(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態にかかるシステムを用いて洗浄する対象物である土壌とは、陸地の表面を覆う物質のことで、一般的には土と呼ばれるものである。土壌は、岩石が風化して生成した砂や粘土等を含む無機物や、生物の死骸等を含む有機物から構成される。また、油とは、水と相分離する疎水性の物質であり、一般的にはアルコールと脂肪酸とのエステルである。油には植物由来、動物由来ならびに鉱物由来のものがある。植物油として菜種油、大豆油、ヤシ油、オリーブ油、アボカド油、ごま油、エゴマ油、綿実油、紅花油、コーン油、米ぬか油、椿油、ココナッツ油、落花生油等が挙げられる。動物油として、牛脂、ラード、肝油、魚油等が挙げられる。鉱物油は、石油、天然ガス、石炭等由来の炭化水素化合物およびこれらの混合物である。本明細書において、「油」の語は、これらの種々の油の混合物であって良い。たとえば、燃料油、潤滑油、絶縁油等の工業用油脂も「油」に含まれる。一般に油は有機物質を溶解しやすいが、たとえば毒性の高い化合物や環境汚染化合物(たとえば、ポリクロロビフェニル類(PCB)あるいはダイオキシン等に代表されるハロゲン化芳香族化合物)などが溶解している場合も、これらをすべて「油」と称するものとする。実施形態において洗浄対象物である油を含む土壌とは、土壌と油とが均一または不均一に混ざり、土壌と油とが一緒に存在する状態のものを指す。
【0011】
本実施形態で使用する洗浄剤は、土壌に存在する油を溶解または少なくとも分散させることができかつ当該油よりも沸点が低いものが好ましい。このような洗浄剤として、炭化水素系溶剤、ハロゲン系溶剤等を含む有機溶剤を用いることができる。たとえば、炭素数が8〜15のアルカン、アルケン、シクロアルカン又はアルケン系溶剤(特に、炭素数が11〜13のアルカンやアルケン系溶剤)や、炭素数が1〜12のハロゲン系溶剤を用いることができる。具体的には、土壌に存在している油を溶解または分散しやすい炭化水素系の有機溶剤である、アクアソルベントG71(アクア化学株式会社)、HC−370(東ソー株式会社)、MD−250(武蔵テクノケミカル株式会社)、Linpar12(Sasol Limited)、MACSOL−P(NSI株式会社)等のドデカンを主成分とする市販の溶剤を用いることができる。
【0012】
本実施形態のシステムは、少なくとも洗浄剤気化槽と、加熱装置と、から構成される気化洗浄剤生成部と;少なくとも土壌洗浄籠と、固液分離板とが、気化洗浄剤導入孔と気化洗浄剤導出孔とを備える汚染土壌設置容器内に配置されてなる、汚染土壌洗浄部と;少なくとも冷却器と、液化装置と、水−洗浄剤分離器と、減圧装置と、洗浄剤容器と、水回収容器と、から構成される水−洗浄剤循環部と;を含む、油で汚染された土壌を洗浄する洗浄システムを用いて、油で汚染された土壌を洗浄するシステムである。
【0013】
気化洗浄剤生成部は、洗浄剤を保持しておく洗浄剤気化槽と、加熱装置とから構成される。洗浄剤気化槽は、その内部に洗浄剤を収納することができる容器としての機能を有する。洗浄剤気化槽は、減圧操作に耐え、洗浄剤に対する耐久性を有する材料、たとえば金属により形成されている。洗浄剤気化槽は、たとえば容量100リットル〜10,000リットルの土壌を洗浄するのに足る洗浄剤を収納可能な容積を有することが好ましく、洗浄剤気化槽自体の容積は10リットル〜200リットルであることが好ましい。洗浄すべき土壌の容量が大きい場合は、より大容量の洗浄剤気化槽を用意することもできる。
【0014】
加熱装置は、洗浄剤気化槽に接して設けられ、洗浄剤気化槽の少なくとも一部を加熱することが可能な加熱器具であれば如何なるものを用いても良い。たとえばリボンヒータ、スチームヒータ、オイルバス、電気ヒータ、電磁加熱器等のように、直接的あるいは間接的に洗浄剤気化槽内部を加熱する手段を挙げることができる。加熱装置は、洗浄剤気化槽の外側に設けることができ、場合によっては洗浄剤気化槽の内側に設置してもよい。加熱装置で洗浄剤気化槽を加熱し、洗浄剤気化槽内部に供給された洗浄剤を、洗浄剤の沸点以上まで昇温して気化させることができる。気化した洗浄剤は、下に説明する汚染土壌設置容器に設けられた気化洗浄剤導入孔を通って汚染土壌洗浄部内部に供給される。
