(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記多孔質フルオロポリマー支持体が、PTFE、PVDF、PVF(ポリフッ化ビニル)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、FEP(フッ素化エチレンプロピレン)、ETFE(ポリエチレンテトラフルオロエチレン)、ECTFE(ポリ(エチレンクロロトリフルオロエチレン))、PFPE(パーフルオロポリエーテル)、PFSA(パーフルオロスルホン酸)、及びパーフルオロポリオキセタンから選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の親水性複合多孔質膜、又は請求項12に記載の親水性改質多孔質フルオロポリマー膜。
請求項1〜7若しくは13のいずれか一項に記載の親水性複合多孔質膜又は請求項12に記載の親水性改質多孔質フルオロポリマー膜に流体を通すステップを含む、流体を濾過する方法。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態による親水性改質ポリマーで多孔質フルオロポリマー支持体を被覆する工程を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態による親水性改質ポリマーで多孔質フルオロポリマー支持体を被覆且つ架橋結合させる工程を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるポリマーのGPCクロマトグラムである。
【
図4】本発明の一実施形態による他のポリマーのGPCクロマトグラムである。
【
図5】本発明の一実施形態によるさらに他のポリマーのGPCクロマトグラムである。
【
図6】本発明の一実施形態によるポリ(M8−r−NPF10)コポリマーのGPCトレースである。
【
図7】本発明の一実施形態によるポリ(M8)、ポリ(M8−b−NPF6)、及びポリ(M8−b−NPF10−b−COD)のGPCトレースである。
【0008】
[発明の詳細な説明]
[0014]一実施形態によれば、本発明は、多孔質フルオロポリマー支持体、及びコポリマーを含む被覆を含む、親水性複合多孔質膜であって、コポリマーが繰返し単位A及びBを含み、Aは次式のものであり、
【化3】
Bは次式のものであり、
【化4】
式中、
コポリマーは、ブロックコポリマー又はランダムコポリマーであり、
n及びmは、コポリマーに存在する繰返し単位A及びBの数であり、1〜約1000の範囲であり、但し、nとmの合計が10以上であり、
コポリマーは、任意選択で架橋結合されている、親水性複合多孔質膜を提供する。
【0009】
[0015]本明細書の式において、繰返し単位の式の点線は、コポリマーがブロックコポリマー又はランダムコポリマーであり得ることを示す。ブロックコポリマーは、括弧(繰返し単位)によって表される。ランダムコポリマーは、角括弧[繰返し単位]によって表される。
【0010】
[0016]実施形態において、n及びmは、各モノマーの重合度を表し、独立して、約10〜約1000であり、好ましくは約20〜約50である。
【0011】
[0017]他の実施形態において、n及びmは、コポリマーに存在するモノマーのモル分率を表し、n及びmは、独立して、1〜99モル%の範囲であってもよく、好ましくは、20〜50モル%の範囲であってもよい。
【0012】
[0018]コポリマーは、ブロックコポリマー又はランダムコポリマーであり得る。ブロックコポリマーは、ジブロックコポリマー(A−B)、トリブロックコポリマー(A−B−A若しくはB−A−B)、又はマルチブロックコポリマー((A−B)x)であり得る。任意選択で、コポリマーは、第3のセグメントC、例えば、A−B−Cなどの、トリブロックコポリマー又はランダムコポリマーを含むことができる。
【0013】
[0019]コポリマーは、任意の適切な分子量、例えば、一実施形態において、数平均分子量又は重量平均分子量(Mn又はMw)が、約10kDa〜約1000kDa、好ましくは約75kDa〜約500kDa、より好ましくは約250kDa〜約500kDaであることができる。
【0014】
[0020]各モノマーブロックは、任意の適切な質量%、例えば、一実施形態において、約99%:約1%〜約50%:約50%、好ましくは、約90%:約10%〜約70%:約30%、より好ましくは、約75%:約25%〜で、ブロックコポリマーにおいて存在することができる。
【0015】
[0021]コポリマーは、任意の適切な分子鎖末端、例えば、アリール基及びアルコキシ基、好ましくはフェニル基及びエトキシ基から選択される、分子鎖末端を有することができる。
【0016】
[0022]一実施形態によれば、本発明のコポリマーは次式のものである。
【化5】
【0017】
[0023]一実施形態によれば、上記コポリマーのいずれかは、1つ又は複数の、次式の繰返し単位Cをさらに含む。
【化6】
【0018】
[0024]上記実施形態のコポリマーの例として、
【化7】
が挙げられ、式中、k=1〜1000である。
【0019】
[0025]コポリマーの実施形態のいずれかは、任意の繰返し単位、特にA及び/又はBに結合した1つ又は複数のキレート官能基又はイオン交換官能基をさらに含むことができる。
【0020】
[0026]したがって、本発明は、多孔質フルオロポリマー支持体、及びコポリマーを含む被覆を含む、親水性複合多孔質膜であって、コポリマーが、繰返し単位A及びB、並びに1つ又は複数の繰返し単位A及びBに結合した1つ又は複数のキレート官能基又はイオン交換官能基を含み、Aは次式のものであり、
【化8】
【0021】
[0027]Bは次式のものであり、
【化9】
【0022】
[0028]ここで、
[0029]
*は、キレート官能基又はイオン交換官能基の結合点であり、
[0030]コポリマーは、ブロックコポリマー又はランダムコポリマーであり、
n及びmは、コポリマーに存在する繰返し単位A及びBの数であり、1〜約1000の範囲であり、但し、nとmの合計が10以上であり、
コポリマーは、任意選択で架橋結合されている、
親水性複合多孔質膜を提供する。
【0023】
[0031]かかるコポリマーの例として、
【化10】
【化11】
【化12】
が挙げられる。
【0024】
