(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各種対象物の搬送に用いられる往復担体を、当該対象物の荷積み場から荷降し場への往方向と、これとは逆の当該荷降し場から当該荷積み場への復方向とに選択走行させる可逆駆動装置において、
前記往復担体の駆動源により一方向へ回転駆動される回転軸と、
前記回転軸に連結して前記往復担体を前記往方向に走行させる往方向回転体と、
前記回転軸に連結して前記往復担体を前記復方向に走行させる復方向回転体と、
前記回転軸と、前記往方向回転体または前記復方向回転体との連結状態を選択的に設定する連結設定部材と、
前記往方向回転体および前記復方向回転体の一方から他方へといたる往復担体経路の途中に設けられて、前記往復担体の、往経路または復経路それぞれでの走行方向を反転させるための従動回転体と、を備えている、
ことを特徴とする往復担体の可逆駆動装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1〜
図5を用いて本発明を実施するための形態を説明する。
【0030】
なお、上述したように本発明の可逆駆動装置は各種の搬送対象物に適用可能であるが、以下の記載では単なる説明の便宜上、山林地域での間伐材搬送を前提とする。
【0031】
これらの図においてアルファベット付き参照番号が示す構成要素(例えば軸継手2a)は原則として、アルファベットなしの参照番号の構成要素(例えばエンジン2)の一部であることを示す。
【0032】
図1〜
図5において、
Aは搬送対象である間伐材の荷積み場,
Bは荷積み場Aから搬送された間伐材の荷降し場,
Cは荷積み場Aと荷降し場Bとの間の搬送経路部分に自生する多数の立木,
Dは立木Cなどに固定された可逆駆動装置,
Rは後述の回転軸3などの回転方向,
をそれぞれ示している。
【0033】
また、
1は可逆駆動装置Dのベース部分であって、後述のエンジン2,軸受3c,クラッチ機構6,基部従動プーリ7,基部側従動プーリ支持部10などの当該駆動装置の構成要素が個々に固定される基部,
2は基部1に固定された減速機付きのエンジン,
2aはエンジン2の出力側に取り付けられた軸継手,
3は軸継手2aに連結された、後述の小径プーリ4および大径プーリ5に共通する単一で一方向(R方向)への回転軸,
3aは当該回転軸の長手方向中央部分に形成されて、後述の小径プーリ4および大径プーリ5それぞれの回転軸長手方向位置を規制する大径軸部分,
3bは大径軸部分3aの外周面軸方向溝状部にいわば埋め込まれて、後述のクラッチ作用部6dのキー溝6eと係合するキー,
3cは当該回転軸の両端部分を支えて保持する一対の軸受,
をそれぞれ示している。
【0034】
また、
4は回転軸3の一方の小径軸部分(大径軸部分3aと図示左側の軸受3cとの間)に取り付けられて、その外周面にシングル巻きされた後述のメインロープ9を往方向(後述の間伐材12および保持部13などを荷積み場Aから荷降し場Bへ搬送する図示時計方向:
図3)に低速走行させる小径プーリ(往方向回転体),
4aは当該小径プーリの大径軸部分3a側の環状端面周方向の180度離間した凹状部に嵌合配設されて、後述の低速対応のクラッチ作用凹状部6hと連結する、計二個の、それぞれ四角形状断面(回転軸3との直交方向断面)で低速対応のクラッチ作用凸状部,
5は回転軸3の他方の小径軸部分(大径軸部分3aと図示右側の軸受3cとの間)に取り付けられて、その外周面にシングル巻きされた後述のメインロープ9を復方向(空荷状態の保持部13などを荷降し場Bから荷積み場Aへ戻し搬送する図示反時計方向:
図4)に高速走行させる大径プーリ(復方向回転体),
5aは当該大径プーリの大径軸部分3a側の環状端面周方向の180度離間した凹状部に嵌合配設されて、後述の高速対応のクラッチ作用凹状部6kと連結する、計二個の、それぞれ四角形状断面(回転軸3との直交方向断面)で高速対応のクラッチ作用凸状部,
をそれぞれ示している。
【0035】
また、
6は小径プーリ4または大径プーリ5の一方を回転軸3と選択的に連結させて、当該一方のみを回転駆動状態に設定するクラッチ機構(連結設定部材),
6aは当該クラッチ機構の回動タイプの操作レバー,
6bは操作レバー6aの下側部分であって「コ」の字形状からなり、基部1に対し図示左右方向(
図2〜
