリの回転数、バルブの開度及びダンパの開度などを単独で又は組み合わせて調整することを行うが、これらの調整機構の調整範囲や調整の特性(例えば供給量の増減が連続的に可能、又は段階的に可能等)に適した対応関係の形態を採用することが好ましい。
【0060】
水銀濃度測定値と活性炭供給量との対応関係の各種形態の例を図4に示す。
【0061】
図4(A)に示す形態は、排ガス中水銀濃度の測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、予め定める所定水銀濃度までの範囲には、所定の最小値の活性炭供給量のもとに活性炭を供給し、水銀濃度の測定値が上記所定水銀濃度に達したときに、ステップ状に活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させ、さらに、排ガス中水銀濃度の増加に対して、活性炭供給量をその所定の最大値で一定に保つ形態である。水銀濃度の測定値が所定水銀濃度より低い場合には活性炭供給量を所定の最小値とし、所定水銀濃度より高い場合には活性炭供給量を所定の最大値とする対応関係の形態であり、簡単な制御機構で活性炭供給量を制御することができる。
【0062】
図4(B)に示す形態は、排ガス中水銀濃度の測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、第一の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、所定の最小値の活性炭供給量(第一の供給量)のもとに活性炭を供給し、水銀濃度の測定値が上記第一の所定水銀濃度に達したときに、ステップ状に活性炭供給量を所定の第二の供給量にまで増大させ、排ガス中水銀濃度の増加に対して活性炭供給量を第二の供給量で一定に保ち、さらに、水銀濃度の測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の第三の供給量にまで増大させるように、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、細かい階段状で活性炭供給量を増大させることを繰り返し、活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させた後は、排ガス中水銀濃度の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つ形態である。排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、活性炭供給量を所定の最小値から所定の最大値にまで階段状で増大させることにより、排ガス中水銀濃度に対して活性炭の供給をより適正な量で供給するように制御することができる。
【0063】
図4(C)に示す形態は、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、所定の最小値から直線的に活性炭供給量を増大させる形態である。また、図4(D)に示す形態は、排ガス中水銀濃度の測定値が所定水銀濃度に達するまでの範囲には、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、所定の最小値から直線的に活性炭供給量を増大させ、水銀濃度の測定値が上記所定の排ガス中水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の最大値の供給量とし、活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させた後は、排ガス中水銀濃度の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つ形態である。図4(C)、(D)に示す形態では、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、所定の最小値から連続的に活性炭供給量を増大させることにより、排ガス中水銀濃度に対してきめ細かく適正量で活性炭を供給するように制御することができる。
【0064】
図4(E)に示す形態は、排ガス中水銀濃度の測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、第一の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、所定の最小値の活性炭供給量のもとに活性炭を供給し、水銀濃度の測定値が上記第一の所定水銀濃度に達した後に、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、所定の最小値から直線的に活性炭供給量を増大させ、水銀濃度の測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の最大値の供給量とし、活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させた後は、排ガス中水銀濃度の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つ形態である。図4(E)に示す形態は、図4(A)と(C)に示す形態を組み合わせた形態であり、それぞれの形態の特徴、効果を併せもつ。