[0032]本発明のコポリマーは、任意の適切な方法、例えば、環状モノマーの開環メタセシス重合(ROMP)によって、調製することができる。一般に、カルベン配位子を含む遷移金属触媒がメタセシス反応を媒介する。
【0025】
[0033]任意の適切なROMP触媒、例えば、第一世代、第二世代、第三世代のグラブス触媒、ユミコア(Umicore)触媒、ホベイダ−グラブス(Hoveyda−Grubbs)触媒、シュロック(Schrock)触媒、及びシュロック−ホベイダ(Schrock−Hoveyda)触媒を用いることができる。かかる触媒の例として、以下のものが挙げられる。
【化13】
【化14】
【化15】
【0026】
[0034]一実施形態において、第三世代グラブス触媒は、空気中での安定性、複数の官能基への耐性、及び/又は速い、重合開始速度及び連鎖成長速度などの利点のために、特に適している。さらに、第三世代グラブス触媒を用いて、末端基に、任意の相溶性基を取り入れるように処理することができ、触媒を容易に再生利用することができる。かかる触媒の好ましい例としては、
【化16】
がある。
【0027】
[0035]上記第三世代グラブス触媒(G3)は、市販のものを得てもよいし、以下のように、第二世代グラブス触媒(G2)から調製してもよい。
【化17】
【0028】
[0036]モノマーの重合は、適切な溶媒、例えば、ROMP重合の実施に一般に用いられる溶媒中で行われる。適切な溶媒の例として、ベンゼン、トルエン、及びキシレンなどの芳香族炭化水素、n−ペンタン、ヘキサン、及びヘプタンなどの脂肪族炭化水素、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、及びトリクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、並びにその混合物が挙げられる。
【0029】
[0037]モノマー濃度は、1〜50重量%の範囲であってよく、好ましくは2〜45重量%の範囲であってよく、より好ましくは3〜40重量%の範囲であってよい。
【0030】
[0038]重合は、任意の適切な温度、例えば、−20〜+100℃、好ましくは10〜80℃で実施することができる。
【0031】
[0039]重合は、各々のブロックの適切な分子鎖長を得るのに適した、約1分〜100時間であり得る、任意の時間で実施することができる。
【0032】
[0040]触媒の量は、任意の適切な量で選択することができる。例えば、触媒対モノマーのモル比は、約1:10〜約1:1000であってよく、好ましくは約1:50〜1:500であってよく、より好ましくは約1:100〜約1:200であってよい。例えば、触媒対モノマーのモル比は、1:n及び1:mであることができ、ここで、n及びmは平均重合度である。
【0033】
[0041]コポリマーは、適切な技術、例えば非溶媒を用いた沈殿によって、単離することができる。
【0034】
[0042]本発明のコポリマーは、任意の既知の技術によって、分子量及び分子量分布について特性決定することができる。例えば、MALS−GPC技術を用いることができる。MALS−GPC技術は、移動相を用いて、高圧ポンプによって、ポリマー溶液を、固定相を充填したカラム群を通して溶出する。固定相により、ポリマー試料が分子鎖の大きさによって分離され、次いで3つの異なる検出器によってポリマーが検出される。直列の検出器を用いることができ、例えば、一列に並んだ、紫外線検出器(UV検出器)、続いて多角度レーザー光散乱検出器(MALS検出器)、続いて示差屈折率検出器(RI検出器)である。UV検出器によって、波長254nmでポリマーの光吸収が測定され、MALS検出器によって、移動相に相対的な、ポリマー鎖からの散乱光が測定される。
【0035】
[0043]本発明のコポリマーは、高単分散である。例えば、コポリマーでは、Mw/Mnが1.05〜1.5であり、好ましくは1.1〜1.2である。
【0036】
[0044]一実施形態によれば、本発明は、
(i)開環メタセシス重合(ROMP)触媒によって触媒させて、exo−7−オキサノルボルネン−N−4−モノメトキシトリエチレングリコール−5.6−ジカルボキシ無水物(M8)を重合して、ホモポリマー、ポリM8を得るステップと、
(ii)(i)で得られたホモポリマーの分子鎖末端で、ROMP触媒によって触媒された、5−(パーフルオロ−n−ヘキシル)ノルボルネン(NPF6)又は5−(パーフルオロ−n−オクチル)ノルボルネン(NPF10)を逐次重合するステップとを含む、コポリマー、ポリ(M8−b−NPF6)又はポリ(M8−b−NPF10)を調製する方法を提供する。
【0037】
[0045]ポリ(M8−b−NPF6)に関して、上記の方法を以下に説明する。
【化18】
【0038】
[0046]一実施形態によれば、本発明は、ROMP触媒によって、M8、及びNPF6又はNPF10の混合物を重合するステップを含む、ランダムコポリマー、ポリ(M8−r−NPF6)又はポリ(M8−r−NPF10)を調製する方法を提供する。
【0039】
[0047]ポリ(M8−r−NPF6)のための方法を以下に説明する。
【化19】
【0040】
[0048]5−(パーフルオロデシル)ノルボルネン(NPF10)は、以下のように調製することができる。
【化20】
【0041】
[0049]一実施形態によれば、ランダムコポリマー、ポリ(M8−r−NPF10)は、ROMP触媒によって触媒させて、exo−7−オキサノルボルネン−N−4−モノメトキシトリエチレングリコール−5.6−ジカルボキシ無水物(M8)及び5−(パーフルオロ−n−オクチル)ノルボルネンの混合物を重合するステップを含む方法によって、調製することができる。
【0042】
[0050]ポリ(M8−b−NPF6)又はポリ(M8−r−NPF6)は、以下に示すように、例えば、チオール・エン反応によって、さらに改質することができる。
【化21】
【0043】
[0051]本発明は、AIBNなどのラジカル開始剤の存在下で、ポリ(M8−b−NPF6)又はポリ(M8−r−NPF6)をメルカプトエチルスルホン酸ナトリウムと反応させるステップを含む、改質コポリマー、ポリ(M8−b−NPF6)−S(CH
2)
2SO
3Na又はポリ(M8−r−NPF6)−S(CH
2)
2SO
3Naを調製する方法をさらに提供する。
【0044】
