【文献】
DUFFY et al.,"Dyslexia: Automated diagnosis by comuterized classification of brain electrical activity",Annuals of Neurology,米国,1980年 5月,Volume 7, Issue 5,p.421-428
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記誘発反応定量化アルゴリズムが、推論された基線及びピーク間の測定によって、ピークレイテンシー及びピーク振幅を含む誘発反応特徴の定量的測度を計算することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の方法。
前記診断上のスコア中の点が、前記患者の誘発反応の定量的測度とデータベースからの標準的値との間の違いの統計評価に基づいて割り当てられることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
前記予後スコア中の点は、平均化された波形特徴と、同じ疾病を有すると診断された患者の歴史的な結果との間の統計上の関係性に基づいて割り当てられることを特徴とする、請求項7乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【背景技術】
【0003】
コンピューター断層装置(CT)及び磁気共鳴画像法(MRI)などの画像診断方法は、脳の構造の傷害の程度を測定するために医師によって長く用いられているが、脳幹の上の脳構造の機能的統合性に関する臨床試験は、神経心理学の分野へと伝統的に委ねられている。神経心理学の評価は典型的に、言語反応及び行動反応を提供できる、覚醒した(awake, alert)患者にて実行されるだけである、一連の心理試験及び行動試験を含む。しかしながら、重度の外傷性脳損傷(TBI)は一般的に、意識消失及び/又は麻痺を誘発し、標準の神経心理学試験を不可能にする。あいにく、このことは全て、多くの脳損傷及び疾患(例えば脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、自閉症など)に対してよくあることである。根本的な問題は、行動の反応(運動又は言語)に対する依存性に由来し、それはまた、脳損傷によってある程度まで例外なく影響を受ける。このことは、行動反応を使用して評価を実行する能力を損ない、それにより定義可能に限定される。
【0004】
適例:長年の間、自覚のある意識を検査するための「最高水準(gold standard)」は、グラスゴー昏睡尺度(GCS)であった。35年以上前に最初に報告された、この長年の臨床的手段は、JFK Coma Rocovery Scale−Revisedのような、より複雑な測定に従ってきた。しかしながら、すべては意識の行動の指標に依存する。その結果、誤診率の推定は、2人の内ほぼ1人の割合である43%もの高さである。議論は、Terri Schiavo及びRom Houbenのような症例からの意識向上と共に、この問題の根本にしばしば由来する。それ故、行動的に反応がない患者において、大脳皮質の機能性、及び恐らく最も重要なことには、自覚のある意識を促進する認知機能を評価する、臨床的な方法論の憂慮すべき欠如が残る。
【0005】
行動の不反応性の最も極端な状態は、昏睡、即ち、脳のより高い構造への上行性の興奮性投射を介して覚醒を生ずる原因である、重大な脳幹構造の機能障害によって引き起こされると考えられる状態である。昏睡から、患者は植物状態(VS)へと進行し得る。VSが1−3か月以上続くと、持続的であると考えられる。昏睡とは対照的に、VSは、無傷の脳幹機能及び正常な睡眠・覚醒サイクルを特徴とする。しかしながら、意図的又は自発的な行動の外面的な徴候は存在しない。実際は、弱く一貫しない自発的な行動の存在は、VSの間の重大な特徴的なマーカー、及び意識の別の変更された状態、最小限に自覚のある状態(MCS)である。この区別は、反射的な動作と散発的で弱い自発行為の間の微妙な違いを計測しなければならない臨床医にとって、非常に困難な課題である。また別の疾病、閉込め症候群(LIS)は、昏睡を模倣し得る。LISを有する患者は、完全に意識はあるが、深く麻痺しており、自身の四肢だけでなく、舌、及び口蓋、顎及び顔の下部を制御する筋肉にわたる自発的な制御を欠く。意識の徴候は時に、目の開閉の自発的な制御を通じて得られ得るが、いくつかの病態は、この能力の損失、並びに瞳孔反射の損失をもたらし得る。これらの状況の下で、LISはさらに脳死を模倣し得る。
【0006】
現在、MCSに対してVSを評価するための標準プロトコルは存在しない。意識の変更されたレベルを有する患者の異なる状態の間の鑑別診断の難しさ及び複雑さから判断すると、誤診が非常に一般的である(上述のように50%近く)ことは驚くべきことではない。高い割合は、考慮すべき医学、倫理、及び法的な懸念を生じ、自覚のある意識のより優れた診断の必要性を優先する。恐らく等しく重要なのは、個体、そのファミリー及び社会に対する負担の減少である。ほとんど出来ることがない場合が存在する一方で、個体は自覚的に意識があると適切に評価されると、薬理学的処置、リハビリテーション、及び補強トレーニングを通して積極的な介入を追求することが可能である。個体が自覚のある意識を欠くものと見なされれば、これらの試みのいずれも合理的に正当化され得ない。
【0007】
さらに重大なことは、生命を維持する治療の停止の可能性である。生命維持を保留又は中止する決定は、患者の予後及び意識のレベルの評価に基づき、家族と協力して医師によってなされる。Terry Schiavoのものなどの症例は、行動的に反応がない患者における自覚のある意識の臨床的な評価に対し、巨大なメディアの注目をもたらした。しかしながら、Schiavoの場合は、Schiavoが生きることを望んでいたかどうかについて正反対の信条を有していた、Schiavoの母とその夫の間の法廷闘争によってのみ注目を得た。生命維持の停止は、実際には比較的一般的なものである。カナダでは、危篤の患者の10−20%は成人の集中治療室で亡くなり、これらの死亡の65−79%は処置の中止又は保留に従う。ほとんどの臨床設定におけるICUベッド(ICU bed)の極端な需要のために、処置又は緩和ケアを終了する臨床医に対するプレッシャーが増加していることを考慮して、行動の反応に対する能力に依存する愚行に従わない、意識を評価する方法を進展させることは、この上なく重大である。
【0008】
近年、意識の評価における機能的な神経画像検査方法の適用において関心が増加している。陽電子射出断層撮影法(PET)及び機能的なMRIなどの機能的な神経画像検査方法は、優れた空間の精度を有する、神経細胞学的なパターンの神経の活性化の画像を提供する。PETは、MCS患者が、単純な音に反応してPVS患者より広範囲の、恐らくは高レベルの皮質の処理を示す傾向があることを実証するために使用された。様々な研究は、VSにおける残りの言語処理を実証するために、しばしば被験体自身の名前に対してPETとfMRIを使用した。他の研究は、家を歩き回る又はテニスをするなどの異なる課題を実行することを想像する要求に一致する患者によって実証されたように、言語理解及び意志の両方を立証したことを主張する。全体として、これらの方法は、行動的に反応がない患者の自覚のある意識を評価する有望な手段を提供する。
【0009】
しかしながら、機能的MRI測定は、変更された自覚のある意識を有する患者を取得し、分析するのが難しく、生命維持に極度に依存する個体では可能ではないかもしれない。更に、fMRIを使用して意識を慣例的に評価することは、多くの医療制度の既に負荷がかけられていた(overtaxed)要素によって単に大きな負荷がかかる。カナダでは、MRI待機時間は、現在かなり長い。例えば、Nova Scotia’s Capital Health Care hospitalsで、待機時間は約80日である。Saskatoon、Saskatchewanにおいて、状況はかなり悪い:患者はMRIスキャンを得るために390日もの間待つこともある。この重大なMRI不足により、いくつかの病院は、MRI使用の優先順位に関するより厳密なガイドラインを用いる傾向がある。そのため、行動的に反応がない患者の自覚のある意識を評価する第1の手段としてfMRIを確立することは賢明でないように思われる。待機時間が改善する一方で、近い将来に改善しない1つのことは、MRIのような方法の実質的な制限に関係する。MRIは大きく、高価であり、持ち運び可能なものからほど遠い。GCSのような診断試験は、非常に広範囲で使用され、1つの特徴により大きく依存される−それらは実用的で、実施が容易であり、結果は急速に通信され得る。GCSが救急車でしばしば実施され、到着前又は到着時に医療専門家へ報告される一方、MRI(及び関連技術)を近い将来にこの評価の代わりに用いることはありそうもない。
【0010】
対照的に、脳波記録法(EEG)は、脳機能を検査する確立した手段であり、恐らく、GCSのような既存の臨床的な測定と交換する見込みが最もある。EEGは、診療所の中で携帯機器として既に使用されている。すなわち、EEGシグナルを集めることに対する障害は、大部分は克服されたが、当該技術のより高度な使用は、日常の医療に統合されなければならない。例えば、事象関連電位(ERP)と呼ばれるEEGから導き出した測定は、通常は連続的なEEGに埋もれる(buried)微細な振れであり、前記振れは、実験的研究の50年にわたり、中枢神経系中の処理の個別段階に堅く関連付けられた。血行動態の変動(fMRIのような)から導き出した神経作用の相互関係を測定するよりも、ERPは、神経作用によって生成された電流を直接測定する。更に、ERPは、ミリ秒の命令で、実時間の神経作用を追跡し、それ故、意識的な処理(例えば感覚、知覚、注意、記憶、及び言語)のオンラインの記録を提供する。
