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特許6124158フッ素化ポリマー及び親水性膜の調製におけるその使用(VI)
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6124158
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】フッ素化ポリマー及び親水性膜の調製におけるその使用(VI)
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/331 20060101AFI20170424BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20170424BHJP
   C08F 299/02 20060101ALI20170424BHJP
   C08J 9/36 20060101ALI20170424BHJP
   C08G 81/00 20060101ALI20170424BHJP
   B01D 71/52 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   C08G65/331
   C08J7/04 TCEW
   C08F299/02
   C08J9/36
   C08G81/00
   B01D71/52
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-122991(P2015-122991)
(22)【出願日】2015年6月18日
(65)【公開番号】特開2016-29146(P2016-29146A)
(43)【公開日】2016年3月3日
【審査請求日】2015年6月18日
(31)【優先権主張番号】14/320,454
(32)【優先日】2014年6月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596064112
【氏名又は名称】ポール・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Pall Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】ハッサン アイット‐ハドゥ
(72)【発明者】
【氏名】フランク オケジー オニェマウワ
【審査官】 大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−249500(JP,A)
【文献】 米国特許第03470258(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0219350(US,A1)
【文献】 特開2007−269973(JP,A)
【文献】 特開2011−110474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/331
B01D 71/52
C08F 299/02
C08G 81/00
C08J 7/04
C08J 9/36
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式R−S−P
(式中、Rは式C2n+1(CH−(式中、n及びmは独立に、1〜20である)のフルオロカルビル基であり、Sはイオウであり、Pは、(i)1つ若しくは複数のアリル基を有し、エポキシド環が開環したグリシドールとアリルグリシジルエーテルとのコポリマー;又は(ii)ポリ(アリルグリシジルエーテル)若しくはエポキシド環が開環したグリシドールとアリルグリシジルエーテルとのコポリマーであって、アリル基の1つ若しくは複数が、1,2−ジヒドロキシプロピル基若しくは式−(CH−S−(CH−X(式中、aは3であり、bは1〜3であり、Xは酸性基、カチオン、アニオン、双性イオン、ハロ、ヒドロキシル、アシル、アシルオキシ、アルキルチオ、アルコキシ、式−C(H)(COOH)(NH)の基、及び式−C(H)(COOH)(NHAc)の基、又はその塩から選択される)の基で置き換えられている、コポリマーである)
のフッ素化ポリマー。
【請求項2】
nが4〜12であり、mが2〜6である、請求項に記載のフッ素化ポリマー。
【請求項3】
nが8であり、mが2である、請求項1又は2に記載のフッ素化ポリマー。
【請求項4】
前記フルオロカルビル基が直鎖である、請求項1〜のいずれか一項に記載のフッ素化ポリマー。
【請求項5】
前記グリシドールとアリルグリシジルエーテルとのコポリマーが、以下の構造
【化3】

を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のフッ素化ポリマー。
【請求項6】
以下の構造
【化5】

を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載のフッ素化ポリマー。
【請求項7】
式R−S−P
(式中、Rは式C2n+1(CH−(式中、n及びmは独立に、1〜20である)のフルオロカルビル基であり、Sはイオウであり、Pは、(i)1つ若しくは複数のアリル基を有し、エポキシド環が開環したグリシドールとアリルグリシジルエーテルとのコポリマー;又は(ii)ポリ(アリルグリシジルエーテル)若しくはエポキシド環が開環したグリシドールとアリルグリシジルエーテルとのコポリマーであって、アリル基の1つ若しくは複数が、1,2−ジヒドロキシプロピル基若しくは式−(CH−S−(CH−X(式中、aは3であり、bは1〜3であり、Xは酸性基、カチオン、アニオン、双性イオン、ハロ、ヒドロキシル、アシル、アシルオキシ、アルキルチオ、アルコキシ、式−C(H)(COOH)(NH)の基、及び式−C(H)(COOH)(NHAc)の基、又はその塩から選択される)の基で置き換えられている、コポリマーである)
