(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための車載用の電源装置及び電源装置を備える車両を例示するものであって、本発明は車載用の電源装置及び電源装置を備える車両を以下のものに特定しない。また実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0015】
本発明の車載用の電源装置を車両に搭載した例を
図1と
図2に示す。これらの図に示す車両は、エンジン96で車輪97を駆動して走行する。
図1と
図2に示す電源装置100、200は、回生制動する車両に搭載される。さらに好ましくは、回生制動とアイドリングストップする車両に搭載される。これらの電源装置100、200は、鉛バッテリ10と蓄電部20とを備えている。鉛バッテリ10と蓄電部20は、並列に接続されて電源部1を構成している。
【0016】
図1に示す電源装置100は、鉛バッテリ10と蓄電部20とで構成される電源部1を一体構造とする例を示している。この電源装置は、詳細には後述するが、鉛バッテリ10と蓄電部20とを一つのケース30に収納して電源部1を一体構造としている。また、
図2に示す電源装置200は、電源部1を構成する鉛バッテリ10と蓄電部20とを、互いに分離して配置する例を示している。ここで、
図1に示す電源装置100は、車両のエンジンルームに配置することができ、
図2に示す電源装置200は、鉛バッテリ10を車両のエンジンルーム95に配置し、蓄電部20を車両のキャビン94やトランクルームに配置することができる。
【0017】
図1と
図2に示す電源装置100、200は、電源部1の出力側が、接続ライン17を介して車両のオルタネータ52に接続されており、オルタネータ52の出力を制御することで電源部1を充電することができる。オルタネータ52は、エンジン96に駆動されて鉛バッテリ10と蓄電部20を充電し、あるいは、車両の回生制動で鉛バッテリ10と蓄電部20を充電する。回生制動は、車両を減速するときにオルタネータ52を駆動して、車両の運動エネルギーでオルタネータ52を駆動して発電する。さらに、電源装置100、200は、電源部1の出力側が、接続ライン17を介して車両のエンジン96を始動するスターターモータ54と、車両に搭載される電装機器50とに接続されている。スターターモータ54は、電源部1から供給される電力で駆動される。また、電装機器50は、電源部1及びオルタネータ52から供給される電力で駆動される。電装機器50は、ライト、ワイパー、エアコン、カーオーディオ、カーナビゲーション等である。
【0018】
アイドリングストップする車両は、メインスイッチであるイグニッションスイッチをオンに保持する状態において、信号待ち等ではエンジン96を停止させて燃費効率を改善する。この車両は、信号が変わるとエンジン96を再始動して走行する。このため、アイドリングストップする毎にスターターモータ54に電力が供給される。なお、回生制動し、かつアイドリングストップする車両は、大きなオルタネータを備えている。このオルタネータは、エンジンを再始動するモータにも兼用される。したがって、エンジンの再始動は、スターターモータによらず、このオルタネータをモータとして使用することもできる。したがって、本明細書において、スターターモータとは、エンジンを再始動するモータに兼用されるオルタネータを含む広い意味で使用する。
【0019】
図1と
図2の電源装置100、200は、回生制動による発電電力を効率よく充電すると共に、鉛バッテリ10に流れる充放電の電流を低減して、鉛バッテリ10の劣化を防止するために、鉛バッテリ10と並列に蓄電部20を接続している。
【0020】
ところで、鉛バッテリは、残容量が小さくなって放電深度(DOD:Depth of discharge)が深くなると劣化しやすい特性がある。したがって、車両のオルタネータは、鉛バッテリの放電電圧が12.0V未満にならないように充電制御を実施する。このように鉛バッテリの電圧範囲で充放電する電源装置にあっても、鉛バッテリと並列に蓄電部を接続することで、回生制動の発電電力を効率よく蓄電し、放電負荷を低減することで、鉛バッテリの劣化を抑制できる。しかしながら、この電源装置は、鉛バッテリの電圧範囲で使用するために、これに並列に接続する蓄電部を効率よく充放電できない欠点がある。
【0021】
図1と
図2の電源装置100、200は、鉛バッテリ10の放電深度増大による劣化を防止しながら、蓄電部20を広い電圧範囲で効率よく充放電するために、車両の電装機器50に電力を供給する場合には、鉛バッテリ10を回路から切り離して、蓄電部20のみから放電するようにしている。
以下、
図1と
図2の電源装置100、200について詳述する。
【0022】
図1と
図2の電源装置100、200は、互いに並列に電気接続される鉛バッテリ10及び蓄電部20を含む電源部1と、鉛バッテリ10と蓄電部20の電圧を検出するための電圧検出回路70と、鉛バッテリ10の出力を制御する鉛バッテリ用遮断スイッチ61と、蓄電部20の出力を制御する蓄電部用遮断スイッチ62と、鉛バッテリ用遮断スイッチ61及び前記蓄電部用遮断スイッチ62の作動状態を切り換える制御回路65と、鉛バッテリ10と蓄電部20の放電を制御する下限電圧を記憶する記憶部73とを備えている。
(電源部1)
【0023】
電源部1は、鉛バッテリ10と蓄電部20を備えている。鉛バッテリ10と蓄電部20は、並列ライン14を介して互いに並列に接続されている。
(鉛バッテリ10)
【0024】
鉛バッテリ10は、複数の鉛電池セル11を備えている。鉛バッテリ10は、定格電圧を2Vとする鉛電池セル11を6セル、直列に接続して定格電圧を12Vとしている。ただ、本発明は、鉛バッテリの定格電圧を12Vには特定しない。2個の鉛バッテリを直列に接続して定格電圧を24Vとし、または3個の鉛バッテリを直列に接続して36V、4個の鉛バッテリを直列に接続して48Vとして使用することもできるからである。従来の電装機器は、12Vの電源電圧で動作するように設計されているが、24V〜48Vの鉛バッテリを搭載する車両は、この電圧で動作する電装機器を搭載する。
(蓄電部20)
【0025】
蓄電部20は、鉛バッテリ10と並列に接続されて、鉛バッテリ10と同じ充放電電圧範囲を有する。したがって、12Vの鉛バッテリ10に並列に接続される蓄電部20は、定格電圧を12Vとし、あるいは12Vに近づけている。このように定格電圧が近接した鉛バッテリ10と蓄電部20を並列接続することで、充放電の電圧範囲を広範囲で一致させることができる。蓄電部20は、複数の蓄電素子21を備えており、これらの蓄電素子21を接続して所定の定格電圧としている。蓄電素子21は、例えば、二次電池である。蓄電素子21を二次電池とする蓄電部20は、複数の蓄電素子21を直列に接続して定格電圧を12Vとする。このような二次電池として、ニッケル水素電池が使用できる。ニッケル水素電池は、鉛バッテリに比較して充電抵抗が極めて小さく、大電流の充電特性に優れるので、回生制動時の大電流で効率よく充電できる特徴がある。ただ、二次電池には、リチウムイオン電池やリチウムポリマー電池等の非水系電解液二次電池も使用できる。リチウムイオン電池などの非水系電解液二次電池は、軽くて充放電容量を大きくできる特徴がある。さらに、蓄電素子は、キャパシタ等とすることもできる。
【0026】