[0052]AIBNなどのラジカル開始剤の存在下で、ポリ(M8−b−NPF6)又はポリ(M8−r−NPF6)をメルカプト酢酸と反応させるステップを含む、本発明の、改質コポリマー、ポリ(M8−b−NPF6)−SCH
2COOH又はポリ(M8−r−NPF6)−SCH
2COOHを調製する方法。
【0045】
[0053]AIBNなどのラジカル開始剤の存在下で、ポリ(M8−b−NPF6)又はポリ(M8−r−NPF6)をメルカプトグリセロールと反応させるステップを含む、本発明の、改質コポリマー、ポリ(M8−b−NPF6)−SCH
2CH(OH)CH
2OH又はポリ(M8−r−NPF6)−SCH
2CH(OH)CH
2OHを調製する方法。
【0046】
[0054]過硫酸アンモニウム及び他の水溶性ラジカル源を用いることができる。
【0047】
[0055]他のラジカル開始剤の例として、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクミルなどの、過酸化物、及びt−ブチルパーベンゾエートなどのパーエステルを、上記方法で用いることもできる。
【0048】
[0056]本発明は、上記のように、多孔質フルオロポリマー支持体、及びコポリマーを含む被覆を含む、親水性複合膜をさらに提供するものであり、コポリマーは、任意選択で架橋結合されている。
【0049】
[0057]本発明は、
(i)多孔質フルオロポリマー支持体を用意するステップと、
(ii)上記の、溶媒及びコポリマーを含む溶液で、多孔質フルオロポリマー支持体を被覆するステップと、
(iii)(ii)からの被覆多孔質フルオロポリマー支持体を乾燥させて、前記コポリマーを含む溶液から、溶媒の少なくとも一部を取り除くステップと、任意選択で、
(iv)被覆フルオロポリマー支持体に存在する前記コポリマーを架橋結合させるステップと
を含む、フルオロポリマー支持体を親水性改質する方法をさらに提供する。
【0050】
[0058]得られる膜の表面張力を以下のように測定することができる。例えば、PTFE膜シートをIPA溶媒で予め湿らせ、濃度範囲(0.1質量%〜10質量%)のポリマー溶液に膜を浸漬することによって、室温でPTFE膜シートが被覆される。PTFE膜シートの被覆時間は、(1分〜12時間)の範囲である。PTFE膜シートは、浸漬後、100℃〜160℃の対流オーブンで乾燥させる。乾燥時間は、(10分〜12時間)の範囲である。PTFE膜のぬれ特性を、臨界ぬれ表面張力を測定することによって評価する。
【0051】
[0059]表面張力に関して、表面改質の変化を、臨界ぬれ表面張力(CWST)を測定することによって調べた。その方法は、一定の組成の一組の溶液に依存するものである。各溶液は、特定の表面張力をもつ。溶液の表面張力は、わずかな非等価増分で、25〜92dyne/cmの範囲である。膜の表面張力を測定するために、白色光テーブルの上に膜を配置し、ある表面張力の溶液一滴を膜表面に付与し、液滴が、膜に浸透し、光が膜を透過する指標として明るい白色になる時間を記録する。液滴が膜を浸透するのにかかる時間が10秒以下である場合、瞬間ぬれと考えられる。その時間が10秒より長い場合、溶液は膜を部分的にぬらすと考えられる。
【0052】
[0060]任意の適切な方法、例えば、光開始剤、及びUVなどの高エネルギー放射線を用いて、架橋結合を形成することができる。架橋結合は、膜に非常に安定なポリマー網目構造をもたらすことになると考えられる。
【0053】
[0061]一実施形態において、コポリマーを含む溶液は、架橋剤、例えば式Cのポリマーをさらに含む。
【化22】
【0054】
[0062]ポリマーCは、適量のパーフルオロデカンチオール、グリシドール及びアリルグリシジルエーテルの混合物を、約80℃〜100℃の温度で約20時間撹拌することによって、調製することができる。過剰なグリシドール及びアリルグリシジルエーテルを蒸発によって除去し、生成物を終夜、真空オーブン中、40℃で乾燥させる。例えば、一実施形態で、パーフルオロデカンチオール(30g)を、グリシドール(20g)、アリルグリシジルエーテル(50g)、及び炭酸カリウム(1.2g)と混合した。反応混合物を80℃で20時間撹拌した。過剰なグリシドール及びアリルグリシジルエーテルを蒸発させ、生成物を終夜、真空オーブン中、40℃で乾燥させた。
【0055】
[0063]被覆の架橋結合は、以下のように実施することができる。ポリマー被覆PTFEシートを、任意選択で、IPAで予め湿らせ、次いでシートを光開始剤が調製される溶媒で洗浄して、IPAと溶媒を交換する。その後、シートを、一定濃度の光開始剤溶液に一定時間浸漬し、次いでUV照射に曝した。光開始剤溶液中の浸漬時間は、1分〜24時間の範囲である。UV照射時間は、30秒〜24時間の範囲である。次に、膜の臨界ぬれ表面張力(CWST)、性能特性決定、及び/又はSPM試験を測定した。本明細書で「SPM」は、120〜180℃での、高温硫酸過酸化水素混合物(H
2SO
4(96%):H
2O
2(30%)が体積で80:20である)を意味する。
【0056】
[0064]本発明の一実施形態によれば、親水性フルオロポリマー膜は多孔質膜であり、例えば、直径1nm〜100nmの孔を有するナノ多孔質膜、又は直径1μm〜10μmの孔を有する微多孔質膜である。
【0057】
[0065]得られる多孔質膜の表面張力は、以下のように測定することができる。例えば、膜シートをIPA溶媒で予め湿らせ、0.1質量%〜10質量%の濃度範囲の被覆ポリマー溶液に膜を浸漬することによって、室温でPTFE多孔質支持体のシートが被覆される。被覆時間は、(1分〜12時間)の範囲である。支持体は、浸漬後、100℃〜160℃の対流オーブンで乾燥させる。乾燥時間は、(10分〜12時間)の範囲である。得られる多孔質PTFE膜のぬれ特性を、臨界ぬれ表面張力を測定することによって評価する。
【0058】
[0066]表面張力に関して、表面改質の変化を、臨界ぬれ表面張力(CWST)を測定することによって評価した。その方法は、一定の組成の一組の溶液に依存するものである。各溶液は、特定の表面張力をもつ。溶液の表面張力は、わずかな非等価増分で、25〜92dyne/cmの範囲である。膜の表面張力を測定するために、白色光テーブルの上に膜を配置し、ある表面張力の溶液一滴を膜表面に付与し、液滴が、膜に浸透し、光が膜を透過する指標として明るい白色になる時間を記録する。液滴が膜を浸透するのにかかる時間が10秒以下である場合、瞬間ぬれと考えられる。その時間が10秒より長い場合、溶液は膜を部分的にぬらすと考えられる。
