【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の解決手段は、  ナノ繊維またはナノ粒子を固定したい基材シートや3次元の物体上に、熱可塑性ポリマーから生成したナノ繊維接着剤を塗布し、基材シートや3次元の物体の最表面に、ナノ繊維の径に応じた厚みの薄膜のナノ繊維接着剤からなるナノ繊維接着層を形成し、このナノ繊維接着層を加熱することで、ナノ繊維接着剤が溶けて切れた状態とし、基材シートや3次元の物体の最表面に接着層を形成することを特徴としたナノ繊維またはナノ粒子を固定化するためのナノ接着層を形成する方法を提供しょうとしたことである。
【0010】
  本発明の第2の解決手段は、ナノ繊維またはナノ粒子を固定したい基材シートや3次元の物体上に、熱可塑性ポリマーから生成したナノ繊維接着剤を塗布して、薄膜のナノ繊維接着層を形成し、このナノ繊維接着層を加熱することで接着剤の機能を持たせたことである。
【0011】
  本発明の第3の解決手段は、ナノ繊維接着層を塗布した後、加熱することで、ナノ繊維接着層を形成する熱可塑性ポリマーであるナノ繊維接着剤を溶融し基材シートや3次元の物体の最表面の形状に沿って接着することができ、これによってナノ繊維の径に応じた厚みで、基材シートや3次元の物体の表面に沿ったナノ繊維接着層の塗布が可能としたことである。例えばナノ繊維接着層を形成するナノ繊維接着剤が100nmの場合、低融点のナノ繊維接着層を100nmの厚みで基材シートや3次元の物体に塗布することができる。これによって、熱可塑性ポリマーのナノ繊維接着層を10nm〜数μmでコーティングすることも可能としたことである。
【0012】
  ナノ繊維を固定化したい
基材シートや3次元の物体は、フイルム、不織布、織布などの基材シートだけでなくても良い。
また、不織布あるいは織布からなるフィルタ基材の材質はポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維、レーヨン、塩化ビニリデン繊維などの有機繊維やガラス繊維が使用可能である。これらを単独で用いてもよいし2種類以上を併用しても良い。
【0013】
  これらのフィルタ基材の形成方法としては湿式抄紙法を用いる方法や乾式法、スパンボンド法、メルトブロー法などが用いられる。
【0014】
ナノ繊維接着層を形成するナノ繊維の素材である熱可塑性ポリマーは、ポリエステルやポリアミド、ポリオレフイン、ポリフェニレンスルフイド(PPS)などが挙げられる。ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ乳酸(PLA)などが挙げられる。また、ポリアミドとしてはナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン11(N11)などが挙げられる。ポリオレフインとしてはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)などが挙げられる。
【0015】
  基材シートが不織布の場合、ナノ繊維接着層を形成するナノ繊維接着剤は長繊維であるため、不織布の表層にナノ繊維接着剤からなるナノ繊維接着層を形成するが不織布内には入らない。つまり、ナノ繊維接着層は、不織布の繊維と最表層でのみ接している状態となっている。さらに、これを加熱することで、ナノ繊維接着層を形成する熱可塑性ポリマーのナノ繊維接着剤が溶けて切れ、不織布の最表面に溶着する。これによって、不織布の繊維の最表面にのみ溶着することで不織布の通気性を全く損なわないナノ繊維接着層の塗布が完了する。同様に3次元物体の場合も3次元物体の表面の凹凸がある場合、凸部にのみナノ繊維接着層を塗布することが可能となる。
【0016】
  熱可塑性ポリマーのナノ繊維接着層が塗布できると、その上に固定化したいナノ繊維(ナノファイバー、マイクロファイバー)やナノ粒子(シリカ、PTFEなど)を塗布し、再度加熱することで熱可塑性ポリマーを溶融し、固定したいナノ繊維またはナノ粒子
が熱可塑性ポリマーに接触している部分だけをコーティングすることができる。つまり、固定化したいナノ繊維またはナノ粒子
