特許第6124172号(P6124172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6124172
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】合成セグメント及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/08 20060101AFI20170424BHJP
【FI】
   E21D11/08
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-239794(P2012-239794)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-88720(P2014-88720A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(74)【代理人】
【識別番号】100089886
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】大関 宗孝
(72)【発明者】
【氏名】煙山 史
(72)【発明者】
【氏名】大段 孝
【審査官】 大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−346695(JP,A)
【文献】 特開平08−258028(JP,A)
【文献】 特開2006−118307(JP,A)
【文献】 特開2009−249841(JP,A)
【文献】 特開2006−316488(JP,A)
【文献】 特開2005−076305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00−19/06,23/00−23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向するように間隔を置いて配置された円弧板状の一対の円弧状側板及び該両円弧状側板の各側縁部間を連結する一対の周方向端板をもって中空枠状に形成された枠部材を有する外殻体と、該外殻体内に形成されたコンクリート製の中詰め部とを備え、前記外殻体と前記中詰め部とが一体化されてなる合成セグメントにおいて、
前記円弧状側板及び周方向端板の枠体外周側内側面部に内向きに張り出した補強板からなる枠状の補強枠体が一体に突設されるとともに、前記各円弧状側板に突設された補強板間に架け渡すように配置され、両端がそれぞれ前記補強板に固定された複数の主筋と、前記周方向端板に突設された補強板間に架け渡すように配置され、両端がそれぞれ前記補強板に固定された複数の配力筋とを格子状に組み込んでなる鉄筋格子を備え、
前記枠部材の前記補強枠体より円弧径方向外周側の内側面部に全周に亘って固定された弾性材からなる枠状の止水部材を備え、
前記中詰め部の外周面を前記外殻体の外周側開口を通して露出させるとともに、前記枠部材の外周側内側面と前記中詰め部との間を前記止水部材により止水したことを特徴としてなる合成セグメント。
【請求項2】
互いに対向するように間隔を置いて配置された円弧板状の一対の円弧状側板及び該両円弧状側板の各側縁部間を連結する一対の周方向端板をもって中空枠状に形成された枠部材を有する外殻体内にコンクリートを打設することにより、前記外殻体とコンクリート製の中詰め部とが一体化されてなる合成セグメントを形成する合成セグメントの製造方法において、
前記円弧状側板及び周方向端板の内側面部に内向きに張り出した補強板からなる枠状の補強枠体が一体に突設されるとともに、前記各円弧状側板に突設された補強板間に架け渡すように配置され、両端がそれぞれ前記補強板に固定された複数の主筋と、前記周方向端板に突設された補強板間に架け渡すように配置され、両端がそれぞれ前記補強板に固定された複数の配力筋とを格子状に組み込んでなる鉄筋格子を備え、且つ、前記枠部材の前記補強枠体より円弧径方向外周側の内周面部に全周に亘って固定された弾性材からなる枠状の止水部材を備え、前記枠部材の内周面側及び外周面側が開口してなる外殻体を使用し、
上面部に断面円弧状の型枠面部を有する型枠台上に前記外殻体をその内周面部が前記型枠面部と当接するように設置して前記外殻体の内周側開口を前記型枠面部で閉鎖し、