【0011】
臨床応用に関して、ERPは、目的として、即ち、行動に基づいた神経心理学の評価の生理学的な交換として過去15年にわたって研究された。この作業は、失語症評価において神経心理学と神経生理学的アプローチを組み合わせるための、特許となった方法をもたらした。その作業は、行動の反応の制限から言語機能の診断を切り離す一般的な概念に関する、重要な基礎的証拠であった。しかしながら、それは重大な困難(新しい解決策を必要とする)に対処しなかった:
1)ERP反応のスペクトルが存在し、自覚のある意識の包括的な試験に統合することができる。困難なことは、情報のこのスペクトルを急速で意味のある臨床試験に組み合わせるのに効果的な方法を考案することである;
2)この試験/方法は、高度な専門知識/訓練に依存され得ないが、むしろ予備的知識/訓練なしで、実施するのが容易であるべきである;
3)種々様々の環境(小さく、強健で、計量可能な)に容易に統合される、持ち運び可能で、安定性、耐ノイズ性の装置上で試験を実行することが可能であるべきである;
4)分析ソフトウェアは、任意の他の標準検査又は手順に依存しないように、比較目的のために標準の被験体データのデータベースを提供されるべきである;及び
5)試験は臨床的に有用な結果(解釈すべき専門知識を必要としない)を作り、これらの結果は、現在のIT通信の発達(ハンドヘルドコンピューター、無線通信)に容易に出力されるべきである。
【0012】
初期の感覚誘発電位(EP)は、昏睡中の脳幹の完全性を評価するために長く臨床的に使用された。より長いレイテンシー、認識ERPは、臨床的な評価の任意のルーチン方法へとまだ統合されていない。しかしながら、研究は、言語及び/又は行動の反応性を排除する、広範囲の臨床症状の下の精神機能の神経生理学の指数として、認識ERPを上手く使用した。
【0013】
例えば、2006年1月31日に公開の米国特許第6,993,381号に発行されるように、Connolly and colleaguesは、頭部へのナイフ創により全失語症と身体障害に苦しんだ1人の若者を含む失読症及び失語症患者の評価を実行するために、ERP記録で使用される既存の神経心理学的検査を修正した。それらのERP測定は、言語を理解する彼の能力が損なわれておらず、リハビリテーションプログラムに対する彼の後の承認は、結果的に優れた結果をもたらしたことを示した。
【0014】
ERPは、行動的に反応がない患者のfMRI検査に代わる重要な代替案を表わす。しかしながら、特にMRI技術と比較して、EEGが比較的低コストであり、携帯可能になり得るという事実にもかかわらず、病院は、デジタルEEG機械、又はEEG科学技術者適用範囲(Young, 2009b)に関して、典型的にはEEG監視の需要増に備えていない。それ故、素人に適用され、臨床的に役立つ試験を自動的に実行し、専門家の補助無しでデータを分析し、医療従事者のための臨床的に意味のある出力を生成する、EEG技術の考慮すべき必要性が存在する。そのような装置は、携帯可能で使いやすくなった場合、病院と診療所の中で広く使用されるだけでなく、様々な他の環境(救急車、アリーナ、老人ホーム、ホームケアなど)において利用可能となる。それは、重症者管理カスケード(the Critical Care Cascade)(病院補助前からICU退室(ICU discharge)及び回復までの医療の連続)へと容易に統合され得る。
【0015】
種々様々なERPは、P1、N1、P2、MN、P300、N400及びP600を含む、行動的に反応がない患者の感覚及び認知機能の機能的な完全性を検査するために、臨床研究で使用された。加えて、多くの異なる試験は、患者自身の名前、非言語の感情の叫び(exclamations)、数順、及び標準化された神経心理学の筆記試験に基づいたERP試験を含む、高位レベルの認識のERPを誘発するために提案された。
【0016】
初期の感覚ERPから後期の認識ERPにまで及ぶと予想される、連続的な段階にもかかわらず、激しく損傷を受けた中枢神経系を有する患者のERP反応は、必ずしもこの階層に順応しないことが繰り返し立証された。より低いERP反応が不足し得る一方で、より複雑でより高いプロセスに対するERPが保持される。したがって、ERP試験/成分のスペクトルを利用することが重要であり、単一のERPに関する否定的な結果として皮質非反応の患者を公表することは適切ではない。
【0017】
階級的なパラダイムはまた、2つの他の重要な利点を有する:複数の課題がすべて否定的な結果をもたらすとき、それらは、一貫性のレベルを提供し、具体的な反応のみが欠落するとき、認識の特異性に関する有用な情報を提供することができる。
【0018】
以下の特許がこの一般的な分野に位置付けられている:
【0019】
米国特許第6993381B2号−Linking neurophysiology and neuropsychological measures for cognitive function assessment in a patient−Connolly et al。
【0020】
上記の特許は、限られた数のERP成分(N400とP300)によって測定されるように、言語機能及び記憶力を評価するために音声及び視覚刺激を利用する方法を記載する。複雑な手順及び分析は、ユーザーの専門知識に極度に依存し、データ分析(すなわち、それは神経心理学の査定方法として意図される)のため長時間を要する。その目的のために、この方法は、N400のような成分を、標準化された神経心理学的検査のコンピューター処理されたバージョンに関連づけることを必要とする。ERP成分は、一致した及び一致しない終端の単語に対する、波形上の1対の対応する間隔の間でのt検定を使用して、統計的に評価される。これらの間隔は複数の幅を有しており、視覚的に確認された(すなわち、ユーザーにより確認された)ピークに集中する。この方法は、重症者管理カスケードへ統合され得る、携帯用の医学的検査としての実施のために設計されていない。更に、その出力は、専門家の説明を必要とし、急速で容易な通信のための現在の通信発達(例えば電気通信)による統合のために設計されていない。
【0021】
米国特許第6,868,345B1号及びWO2004/05441−Monitoring auditory evoked potentials−Jensen−commercial products by Danmeter A/S。
【0022】
上記の特許は、自発的なEEGからの定量的EEG測定(QEEG)、並びに中央のレイテンシーの聴性誘発電位(MLAEP)及び麻酔(anaethesia)の深さを評価する筋電図(EMG)を使用する方法を記載する。装置は、これら神経生理学の指標と催眠剤の投与量の間の非常に具体的な関係性に依存する。薬物の投与量はまた、アルゴリズムへの入力として加えられる。装置は、従来の意味でERP波形を計算しない。
【0023】
米国特許第2007/0032737A1号−Method for assessing brain function and portable automatic brain function assessment apparatus−Causevic & Combs−commercial products by BrainScope。
【0024】
上記の特許は、QEEGを使用する自発的なEEG、及び潜在的に任意の様式で送達される潜在的に任意のタイプの刺激に対するERPの両方を評価する方法を記載する。この装置によって実行されるスコアリングは以下の通りである:「警告」がその後、群発−抑制交代(burst suppression)又は発作活動が生じるかどうかの識別に移る場合、脳シグナルを「警告」対「正常」と分類し、なにも生じない場合、それは、器官外の(心因性)障害から器官を識別しようとする。これらの指標は、単一の「正常」対「異常」スコア、及び器官/精神障害に関する診断書を提供することにより、患者の神経性の状態を評価するために使用される。この試験は、感覚、及び知覚、注意、記憶並びに言語理解などの認知機能を含む、情報処理の指標のスペクトルの標準化された評価を提供するように調整されない。したがって、それは、自覚のある意識の試験を提供しない。
【0025】
米国特許第5,540,235号−Adaptor for neurophysiology monitoring with a personal computer−Wilson。
【0026】
上記の特許は、EGG、EEG又はEMGを監視するために使用することができる携帯用の神経生理学の監視装置のための方法を記載する。装置は無線接続を利用する。
【0027】
米国特許第5,755,230号−Wireless EEG system for effective auditory evoked response−Schmidt et al。
【0028】
上記の特許は、無線接続によってコンピューターと通信し、言葉での刺激を送達する携帯用EEG装置のための方法を記載する。それは、治療上の言語指示が必要かどうか確証するために、小さな子供における言語刺激に応じてERPを評価するため特別に設計されている。それは、具体的でありプログラムされた試験を行なわない。それは、実験者が言語刺激を記録し、それらを提示し、ERP反応を記録する方法を単に提供する。