蓄電素子21をニッケル水素電池とする蓄電部20は、10個のニッケル水素電池セルを直列に接続して定格電圧を12Vとする。ニッケル水素電池は、定格電圧を1.2Vとするので、これを10個直列に接続して、蓄電部20の定格電圧を12Vにできる。また、前述のように、2〜4個の鉛バッテリを直列に接続して、定格電圧を24V〜48Vとする鉛バッテリに並列接続される蓄電部は、ニッケル水素電池を、10n(nは自然数)個、直列に接続して、定格電圧を24V〜48Vとすることができる。ニッケル水素電池は、たとえば、水酸化ニッケルを主正極活物質とするニッケル正極と、水素吸蔵合金を負極活物質とする水素吸蔵合金負極とセパレータとからなる電極群を、アルカリ電解液と共に外装缶内に入れて製造される。
【0027】
また、蓄電素子21をリチウムイオン電池とする蓄電部20は、使用するリチウムイオン電池の定格電圧によって、直列接続する個数を調整する。例えば、定格電圧を3.3Vとするリチウムイオン電池を蓄電素子とする蓄電部は、4個のリチウムイオン電池セルを直列に接続して定格電圧を13.2Vとする。また、定格電圧を24V〜48Vとする鉛バッテリに並列接続される蓄電部は、定格電圧を3.3Vとするリチウムイオン電池を、4n(nは自然数)個、直列に接続して、定格電圧を調整することができる。このようなリチウムイオン電池として、例えば、正極をリン酸鉄リチウム、負極をグラファイトとするものが使用できる。さらに、定格電圧を2.4Vとするリチウムイオン電池を蓄電素子とする蓄電部は、5個のリチウムイオン電池セルを直列に接続して定格電圧を12Vとする。また、定格電圧を24V〜48Vとする鉛バッテリに並列接続される蓄電部は、定格電圧を2.4Vとするリチウムイオン電池を、5n(nは自然数)個、直列に接続して、定格電圧を調整することができる。このようなリチウムイオン電池として、例えば、正極をコバルト酸リチウム、負極をチタン酸リチウムとするものが使用できる。
以上の例では、複数の蓄電素子を直列に接続した例を示したが、要求される出力や容量に応じて、蓄電素子を並列に接続したものを組み合わせることもできることはいうまでもない。
(並列ライン14)
【0028】
並列ライン14は、鉛バッテリ10と蓄電部20とを並列に接続している。並列ライン14は、導電性に優れた金属等の部材、たとえば、金属板や金属線で構成されており、鉛バッテリ10の正負の出力側と、蓄電部20の正負の出力側とをそれぞれ電気接続して並列に接続している。
【0029】
図1に示す電源装置100は、互いに並列に接続される鉛バッテリ10と蓄電部20の電力を並列ライン14から外部に出力できるように、並列ライン14に出力ライン16を接続している。出力ライン16は、導電性に優れた金属等の部材で構成されている。この電源装置100は、出力ライン16に接続される接続ライン17を介して車両のオルタネータ52やスターターモータ54、電装機器50に接続されている。この電源装置100は、鉛バッテリ10や蓄電部20から出力される電力が、並列ライン14と出力ライン16と接続ライン17を介して車両のスターターモータ54や電装機器50に供給され、車両のオルタネータ52から供給される電力が、接続ライン17と出力ライン16と並列ライン14を介して鉛バッテリ10や蓄電部20に供給されて充電される。図に示す電源装置100は、出力ライン16の出力側に外部出力端子15を備えており、この外部出力端子15に接続される接続ライン17を出力ライン16に接続している。
【0030】
また、
図2に示す電源装置200は、鉛バッテリ10と蓄電部20とを互いに並列に接続する並列ライン14’を接続ライン17に兼用している。言い換えると、鉛バッテリ10と蓄電部20の出力側を接続ライン17を介して車両のオルタネータ52やスターターモータ54、電装機器50に接続しており、この接続ライン17を介して鉛バッテリ10と蓄電部20を並列に接続している。
(遮断機構60)
【0031】
さらに、
図1と
図2の電源装置100、200は、蓄電部20の特性を生かしながら充放電するために、鉛バッテリ10と蓄電部20の並列接続の間に、一時的に回路を切り離す遮断機構60を備えている。遮断機構60は、鉛バッテリ10と並列ライン14、14’との経路に配置された鉛バッテリ用遮断スイッチ61と、蓄電部20と並列ライン14、14’との経路に配置された蓄電部用遮断スイッチ62とからなる。鉛バッテリ用遮断スイッチ61は、鉛バッテリ10の出力側と並列ライン14、14’との間に接続されており、ON状態で鉛バッテリ10を並列ライン14、14’に接続し、OFF状態で鉛バッテリ10を並列ライン14、14’から切り離す。蓄電部用遮断スイッチ62は、蓄電部20の出力側と並列ライン14、14’との間に接続されており、ON状態で蓄電部20を並列ライン14、14’に接続し、OFF状態で蓄電部20を並列ライン14、14’から切り離す。
【0032】
この電源装置100、200は、鉛バッテリ用遮断スイッチ61と蓄電部用遮断スイッチ62の両方をONすると、鉛バッテリ10の出力側と蓄電部20の出力側が並列ライン14、14’に接続され、この並列ライン14、14’を介して鉛バッテリ10と蓄電部20が並列に接続される。また、この電源装置100、200は、鉛バッテリ用遮断スイッチ61をOFFとし、蓄電部用遮断スイッチ62をONすると、鉛バッテリ10が並列ライン14、14’から切り離され、すなわち、蓄電部20との並列接続から切り離され、蓄電部20のみが接続ライン17に接続される。さらにまた、この電源装置100、200は、鉛バッテリ用遮断スイッチ61をONとし、蓄電部用遮断スイッチ62をOFFすると、蓄電部20が並列ライン14、14’から切り離され、すなわち、鉛バッテリ10との並列接続から切り離され、鉛バッテリ10のみが接続ライン17に接続される。
【0033】
このような鉛バッテリ用遮断スイッチ61及び蓄電部用遮断スイッチ62には、リレーが使用できる。ただし、鉛バッテリ用遮断スイッチや蓄電部用遮断スイッチにはリレーに代わって、半導体スイッチング素子も使用できる。半導体スイッチング素子には、MOSFETやIGBT等の大電流に耐える半導体スイッチング素子が使用できる。また、鉛バッテリ用遮断スイッチ61及び蓄電部用遮断スイッチ62のON/OFFの切り換え制御は、鉛バッテリ10と蓄電部20の電圧に基づいて制御回路65によって行われる。
(鉛バッテリ用電圧検出部71、蓄電部用電圧検出部72)
【0034】
電源装置100、200は、鉛バッテリ10と蓄電部20の電圧に基づいて鉛バッテリ用遮断スイッチ61と蓄電部用遮断スイッチ62のON/OFFの切り換えを制御するために、鉛バッテリ10と蓄電部20の電圧を検出する電圧検出回路70を備えている。図に示す電圧検出回路70は、鉛バッテリ10の電圧を検出する鉛バッテリ用電圧検出部71と、蓄電部20の電圧を検出する蓄電部用電圧検出部72とを備えている。鉛バッテリ用電圧検出部71は、鉛バッテリ10の電圧として、鉛バッテリ10のトータル電圧を検出して制御回路65に入力する。蓄電部用電圧検出部72は、蓄電部20の電圧を検出して制御回路65に入力する。蓄電部用電圧検出部72は、蓄電部20の電圧として、蓄電部20のトータル電圧を検出し、あるいは、各蓄電素子21の電圧を検出してこれらの合計をトータル電圧として制御回路65に入力する。
【0035】