その状態で前記外殻体の外周側開口よりコンクリートを前記外殻体内に前記止水部材が圧縮されるまで前記コンクリートを充填した後、該充填されたコンクリートを固化させることにより前記外殻体内に中詰め部を形成することを特徴としてなる合成セグメントの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼製の外殻体の内側にコンクリート製の中詰め部を一体化させてなる合成セグメント及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法を用いたトンネル工事において、軟弱地盤やトンネルの曲線部等のように土圧や水圧等によるトンネル構造への荷重負担が大きな箇所では、このような土圧や水圧等による荷重に対応するために高耐力の合成セグメントが広く使用されている。
【0003】
この合成セグメントは、互いに間隔を置いて配置された一対の円弧状に形成された円弧状側板及び両円弧状側板の各側縁部間を連結する一対の周方向端板からなる枠部材の外側開口部をスキンプレートにより閉鎖した外殻体を備え、この外殻体の内側にコンクリートを充填することによりコンクリート製の中詰め部が形成されている。
【0004】
このような合成セグメントの製造は、外周側がスキンプレートにより閉鎖され、内周側のみが開口した円弧枠状の外殻体を用いるため、内周側開口を上側に向けて設置した状態で内周側開口よりコンクリートを打設する方法、所謂、舟打ちにより行われている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−58308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の如き従来の舟打ちによる合成セグメントの製造方法では、コンクリート製中詰め部の内周面部の仕上げに多大な手間を必要とし、製造コストが嵩むという問題があった。
【0007】
また、舟打ちによりコンクリートを打設する場合、外殻体の中央部より周方向両端側が高い位置となるため、外殻体内に投入されたコンクリートは中央側が密となるように充填され、高い位置にあるセグメントの両端部には十分にコンクリートが充填されず空隙等が形成される虞があった。
【0008】
特に、セグメントの周方向両端部に周方向に隣り合うセグメント同士を連結するための継手部材が埋設されるような場合、上述のごとき空隙が形成されると継手部材の強度にも影響を及ぼす虞があった。
【0009】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、鋼製の外殻体の内側にコンクリート製の中詰め部を一体化させてなる合成セグメントを、効率よく且つ安価に製造することができる合成セグメント及びその製造方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、互いに対向するように間隔を置いて配置された円弧板状の一対の円弧状側板及び該両円弧状側板の各側縁部間を連結する一対の周方向端板をもって中空枠状に形成された枠部材を有する外殻体と、該外殻体内に形成されたコンクリート製の中詰め部とを備え、前記外殻体と前記中詰め部とが一体化されてなる合成セグメントにおいて、前記円弧状側板及び周方向端板の枠体外周側内側面部に内向きに張り出した補強板からなる枠状の補強枠体が一体に突設されるとともに、前記各円弧状側板に突設された補強板間に架け渡すように配置され、両端がそれぞれ前記補強板に固定された複数の主筋と、前記周方向端板に突設された補強板間に架け渡すように配置され、両端がそれぞれ前記補強板に固定された複数の配力筋とを格子状に組み込んでなる鉄筋格子を備え、前記枠部材の前記補強枠体より円弧径方向外周側の内側面部に全周に亘って固定された弾性材からなる枠状の止水部材を備え、前記中詰め部の外周面を前記外殻体の外周側開口を通して露出させるとともに、前記枠部材の外周側内側面と前記中詰め部との間を前記止水部材により止水した合成セグメントにある。
【0011】
