特許第6124336号(P6124336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6124336
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】給電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20170424BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   H02J50/12
   H02J7/00 301D
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-123810(P2013-123810)
(22)【出願日】2013年6月12日
(65)【公開番号】特開2014-241698(P2014-241698A)
(43)【公開日】2014年12月25日
【審査請求日】2016年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091281
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】村井 敏昭
(72)【発明者】
【氏名】萩原 善泰
(72)【発明者】
【氏名】澤田 理
(72)【発明者】
【氏名】鳶川 雅之
(72)【発明者】
【氏名】市瀬 彩子
(72)【発明者】
【氏名】玉手 道雄
(72)【発明者】
【氏名】丸山 宏二
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 与貴
【審査官】 木村 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−253964(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/024396(WO,A1)
【文献】 特開2012−143135(JP,A)
【文献】 特開2012−019603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00− 7/12、 7/34− 7/36
50/00−50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部との磁気結合により電力を授受する受電コイルと、
前記受電コイルの一端が、前記受電コイルと共に共振回路を構成する共振コンデンサを介して一方の交流端子に接続され、かつ、前記受電コイルの他端が他方の交流端子に接続されたブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路の直流端子間に接続された平滑コンデンサと、を備え、
前記平滑コンデンサの両端に負荷が接続されると共に、
前記ブリッジ回路が、半導体スイッチとダイオードとの逆並列接続回路を2個直列に接続したスイッチングアーム直列回路を少なくとも一相分、備えた給電装置において、
前記受電コイルを流れる入力電流を検出する電流検出手段と、
前記ブリッジ回路の直流端子間電圧を検出する電圧検出手段と、
前記半導体スイッチをスイッチングする制御手段と、を有し、
前記制御手段は、
前記ブリッジ回路の交流端子間電圧が、
前記入力電流の一周期内の一方のゼロクロス点から、前記共振回路に加わる電圧と前記受電コイルの誘起電圧とから算出した補償期間をずらした点を中心として、その前後に、前記補償期間と前記共振回路に加わる電圧とに基づいて算出した同一期間だけ零電圧となり、その他の期間は前記直流端子間電圧を波高値とする正負電圧になるように前記半導体スイッチをスイッチングすることを特徴とする給電装置。
【請求項2】
外部との磁気結合により電力を授受する受電コイルと、
前記受電コイルの一端が、前記受電コイルと共に共振回路を構成する共振コンデンサを介して一方の交流端子に接続され、かつ、前記受電コイルの他端が他方の交流端子に接続されたブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路の直流端子間に接続された平滑コンデンサと、を備え、
前記平滑コンデンサの両端に負荷が接続されると共に、
前記ブリッジ回路が、半導体スイッチとダイオードとの逆並列接続回路と、ダイオードとの直列回路を、複数、並列に接続して構成される給電装置において、
前記受電コイルを流れる入力電流を検出する電流検出手段と、
前記ブリッジ回路の直流端子間電圧を検出する電圧検出手段と、
前記半導体スイッチをスイッチングする制御手段と、を有し、
前記制御手段は、
前記ブリッジ回路の交流端子間電圧が、