のフッ素化ポリマーを調製する方法であって、
(i)式C2n+1(CH−(式中、n及びmは独立に、1〜20である)のフルオロカルビル基を有するフルオロカルビルチオールを用意するステップ、及び
(ii)グリシドールとアリルグリシジルエーテルとの混合物の開環重合をフルオロカルビルチオールにおいて行うステップ、及び/又は
(iii)アリル基の1つ若しくは複数を、1,2−ジヒドロキシプロピル基若しくは式−(CH−S−(CH−X(式中、aは3であり、bは1〜3であり、Xは酸性基、カチオン、アニオン、双性イオン、ハロ、ヒドロキシル、アシル、アシルオキシ、アルキルチオ、アルコキシ、式−C(H)(COOH)(NH)の基、及び式−C(H)(COOH)(NHAc)の基、又はその塩から選択される)の基で置き換えるステップ
を含む、方法。
【請求項8】
疎水性ポリマー膜の親水性を増大させる方法であって、前記疎水性ポリマー膜を、請求項1〜のいずれか一項に記載のフッ素化ポリマーで被覆するステップと、被覆された前記疎水性ポリマー膜を加熱するステップと、を含む、方法。
【請求項9】
前記疎水性ポリマー膜が、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(フッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンのコポリマー、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(フルオロエチレン−プロピレン)、ポリ(エチレン−クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−ヘキサフルオロプロピレン)、及びポリ(エチレン−テトラフルオロエチレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−ペルフルオロアルキルビニルエーテル)、ペルフルオロアルコキシポリマー、ペルフルオロポリエーテル、ポリフッ化ビニル、及びフッ素化エチレン−プロピレンから選択されるポリマーを含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
疎水性ポリマー膜がポリテトラフルオロエチレン又はポリ(フッ化ビニリデン)を含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
疎水性フルオロポリマー膜上に配置された、請求項1〜のいずれか一項に記載のフッ素化ポリマーの硬化塗膜を含む、親水性フルオロポリマー膜。
【請求項12】
72×10−5/cmより大きい臨界湿潤表面張力を有する、請求項11に記載の親水性フルオロポリマー膜。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の背景]
[0001]多孔質膜、例えば、精密ろ過膜又は限外ろ過膜を調製するために、その望ましいバルク特性、例えば、機械的柔軟性、熱安定性、及び耐薬品性を考慮して、疎水性ポリマー、特にフルオロポリマーが使用されてきた。しかし、水性の流体をろ過するのに使用されるとき、かかる膜の表面を、親水性、湿潤性、及び/又は低タンパク質吸着性について向上させることが必要である。
【0002】
[0002]フルオロポリマー膜の上の1つ又は複数の特性を向上させる試みがなされてきた。例えば、フルオロポリマー膜の表面の親水性を向上させるために、高エネルギー照射、スパッタリング、及びプラズマ処理が用いられてきた。しかし、かかる試みは、不十分に親水性が向上した膜を生成するものであるか、十分に親水性が向上したときには、溶質除去性能を元々の膜の性能から有意に低下させるほど膜表面を改質するものであった。
【0003】
[0003]前述のことから、フルオロポリマー膜の親水性を、有意にその性能特性に影響を及ぼすことなく向上させる方法に対する要望が満たされていないことが示される。
【0004】
[発明の概要]
[0004]本発明は、フルオロポリマー膜の親水性を、その性能特性に有意に影響を及ぼすことなく向上させるための容易な方法を提供する。
【0005】
[0005]よって、本発明は、式R−S−P(式中、Rはフルオロカルビル基であり、Sはイオウであり、Pは、(i)ポリグリセロール;(ii)ポリ(アリルグリシジルエーテル);(iii)1つ若しくは複数のアリル基を有する、グリシドールとアリルグリシジルエーテルとのコポリマー;又は(iv)ポリ(アリルグリシジルエーテル)若しくはグリシドールとアリルグリシジルエーテルとのコポリマーであって、アリル基の1つ若しくは複数が、1,2−ジヒドロキシプロピル基若しくは式−(CH−S−(CH−X(式中、aは3であり、bは1〜3であり、Xは酸性基、塩基性基、カチオン、アニオン、双性イオン、ハロ、ヒドロキシル、アシル、アシルオキシ、アルキルチオ、アルコキシ、アルデヒド、アミド、カルバモイル、ウレイド、シアノ、ニトロ、エポキシ、式−C(H)(COOH)(NH)の基、及び式−C(H)(COOH)(NHAc)の基、又はその塩から選択される)の基で置き換えられている、コポリマーである)のフッ素化ポリマーを提供する。
【0006】
[0006]本発明のフッ素化ポリマーは、疎水性フルオロポリマー膜などの疎水性膜の表面の親水性を向上させるために使用することができる。フッ素化ポリマーは、ファンデルワールス力を通して膜の疎水性の表面に強力に接着し、臨界湿潤表面張力(CWST)の値が95ダイン/cm以上に達する、表面張力が増大した膜をもたらす。表面改質は、刺激の強い化学物質、例えば、酸、アルカリ、又は漂白剤での処理に対して安定である。この親水性膜は、ディウェッティング(dewetting)しにくい。この親水性膜は、タンパク質結合能が低い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態による親水性フルオロポリマー膜が表流水(surface water)で試験されたときのサイクル数の関数として、透過ろ液をグラムで示す図である。