請求項2に記載の発明の特徴は、 互いに対向するように間隔を置いて配置された円弧板状の一対の円弧状側板及び該両円弧状側板の各側縁部間を連結する一対の周方向端板をもって中空枠状に形成された枠部材を有する外殻体内にコンクリートを打設することにより、前記外殻体とコンクリート製の中詰め部とが一体化されてなる合成セグメントを形成する合成セグメントの製造方法において、前記円弧状側板及び周方向端板の内側面部に内向きに張り出した補強板からなる枠状の補強枠体が一体に突設されるとともに、前記各円弧状側板に突設された補強板間に架け渡すように配置され、両端がそれぞれ前記補強板に固定された複数の主筋と、前記周方向端板に突設された補強板間に架け渡すように配置され、両端がそれぞれ前記補強板に固定された複数の配力筋とを格子状に組み込んでなる鉄筋格子を備え、且つ、前記枠部材の前記補強枠体より円弧径方向外周側の内周面部に全周に亘って固定された弾性材からなる枠状の止水部材を備え、前記枠部材の内周面側及び外周面側が開口してなる外殻体を使用し、上面部に断面円弧状の型枠面部を有する型枠台上に前記外殻体をその内周面部が前記型枠面部と当接するように設置して前記外殻体の内周側開口を前記型枠面部で閉鎖し、その状態で前記外殻体の外周側開口よりコンクリートを前記外殻体内に前記止水部材が圧縮されるまで前記コンクリートを充填した後、該充填されたコンクリートを固化させることにより前記外殻体内に中詰め部を形成することにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る合成セグメントは、上述したように、互いに対向するように間隔を置いて配置された円弧板状の一対の円弧状側板及び該両円弧状側板の各側縁部間を連結する一対の周方向端板をもって中空枠状に形成された枠部材を有する外殻体と、該外殻体内に形成されたコンクリート製の中詰め部とを備え、前記外殻体と前記中詰め部とが一体化されてなる合成セグメントであって、前記円弧状側板及び/又は周方向端板の内側面部に内向きに張り出した補強板が一体に突設されるとともに、前記枠部材の内周面部に固定された弾性材からなる枠状の止水部材を備え、前記中詰め部の外周面を前記外殻体の外周側開口を通して露出させるとともに、前記枠部材内側面と前記中詰め部との間を前記止水部材により止水したことにより、外殻体と中詰め部との間に円弧径方向に作用するせん断力に対し高い耐力を発揮するとともに、従来の如きスキンプレートを有せずとも確実に止水でき、また、そのような構造を部品点数の少ない簡易な構造で実現でき、安価に製造することができる。
【0013】
また、本発明において、前記各円弧状側板に突設された補強板間に架け渡すように配置され、両端がそれぞれ前記補強板に固定された複数の主筋と、前記周方向端板に突設された補強板間に架け渡すように配置され、両端がそれぞれ前記補強板に固定された複数の配力筋とを格子状に組み込んでなる鉄筋格子を備えたことにより、外殻体と中詰め部とを強固に一体化できるとともに、合成セグメントに作用する力が鉄筋格子体を通して適宜分散され、一箇所に応力が集中するのを防止し、中詰め部のひび割れが防止できる。
【0014】
更に本発明において、互いに隣り合う補強板の端部が互いに固定され、枠部材の内側面部に枠状の補強枠体が形成されたことにより、外殻体が高い剛性を発揮し、歪みやねじれが生じにくい構造を成し、それにより一体化されたコンクリート製の中詰め部のひび割れを防止できる。
【0015】
本発明に係る合成セグメントの製造方法は、互いに対向するように間隔を置いて配置された円弧板状の一対の円弧状側板及び該両円弧状側板の各側縁部間を連結する一対の周方向端板をもって中空枠状に形成された枠部材を有する外殻体内にコンクリートを打設することにより、前記外殻体とコンクリート製の中詰め部とが一体化されてなる合成セグメントを形成する合成セグメントの製造方法において、前記円弧状側板及び/又は周方向端板の内側面部に内向きに張り出した補強板が一体に突設されるとともに、前記枠部材の内周面部に固定された弾性材からなる枠状の止水部材を備え、前記枠部材の内周面側及び外周
面側が開口してなる外殻体を使用することにより、所謂、伏せ打ちによりコンクリートの打設を行うことができる。
【0016】