前記入力電流の一周期内の一方のゼロクロス点から、前記共振回路に加わる電圧と前記受電コイルの誘起電圧とから算出した補償期間をずらした点を中心として、その前後に、前記補償期間と前記共振回路に加わる電圧とに基づいて算出した同一期間だけ零電圧となり、その他の期間は前記直流端子間電圧を波高値とする正負電圧になるように前記半導体スイッチをスイッチングすることを特徴とする給電装置。
【請求項3】
外部との磁気結合により電力を授受する受電コイルと、
前記受電コイルの一端が、前記受電コイルと共に共振回路を構成する共振コンデンサを介して一方の交流端子に接続され、かつ、前記受電コイルの他端が他方の交流端子に接続されたブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路の直流端子間に接続された平滑コンデンサと、を備え、
前記平滑コンデンサの両端に負荷が接続されると共に、
前記ブリッジ回路が、半導体スイッチとダイオードとの逆並列接続回路を2個直列に接続したスイッチングアーム直列回路を少なくとも一相分、備えた給電装置において、
前記受電コイルを流れる入力電流を検出する電流検出手段と、
前記ブリッジ回路の直流端子間電圧を検出する電圧検出手段と、
前記半導体スイッチをスイッチングする制御手段と、を有し、
前記制御手段は、 前記ブリッジ回路の交流端子間電圧が、
前記入力電流の一周期内のそれぞれのゼロクロス点から、前記共振回路に加わる電圧と前記受電コイルの誘起電圧とから算出した補償期間をずらした点を中心として、その前後に、前記補償期間と前記共振回路に加わる電圧とに基づいて算出した同一期間だけ零電圧となり、その他の期間は前記直流端子間電圧を波高値とする正負電圧になるように前記半導体スイッチをスイッチングすることを特徴とする給電装置。
【請求項4】
外部との磁気結合により電力を授受する受電コイルと、
前記受電コイルの一端が、前記受電コイルと共に共振回路を構成する共振コンデンサを介して一方の交流端子に接続され、かつ、前記受電コイルの他端が他方の交流端子に接続されたブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路の直流端子間に接続された平滑コンデンサと、を備え、
前記平滑コンデンサの両端に負荷が接続されると共に、
前記ブリッジ回路が、半導体スイッチとダイオードとの逆並列接続回路と、ダイオードとの直列回路を、複数、並列に接続して構成される給電装置において、
前記受電コイルを流れる入力電流を検出する電流検出手段と、
前記ブリッジ回路の直流端子間電圧を検出する電圧検出手段と、
前記半導体スイッチをスイッチングする制御手段と、を有し、
前記制御手段は、
前記ブリッジ回路の交流端子間電圧が、
前記入力電流の一周期内のそれぞれのゼロクロス点から、前記共振回路に加わる電圧と前記受電コイルの誘起電圧とから算出した補償期間をずらした点を中心として、その前後に、前記補償期間と前記共振回路に加わる電圧とに基づいて算出した同一期間だけ零電圧となり、その他の期間は前記直流端子間電圧を波高値とする正負電圧になるように前記半導体スイッチをスイッチングすることを特徴とする給電装置。
【請求項5】
外部との磁気結合により電力を授受する受電コイルと、
前記受電コイルの一端が、前記受電コイルと共に共振回路を構成する共振コンデンサを介して一方の交流端子に接続され、かつ、前記受電コイルの他端が他方の交流端子に接続されたブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路の直流端子間に接続された平滑コンデンサと、を備え、
前記平滑コンデンサの両端に負荷が接続されると共に、
前記ブリッジ回路が、半導体スイッチとダイオードとの逆並列接続回路を2個直列に接続したスイッチングアーム直列回路を少なくとも一相分、備えた給電装置において、
前記受電コイルを流れる入力電流を検出する電流検出手段と、
前記ブリッジ回路の直流端子間電圧を検出する電圧検出手段と、
前記半導体スイッチをスイッチングする制御手段と、を有し、
前記制御手段は、
前記ブリッジ回路の交流端子間電圧が、
前記入力電流の一周期内のそれぞれのゼロクロス点から、前記共振回路に加わる電圧と前記受電コイルの誘起電圧とから算出した補償期間をずらした点を中心として、前後に同じ期間だけ前記直流端子間電圧を波高値とする正負電圧となり、その他の期間は零電圧になるように前記半導体スイッチをスイッチングすることを特徴とする給電装置。
【請求項6】
外部との磁気結合により電力を授受する受電コイルと、
前記受電コイルの一端が、前記受電コイルと共に共振回路を構成する共振コンデンサを介して一方の交流端子に接続され、かつ、前記受電コイルの他端が他方の交流端子に接続されたブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路の直流端子間に接続された平滑コンデンサと、を備え、