【0015】
汚染土壌洗浄部には、土壌洗浄籠と、固液分離板とが、汚染土壌設置容器の内部に配置されて構成されている。汚染土壌設置容器は、その内部に土壌洗浄籠および固液分離板を配置するための容器である。汚染土壌設置容器は、気化洗浄剤導入孔と気化洗浄剤導出孔とを備える。気化洗浄剤導入孔は、上記の気化洗浄剤生成部と接続されており、気化洗浄剤導出孔は、後述する水−洗浄剤循環部と接続されている。気化洗浄剤導入孔は、好ましくは汚染土壌設置容器の底面に設けられるが、汚染土壌設置容器の側面や上面に設けることもできる。一方、気化洗浄剤導出孔は、汚染土壌設置容器の好ましくは上面に設けられるが、汚染土壌設置容器の側面や底面に設けることもできる。汚染土壌設置容器は、土壌洗浄籠と固液分離板との組み合わせを少なくとも1つ以上配置することができる容積を有する。汚染土壌設置容器は、減圧に耐える耐圧性と耐溶剤性(特に気化洗浄剤に対する耐久性)とを備える、金属材料で作られていることが好ましい。
【0016】
汚染土壌設置容器内に配置されてなる、土壌洗浄籠は、その内部に洗浄すべき土壌を配置し、ここで土壌と気化洗浄剤とを接触させるための容器である。土壌洗浄籠は金属製またはプラスチック製の、網、格子板、穿孔板などから形成されている。土壌洗浄籠は固液分離板より上方に配置するのが好ましい。固液分離板は、土壌洗浄籠から落下する液化した洗浄剤や土壌中に含まれている粒径の小さい砂等を受ける板状のものである。固液分離板には、流動する固体と液体の混合物の中から固体を堰き止めることにより固体と液体とを分離する突起が設けられていることが好ましい。固液分離板の詳細な構造は後に記載する。土壌洗浄籠から落下する液体の洗浄剤と土とを固液分離板に受け止めさせるためには、固液分離板の上に土壌洗浄籠を配置することが好ましい。固液分離板と土壌洗浄籠とを接するように組み合わせて配置しても良い。また土壌洗浄籠と固液分離板との組み合わせは複数設けてもよい。土壌洗浄籠と固液分離板とをそれぞれ複数設ける場合は、土壌洗浄籠と固液分離板とを交互に設置することができる。その際、上段の固液分離板と下段の土壌洗浄籠との間に仕切り板を設けることができる。仕切り板を設けることで気化洗浄剤の流れの方向を一定に制御することができる。なお土壌洗浄籠と固液分離板の構造例は、後に詳述する。
【0017】
水−洗浄剤循環部は、冷却器、液化装置、水−洗浄剤分離器、減圧装置、洗浄剤容器、水回収容器とから主に構成される。水−洗浄剤循環部は、この他、必要な開閉弁やこれらの装置を互いに接続する配管等を備えている。水−洗浄剤循環部を構成するこれらの装置と、これらの装置を接続する配管および適切な数の開閉弁とを収納する収納手段を用意しても良い。収納手段として、収納ラックまたは収納コンテナ等の、各装置を所定の位置に配置することができる容器を用いることができる。このように各装置を収納手段内に配置することで、水−洗浄剤循環部全体を可搬型とすることもできる。これらの装置から構成される水−洗浄剤循環部を1台の車両等の移動手段に積載することができる。各装置を収納した収納手段は分解可能なものを用いても良い。これによりシステム全体を適宜分解して多様な形状で移動手段に積載し、汚染土壌が保管されている場所において適切に水−洗浄剤循環部を組み立てることができる。
【0018】
水−洗浄剤分離器は、汚染土壌洗浄容器の気化洗浄剤導出孔に接続されている。汚染土壌洗浄部から排出された気化洗浄剤と、これと共沸して排出された水蒸気が水−洗浄剤分離器に流入する。水−洗浄剤分離器は、共沸して混合している洗浄剤と水とを分離するために設けられている。水−洗浄剤分離器としては、油水分離を行うことができる装置であれば、たとえば、ディーン−シュターク水分離器などの一般的な水分離器を接続することが可能である。水−洗浄剤分離器の構造例は、後に説明する。水−洗浄剤分離器で分離された洗浄剤は洗浄剤気化槽に戻されて再利用され、分離された水は後述する水回収容器に回収される。
【0019】