それに伴い本発明は、上面部に断面円弧状の型枠面部を有する型枠台上に前記外殻体をその内周面部が前記型枠面部と当接するように設置して前記外殻体の内周側開口を前記型枠面部で閉鎖し、その状態で前記外殻体の外周側開口よりコンクリートを前記外殻体内に前記止水部材が圧縮されるまで前記コンクリートを充填した後、該充填されたコンクリートを固化させることにより前記外殻体内に中詰め部を形成することにより、止水部材がコンクリート充填に伴う荷重を受けて圧縮され、外殻体の内側面と中詰め部との間の隙間を好適に封鎖するので、スキンプレートを有しなくともセグメント内への浸水を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)は本発明に係る合成セグメントの一例を示す平面図、(b)は同底面図、(c)は同縦断面図である。
図2】(a)は図1中の外殻体の一例を示す平面図、(b)は同縦断面図である。
図3】(a)は鉄筋格子体を取り外した状態の外殻体を示す部分拡大平面図、(b)は同縦断面図である。
図4】同上の外殻体の隅部を示す部分拡大斜視図である。
図5】(a)〜(d)は本発明に係る合成セグメントの製造方法の各工程の状態を示す縦断面図である。
図6】(a)は図5(c)中の止水部材の状態を示す部分拡大断面図、(b)は同隅部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係る合成セグメントの実施の態様を図1図4に示す実施例に基づいて説明する。図1は本発明に係る合成セグメントの一例を示し、図中符号1は合成セグメントである。
【0019】
この合成セグメント1は、中空枠状の鋼製の外殻体2と、外殻体2の内側に配置されたコンクリート製の中詰め部3とを備え、外殻体2と中詰め部3が一体化されて円弧版状を成し、互いに周方向に連結されることにより環状のセグメントリングを形成し、当該セグメントリングがトンネル軸方向に連設されるようになっている。
【0020】
外殻体2は、図2に示すように、円弧板状の一対の円弧状側板4,4及び両円弧状側板4,4の周縁部間を連結する一対の周方向端板5,5からなる枠部材6を備え、枠部材6の外周側及び内周側にそれぞれ開口6a,6bを有する中空枠状に形成されている。
【0021】
各円弧状側板4,4は、鋼板により円弧板状に形成され、互いに対向する配置にリング軸方向に間隔を置いて配置されている。尚、図中符号7,7...はトンネル軸方向で隣り合うセグメント間を連結するための連結用ボルトが挿通される挿通孔である。
【0022】
また、各円弧状側板4には、それぞれ互いに対向する内側面に周方向に沿って内側に向けて張り出したリブ状の複数の側板用補強板8,8が円弧径方向に間隔を置いた平行配置に突設されている。
【0023】
側板用補強板8は、細長板状の鋼板を円弧状側板4の曲率半径に合わせて円弧状に湾曲させた形状に形成され、一方の側縁が円弧状側板4の内側面に溶接等により強固に固定されて円弧状側板4内側面より内側に向けて突設され、周方向両端縁がそれぞれ周方向端板5の内側面に当接し、且つ、溶接等により周方向端板5の内側面に強固に固定されている。尚、この側板用補強板8は、後述する鉄筋(主筋13,13...)の外径と略同じ厚さに形成されている。
【0024】
一方、周方向端板5,5は、鋼板によりセグメントリング軸方向に長い矩形状に形成され、その長手方向両側縁部がそれぞれ円弧状側板4,4の周方向側縁に溶接等により接合され、円弧状側板4,4及び周方向端板5,5によって枠部材6が中空の円弧枠状に形成されている。尚、図中符号9はトンネル軸方向で隣り合うセグメント間を連結するための連結用ボルトが挿通される挿通孔である。
【0025】
各周方向端板5には、それぞれ内側面に軸方向に沿って内側に向けて張り出したリブ状の複数の端板用補強板10が円弧径方向に間隔を置いた平行配置であって、それぞれ両側板用補強板8,8間の内側に配置されるように突設されている。
【0026】
端板用補強板10は、鋼板により細長板状に形成され、一方の側縁が周方向端板5の内側面に溶接等により強固に固定されて内側に向けて突設され、軸方向端縁がそれぞれ円弧状側板4の内側面に当接し、且つ、溶接等により円弧状側板4の内側面に強固に固定されている。
【0027】
側板用補強板8と端板用補強板10とは、図3図4に示すように、端部が互いに重ね合わされるとともに、当該重ね合わされた端部が溶接により強固に固定され、両補強板により枠部材6の内側面部に枠状の補強枠体11a,11bが互いに径方向に間隔を置いた平行配置に形成されている。
【0028】