前記平滑コンデンサの両端に負荷が接続されると共に、
前記ブリッジ回路が、半導体スイッチとダイオードとの逆並列接続回路と、ダイオードとの直列回路を、複数、並列に接続して構成される給電装置において、 前記受電コイルを流れる入力電流を検出する電流検出手段と、
前記ブリッジ回路の直流端子間電圧を検出する電圧検出手段と、
前記半導体スイッチをスイッチングする制御手段と、を有し、
前記制御手段は、
前記ブリッジ回路の交流端子間電圧が、
前記入力電流の一周期内のそれぞれのゼロクロス点から、前記共振回路に加わる電圧と前記受電コイルの誘起電圧とから算出した補償期間をずらした点を中心として、前後に同じ期間だけ前記直流端子間電圧を波高値とする正負電圧となり、その他の期間は零電圧になるように前記半導体スイッチをスイッチングすることを特徴とする給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル相互間の磁気結合を利用して負荷に電力を供給する給電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導によるコイル相互間の磁気結合を利用して負荷に電力を供給する方法として、例えば非接触給電が挙げられる。その原理は、複数のコイルを、空間を介して磁気的に結合することによっていわばトランスを形成し、前記コイル間の電磁誘導を利用して電力を授受するものである。
例えば、電力供給源に相当する一次側コイルを給電線としてレール状に配置し、二次側コイル及び受電回路を一体化して移動体を構成すると共に、一次側コイルと二次側コイルとを対向させることにより、前記給電線に沿って移動する移動体に非接触給電することが可能である。
【0003】
ここで、図28は、特許文献1に記載された非接触給電装置を示している。図28において、高周波電源100の両端には、コイルとしての一次側給電線110が接続されている。一次側給電線110には受電コイル120が磁気的に結合しており、一次側給電線110と受電コイル120とは一種のトランスを構成している。
受電コイル120の両端は、共振コンデンサCを介して全波整流回路10の一対の交流端子に接続されている。なお、受電コイル120と共振コンデンサCとは、直列共振回路を構成している。
【0004】
全波整流回路10は、ダイオードD,D,D,Dをブリッジ接続して構成されている。
全波整流回路10の一対の直流端子には、全波整流回路10の直流出力電圧が基準電圧値に等しくなるように制御する定電圧制御回路20が接続されている。この定電圧制御回路20は、例えば、リアクトルL、ダイオードD、平滑コンデンサC及び半導体スイッチSWからなる昇圧チョッパ回路により構成されており、平滑コンデンサCの両端には負荷Rが接続されている。
なお、図28では、半導体スイッチSWをスイッチングするための制御装置を省略してある。
【0005】
図28の従来技術では、高周波電源100により一次側給電線110に高周波電流を流し、受電コイル120を介して供給された高周波電力を全波整流回路10に入力して直流電力に変換している。
一般に、この種の非接触給電装置では、一次側給電線110と受電コイル120との間のギャップ長の変化や両者の位置ズレにより、受電コイル120に誘起される電圧が変化し、これによって全波整流回路10の直流出力電圧が変動する。また、負荷Rの特性も、全波整流回路10の直流出力電圧が変動する原因となる。
このため、図28の従来技術では、全波整流回路10の直流出力電圧を定電圧制御回路20によって一定値に制御している。
【0006】
非接触給電装置では、コイルを介して供給される電流の周波数が高いほど、電力伝送を行うために必要な励磁インダクタンスは小さくてよく、コイルやその周辺に配置するコアを小型化できる。しかし、高周波電源装置や受電回路を構成する電力変換器では、回路を流れる電流の周波数が高いほど半導体スイッチのスイッチング損失が増大して給電効率が低下するため、非接触給電される電力の周波数は数[kHz]〜数十[kHz]に設定するのが一般的である。
【0007】
図28に示した非接触給電装置、特に、共振コンデンサCの後段の受電回路には、以下の問題点がある。
(1)受電回路が全波整流回路10及び定電圧制御回路20によって構成されているため、回路全体が大型化し、設置スペースの増大やコストの増加を招く。
(2)全波整流回路10のダイオードD,D,D,Dに加え、定電圧制御回路20のリアクトルL、半導体スイッチSW、ダイオードDでも損失が発生するため、これらの損失が給電効率の低下要因となっている。
【0008】
上記の問題点を解決する従来技術として、特許文献2に記載された非接触給電装置及びその制御方法が発明者らによって既に提案されている。