【0065】
図4(F)に示す形態は、排ガス中水銀濃度の測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、第一の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、所定の最小値の活性炭供給量(第一の供給量)のもとに活性炭を供給し、水銀濃度の測定値が上記第一の所定水銀濃度に達した後に、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、第一の供給量から直線的に活性炭供給量を増大させ、第二の所定水銀濃度に対応する第二の供給量にまで増大させ、その後排ガス中水銀濃度の増加に対して活性炭供給量を第二の供給量で一定に保ち、さらに、第三の所定水銀濃度に達したときに、第二の供給量から直線的に活性炭供給量を増大させ、第四の所定水銀濃度に対応する第三の供給量にまで増大させ、その後排ガス中水銀濃度の増加に対して活性炭供給量を第三の供給量で一定に保ち、このような排ガス中水銀濃度の増加に対して活性炭供給量を一定に保つことと増大させることを繰り返し、活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させた後は、排ガス中水銀濃度の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つ形態である。図4(F)に示す形態は、図4(B)と(D)に示す形態を組み合わせた形態であり、それぞれの形態の特徴、効果を併せもつ。
【0066】
図4(G)に示す形態は、排ガス中水銀濃度の測定値が所定水銀濃度に達するまでの間、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、所定の最小値から直線的に活性炭供給量を増大させ、水銀濃度の測定値が上記所定水銀濃度に達したときに、ステップ状に活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させ、活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させた後は、排ガス中水銀濃度の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つ形態である。排ガス中水銀濃度の測定値が比較的中程度の所定の値より低い場合には、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、所定の最小値から連続的に活性炭供給量を増大させることにより、排ガス中水銀濃度に対してきめ細かく適正量で活性炭を供給するように制御することができ、排ガス中水銀濃度の測定値が比較的中程度の所定水銀濃度より高い場合には、活性炭供給量を所定の最大値とすることとする対応関係であり、活性炭の供給量を調整する複数の手段を有効に利用して活性炭供給量を適切量で制御することができる。
【0067】
図4(H)に示す形態は、排ガス中水銀濃度の測定値が第一の所定水銀濃度に達するまでの間、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、所定の最小値から直線的に活性炭供給量を増大させ、水銀濃度の測定値が上記第一の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の第一の供給量とし、水銀濃度の測定値が第二の所定水銀濃度に達するまでの間、活性炭供給量を所定の第一の供給量で一定に保ち、水銀濃度の測定値が上記第二の所定水銀濃度に達したときに、ステップ状に活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させ、活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させた後は、排ガス中水銀濃度の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つ形態である。図4(H)に示す形態は、図4(G)に示す形態に、排ガス中水銀濃度の測定値が比較的中程度の所定の範囲(第一の所定水銀濃度から第二の所定銀濃度までの範囲)では、活性炭供給量を第一の所定供給量で一定に保つことを組み合わせた形態であり、活性炭の供給をより適正な量で供給するように制御することができる。
【0068】
また、制御装置は、水銀濃度計による水銀濃度測定値と活性炭供給量とを予め定める対応関係に基づき、活性炭供給量を制御する場合に、予め定める水銀濃度測定値と活性炭供給量との対応関係の形態として、測定した排ガス中水銀濃度が零又は水銀濃度計の測定可能な限界最小値未満又は予め定める所定値より低い場合には、活性炭の供給を行わず、排ガス中水銀濃度が零又は測定可能な限界最小値又は予め定めた所定値より高い場合には、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、活性炭供給量を次第に増加させる対応関係の形態としてもよい。また、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、活性炭供給量を増加させる際に、直線的に増加させてもよいし、階段状に増加させてもよい。
