(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6124139
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】低赤血球溶解性の抗微生物ペプチド、医薬組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 7/06 20060101AFI20170424BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20170424BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20170424BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20170424BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20170424BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20170424BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20170424BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20170424BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20170424BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
C07K7/06ZNA
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/70 401
A61K9/70 405
A61K9/72
A61K37/02
C07K7/08
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-501604(P2013-501604)
(86)(22)【出願日】2011年2月14日
(65)【公表番号】特表2013-523661(P2013-523661A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】CN2011070970
(87)【国際公開番号】WO2011120359
(87)【国際公開日】20111006
【審査請求日】2013年8月19日
【審判番号】不服2016-3729(P2016-3729/J1)
【審判請求日】2016年3月10日
(31)【優先権主張番号】201010134436.1
(32)【優先日】2010年3月29日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512244831
【氏名又は名称】ライズ テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジャ−ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】フアン,クオ−チュ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ヒス−ツ
(72)【発明者】
【氏名】ユ,フイ−ユアン
【合議体】
【審判長】
中島 庸子
【審判官】
三原 健治
【審判官】
瀬下 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2006/058436(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0072990(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第1660889(CN,A)
【文献】
Biochim.Biophys.Acta.,2009年,1788(5),pp.1193−1203
【文献】
J.Bacteriol.,2006年,188(1),pp.328−334
【文献】
Appl.Environ.Microbiol.,2006年,72(5),pp.3302−3308
【文献】
J.Comb.Chem.,2003年,5(1),pp.33−40
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C07K 1/00-19/00
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