図29は、特許文献2に記載された非接触給電装置を示している。
図29において、310は受電回路である。この受電回路310は、ブリッジ接続された半導体スイッチQ,Q,Q,Qと、各スイッチQ,Q,Q,Qにそれぞれ逆並列に接続されたダイオードD,D,D,Dと、下アームのスイッチQ,Qにそれぞれ並列に接続されたコンデンサC,Cと、これらの素子からなるブリッジ回路(フルブリッジインバータ)の直流端子間に接続された平滑コンデンサCと、を備えている。ブリッジ回路の交流端子間には、共振コンデンサCと受電コイル120との直列回路が接続され、平滑コンデンサCの両端には負荷Rが接続されている。
【0009】
200は、半導体スイッチQ,Q,Q,Qをスイッチングするための駆動信号を生成する制御装置である。この制御装置200は、電流検出手段CTにより検出した受電コイル120の電流iと受電回路310の直流端子間電圧(直流出力電圧)Vとに基づいて、前記駆動信号を生成する。
【0010】
この非接触給電装置において、半導体スイッチQ,Q,Q,Qを制御することにより、ブリッジ回路の交流端子間電圧vは、直流端子間電圧Vを波高値とする正負電圧に制御される。一次側給電線110から受電回路310への給電電力は、受電コイル120の電流iと交流端子間電圧vとの積であり、制御装置200が、直流端子間電圧Vに基づいて半導体スイッチQ,Q,Q,Qの駆動信号の位相を調整することで、給電電力の制御、すなわち直流端子間電圧Vの一定制御が可能となる。
【0011】
また、受電回路310をスイッチQ,Q,Q,Q及びダイオードD,D,D,Dからなるブリッジ回路によって構成することで、負荷Rが回生負荷の場合でも電力を一定に保つ動作が可能である。
この非接触給電装置によれば、図28の従来技術のように定電圧制御回路を用いることなく、半導体スイッチQ,Q,Q,Qの駆動信号の位相制御により直流端子間電圧Vを一定に制御することができる。また、受電回路310をブリッジ回路及び平滑コンデンサCのみによって構成可能であるため、回路構成の簡略化、小型化、低コスト化を図ることができると共に、構成部品数を少なくして損失を低減し、高効率で安定した非接触給電が可能である。加えて、コンデンサC,Cの充放電作用により、いわゆるソフトスイッチングを行わせ、スイッチング損失を低減して更なる高効率化を可能にしている。
【0012】
しかしながら、特許文献2に記載された従来技術では、受電コイル120の電流iが交流端子間電圧vの基本波成分に対して進み位相となるため、受電回路310の入力力率が低下するという問題があり、これが装置全体の損失の増加を招き、更なる小型化を阻む要因となっている。
そこで、出願人は、特願2013−071432号(以下、先願という)として、受電回路の入力力率を改善した非接触給電装置(以下、先願発明という)を既に提案している。
【0013】
図30は、先願発明の回路図である。
図30において、受電回路320は、ブリッジ接続されたスイッチQ,Q,Q,Qと、各スイッチQ,Q,Q,Qにそれぞれ逆並列に接続されたダイオードD,D,D,Dと、これらの素子からなるブリッジ回路の一対の直流端子間に接続された平滑コンデンサCと、を備えている。ブリッジ回路の一対の交流端子間には、共振コンデンサCと受電コイル120との直列回路が接続され、平滑コンデンサCの両端には負荷Rが接続されている。なお、100は高周波電源、110は一次側給電線である。
一方、制御装置200は、直流端子間電圧Vと、電流検出手段CTにより検出した受電コイル120の電流iとに基づいて、スイッチQ,Q,Q,Qの駆動信号を生成し、出力する。図示されていないが、直流端子間電圧Vは直流電圧検出器等の周知の電圧検出手段により検出される。
【0014】
次に、図30において、受電コイル120から負荷Rに電力を供給する場合の動作を説明する。
図31は、受電コイル120の電流i、ブリッジ回路の交流端子間電圧v、その基本波成分v’、及び、スイッチQ,Q,Q,Qの駆動信号を示しており、スイッチQ,Q,Q,Qは、電流iに同期した一定周波数にてスイッチング動作する。図31において、ZCP’は電流iのゼロクロス点を示す。
以下に、図31の各期間(1)〜(4)における動作を説明する。
【0015】
(1)期間(1)(スイッチQ,Qをオン):電流iは、共振コンデンサC→ダイオードD→平滑コンデンサC→ダイオードD→受電コイル120の経路で流れ、電圧vは、図示のように直流端子間電圧Vに相当する正電圧レベルとなる。この期間では、電流iにより平滑コンデンサCが充電される。
(2)期間(2)(スイッチQ,Qをオン):電流iは、共振コンデンサC→スイッチQ→ダイオードD→受電コイル120の経路で流れ、電圧vは、図示のように零電圧レベルとなる。