【0029】
米国特許第6,052,619号、米国特許第6,385,486B1号、米国特許第7,471,978号、米国特許第2009/0076407号及び米国特許第2009/0227889号−Brain function scan system−John or John & John。
【0030】
上記の文書は、QEEG、任意の様式で送達された刺激からの誘発電位(EP)を使用して脳機能を診断する方法を記載し、また、大脳血液酸素化を監視するために赤外線又はレーザーのセンサを利用し得る。この装置におけるEPによって評価された唯一の機能は、誘発されたEPがFFTによって分析された定常応答であるように、感覚機能である。したがって、装置は、ERP成分を抜き取らず、任意の種類の高位レベルの認知機能を評価しない。
【0031】
米国特許第2009/0312663号−System and method for neurometric analysis−John et al。
【0032】
上記の特許は、それらの装置の遠隔ユーザーがデータをアップロードし、かつそれを分析することを可能にする、一連の分析モジュールに接続されたサーバーを設定する方法を記載する。ローカル又はリモートコンピューター(ローカルコンピューターは、これらの機能をダウンロードし得る)によって実行された機能は、次のものを含む:データを再フォーマットする工程、人工産物を自動的に編集/除去する工程、てんかん様の活性を検出する工程、QEEGのスペクトル又はウェーブレット解析を実行する工程、Zスコアに対する数の指標を変化させる工程、これらのスコア上で判別式解析を実行する工程、ソース局在性を実行し、報告を作る工程。
【0033】
米国特許第6,223,074号−Method and computer program product for assessing neurological conditions and treatments using evoked response potentials−Granger。
【0034】
上記の特許は、様々なERP試験を実行し、ERPに基づく測定を健康な対照及びその障害に苦しむ患者からのデータと比較することにより、患者が神経性又は精神の疾病に苦しむかどうか評価する方法を記載する。特定の検査は、プログラムにおいてあらかじめ設定されず、ユーザーが自身の検査を設計し、比較のために健全な対照と診断された自身の患者データを集めるべきと思われる。特許は、「ベクター」及び「投射」と呼ばれる、修正されたERP測定の抽出、及び健康な被験体と障害のある患者からのものを有するそれらの「投射」の相関性に基づいた加重可決(weighted vote)を実行することを包含する。ERP波形は、従来の意味で計算されず、又は定量化されない。
【0035】
米国特許第6,317,627号(グループ2から米国特許第2002/0082513A1号も参照)−Anesthesia monitoring system based on electroencephalographic signals ― Ennen et al.−commercial products by Physiometrix。
【0036】
上記の特許は、4人の「観察者」が患者の状態を記載するために使用される装置のための方法を記載する:Beta5(EMG指数)、患者の状態指数(PSI)、意識のレベルの主な指数、瞬目、及び抑制(群発−抑制交代が最近観察されたかどうかを指す)。この装置は自発的なEEG活性を分析する:それは刺激を提示せず、又はERPを使用しない。患者の状態は、QEEG測定と個体群規準との比較に基づいて、並びに同じ患者の他の状態からのデータを使用して測定される。したがって、EEGに関して、装置は、中枢神経系抑制の総合指数を提供するだけである。それは任意の具体的な神経の機能を測定しない。
【0037】
米国特許第6,339,721号−Brain wave data processing device and storage medium−Yamazaki & Kenmochi。
【0038】
上記の特許は、単一試行及び平均化された波形からERP情報を抽出するために、ウェーブレット変換を使用する方法を記載する。平均化された波形に関して、それらは、ERP成分を見つけるためにレイテンシーウィンドウ(latency window)を使用するが、その後、ウェーブレットに基づいたパターン認識を使用してこのウィンドウ内を探索する。また、基礎的なEEG取得システムの記載も存在する。具体的な試験、又は測定された具体的なERPは存在せず、それは単に、ERP識別のための取得システム及び自動化した方法である。
【0039】
米国特許第6,493,576号−Method and apparatus for measuring stimulus−evoked potentials of the brain−Dankwart−Eder。
【0040】
上記の特許は、麻酔薬の深さの監視のため、MLAEP及び脳幹聴性誘発電位(BAEP)を得る方法を記載する。BAEPは「ベース」情報シグナルと考えられる一方で、MLAEP(あるいは潜在的に他の聴覚のERP)は、神経生理学的な変化を追跡する「可変性の」シグナルである。この特許は、非常に具体的に、麻酔薬の監視のためのみに使用される装置を指す。ERPの自動化された評価は存在せず、単に平均化し、表示するだけである。
【0041】
米国特許第6,832,110号−Method for analysis of ongoing and evoked neuro−electricai activity−Sohmer et al。
【0042】
上記の特許は、単一試行データ中のERPを自動的に評価する方法を記載する。方法は任意のERPに適用することができる。
【0043】
米国特許第7,373,198号−Method and apparatus for the estimation of anesthetic depth using wavelet analysis of the electroencephalogram−Bibian et al。
【0044】
上記の特許は、麻酔の深さの実時間での監視の方法を記載する。麻酔の深さは、自発的なEEGのウェーブレット変換によって監視される。記載は、脳の他の状態及びCNSの健康を確認するこの装置を使用する可能性を提供する(p12の上の広範囲のリスト)。しかしながら、それらの具体的な請求項は、それらが「CNSにおける抑制のレベル」のみを測定していると述べている。方法は、1つのデータセットからウェーブレット係数を抽出し、それらを、同じ個体の別の状態、又はグループ或いは対照からの参照データのいずれかと比較する。規則的なデータベースは提供されず、ユーザーは「参照データ」自体を得るべきである。したがって、装置は、特定の神経の機能の任意の測定を提供しない。
【0045】
米国特許第2003/0199781号−Automatic electroencephalogram analysis apparatus and method−Tsuboshita et al。
【0046】
上記の特許は、QEEG測定及びマハラノビス距離の形状における統計的検定を使用して、自発的なEEGの正常性/異常性を自動的に評価する方法を記載する。患者のQEEG測定は参照データセットと比較され、マハラノビス距離はこの参照データセットから計算される。
【0047】
米国特許第2004/0193068号−Methods and apparatus for monitoring consciousness−Burton & Zilberg。
【0048】
上記の特許は、意識の深さを評価する目的のため新しいセンサ設計を使用するEEG及び他の生理学的な測定(ECG、EOGなど)を記録する方法を記載する。装置は、睡眠段階分析、EEGのバイスペクトルの分析及び聴覚のERPを使用し得る。それらは、特に、被験体が意識的な状態からあまり意識的でない状態への変化、又はその逆の変化にあるかどうか自動的に検出することを主張する。言及される唯一の聴覚のERPは、クリック刺激に対する知覚の反応である。結果として生じるBAEP及びMLAEPは、バイスペクトル(BIS)変化の正に薬物・薬剤に特有の性質(the very drug agent−specific nature)を補う、二次的な測定として使用される。それは、感覚の受容性、睡眠状態及び全体としてCNS抑制を越えた脳の具体的な機能を検査しない。
【0049】
米国特許第2008/0167570号−Neural event process−Lithgow。
【0050】
上記の特許は、ウェーブレット変換を使用する蝸電図(ECOG)データ又はBAEPデータのいずれかを分析する方法を記載する。
【0051】
米国特許第2008/0255469号、及び米国特許第2009/0177108号−Method for monitoring the depth of anesthesia−Shieh et al。
【0052】
上記の特許は、自発的なEEGに基づいた麻酔の深さを監視する方法を記載する。記録は、覚醒状態にある患者にて最初に作られる。麻酔の深さはその後、エントロピー(本来の正常測定からの一種の逸脱)によって測定される。
【0053】
米国特許第2008/0262371号−Method for adaptive complex wavelet based filtering of EEG signals−Causevic。
【0054】