以上の電圧検出回路70は、鉛バッテリ10と蓄電部20の電圧を個別に検出する鉛バッテリ用電圧検出部71と蓄電部用電圧検出部72とを備えているが、鉛バッテリ用電圧検出部と蓄電部用電圧検出部は、一つの電圧検出回路で構成することもできる。具体的には、図示しないが、電源部1の出力電圧(たとえば並列ライン14、14’の電圧)を検出できるように電圧検出回路を設ける構成とすることで、鉛バッテリ用遮断スイッチ61及び蓄電部用遮断スイッチ62の作動状態に応じて、鉛バッテリ10と蓄電部20の電圧を検出できる。例えば、鉛バッテリ用遮断スイッチ61をON、蓄電部用遮断スイッチ62をOFFとする状態の電源部1の電圧を検出することで、実質的に、鉛バッテリ10の放電電圧を検出することができる。逆に、鉛バッテリ用遮断スイッチ61をOFF、蓄電部用遮断スイッチ62をONとする状態の電源部1の電圧を検出することで、実質的に、蓄電部20の放電電圧を検出することができる。
(制御回路65)
【0036】
制御回路65は、鉛バッテリ用電圧検出部71で検出される鉛バッテリ10の電圧と蓄電部用電圧検出部72で検出される蓄電部20の電圧に基づいて鉛バッテリ用遮断スイッチ61と蓄電部用遮断スイッチ62のON/OFFの切り換えを制御して、鉛バッテリ10と蓄電部20から車両の電装機器50への放電を制御する。制御回路65は、蓄電部用電圧検出部72の検出結果と、鉛バッテリ用電圧検出部71の検出結果と、記憶部73に記憶された鉛バッテリ10及び蓄電部20の放電を制御する下限電圧に基づいて、鉛バッテリ用遮断スイッチ61と蓄電部用遮断スイッチ62の作動状態を制御している。
(記憶部73)
【0037】
記憶部73は、鉛バッテリ10の放電を制限する鉛バッテリ下限電圧V
Pbと、蓄電部20の放電を制限する蓄電部下限電圧V
subとを記憶している。記憶部73に記憶される鉛バッテリ下限電圧V
Pbは、鉛バッテリ10の放電深度増大による劣化を抑制するための放電下限電圧であって、定格電圧を12Vとする鉛バッテリ10においては、鉛バッテリ下限電圧V
Pbは、好ましくは12V以上であって、たとえば、12.1Vとすることができる。この鉛バッテリ下限電圧V
Pbは、鉛電池の正極活物質粒子間の結合力低下による容量劣化(軟化現象)を抑制するための、所定の放電深度における放電電圧であって、必ずしも、12.1Vになるとは限らない。鉛バッテリ下限電圧V
Pbは、鉛バッテリ10の組成や、劣化をどの程度許容するかによって適宜選択できる。
【0038】
また、記憶部73に記憶される蓄電部下限電圧V
subは、蓄電部20の容量劣化や抵抗増大、及び転極を抑制するための放電下限電圧であって、定格電圧を12Vとする鉛バッテリ10と並列に接続される蓄電部20においては、好ましくは10V以上であって、たとえば、10.0V〜11.5Vとすることができる。この蓄電部下限電圧V
subも、蓄電部20を構成する蓄電素子21の種類や特性、あるいは劣化をどの程度許容するかによって適宜選択できる。
【0039】
ここで、
図3は、鉛バッテリと蓄電部の電圧−残容量特性を示している。この図は、バッテリの残容量に対する放電電圧を示している。この図において、曲線Aは、定格電圧を12Vとする鉛バッテリの電圧−残容量特性を、曲線Bは、ニッケル水素電池を10直に接続して定格電圧を12Vとしてなる蓄電部の電圧−残容量特性を、また、曲線Cは、定格電圧を3.3Vとするリチウムイオン電池を4直に接続してなる蓄電部の電圧−残容量特性を、さらにまた、曲線Dは、定格電圧を2.4Vとするリチウムイオン電池を5直に接続してなる蓄電部の電圧−残容量特性をそれぞれ示している。
【0040】
鉛バッテリ10は、容量劣化を防止するために、残容量が80〜100%の範囲となるように、放電下限電圧が12.0V以上で充放電が制御される。これに対して、ニッケル水素電池からなる蓄電部20が、鉛電池の放電下限電圧範囲で放電されると、十分放電可能な残容量を有するにも関わらず、途中で充電制御に切り替わり、期待する燃費改善効果が得られない。ニッケル水素電池は、鉛電池と違って、残容量が10%に低下するまで放電し、また80%となるまで充電しても劣化は少なく、したがって、蓄電部20の放電を制限する蓄電部下限電圧V
subは、蓄電部20の劣化を抑制できる放電電圧に設定される。ニッケル水素電池を10直に接続して定格電圧を12Vとしてなる蓄電部の蓄電部下限電圧V
subは、好ましくは10.5V〜11.0V、たとえば11.0Vとし、さらに、定格電圧を3.3Vとするリチウムイオン電池を4直に接続してなる蓄電部の蓄電部下限電圧V
subは、好ましくは11.0V〜11.5V、たとえば11.5Vとし、さらにまた、定格電圧を2.4Vとするリチウムイオン電池を5直に接続してなる蓄電部の蓄電部下限電圧V
subは、好ましくは10.0V〜10.5V、たとえば10.5Vとする。
【0041】
以上のように、電源装置は、蓄電部20を広い電圧範囲で充放電するために、蓄電部20の蓄電部下限電圧V
subを鉛バッテリ10の鉛バッテリ下限電圧V
Pbよりも低く設定している。この制御回路65は、蓄電部20の電圧が蓄電部下限電圧V
subを下回らないように蓄電部20の充放電を制御し、また、鉛バッテリ10の電圧が鉛バッテリ下限電圧V
Pbを下回らないように鉛バッテリ10の充放電を制御する。これにより、電源装置は、蓄電部20と鉛バッテリ10の容量劣化を抑制しながら、しかも、蓄電部20を鉛バッテリ10よりも広い電圧範囲で充放電できる。
【0042】
制御回路65は、車両の電装機器50に電力を供給する場合において、蓄電部20の電圧が蓄電部下限電圧V
subよりも高い状態では、蓄電部用遮断スイッチ62をONとし、鉛バッテリ用遮断スイッチ61をOFFとして鉛バッテリ10を並列ライン14、14’から切り離し、蓄電部20のみから車両の電装機器50に電力を供給する。また、制御回路65は、蓄電部20の電圧が蓄電部下限電圧V
sub以下になると、鉛バッテリ用遮断スイッチ61をONとし、蓄電部用遮断スイッチ62をOFFとして蓄電部20を並列ライン14、14’から切り離し、鉛バッテリ10のみから車両の電装機器50に電力を供給する。あるいは、制御回路65は、蓄電部20の電圧が蓄電部下限電圧V
sub以下になると、蓄電部用遮断スイッチ62をONとし、オルタネータ52の出力を制御して蓄電部20を充電することもできる。
【0043】
さらに、制御回路65は、車両のエンジン96を始動する際には、鉛バッテリ用遮断スイッチ61と蓄電部用遮断スイッチ62の両方をONとして、鉛バッテリ10と蓄電部20の両方からスターターモータ54に電力を供給する。このように、鉛バッテリ10と蓄電部20を並列接続する状態で、鉛バッテリ10と蓄電部20の両方からスターターモータ54に電力を供給することで、鉛バッテリ10からスターターモータ54への大電流放電が抑制されて、鉛バッテリ10の劣化を有効に防止できる。ただ、制御回路65は、鉛バッテリ用遮断スイッチ61をONとし、蓄電部用遮断スイッチ62をOFFとして、鉛バッテリ10のみからスターターモータ54に電力を供給することもできる。この構成によると、大電力を必要とするスターターモータ54に電力を供給する際に、鉛バッテリ10から蓄電部20が切り離されるため、蓄電部20に大きな負荷がかからず、電圧低下を防止することができる。
【0044】