【0069】
また、上記対応関係の他の形態としては、測定した排ガス中水銀濃度が零又は水銀濃度計の測定可能な限界最小値未満又は予め定める第一の所定水銀濃度より低い場合には、活性炭の供給を行わず、排ガス中水銀濃度が零又は測定可能な限界最小値又は予め定める第一の所定水銀濃度より高く、予め定める第二の所定水銀濃度より低い範囲で、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、活性炭供給量を次第に増加させ、排ガス中水銀濃度の測定値が上記第二の所定水銀濃度より高い範囲で、活性炭供給量を所定の供給量として一定に保つ対応関係の形態としてもよい。また、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、活性炭供給量を増加させる際に、直線的に増加させてもよいし、階段状に増加させてもよい。
【0070】
本発明において、排ガス中の水銀濃度と活性炭供給量とを予め定める対応関係にもとづいて、活性炭供給量を制御する場合、その最小値から最大値までの活性炭供給量の増大について種々の形態をとれることは図4にて説明したとおりであるが、所定の最小値そして所定の最大値をどのようにして定めるか、その一例として図4(E)の形態で活性炭供給量を増大する場合について次に説明する。すなわち、水銀濃度測定値と活性炭供給量との対応関係が次に示す形態である。排ガス中水銀濃度の測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、第一の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、所定の最小値の活性炭供給量のもとに活性炭を供給し、水銀濃度の測定値が上記第一の所定水銀濃度に達した後に、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、所定の最小値から直線的に活性炭供給量を増大させ、水銀濃度の測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の最大値の供給量とし、活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させた後は、排ガス中水銀濃度の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つ形態である。
【0071】
発明者等は図2に示す排ガス処理装置を用いて、水銀を含む排ガスの処理を行う際の上記所定の最小値と所定の最大値を定めるための諸条件を検討した。その検討に際しては、集塵装置入口(上流側)での排ガス中の水銀濃度を測定し、この水銀濃度測定値と集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度の設定値との比率(上流側水銀濃度比率)を20倍〜200倍となる範囲で変えた場合について、活性炭による水銀吸着除去プロセスをシミュレーションして活性炭供給量の所定の最小値と所定の最大値の適切な範囲を求めた。上記上流側水銀濃度比率は20倍〜200倍の間を複数の段階に区分して、順次変え各区分範囲で、その都度、所定の最小値と所定の最大値についての適切な範囲を求めた。得られた結果は表1に示すとおりである。
【0072】
表1において、例えば上記上流側水銀濃度比率が100倍以上120倍未満の範囲となる水銀を含む排ガスが炉から排出されると予測される場合には、処理排ガス流量に対する活性炭吹込み重量として定められる活性炭供給量の所定の最小値を60〜200mg/Nm3と設定し、活性炭供給量の所定の最大値を300〜1000mg/Nm3と設定する。
【0073】
【表1】
【0074】
この表1において、上記上流側水銀濃度比率の各区分範囲について、所定の最小値の下限は排ガス中の水銀濃度測定値が低い場合または集塵装置の下流側での水銀濃度設定値が高い場合に対応し、所定の最小値の上限は排ガス中の水銀濃度測定値が高い場合または集塵装置の下流側での水銀濃度設定値が低い場合に対応する。
【0075】
また、表1において、上記上流側水銀濃度比率の各区分範囲について、所定の最大値の下限は排ガス中の水銀濃度測定値が低い場合または集塵装置の下流側での水銀濃度設定値が高い場合に対応し、所定の最大値の上限は排ガス中の水銀濃度測定値が高い場合または集塵装置の下流側での水銀濃度設定値が低い場合に対応する。
【0076】
このようにして、活性炭供給量の所定の最小値を設定することにより、集塵装置のバグフィルタに活性炭を付着させ吸着層を予め十分に形成しておくことになり、高濃度の水銀を含む排ガスが排出された際に速やかに、既に形成されている活性炭吸着層とその際に吹き込まれる活性炭により水銀を吸着除去でき、水銀濃度を十分に低濃度にまで低下させることができる。
【0077】