各補強枠体11a,11bには、それぞれ多数の鉄筋を格子状に組み込んでなる鉄筋格子体12が固定され、側板用補強板8、端板用補強板10及び鉄筋格子体12がコンクリート製の中詰め部3に埋設されることにより外殻体2と中詰め部3とが強固に一体化されるようになっている。
【0029】
鉄筋格子体12は、円弧周方向に向けて円弧状に湾曲させた形状の主筋13,13...と、軸方向に向けて主筋13,13...間を横切るように配置された配力筋14,14...とを備えて格子状に形成され、各主筋13,13...の両端がそれぞれ端板用補強板10の外側表面に溶接13a等により固定され、各配力筋14,14...の両端がそれぞれ側板用補強板8の外側表面に溶接14aにより固定されている。
【0030】
更に、この外殻体2には、補強枠体11の外周側に枠部材の内周面全周に亘ってゴム等の弾性材からなる止水部材15が設けられている。
【0031】
この止水部材15は、枠部材6の形状に合わせて矩形枠状に形成され、外周面部が接着剤等により枠部材6、即ち、各円弧状側板4及び各周方向端板5の内側面に固定されている。
【0032】
また、止水部材15は、中詰め部3を構成するコンクリートが固化する際の収縮率やコンクリートの養生条件、その他の諸条件に基づいて材質、断面形状等が設定され、中詰め部3を構成するコンクリートが外殻体2内に投入された際には投入されたコンクリートと枠部材6の内側面に挟まれて圧縮され、投入されたコンクリートが固化する際には、枠部材6の内側面に反力を取ってコンクリートの収縮に追従して弾性変形し、枠部材6と中詰め部3との間の隙間を封鎖するようになっている。
【0033】
中詰め部3は、コンクリートにより円弧版状に形成され、外殻体2の内側に嵌り込んだ状態で一体化され、その外周面3a及び内周面3bがそれぞれ外殻体2の外周側開口6a及び内周側開口6bを通して露出している。
【0034】
また、中詰め部3の内周面側の各四辺縁部には、各端板4,5の挿通孔7,9の位置に合わせて連結用凹部16,16...が形成され、この連結用凹部16,16...を通して挿通孔7,9に挿通された連結用ボルトにナットを締め込み、当該ナットを端板4,5の内面部に定着させることにより隣り合うセグメント間を連結するようになっている。
【0035】
このように構成された合成セグメント1は、円弧状側板4及び周方向端板5の内側面部にそれぞれ補強板8,10を突設させたことにより、外殻体2と中詰め部3との間に生ずる円弧径方向のせん断力に対し高い耐力が得られ、外殻体2と中詰め部3とが確実に一体化されている。
【0036】
また、円弧状側板4に突設された側板用補強板8と周方向端板5に突設された端板用補強板10との端部同士を溶接により固定して補強枠体11を形成し、補強枠体11が枠部材6の内側面部に強固に固定されているので、外殻体2が高い剛性を発揮し、歪みやねじれが生じにくい構造を成し、それにより一体化されたコンクリート製の中詰め部3のひび割れを防止できるようになっている。
【0037】
更には、各補強枠体11に鉄筋格子体12、即ち、各主筋13,13...及び配力筋14,14...の両端部をそれぞれ補強板8,10に固定させたことにより、外殻体2と中詰め部3とがより強固に一体化されるとともに、合成セグメント1に作用する力を鉄筋格子体12を通して適宜分散して一箇所に応力が集中するのを防止して中詰め部3のひび割れ防止ができるようになっている。
【0038】
尚、上述の実施例では、止水部材15を枠部材6の外周側に配置された補強枠体11aの外周側にのみ設けた例について説明したが、止水部材15を枠部材6の内周側に配置された補強枠体11bの内周側にも設け二重で止水する構造としてもよく、また、2以上の複数の止水部材15,15...を枠部材6の内周面部に円弧形方向に間隔を置いて複数設置するようにしてもよい。
【0039】
次に、上述の如き合成セグメント1の製造方法について図5図6に示す実施例に基づいて説明する。尚、図中符号20はコンクリート製の中詰め部3を成形するための型枠台20である。
【0040】
合成セグメント1を製造するには、先ず、図5(a)〜図5(b)に示すように、型枠台20上に外殻体2を外周面側が上に向けられた状態、所謂、伏せ打ち(外面打ち)でコンクリートの打設ができる状態に設置する。
【0041】