UniProt/Geneseq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:4〜7からなる群から選択される、
抗微生物ペプチド。
【請求項2】
前記抗微生物ペプチドの形状が直鎖状である、請求項1に記載の抗微生物ペプチド。
【請求項3】
前記抗微生物ペプチドの形状が環状である、請求項1に記載の抗微生物ペプチド。
【請求項4】
抗微生物ペプチドおよび薬学的に許容できる担体を含む、抗微生物の医薬組成物であって、
前記抗微生物ペプチドが、SEQ ID NO:4〜7からなる群から選択される、
抗微生物の医薬組成物。
【請求項5】
前記担体が、賦形剤、希釈剤、増粘剤、充填剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、油脂性もし
くは非油脂性基剤、界面活性剤、懸濁化剤、ゲル化剤、補助剤、防腐剤、抗酸化剤、安定剤、着色剤または香料である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物の剤型が、包埋体、浸漬液、内服液、パッチ、粉末、錠剤、注射液、懸濁液、外用液、滴剤、リニメント剤、塗布剤、吸収剤、クリーム、油薬、軟膏、泥膏またはゲルである、請求項4に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗微生物ペプチドに関し、特に低赤血球溶解性の抗微生物ペプチド、医薬組成物およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の抗生物質に対する薬剤耐性を獲得した菌株の出現により、多くの動物性由来の抗菌ペプチドを含む、新しい治療用試薬の研究が進められている。現在、宿主に元から備わっている防御機構において、これらの抗菌ペプチドが相当重要な役割を担っていることがわかっている。植物、昆虫、両生類および哺乳動物の全てが抗菌ペプチドを有する可能性があり、この抗菌ペプチドの抗生物質特性は、細菌、真菌、さらにはいくつかのウイルスに対抗することができる。この種の抗菌ペプチドは脂質と結合し(>95パーセント)、迅速に脂質二重層を分離し、膜の完全性を破壊することができる。一方で、細菌の平行な脂質二重層に小さく短い伝導を増加させ、細胞膜を部分的に脱分極させ、元の電位勾配を破壊することもできる。
【0003】
この種の抗菌ペプチドの宿主防御における保護機能は、ショウジョウバエ実験により証明されている。ショウジョウバエが微生物に感染後、抗菌ペプチドの発現量が減少した場合、その生存率は大幅に低下することがある。哺乳動物における、肺嚢胞性線維症の患者およびマウスの不完全な殺菌性(defective bacterial killing)も、この種の抗菌ペプチドの宿主防御における保護機能を証明することができる。
【0004】
哺乳動物に発現する抗菌ペプチドは、システインを豊富に含むディフェンシン(α、βディフェンシン)および多様なカテリシジン(cathelicidin)類に分類される。カテリシジン類は、高度に保存されたシグナル配列およびプロ領域のカテリン(cathelin)と、C末端領域に位置し可変性を有する抗菌配列を含む。アミノ酸の成分および構造により、カテリシジンファミリーはさらに3つのグループに分類される。1グループ目は両親媒性のα−ヘリックスペプチドを有し、例えばLL−37、CRAMP、SMAP−29、PMAP−37、BMAP−27およびBMAP−28である。2グループ目は、アルギニン/プロリンまたはトリプトファンを豊富に含むペプチドで、例えばBac5、Bac7、PR−39およびインドリシジン(indolicidin)である。3グループ目はシステインを含むペプチドで、例えばプロテグリン(protegrins)である。多くのカテリシジンは、負電荷を帯びたカテリン領域および正電荷を帯びたC末端領域の間に、独特なエラスターゼの切断作用部位を有する。この作用部位におけるタンパク質加水分解反応は、ウシまたはブタの好中球、リンパ球で観察されており、抗菌活性に必須である。これらの抗菌ペプチドはすべて幅広い抗菌効力を有するが、赤血球に対して異なる溶血活性を有するため、その治療的潜在力は大幅に制限される。したがって、本発明は低赤血球溶解性の抗微生物ペプチドを提供する。この抗微生物ペプチドは良好な抗菌活性を有するだけでなく、同時に低赤血球溶解性の特徴も有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