【0059】
[0067]本発明の実施形態による、親水性フルオロポリマー多孔質膜は、多様な用途において使用することができ、例えば、診断的用途(例えば、サンプル調製及び/又は診断用側方流動装置を含む)、インクジェット用途、リソグラフィー、例えばHD/UHMWPEをベースとする媒体の置き換えとして、製薬産業用流体の濾過、金属の除去、超純水の製造、産業用水及び地表水の処理、医療用途用の流体の濾過(例えば、静脈内適用などの、家庭での使用及び/又は患者への使用を含み、また例えば、血液などの生体液の濾過(例えば、ウイルスの除去)も含む)、電子工学産業用流体の濾過(例えば、超小型電子技術産業及び高温SPMでのフォトレジスト液の濾過)、食品及び飲料産業用の流体の濾過、ビールの濾過、浄化、抗体含有流体及び/又は蛋白質含有流体の濾過、核酸含有流体の濾過、細胞検出(in situを含む)、細胞採取、及び/又は細胞培養液の濾過が挙げられる。代替的に、又は追加的に、本発明の実施形態の膜は、空気及び/又はガスを濾過するのに使用することができ、及び/又は通気の用途(例えば、空気及び/又はガスは通すが、液体は通さない)に使用することができる。本発明の実施形態の膜は、例えば、眼科用手術用品など、外科用装置及び外科用品などの、多様な装置において使用することができる。
【0060】
[0068]本発明の実施形態によれば、親水性フルオロポリマー膜は、平面、平坦なシート、ひだ状、管状、らせん状、及び中空繊維などの、多様な形状であることができる。
【0061】
[0069]本発明の実施形態の親水性フルオロポリマー多孔質膜は、典型的には、少なくとも1つの注入口及び少なくとも1つの注出口を備え、注入口と注出口の間に少なくとも1つの流体流路を画定するハウジング内に配置されており、少なくとも1つの本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を含むフィルタは、流体流路の全域にわたっていて、それにより、濾過装置又はフィルタモジュールを提供する。一実施形態において、注入口及び第1の注出口を備え、注入口と第1の注出口の間に第1の流体流路を画定するハウジングと、少なくとも1つの本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を含むフィルタを備え、本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を含むフィルタはハウジング内に第1の流体流路の全域にわたって配置されている、濾過装置が提供される。
【0062】
[0070]クロスフロー適用に関して、少なくとも1つの本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を含むフィルタが、少なくとも1つの注入口及び少なくとも2つの注出口を備え、注入口と第1の注出口の間に少なくとも1つの第1の流体流路を画定し、注入口と第2の注出口の間に第2の流体流路を画定するハウジング内に配置されており、本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を含むフィルタが、第1の流体流路の全域にわたっていて、それにより、濾過装置又はフィルタモジュールを提供することが好ましい。例示的一実施形態において、濾過装置は、クロスフローフィルタモジュール、並びに注入口、濃縮液出口を有する第1の注出口、及び浸透液出口を有する第2の注出口を備え、注入口と第1の注出口の間に第1の流体流路を画定し、注入口と第2の注出口の間に第2の流体流路を画定するハウジングを備え、少なくとも1つの本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を含むフィルタが、第1の流体流路の全域にわたって配置されている。
【0063】
[0071]濾過装置又はフィルタモジュールは殺菌することができる。適切な形状であり、注入口及び1つ又は複数の注入口を提供する、任意のハウジングを用いることができる。
【0064】
[0072]ハウジングは、処理される流体と適合性のある、任意の不浸透性熱可塑性材料などの、任意の適切な剛性不浸透性材料で製作することができる。例えば、ハウジングは、ステンレス鋼などの金属、又はポリマー、例えば、アクリル、ポリプロピレン、ポリスチレン、若しくはポリカーボネート樹脂などの、透明若しくは半透明のポリマーで製作することができる。
【0065】
[0073]一実施形態によれば、親水性フルオロポリマー膜は、任意の適切な多孔質フルオロポリマー支持体、例えば、PTFE、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PVF(ポリフッ化ビニル)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、FEP(フッ素化エチレンプロピレン)、ETFE(ポリエチレンテトラフルオロエチレン)、ECTFE(ポリ(エチレンクロロトリフルオロエチレン))、PFPE(パーフルオロポリエーテル)、PFSA(パーフルオロスルホン酸)、及びパーフルオロポリオキセタンでつくられた支持体を含む。多孔質支持体は、例えば、約10nm〜約10ミクロンの任意の適切な孔径をもつことができ、好ましくは、PTFE及びPVDFである。
【0066】
[0074]本発明は、上記方法によって製造される親水性改質フルオロポリマー膜をさらに提供する。
【0067】
[0075]本発明は、上記膜に流体を通すステップを含む、流体を濾過する方法をさらに提供する。
【0068】
[0076]以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、勿論、本発明の範囲を決して限定するものではないと解釈されたい。
【0069】
実施例1
[0077]材料:以下の材料を購入し、そのまま使用した。
【0070】
[0078]ジメチル5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシレート(C3)はAlfa Aesar社から購入した。
【0071】