上記の特許は、BAEPに明瞭に適用されるが、他のERPの上でも使用され得る、複雑なウェーブレット変換を使用して、聴覚のERPをフィルターにかけて抽出する方法を記載する。
【0055】
米国特許第5,010,891号−Cerebral biopotential analysis system and method−Chamoun−commerciai products by Aspect Medical Systems。
【0056】
上記の特許は、以下のものを評価することを主張する方法を記載する:麻酔の深さ、急性脳虚血、意識のレベル、中毒の程度、及び進行中の正常及び異常な認知プロセス。この装置によって使用されるEEG測定は、自発的なEEGから抽出されたQEEG測定である。刺激は送達されない。具体的には、その指標は、単一の鉛(lead)又は1対の半球間の鉛から抽出される周波数ドメイン又はパラメーターの値のいずれかの上で実行された、三次の自己相関又は自己バイスペクトル(autobispectrum)(BIS)である。それらは、正常な個体、及びさまざまな疾病に苦しむ患者を研究し、QEEG計量がそれらの個体群のために分類指標として最良に役立ったものを計算した。その後、これらの計量はそれらの装置に適用される。
【0057】
参照はまた、以下の論文、引用により本明細書に組み込まれる開示になされ、参照は、以下に開示を捕捉する情報のためになされる:
【0058】
Connolly, JF, D’Arcy, RCN, Newman, RL, Kemps, R.(2000)。The application of cognitive event−related brain potentials (ERPs) in language−impaired individuals:Review and case studies。International Journal of Psychophysiology 38:55−70。
【0059】
D’Arcy, RCN, Connolly, JF, Service, E, Hawko, CS, Houlihan, ME.(2004)。Separating phonological and semantic processing in auditory sentence processing:A high−resolution event−related potential study。Human Brain Mapping 22;40−51。
【0060】
Gawryluk, JR, D’Arcy, RC, Connolly, JF, Weaver, DF.(2010)。Improving the clinical assessment of consciousness with advances in electrophysiological and neuroimaging techniques。BMC Neurology 10:11。
【0061】
Kotchoubey, B, Lang, S, Mezger, G, Schmalohr, D, Schneck, M, Semmler, A, et al.(2005)。Information processing in severe disorders of consciousness:Vegetative state and minimally conscious state。Clinical Neurophysiology 1 6:2441 −2453。
【0062】
Neumann, N, Kotchoubey, B.(2004)。Assessment of cognitive functions in severely paralysed and severely brain−damaged patients:Neuropsychological and electrophysiological methods。Brain Research.Brain Research Protocols 14:25−36。
【0063】
Ponton, CW, Don, M, Eggermont, J J, Kwong, B.(1997)。Integrated mismatch negativity (MMN,):A noise−free representation of evoked responsesallowing single−point distribution−free statistical tests。Electroencephalography and Clinical Neurophysiology:143−150。
【0064】
Rodriguez−Fornells, A, Schmitt, BM, Kutas, M, Munte, TF.(2002)。Electrophysiological estimates of the time course of semantic and phonological encoding during listening and naming。Neuropsychologia40:778−787;and
【0065】
Sculthorpe, LD, Campbell, KB.(2011)。Evidence that the mismatch negativity to pattern violations does not vary with deviant probability。Clinical Neurophysiology, DOI:10.016 /j.clinph.2011.04.018。
【0066】
Sinkkonen, J, Tervaniemi, M.(2000)。Towards optimal recording and analysis of the mismatch negativity。Audiology & Neuro−otology 5:235−246。
【0067】
Vanhaudenhuyse, A, Laureys, S, Perrin, F.(2008)。Cognitive event−related potentials in comatose and post−comatose states。Neurocritical Care 8:262−270。
【発明を実施するための形態】
【0103】
図1は、本明細書に記載の方法に関する装置を示し、一連のEEG電極(11)に接続され、刺激器(12)から感覚刺激を受け取るように調整された患者(10)を含む。電極は、EEG増幅器(13)、その後、電気通信プログラム(15)を通じて医師に通信する取得コンピューター(プロセッサ)(14)に送信される脳からのシグナルを受ける。コンピューターはまた、刺激器(12)を提供し、制御する。
【0104】
図2において、以下の工程を含むフローチャートで述べられる方法の実施形態が、概略的に示される:
工程20−連続的な(未加工の)EEGデータ
工程21−アーチファクト除去及び補正(例えば、基底線補正、EOG補正)
工程22−EEG分割
工程23−EEG平均化
工程24−ERPピーク局在化(CD方法)
工程25−ERP成分の識別(識別基準、及び/又は適応性のあるパターン認識プロセスに基づく)
工程26−ERP成分定量化(例えば、IB及びPP振幅の測定)
工程27−標準的データベース(例えば、振幅順位、パーセンタイル順位、z−スコア)との比較
工程28−スコア生成(Dx、Rx、Vx、Px)
工程29−スコア通信(例えば、装置スクリーン出力、短いレポート、長いレポート)
【0105】
それ故、
図1及び2に示されるように以下に記載された方法の実施形態は、誘発反応の形態において、正常な皮質の処理の5つの異なる指標を生成する、刺激配列を提供する。正常な皮質の処理は自覚のある意識にとって重要である。それ故、この装置の目的で、自覚のある意識は脳機能の一般的な完全性として操作的に定義される。全ての脳機能を検査することが非実用的であるとすれば、脳機能のスペクトルにわたる代表的指標のグループは、一般的な脳機能性を示すために選択されるべきである。この方法の本実施形態は、感覚処理、知覚処理、注意/警告機構、記憶検索及び言語処理を含む、脳機能のグループを検査する。運動準備、刺激予想、又は選択的注意など他の脳機能は、とりわけ、考えられる限りでは同じ目標を達成し、かつ本発明の趣旨及び範囲内にとどまるために検査され得る。
【0106】
脳の機能性を検査するために、通常は刺激を提示しなければならない。これらの刺激は、1つ以上の刺激器(例えば、聴覚刺激用のスピーカー又はイヤホン、或いは視覚刺激用のコンピューターモニター)によって、知覚の刺激配列として提示される。脳によって記録されて処理されると、刺激配列の刺激の各々は誘発反応を引き出す。誘発反応は、事象関連電位(ERP)、事象関連領域(ERF)、事象関連同期化(ERS)及び事象関連脱同期化(ERD)など様々な脳反応を含む。任意のタイプの誘発反応がこの方法において使用され得るが、本実施形態はERPを使用して記載される。誘発反応は、刺激配列の提示と同時に集められる、脳波(EEG)又は脳磁図(MEG)の記録のいずれかから導き出される。これらの記録は、患者の頭の上、その中、又はその近くに置かれる一連のセンサ(EEGにおいて、これらは電極である;MEGにおいて、それらは超伝導量子干渉計である)から作られる。脳機能性は、略全ての様式における刺激を使用して検査される。聴覚の刺激は、記載されるような本発明の実施形態において利用されるが、他の感覚様式における刺激の提示が使用され得る。
【0107】