冷却器は、水−洗浄剤分離器に接続される。冷却器は、汚染土壌洗浄容器の内部に導入され、洗浄に用いられた気化洗浄剤を冷却し凝結させて、再び液体とするためのものである。冷却器は、気化洗浄剤および共沸した水蒸気を冷却し凝結させることができるものであれば如何なるものを用いても良いが、たとえば還流コンデンサを用いることができる。冷却器には、チラーを設けて洗浄剤気化槽内部に還流する液体温度を調整しても良い。冷却器から還流された洗浄剤と水との混合物は水−洗浄剤分離器に落下して、ここで水と洗浄剤とに分離される。冷却器は、使用する洗浄剤の量に応じて、複数設けることができる。
【0020】
液化装置は、先に説明した冷却器で還流しきれなかった気化洗浄剤をとらえて分離するためのものである。有機洗浄剤の系外部への排出を可能な限り低減した閉鎖系または準閉鎖系にて本システムを稼働させるために、液化装置を設けておくことが非常に好ましい。液化装置は、気化洗浄剤を捕捉して分離することができるものであれば如何なるものを用いても良いが、たとえばデミスタ、または熱交換機を用いることができる。なお、液化装置でとらえきれなかった洗浄剤等を最終的に完全に捕捉するために、活性炭塔をさらに設けることもできる。液化装置にチラーを設けて温度を調整しても良い。
【0021】
減圧装置は、系全体を減圧するためのものである。減圧装置で系全体を減圧することにより洗浄剤を気化させる温度を低下させることができる。減圧装置は、系全体を減圧することができるものであれば如何なるものを用いても良いが、たとえば真空ポンプを用いることができる。
【0022】
洗浄剤容器は、洗浄剤気化槽に接続され、洗浄剤気化槽に洗浄剤を供給するために一時的に洗浄剤を保存する容器である。洗浄剤として炭化水素系溶剤、ハロゲン系溶剤等の有機洗浄剤を用いるため、洗浄剤容器も、これらの溶剤を貯蔵可能な耐久性を有するものである。
【0023】
水回収容器は、水−洗浄剤分離装置で分離された水を回収するための容器である。
【0024】
続いて、本実施形態のシステムを、図面を用いて説明する。
図1において、10は気化洗浄剤生成部、20は汚染土壌洗浄部、30は水−洗浄剤循環部である。
【0025】
気化洗浄剤生成部10は、洗浄剤を保持しておく洗浄剤気化槽101と、加熱装置102とから構成される。洗浄剤気化槽101は、その内部に洗浄剤を収納することができる容器としての機能も有するものである。
【0026】
汚染土壌洗浄部20には、土壌洗浄籠201と、固液分離板202とが、汚染土壌設置容器200の内部に配置されて構成されている。汚染土壌設置容器200は、その内部に土壌洗浄籠201および固液分離板202を配置するための容器である。汚染土壌設置容器200は、気化洗浄剤導入孔2001と気化洗浄剤導出孔2002とを備える。気化洗浄剤導入孔2001は、上記の気化洗浄剤生成部10と接続されており、気化洗浄剤導出孔2002は、後述する水−洗浄剤循環部30と接続されている。汚染土壌設置容器200内部は、土壌洗浄籠201と固液分離板202との組み合わせを少なくとも1つ以上配置することができる。
【0027】
水−洗浄剤循環部30は、冷却器3021、3022、液化装置(デミスタ)303、水−洗浄剤分離器3011、3012、3013、減圧装置304、洗浄剤容器305、水回収容器306とから主に構成される。水−洗浄剤循環部30は、この他、必要な開閉弁(3001、3002、3003、3004)、水分をおおまかに分離排除するドレンセパレータ309や、これらの装置を互いに接続する配管等を必要に応じて備えている。水−洗浄剤循環部30を構成するこれらの装置と、これらの装置を接続する配管および適切な数の開閉弁とを収納する収納手段300を用意しても良い。収納手段300は、収納ラックまたは収納コンテナ等の、各装置を所定の位置に配置することができる容器である。
【0028】
次に
図2aおよび
図2bを用いて、気化洗浄剤生成部10と汚染土壌洗浄部20とを詳細に説明する。
図2aは、
図1の気化洗浄剤生成部10と汚染土壌洗浄部20を紙面手前方向から見た側面図であり、
図2bは、
図1の気化洗浄剤生成部10と汚染土壌洗浄部20を紙面右方向から見た側面図である。
図2aおよび