[0079]ジクロロメタン(DCM)を活性アルミナで保存し、使用前にアルゴンでパージした。イソプロピルアルコール(IPA)、ジシクロペンタジエン(DCPD)、1H,1H,2H−パーフルオロ−1−オクテン(PF6)、1H,1H,2H−パーフルオロ−1−ドデセン(PF10)、トルエン、塩化チオニル、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド(DMF)、マレイミド、フラン、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD)、トリフェニルホスフィン(Ph
3P)、1−ヘキサデカノール、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、N−フェニルマレイミド、アセトニトリル、メタノール、第二世代グラブス触媒、3−ブロモピリジン、及びペンタンはSigma−Aldrich Co.社から購入し、さらなる処理を行わずに使用した。ジクロロペンタンもまた、Sigma−Aldrich Co.社から購入し、使用前に塩基性アルミナで処理をした。シクロオクタジエン(COD)は、真空蒸留によって、三フッ化ホウ素から精製し、直ちに使用した。
【0072】
実施例2
[0080]本実施例は、ジクロロ[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン](ベンジリデン)ビス(3−ブロモピリジン)ルテニウム(II)(G3)触媒の調製を説明する。
【化23】
【0073】
[0081]上記の第二世代グラブス触媒(G2)(1.0g、1.18mmol)を、50mLフラスコ内で3−ブロモピリジン(1.14mL、11.8mmol)と混合した。室温で5分間撹拌すると、赤色の混合物が鮮緑色に変わった。ペンタン(40mL)を、撹拌しながら15分かけて添加し、緑色の固体を得た。混合物を冷凍機で24時間冷却し、真空下で濾過した。緑色の固体である、得られたG3触媒を冷ペンタンで洗浄し、室温、真空下で乾燥させて、収量0.9g、収率88%をもたらした。
【0074】
実施例3
[0082]本実施例は、本発明の一実施形態の、ホモポリマー及びコポリマーの、ゲル浸透クロマトグラフィーによる特性決定を説明する。
【0075】
[0083]得られるホモポリマー及びブロックコポリマーは、分子量及び分子量分布の特性について、以下の条件でのMALS−GPC技術によって特性決定された。
[0084]移動相:ジクロロメタン(DCM)
[0085]移動相温度:30℃
[0086]UV波長:245nm
[0087]使用するカラム:3本のPSS SVD Lux分析カラム(スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー網目構造)、直径5μm、孔径が1000A、100,000A、及び1,000,000Aであるビーズを固定相として有するカラム、及びガードカラム
[0088]流量:1mL/分
[0089]GPCシステム:UV検出器及びRI検出器を備える、Waters HPLC Alliance e2695システム
[0090]MALSシステム:664.5nmのレーザーを作動させる、8個の検出器を備えるDAWN HELEOS8システム
【0076】
実施例4
[0091]本実施例は、本発明の一実施形態のNPF6モノマーを調製する工程を説明する。
【化24】
【0077】
[0092]Parr高圧反応装置シリンダ容器に、DCPD(100ml、737mmol)、PF6(168ml、737mmol)を装入し、シリンダを反応装置へ取り付け、ヒドロキノン(2.43g、22.1mmol)を装入し、170℃まで72時間加熱した。反応内容物をDCM150mlに溶解させ、500ml丸底フラスコへ移して、真空蒸留でモノマーを精製した。
【0078】
[0093]
1H−NMR(CDCl
3):δ(ppm) 6.2〜6.0(2H)、3.2(1H)、3.0(1H)、2.8(1H)、2.0(1H)、1.5(1H)、及び1.2〜1.4(2H)。
19F−NMR(CDCl
3):δ −89.9(s)、−112.6(m)、−123.8〜−121.3(m)、−127.1〜−125.3(m)。
【0079】
実施例5
[0094]本実施例は、本発明の一実施形態のNPF10モノマーを調製する工程を説明する。
【化25】
【0080】
[0095]Parr高圧反応装置シリンダ容器に、DCPD(24.6ml、183mmol)、PF6(132ml、370mmol)を装入し、シリンダを反応装置へ取り付け、ヒドロキノン(1.08g、10mmol)を装入し、170℃まで72時間加熱した。反応内容物をDCM150mlに溶解させ、500ml丸底フラスコへ移して、真空蒸留でモノマーを精製した。
【0081】
[0096]
1H−NMR(CDCl
3):δ(ppm) 6.2〜6.0(2H)、3.2(1H)、3.0(1H)、2.8(1H)、2.0(1H)、1.5(1H)、及び1.2〜1.4(2H)。
19F−NMR(CDCl
3):δ −80.9(s)、−112.6(m)、−123.8〜−121.4(m)、−127.2〜−125.5(m)。
【0082】
実施例6
[0097]本実施例は、本発明の一実施形態の、ポリ(M8−b−NPF6)の合成及び特性を説明する。
【0083】
[0098]ポリマーは、2つのステップで合成された。THF中で、第三世代グラブス触媒[G3]及びM8モノマーを用いた、ROMP技術によるホモポリマー、ポリ(M8)の1−合成。次いで、得られたリビングホモポリマーを、5−(パーフルオロヘキシル)ノルボルネン(NPF6)モノマーと反応させて、ポリM8とポリNPF6の、目的とするモル比(75:25)を有する、所望のコポリマーをもたらした。調製されたコポリマーを、プロトンNMR及び元素分析によって特性決定し、フルオロブロックのモル比を決定し、GPCによって調べて、コポリマーの分子量を決定した。
【0084】
[0099]第二世代グラブス触媒(G2)(15.6mg、0.018mmol)及びトリフェニルホスフィン(241mg、0.92mmol)を、フルオロポリマー樹脂シリコンセプタムオープントップキャップを備えた40mLバイアルで計量した。触媒を、アルゴン脱気したジクロロメタン(DCM)(40mL)に溶解させ、カニューレを介して、撹拌子を備えた、清潔な1LRBFへ移した。第1のモノマーM8(2.0g、6.42mmol)のDCM(100mL)溶液をアルゴンで脱気し、触媒溶液へ移し、30分間撹拌した。第1のモノマーから生成された、ホモポリマーの分量1〜2mLを、分子量特性決定のために30分後に取り出した。第2のモノマーNPF6(681mg、1.65mmol)のDCM(200mL)溶液をアルゴンで脱気し、RBF内の成長ホモポリマー溶液へ移し、フラスコの内容物をさらに180分間撹拌した。次いで、エチルビニルエーテル(2mL)をジブロックコポリマーの黄色の溶液へ添加して、重合を終わらせた。得られたポリマーをメタノール(2L,2X)中で沈殿させて、白色固体である、純粋なポリマーを回収した。ポリマーを濾過し、室温、真空下で乾燥させた。収率(9.2g、98%)。