抗菌ペプチドは通常、低分子(<5kDa)であり、幅広い活性、および宿主の防御システムにおいて、微生物感染に対抗する重要な関連特性を有する。したがって、低分子量の抗菌複合体を設計する起点とすることができる。さらに、疎水性および帯電性領域を兼ね備えるため、両親媒性構造に折り畳むことができる潜在力を有し、この特性も、細胞膜を加水分解する能力に関連する。しかし、これらの抗菌ペプチドは、幅広い抗菌効力を有するが、赤血球に対し異なる溶血活性を有するため、その治療的潜在力が制限される。
【0006】
したがって、本発明の目的は、低赤血球溶解性の抗微生物ペプチド、組成物及びその使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明において、従来技術の問題を解決するために採用した技術的手段は、低赤血球溶解性の抗微生物ペプチドであり、(P
1)
M(A
1X
1X
2)
N(P
2)
Xで示されるアミノ酸配列を有する。式中、P
1は塩基性アミノ酸であり、アルギニン(Arg)およびリシン(Lys)からなる群から選択されることを含む。A
1は芳香族アミノ酸またはアラニンであり、トリプトファン(Trp)、フェニルアラニン(Phe)およびアラニン(Ala)からなる群から選択されることを含む。X
1は塩基性アミノ酸または非極性アミノ酸であり、アルギニン(Arg)、リシン(Lys)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、アラニン(Ala)およびイソロイシン(Ile)からなる群から選択されることを含む。X
2は塩基性アミノ酸または非極性アミノ酸であり、アルギニン(Arg)、リシン(Lys)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、アラニン(Ala)およびイソロイシン(Ile)からなる群から選択されることを含む。P
2は塩基性アミノ酸であり、アルギニン(Arg)およびリシン(Lys)からなる群から選択されることを含む。さらにM、Xの数は、それぞれ独立して0〜2、N>2のとき、A
1はアラニン(Ala)であってよく、このアラニン(Ala)の残基は(N−2)個を超えない。
【0008】
1次および2次構造の修飾に関して、臨床において重要な菌株に抵抗する活性を有するペプチドを設計し、この種のペプチド構造におけるいくつかの重要な特徴を理解することにより、天然の抗菌ペプチドの活性または毒性を改善する。この種の抗菌ペプチドは、幅広い用途の新型抗菌ペプチドであり、トリプトファンを豊富に含む配列で、抗生物質を作るのに利用することができる。抗菌活性および低溶血の特性を兼ね備え、グラム陽性・陰性菌、原生動物、真菌およびエンベロープを有するヒト自己免疫不全ウイルス(HIV)に幅広く抵抗するために設計された抗菌ペプチドである。
【0009】
好ましい実施例において、本発明の抗微生物ペプチドはSEQ ID NO:1〜7からなる群から選択される。この抗微生物ペプチドの形状は直鎖状または環状であり、アセチル化、アミド化、ホルミル化、ヒドロキシル化、脂質修飾、メチル化またはリン酸化の修飾をさらに含んでよい。
【0010】
本発明で採用した技術的手段により、本発明の抗微生物ペプチドを用いて、天然抗菌ペプチドの活性または毒性を改善することができる。将来的に、抗生物質、医薬組成物またはその他の臨床における抗菌用途の提供に応用することができる。さらに抗菌活性および低溶血の特性を兼ね備え、将来的に、さらに幅広くグラム陽性・陰性菌、原生動物、真菌およびウイルスなどの微生物に抵抗することができる。
【0011】
好ましい実施例において、本発明の抗微生物ペプチドおよび薬学的に許容できる担体は、抗微生物の医薬組成物として製造することができる。前記担体は、賦形剤、希釈剤、増粘剤、充填剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、油脂性もしくは非油脂性基剤、界面活性剤、懸濁化剤、ゲル化剤、補助剤、防腐剤、抗酸化剤、安定剤、着色剤または香料である。前記医薬組成物の剤型は、包埋体、浸漬液、内服液、パッチ、粉末、錠剤、注射液、懸濁液、外用液、滴剤、リニメント剤、塗布剤、吸収剤、クリーム、油薬、軟膏、泥膏またはゲルであり、経口、経皮吸収、注射または吸入の方式により、哺乳動物に使用することができる。
【0012】
本発明で採用した具体的実施例について、以下の実施例および添付図により、さらなる説明を行う。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、ヒト赤血球細胞を用いて、メリチン(Melittin)、Pem−2252LおよびPem−2254Lの赤血球溶解性を測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0014】
ペプチドの設計、合成、精製および特性