さらに、制御回路65は、鉛バッテリ用電圧検出部71と蓄電部用電圧検出部72の検出結果に基づいて、オルタネータ52の出力を制御して、オルタネータ52による鉛バッテリ10と蓄電部20の充電を制御する。すなわち、エンジン96で駆動されるオルタネータ52の出力を制御して鉛バッテリ10と蓄電部20の充電を制御する。鉛バッテリ10と蓄電部20の充電電圧は、オルタネータ52の出力電圧で制御される。制御回路65は、オルタネータ52のロータコイル(図示せず)の励磁電流を制御してオルタネータ52の出力電圧をコントロールする。この制御回路65は、ロータコイルの励磁電流を大きくしてオルタネータ52の出力電圧を高く、励磁電流を小さくしてオルタネータ52の出力電圧を低くする。具体的には、制御回路65は、鉛バッテリ用電圧検出部71で検出される鉛バッテリ10の電圧が鉛バッテリ下限電圧V
Pb以下になると、オルタネータ52を制御して、オルタネータ52の出力電圧が高くなるように制御する。
【0045】
エンジン96で駆動されるオルタネータ52から充電電力が供給され、あるいは、車両の回生制動による発電でオルタネータ52から充電電力が供給される状態では、好ましくは、鉛バッテリ10と蓄電部20の両方を充電する。鉛バッテリ10と蓄電部20とを並列接続して充電することで、鉛バッテリ10が大きな充電電流で急速充電されて劣化するのを抑制しながら、大電流による充電電流を効果的に蓄電するためである。
図1に示す電源装置100は、オルタネータ52による充電状態を検出するために、出力ライン16に流れる電流を検出する電流検出回路74を備えている。図に示す電流検出回路74は、出力ライン16に配置された検出部75から入力される信号で、出力ライン16に流れる電流を検出する。電流検出回路74で検出された電流値は、制御回路65に入力される。電流検出回路74が車両のオルタネータ52から供給される充電電流を検出すると、制御回路65は、鉛バッテリ用遮断スイッチ61と蓄電部用遮断スイッチ62の両方をONとして、鉛バッテリ10と蓄電部20とを並列に接続して、鉛バッテリ10と蓄電部20の両方を充電する。
図2に示す電源装置200も、図示しないが、オルタネータ52による充電状態を検出するために、鉛バッテリ10や蓄電部20に流れる電流を検出する電流検出回路を備えることもできる。
【0046】
以上の制御回路は、以下に示すように、鉛バッテリ用遮断スイッチ61と蓄電部用遮断スイッチ62のON/OFFの切り換えを制御して、鉛バッテリ10と蓄電部20から車両の電装機器50への放電を制御する。
【0047】
(1)蓄電部20の電圧V
2が蓄電部下限電圧V
subよりも高い状態
制御回路65は、蓄電部20の電圧V
2が蓄電部下限電圧V
subよりも高い状態では、蓄電部用遮断スイッチ62をONとし、鉛バッテリ用遮断スイッチ61をOFFとして鉛バッテリ10を並列ライン14、14’から切り離し、蓄電部20のみから車両の電装機器50に電力を供給するように制御する。この状態では、鉛バッテリ10からは車両の電装機器50に放電されず、鉛バッテリ10の電圧V
1が鉛バッテリ下限電圧V
Pbよりも低下することはない。
【0048】
(2)蓄電部20の電圧V
2が蓄電部下限電圧V
sub以下になる状態
(1)の状態から、さらに蓄電部20が放電されて、蓄電部20の電圧V
2が蓄電部下限電圧V
sub以下になると、制御回路65は、鉛バッテリ用遮断スイッチ61をONとし、蓄電部用遮断スイッチ62をOFFとして蓄電部20を並列ライン14、14’から切り離し、鉛バッテリ10のみから車両の電装機器50に電力を供給するように制御する。この状態において、蓄電部20からは車両の電装機器50に電力が供給されず、蓄電部20の過放電が防止される。
あるいは、蓄電部20の電圧V
2が蓄電部下限電圧V
sub以下になると、制御回路65は、蓄電部用遮断スイッチ62をONとし、オルタネータ52の出力を制御して蓄電部20を充電することもできる。この状態において、オルタネータ52は、車両の電装機器50に電力を供給しながら蓄電部20を充電する。このとき、鉛バッテリ用遮断スイッチ61はOFFとすることも、ONとすることもできる。鉛バッテリ用遮断スイッチ61をOFFとする状態では、蓄電部20のみが充電される。鉛バッテリ用遮断スイッチ61をONとする状態では、蓄電部20と鉛バッテリ10の両方が充電される。ここで、オルタネータ52による蓄電部20の充電は、必ずしも蓄電部20が満充電されるまで行う必要はなく、蓄電部20の電圧が所定の電圧に上昇し、あるいは、所定の時間が経過すると充電を停止することができる。
【0049】
(3)鉛バッテリ10の電圧V
1が鉛バッテリ下限電圧V
Pb以下になる状態
(2)の状態から、鉛バッテリ10が放電されて、鉛バッテリ10の電圧V
1が鉛バッテリ下限電圧V
Pb以下になると、制御回路65は、鉛バッテリ用遮断スイッチ61をONとし、オルタネータ52の出力を制御して鉛バッテリ10を充電する。このとき、蓄電部用遮断スイッチ62はOFFとすることも、ONとすることもできる。蓄電部用遮断スイッチ62をOFFとする状態では、鉛バッテリ10のみが充電される。蓄電部用遮断スイッチ62をONとする状態では、鉛バッテリ10と蓄電部20の両方が充電される。さらに、鉛バッテリ用遮断スイッチ61をON、蓄電部用遮断スイッチ62はOFFとすると状態で、オルタネータ52が発電して鉛バッテリ10に充電電流が供給されると、制御回路65は電流検出回路74からの電流値でこのことを検出して、鉛バッテリ用遮断スイッチ61と蓄電部用遮断スイッチ62の両方をONとして鉛バッテリ10と蓄電部20の両方を充電することもできる。ここで、オルタネータ52による鉛バッテリ10の充電は、必ずしも鉛バッテリ10が満充電されるまで行う必要はなく、鉛バッテリ10の電圧が所定の電圧に上昇し、あるいは、所定の時間が経過すると充電を停止することができる。
【0050】
(2)または(3)の状態において、仮に、蓄電部20や鉛バッテリ10が満充電されることなく充電が停止されても、車両の走行時においては、オルタネータ52の回生制動により、蓄電部20や鉛バッテリ10は充電される。このため、回生制動による発電電力をより効率よく蓄電するためにも、オルタネータ52をエンジン96で駆動して充電する状態は短くすることが好ましい。このように、制御回路65は、エンジン96でオルタネータ52を駆動して行う発電時間を短くしながら、回生制動による発電を効率よく蓄電することで、燃費改善をより効果的に行うことができる。ただ、回生制動しない車両においては、エンジンでオルタネータを駆動して行う発電により、蓄電部や鉛バッテリを満充電することもできる。
【0051】
(4)車両の回生制動で充電される状態
前述の(1)〜(3)の状態において、車両の回生制動でオルタネータ52から充電電力が供給されると、制御回路65は電流検出回路74の検出結果から、あるいは車両側からの信号によってこのことを検出して、鉛バッテリ用遮断スイッチ61と蓄電部用遮断スイッチ62の両方をONとして鉛バッテリ10と蓄電部20の両方を充電する。たとえば、前述の(1)又は(2)のように、蓄電部用遮断スイッチ62と鉛バッテリ用遮断スイッチ61のいずれか一方をONとする状態で、オルタネータ52から充電電力が供給されると、制御回路65は鉛バッテリ用遮断スイッチ61と蓄電部用遮断スイッチ62の両方をONとして鉛バッテリ10と蓄電部20の両方を充電する。蓄電部20は回生制動の蓄電を効率よくするために鉛バッテリ10に接続されるので、回生制動する状態では、制御回路65は蓄電部用遮断スイッチ62と鉛バッテリ用遮断スイッチ61の両方をON状態とする。