【0085】
[0100]
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ(ppm) 6.0〜6.35(s,広幅)、5.5〜6.0(s,広幅)、4.5〜5.2(s,広幅)、4.3〜4.5(s,広幅)、3.5〜3.8(m,広幅)、3.0〜3.3(s,広幅、2.0〜2.4(s,広幅)、1.5〜1.7(s,広幅)、1.0〜1.3(s)。
【0086】
[0101]ポリ(M8)のGPCクロマトグラムと共に、ポリ(M8−b−NPF6)のGPCクロマトグラムを
図1に示す。
【0087】
[0102]コポリマーの性能は、
図2に説明されるように、以下の工程を用いて、PTFE膜を被覆することによって、評価された。(1)コポリマー1重量%のTHF溶液を調製し、(2)PTFE膜をアセトンで洗浄し、(3)PTFE膜をコポリマー1%THF溶液に、30〜60分間浸漬し、次いでTHFで大規模洗浄した。被覆膜を100℃のオーブンで、10分間乾燥させ、次いでCWST値を測定した。記録されたCWSTは、33〜35dyne/cmの範囲であった。未改質PTFEのCWSTは25.4dyne/cmであった。
【0088】
実施例7
[0103]本実施例は、本発明の一実施形態の、ポリ(M8−b−NPF6)の表面改質特性を説明する。
【0089】
[0104]高温SPM適用の被覆工程。
図3に示すように、ポリ(M8−b−NPF6)の1%THF溶液を用いて、深部被覆法によってPTFE50nm膜を被覆した。膜を、洗浄/乾燥させ(この段階で測定されたCWSTは、33〜35dyne/cmであった)、次いでPI(Irgacure2959)0.5%水溶液に5分間浸漬させて、PIを被覆膜上に吸着させた。膜を乾燥させ、UVに60秒間曝し、THFで洗浄して、残留IP又は緩く吸着したコポリマーを取り除いた。膜を乾燥させ、CWSTを測定し、変化は観測されなかった。140℃で3時間、静的状態で架橋結合された材料に、SPM(水中に98%H
2SO
4を80%及び30%H
2O
2を20%)を負荷した。膜をDI水で12時間洗浄し、乾燥させた。CWSTは、37〜40dyne/cmであった。
【0090】
実施例8
[0105]本実施例は、本発明の一実施形態のポリ(M8−r−NPF6)の合成及び特性を説明する。
【0091】
[0106]撹拌子を備えた、清潔な、火炎乾燥した250mlRBFへ、アルゴンパージしたDCM(25ml)に溶解させたG3触媒(15mg、0.017mmol)を、カニューレを介して移し、分離バイアルで、M8モノマー(3.0g、9.64mmol)とNPF6(1.33g、3.21mmol)のDCM(125ml)溶液を、撹拌しているG3触媒緑色溶液へ添加すると、淡い黄緑色から淡褐色へ変化した。撹拌を全部で15時間続け、次いで過剰のビニルエチルエーテルを添加することによって、重合を終わらせた。ポリマー溶液を、塩基性アルミナ、シリカゲル、及びセライトのカラムに通して、触媒を取り除いた。溶媒は、回転蒸発器で取り除いた。得られたポリマーは、無色且つ高粘性であり、冷却すると固体になった。収率(4.0g、92%)。
【0092】
[0107]
1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ(ppm) 5.0〜6.4(m,広幅)、4.5〜5.0(m,広幅)、4.0〜4.5(m,広幅)、3.4〜4.0(m)、3.0〜3.4(s)、1.0〜3.0(m,広幅)。
【0093】
[0108]ポリ(M8−r−NPF6)のGPCクロマトグラムを
図4に図示する。
【0094】
[0109]元素分析の結果を表1に示す。
【0095】
[0110]
【表1】
【0096】
[0111]コポリマーのフッ素化基質への吸着能は、1質量%溶液でPTFE膜を被覆し、膜表面のCWSTの測定により、被覆膜のぬれ特性を調べることによって、分析された。ぬれが10秒未満で起こる場合、瞬間ぬれ又は単純ぬれとして説明される。
【0097】
[0112]同じ被覆溶媒で、膜を処理し、洗浄すると、PTFEのCWSTは、25.4dyne/cm〜39〜40dyne/cmまで増加した。CWST値を表2に示す。
【0098】
[0113]
【表2】
【0099】
実施例9
[0114]本実施例は、本発明の一実施形態の、ポリ(M8−r−NPF6)の表面改質特性を説明する。
【0100】
[0115]
図3は、フルオロポリマー膜をコポリマーで被覆し、光開始剤を用いて架橋結合をさせる工程を説明する。したがって、PTFE膜は、コポリマー溶液に1時間浸漬させることによって、コポリマーで予め被覆された。膜を自然乾燥させ、次いで100℃で10分間熱硬化させた。膜のCWSTを測定した。予め被覆した膜を、イソプロパノールで予め湿らせ、次いでDI水ですすいだ。膜を光開始剤溶液に浸漬し、自然乾燥させ、次いでUV照射した。膜のCWSTを測定した。膜を100℃で10分間熱硬化させた。膜のCWSTを測定した。
【0101】
[0116]得られた膜にSPM混合物を負荷した。膜を、イソプロパノールで予め湿らせ、次いでDI水ですすいだ。膜を、80:20(v/v)の比率で96%H
2SO
4と30%H
2O
2を含む混合物であるSPMに3時間浸漬した。次いで、膜を水で12〜24時間細流洗浄(trickle wash)し、100℃で10分間加熱乾燥させた。膜のCWSTを測定した。表3にCWSTデータを示す。
【0102】
[0117]
【表3】
【0103】
実施例10
[0118]本実施例は、本発明の一実施形態の、ポリ(M8−b−NPF6)−S(CH
2)
2SO
3Na(A)、ポリ(M8−b−NPF6)−SCH
2COOH(B)、又はポリ(M8−b−NPF6)−SCH
2CH(OH)CH
2OH(C)の合成及び特性を説明する。
【0104】