図2】本発明の一実施形態による別の親水性フルオロポリマー膜が表流水で試験されたときのサイクル数の関数として、透過ろ液をグラムで示す図である。
【0008】
[発明の詳細な説明]
[0009]一実施形態によれば、本発明は、式R−S−P(式中、Rはフルオロカルビル基であり、Sはイオウであり、Pは、(i)ポリグリセロール;(ii)ポリ(アリルグリシジルエーテル);(iii)1つ若しくは複数のアリル基を有する、グリシドールとアリルグリシジルエーテルとのコポリマー;又は(iv)ポリ(アリルグリシジルエーテル)若しくはグリシドールとアリルグリシジルエーテルとのコポリマーであって、アリル基の1つ若しくは複数が、1,2−ジヒドロキシプロピル基若しくは式−(CH−S−(CH−X(式中、aは3であり、bは1〜3であり、Xは酸性基、塩基性基、カチオン、アニオン、双性イオン、ハロ、ヒドロキシル、アシル、アシルオキシ、アルキルチオ、アルコキシ、アルデヒド、アミド、カルバモイル、ウレイド、シアノ、ニトロ、エポキシ、式−C(H)(COOH)(NH)の基、及び式−C(H)(COOH)(NHAc)の基、又はその塩から選択される)の基で置き換えられている、コポリマーである)のフッ素化ポリマーを提供する。
【0009】
[0010]一実施形態によれば、Rは任意の適切なフルオロカルビル基、例えば、フルオロアルキル基、フルオロアルケニル基、又はフルオロシクロアルキル基であることができる。フルオロアルキル又はフルオロアルケニル基は、直鎖又は分枝であることができる。
【0010】
[0011]一実施形態では、フルオロカルビル基は、式C2n+1(CH−(式中、n及びmは独立に、1〜20であり、好ましくは、nは4〜12であり、mは2〜6であり、より好ましくは、nは8であり、mは2である)のフルオロアルキル基である。
【0011】
[0012]複数の実施形態において、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20である。
【0012】
[0013]上の実施形態のいずれかにおいて、mは、1、2、3、4、5、又は6である。
【0013】
[0014]上の実施形態のいずれかによれば、Pは、ポリグリセロール又はグリシドールのポリマーである。一実施形態によれば、ポリグリセロールは、以下の繰り返し単位
【化1】

の1つ又は複数を有する。
【0014】
[0015]上の実施形態のいずれかによれば、ポリグリセロールは以下の構造
【化2】

の1つ又は複数を含み、R−S−Pのイオウとの結合点が以下の波線で示されている。
【0015】
[0016]一実施形態によれば、Pは、1つ又は複数のアリル基を有する、グリシドールとアリルグリシジルエーテルとのコポリマーである。例えば、コポリマーであるPは、以下の構造
【化3】

を含む。
【0016】
[0017]一実施形態によれば、Pは、アリル基が官能基で置き換えられている、アリルグリシジルエーテルのポリマーである。例えば、Pは、以下の構造
【化4】

(式中、mは約10〜約1000、好ましくは約30〜約300、より好ましくは約50〜約250である)
の1つを有する。
【0017】
[0018]一実施形態によれば、Pは、アリル基の1つ又は複数が官能基で置き換えられている、グリシドールとアリルグリシジルエーテルとのコポリマーである。よって、例えば、Pは、式
【化5】

(式中、Rは、アリル及び/又は−(CH−Xである)
のものである。
【0018】
[0019]ブロックコポリマーの一実施形態では、Xはアミノ、ジメチルアミノ、−CHCHSOH、−CHCHCHSOH、−CHCOH、及び−CHCH(CH、並びにそれらの組合せから選択される。
【0019】
[0020]よって、例えば、Pは、以下の構造
【化6】

【化7】

【化8】

の1つを有する。
【0020】
[0021]一実施形態によれば、フッ素化ポリマーは、以下の構造
【化9】

を有する。
【0021】
[0022]一実施形態によれば、フッ素化ポリマーは、以下の構造
【化10】

を有する。
【0022】
[0023]本発明は、式R−S−P(式中、Rはフルオロカルビル基であり、Sはイオウであり、Pは、(i)ポリグリセロール;(ii)ポリ(アリルグリシジルエーテル);(iii)1つ若しくは複数のアリル基を有する、グリシドールとアリルグリシジルエーテルとのコポリマー;又は(iv)ポリ(アリルグリシジルエーテル)若しくはグリシドールとアリルグリシジルエーテルとのコポリマーであって、アリル基の1つ若しくは複数が、1,2−ジヒドロキシプロピル基若しくは式−(CH−S−(CH−X(式中、aは3であり、bは1〜3であり、Xは酸性基、塩基性基、カチオン、アニオン、双性イオン、ハロ、ヒドロキシル、アシル、アシルオキシ、アルキルチオ、アルコキシ、アルデヒド、アミド、カルバモイル、ウレイド、シアノ、ニトロ、エポキシ、式−C(H)(COOH)(NH)の基、及び式−C(H)(COOH)(NHAc)の基、又はその塩から選択される)の基で置き換えられている、コポリマーである)のフッ素化ポリマーを調製する方法であって、(i)フルオロカルビルチオールを用意するステップ、(ii)グリシドール、アリルグリシジルエーテル、若しくはグリシドールとアリルグリシジルエーテルとの混合物の開環重合をフルオロカルビルチオールにおいて行うステップ、及び/又は(iii)アリル基の1つ若しくは複数を、1,2−ジヒドロキシプロピル基若しくは式−(CH−S−(CH−X(式中、aは3であり、bは1〜3であり、Xは酸性基、塩基性基、カチオン、アニオン、双性イオン、ハロ、ヒドロキシル、アシル、アシルオキシ、アルキルチオ、アルコキシ、アルデヒド、アミド、カルバモイル、ウレイド、シアノ、ニトロ、エポキシ、式−C(H)(COOH)(NH)の基、及び式−C(H)(COOH)(NHAc)の基、又はその塩から選択される)の基で置き換えるステップを含む方法をさらに提供する。