図4)に回動可能な形で設定された一対の脚状部,
6cは基部1に固定されて、脚状部6b(操作レバー6a)それぞれの回動中心として作用する一対の回動中心軸,
6dは回転軸3の大径軸部分3aにその軸方向へスライド可能な形で配設されて、小径プーリ4または大径プーリ5と選択的に連結する環平板状のクラッチ作用部,
6eはクラッチ作用部6dの内周面の軸方向全体にわたり形成されて、大径軸部分3aのキー3bと連結状態のキー溝,
6fはクラッチ作用部6dの周回側面に形成された周回凹状部,
6gはクラッチ作用部6dの図示左側の小径プーリ対向側を構成する低速対応環状端面,
6hは低速対応環状端面6gの周方向に90度間隔で形成されて、その中の180度離間した任意の二個が小径プーリ4のクラッチ作用凸状部4aと連結する、計四個の、それぞれ四角形状開口で低速対応のクラッチ作用凹状部,
6jはクラッチ作用部6dの図示右側の大径プーリ対向側を構成する高速対応環状端面,
6kは高速対応環状端面6jの周方向に90度間隔で形成されて、その中の180度離間した任意の二個が大径プーリ5のクラッチ作用凸状部5aと連結する、計四個の、それぞれ四角形状開口で高速対応のクラッチ作用凹状部,
6mはクラッチ作用部6dの周回凹状部6fに入り込んだ状態で脚状部6bに取り付けられて、操作レバー6aの回動操作にともない回転軸3の軸方向に連動し、当該クラッチ作用部を小径プーリ4または大径プーリ5に移動連結させるための一対のフリーローラ,
をそれぞれ示している。
【0036】
また、
7は回転中心軸が基部1に垂直状態で配設されて、図示(
図2〜
図4)荷積み場A側のメインロープ走行方向を180度反転させる基部従動プーリ(従動回転体),
8は後述のウインチ16に引っ張られて、基部従動プーリ7と同じように図示(
図2〜
図4)荷降し場B側のメインロープ走行方向を180度反転させる末端従動プーリ,
9は小径プーリ4に二分の三巻き(シングル巻き)してから基部従動プーリ7に案内される形で図示上下方向へ180度反転し、かつ、大径プーリ5に同じく二分の三巻きしてから末端従動プーリ8に案内される形で図示上下方向へ180度反転したループ態様・エンドレス態様のメインロープ(往復担体),
をそれぞれ示している。
【0037】
また、
10は基部1に固定された基部側従動プーリ支持部,
10aは当該基部側従動プーリ支持部の一部であって、基部従動プーリ7を保持するための腕部分,
10bは基部1と腕部分10aとの間に設けられて、基部従動プーリ7の回転中心として作用する基部側回転軸,
10cは当該基部側従動プーリ支持部の一部であって、後述のロープ15が取り付けられる一対のリング状部,
11は末端従動プーリ8をその回転可能状態に支持して、立木Cやウインチ16などにより固定的に保持される末端側従動プーリ支持部,
11aは当該末端側従動プーリ支持部の一部であって、末端従動プーリ8の回転中心として作用する末端側回転軸,
をそれぞれ示している。
【0038】
また、
12は荷積み場Aから荷降し場Bにいわば引きずり状態のまま搬送される間伐材,
13はメインロープ9に固定されて、搬送対象の間伐材12を保持する保持部,
14はそれぞれ立木Cに後述のロープ15′などで取り付けられて、メインロープ9およびこれと一体で略垂下状態の保持部13の双方を案内する一対の下プーリ作用部と、メインロープ9のみを案内する単一の上プーリ作用部とからなる複数の、上下二段プーリ(中間プーリ),
15は基部側従動プーリ支持部10の一対のリング状部10cを通してから立木Cに強い係合状態で取り付けられ、これにより可逆駆動装置Dを確実に固定するためのロープ,
15′は上下二段プーリ14を立木Cに取り付けるためのロープ,
16は末端従動プーリ8を牽引して保持するウインチ,
17はウインチ16および立木Cのそれぞれに取り付けた状態で両者間に配設されて、メインロープ9の張り具合をチェックするためのバネ秤,
をそれぞれ示している。
【0039】
ここで、可逆駆動装置Dは、基部1,エンジン2,回転軸3,小径プーリ4,大径プーリ5,クラッチ機構6,基部従動プーリ7および基部側従動プーリ支持部10などからなっている。
【0040】
小径プーリ4,大径プーリ5,基部従動プーリ7,末端従動プーリ8および上下二段プーリ14の各回転体におけるメインロープ9の保持周面部分は、その回転中央側が凹んだ窪み形状に設定されている。