図2bでは、汚染土壌洗浄容器200の内部に土壌洗浄籠201と固液分離板202とを組み合わせたものが3段配置されている。土壌洗浄籠201と固液分離板202との組み合わせの間には仕切り板203が配置されている。仕切り板203は、
図2bに示すように、汚染土壌洗浄容器200の一方の壁にのみ接するように設置されている。すなわち
図2aでは、2枚の仕切り板のうち下の仕切り板は、汚染土壌洗浄容器200の壁のうち紙面手前側に接するように設置されており、上の仕切り板は、汚染土壌洗浄容器200の壁のうち紙面奥側に接するように設置されていることになる。汚染土壌洗浄容器200の底面には気化洗浄剤導入孔2001が設けられ、気化洗浄剤生成部10で生成した気化洗浄剤2が汚染土壌洗浄部20に供給される。
図2bに示すとおり、汚染土壌洗浄容器200内部に供給された気化洗浄剤は、仕切り板203にあたって右方向へ(すなわち
図2aでは紙面手前側から奥側方向へ)移動する。これにより土壌洗浄籠201内部に配置された汚染土壌1と気化洗浄剤2とが接触する。気化洗浄剤2は汚染土壌1と接触しながら、汚染土壌1に含まれている油を土壌から追い出す。気化洗浄剤2が汚染土壌1に含まれている油を追い出す仕組みは後に詳述する。汚染土壌1に含まれている水は、高温の気化洗浄剤2により温められ水蒸気となり気化洗浄剤2と共に移動する。水蒸気を含む気化洗浄剤2は汚染土壌洗浄容器200の中を
図2aの紙面奥側、
図2bの右側に進行し、仕切り板203と汚染土壌洗浄容器200の壁との間に設けられた間隙2003を通過して上段に進行する。上段に進行した気化洗浄剤2は、
図2bに示すとおり、上の仕切り板203にあたって左方向へ移動する。これにより2段目に配置された土壌洗浄籠201内部の汚染土壌1と気化洗浄剤2とが接触する。このように、段々に配置された土壌洗浄籠201の下方から順次気化洗浄剤2が接触していき、汚染土壌1に含まれている油を追い出し、水を水蒸気に変えて汚染土壌から追い出していく。水蒸気を含む気化洗浄剤2は、汚染土壌洗浄容器200の上面に設けられた気化洗浄剤導出孔2002から排出され、水−洗浄剤循環部30に導入される。水−洗浄剤循環部30に導入された気化洗浄剤は、冷却器3021で冷やされて液化して水−洗浄剤分離器3011に落下する。水−洗浄剤分離器3011に落下した洗浄剤が水と洗浄剤とに分離される仕組みは後述する。冷却器3021で補足しきれない気化洗浄剤はデミスタ303や別の冷却器3022で冷却され、各々に接続された水−洗浄剤分離器3012、3033で水と洗浄剤とに分離される。それでも回収しきれない気化洗浄剤は、最終的に活性炭塔308で補足される。水−洗浄剤分離器3011、3012、3013で得られた洗浄剤は気化洗浄剤生成部10の洗浄剤気化槽101に返送され、得られた水は水回収容器306に回収される。水−洗浄剤分離器3011、3012、3013から洗浄剤気化槽101に確実に洗浄剤を返送するために、あるいは、水−洗浄剤分離器3011、3012、3013から水回収容器306に確実に水を回収するためには、たとえば、真空ポンプや開閉弁を経路の途中に設けることもできる。
【0029】
図3は、
図1の気化洗浄剤生成部10と汚染土壌洗浄部20を紙面右斜め方向から見た図である。
図3では、汚染土壌洗浄容器200の内部に土壌洗浄籠201と固液分離板202とを組み合わせたものが3段配置されている。土壌洗浄籠201と固液分離板202との組み合わせの間には仕切り板203が配置されている。
図3では、2枚の仕切り板のうち下の仕切り板は、汚染土壌洗浄容器200の壁のうち紙面奥に接するように設置されて、仕切り板203と汚染土壌洗浄容器200の壁との間に間隙2003を形成しており、上の仕切り板は、汚染土壌洗浄容器200の壁のうち紙面手前側に接するように設置されている。汚染土壌洗浄容器200の底面には気化洗浄剤導入孔2001が設けられ(図示せず)、気化洗浄剤生成部10で生成した気化洗浄剤2が汚染土壌洗浄部20に供給される。