【0023】
[0024]任意の適切なフルオロカルビルチオールを使用して、開環重合を開始することができる。適切なフルオロカルビルチオールの例には、フルオロアルキルチオール、例えば、C2n+1(CHSH(式中、n及びmは独立に、1〜20、好ましくは、nは4〜12であり、mは2〜6であり、より好ましくは、nは8であり、mは2である)が含まれる。
【0024】
[0025]複数の実施形態において、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20である。
【0025】
[0026]上の実施形態のいずれかにおいて、mは、1、2、3、4、5、又は6である。
【0026】
[0027]グリシドール、すなわち2,3−エポキシ−1−プロパノールは、官能性末端基として1つのエポキシド環及び1つのヒドロキシル基を含有する。両方の末端は、互いに反応して、グリセロール誘導体である巨大分子を形成することができる。生じた巨大分子は反応を続けて、ポリグリセロールを形成する。アリルグリシジルエーテルは1つのエポキシド環を含有し、これは開環重合することができる。
【0027】
[0028]グリシドール及び/又はアリルグリシジルエーテル中のエポキシド環の開環は、フルオロカルビルチオールのチオール基によって開始される。開環したエポキシドは、隣接するグリシドール及び/又はアリルグリシジルエーテルのエポキシドを開き続け、グリシドール及びアリルグリシジルエーテルの重合はこのようにして進行する。
【0028】
[0029]一実施形態によれば、開環重合は、溶媒の非存在下で行われる。
【0029】
[0030]或いは、開環重合は、適切な溶媒、特に極性非プロトン性溶媒中で行うことができる。適切な溶媒の例には、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、及びアニソール、並びにそれらの混合物が含まれる。フルオロカルビルチオール、グリシドール、及び/又はアリルグリシジルエーテルの量は、任意の適切な濃度で存在することができ、例えば、それぞれが、重合媒体の重量で約5%〜約60%以上、好ましくは約10%〜約50%、より好ましくは約20%〜約40%の濃度で存在することができる。一実施形態では、それぞれの濃度は約30重量%である。
【0030】
[0031]任意選択により、チオールによる開環反応は、塩基の存在下で行うことができる。
【0031】
[0032]一実施形態では、開環重合は、チオール対グリシドールの比率が、約1:1〜約1:1000、好ましくは約1:1〜約1:100、より好ましくは約1:1〜約1:50であるように実行される。
【0032】
[0033]一実施形態では、開環重合は、反応混合物中のチオール対アリルグリシジルエーテルの比率が、約1:1〜約1:1000、好ましくは約1:1〜約1:100、より好ましくは約1:1〜約1:50であるように実行される。
【0033】
[0034]一実施形態では、開環重合は、反応混合物中のチオール、グリシドール、及びアリルグリシジルエーテルの比率が、約1:1:1〜約1:1000:1000、好ましくは約1:1:1〜約1:100:100、より好ましくは約1:1:1〜約1:50:50であるように実行される。
【0034】
[0035]開環重合は、適切な温度、例えば、25℃〜約130℃、好ましくは約50℃〜約120℃、より好ましくは約60℃〜80℃で実行される。
【0035】
[0036]重合は、任意の適切な長さの時間、例えば、約1時間〜約100時間、好ましくは約2時間〜約40時間、より好ましくは約3〜約20時間で行うことができる。重合時間は、とりわけ、所望の重合度及び反応混合物の温度に応じて変動する可能性がある。
【0036】
[0037]溶媒が重合に使用されるならば、生じたフッ素化ポリマーは、非溶媒、例えば水で析出させることによって反応混合物から単離することができる。生じたポリマーを乾燥し、残留する溶媒又は非溶媒をすべて除去する。
【0037】
[0038]上のフッ素化ポリマーにおいて、ブロックコポリマーを、酸化剤、カルボキシルアルカンチオール又はその塩、スルホン酸アルカンチオール又はその塩、(ジアルキルアミノ)アルカンチオール又はその塩、ハロアルカンチオール、ヒドロキシアルカンチオール、アシルアルカンチオール、アルコキシアルカンチオール、アルキルチオアルカンチオール、アルデヒドアルカンチオール、アミドアルカンチオール、カルバモイルアルカンチオール、ウレイドアルカンチオール、シアノアルカンチオール、ニトロアルカンチオール、エポキシアルカンチオール、システイン、アシルシステイン、アミノアルカンチオール又はその塩、アルキルアミノアルカンチオール、ジアルキルアミノアルカンチオール、及びスルホン酸アルキルアンモニウムアルカンチオール又はその塩から選択される作用剤と反応させることによって、コポリマーのアリル基の1つ又は複数を、1,2−ジヒドロキシプロピル基又は式−(CH−S−(CH−X(式中、aは3であり、bは1〜3であり、Xは酸性基、塩基性基、カチオン、アニオン、双性イオン、ハロ、ヒドロキシル、アシル、アシルオキシ、アルキルチオ、アルコキシ、アルデヒド、アミド、カルバモイル、ウレイド、シアノ、ニトロ、エポキシ、式−C(H)(COOH)(NH)の基、及び式−C(H)(COOH)(NHAc)の基、又はその塩から選択される)の基で置き換えることができる。
【0038】
[0039]一実施形態によれば、Xは任意の酸性基、例えば、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、又はカルボン酸であることができ、塩基性基は任意の塩基性基、例えば、アミノ基、アルキルアミノ基、又はジアルキルアミノ基であることができ、カチオンは任意のカチオン基、例えば第四級アンモニウム基であることができ、双性イオンは、例えば、式−N(R)(CHSO(式中、R及びRはアルキル基であり、cは1〜3である)の第四級アンモニウムアルキルスルホネート基であることができる。