[0119]ポリ(M8−b−NPF6)の、MAcOHによるチオール・エン反応改質。
【0105】
[0120]ポリ(M8−b−NPF6)(0.99g)、チオグリコール酸(MAcOH、0.9g)、及びAIBN(79.8mg)をTHF33mlに溶解させ、窒素下、55℃で26時間反応させた。反応混合物を水中に注ぎ込んだ。沈殿物を、THFに再度溶解させ、再びヘプタンから沈殿させて、暗褐色の固体を得た。
【0106】
[0121]ポリ(M8−b−NPF6)の、MeSNaによるチオール・エン反応改質。
【0107】
[0122]ポリ(M8−b−NPF6)(0.99g)、2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム(MeSNa、1.6g)及びAIBN(79.8mg)をTHF33mlに溶解させ、窒素下、55℃で26時間反応させた。反応混合物を水中に注ぎ込んだ。沈殿物を、THFに再度溶解させ、再びヘプタンから沈殿させて、黄色がかった固体を得た。
【0108】
[0123]ポリ(M8−b−NPF6)の、チオグリセロールによるチオール・エン反応改質。
【0109】
[0124]ポリ(M8−b−NPF6)(0.99g)、1−チオグリセロール(1.05g)、及びAIBN(79.8mg)をTHF33mlに溶解させ、窒素下、55℃で26時間反応させた。反応混合物を水中に注ぎ込んだ。沈殿物を、THFに再度溶解させ、再びヘプタンから沈殿させて、くすんだ白色の固体を得た。
【0110】
[0125]コポリマーの、PTFEの改質能を以下のように調べた。選択された溶媒における、ポリマーA、B、又はCの1%溶液を用いて、深部被覆法によってPTFE50nm膜を被覆した。膜を、洗浄/乾燥させた(CWSTが33〜35dyne/cmとされる元のポリマーと比較して、この段階で測定されたCWSTは、36〜52dyne/cmであった)。被覆材料は、室温で硫酸に曝した場合、安定であった。被覆膜は、pH1及びpH12において安定であった。
【0111】
実施例11
[0126]本実施例は、本発明の一実施形態の、ポリ(M8−b−NPF10)の合成及び特性を説明する。
【0112】
[0127]第二世代グラブス触媒(G2)(15.6mg、0.018mmol)及びトリフェニルホスフィン(241mg、0.92mmol)を、フルオロポリマー樹脂シリコンセプタムオープントップキャップを備えた40mLバイアルで計量した。触媒を、アルゴン脱気したジクロロメタン(DCM)(20mL)に溶解させ、カニューレを介して、撹拌子を備えた、清潔な1LRBFへ移した。第1のモノマーM8(2.0g、6.42mmol)のDCM(100mL)溶液をアルゴンで脱気し、触媒溶液へ移し、30分間撹拌した。第1のモノマーから生成された、ホモポリマーの分量1〜2mLを、分子量特性決定のために30分後に取り出した。第2のモノマーNPF10(1.01g、1.65mmol)のDCM(200mL)溶液をアルゴンで脱気し、RBF内の成長ホモポリマー溶液へ移し、フラスコの内容物をさらに180分間撹拌した。次いで、エチルビニルエーテル(2mL)をジブロックコポリマーの黄色の溶液へ添加して、重合を終わらせた。得られたポリマーをメタノール(2L,2X)中で沈殿させて、白色固体である、純粋なポリマーを回収した。ポリマーを濾過し、室温、真空下で乾燥させた。収率(9.2g、98%)。
【0113】
[0128]
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ(ppm) 6.0〜6.35(s,広幅)、5.5〜6.0(s,広幅)、4.5〜5.2(s,広幅)、4.3〜4.5(s,広幅)、3.5〜3.8(m,広幅)、3.0〜3.3(s,広幅、2.0〜2.4(s,広幅)、1.5〜1.7(s,広幅)、1.0〜1.3(s)。
【0114】
[0129]ポリ(M8)のGPCトレースと共に、ポリ(M8−b−NPF10)のGPCトレースを
図5に示す。
【0115】
[0130]コポリマーのフッ素化基質への吸着能は、1質量%溶液でPTFE膜を被覆し、膜表面のCWSTの測定により、被覆膜のぬれ特性を調べることによって、分析された。
【0116】
[0131]同じ被覆溶媒で、膜を処理し、洗浄すると、PTFEのCWSTは、25.4dyne/cm〜33.41dyne/cmまで増加した。ポリマーは、2つのブロックの供給モル比が[M8]:[NPF10]=90:10モル%であり、PTFE膜に強い付着性をもたらす。CWST値を表4に示す。
【0117】
[0132]
【表4】
【0118】
[0133]表4は、より少ないNPF10含有量(NPF10が10%に対して、NPF6が20%)で、より高いCWST値を与えることへの、ジブロックコポリマーにおけるNPF6とNPF10の寄与の比較を説明する。
【0119】
実施例12
[0134]本実施例は、本発明の一実施形態の、ポリ(M8−r−NPF10)の合成及び特性を説明する。
【0120】
[0135]撹拌子を備えた、清潔な、火炎乾燥した250mlRBFへ、アルゴンパージしたDCM(25ml)に溶解させたG3触媒(15mg、0.017mmol)を、カニューレを介して移し、分離バイアルの、M8モノマー(3.0g、9.64mmol)とNPF10(1.33g、2.17mmol)のDCM(125ml)溶液を、撹拌しているG3触媒緑色溶液へ添加し、淡い黄緑色から淡褐色へ変化させた。撹拌を全部で15時間続け、次いで過剰のビニルエチルエーテルを添加することによって、重合を終わらせた。ポリマー溶液を、塩基性アルミナ、シリカゲル、及びセライトのカラムに通して、触媒を取り除いた。溶媒は、回転蒸発器で取り除いた。得られたポリマーは、無色且つ高粘性であり、冷却すると固体になった。収率(4.0g、92%)。
【0121】
[0136]GPCトレースを
図6に示す。コポリマーのフッ素化基質への吸着能は、1質量%溶液でPTFE膜を被覆し、膜表面のCWSTの測定により、被覆膜のぬれ特性を調べることによって、分析された。
【0122】
[0137]同じ被覆溶媒で、膜を処理し、洗浄すると、PTFEのCWSTは、25.4dyne/cm〜33.41dyne/cmまで増加した。ポリマーは、2つのブロックの供給モル比が[M8]:[NPF10]=90:10モル%であり、PTFE膜に強い付着性をもたらす。CWST値を表5に示す。
【0123】
[0138]
【表5】
【0124】
実施例13