本発明の抗微生物ペプチドおよびその命名は以下の表1に示す通りである。各アミノ酸は、すべて3文字のアルファベットで表す。
【0015】
【表1】
【0016】
C:環状、L:直鎖状
【0017】
全ての環状および直鎖状ペプチドは、固相合成法により合成したものである。標準的なFmoc、すなわち(N−(9−フルオレニル)メチルオキシカルボニル基)を使用し、PAL樹脂(5−(4−Fmoc−アミノメチル−3,5−ジメトキシフェノキシ)−吉草酸−メチルベンズヒドリルアミン樹脂)上で化学的に合成した。これらの樹脂のFmoc保護基は、20%のピペリシン/ジメチルホルムアミド(piperidine/DMF)により除去した。反応時間は約1〜1.5時間であり、その後水およびニンヒドリン試験(ninhydrin test)により確定した。続いて、95%のトリフルオロ酢酸(TFA)を加えて1〜1.5時間混合し、樹脂から未加工のペプチドを切り出し、さらに逆相高圧液体クロマトグラフィーにより精製した。ここで、逆相高圧液体クロマトグラフィーには、セミ分取(semi−preparative)C18逆相カラムを使用した。精製の移動相は、アセトニトリル(acetonitrile)および水の混合比率を、時間により濃度をグラジエント変化させた。異なるアセトニトリル(acetonitrile)および水の混合比率により、異なる分子を分離した。波長225および280ナノメートルで検出し、流速は4ミリリットル/分とした。得られた主要なペプチド産物は、高速原子衝撃質量分析(FAB−MS、fast atom bombard mass spectrophotometry)により分子量を決定した。各ペプチドの純度は、逆相高圧液体クロマトグラフィーカラムを通して確定した。
【実施例2】
【0018】
in vitroによるペプチド活性の測定
本実施例で行ったin vitroによるペプチド活性の測定には、最小発育阻止濃度(MIC)試験を採用した。つまり測定する生物体の成長を抑制または減少させるのに必要な最小ペプチド濃度である。本実施例で使用した菌株は、それぞれ大腸菌(E.coli,ATCC25922)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa,ATCC27853)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus,ATCC29213)である。
【0019】
一夜培養した菌液を、ミューラーヒントン(Meuller−Hinton)培地を用いて希釈し、約1ミリリットル当たり10
5個のコロニーを含有する接種物とした。さらに異なる濃度のポリペプチドを、希釈した菌液に添加した。37℃、18時間培養後、それのリン酸緩衝液(PBS、pH7.4)中の混濁度を分析した。各ペプチドの最小発育阻止濃度は、それぞれ異なる時刻に3回測定し、平均値を求めた。その結果は表2に示す通りである。これらの結果によると、Pem−2251LおよびPem−2254Lが、大腸菌、緑膿菌および黄色ブドウ球菌に対し、好ましい抗菌活性を有することが確認された。特にPem−2254Lペプチドの、大腸菌、緑膿菌および黄色ブドウ球菌に対する最小発育阻止濃度値は、それぞれ1.565、1.565および3.125(μg/ml)であった。他に、一般にペプチドに対し、その生物活性に影響を及ぼさないことを前提として行う1次および2次構造の修飾、例えばアセチル化、アミド化、ホルミル化、ヒドロキシル化、脂質修飾、メチル化またはリン酸化の修飾について、さらにin vitroによるペプチド活性の測定を行った。結果はその抗菌特性も示すことができる。
【0020】
【表2】
【0021】
続いて、特に表2の試験で好ましい結果のポリペプチド、Pem−2251LおよびPem−2254Lの2種のポリペプチドについて、1×リン酸緩衝液における、枯草菌(Bacillus substilis)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、有芽胞桿菌(Bacillus pumilus)、セレウス菌(Bacillus cereus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、大腸菌(E.coli)を含む、各種の異なる菌株に対する最小発育阻止濃度値を測定した。結果は表3に示す通りであり、各種の異なる菌株に対する最小発育阻止濃度値は、Pem−2251LおよびPem−2254Lで、依然として良好な抗菌活性を有することを確認することができた。
【0022】
【表3】
【実施例3】
【0023】
膜透過度の分析