【0039】
[0040]アリル基の1つ又は複数を適切な作用剤と反応させて、所望の変化をもたらすことができる。例えば、アリル基を、酸化剤、例えば、四酸化オスミウム、アルカリ性過マンガン酸塩、又は過酸化水素と反応させることによって、1,2−ジヒドロキシプロピル基に変換することができる。
【0040】
[0041]アリル基をチオールを有する酸基、例えば、HS−(CH−X(式中、XはCOOH、POH、POH、又はSOHであり、式中、bは1〜3である)と反応させることによって、アリル基を式−(CH−S−(CH−X(式中、aは3であり、bは1〜3であり、Xは酸性基である)の基に変換することができる。
【0041】
[0042]アリル基をチオールを有する塩基性基、例えば、HS−(CH−X(式中、XはNH、NHR、又はNRRであり、ここで、RはC〜Cアルキル基であり、bは1〜3である)と反応させることによって、アリル基を式−(CH−S−(CH−X(式中、aは3であり、bは1〜3であり、Xは塩基性基である)の基に変換することができる。
【0042】
[0043]アリル基をチオールを有するカチオン基、例えば、HS−(CH−X(式中、XはNH、NHRR、又はNRRRであり、ここで、RはC〜Cアルキル基であり、bは1〜3である)と反応させることによって、アリル基を式−(CH−S−(CH−X(式中、aは3であり、bは1〜3であり、Xはカチオン基である)の基に変換することができる。
【0043】
[0044]アリル基をチオールを有する双性イオン基、例えば、HS−(CH−X(式中、Xは双性イオンを有する基、例えば、−N(R)−(CH−SOであり、ここで、RはC〜Cアルキル基であり、b及びcは独立に1〜3である)と反応させることによって、アリル基を式−(CH−S−(CH−X(式中、aは3であり、bは1〜3であり、Xは双性イオン基である)の基に変換することができる。
【0044】
[0045]アリル基の1つ又は複数は、ハロアルカンチオールと、例えば、フルオロアルカンチオール、クロロアルカンチオール、ブロモアルカンチオール、又はヨードアルカンチオールと反応させることによって、置き換えることができる。アシルアルカンチオールのアシル基は、ホルミル、アセチル、プロピオニル、又はブタノイルであり得る。アルコキシアルカンチオールのアルコキシ部分は、C〜Cアルコキシ基であり得る。アルキルチオアルカンチオールのアルキルチオ部分は、C〜Cアルキル基であり得る。
【0045】
[0046]一実施形態では、アリル基の1つ又は複数は、カルボン酸アルカンチオール又はその塩、リン酸アルカンチオール又はその塩、ホスホン酸アルカンチオール又はその塩、スルホン酸アルカンチオール又はその塩、(ジアルキルアミノ)アルカンチオール又はその塩、アミノアルカンチオール又はその塩、アルキルアミノアルカンチオール、ジアルキルアミノアルカンチオール、及びスルホン酸アルキルアンモニウムアルカンチオール又はその塩と反応させることができる。
【0046】
[0047]本発明は、疎水性ポリマー膜の親水性を増大させる方法であって、疎水性膜を上述の通りのフッ素化ポリマーで被覆するステップを含む方法をさらに提供する。
【0047】
[0048]一実施形態によれば、疎水性ポリマー膜はフルオロポリマー、すなわちフッ素を含むポリマーを含み、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(フッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンのコポリマー、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(フルオロエチレン−プロピレン)、ポリ(エチレン−クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(エチレン−テトラフルオロエチレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−ペルフルオロアルキルビニルエーテル)、ペルフルオロアルコキシポリマー、ペルフルオロポリエーテル、ポリフッ化ビニル、及びフッ化エチレン−プロピレンから選択されるポリマー、好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン又はポリ(フッ化ビニリデン)を含む。
【0048】
[0049]本発明のフッ素化ポリマーは適切な溶媒に溶解され、塗膜(coating)としてフルオロポリマー膜上に塗布される。溶媒は、水、アルコール溶媒、例えば、メタノール、エタノール、又はイソプロパノール、エステル溶媒、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、及び酢酸アミル、ケトン溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、及びシクロヘキサノン、アミド溶媒、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチルピロリドン、環状エーテル、例えば、ジオキサン及びジオキソラン、並びにそれらの混合物から選択することができる。一実施形態では、溶媒は、50:50v/vの比率のメタノールと水との混合物である。
【0049】
[0050]フッ素化ポリマーは、溶液中に適切な濃度で存在することができ、例えば、約0.01重量%〜約5重量%、好ましくは約0.1重量%〜約2重量%、より好ましくは約0.25重量%〜約1重量%で存在することができる。
【0050】
[0051]被覆する前に、任意選択により、フルオロポリマー膜を、イソプロパノール、エタノール又はメタノールで予め湿潤させ、水ですすぐことができる。