【0052】
さらにまた、回生制動によるオルタネータ52からの充電が停止すると、制御回路65は、蓄電部用電圧検出部72で検出される蓄電部20の電圧が蓄電部下限電圧V
subよりも高いと、蓄電部用遮断スイッチ62をONとし、鉛バッテリ用遮断スイッチ61をOFFとして、鉛バッテリ10を並列ライン14、14’から切り離し、蓄電部20のみを並列ライン14、14’に接続して、蓄電部20のみから電装機器50に電力を供給する。
【0053】
以上の電源装置100、200は、車両の電装機器50へ放電する際、遮断機構60により、鉛バッテリ10を放電回路から切り離された状態とすることで、蓄電部20から優先的に放電させることができる。現在、アイドリングストップシステムやエネルギー回生システム用の電源装置には、鉛バッテリが用いられている。鉛バッテリは、性能劣化を抑えるために満充電維持が望まれる。しかしながら、上記のような用途ではアイドリングストップ中に相当量の放電が必要となるため、鉛バッテリの性能劣化が加速して、早期に電池寿命に至ってしまう。特に、鉛バッテリは、放電深度(DOD:Depth of discharge)が深いほど劣化が加速するため、鉛バッテリが放電下限電圧に到達した場合、オルタネータを稼動させ、鉛バッテリを充電する制御がなされている。
【0054】
このような問題に対して、蓄電部を鉛バッテリに並列接続することで、鉛バッテリの仕事量を低減し、鉛バッテリの長寿命化を図ることが検討されているものの、蓄電部と鉛バッテリとが並列に接続されている以上、電源装置の放電下限電圧は鉛バッテリに依存することとなる。このため、蓄電部の使用可能なDOD範囲が制限されることとなり、十分な燃費改善効果が得られない。そこで、鉛バッテリ10に蓄電部20を並列接続した電源装置100、200において、鉛バッテリ10及び蓄電部20にそれぞれ遮断機構60を設けることで、電源装置100、200が車両側の電装機器50等へ放電する際には、鉛バッテリ10を遮断機構60により、放電回路から切り離された状態とする。これにより、蓄電部20から優先的に放電させることができ、鉛バッテリ10の劣化を抑制すると共に、蓄電部20の使用可能なDOD範囲を広げることで、十分な燃費改善効果を得ることが可能となる。
【0055】
以上の例では、電源装置100、200が車両側の電装機器50等へ放電する場合、制御回路65が鉛バッテリ用遮断スイッチ61をOFFして鉛バッテリ10が放電回路から切り離された状態とし、一方、蓄電部用遮断スイッチ62をONして蓄電部20から優先的に放電されるようにする。電源装置100、200は、車両側への放電時における鉛バッテリ下限電圧V
Pbと蓄電部下限電圧V
subとを記憶部73に記憶しており、制御回路65が、鉛バッテリ用電圧検出部71で検出される鉛バッテリ10の放電電圧と蓄電部用電圧検出部72で検出される蓄電部20の放電電圧とを、記憶部73に記憶される鉛バッテリ下限電圧V
Pbと蓄電部下限電圧V
subとに比較して鉛バッテリ用遮断スイッチ61と蓄電部用遮断スイッチ62の作動状態を制御する。とくに、鉛バッテリ下限電圧V
Pbと蓄電部下限電圧V
subは、V
Pb>V
subとする。これによって蓄電部20の使用可能な容量範囲が増加するため、十分な燃費改善効果を得ることが可能となる。なお、蓄電部下限電圧V
subは、過放電保護の観点から10V以上とすることが望ましい。また、鉛バッテリ10についても劣化を抑制するために、鉛バッテリ下限電圧を12V以上とすることが望ましい。
【0056】
制御回路65は、蓄電部20の電圧を監視している。そして蓄電部20の放電電圧が蓄電部下限電圧V
sub以下に到達した場合は、蓄電部用遮断スイッチ62をOFFして蓄電部20を切り離し、鉛バッテリ用遮断スイッチ61をONして鉛バッテリ10を接続し、鉛バッテリ10から車両側に放電することができる。なお、蓄電部20の放電電圧が蓄電部下限電圧V
sub以下に到達した際に、遮断スイッチの作動状態を切り替えるのではなく、オルタネータ52の出力電圧を上げて、蓄電部20を充電する構成とすることもできる。
【0057】
次に、
図4と
図5に示すフローチャートに基づいて、本発明の実施形態にかかる車載用の電源装置における鉛バッテリ用遮断スイッチ61及び蓄電部用遮断スイッチ62の作動状態の制御について詳述する。
上述の通り、本発明は、鉛バッテリ10の容量劣化を防止するために、鉛バッテリ10を残容量が80〜100%の範囲で維持するように充放電が制御される。より望ましくは、鉛バッテリ10の残容量を高い値で維持したまま、鉛バッテリ10から電装機器50等の電気負荷へ電力供給しない状態を維持する。鉛バッテリ10は、残容量が少ない状態で放置されたり、頻繁に充放電を繰り返すことで容量劣化を引き起こすが、この構成によると、残容量が高い状態で維持されつつ、鉛バッテリ10から電力が消費されることを抑制することができる。具体的には、鉛バッテリ10は、オルタネータ52による充電状態を除くタイミングでは、スターターモータ54の駆動と、蓄電部20の過放電のおそれがある場合にのみ、並列ライン14、14’に接続されて、スターターモータ54、あるいは電装機器50へ電力供給するように制御される。
(実施形態1)
【0058】
第1の実施形態では、
図4のフローチャートに従って、鉛バッテリ用遮断スイッチ61及び蓄電部用遮断スイッチ62の作動状態が制御される。
[n=1のステップ]
制御回路65が、鉛バッテリ用遮断スイッチ61をOFF、蓄電部用遮断スイッチ62をONに制御する。
[n=2のステップ]
蓄電部用電圧検出部72が蓄電部20の放電電圧を検出する。
[n=3のステップ]
検出された蓄電部20の放電電圧が蓄電部下限電圧V
sub以下に低下したかどうかを判定する。蓄電部20の放電電圧が蓄電部下限電圧V
subよりも高い場合には、n=1のステップに戻り、蓄電部20の放電電圧が蓄電部下限電圧V
sub以下になるまでn=1〜3のステップをループする。蓄電部20の放電電圧が蓄電部下限電圧V
sub以下になると、n=4のステップに進む。
[n=4のステップ]
制御回路65が、鉛バッテリ用遮断スイッチ61をON、蓄電部用遮断スイッチ62をOFFに制御する。
[n=5のステップ]
鉛バッテリ用電圧検出部71が、鉛バッテリ10の放電電圧を検出する。
[n=6のステップ]
検出された鉛バッテリ10の放電電圧が鉛バッテリ下限電圧V
Pb以下に低下したかどうかを判定する。鉛バッテリ10の放電電圧が鉛バッテリ下限電圧V
Pbよりも高い場合には、n=4のステップに戻り、鉛バッテリ10の放電電圧が鉛バッテリ下限電圧V
Pb以下になるまでn=4〜6のステップをループする。鉛バッテリ10の放電電圧が鉛バッテリ下限電圧V
Pb以下になると、n=7のステップに進む。
[n=7のステップ]
制御回路65が、鉛バッテリ用遮断スイッチ61をON、蓄電部用遮断スイッチ62をONに制御する。
[n=8のステップ]
制御回路65がオルタネータ52の出力を制御して鉛バッテリ10を充電する。このとき、蓄電部用遮断スイッチ62がON状態にあるので、蓄電部20も充電される。
[n=9のステップ]
鉛バッテリ10または蓄電部20の電圧が所定の電圧まで上昇し、あるいは、所定の時間が経過するまで充電を継続する。充電が終了すると、n=1のステップに戻る。