図3に示すとおり、汚染土壌洗浄容器200内部に供給された気化洗浄剤は、仕切り板203にあたって紙面奥側から手前に方向へ移動する。これにより土壌洗浄籠201内部に配置された汚染土壌1と気化洗浄剤2とが接触する。気化洗浄剤2は汚染土壌1と接触しながら、汚染土壌1に含まれている油を土壌から追い出す。汚染土壌1に含まれている水は、高温の気化洗浄剤2により温められ水蒸気となり気化洗浄剤2と共に移動する。水蒸気を含む気化洗浄剤2は汚染土壌洗浄容器200の中を
図3の紙面手前側に進行し、仕切り板203と汚染土壌洗浄容器200の壁との間に設けられた間隙2003を通過して上段に進行する。上段に進行した気化洗浄剤2は、
図3に示すとおり、上の仕切り板203にあたって紙面奥側方向へ移動する。これにより2段目に配置された土壌洗浄籠201内部の汚染土壌1と気化洗浄剤2とが接触する。このように、段々に配置された土壌洗浄籠201の下方から順次気化洗浄剤2が接触していき、汚染土壌1に含まれている油を追い出し、水を水蒸気に変えて汚染土壌から追い出していく。水蒸気を含む気化洗浄剤2は、汚染土壌洗浄容器200の上面に設けられた気化洗浄剤導出孔2002から排出され、水−洗浄剤循環部30に導入される。
【0030】
図4は、汚染土壌洗浄部20に、土壌洗浄籠201を設置する様子を示している。汚染土壌1を積載した土壌洗浄籠201は、フォークリフト等を含む車等の運搬手段3を適宜利用して、汚染土壌洗浄部20の汚染土壌洗浄容器200内部に設置することができる。
【0031】
ここで気化洗浄剤が
汚染土壌に残留している油を洗浄していく仕組みを説明する。土壌のように、細かい粒子の混合物が互いに積層された物体をそのままの形で洗浄することは非常に難しい。しかしながら松本らによるQuasi two-dimensional boiling under reduced pressure (Proceedings of the First Pacific Thermal Engineering Conference, PRTEC, March 13-17, 2016)によれば、減圧環境下で、溶剤を気化させると、気化状態の溶剤が積層物の間隙部に入り込み、ここで凝縮と突沸とを繰り返しながら間隙部の溶剤が入れ替わる現象が見られる。密閉状態の容器内部の圧力を調整しつつ、溶剤を気化させると、積層物の間隙部分に気化状態の洗浄剤が入り込んでその部分に存在する油を溶解または分散させ、凝縮と突沸とを繰り返しながら新しい洗浄剤と入れ替わっていくと推察される。本実施形態のシステムは、この見地を応用し、油で汚染された土壌の粒子の空間を減圧しつつ気化洗浄剤を接触させて、土粒子の間隙部分までも洗浄することを目的とする。
【0032】
続いて
図5を用いて、固液分離板202の構造を説明する。固液分離板202は、気化洗浄剤の曝露に耐えうる金属材料や樹脂材料で形成されている。固液分離板202は、汚染土壌洗浄容器200内部では、土壌洗浄籠201の下部に配置される。汚染土壌洗浄容器200内部を減圧し、土壌洗浄籠201内部に設置された土壌1と気化洗浄剤2とが接触すると、上で説明したとおり、土壌1の粒子の間隙部分に気化洗浄剤2が入り込み、ここで凝縮と突沸を繰り返しながら間隙部の溶剤が入れ替わる。これにより気化洗浄剤2が間隙部に存在する油を溶解または分散させ、凝縮と突沸を繰り返し、新しい洗浄剤と入れ替わっていく。油を溶解または分散して凝縮した洗浄剤(汚染洗浄剤)は、土壌洗浄籠201から固液分離板202上に落下する。このとき、粒径の細かい土やシルト(固体)も共に固液分離板202に落下する場合がある。ここで固液分離板202を、水平ではなくいずれかの方向に傾いて設置しておくと、汚染洗浄剤と固体は、下方に向かって流動する。このとき固液分離板202上に複数設けられた突起2021にあたって固体が堰き止められ、汚染洗浄剤はそのまま流動する。汚染洗浄剤は固液分離板202の端に設けられた排出口2022に達すると、ここから固液分離板202の外に排出される。固液分離板202の外に排出された汚染洗浄剤は、
図1の排出管204を伝って、洗浄剤気化槽101に戻る。
【0033】
図6を用いて、水−洗浄剤分離器301の構造例を説明する。水−洗浄剤分離器として、