ペプチドの外膜透過度は、1−N−フェニルナフチルアミン(NPN)の吸収を測定することにより決定した。完全な大腸菌細胞のNPNは、液体環境で弱い蛍光吸収を示すが、疎水性の環境では強い吸収値を示す。したがって、NPNが疎水性であることを表し、直接外膜透過度を測定することができる。一般に、正常な状況において、大腸菌のNPNの吸収は少量であるか、または吸収しないことさえある。いくつかの膜透過力を有する化合物が存在する状況、例えばエチレンジアミン四酢酸、ポリミキシンB(polymyxinB)、ネオマイシンまたは抗菌ペプチドなどでは、NPNは部分的に細菌の外膜を透過することができ、蛍光吸収値が増加する。本実施例の手順を以下のように簡単に述べる。一夜培養した菌液1ミリリットルを50ミリリットルの培養液に添加し、OD
600が0.4〜0.6に相当するまで37度で振盪培養し、3500rpm、10分間で細胞を分離した。緩衝液を用いて洗浄し、遠心分離した細胞がOD
600=0.5になるまで懸濁した。1ミリリットルを透明のキュベット(cuvette)に取り、2〜5秒測定した。0.5ミリモルのNPNを20マイクロリットル添加し、混合して均等にした後、再び2〜5秒測定した。さらに異なる濃度の抗微生物ポリペプチドを10μl添加し、混合して均等にし、蛍光吸収値を測定した(1〜5分間)。このうち蛍光の吸収値は、ポリペプチドの濃度に伴って変化した。NPNの吸収が最大値の50%に達するのに必要なポリペプチド濃度をP
50と定義した。実験結果により、NPN吸収の測定において、Pem−1001LおよびPem−2251Lペプチドが、膜と結合する能力を有することが示された。データは表4に示す通りである。
【0024】
【表4】
【実施例4】
【0025】
赤血球溶解性の測定
ヒト赤血球細胞(hRBC)を利用して、メリチン(Melittin)、Pem−2252LおよびPem−2254Lの赤血球溶解性を測定した。このうちメリチンは毒蜂から抽出したペプチドであり、赤血球細胞に対して高い溶解性を有し、実験計画におけるコントロール群とした。実験プロセスは、エチレンジアミン四酢酸を含む赤血球(hRBC)をリン酸塩緩衝液(PBS、pH7.4)(800g、10分間)で3回洗浄し、最後にPBSに懸濁し、10%(v/v)に希釈した後、各チューブに50マイクロリットルずつ分注した。その後、PBS緩衝液に溶解したペプチドを50μlの10%hRBC溶液に添加し、37℃で1時間培養し(最終的な赤血球濃度は5%v/v)、800gで10分間遠心分離した。前処理した赤血球および異なる濃度のペプチドを培養し、それぞれその溶血性の比率(溶解比率ともいう)が得られた(このうち、溶解比率0は抗菌ペプチドの代わりにPBSを使用し、溶解比率100は抗菌ポリペプチドの代わりに1%TritonX−100を使用した実験結果である)。結果は表5および
図1に示す通りであり、Pem−2252Lがその他の抗菌ペプチドと比較して、赤血球に対し、顕著に低い溶血性を有していることが示された。5μg/ml、50μg/mlおよび400μg/ml濃度における溶解比率は、それぞれ0.45%、1.52%および16.35%であった。
【0026】
【表5】
【0027】
以上の実施例を総合すると、本発明の抗微生物ペプチドは、天然抗菌ペプチドの活性または毒性を改善することができる。将来的に、抗生物質、医薬組成物またはその他の臨床における抗菌用途の提供に利用することができる。さらに抗菌活性および低溶血の特性を兼ね備え、将来的に、さらに幅広くグラム陽性・陰性菌、原生動物、真菌およびウイルスなどの微生物に抵抗することができる。
【0028】
本発明の抗微生物ペプチドは、さらに薬学的に許容できる担体を含み、抗微生物の医薬組成物の作製に利用することができる。前記担体は、賦形剤、希釈剤、増粘剤、充填剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、油脂性または非油脂性基剤、界面活性剤、懸濁化剤、ゲル化剤、補助剤、防腐剤、抗酸化剤、安定剤、着色剤または香料である。構成される医薬組成物の剤型は、包埋体、浸漬液、内服液、パッチ、粉末、錠剤、注射液、懸濁液、外用液、滴剤、リニメント剤、塗布剤、吸収剤、クリーム、油薬、軟膏、泥膏またはゲルである。経口、経皮吸収、注射または吸入の方式により、哺乳動物に使用される。
【0029】
以上の実施例により、本発明で提供される抗微生物ペプチドが産業上の利用価値を有するため、本発明が特許の重要な条件に適合していることがわかる。しかし、以上の記載は、本発明の好ましい実施例の説明に過ぎず、当業者は上記の説明に基づき、その他の種々の改良を行うことができる。しかし、これらの変更は、依然として本発明の精神および以下に定義する特許範囲に属する。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]