【0041】
以上の可逆駆動装置Dの各構成要素ならびに末端従動プーリ8,末端側従動プーリ支持部11,保持部13および上下二段プーリ14などは木製,金属製(例えば鉄,チタン,アルミニウムなど),合成樹脂製のものである。また、メインロープ9およびロープ15,15′などは金属製,合成樹脂製,樹木製のものである。
【0042】
図示の実施形態における可逆駆動装置Dの基本的特徴は、
(21)基部従動プーリ7を介したその両側で、ループ状メインロープ9の反転部分が、往方向駆動プーリとしての小径プーリ4および復方向駆動プーリとしての大径プーリ5のそれぞれにいわば同じ位相関係(当該駆動プーリそれぞれの図示裏側から下方に進み、そして図示表側から上方に進み、ふたたび図示裏側から下方に進む態様)でシングル巻きされ、
(22)小径プーリ4および大径プーリ5の任意の一方が、クラッチ機構6の図示左右方向への選択的な回動操作にともない、当該各プーリに共通で一定方向のみに回転するメインロープ駆動用回転軸3と連結し、
さらには、
(23)搬送対象の間伐材12を固定保持した保持部13が荷積み場Aから荷降し場Bに搬送されるときは、メインロープ低速走行用の小径プーリ4が回転軸3に連結し、
(24)空荷状態の保持部13を荷降し場Bから荷積み場Aに戻すときには、メインロープ高速走行用の大径プーリ5が回転軸3に連結し、
(25)ループ状のメインロープ9が、ロープ端部を折り返してビニールテープなどで固定することにより形成した輪に他のロープ端部を通してから同じように折り返し固定する形で、設定されている、
ことである。
【0043】
すなわち、基部従動プーリ7,往方向駆動プーリ(小径プーリ4),復方向駆動プーリ(大径プーリ5),往方向・復方向の各駆動プーリの選択的駆動源としての回転軸3およびクラッチ機構6などからなる簡単な構造の、メインロープ可逆駆動装置Dを提供している。
【0044】
また、キー3bおよびキー溝6eの嵌合作用により回転軸3と一体のクラッチ作用部6dが、クラッチ機構6の切り替え回動操作にともない、
・図示左側のクラッチ作用凹状部6hおよび小径プーリ4のクラッチ作用凸状部4aが結合した低速走行モード(
図3参照)
・図示右側のクラッチ作用凹状部6kおよび大径プーリ5のクラッチ作用凸状部5aが結合した高速走行モード(
図4参照)
が選択的に設定される。
【0045】
この低速走行モードおよび高速走行モードいずれの場合も、回転軸3はエンジン2によって同じ回転方向に駆動される。
【0046】
このように基部従動プーリ7と末端従動プーリ8との間にループ態様で配設されたメインロープ9の一方経路側の一部を小径プーリ4にシングル巻きし、また、他方経路側の一部を大径プーリ5にシングル巻きしている。
【0047】
そして、この小径プーリ4または大径プーリ5をクラッチ機構6で選択的に回転駆動することにより、ループ状のメインロープ9の全体は、
(31)小径プーリ4が回転して、保持部13およびそこに収容された間伐材12を荷積み場Aから荷降し場Bへ搬送する時計方向走行状態(
図3参照)と、
(32)大径プーリ5が回転して、空荷状態の保持部13を荷降し場Bから荷積み場Aへ逆搬送する反時計方向走行状態(
図4参照)と、
に設定される。
【0048】
なお、メインロープ9の駆動機構である可逆駆動装置Dを荷積み場Aおよび荷降し場Bのいずれの側に設置するかは任意である。
【0049】
図示(
図1〜
図4)の場合、いずれもこの可逆駆動装置Dを荷積み場Aの側に設置している。
【0050】
また、メインロープ9の連結部分を上述の折り返し固定の手法で設定してそこでのいわゆるコブを少なくすることにより、当該連結部分がメインロープ走行経路中の各種プーリを通過する際の走行安定化を確保している。メインロープ9の痛みも少ない。
【0051】
図1は、ループ態様のメインロープ9の走行により間伐材12が図示左側の荷積み場Aから図示右側の荷降し場Bへと搬送されるときの全体概要を示している。
【0052】
荷積み場Aの側に設置した可逆駆動装置Dのプーリ群(小径プーリ4,基部従動プーリ7および大径プーリ5)と、荷降し場Bの側の末端従動プーリ8との間のメインロープ走行経路には、複数の上下二段プーリ14がロープ15′で立木Cに取り付けられている。
【0053】