【0051】
[0052]フルオロポリマー膜を、適切な長さの時間、例えば、約1分〜約2時間以上、好ましくは約10分〜約1時間、より好ましくは約20分〜約50分の間、被覆溶液に接触させる。
【0052】
[0053]フルオロポリマー膜の被覆溶液との接触は、任意の適切な方式によって行うことができ、例えば、膜を被覆溶液に浸漬させること、膜に真空を適用して若しくは適用せずに被覆溶液を膜に通すこと、メニスカスコーティング、浸漬コーティング、スプレーコーティング、若しくはスピンコーティング、又はそれらの任意の組合せによって行うことができる。
【0053】
[0054]被覆した膜を、約40℃以上、例えば、約60℃〜約160℃、好ましくは約70℃〜約115℃、より好ましくは約80℃〜約110℃の温度に加熱する。
【0054】
[0055]上の加熱は、適切な期間、例えば、約1分〜約2時間の間、好ましくは約10分〜約1時間の間、より好ましくは約20分〜約40分の間行うことができる。
【0055】
[0056]任意選択により、被覆した膜を、熱水、例えば約80℃の熱水で、適切な期間、例えば約5分〜2時間の間洗浄して、遊離フッ素化ポリマー又は水溶性ポリマーをすべて除去し、その後、被覆した膜を、適切な温度、例えば約80℃〜約110℃で、約2分〜約20分の間、乾燥する。
【0056】
[0057]生じた親水性フルオロポリマー膜は、72ダイン/cmより大きく、例えば、73、75、80、85、90又は95ダイン/cmのCWSTを有する。
【0057】
[0058]本発明の多孔質膜は、室温で、2%NaOH及び2000ppmのNaOClを含有する溶液に少なくとも7日間、5MのNaOH中に少なくとも7日間、又は5MのHCl中に少なくとも7日間曝露しても安定である。複数の実施形態において、膜は、かかる曝露に室温で最長30日間安定である。
【0058】
[0059]本発明の多孔質膜は、膜汚れに耐性がある。例えば、表流水で試験したとき、多孔質中空糸膜は、高透過水量、例えば、少なくとも7.0mL/分/cmを示し、高透過水量は、繰り返されるサイクル、例えば5サイクル以上にわたって維持される。
【0059】
[0060]本発明の実施形態による多孔質膜は、精密ろ過膜若しくは限外ろ過膜として、或いはナノろ過膜、逆浸透膜、ガス分離膜、浸透気化若しくは蒸気透過膜、透析膜、膜蒸留、クロマトグラフィー膜、並びに/又は順浸透膜及び浸透圧発電用膜の調製において、用途が見出される。
【0060】
[0061]本発明の実施形態による多孔質膜は、約0.005μm以上、例えば、約0.02μm〜約10μm、好ましくは約0.03μm〜約0.5μm、より好ましくは約0.01μm〜約0.2μmの孔径を有する。
【0061】
[0062]本発明の実施形態による多孔質膜は、例えば、診断用途(例えば、試料調製及び/又は診断用ラテラルフロー装置を含む)、インクジェット用途、製薬業界用の流体ろ過、医療用途用の流体ろ過(家庭で使用するためのもの及び/又は患者が使用するためのものを含む、例えば静脈注射用途、例えば、体液、例えば、血液(例えば、白血球を除去するための)のろ過も含む)、エレクトロニクス業界用の流体ろ過(例えば、マイクロエレクトロニクス業界におけるフォトレジスト液のろ過)、食品及び飲料業界用の流体ろ過、浄化、抗体及び/若しくはタンパク質含有液のろ過、核酸含有液のろ過、細胞検出(生体位を含む)、細胞採取、並びに/又は細胞培養液のろ過を含めた、様々な用途で使用することができる。その代わりに、又は加えて、本発明の実施形態による膜は、空気及び/若しくは気体をろ過するのに使用することができ、並びに/又は通気用途(例えば、空気及び/又は気体を通し、液体を通さないようにする)に使用することができる。本発明の実施形態による多孔質膜は、手術用装置及び製品、例えば、眼科用手術用品を含めた、様々な装置に使用することができる。本発明の実施形態による多孔質膜は、例えば、表流水、地下水、又は工業用水の浄化など、水の浄化に使用することもできる。
【0062】
[0063]本発明の実施形態によれば、多孔質膜は、平面状、平膜、ひだ状、管状、らせん状、及び中空糸を含めた、様々な形状を有することができる。
【0063】
[0064]本発明の実施形態による多孔質膜は、典型的には、少なくとも1つの入口及び少なくとも1つの出口を含み、入口と出口の間に少なくとも1つの流体流路を規定する筐体内に配置され、ここで、少なくとも1つの本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を含むフィルターは、流体流路を横切って、フィルター装置又はフィルターモジュールをもたらす。一実施形態では、入口及び第1の出口を含み、入口と第1の出口の間に第1の流体流路を規定する筐体と;第1の流体流路を横切って筐体内に配置されている、少なくとも1つの本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を含むフィルターとを含む、フィルター装置が提供される。
【0064】
[0065]クロスフロー用途のために、少なくとも1つの本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を含むフィルターは、少なくとも1つの入口及び少なくとも2つの出口を含み、入口と第1の出口の間に少なくとも第1の流体流路及び入口と第2の出口の間に第2の流体流路を規定する筐体内に配置され、ここで、本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を含むフィルターは、第1の流体流路を横切ってフィルター装置又はフィルターモジュールをもたらすことが好ましい。例示的実施形態では、フィルター装置はクロスフローフィルターモジュールと筐体とを含み、この筐体は、入口、濃縮液出口を含む第1の出口、及び透過液出口を含む第2の出口を含み、入口と第1の出口の間に第1の流体流路及び入口と第2の出口の間に第2の流体流路を規定し、ここで、少なくとも1つの本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を含むフィルターは、第1の流体流路を横切って配置される。