図6のような、U字管タイプのものを用いることができる。水蒸気を含む気化洗浄剤が汚染土壌洗浄部20から排出されて、水−洗浄剤分離器301に入る。冷却器302で冷却された気化洗浄剤は、水−洗浄剤分離器301のU字管底部に落下する。このとき、比重の関係で、洗浄剤が上層に、水相が下層となるため、水と洗浄剤とを分離することができる。上層の洗浄剤は、気化洗浄剤生成部10の洗浄剤気化槽101に返送され、下層の水は水回収容器306に回収される。
【0034】
続いて、本実施形態の洗浄システムを利用して、油で汚染された土壌を洗浄する方法を説明する。本実施形態の洗浄方法は、少なくとも洗浄剤気化槽と、加熱装置と、から構成される気化洗浄剤生成部と;少なくとも土壌洗浄籠と、固液分離板とが、気化洗浄剤導入孔と気化洗浄剤導出孔とを備える汚染土壌設置容器内に配置されてなる、汚染土壌洗浄部と;少なくとも冷却器と、液化装置と、水−洗浄剤分離器と、減圧装置と、洗浄剤容器と、水回収容器と、から構成される水−洗浄剤循環部と;を含む、油で汚染された土壌を洗浄する本実施形態の洗浄システムを用いて、油に汚染された土壌を洗浄する方法である。本実施形態の洗浄方法は、以下の工程:油で汚染された土壌を配置した土壌洗浄籠を、固液分離板上に配置し、汚染土壌設置容器内部に設置し;洗浄剤気化槽の内側に洗浄剤を供給し;減圧装置により気化洗浄剤生成部を減圧し;洗浄剤気化槽を加熱して洗浄剤気化槽の内側を洗浄剤の沸点以上にまで昇温して、気化洗浄剤を生成し;気化洗浄剤を、気化洗浄剤導入孔を通じて汚染土壌設置容器内部に導入し、気化洗浄剤を該油で汚染された土壌に曝露し;油で汚染された土壌に曝露された気化洗浄剤を、気化洗浄剤導出孔を通じて汚染土壌設置容器外部に排出して、次いで水−洗浄剤循環部に導入し;水−洗浄剤循環部に導入された気化洗浄剤を、冷却器、液化装置ならびに水−洗浄剤分離器を用いて水と洗浄剤とに分離して、分離された水を水回収容器に回収し、分離された洗浄剤を洗浄剤気化槽に循環することを含む。本実施形態の洗浄方法は、土壌に含有されている油を洗浄剤で洗い流すことを基本とする。シルト、砂等の種々の粒径を有する鉱物粒子の集合である土は、これらの粒子に油が吸着していることがあり、この残留油を完全に洗浄することが難しいことが知られている。まず、油で汚染された土壌を配置した土壌洗浄籠を、固液分離板上に配置し、汚染土壌設置容器内部に設置する(
図4および
図5参照)。土壌洗浄籠は、金属製またはプラスチック製の、網、格子板、穿孔板などから形成されており、その内部に配置された油で汚染された土壌に外気(すなわち気化洗浄剤)を曝露させることができるようになっている。固液分離板は金属または樹脂製の板、または皿状のものであり、その表面には複数の突起が設けられ、固体(シルト、砂、土等)と液体(洗浄剤)とを分離することができる構造となっている。
【0035】
続いて洗浄剤気化槽の内側に洗浄剤を供給する(
図1参照)。洗浄剤は、油を溶解または少なくとも分散させることができかつ油よりも沸点が低いものが好ましい。このような洗浄剤として、炭化水素系溶剤、ハロゲン系溶剤等を含む有機溶剤を用いることができる。たとえば、炭素数が8〜15のアルカン、アルケン、シクロアルカン又はアルケン系溶剤(特に、炭素数が11〜13のアルカンやアルケン系溶剤)や、炭素数が1〜12のハロゲン系溶剤を用いることができる。具体的には、土壌に存在している油を溶解または分散しやすい炭化水素系の有機溶剤である、アクアソルベントG71(アクア化学株式会社)、HC−370(東ソー株式会社)、MD−250(武蔵テクノケミカル株式会社)、Linpar12(Sasol Limited)、MACSOL−P(NSI株式会社)等のドデカンを主成分とする市販の溶剤を用いることができる。この他、場合により水、水系溶剤、アルコール等を用いることも可能である。洗浄剤気化槽に供給する洗浄剤の量は、洗浄すべき土壌の容積や、汚染の度合いにもより調整することができる。たとえば、土壌の容積の20%以下、特に10%以下の洗浄剤を供給すれば、土壌全体にくまなく気化洗浄剤を拡散させることができ、土壌内部に存在する油を漏れなく溶解または分散させることができる。場合によっては土壌の容量の5%以下の洗浄剤を供給するだけで、土壌に含まれている油をすべて洗浄することも可能である。たとえば、土壌の容量が1,000リットルであれば、100リットル、場合によっては20リットル未満の洗浄剤を洗浄剤気化槽内に供給すればよい。