(実施形態2)
【0059】
第2の実施形態では、
図5のフローチャートに従って、鉛バッテリ用遮断スイッチ61及び蓄電部用遮断スイッチ62の作動状態が制御される。
[n=1のステップ]
制御回路65が、鉛バッテリ用遮断スイッチ61をOFF、蓄電部用遮断スイッチ62をONに制御する。
[n=2のステップ]
蓄電部用電圧検出部72が蓄電部20の放電電圧を検出する。
[n=3のステップ]
検出された蓄電部20の放電電圧が蓄電部下限電圧V
sub以下に低下したかどうかを判定する。蓄電部20の放電電圧が蓄電部下限電圧V
subよりも高い場合には、n=1のステップに戻り、蓄電部20の放電電圧が蓄電部下限電圧V
sub以下になるまでn=1〜3のステップをループする。蓄電部20の放電電圧が蓄電部下限電圧V
sub以下になると、n=4のステップに進む。
[n=4のステップ]
制御回路65が、鉛バッテリ用遮断スイッチ61をON、蓄電部用遮断スイッチ62をONに制御する。
[n=5のステップ]
制御回路65がオルタネータ52の出力を制御して蓄電部20を充電する。このとき、鉛バッテリ用遮断スイッチ62がON状態にあるので、鉛バッテリ10も充電される。
[n=6のステップ]
蓄電部20または鉛バッテリ10の電圧が所定の電圧まで上昇し、あるいは、所定の時間が経過するまで充電を継続する。充電が終了すると、n=1のステップに戻る。
(実施例1)
【0060】
図1に示す車載用の電源装置100の一例を
図6ないし
図9に示す。これらの図において、車載用の電源装置100の斜視図を
図6に、この電源装置100の分解斜視図を
図7に、この電源装置100の内部構造を、
図8の透視斜視図と、
図9の垂直横断面図とにそれぞれ示す。これらの図に示す電源装置100は、鉛バッテリ10と、蓄電部20と、これらを収納するケース30で構成されている。なお、
図8では、内部構造を示すためにケース30と外部出力端子15及び出力端子12を破線で示し、またカバー部42(後述)の図示を省略している。
【0061】
電源装置100は、
図7に示すように、ケース30の内部に鉛バッテリ10と蓄電部20を収納している。図に示すケース30は、本体ケース32の内部に、鉛バッテリ10と蓄電部20とを区画する仕切壁34を設けており、一方の収納空間37に鉛バッテリ10を収納して、他方の収納空間37に蓄電部20を収納している。この構造は、鉛バッテリ10と蓄電部20と定位置に区画しながら配置できる。ただ、ケースは必ずしも仕切り壁を設けて内部を区画する必要はない。
【0062】
ケース30は、
図6と
図7に示すように外観を箱形としている。好ましくは、ケース30の外形及びサイズを、既存の車載用12V鉛バッテリとほぼ同様の外形とすることで、既存の車載用12V鉛バッテリと交換することが可能となる。このことは、既に普及している多くの車両に電源装置をそのまま適用できることに繋がり、追加の部材や施設が不要となることから、普及に際して極めて有利となる。
【0063】
ケース30には、正負の外部出力端子15が設けられる蓋部31が備えられており、ケース30の内部に鉛バッテリ10と蓄電部20が収納される。電源装置100は、
図1に示すように、この外部接続端子15を介して、車両のオルタネータ52やスターターモータ54、電装機器50に接続される。
【0064】
鉛バッテリ10には、たとえば、既存の車載用12V鉛バッテリ10が使用できる。この鉛バッテリ10は、図示しないが、複数の鉛電池セルを積層した鉛電池積層体で構成される。鉛電池積層体は、図示しない導通部材を介して、正負の出力端子12と接続され、鉛バッテリ10の出力が出力端子12を介して取り出せるようになっている。蓄電部20は、複数の蓄電素子21を直列に電気接続している。蓄電部20は、正負の出力が端子部44を介して取り出せるようになっている。蓄電部20の正負の端子部44は、並列ライン14を介して、鉛バッテリ10の正負の出力端子12に接続される。なお、蓄電部に電圧の取り出し用に補助電池端子を設ける構成とすることもできる。蓄電部に補助電池端子を設ける構成とした場合には、並列ラインは、補助電池端子と出力端子とを電気接続するように構成される。
【0065】
電源装置100は、鉛バッテリ10の正負の出力端子12と蓄電部20の正負の端子部44とを一対の並列ライン14を介して接続して、鉛バッテリ10と蓄電部20とを並列に接続している。並列ライン14は導電性に優れた金属等の部材で構成される。並列ライン14を介して、鉛バッテリ10と蓄電部20とは電気的に並列に接続される。一方の並列ライン14+は、鉛バッテリ10の正極側出力端子12+と蓄電部20の正極側端子部44+とを接続している。この並列ライン14+は、後述する遮断スイッチと接続リード47、48を介して正極側出力端子12+と正極側端子部44+と接続している。他方の並列ライン14−は、鉛バッテリ10の負極側出力端子12−と蓄電部20の負極側端子部44−とを接続する。並列ライン14−は、負極側出力端子12−と負極側端子部44−とに直接接続している。さらに、一対の並列ライン14は、これに接続された出力ライン16を介して、一対の外部出力端子15に接続している。出力ライン16は、導電性に優れた金属等の部材で構成されており、好ましくは並列ライン14に一体的に連結されて、外部出力端子15に接続される。
【0066】
また、この電源装置100は、鉛バッテリ10と蓄電部20の並列接続の間に、一時的に回路を切り離す遮断機構60を備えている。具体的には、鉛バッテリ10と蓄電部20は、それぞれ鉛バッテリ用遮断スイッチ61、蓄電部用遮断スイッチ62を介して、並列ライン14で並列接続している。鉛バッテリ用遮断スイッチ61は、一端が並列ライン14+に接続されると共に、他端が接続リード47を介して鉛バッテリ10の正極側出力端子12+に接続されている。蓄電部用遮断スイッチ62は、一端が並列ライン14+に接続されると共に、他端が接続リード48を介して蓄電部20の正極側端子部44+に接続されている。各遮断スイッチをONすると、鉛バッテリ10と蓄電部20は並列に接続される。遮断スイッチのON/OFFの切り換え制御は、回路部40に設けられた制御回路65によって行われる。
【0067】
また、鉛バッテリ10と蓄電部20との電気接続の間には、回路部40が介在される。
図7と
図8の電源装置100では、蓋部31の上面に回路部40が配置されている。回路部40は回路基板41を備えており、この回路基板41上に、並列ライン14、出力ライン16、鉛バッテリ用遮断スイッチ61、蓄電部用遮断スイッチ62、及び接続リード47、48を実装している。さらに、回路基板は、図示しないが、鉛バッテリ用遮断スイッチ61と蓄電部用遮断スイッチ62のON/OFFを制御する制御回路も実装している。
【0068】
この電源装置100は、
図7と
図8に示すように、蓋部31に、一対の外部出力端子15として、正極側出力端子15+と負極側出力端子15−を設けている。さらに、電源装置100は、ケース30の上面に設けた回路部40を介して、一対の外部出力端子15を正負の出力端子12と正負の端子部44とに接続している。蓋部31は、本体ケース32に収納される鉛バッテリ10の正負の出力端子12を貫通させる貫通穴39を蓋部31に開口している。蓋部31を貫通する正負の出力端子12は、ケース30の上面において並列ライン14に接続されると共に、出力ライン16を介して正負の外部出力端子15に接続される。