また、活性炭供給量の所定の最大値を定めることにより、活性炭の過剰供給を行わないようにして高濃度の水銀を十分に吸着除去できる。
【0078】
以下、本発明についての実施例を比較例とともに説明する。
【0079】
[実施例]
廃棄物焼却炉から排出される排ガスを図1図3に示す排ガス処理装置により水銀の除去処理を行い、効果を確認した。廃棄物焼却炉から排出される排ガスは、煙突からの排ガス量が10,000Nm3/hであり、煙突内の排ガス中水銀濃度を1時間平均値で50μg/Nm3以下になるようにしている。さらに、水銀濃度測定値が短時間で急激に増加する現象における最大水銀濃度瞬時値(ピーク測定値という)を低く抑えることが望まれている。活性炭供給量(mg/Nm3)は処理排ガス流量に対する活性炭吹込み重量として定められる。
【0080】
実施例、比較例でのバグフィルタ入口での水銀濃度のピーク測定値、煙突での水銀濃度のピーク測定値を表2に示す。
【0081】
<比較例>
バグフィルタ上流側の排ガス流路に排ガス量(Nm3/h)に対し常時一定量である供給量50mg/Nm3で活性炭を吹込んでおり、通常時には煙突における排ガス中の水銀濃度は5μg/Nm3-dry以下となっている。焼却炉に供給されるごみ性状の変動によってバグフィルタ入口での水銀濃度が変動し煙突での水銀濃度が上昇してしまうことがあった。煙突において最大90μg/Nm3-dryの水銀濃度のピーク測定値が観測された。
【0082】
<実施例1>
実施例1では図1に示す排ガス処理装置を用いて、水銀を含む排ガスの処理を行った。
集塵装置の下流側として煙突での排ガス中の水銀濃度を測定し、図5に示されている煙突水銀濃度と活性炭供給量の対応関係を用いて活性炭供給量を求めて活性炭を供給した。図5に示すように、活性炭供給量を、煙突水銀濃度が10μg/Nm3-dryより低い場合には一定の最小値としての50mg/Nm3とし、煙突水銀濃度が10μg/Nm3-dryより高く40μg/Nm3-dryより低い場合には水銀濃度の増加にしたがって次第に増加させ、煙突水銀濃度が40μg/Nm3-dryより高い場合には一定の最大値としての500mg/Nm3とするようにしている。
【0083】
供給されるごみ性状の変動によってバグフィルタ入口での水銀濃度が変動するが、最も高い場合でも煙突における水銀濃度のピーク測定値を70μg/Nm3-dryに抑えることができた。
【0084】
<実施例2>
実施例2では図2に示す排ガス処理装置を用いて、水銀を含む排ガスの処理を行った。バグフィルタ入口での排ガス中の水銀濃度を測定し、図6に示されているバグフィルタ入口水銀濃度と活性炭供給量の対応関係を用いて活性炭供給量を求めて活性炭を供給した。図6に示すように、活性炭供給量を、バグフィルタ入口水銀濃度が100μg/Nm3-dryより低い場合には一定の最小値としての50mg/Nm3とし、バグフィルタ入口水銀濃度が100μg/Nm3-dryより高く700μg/Nm3-dryより低い場合には水銀濃度の増加にしたがって次第に増加させ、バグフィルタ入口水銀濃度が700μg/Nm3-dryより高い場合には一定の最大値としての500mg/Nm3とするようにしている。
【0085】
供給されるごみ性状の変動によってバグフィルタ入口での水銀濃度が変動するが、最も高い場合でも煙突における水銀濃度のピーク測定値を25μg/Nm3-dryに抑えることができた。
【0086】
<実施例3>
実施例3では図3に示す排ガス処理装置を用いて、水銀を含む排ガスの処理を行った。
バグフィルタ入口での排ガス中の水銀濃度を測定し活性炭供給量のベース量を制御し、煙突での排ガス中の水銀濃度を測定し、図6に示されるバグフィルタ入口水銀濃度と活性炭供給量の対応関係を用いて活性炭供給量のベース量を制御し、図5に示される煙突水銀濃度と活性炭供給量の対応関係を用いて活性炭供給量を補完して増減するように制御した。
【0087】
供給されるごみ性状の変動によってバグフィルタ入口での水銀濃度が変動するが、最も高い場合でも煙突における水銀濃度のピーク測定値を15μg/Nm3-dryに抑えることができた。
【0088】
【表2】
【符号の説明】
【0089】
1 炉(焼却炉)
2 ボイラ
3 活性炭供給装置
4 集塵装置(バグフィルタ)
5 水銀濃度計
5A 第一水銀濃度計
5B 第二水銀濃度計
6 煙突
7 制御装置
【要約】
【課題】炉からの排ガス中の水銀を確実に吸着除去し、排ガス中の水銀濃度が変動してもこれに適切な活性炭量で活性炭を供給する排ガス処理装置及び方法を提供することを課題とする。
【解決手段】炉1から排出され水銀を含む排ガスを除塵処理する集塵装置4と、炉1から集塵装置4へ排ガスを導く排ガス流路へ活性炭を吹き込む活性炭供給装置3とを備える排ガス処理装置において、炉1の下流側でかつ活性炭を吹き込む位置の上流側で排ガス中の水銀濃度を測定する上流側水銀濃度計5と、活性炭供給装置3の活性炭供給量を制御する制御装置7を備え、制御装置7は、活性炭供給量を所定の最小値以上に維持するとともに、上流側水銀濃度計5による水銀濃度測定値に基づき、上記集塵装置4の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6