【0036】
洗浄剤を洗浄剤気化槽に供給した後に、減圧装置により気化洗浄剤生成部を減圧する(
図1参照)。減圧装置は、水−洗浄剤循環部に配置されていることが好ましい。減圧装置としては、洗浄剤気化槽、汚染土壌洗浄容器ならびに水−洗浄剤循環部の配管からなる洗浄システム系内全体を減圧することができるものであり、たとえば真空ポンプを用いることができる。洗浄剤気化槽の内部を減圧装置により大気圧より低い圧力とすることにより、洗浄剤の気化を促進することができる。すなわち、減圧装置を利用すれば、洗浄剤を比較的低温で気化させることができる。系内を外部より低圧にするので洗浄剤が外部に漏洩することがなく、洗浄剤への引火を防止することができる。
【0037】
次いで洗浄剤気化槽を加熱して、洗浄剤気化槽の内側を洗浄剤の沸点以上にまで昇温して、気化洗浄剤を生成する(
図1参照)。洗浄剤気化槽の内部または外部には加熱装置が設置されている。加熱装置を作動させて洗浄剤気化槽を加熱し、好ましくは、洗浄剤気化槽の内側を洗浄剤の沸点以上にまで昇温する。洗浄剤気化槽内の圧力にもよるが、洗浄剤気化槽内の圧力を大気圧より低い圧力に維持して洗浄を行う場合は、一般的には洗浄剤気化槽内が50℃〜250℃、好ましくは100℃〜200℃の範囲の温度になるように加熱すると良い。こうして、洗浄剤気化槽の内側に供給された洗浄剤を気化させ、気化洗浄剤を、気化洗浄剤導入孔を通じて汚染土壌設置容器内部に導入し、気化洗浄剤を汚染土壌洗浄容器内部に配置された油で汚染された土壌に曝露させることができる。なお、ここで気化とは、一般的には液体が気体に変化する現象をいい、液体表面からの蒸発と、液体内部からの沸騰を含む概念である。液体である洗浄剤を洗浄剤気化槽の内側に供給し、次いでこれを加熱すると、まず洗浄剤表面から蒸発が起こる。洗浄剤気化槽の内側の温度が上昇してやがて洗浄剤の沸点に達すると、洗浄剤内部から沸騰が起こり、洗浄剤は完全に気化した状態となる。気化した洗浄剤はまず洗浄剤気化槽内部の空間に拡散し、汚染土壌洗浄容器に設けられた気化洗浄剤導入孔を通って、汚染土壌洗浄容器内に配置された土壌洗浄籠の内側に到達し、汚染土壌の粒子の隅々までに接触する。先に説明した松本らの知見によると、減圧環境下で、溶剤を気化させると、気化状態の溶剤が積層物の間隙部に入り込み、ここで凝縮と突沸とを繰り返しながら間隙部の溶剤が入れ替わる現象が見られる。この現象を利用して、油で汚染された土壌が配置された汚染土壌洗浄容器内部を減圧しつつ気化洗浄剤を汚染土壌に接触させて、土壌の粒子の間隙部分までも洗浄することができる。気化洗浄剤は土粒子の隙間にまで均一に拡散する。気化洗浄剤が汚染土壌に触れると、気化洗浄剤が凝縮し、当該部分の油を溶解または分散する。一方、土壌粒子同士の間隙のよう
な部分では、気化洗浄剤が該間隙部分に入り込んで突沸と凝縮とを繰り返し、当該部分の汚染油を溶解または分散させる。気化洗浄剤による油の溶解または分散が生じた部分は凝縮熱によって加熱される。これにより、土壌において気化洗浄剤と接触した部分とそうでない部分とで温度分布が生じる。すると、未だ洗浄が行われていないかあるいは洗浄が不十分である温度の低い部分では、供給された気化洗浄剤が凝縮し易くなる。このように汚染土壌を均一に洗浄することができる。こうして汚染土壌に曝露された気化洗浄剤は、汚染土壌に残留している油を溶解または分散させていく。油を溶解または分散した洗浄剤は土壌洗浄籠から固液分離板に落下し、固液分離板の排出口から排出される(
図5参照)。
【0038】
油で汚染された土壌に曝露された気化洗浄剤を、気化洗浄剤導出孔を通じて汚染土壌設置容器外部に排出して、次いで水−洗浄剤循環部に導入する(
図1参照)。ここで、油で汚染された土壌が水を含む場合、これに曝露された高温の気化洗浄剤は水と共沸する。したがって気化洗浄剤導出孔を通じて汚染土壌設置容器外部に排出される気化洗浄剤には水蒸気が含まれていることになる。
【0039】