【0065】
[0066]フィルター装置又はモジュールは滅菌可能であってもよい。適切な形であり、入口及び1つ又は複数の出口を設けた任意の筐体を用いてもよい。
【0066】
[0067]筐体は、処理される流体と適合性のある、任意の不浸透性熱可塑性材料を含めた、任意の適切な硬質不浸透性材料から製作することができる。例えば、筐体は、金属、例えば、ステンレス鋼から、又はポリマー、例えば、透明若しくは半透明のポリマー、例えば、アクリル、ポリプロピレン、ポリスチレン若しくはポリカーボネート樹脂から製作することができる。
【実施例】
【0067】
[0068]以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、当然のことながら、本発明の範囲を何らかの形で限定するものと解釈すべきではない。
【0068】
実施例1
[0069]本実施例は、ペルフルオロデカンチオールをポリグリセロールと結合させてPG−PFDTを生成した、本発明の一実施形態によるフッ素化ポリマーの調製を例示する。
【0069】
[0070]ペルフルオロデカンチオール2gをグリシドール2gと混合し、反応混合物を60℃で6時間撹拌した。生じた白色の固体ワックス状材料を、40℃の真空オーブンで一晩乾燥した。元素分析から、生成物であるPG−PFDTは3%のイオウ及びおよそ30%のフッ素を含有することが明らかとなった。
【0070】
実施例2
[0071]本実施例は、ペルフルオロデカンチオールをポリグリセロールと結合させてPG−PFDTを生成した、本発明の一実施形態による別のフッ素化ポリマーの調製を例示する。
【0071】
[0072]ペルフルオロデカンチオール(5g)をグリシドール(7.5g)及び炭酸カリウム(0.2g)と混合し、反応混合物を60℃で6時間撹拌した。生じた白色のワックス状固体を60℃の真空オーブンで一晩乾燥した。元素分析から、生成物であるPG−PFDTは1.7%のイオウ及び20%のフッ素を含有することが明らかとなった。
【0072】
実施例3
[0073]本実施例は、ペルフルオロデカンチオールをポリグリセロールと結合させてPG−PFDTを生成した、本発明の一実施形態による別のフッ素化ポリマーの調製を例示する。
【0073】
[0074]ペルフルオロデカンチオール(5g)をグリシドール(10g)及び炭酸カリウム(0.2g)と混合し、反応混合物を60℃で6時間撹拌した。生じた白色のワックス状固体を60℃の真空オーブンで一晩乾燥した。元素分析から、生成物であるPG−PFDTは1.2%のイオウ及び12%のフッ素を含有することが明らかとなった。
【0074】
実施例4
[0075]本実施例は、ペルフルオロデカンチオールを、重合されたグリシドール及びアリルグリシジルエーテルと結合させてPFDT−PG−AGEを生成した、本発明の一実施形態による別のフッ素化ポリマーの調製を例示する。
【0075】
[0076]ペルフルオロデカンチオール(3g)を、グリシドール(2g)及びアリルグリシジルエーテル(5g)及び炭酸カリウム(0.12g)と混合した。反応混合物を80℃で20時間撹拌した。過剰なグリシドール及びアリルグリシジルエーテルを真空下で一晩60℃で蒸発させた。プロトンNMRから、60mol%のアリル基の存在が確認された。
【0076】
実施例5
[0077]本実施例は、ペルフルオロデカンチオールを、重合されたグリシドール及びアリルグリシジルエーテルと結合させてPFDT−PG−AGEを生成した、本発明の一実施形態による別のフッ素化ポリマーの調製を例示する。
【0077】
[0078]ペルフルオロデカンチオール(5g)を、グリシドール(1g)、アリルグリシジルエーテル(4g)、及び炭酸カリウム(0.2g)と混合し、反応混合物を100℃で12時間撹拌した。THF(200mL)を反応混合物に添加し、溶液を脱イオン水(2×100mL)で抽出した。THF溶液を真空下で一晩60℃で濃縮して、8gの所望の生成物を粘性の液体として得た。プロトンNMR分析から、50mol%のアリル基の存在が確認された。
【0078】
実施例6
[0079]本実施例は、ペルフルオロデカンチオールを、重合されたグリシドール及びアリルグリシジルエーテルと結合させてPFDT−PG−AGEを生成した、本発明の一実施形態による別のフッ素化ポリマーの調製を例示する。
【0079】
[0080]ペルフルオロデカンチオール(5g)を、グリシドール(2g)及びアリルグリシジルエーテル(10g)、及び炭酸カリウム(0.2g)と混合した。反応混合物を100℃で20時間撹拌した。生じた白色の粘性の材料を60℃の真空オーブンで一晩乾燥した。プロトンNMRから、70mol%のアリル基の存在が確認された。
【0080】
実施例7
[0081]本実施例は、本発明の一実施形態による親水性PTFE及びPVDF膜の調製を例示する。
【0081】
[0082]PG−PFDT(実施例1)又はPFDT−PG−AGE(実施例4)の0.25重量%、0.5重量%、又は1.0重量%溶液を、体積比50/50の水/メタノール溶媒混合物中で調製した。疎水性の平膜PTFE及びPVDF膜(孔径0.02mm〜0.2μm)、並びにPTFE(孔径0.1μm〜0.2μm、CWST25ダイン/cm)及びPVDF(孔径0.02μm〜0.5μm、CWST34〜36ダイン/cm)から作成された中空糸膜を、最初にイソプロパノールで予め湿潤させ、水で洗い、その後、膜をPG−PFDT又はPFDT−PG−AGEの溶液に30分間浸した。
【0082】