上下二段プーリ14は、メインロープ9およびこれと一体で略垂下状態の保持部13の双方を案内する一対の下プーリ作用部と、メインロープ9のみを案内する単一の上プーリ作用部とからなっている。
【0054】
この「上下二段プーリ」には、本件出願人が特願2014−83367で提案済みのプーリ機構や、その他、保持部13との当接により開状態に移行するいわばゲート付きの下プーリ作用部を備えたプーリ機構などが用いられる。
【0055】
小径プーリ4の回転駆動に対応したメインロープ9の往方向への低速走行により間伐材12が荷積み場Aから荷降し場Bへと搬送される。なお、メインロープ9の往方向への走行スピードは例えば0.6m/secである。
【0056】
このときクラッチ機構6(操作レバー6a)は
図3の状態に設定され、クラッチ作用部6dの低速対応のクラッチ作用凹状部6hが小径プーリ4のクラッチ作用凸状部4aと連結している。
【0057】
荷降し場Bへの間伐材12の搬送終了後、作業者は、エンジン2を停止した(またはアクセルを弱めた)状態で、当該間伐材を保持部13から所定部分におろす。
【0058】
エンジン停止状態などで、メインロープ9が間伐材12に引っ張られて動きそうな場合には周知の摩擦ブレーキ(図示省略)を当該メインロープに作用させればよい。
【0059】
間伐材12の荷降し後、空荷状態の保持部13を荷積み場Aの方に戻すとき、作業者は、クラッチ機構6(操作レバー6a)を
図3から
図4の状態へと切り替えてからエンジン2を作動させる。またはアクセルを強める。
【0060】
このクラッチ機構6の切替えにより、クラッチ作用部6dの高速対応のクラッチ作用凹状部6kが大径プーリ5のクラッチ作用凸状部5aと連結する。
【0061】
この連結により、エンジン作動後などの大径プーリ5が回転軸3とともに回転して、これにシングル巻回されたループ態様のメインロープ9が復方向に高速走行する。
【0062】
メインロープ9の復方向への高速走行にともない、間伐材12の荷降しして空荷状態の保持部13が荷降し場Bから荷積み場Aへと戻っていく。なお、メインロープ9の復方向への走行スピードは例えば0.9m/secである。
【0063】
図2は、メインロープ9の駆動源の小径プーリ4および大径プーリ5がいずれも回転軸3に連結していないフリー状態を示している。クラッチ機構6のいわばニュートラ状態である。
【0064】
回転軸3の大径軸部分3aとクラッチ機構6のクラッチ作用部6dとは、当該大径軸部分3aのキー3bおよび当該クラッチ作用部のキー溝6eの強い連結により常時一体化している。すなわち、クラッチ作用部6dは、エンジン2の出力軸である回転軸3と常に連動回転する状態に設定されている。
【0065】
ただ、
図2のクラッチ機構6のニュートラ状態では、クラッチ作用部6dと小径プーリ4または大径プーリ5とが連結されていない。そのため、これらのプーリが回転してメインロープ9が走行することはない。
【0066】
このとき、クラッチ機構6の操作レバー6aは基部1に略垂直の起立状態(
図2〜
図4の紙面に垂直の状態)に設定されている。
【0067】
なお、上述したようにメインロープ9は、小径プーリ4および大径プーリ5のそれぞれにいわば同じ巻込み関係でシングル巻きされている。
【0068】
すなわち、回転軸3の単一回転方向R(
図2〜
図4の右側からみて反時計方向)に対して、当該回転軸と選択的に連動する小径プーリ4,大径プーリ5の何れもがメインロープ9の末端従動プーリ8の側を、送り出すのではなく、巻き込むように設定されている。
【0069】
図3,
図4に示すように、ともにR方向に回転する回転軸3と連結状態の小径プーリ4(
図3参照)および大径プーリ5(
図4参照)は、それぞれよりも図示下側のメインロープ部分を自プーリの方に巻き込んでいる。
【0070】
この小径プーリ4および大径プーリ5における自プーリの方へのメインロープ巻込み作用により、ループ態様のメインロープ9は
図3の往方向と
図4の復方向とに確実に走行可能である。
【0071】
図3は、垂直起立状態の操作レバー6aを図示左側に回動操作したメインロープ9の低速走行モードを示している。
【0072】
この左側回動操作にともない、操作レバー6aに取り付けられてクラッチ作用部6dの周回凹状部6fに入り込んだ態様のフリーローラ6mが、当該クラッチ作用部を図示左側に押圧する。
【0073】