感覚処理:ヒトにおいて、任意の比較的急激な音のオンセットは、一連の既知のERP成分を誘発する。これらのERP成分は、脳幹から聴覚皮質までにわたる聴覚の処理を信号で送る。任意の音のオンセットに一貫して生じるERPは、「必須の」感覚誘発電位と呼ばれる。脳幹のレベルにて、これらは聴性脳幹誘発電位(BAEP)を含み、視床及び初期の聴覚皮質のレベルにて、中間レイテンシー反応(MLR)が生じる。皮質における後の処理は、P1−N1−P2複合体と呼ばれる、一連のERP成分によってインデックスを付けられる。コンピューター化された加算平均化が1960年代の初めに利用可能になった時、P1−N1―P2複合体は、聴力感受性を推測するために他覚的聴力検査において使用され始めた。P1、N1及びP2はすべて、聴覚皮質のレベルにて音の神経のコード化にインデックスを付ける。
【0108】
臨床研究は、意思不疎通の患者の感覚機能を実証するために、N1にしばしば依存した。子供の音に対する平均化された波形は、P1によって支配され、P1は、提示の急速な速度に抵抗力のある成人のP1−N1−P2複合体の唯一の成分である。聴覚の機能のための客観的検査はまた、しばしばBAEP(MLR)に依存し、提示(これらのERPが、いわゆる「定常的な」反応で合計され得るもの)の非常に速い速度をしばしば使用することができる。好ましい実施形態における感覚処理に対する対象の誘発反応は、P1とN1であるが、BAEP、MLR、及び定常応答のような必須の感覚反応の他の部分は、対象のままである(remain of interest)。
【0109】
知覚処理:聴覚皮質が、入ってくる音を処理するとき、音の音響特性及び経時的な特性は、知覚的に意味のある聴覚の対象、グループ及び流れへと組織化される。一般に、2つのタイプのERPは、脳はどのように音を組織化するかを調査するために使用される:配列の規則性のコード化に関係がある標準(繰り返された)刺激に対する反応、及び刺激配列の変化の検出に関係がある異常(変更された)刺激に対する反応。以前のERPの中には、N1及び反復陰性(repetition negativity)(RN)がある。後者の中には、N2a及び/又はMMN、N2b及び対象関連の陰性(ORN)など、成分のN2ファミリーがある。
【0110】
知覚を研究するために使用される一般的なERPは、MMNである。入ってくる音が、近年の音響履歴(the recent acoustic past)から抽出された規則性を侵すと脳が検知するとき、聴覚のMMNが生じる。MMNは、意識的知覚の基準を形成する聴覚の感覚記憶に最も厳密に結び付けられるERPであると長く考えられてきた。実際に、MMNの振幅は、「逸脱した」、規則性を侵す刺激の知覚性により変化する。MMNは、多くの臨床的な用途を有しており、昏睡の評価において特に有利であると証明された。任意の他のERP成分以上に、昏睡中のMMNの存在は陽性の結果を予測する。また、その存在は、PVSとMCSにおける陽性の結果を強く予測する。好ましい実施形態における知覚処理に対する対象の誘発反応は、MMNであるが、N1、RN、及び成分のN2ファミリーの他のメンバーなど、知覚に結び付けられる他のERPは、対象のままである。
【0111】
注意/警告機構:P300は、「自覚のある意識の相関」の役割のための最良の候補ERPとして記載された。それは、典型的に、能動的「オドボール」課題(“oddball” paradigm)において得られ、その中で、均質な一連の同一刺激は、標的として指定される物理的に変化した異常(deviant)によってまれに、予測できない時に壊される。P300は、ERPサブコンポーネント、特に、刺激が伴わなくても観察することができる注意スイッチングのインデックスである、P3a、および異常な刺激が能動的検出の標的として指定されると一般に生じるだけである、P3bの重なりを実際に表わす。P3bは、記憶割当、特に、作業記憶表象のアップデートをインデックス付けすると考えられる。P300は、予測不能の生物学的または個人的に関連する刺激に生じる傾向がある。MMNのように、それは昏睡状態の生存を予測するのに役立つ。異なるタイプの刺激(例えば、課題指定の標的に対する「新しい」環境音)によって誘発されたP300sが、実際に、同じ反応を誘発するか否かに関する基礎的なP300研究における持続的な論争がある。好ましい実施形態における注意/警告機構に対する対象である誘発反応は、大きな強度妨害に対するP300反応であるが、後のP3bなしで誘発されたP3aを含む、他の様々なP300反応は、対象のままである。
【0112】
記憶検索:P300の発生は、生物学的および個人的な関連性(または「特徴(salience)」)の両方に依存するため、高度に学習した情報が、長期記憶へのアクセスによって認識されたか否かを測るために使用することができる。強力な個人的関連性を有する1つの高度に学習した情報は、個人の自身の名前である。健康な被験体において、個々の自身の名前の表示は、睡眠中であっても、確実にP300を誘発する。しかしながら、記憶アクセスは、P300より早く生じ、N2ファミリー(例えば、N2、MMN、N2b)においてERPによってインデックス付けされ得る。好ましい実施形態における記憶検索に対する対象である誘発反応は、N2およびP300であるが、他の記憶関連のERPは、対象のままである。
【0113】
言語処理:ヒトの脳内の言語処理には、言語の異なる態様をインデックス付けする多くのERPが付随する。任意の単語または語群は、任意の言語に固有の構造の規則に基づいて、続くべき単語の言語予測を構築する。言語関連のERPは、一般に、以前に提示された単語によって構築された言語予測を妨害する単語によって誘発される。このようなERPは、例えば、音声のミスマッチ陰性電位(PMN)、N400、初期の言語に関係する陰性電位(ELAN)、後期陽性成分(late positive component)(LPC)、及び/又はP600を含む。本実施形態における言語処理は、意味処理に基づいて評価される。脳は、意味的に無関係な単語より意味的に関連する単語に対する異なる神経反応を示す。この反応差は、単語のオンセットからおよそ400msでピークになる中央頭頂部の局所分布を有する陰性成分である、N400のレベルで明らかになる。意味予測が単一語「初期(prime)」または全文のいずれかを提示することによって構築されるとき、N400は、一致する単語より意味的に不一致な単語に対してより大きい。例えば、句、「彼女はコーヒーにはクリーム及び〜を入れるのが好きである(She likes her coffee with cream and)」によって構築された意味予測は、結果的に、小さなN400では終端の単語「砂糖(sugar)」となるが、大きなN400では終端の単語「ソックス(socks)」となるN400振幅の最良の予測因子は、より大きなN400を誘発する予測が難しい単語での、単語の予測である。PVSまたはMCSにおける患者に関するN400の存在によって、より良い結果が予測される傾向があり、それは、失語症及び身体障害のある患者におけるリハビリテーションの基準としてうまく使用されてきた。好ましい実施形態における言語処理に対する対象である誘発反応は、N400であるが、PMN、ELANおよびLPCなどの、言語処理と関連する他のERPは、対象のままである。
【0114】
臨床研究においてERPを適用したいと願う人々が長い間直面してきた多くの困難がある。最初の困難、および恐らく最も困難であるのは、試験に必要な時間の長さである。連続的なEEGからのERPの抽出は、典型的に、長い記録時間を必要とする。ERPは、背景EEGおよび環境的な電磁気ノイズと比較して、かなり小さな振幅を有し、刺激を何度も提示することによって引き出される。その後、連続的なEEGは、刺激のオンセットと時間的に同期するエポック(単一試行)へと分割される。これらのエポックが一緒に平均化されるとき、刺激に関して本質的にランダムである、背景EEGは、零に向かって平均化するが、一方で、刺激の処理を反映する振れが保持される。このシグナル平均化方法における不可欠な概念は、シグナル対雑音比である。所望のシグナル(ERP)が、ノイズ(背景EEGおよび環境ノイズ)と比較して小さくなるにつれ、シグナルが見分けられ得る点まで背景ノイズを除去するために、より多くのエポックが必要となる。それ故、MMNなどの、小さなERP成分については、長い試験時間が典型的に必要である。
【0115】
しかしながら、長い試験時間は、現実世界の臨床設定において多くの場合利用可能ではない。救急車搬送などの、入院前のシナリオ(Pre−hospital scenarios)は、試験時間が最小限に抑えられることを必要とする。ICUにおいてさえ、試験時間は短く維持されるべきである。例えば、植物状態にある患者は、これらの多くの治療およびリハビリ上の手順が原因で、試験するための時間が制限された。長い試験時間はまた、習慣化、覚醒の変動、疲労、およびレイテンシーのジッター(latency jitter)を含む、ERP反応に対する多くの不要な影響を招き、これらのすべては、誤った陰性結果を引き起こし得る。
【0116】
それ故、方法は、記録時間を最小限にしながら、ERP(または、その磁気対照物、事象関連領域であるERF)を引き出すための使用可能な試験の数を最大限にする、圧縮した刺激配列を使用する。記録時間を最小限にしながら、ERPを引き出すために使用される試験の数を最大限にする1つの方法は、刺激を急速に(例えば、1Hzを超える速度で)示すことである。傷害の結果として生じ得る注意または覚醒の変化の影響を最小限にするためにまた、健康な被験体において睡眠中であっても所望のERP波形を引き出すことが実証された刺激を選択した。この方法は、異なる刺激のタイプおよび異なる感覚様相(聴覚および視覚)のために適用することができる。聴覚様相のための方法の例は、以下に提供される:
【0117】
聴覚は、言語的および非言語的な部分から成る。非言語的配列は、好ましくはスペクトル的に豊かな、急速に提示されたトーンから作られる音のパターンから成る。スペクトルの複雑性はMMN反応を高める。配列におけるスペクトル的に複雑なトーンは、限定されないが、倍音、和音および楽器音を含む。これらのスペクトル的に複雑なトーンは、好ましくは、1つ以上の規則または規則性を含む配列で運ばれる。これは標準的な配列を含む。配列の「標準的な」規則または規則性は、大多数の刺激に対して変化のないままである刺激配列の特徴である。例えば、好ましい実施形態において、標準配列は、交互になる(例えば、ΑΒΑΒΑΒΑΒ...)2つのタイプのトーン、AおよびBから成る。この配列での標準的な規則または規則性の幾つかの例は、「AがBに続く」、「BがAに続く」であり得るか、または「トーンごとにBがくる(every second tone is B)」でさえあり得る。標準的な配列の規則を違反するトーンは、必須の感覚ERP成分に加えてMMNを誘発する。規則違反によって誘発されたMMNは、注意の変動にかなり抵抗性があり、睡眠中に生じ、短い時間でかなり多くの規則違反を示すことによる影響を比較的受けない。異なるタイプの規則違反をこの配列に挿入し、これらの異なる異常を一緒に平均化することによって、試験時間を増加させることなく、MMNを引き出すために使用される平均化した波形に含まれるエポックの数を増加させることができる。
【0118】
MMNとP300の両方は、異常な刺激に生じるが、それらは、幾つかの理由のために異なる聴覚配列で典型的に得られる。被験体が、配列に対応し、異常な音を検出することが要求される、「能動的な」条件の下、MMNは、N2bと呼ばれる別の成分によって重ねられる。しかしながら、十分なP300の誘発は、典型的に、能動的なタスク条件下で生じるだけであり:MMN誘発に使用される、「受動的な」、非対応の(non−attend)条件下で、通常、P3aのみが生じる。P3aは、十分なP300反応の第1部分を構成し、これは、注意スイッチを示すが、後のP3bによって信号で送られる記憶割当を示さない。更に、小さな振幅のMMNを明らかにするために、多くのエポックが必要とされ、そのため、試験時間を減少させるために異常がかなり頻繁に提示されることが必要となる一方で、比較的大きなP300は、エポックをほとんど必要としないが、これらの異常は時間内で比較的広く間隔を置かれるべきである。この理由で、同じ患者におけるMMNおよびP300を研究するほとんどの研究は、別々の刺激配列を使用して、それらを誘発する。我々の新しい圧縮した刺激配列は、単一の2.5分の配列においてMMNおよびP300の両方を引き出す。
【0119】
増加した音の大きさ、または強度は、受動的な条件下で、十分なP300反応(すなわち、P3aとP3bの両方)を引き出すことができる、ただ一つのタイプの物理的な逸脱を表す。それ故、MMNを引き出すために使用される様々な規則的異常(rule deviants)に加えて、調性配列は、P300を引き出す増加した音の大きさの非常にまれな異常も含む。増加した音の大きさの異常は、睡眠中でさえ、P300を引き出すために使用することができる。重要なことに、調性配列におけるP300を引き出す強度異常は、標準の聴覚パターンに従う、適切なピッチ、持続時間、および系列位置を持つ。そのため、それらは、聴覚パターンを強化し、これにより、MMNを引き出す規則違反を、強度異常に続いて比較的すぐに示すことが可能となる。これによって、試験時間を非常に短く維持することが可能になる。
【0120】
聴覚配列の言語部分は、記録される且つ合成される音声によって話される単語を含む。睡眠研究において、単一語のプライミング(priming)における一致しない単語は、文の終端で一致しない単語よりも小さなN400sを生成する傾向がある。それ故、言語的配列の好ましい実施形態は、文から成る。これらの文は、簡潔性およびそれらの文脈的制約の程度のために最適化された。N400の振幅は、Clozeの確率として知られる、単語予測に最も関連する。Clozeの確率は、調査によって、および終端の単語を有さない文を提供し、最も自然に文を終了すると回答者が予期する単語を回答者に埋めさせることによって決定される。我々は、終端の単語を、少なくとも80%の回答者において、単一の終端の単語に抑制した文(すなわち、最小の80%のClozeの確率を有する文)を選択した。予期された終端の単語は、ERPの平均化のための「一致する」単語であり、これらの終端の単語は、「一致しない」条件のため、文中に再分配された。試験期間を最小限にするために、終端の単語を含む、これらの文の各々は、10以下の音節に制限された。
【0121】
もし名前刺激が単独で提示されると、それらが先行し、沈黙期が続くべきである。それ故、名前刺激を文へ統合することは、言語刺激の提示に必要な時間を最小限にする助けとなる。そのため、文の最初の単語(句の文法的主語)は、固有名である。好ましい実施形態において、文の半分は、患者自身の名前で始まり、文の残りの半分は、患者の名前のように聞こえず、患者の名前の代わりのバージョンでない、異なる、対照名で始まる(例えば、患者の名前がMichaelならば、他の名前はMikeまたはBuchではない)。患者の家族の名前が知られている環境下では、これらも対照名としての提示から排除され得る。患者自身の名前は、対照名に対して大きなP300を実証するべきである。我々の経験では、N2 ERPは、同様に、患者自身の名前を対照名としばしば区別する。患者の名前が知られていない環境を可能にするために、方法はまた、文の半分を「彼(he)」、残りの半分を「彼女(she)」で始めるオプションを有する。この場合、記憶処理に関連する誘発反応は得られない。言語配列のおよその試験時間は、およそ2.5分であり、この持続時間は、利用される名前の長さによる。
【0122】
この新しい聴覚のトーンと言語刺激の配列は、共に、およそ5分で、生物学的および個人的な関連性の両方に関連するP1−N1、MMN、P300s、およびN400(またはそれらの磁気対照物)を抽出することを可能にする。刺激配列の正確な持続時間は、もちろん、患者自身の名前の長さ、および提示のために選択される対照名に依存する。通常、誘発反応を引き出すために使用される刺激配列が、ユーザーによって設計されプログラムされなければならないことを留意することが重要である。この方法において、刺激配列は、あらかじめプログラムされ、プロセッサによって自動的に提示される。ユーザー入力は、ユーザーの名前などの、患者に関する識別情報を提供するために、および望まれるならば、対照名としての選択から、患者の身近な家族および親友の名前を排除するために必要とされるだけである。
【0123】
〈波形分析ソフトウェア〉
ERP分析は、EEGの技術者および医療従事者にまれに教示される非常に具体的な技術である。そのため、ほとんどの医療制度へのERPベースの評価技術の円滑な統合は、自動化の方法でERPを抽出し定量化することができるソフトウェアを必要とする。
【0124】
図2に示されるように、EEG増幅器(13)からの連続的な未加工のEEGデータ(20)は、上に述べられた一連の工程において処理される。
【0125】
前処理工程21、22および23は、眼運動のアーチファクト、アーチファクト除去、連続的なEEG分割、および平均化に関する校正を提供し、これらは、ERP分析に典型的であり、比較的少ないユーザー入力で、半自動化の方法によって一般に実行される。
【0126】
しかしながら、ERP成分は、平均化した波形の目視検査によって典型的に識別される。振幅およびピークのレイテンシーなどの、定量的測度は、その後、ユーザーによって確認された値に基づいて抽出される。例えば、一致しない単語に対する波形の目視検査が行われると、ユーザーは、視覚的に確認されたピークを囲む40msのウィンドウ内の平均振幅としてN400を定量化してもよい。ERPのエキスパートからのユーザー入力の必要性をなくすために、工程24および25で概略的に示されるように、本明細書に記載されるソフトウェアは、平均化した波形でERP成分(またはMEG記録の場合において、事象関連領域であるERF成分)を自動的に識別し、これらの成分の定量的測度を得るパターン認識ソフトウェアを含む。
【0127】
一般に、ERP成分は、6つの特徴:実験条件、極性、レイテンシー、持続時間、形態および頭皮の局所分布に基づいて識別される。しかしながら、重度の脳損傷は、ERP成分の特徴の多くを変更し得る。それ故、エキスパートに定義された規則は、主として、ERP成分の最も基本的な特性:実験条件、極性、およびレイテンシーに依存する。残りの特徴は、アルゴリズムを可能な限り増大するために統合される。
【0128】
ソフトウェアは、少なくとも下記のタスクを実行する:1)ピークの局在化、2)誘発反応の識別、3)誘発反応の定量化、および4)スコア生成。これらのタスクは、機能的に別々であるが、実際のアルゴリズムにおいて、一緒にまたは平行して実行され得る。
【0129】
1)ソフトウェアは、3つのピークの局在化の方法:信頼区間(CI)方法、統合した波形方法(IW)、および微積分の道関数方法(CD)を使用して発展された。これらの3つの方法のうち、CD方法は、短い試験時間の使用に起因する、比較的ノイズの多いデータを有する最良の結果をもたらす。それ故、装置の本実施形態は、主として、CD方法に依存するが、CIおよびIWの方法は対象のままである。異なるタイプの誘発反応ついては、異なるピークが求められるべきである。ERPとERFの場合では、電圧値の時間的経過を記載する波形においてピークが求められる。ERSとERDでは、スペクトル写真またはスペクトルの変化の時間的経過(時間周波数の反応プロットとして知られる)において、ピークが代りに求められる。