[0083]膜を、100℃で30分間硬化させた。硬化した膜を80℃の熱水中で1時間浸出させ、100℃で10分間乾燥し、親水性PTFE及びPVDF膜を得た。
【0083】
実施例8
[0084]本実施例は、本発明の一実施形態によって調製された親水性PTFE及びPVDF膜が、酸、アルカリ、及びアルカリ性次亜塩素酸塩溶液での浸出処理に対して安定であることを例示する。
【0084】
[0085]実施例7で調製したPTFE及びPVDF膜を、2%のNaOH及び2000ppmのNaOClを含有する溶液に7日間、5MのNaOH中に7日間、又は5MのHCl中に7日間、すべて80℃で浸した。膜を水で洗浄し、100℃で10分間乾燥した。表面張力測定から、これらの処理後に表面張力に変化がなかったことが示された。
【0085】
[0086]SV4膜(Pall Corp製ウイルス除去膜)は、PG−PFDTの0.5%溶液で処理したときに、73ダイン/cmのCWSTを有していた。100℃で8時間加熱した後、CWSTは73ダイン/cmのままであった。SV4膜は、PFDT−PG−AGEの0.5%溶液で処理したときに、81ダイン/cmのCWSTを有していた。100℃で8時間加熱した後、CWSTは81ダイン/cmのままであった。
【0086】
実施例9
[0087]本実施例は、本発明の一実施例によって調製された親水性PTFE及びPVDF膜の特性の幾つかを例示する。
【0087】
[0088]実施例8で例示した親水性PTFE及びPVDF膜の、浸出処理後のCWST値を表1に示す。
【表1】
【0088】
実施例10
[0089]本実施例は、本発明の一実施形態によって調製された親水性膜が膜汚れに抵抗できることを例示する。
【0089】
[0090]実施例7で例示した通りにPG−PFDTの0.5%溶液で改質したPTFE膜及びPVDF膜を、以下の特性評価:pH6.25、伝導率25.5mS/cm、完全溶解固体物質32mg/L、及び全有機炭素6.9mg/Lを有する湖沼水である表流水で、数回のろ過サイクルにわたって試験した。図1〜2からわかるように、本発明の膜は、対照の膜の透過率と比較すると、ろ過サイクルにわたって高い透過率を維持することによって示される通りに、膜汚れに抵抗した。
【0090】
実施例11
[0091]本実施例は、本発明の一実施形態によって調製された親水性膜の、タンパク質結合に抵抗できることを例示する。
【0091】
[0092]実施例7の通りにPG−PFDT又はPFDT−PG−AGEの0.5%溶液とともに調製されたPTFE及びPVDF膜を、マイクロBCA(Micro BCA)(商標)試験として知られる、静的浸漬試験において、タンパク質結合について試験した。結合したタンパク質、すなわちウシ血清アルブミンの量を測定した。得られた結果を表2に示す。
【表2】
【0092】
実施例12
[0093]本実施例は、本発明の一実施例による表面改質が水分流束を有意に減少させないことを例示する。
【0093】
[0094]実施例7で調製した通りの、PG−PFDTの0.5%溶液を使用することによるPTFE及びPVDF膜を水の透過について試験し、得られた結果を表3に示す。
【表3】
【0094】
[0095]本明細書に引用された、刊行物、特許出願、及び特許を含めたすべての参考文献は、各参考文献が参照により組み込まれると個々に及び明確に示される場合並びにその全体が本明細書に明記される場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0095】
[0096]本発明の記載に関連して(特に添付の特許請求の範囲に関連して)、用語「ある(a)」及び「ある(an)」及び「その(the)」及び「少なくとも1つの」並びに同様の指示語の使用は、本明細書で特に指摘しない限り又は明らかに文脈と矛盾しない限り、単数及び複数の両方に及ぶものと解釈される。その後に1つ又は複数の項目の列挙が続く用語「〜の少なくとも1つ」(例えば、「A及びBの少なくとも1つ」)の使用は、本明細書で特に指摘しない限り又は明らかに文脈と矛盾しない限り、列挙された項目から選択された1つの項目(A又はB)、或いは列挙された項目の2つ以上の任意の組合せ(A及びB)を意味すると解釈される。用語「備える」、「有する」、「含む」及び「含有する」は、特に断りのない限り、オープンエンドターム(すなわち、「含むが、限定されない」という意味)として解釈される。本明細書での数値の範囲の列挙は、本明細書で特に指摘しない限り、その範囲内の別個の値を個々に言及する略記法としての役割を果たすことだけを意図しており、別個の値は、本明細書で個々に列挙されたかのように本明細書に組み込まれる。本明細書で記載されるすべての方法は、本明細書で特に指摘しない限り又は明らかに文脈と矛盾しない限り、任意の適切な順序で行うことができる。本明細書で提供される任意の及びすべての例又は例示的な言い回し(例えば、「など」)の使用は、特に主張しない限り、本発明をより明確にすることだけを意図しており、本発明の範囲に対して制限をもたらすものではない。本明細書におけるいかなる言い回しも、請求項に記載されていない任意の要素が本発明の実践に不可欠であるとして示すものとは解釈されるべきではない。
【0096】
[0097]本明細書では、本発明を行うために本発明者らが知っている最良の形態を含めて、本発明の好ましい実施形態が記載される。当業者であれば、前述の記載を読めば、これらの好ましい実施形態の変形形態が明らかとなり得る。本発明者らは、当業者がかかる変形形態を適宜用いることを予想しており、また本発明者らは、本発明が本明細書に具体的に記載された通りではないように実践されることを意図している。したがって、本発明は、準拠法によって許可されるように、本明細書に添付の特許請求の範囲に記載された主題を改変したもの及び等価なものをすべて含む。さらに、本明細書で特に指摘しない限り又は明らかに文脈と矛盾しない限り、そのすべての可能な変形形態における上述の要素のいかなる組合せも本発明に包含される。
図1
図2