このフリーローラ6mのクラッチ作用部6dに対する図示左側への押圧作用により、当該クラッチ作用部は、そのキー溝6eが回転軸3(大径軸部分3a)のキー3bに案内されながら小径プーリ4の方に移動する。
【0074】
そして、最終的には小径プーリ4のクラッチ作用凸状部4aとクラッチ作用部6d(低速対応環状端面6g)のクラッチ作用凹状部6hとが結合したメインロープ9の低速走行モードに移行する。
【0075】
なお、クラッチ作用部6dは回転軸3と連動するので、小径プーリ4のクラッチ作用凸状部4aはクラッチ作用凹状部6hと必ず結合し、両者間に回転方向の位置ずれが生じるようなことはない。
【0076】
図3のメインロープ9の低速走行モードのとき、
(41)回転軸3およびこれにクラッチ作用部6dを介して連結した小径プーリ4がR方向に回転し、
(42)小径プーリ4にシングル巻きされたループ態様のメインロープ9が、間伐材12およびその保持部13を荷積み場Aから荷降し場Bに搬送する往方向(図示矢印の時計方向)に走行し、
(43)大径プーリ5が、メインロープ9案内用の従動プーリとして作用する。
【0077】
図3の低速走行モードの操作レバー6aを大径プーリ5の方に回動して元の垂直起立状態に戻せば、クラッチ機構6は
図2のニュートラ状態に復帰する。
【0078】
図4は、操作レバー6aを図示右側に回動操作したときのメインロープ9の高速走行モードを示している。
【0079】
この右側回動操作にともない、操作レバー6aに取り付けられてクラッチ作用部6dの周回凹状部6fに入り込んだ態様のフリーローラ6mが、当該クラッチ作用部を図示右側に押圧する。
【0080】
このフリーローラ6mのクラッチ作用部6dに対する図示右側への押圧作用により、当該クラッチ作用部は、そのキー溝6eが回転軸3(大径軸部分3a)のキー3bに案内されながら大径プーリ5の方に移動する。
【0081】
そして、最終的には大径プーリ5のクラッチ作用凸状部5aとクラッチ作用部6d(高速対応環状端面6j)のクラッチ作用凹状部6kとが連結したメインロープ9の高速走行モードに移行する。
【0082】
なお、クラッチ作用部6dは回転軸3と連動するので、大径プーリ5のクラッチ作用凸状部5aはクラッチ作用凹状部6kと必ず結合し、両者間に回転方向の位置ずれが生じるようなことはない。
【0083】
図4のメインロープ9の高速走行モードのとき、
(51)回転軸3およびこれにクラッチ作用部6dを介して連結した大径プーリ5がR方向に回転し、
(52)大径プーリ5にシングル巻きされたループ態様のメインロープ9が、例えば空荷状態の保持部13を荷降し場Bから荷積み場Aに搬送する復方向(図示矢印の反時計方向)に走行し、
(53)小径プーリ4が、メインロープ9案内用の従動プーリとして作用する。
【0084】
図4の高速走行モードの操作レバー6aを小径プーリ4の方に回動して元の垂直状態に戻すと、クラッチ機構6は
図2のニュートラ状態に復帰する。
【0085】
このように図示の可逆駆動装置は、簡単な構成で、持ち運びやすく、電源なしの態様をとっている。
【0086】
そのため、既知点間の間伐材搬送などとは異なり、山や川などでの救難活動中の未知の緊急現場(電源,重機なし)においても、この可逆駆動装置および末端従動プーリと、その間のメインロープとの設置により遭難者などを比較的簡単に運び出すことができる。
【0087】
本発明が、図示の可逆駆動装置に限定されないことは勿論であって例えば、
(61)小径プーリ4および大径プーリ5に代えてそれぞれ同一径からなるプーリを使用する、この場合、同じ回転状態の回転軸に対するメインロープ9の往方向速度および復方向速度は同一値となる、
(62)上下二段プーリ14に代えて、それぞれ周知のメインロープ・保持部案内用の第一プーリとメインロープ案内用の第二プーリとを用いる、
(63)ロープ15,15′に代えてワイヤ部材,ケーブル部材,ベルト部材,縄部材などを用いる、
(64)
図1では説明の便宜上、荷積み場Aと荷降し場Bとの間に高低差なしとしているが現実の搬送環境では両者間に高低差が存在することが多く、この高低差ありの場合には、図示ループ状のメインロープ9に代えて、保持部13が取り付けられていない小径プーリ4の図示下側のロープ部分にその下方向移動用のいわば重り駆動源を設けた有端態様のメインロープを用いる、
ようにしてもよい。