水−洗浄剤循環部に導入された気化洗浄剤を、冷却器、液化装置ならびに水−洗浄剤分離器を用いて水と洗浄剤とに分離して、分離された水を水回収容器に回収し、分離された洗浄剤を洗浄剤気化槽に循環する(
図1参照)。水蒸気が含まれた気化洗浄剤は、冷却器で冷却されて液化し、水−洗浄剤分離器に入る。ここで水と洗浄剤とに分離される(
図6参照)。分離した洗浄剤は、洗浄剤気化槽に返送され、分離した水は水回収容器に回収される。
【0040】
さらに図面を用いて、実施形態の洗浄方法の具体的な実施態様を説明する。代表的な環境汚染物質であるポリクロロビフェニル類(PCB)を含む絶縁油(PCB汚染油)と水とを含有する汚染土壌1を土壌洗浄籠201内部に配置したものを用意して、
図4に示すように汚染土壌洗浄容器200に設置する。次いで
図1のように水−洗浄剤分離器3011、3012、3013、冷却器3021、3022およびチラー307、デミスタ303、真空ポンプ304、活性炭塔308、ドレンセパレータ309、洗浄剤容器305、水回収容器306、開閉弁3001〜3004をそれぞれ収納容器300内に接続して水−洗浄剤循環部30を設置する。まず開閉弁3002、3003を開け、開閉弁3002、3004を閉じて減圧装置(真空ポンプ)304を作動させて、洗浄剤容器305から洗浄剤気化槽101内に洗浄剤を供給する。ここで洗浄剤としてドデカンを主成分とする洗浄剤を用いることができる。次いで開閉弁3001、3004を開け、開閉弁3002、3003を閉じて真空ポンプ304を作動させて洗浄剤気化槽101内部ならびに汚染土壌洗浄容器202の内部を減圧する。次いで加熱装置102を作動させる。このとき真空ポンプ304も作動させている。洗浄剤気化槽101に導入された洗浄剤が蒸発し始め、やがて洗浄剤気化槽101の内側の温度が洗浄剤の沸点以上に達すると、気化洗浄剤2が洗浄剤気化槽101内部に拡散する。拡散した気化洗浄剤2は汚染土壌洗浄容器200に設けられた気化洗浄剤導入孔2001を通って汚染土壌洗浄容器200に供給される。加熱と減圧を続けると、気化洗浄剤2が仕切り板204にあたり、紙面手前から紙面奥方向に進行する。そして気化洗浄剤2は、土壌洗浄籠201内に配置された汚染土壌1と接触し、凝縮あるいは突沸を繰り返しながら入れ替わり、PCB汚染油を溶解または分散させて液体洗浄剤となって固液分離板202に落下する。これと同時に気化洗浄剤2は汚染土壌1に含まれている水を蒸発させて共に流れていく。気化洗浄剤2は、汚染土壌洗浄容器200の紙面奥側の壁まで進行し、壁にあたると、ここで進行方向を紙面手奥から紙面手前方向に変える。先と同様、気化洗浄剤2は土壌洗浄籠
201内に配置された汚染土壌1と接触し、凝縮あるいは突沸を繰り返しながら入れ替わり、PCB汚染油を溶解または分散させて液体洗浄剤となって固液分離板202に落下する。これと同時に気化洗浄剤2は汚染土壌1に含まれている水を蒸発させ共に流れていく。PCB汚染油を溶解または分散させた液体洗浄剤は排出口204を伝って汚染土壌洗浄容器200底部に落下し、気化洗浄剤導入孔2001を通って洗浄剤気化槽101に返送される。気化洗浄剤2は、このようにして、途中汚染土壌1に接触して汚染土壌1に含まれている水を蒸発させながら共沸して、気化洗浄剤導出孔2002から汚染土壌洗浄容器200の外に排出される。水蒸気と共沸した気化洗浄剤は、水−洗浄剤循環部30に入り、ここで液化装置3021、3022、デミスタ303、および水−洗浄剤分離器3011、3012、3013により水と洗浄剤とに分離される。分離により得られた洗浄剤は洗浄剤気化槽101に返送され、水は水回収容器306に回収される。
【解決手段】 少なくとも洗浄剤気化槽と、加熱装置と、から構成される気化洗浄剤生成部と、少なくとも土壌洗浄籠と、固液分離板とが、気化洗浄剤導入孔と気化洗浄剤導出孔とを備える汚染土壌設置容器内に配置されてなる、汚染土壌洗浄部と、少なくとも冷却器と、液化装置と、水−洗浄剤分離器と、減圧装置と、洗浄剤容器と、水回収容器と、から構成される水−洗浄剤循環部と、を含む、油で汚染された土壌を洗浄する洗浄システムを提供する。洗浄システムを利用して、油で汚染され、水分を含有する土壌から油と水分とを除去洗浄することができる。