【0069】
蓋部31の上面に突出する正極側出力端子12+は、接続リード47と鉛バッテリ用遮断スイッチ61を介して並列ライン14+の一端に接続される。この並列ライン14+の他端は、蓄電部用遮断スイッチ62と接続リード48を介して蓄電部の正極側端子部44+に接続されている。並列ライン14+は、出力ライン16+を介して正極側外部出力端子15+に接続されている。
【0070】
また、蓋部31の上面に突出する負極側出力端子12−は、並列ライン14−を介して蓄電部20の負極側端子部44−に接続されると共に、並列ライン14−に接続された出力ライン16−を介して負極側外部出力端子15−に接続されている。
【0071】
以上のようにして、蓋部31の上面に配置される回路部40を介して、鉛バッテリ10の正負の出力端子12と蓄電部20の正負の端子部44とを一対の並列ライン14で接続すると共に、並列ライン14+に接続される鉛バッテリ用遮断スイッチ61と蓄電部用遮断スイッチ62とを定位置に配置しながら接続している。
【0072】
以上の例ではケース30の蓋部31に回路部40を固定した例を説明したが、回路部は、本体ケースの外面に固定する構成とすることもできる。また、
図10の概略構成図に示すように、回路部40をケース30の内部に配置する構成とすることもできる。図に示す電源装置100’は、ケース30に収納される鉛バッテリ10の上面と、蓋部31の内面との間に回路部40を介在させている。
(蓄電部20)
【0073】
蓄電部20は、複数の蓄電素子21を略同一平面に配置している。好ましくは、
図8と
図9に示すように、蓄電素子21は内ケース22に収納される。この図に示す蓄電素子21は、円筒形の外装缶を有し、長手方向に複数本を接続した蓄電素子組21aを、縦方向に平行に並べて蓄電素子集合体としている。このように同一平面(
図8と
図9おいて縦方向)に複数本の蓄電素子21を配置することで、蓄電素子集合体を板状あるいは平面状とし、この蓄電素子集合体の厚さを、蓄電素子21の一本分程度に薄くすることができる。この結果、鉛バッテリ10と積層しても、厚さが増すことを抑えて、電源装置全体の小型化、すなわち既存の車載用12V鉛バッテリと同程度の大きさに抑えることに寄与できる。
(蓄電素子21)
【0074】
蓄電部20を構成する蓄電素子21は、ニッケル水素電池からなる二次電池セルとしている。ニッケル水素電池の電源電圧は、1.2Vであるので、10個のニッケル水素電池を直列に接続すれば12Vとなり、電源電圧を12Vとする鉛バッテリ10との並列接続に適合する。
図8と
図9の例では、蓄電素子21として、円筒形の外装缶を有するニッケル水素電池を備えている。蓄電部20は、2本のニッケル水素電池を長手方向に接続して蓄電素子組21aを形成する。この蓄電素子組21aを5組互いに平行に同一平面上に並べて蓄電素子集合体を構成している。すなわち蓄電素子集合体は、合計10本のニッケル水素電池で構成される。この構成であれば、2本の円筒形ニッケル水素電池を5組、縦方向に並べて薄型の蓄電部20を構成できるので、鉛バッテリ10に積層しても厚みが増すことを抑制できる。なお、蓄電素子21をニッケル水素電池とする構成について説明したが、蓄電素子21はリチウムイオン電池等の二次電池を使用することもできる。また、キャパシタ等の蓄電素子を用いることもできる。蓄電素子を用いる構成であっても、2つの蓄電素子を長手方向に接続して蓄電素子組21aを形成することで、縦方向に並べて薄型の蓄電部20を構成できるという同様の効果を得ることができる。
【0075】
また、直列接続する本数を調整することで、蓄電部20の電圧を、接続先の鉛バッテリと一致させるように調整できる。例えば、トラック等の大型車両のように、定格電圧を24Vとする鉛バッテリに対しては、ニッケル水素電池の二次電池を20本直列に接続することで、24Vに対応させることができる。このように必要に応じて36V、48V等、ニッケル水素電池を10本単位で、すなわち10n(nは自然数)個を直列に接続することにより、12Vの倍数で出力電圧を調整でき、多くの規格化された電源装置の電圧に適合できる。あるいは、任意のN個(Nはnより大きい自然数)のニッケル水素電池を接続して、1.2V刻みで電池ブロックの総電圧を調整できる。さらにニッケル水素電池を並列接続してもよく、これによって電源装置の電気容量を増加できる。
【0076】
また、円筒形の二次電池セルを蓄電素子21に用いる場合は、各二次電池セルを水平姿勢に配置することが好ましい。これによって各二次電池セルに設けられた安全弁を確実に動作させることができるからである。円筒形の外装缶を用いた二次電池セルは一般に、外装缶の内圧の上昇に応じて開弁する安全弁を、円筒形の一方の端面に設けている。この構造の場合、円筒形の二次電池セルを、底面側に安全弁が面する姿勢で縦置きにすると、外装缶内に充填されている電解液が安全弁の近傍に溜まって、安全弁が開弁した際に電解液が安全弁の開口面積の何割かを塞ぐ状態となることが考えられる。特に、二次電池セルを直列に接続する際は、二次電池セル同士を接続するバスバー24(後述)を短くするため、長手方向の向きが入れ替わる状態となる。このため、二次電池セルを縦置きにすると、何れかの二次電池セルの安全弁が底面側に面する事態が起こり得る。そこで、上述の通り二次電池セルが水平姿勢となるように内ケースやケースで保持することで、このような事態を回避し、安全弁が開弁した際に確実に開口部が確保されるようにして、安全弁の動作の信頼性を高めることができる。特に鉛バッテリについては密閉型のものを除いて一般的に、電解液を充填している関係上、横に倒した姿勢での使用を禁止しているものが殆どであり、このような使用時の姿勢を規定した鉛バッテリに合わせて使用することで、蓄電部の姿勢も自ずとと規定されることから、信頼性高く使用できる。
【0077】
以下、円筒形のニッケル水素電池を蓄電素子21として例示する。ただ、蓄電素子は、これに限定するものでなく、例えばリチウムイオン電池やニッケルカドミウム電池等の二次電池、あるいは電気二重層キャパシタ等とすることもできる。また、その外形も、円筒形に限らず、角形とした電池セルやキャパシタ等を利用することもできる。また、以上の例では複数の蓄電素子を直列に接続した例を示したが、要求される出力や容量に応じて、蓄電素子を並列に接続したものを組み合わせることもできることはいうまでもない。
(バスバー24)
【0078】
複数の蓄電素子21は、内ケース22に収納される。さらに内ケース22に収納された状態で、蓄電素子21同士はバスバー24によって電気的に接続される。バスバー24は、金属板等導電性に優れた材質で構成される。また、複数の蓄電素子21を直列接続した蓄電部20は、回路部40に実装された監視回路によって中間電位を検出し、これを監視することができる。例えば、蓄電素子21にリチウムイオン電池を使用する場合は、各蓄電素子21の電圧を監視することが好ましい。このため、各バスバー24は、回路部40と個別に配線されている。
【0079】
また、蓄電素子21の温度を検出することも望ましい。このため、