(3)期間(3)(スイッチQ,Qをオン):電流iは、共振コンデンサC→受電コイル120→ダイオードD→スイッチQの経路で流れ、電圧vは、図示のように零電圧レベルとなる。
(4)期間(4)(スイッチQ,Qをオン):電流iは、共振コンデンサC→受電コイル120→ダイオードD→平滑コンデンサC→ダイオードDの経路で流れ、電圧vは、図示のように直流端子間電圧Vに相当する負電圧レベルとなる。この期間では、電流iにより平滑コンデンサCが充電される。
これ以降は、期間(1)のスイッチングモードに遷移し、同様の動作が繰り返される。
【0016】
図31から明らかなように、先願発明によれば、制御装置200が半導体スイッチQ,Q,Q,Qをスイッチング制御することで、ブリッジ回路の交流端子間電圧vは、受電コイル120を流れる電流iの一方のゼロクロス点ZCP’の前後の期間αだけ零電圧となり、その他の期間は直流端子間電圧Vを波高値とする正負電圧となるように制御される。一次側給電線110から受電回路320への給電電力は電流iと電圧vとの積であり、制御装置200が、直流端子間電圧Vの検出値に基づいてスイッチQ,Q,Q,Qの駆動信号を調整することで、給電電力の制御、すなわち直流端子間電圧Vの一定制御が可能になる。
このとき、図31に示すように、受電コイル120を流れる電流iとブリッジ回路の交流端子間電圧vの基本波成分v’との位相差は0°になるので、受電回路320の入力力率を1にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2002-354711号公報(段落[0028]〜[0031],[0041]〜[0045]、図1図6等)
【特許文献2】特開2012−125138号公報(段落[0015]〜[0027]、図1図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
先願発明では、受電コイル120及び共振コンデンサCによる共振周波数が電源周波数と完全に一致している場合には受電回路320の入力力率が1となるが、共振周波数が電源周波数からずれると、受電回路320の入力力率は低下する。その理由を、以下に説明する。
【0019】
図32は、受電コイル120及び共振コンデンサCによる共振周波数が電源周波数からずれている場合の、受電回路320の入力側等価回路を示している。図32では、受電コイル120に誘起される電圧vinを交流電源として表してあり、また、符号400は、受電回路320と負荷Rとに相当するインピーダンスを示している。但し、一般的に、負荷Rに対してその他のインピーダンスは無視できるため、符号400は負荷Rに相当する純抵抗とみなすことができる。
更に、図33は受電コイル120を流れる電流i、受電コイル120の誘起電圧vin、ブリッジ回路の交流端子間電圧v及びその基本波成分v’の動作波形を示している。
図32に示すように、受電コイル120のインダクタンスをL[H]、共振コンデンサCのキャパシタンスを部品の符号と同様にC[F]とし、更に、電源周波数をf[Hz]とした場合、インダクタンスLと共振コンデンサCとの合成インダクタンスL[H]は数式1により定義される。
【数1】
【0020】
一方、受電コイル120及び共振コンデンサCからなる共振回路の共振周波数は、数式2によって表される。
【数2】
従って、f=fのときL=0,f≠fのときL≠0となる。
また、図31に示した制御方法によれば、v’の位相はiと一致している。このため、受電コイル120の電流iがIsinωtと表されるとき、v’はV’sinωtと表すことができる。
【0021】
これに対し、vinは、図32によりvの基本波成分v’とvとの和によって表され、数式3のようになる。
【数3】
=0の場合にはvin=V’sinωtとなり、vinとi(=Isinωt)との位相差θは0になって受電回路320の入力力率は1となる。しかし、L≠0の場合には、図33に示すようにvinとiとは位相差θを持つため、入力力率は低下することとなる。
【0022】
そこで、本発明の解決課題は、L≠0、すなわち受電コイル及び共振コンデンサによって構成される共振回路の共振周波数が電源周波数と一致していない場合にも、受電回路の入力力率を向上させて装置全体の損失を抑え、小型化及び低コスト化を可能とした給電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、外部との磁気結合により電力を授受する受電コイルと、
前記受電コイルの一端が、前記受電コイルと共に共振回路を構成する共振コンデンサを介して一方の交流端子に接続され、かつ、前記受電コイルの他端が他方の交流端子に接続されたブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路の直流端子間に接続された平滑コンデンサと、を備え、