[0139]本実施例は、本発明の一実施形態の、ポリ(M8−b−NPF6)を被覆する方法及び架橋結合させる方法を説明する。
【0125】
[0140]被覆工程。ポリ(M8−b−NPF6)の1%THF溶液を用いて、深部被覆法によってPTFE50nm膜を被覆した。膜を洗浄/乾燥させた(この段階で測定されたCWSTは、33〜35dyne/cmであった)。被覆膜をポリマーC0.5%の水:メタノール(1:1 v/v)溶液で被覆した。被覆膜を乾燥させ、100℃で10分間熱安定化させた。CWSTは73dyne/cmまで増加した。PI(Irgacure2959)0.5%水溶液を用いて、膜を架橋結合させ、PIを被覆膜に吸着させた。膜を乾燥させ、UVに60秒間曝し、THF及びIPAで洗浄して、残留IP又は緩く吸着したコポリマーCを取り除いた。膜を乾燥させ、測定されたCWSTは、架橋結合させる前に達成された73dyne/cmと比較して、55dyne/cmであった。架橋結合された材料は、室温、硫酸の下で、安定であった。架橋結合された材料は、pH1及びpH14において安定であった。
【0126】
実施例14
[0141]本実施例は、本発明の一実施形態のポリ(M8−b−NPF6−b−COD)の合成及び特性を説明する。
【0127】
[0142]第二世代グラブス触媒(G2)(14.5mg、0.017mmol)及びトリフェニルホスフィン(224mg、0.86mmol)を、フルオロポリマー樹脂シリコンセプタムオープントップキャップを備えた40mLバイアルで計量した。触媒を、アルゴン脱気したジクロロメタン(DCM)(20mL)に溶解させ、カニューレを介して、撹拌子を備えた、清潔な1LRBFへ移した。第1のモノマーM8(2.0g、5.14mmol)のDCM(100mL)溶液をアルゴンで脱気し、触媒溶液へ移し、30分間撹拌した。第1のモノマーから生成された、ホモポリマーの分量1〜2mLを、分子量特性決定のために30分後に取り出した。第2のモノマーNPF6(706mg、1.71mmol)のDCM(100mL)溶液をアルゴンで脱気し、RBF内の成長ホモポリマー溶液へ移し、フラスコの内容物をさらに180分間撹拌した。第3のモノマーCOD(1.86g、17.1mmol)のDCM(20mL)溶液をアルゴンで脱気し、RBF内の成長ジブロックポリマー溶液へ移し、フラスコの内容物をさらに180分間撹拌した。次いで、エチルビニルエーテル(2mL)をジブロックコポリマーの黄色の溶液へ添加して、重合を終わらせた。得られたポリマーをメタノール(2L,2X)中で沈殿させて、白色固体である、純粋なポリマーを回収した。ポリマーを濾過し、室温、真空下で乾燥させた。
【0128】
[0143]
1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ(ppm) 6.5〜6.0(s,広幅)、5.75〜5.6(m,広幅)、5.5〜5.2(m,広幅)、4.0〜3.3(m,広幅)、3.3〜3.2(s,広幅)、2.3〜1.75(m,広幅)。
【0129】
[0144]
図7に、GPCトレースを示す。
【0130】
[0145]ポリ(M8−b−NFF6−b−COD)とポリ(NTEF−b−NPF10)のぬれ特性の比較を表6に示す。
【表6】
【0131】
[0146]本明細書に記載の、公表資料、特許出願、及び特許などの、全ての参考資料は、各参考資料が、参照によって組み込まれていることが個別に且つ明確に示され、その全体が本明細書に記載されているかのように、参照によって同じ範囲で本明細書に組み込まれている。
【0132】
[0147]本発明を説明する文脈における(特に、以下の特許請求の範囲の文脈における)、用語「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「その(the)」及び「少なくとも1つの」及び同様の指示対象の使用は、本明細書において別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数と複数の両方を含むと解釈されるべきである。用語「少なくとも1つの」、次いで1つ又は複数の項目の列挙(例えば、「A及びBの少なくとも1つ」)の使用は、本明細書において別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、列挙された項目(A若しくはB)から選択された1つの項目、又は列挙された項目(A及びB)の2つ以上の、任意の組み合わせを意味すると解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含む(containing)」は、別段の指示がない限り、拡張可能な用語(すなわち、「含む(including)が、それらに限定されない」)として解釈されるべきである。本明細書の、値の範囲の記載は、本明細書において別段の指示がない限り、その範囲内にある別個の値を個々に参照する簡潔な方法となることを意図するのにすぎず、別個の値は、本明細書に個々に記載されているかのように、本明細書に組み込まれている。本明細書で説明された全ての方法は、本明細書において別段の指示がない限り、それとも文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書でもたらされる、任意の及び全ての例、又は例示的な言い回し(例えば、「などの」)の使用は、本発明をより明らかにしようと意図するのにすぎず、別段の要求がない限り、本発明の範囲を制限するものではない。本明細書において、全ての言語は、本発明を実施するのに必要な、任意の請求項にかかる構成要素を示すものとして解釈されるべきである。
【0133】
[0148]本発明者らに既知である、本発明を実施するための最良の態様を含む、本発明の好ましい実施形態を本明細書で説明する。前述の記載を読むと、これらの好ましい実施形態の変形形態は、当分野の技術者に明らかになり得る。本発明者らは、当業者らがこうした変形形態を適切に用いることを期待し、本発明が、本明細書で特に説明されたもの以外でも、実施されることを意図する。したがって、適用可能な法律で許されるように、本発明は、本明細書に添付された、特許請求の範囲に記載の主題の、全ての改変及び等価物を含む。さらに、本明細書において別段の指示がない限り、それとも文脈によって明らかに矛盾しない限り、その全ての可能な変形形態の上記構成要素の任意の組み合わせは、本発明に含まれる。