【0130】
第1のピークの局在化の方法は、ノイズの定量化を回避する統計学的方法を使用する、新しい信頼区間(CI)ベースの方法である。(上に引用される)Rodriguez−Fornells,2002は、一人の個体からのデータではなくむしろ、群からの波形上で実行されるt検定を含む、類似した方法を記載する。アルゴリズムは、所定の持続時間のウィンドウ内の平均振幅および信頼区間を計算する。実施形態において、ウィンドウの持続時間は40msである。その後、アルゴリズムは、所定距離によって時間内でこのウィンドウを前にスライドさせ、実施形態において、4msで、各々繰り返す。もし複数の連続するスライディングウィンドウが零まで及ばないと、第1スライディングウィンドウのレイテンシーは、ピークのオンセットであると考えられる。実施形態において、零まで及ばない4つの連続するウィンドウは、ピークのオンセットを設定することが必要とされる。このオンセット地点に従って、零まで及ぶ複数の連続するスライディングウィンドウの第1のレイテンシーは、ピークのオフセットであると考えられる。再び、実施形態において、4つの連続するウィンドウは、ピークのオフセットを設定することが必要とされる。
【0131】
しかしながら、試験時間が短く、それ故、サンプルの数が少ないとき、ERP成分が実際に存在するときでさえ、統計テストは有意性を見出すことはできないかもしれない。この状況は、環境上の電気ノイズの存在によって悪化する。したがって、アルゴリズムはまた、統合した波形(IW)と呼ばれる非統計学的なピークの局在化の方法を使用する。この方法は、MMNを識別し、定量化することに使用するために、(上に引用される)Ponton and colleaguesによって最初に記載された。平均化した波形において、ランダムノイズによって生成された小さなピークは、隣接するトラフによって局所的にオフセットにされる。IWにおいて、隣接したノイズに由来する振れの取り消しは、プラトーという結果をもたらすが、ピークのオンセットは、連続する電圧値が1つの方向または別の方向に合計され始める地点である。ピークのオフセットは、連続するデータポイントがその方向に合計し終わる地点によって定義され、プラトーという結果をもたらす。
【0132】
しかしながら、十分にノイズが多い波形は、CI方法およびIW方法の両方が、有意なピークを確認することができないほどの、十分なノイズを含むであろう。実際に、短い記録時間では、これはよくあることである。それ故、方法の本実施形態におけるピークの局在化のための好ましい方法は、微積分の導関数(CD)方法である。CD方法は、波形の一次および二次の導関数のゼロ交差を決定することによって、平均化した波形の数学的な分解を実行し、波形の曲線性のピーク点および変曲点をもたらす。実際は、より大きく、正確なERP成分の上にあるノイズである、非常に小さなピークでさえ、この方法を使用して識別することができるため、これはまた、振幅の閾値化の方法を利用し、それによって、小さなピークがさらなる分析から拒絶される。具体的には、小さなピークは、もし一定の割合のより大きなピークの振幅に達しないと、拒絶される。
【0133】
2)ピークは、一旦局地化されると、誘発反応として識別されなければならない。最初に、実験条件、レイテンシー、および極性などの、幾つかの基本的特徴に基づいて、総括的なERP成分の特性を記載する、識別基準が適用される。必要なときに、頭皮分布も検査される。これらの基準に合う適切なピークは、ERP成分として選択される。
【0134】
しかしながら、既存の実験的文献に基づいて、主として多くの個体の群平均を扱う、これらの識別基準が設定されたため、個々の波形は、これらの規則に容易に従うことはめったにない。例えば、一致しない終端の単語に関するN400の識別基準は、N400が、300msから500msまでの刺激後のウィンドウ(post−stimulus window)内で生じ、その取り囲むピークと比較して、比較的大きな陰性ピークであることであり得る。しかしながら、特定の個人のN400は、この検索ウィンドウ外で現れ得、その取り囲むピークと比較して、より小さな陰性振幅を有するものであり得る。その選択は、振幅およびレイテンシーの識別基準だけでなく、ピークの形および曲線性、異なる実験条件に対する他の波形におけるピークとのその関係性、ピークの形および曲線性(この場合、一致する終端の単語)、およびこのピークとその隣接するピークの間の波形の形および曲線性にも依存する。これらはすべて、ヒトERPのエキスパートが、ERP成分を選択する際に考慮に入れる波形の形態における細かい点(subtleties)である。
【0135】
ヒトERPのエキスパートの意志決定のプロセスのニュアンスをできるだけ多く掴むために、アルゴリズムはまた、二次的な適応パターン認識のプロセスを受ける。部分的には、この適応パターン認識のプロセスは、個体間の違いを可能であれば組み込むための、以前に記載された識別基準に対する一連の自動化および繰り返しの調整を実行する。適応パターン認識のプロセスはまた、誘発反応の細かい、定性の特徴を検査するために、必要に応じて導入される他の基準を使用する。これによって、アルゴリズムは、(識別基準によって包含される)振幅、レイテンシー、および極性などの誘発反応の典型的な定義に含まれる特徴を評価するだけでなく、具体的なピークの形および曲線性を検査することもできる。波形間の相対的な振幅および交差点などの、異なる実験条件に対する波形におけるピークとの関係性も検査される。個々の波形の固有可変性が、選択基準として任意の1セットの規則の普遍的な適用可能性を妨げるため、アルゴリズムは、必要なときに検索基準を調節するビルトイン・フレキシビリティを有し、それ故、個体間の成分特性の違いを組み込むのに十分用途が広い。この手順は、誘発反応のエキスパートによって使用されるパターン認識の規則をエミュレートし、誘発反応の識別の可能性を最大限にする。
【0136】
この方法での起こり得る改善は、ヒトに定義された規則よりもむしろ、機械学習の実施であり、それによって、ピークの検出および識別のためのアルゴリズムを発展させる。異なる個体からの誘発反応の多くの例(例えば、P300反応を含む波形)を機械学習アルゴリズムに提示することによって、これは達成され得る。機械学習アルゴリズムは、パターン認識のためのそれら自体の規則に由来する、ユーザーによって分類される刺激の例を使用する。その後、これらの規則は、方法のピークの局在化および識別の段階として実施されるであろう。機械学習は、現在の実施形態において実施されないが、本発明の精神および範囲内にとどまる。
【0137】
3)誘発反応は、一旦確認されると、工程26で示されるように定量化されなければならない。ERPのための一般的な定量的測度は、限定されないが、オンセットのレイテンシー、オフセットのレイテンシー、ピークのレイテンシー、ピーク振幅、平均振幅、および領域を含む。異なるタイプの定量的測度は、異なるタイプの誘発反応に必要である。例えば、ERSおよびERDは、スペクトルパワーの測定を必要とする。好ましい実施形態は、ピークのレイテンシーおよび振幅に関するERP成分を定量化する。ピーク振幅は2つの方法で測定される。1つは、対象のピークと、異なる極性の2つの取り囲むピークとの間の最大電圧差のピーク間の測定である。もう1つは、「推測される基線」が、異なる極性の2つの取り囲むピークの平均電圧として計算される、新しい方法である。その後、ピーク振幅は、その平均と対象のピークとの間の電圧差として測定される。
【0138】
〈スコア計算〉
意思不疎通の患者における標準試験手順の一部として、ERP(および拡大解釈すれば、それらの磁気対照物)の使用に大きな関心がある。しかしながら、ERP評価の中で使用されるツールは、現在まで、研究ドメインにとどまっている:臨床的評価がなされ得る標準的データはほとんどない。あらゆる医学的検査または心理検査(例えば、血圧、IQ)のように、ERPは、正規母集団と比較されない限り、診断上の意味はほとんどない。実際には、既存の標準化した心理検査のERP誘発への適応は、言語コミュニケーションに関する能力を失った患者を評価するのに非常に有用であることが証明されてきた。
【0139】
しかしながら、ERPに基づいた新しい試験を定めるときに、ERPが、刺激配列の組成物、検査時の意識のレベル、およびEEGの記録および分析に使用される装置を含む、多くのパラメーターによって劇的に変化することは考慮に入れられるべきである。それ故、患者におけるERP振幅は、診断上または予後の目的のいずれかのために、実験的文献で報告された振幅と直接的に比較することはできない。ERP検査は、臨床的な使用のために特別に集められた標準的サンプルに関連して、工程27で示されるように、実行されるべきである。この標準的データを集めるために、実験の長さ、測定装置、および定量化のプロセスを含む、試験手順の多くの態様は、慎重に標準化されるべきである。言いかえれば、ERP検査に使用される、ハードウェア、ソフトウェア、または刺激配列のほとんどの単一の態様を変えるには、完全に新しい標準的サンプルの収集が必要となる。工程28に示されるように、我々は、これらの必要条件に一致する標準的データベースからの値と比較される、ERP測定に基づいた臨床的に関連するスコア、またはそれらの磁気対照物を生成するための方法を発展させてきた。