前記平滑コンデンサの両端に負荷が接続されると共に、
前記ブリッジ回路が、半導体スイッチとダイオードとの逆並列接続回路を2個直列に接続したスイッチングアーム直列回路を少なくとも一相分、備えた給電装置において、
前記受電コイルを流れる入力電流を検出する電流検出手段と、
前記ブリッジ回路の直流端子間電圧を検出する電圧検出手段と、
前記半導体スイッチをスイッチングする制御手段と、を有し、
前記制御手段は、
前記ブリッジ回路の交流端子間電圧が、
前記入力電流の一周期内の一方のゼロクロス点から、前記共振回路に加わる電圧と前記受電コイルの誘起電圧とから算出した補償期間をずらした点を中心として、その前後に、前記補償期間と前記共振回路に加わる電圧とに基づいて算出した同一期間だけ零電圧となり、その他の期間は前記直流端子間電圧を波高値とする正負電圧になるように前記半導体スイッチをスイッチングするものである。
【0024】
請求項2に係る発明は、外部との磁気結合により電力を授受する受電コイルと、
前記受電コイルの一端が、前記受電コイルと共に共振回路を構成する共振コンデンサを介して一方の交流端子に接続され、かつ、前記受電コイルの他端が他方の交流端子に接続されたブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路の直流端子間に接続された平滑コンデンサと、を備え、
前記平滑コンデンサの両端に負荷が接続されると共に、
前記ブリッジ回路が、半導体スイッチとダイオードとの逆並列接続回路と、ダイオードとの直列回路を、複数、並列に接続して構成される給電装置において、
前記受電コイルを流れる入力電流を検出する電流検出手段と、
前記ブリッジ回路の直流端子間電圧を検出する電圧検出手段と、
前記半導体スイッチをスイッチングする制御手段と、を有し、
前記制御手段は、
前記ブリッジ回路の交流端子間電圧が、
前記入力電流の一周期内の一方のゼロクロス点から、前記共振回路に加わる電圧と前記受電コイルの誘起電圧とから算出した補償期間をずらした点を中心として、その前後に、前記補償期間と前記共振回路に加わる電圧とに基づいて算出した同一期間だけ零電圧となり、その他の期間は前記直流端子間電圧を波高値とする正負電圧になるように前記半導体スイッチをスイッチングするものである。
【0025】
請求項3に係る発明は、外部との磁気結合により電力を授受する受電コイルと、
前記受電コイルの一端が、前記受電コイルと共に共振回路を構成する共振コンデンサを介して一方の交流端子に接続され、かつ、前記受電コイルの他端が他方の交流端子に接続されたブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路の直流端子間に接続された平滑コンデンサと、を備え、
前記平滑コンデンサの両端に負荷が接続されると共に、
前記ブリッジ回路が、半導体スイッチとダイオードとの逆並列接続回路を2個直列に接続したスイッチングアーム直列回路を少なくとも一相分、備えた給電装置において、
前記受電コイルを流れる入力電流を検出する電流検出手段と、
前記ブリッジ回路の直流端子間電圧を検出する電圧検出手段と、
前記半導体スイッチをスイッチングする制御手段と、を有し、
前記制御手段は、
前記ブリッジ回路の交流端子間電圧が、
前記入力電流の一周期内のそれぞれのゼロクロス点から、前記共振回路に加わる電圧と前記受電コイルの誘起電圧とから算出した補償期間をずらした点を中心として、その前後に、前記補償期間と前記共振回路に加わる電圧とに基づいて算出した同一期間だけ零電圧となり、その他の期間は前記直流端子間電圧を波高値とする正負電圧になるように前記半導体スイッチをスイッチングするものである。
【0026】
請求項4に係る発明は、外部との磁気結合により電力を授受する受電コイルと、
前記受電コイルの一端が、前記受電コイルと共に共振回路を構成する共振コンデンサを介して一方の交流端子に接続され、かつ、前記受電コイルの他端が他方の交流端子に接続されたブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路の直流端子間に接続された平滑コンデンサと、を備え、
前記平滑コンデンサの両端に負荷が接続されると共に、
前記ブリッジ回路が、半導体スイッチとダイオードとの逆並列接続回路と、ダイオードとの直列回路を、複数、並列に接続して構成される給電装置において、
前記受電コイルを流れる入力電流を検出する電流検出手段と、
前記ブリッジ回路の直流端子間電圧を検出する電圧検出手段と、
前記半導体スイッチをスイッチングする制御手段と、を有し、
前記制御手段は、
前記ブリッジ回路の交流端子間電圧が、