図9に示すように、温度センサ78を蓄電素子21と熱伝導状態に接続している。また、バスバー24の温度を検出することで、蓄電素子21の温度に代用することもできる。この構成であれば、特に円筒形の蓄電素子21を使用する場合には、円筒形の側面よりも平板状のバスバー24を利用して温度センサ78を接続できることから、接続が容易となって好ましい。さらに監視回路は、蓄電部20の電流も監視している。
【0080】
また、蓄電素子組21aを、2つの蓄電素子21を長手方向に接続して構成することで、蓄電素子21同士の間に挟まれた蓄電素子21が存在することをなくし、各蓄電素子21の端面の一方が必ず、他の蓄電素子21の存在しない開放面となるので、この面からの放熱性を確保できる。
【0081】
蓄電部20は、その総電圧を鉛バッテリ10の総電圧と並列に接続している。具体的には、蓄電部20は、直列に接続されている複数の蓄電素子21の総電圧を出力する正負の端子部44を内ケース22の上面に形成している。正負の端子部44は、正極側の端子部44+と負極側の端子部44−で構成され、それぞれ並列ライン14+、14−を介して、鉛バッテリ10の正負の出力端子12に接続されている。これにより、鉛バッテリ10と蓄電部20とが並列接続されるようになっている。
【0082】
また、蓄電部20の端子部44を設けた面と、鉛バッテリ10の出力端子12を設けた面とが、同一面側となるように、鉛バッテリ10と蓄電部20の姿勢をケース30内で配置させることにより、並列ライン14による鉛バッテリ10と蓄電部20との配線をより短くでき、もって並列ラインの電気抵抗による損失を低減できる。
【0083】
なお、
図7〜
図9では、蓄電部20の端子部44は、直列接続された蓄電素子21の両端に接続された出力リード23、25で構成している。出力リード23は、
図8と
図9に示すように、内ケース22の上面に沿って配置されており、一方の端部を内ケース22の上方に突出するように折曲して正極側端子部44+とすると共に、他方の端部を側面に沿って折曲して下端を蓄電素子21の電極端子に接続している。また、出力リード25は、
図9に示すように、内ケース22の側面に沿って上下方向に配置されており、下端を蓄電素子21の電極端子に接続すると共に、上端部を上面に沿って折曲し、さらに、その先端部を内ケース22の上方に突出するように折曲して負極側端子部44−としている。内ケース22の上方に突出する正極側端子部44+と負極側端子部44−は、その先端部が蓋部31の上面に沿う水平姿勢に折曲されると共に、蓋部31に開口された貫通穴38に案内されて、蓋部31の上面側に表出している。蓋部31の表面に表出する正極側端子部44+には、止ネジ49を介して接続リード48が接続され、負極側端子部44−には、止ネジ49を介して並列ライン14−が接続されている。
【0084】
また、
図9に示すように、負極側端子部44−と接続される出力リード25には、ヒューズ29や電流検出のための電流検出抵抗77であるシャント抵抗等が設けられる。さらに
図8に示すように、内ケース22の反対側の端子に固定されるバスバー24には、温度センサ78としてサーミスタが設けられている。このように温度センサ78を、発熱部材であるヒューズ29やシャント抵抗とは異なる側に設けることで、より正確な温度検出が期待できる。
【0085】
また、回路部40は、回路基板41を備える。回路基板41は一方向に延長された形状として、長手方向の側面側の一方に、端子コネクタ46を設けている。端子コネクタ46には、出力リード25に設けられる電流検出抵抗77、あるいはバスバー24に設けられる温度センサ78の信号ラインが接続される。
図7と
図8に示すように、回路部40をケース30の中心から一方の側面側に偏在させて配置する場合は、ケース30正面の端縁と近い側の側面に、端子コネクタ46を設けることが好ましい。電流検出抵抗77による電流検出は、蓄電部20の状態を監視するために重要な要素であり、より高性能な電源装置を提供するためには高い精度が要求される。この構成によると、回路部40を熱源となる蓄電部20から遠ざけた位置に配置しながら、電流センサを構成する電流検出抵抗77と接続される配線長を短くすることができる。なお、鉛バッテリ10は、多量の電解液を有しており、熱容量が蓄電部20よりも大きいため、鉛バッテリ10の方が蓄電部20より温度が相対的に低くなるようになっている。また、回路部40は、蓋部31に設けられている外部出力端子15や出力端子12に近接して配置されることが好ましい。これによって、並列ライン14や接続リード47、48で出力端子12と端子部44とを接続する配線作業や、出力ライン16と外部出力端子15とを接続する配線作業4が容易となり、また、ケース30の上面側に配置した回路部40との配線長も短くでき、さらに配線作業も容易に行えるようになる。
(内ケース22)
【0086】
内ケース22は、絶縁性に優れた材質、例えば樹脂等で形成される。内ケース22は外形を箱状に形成し、内部に蓄電素子集合体を収納できる空間を形成している。また内ケース22の主面は、角形の鉛電池セル11の電極体の主面とほぼ等しいか、これよりも小さい大きさに形成されている。これによって、蓄電部20を層状に鉛バッテリ10と積層した際にブロック状に構成でき、外形をコンパクトにできる。
【0087】
ケース30内では、その内部で鉛電池セル11と蓄電部20とが、互いに平行姿勢となるように積層する。このようにすることで、ケース30の内部に効率よく蓄電部20の収納空間を追加できる。また、この構成によれば鉛電池積層体と蓄電部20とが、互いの端面がほぼ同一平面に近づくように配置できる。
【0088】
また、内ケース22は、鉛電池セル11に近接する位置にある壁を、ケース30の内壁に近接する壁よりも熱伝導性を向上させる構成とすることが好ましい。具体的には、材質を異ならせたり、壁の厚さを異ならせたりすることで、実現できる。上述の通り、鉛バッテリは、蓄電部よりも低温になるため、この構成とすることで、蓄電部の発熱を鉛バッテリの電解液を介して冷却することができる。
【0089】
内ケース22には、
図8に示すように複数箇所に開口窓26を設けてもよい。開口窓26から蓄電素子21を部分的に表出させることで、蓄電素子21の放熱性を高めることができる。
(蓄電部20の位置)
【0090】
以上の電源装置100は、平面状の蓄電部20を鉛電池セル11とケース30に収納する際は、
図7と
図8に示すように、鉛バッテリ10の端面に配置される。この構造の電源装置を、車両のエンジンルーム内に配置する状態を考える。通常、車両のエンジンルームには車載用12V鉛バッテリを配置するためのスペースが設けられているため、この位置に配置することで、通常の鉛バッテリに加えて、蓄電部20も同時に設置できる。この際、
図11の模式平面図に示すように、電源装置100を車両本体91のエンジンルーム95内に配置した状態で、蓄電部20が、エンジン96の位置から見て遠い側に配置される姿勢で固定することが好ましい。これによって、蓄電部20がエンジン96の発熱に直接晒されることを避け、蓄電部20をエンジンの発熱から保護できる。
【0091】
さらに、
図2に示すように、鉛バッテリ10と蓄電部20とを互いに分離して車内に配置する構成においては、蓄電部20を車両のキャビン94やトランクルームに配置することができるので、蓄電部20における熱による弊害を低減できる。とくに、蓄電部の蓄電素子をリチウムイオン電池とする構成においては、蓄電部を熱の影響を受けにくい車両のキャビンやトランクルームに配置することで、熱による悪影響を理想的に低減できる。