【0140】
本実施形態において、試験は、自覚のある意識の5つの指標:感覚処理、知覚処理、注意/警告機構、記憶検索、および言語処理をもたらす。指標の各々は、4つまでのスコアを生じさせることができる:1)診断上のスコア(Dx):情報処理のスペクトルにわたってERP指標によって明らかにされるような、認知機能を反映するマルチポイントスコア;2)信頼性スコア(Rx):反復可能な成分の発生を評価するマルチポイント信頼性検査;3)有効性スコア(Vx):成分の「テンプレートへの適合性」(例えば、形態)を評価するマルチポイント有効性検査;および4)予後スコア(Px);ERP波形の特徴と患者への影響との統計学的関連性に基づいた、マルチポイントスコア。
【0141】
Dxスコアに含まれる脳機能は、感覚処理、知覚組織、注意/警告機構、記憶検索、および言語処理である。これらの機能は、それぞれ、P1−N1、MMN、P300(トーンに対する)、N2およびP300(名前に対する)、およびN400 ERP成分によって反映される。スコアは、これらのERPの磁気対照物に等しく適用される。
【0142】
図3に示されるように、Dxスコアにおける点は、データベースから、患者のERPのピーク振幅と、平均偏差および標準偏差などの、標準的値との間の違いの統計学的評価に基づいた、処理の5つの領域の各々に割り当てられる。これらの値はソフトウェアにおいて提供される。方法の本実施形態において、標準的サンプルは、認知機能を評価するために使用される、ERP成分の各々に関する正常な、境界線上の、および異常なピーク振幅の領域に分けられる。例えば、標準的サンプルからの平均振幅より下の、3を超える標準偏差であるP1−N1振幅が「異常である」と考えられる閾値が設定され得る。この異常な反応に関して、感覚処理のために点は割り当てられないかもしれない。測定されたP1−N1振幅が2を超えるが、標準的サンプルからの平均振幅より下の、3未満の標準偏差であるとき、反応は、「境界線上」と考えられ得る。この境界線上の反応に関して、感覚処理のために1点が割り当てられ得る。しかしながら、P1−N1振幅が、標準的サンプルからの平均振幅より下の、2未満の標準偏差であるとき、この正常な反応は、満点(本実施例では、2点)を受けることができる。知覚処理(MMN)、注意/警告機構(P300)、記憶検索(N2、Ρ30)、および言語処理(N400)に関しては、類似した区別がなされ得る。
【0143】
重度に脳に損傷を受けた患者におけるERP反応は、より低いレベルの感覚ERPの欠如が、より高いレベルの言語ERPも欠いていることを意味する、厳しい階層性に必ずしも従わない。したがって、全体的な一連のERP指標の使用を利用することは重要であり、皮質非反応の患者を単一のERPに対する陰性結果の結果として言明することは適切ではない。階層的パラダイムはまた、2つの他の重要な利点を有し:それらは、複数のタスクがすべて陰性結果を生む場合の一致のレベルを提供し、特定の反応のみを欠いている場合の認識の特異性に関する有用な情報を提供することができる(Monti et al., 2009)。したがって、全体的なDxスコアは、自覚のある意識に寄与する認知機能の総合指数として使用することができるか、または、該スコアは、そのサブコンポーネントに分割することができ、留意すべきは、陰性結果が、任意の特定のレベルでの処理の欠如に対する決定的な証拠を構成しないということである。
【0144】
信頼性(Rx)および有効性(Vx)のスコアは、ERP成分の特徴およびそれらの波形特性の反復及び/又は一貫性に基づいて割り当てられる。方法の本実施形態において、これは、もし反復可能な成分が1つを超える波形で観察されると、点がRxスコアに割り当てられることを意味する。例えば、P1−N1 ERP成分は、事実上あらゆる音のオンセトットに反応して観察可能である。それ故、もしP1−N1が標準の調性刺激および強度異常の調性刺激の両方に反応すると分かると、点はRxスコアに割り当てられ得る。同様の計算が、Vxスコアに関しても行われ、それによって、「テンプレートへの適合性」は、特定の時間にわたる標準的波形とのパーセント差の標準化した測定として計算される。
【0145】
予後(Px)スコアは、波形特徴と患者への影響との間の統計学的関連性を使用して計算される。方法の1つの実施形態において、これは、特定の指標に関する非回復に対する回復に基づいて分けられる以前の患者データへの適合性を評価する分類手法を使用して決定される。例えば、クラスター分析の形をとる統計学的分析によって、回復しない患者に対する、回復する患者に現われる傾向がある特定のERP波形の特徴をもたらすことができる。誘発反応の波形特徴が患者への影響を予測する程度を定量化するために、様々な異なる統計テストが使用され得ることを留意されたい。本実施形態では、分類手法を使用すると記載されているが、回帰分析などの、他の統計テストは対象のままである。Pxスコアにおける点は、患者への影響を予測する波形データの特徴の数および大きさに基づいて割り当てられる。
【0146】
スコア(Dx、Rx、Vx、Px)は、介護者およびヘルスケアワーカーに通信されなければならない。この通信は、携帯機器のスクリーンに送られるグラフ式の出力、および現在の通信技術に統合される出力を介して生じる。
図4Aおよび4Bに示されるような、省略された「短いレポート(Short Reports)」、および以下に言及される及び
図5に示されるような、詳細な「長いレポート(Long Reports)」などの、複数のレポートは、重症者管理カスケードへの急速な普及および容易な統合に対する通信ネットワークを介して通信されるであろう。
【0147】
図5に示されるグラフに類似したグラフとともにある以下の表は、主治医への電子メールに添付される典型的なより詳細な長いレポートのコピーを提供する。患者の機密性を維持するために、このような長いレポートは、後のアクセスのための保健機関の安全なサーバーへ転送され得る。
【0149】
〈診断(Dx)スコア:5/10〉
Dxスコアは、存在する自覚のある意識の指標の数、およびそれらの振幅の正常性を指す。
【0150】
図5は、対象の誘発反応に関する標準的分布を示し、標準的分布の「正常な」、「境界線上の」「異常な」領域を示す陰影に加え、これらの領域の各々で割り当てられる点の数値表示を有する。暗い黒色のバーの配置は、患者の誘発反応の大きさを示す。
図5に類似したプロットにおいて、感覚スコア:2/2、パーセンタイル順位27が示され、ここで、感覚スコアは、患者が感覚処理中に引き出されたERP反応を実証するか否かを示す。このようなERP反応は、P1、N1、およびP2を含む。感覚ERP反応は、(はっきりした線(bolded line)によって示される)正常範囲内にある。
【0151】
図5に類似したプロットにおいて、知覚スコア:1/2、パーセンタイル順位4が示され、ここで、知覚スコアは、患者が、感覚記憶のレベルに達した、および知覚規則に従って組織化された音によってのみ引き出されるERP反応を実証するか否かを示す。このようなERP反応は、ミスマッチ陰性電位(MMN)およびN2を含む。知覚ERP反応は、境界線上の範囲内にある。
【0152】
図5に類似したプロットにおいて、注意スコア:2/2、パーセンタイル順位76が示される。注意スコアは、患者が、警告システムの起動および音を方向付けることによって引き起こされたコンテキストの更新によって引き出されたERP反応を実証するか否かを示す。このようなERP反応は、P300を含む。注意ERP反応は、正常範囲内にある。
【0153】
図5に類似したプロットにおいて、記憶スコア:0/2、パーセンタイル順位0.6が示される。記憶スコアは、患者が、警告システムによるおよび記憶回復を介する個人的に関連し学習した音(それらの名前など)によって引き起こされたコンテキストの更新によって引き出されたERP反応を実証するか否かを示す。このようなERP反応は、P300を含む。記憶ERP反応は存在しない。
【0154】
図5に類似したプロットにおいて、言語スコア:0/2、パーセンタイル順位0.8が示される。言語スコアは、患者が、文のコンテキスト内の意味論的意味のために処理されている言語刺激によって引き出されたERP反応を実証するか否かを示す。このようなERP反応は、N400を含む。言語ERP反応は存在しない。
【0155】
〈信頼性(Rx)スコア:3/10〉
Rxスコアは、異なる刺激条件を介するERP指標の反復を指す。それは、観察された反応のロバスト性の指数を提供する。
感覚スコア:1/1
感覚反応が、1つを超える条件で観察された。
知覚スコア:1/1
知覚反応が、1つを超える条件で観察された。
注意スコア:1/1
注意反応が、1つを超える条件で観察された。
記憶スコア:0/1
記憶反応は存在しなかった。
言語スコア:0/1
言語反応は存在しなかった。
【0156】
〈有効性(Vx)スコア:3/5〉
Vxスコアは、標準に対するERP波形の適合性を指す。それは、予期された波形特性に対するERP反応の一致の指数を提供する。
感覚スコア:1/1
感覚ERPは、典型的な正常な反応に類似している。
知覚スコア:1/1
知覚ERPは、典型的な正常な反応に類似している。
注意スコア:1/1
注意ERPは、典型的な正常な反応に類似している。
記憶スコア:0/1
記憶ERPは異常であった。
言語スコア:0/1
言語ERPは異常であった。
【0157】
〈予後(Px)スコア:7/10〉
患者は、後に覚醒意識を回復する脳卒中患者に典型的なERP特徴の70%を立証する。