が熱可塑性ポリマーの溶着部のみコーティングし、反対側は素材表面が露出した状態に固定化することができる。
【0017】
  ナノ繊維を固定化する場合、ナノ繊維自体は細く強度がないが、これを使用可能とするためには、
固定したいナノ繊維を基材シートや
3次元の物体に固定化しなければならない。この時、考慮しなければならないことは、ナノ繊維の強度が強化され、且つ通気性を損なわないことである。
【0018】
  ナノ繊維を生成するESD法は高電圧を印加した針状のノズルに容器内のポリマー溶剤溶液をポンプにて送給するように構成されており、そこで針状のノズルから線状に流出するポリマー溶剤溶液に電荷を帯電させる。それによって、下記式に示すポリマー溶剤溶液表面の同極電荷による反発力(クーロン力)とポリマー溶剤溶液のサブストレート間で働く逆極電荷の引力(クーロン力)が合わさりポリマー溶剤溶液の表面張力を上回った時に1次誘電爆発が発生し、ポリマー溶液が爆発的に延伸される。
  式:表面張力+電界干渉  <  クーロン力(ポリマー内での反発力+サブストレートか      らの引力)+  押し出し力
    q
1:荷電粒子の荷電量1  q
2:荷電粒子の荷電量2  γ:粒子間距離
    ε:誘電率
  さらに、ポリマー溶液がクーロン力でサブストレートに引き付けられることでノズル先端から流出したポリマー溶剤溶液のアスペクト比が大きくなる。これによって繊維として長手方向にポリマー溶液が延ばされる。1次静電爆発で延伸を始めた繊維は、比表面積が大きいため溶剤が急速に蒸発する。これによって溶剤で膨潤していたポリマー溶液の分子間力が強くなり、除々に硬化をして行く。そして、クーロン力と分子間がつりあったところで延伸は止まる。その後電荷を保ったままさらに蒸発が進み繊維の直径のポリマーからなる繊維が生成される。
【0019】
  MELT―ESD法は熱可塑性樹脂に加えて膨潤状態にし、高速エアーと電荷を使ってナノ繊維を生成する方式である。そして、その構成は、ポリマーを溶融する機構と溶融ポリマーを吐出するノズル、ノズルから吐出する溶融ポリマーを延伸するために使用される高速エアーを発生するエアーノズル、溶融したポリマーを吐出するノズルの先端に電荷を発生させる電極および荷電ナノ繊維からの静電誘導による電界干渉を遮断するための絶縁板で構成され、加えて放熱を防ぎ絶縁を兼ねた断熱材でノズルを覆う構造になっている。また、前記方式において、電極と絶縁板を除いた状態でもエアーノズルからの風速を高速化することで繊維径を500nm程度にまで細線化は可能である。
【0020】
  そして、ナノ繊維生成過程は、十分粘土が下がるまで加熱して溶融したポリマーを高速エアーで延伸する。同時にノズル先端に電極とノズル間に高電圧を印加することによって電荷が発生し、溶融ポリマーを同極に帯電させる。この同極の電荷が互いにクーロン力で反発することで溶融ポリマーを更に延伸する。これによって、ナノ繊維接着層を形成するナノ繊維が生成される。
 
【発明の効果】
【0021】
(1)熱可塑性ポリマーから構成されたナノ繊維接着層は基材シートや
3次元の物体表面に非常に薄く塗ることが可能であることから、ナノ繊維の通気性を損なわず強く固定化することができる。
(2)さらに、熱可塑性ポリマーから構成されたナノ繊維接着層は基材シートや
3次元の物体表面に非常に薄く塗ることが可能であることから、ナノ粒子をナノ繊維接着層に埋もれることなく、表面を最大に露出しナノ粒子の特性を生かして固定化することができる。
(3)基材シートや3次元物体にナノ繊維やナノ粒子を固定化することができる。
例えば、不織布上にナノ繊維を固定できたり、不織布の上にゼオライト、多孔性ガラスビーズを担持することで放射性物質(イオン状態を含めて)を除染することができたり、白金触媒を担持することで効率の高い反応膜を形成することができたり、カテキンの粒子を担持することで強い消臭機能を持つフィルタを作ることができたり、イオン交換樹脂の粒子を担持することで超々純水生成フィルタを作ることができる。
(4)熱可塑性ポリマーのナノ繊維接着層を基材シートや3次元物体に50nm〜数μmでコーティングすることができる。