型枠台20は、図5(a)に示すように、上面部に断面円弧状の型枠面部21と、型枠面部21の周囲を囲む周壁部22とを備え、周壁部22の内側に外殻体2を嵌め込むことにより型枠面部21に対し外殻体2が位置決めされるようになっている。
【0042】
型枠面部21は、外殻体2内周開口面部の曲率半径に対応した上向きに膨出した断面円弧状に形成され、型枠面部21表面には図示しない連結用凹部16,16...成形用の突起が突設されている。
【0043】
そして、この型枠台20上に外殻体2を外周面側が上に向けられた状態で設置することにより、型枠面部21が外殻体2の内周面部に当接して外殻体2の内周側開口6bを閉鎖し、各円弧状側板4,4、各周方向端板5,5及び型枠面部21に囲まれ、且つ、上面が開口した型枠が形成される。
【0044】
次に、図5(b)〜図5(c)に示すように、外殻体2の外周側開口6aよりコンクリート23を型枠内、即ち、外殻体2内に流し込んでいく。
【0045】
このコンクリート23の充填作業は、外殻体2の外周側開口6aが閉鎖され、且つ、止水部材15が圧縮されるまで、即ち、外殻体2の外周側端縁にコンクリート23が到るまで行う。
【0046】
このとき、コンクリート23の打設を伏せ打ちによって行うことにより、コンクリート23は、高い位置から低い位置に向かって流れ、それにより、コンクリート23による荷重は、図6中矢印で示すように、枠部材6の内側面に対し外側に向けて作用し、それにより、枠部材6の内周全周に亘って設置された止水部材15は、コンクリート23の充填に伴い原形の状態からコンクリート23と枠部材6の内側面に挟まれて十分に圧縮されて弾性変形する。
【0047】
上記充填作業が完了した後、図5(d)に示すように、外殻体2の外周側開口6aより溢れ出した余分なコンクリート23を除去し、外周側開口6aを通して外周側に露出したコンクリート23の外周側表面3aに仕上げ処理を施す。
【0048】
尚、この仕上げ処理は、外周側表面3aが地山と接する部分であって、トンネル内面に露出する内周面3bに比して見栄えを気にする必要がないため、容易に仕上げ作業を行うことができる。
【0049】
そして、その状態で、コンクリート23を養生・固化させて中詰め部3を成形し、外殻体2と中詰め部3とを一体化させる。
【0050】
その際、コンクリート23が固化に伴い収縮した場合に、止水部材15が枠部材6内側面に反力を取ってコンクリート23の収縮に追従して弾性変形し、外殻体2(枠部材6)の内側面と中詰め部3との間の隙間が止水部材15により枠部材6の全周に亘って止水される。
【0051】
最後に、養生が完了した後、製造された合成セグメント1を型枠台20より脱型し、作業が完了する。
【0052】
上述の如き本発明方法で製造された合成セグメント1は、所謂、伏せ打ち(外面打ち)によりコンクリート製の中詰め部3の成形を行うので、外殻体2の内周側開口6bを通して露出した中詰め部3の内周面3bが型枠面部21により成形されて美麗に仕上げられ、また、セグメント周方向両端部にも十分且つ確実にコンクリート23が充填される。
【0053】
また、この合成セグメント1では、外殻体2の内側面と中詰め部3との間の隙間が止水部材15により全周に亘って封鎖されるので、スキンプレートが無くとも使用時に地下水等がセグメント1内へ侵入するのを防止できるようになっている。
【0054】
尚、上述の実施例では、枠部材6の各挿通孔7,9の位置に合わせて連結用凹部16,16...を形成し、この連結用凹部16,16...を通して挿通孔に挿通された連結用ボルトにナットを締め込み、当該ナットを端板の内面部に定着させることにより隣り合うセグメント間を連結するようにした例について説明したが、互いに隣り合う合成セグメント1間を雄雌一対の継手部材からなる継手部構造を用いて連結するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 合成セグメント
2 外殻体
3 中詰め部
4 円弧状側板
5 周方向端板
6 枠部材
7 挿通孔
8 側板用補強板
9 挿通孔
10 端板用補強板
11 補強枠体
12 鉄筋格子体
13 主筋
14 配力筋
15 止水部材
16 連結用凹部
20 型枠台
21 型枠面部
22 周壁部
23 コンクリート
図1
図2
図3
図4
図5
図6