前記入力電流の一周期内のそれぞれのゼロクロス点から、前記共振回路に加わる電圧と 前記受電コイルの誘起電圧とから算出した補償期間をずらした点を中心として、その前後に、前記補償期間と前記共振回路に加わる電圧とに基づいて算出した同一期間だけ零電圧となり、その他の期間は前記直流端子間電圧を波高値とする正負電圧になるように前記半導体スイッチをスイッチングするものである。
【0027】
請求項5に係る発明は、外部との磁気結合により電力を授受する受電コイルと、
前記受電コイルの一端が、前記受電コイルと共に共振回路を構成する共振コンデンサを介して一方の交流端子に接続され、かつ、前記受電コイルの他端が他方の交流端子に接続されたブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路の直流端子間に接続された平滑コンデンサと、を備え、
前記平滑コンデンサの両端に負荷が接続されると共に、
前記ブリッジ回路が、半導体スイッチとダイオードとの逆並列接続回路を2個直列に接続したスイッチングアーム直列回路を少なくとも一相分、備えた給電装置において、
前記受電コイルを流れる入力電流を検出する電流検出手段と、
前記ブリッジ回路の直流端子間電圧を検出する電圧検出手段と、
前記半導体スイッチをスイッチングする制御手段と、を有し、
前記制御手段は、
前記ブリッジ回路の交流端子間電圧が、
前記入力電流の一周期内のそれぞれのゼロクロス点から、前記共振回路に加わる電圧と前記受電コイルの誘起電圧とから算出した補償期間をずらした点を中心として、前後に同じ期間だけ前記直流端子間電圧を波高値とする正負電圧となり、その他の期間は零電圧になるように前記半導体スイッチをスイッチングするものである。
【0028】
請求項6に係る発明は、外部との磁気結合により電力を授受する受電コイルと、
前記受電コイルの一端が、前記受電コイルと共に共振回路を構成する共振コンデンサを介して一方の交流端子に接続され、かつ、前記受電コイルの他端が他方の交流端子に接続されたブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路の直流端子間に接続された平滑コンデンサと、を備え、
前記平滑コンデンサの両端に負荷が接続されると共に、
前記ブリッジ回路が、半導体スイッチとダイオードとの逆並列接続回路と、ダイオードとの直列回路を、複数、並列に接続して構成される給電装置において、
前記受電コイルを流れる入力電流を検出する電流検出手段と、
前記ブリッジ回路の直流端子間電圧を検出する電圧検出手段と、
前記半導体スイッチをスイッチングする制御手段と、を有し、
前記制御手段は、
前記ブリッジ回路の交流端子間電圧が、
前記入力電流の一周期内のそれぞれのゼロクロス点から、前記共振回路に加わる電圧と前記受電コイルの誘起電圧とから算出した補償期間をずらした点を中心として、前後に同じ期間だけ前記直流端子間電圧を波高値とする正負電圧となり、その他の期間は零電圧になるように前記半導体スイッチをスイッチングするものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、共振回路の共振周波数が電源周波数と一致していない場合でも、受電回路の入力力率を向上させて装置全体の損失を抑え、給電装置の小型化、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1実施形態を示す給電装置の回路図である。
図2図1の給電装置を対象とした第1実施例の動作波形図である。
図3図1における受電回路の入力側等価回路図である。
図4図1の給電装置を対象とした第1実施例の動作波形図である。
図5】本発明の第2実施形態を示す給電装置の回路図である。
図6図5の給電装置を対象とした第1実施例の動作波形図である。
図7図5の給電装置を対象とした第1実施例の動作波形図である。
図8図5の給電装置を対象とした第1実施例の動作波形図である。
図9図5の給電装置を対象とした第1実施例の動作波形図である。
図10】本発明の第3実施形態を示す給電装置の回路図である。
図11図10の給電装置を対象とした第1実施例の動作波形図である。
図12図10の給電装置を対象とした第1実施例の動作波形図である。
図13図10の給電装置を対象とした第1実施例の動作波形図である。
図14図10の給電装置を対象とした第1実施例の動作波形図である。
図15図1の給電装置を対象とした第2実施例の動作波形図である。
図16図1の給電装置を対象とした第2実施例の動作波形図である。
図17】本発明の第4実施形態を示す給電装置の回路図である。
図18図17の給電装置を対象とした第2実施例の動作波形図である。
図19図17の給電装置を対象とした第2実施例の動作波形図である。
図20図10の給電装置を対象とした第2実施例の動作波形図である。
図21図10の給電装置を対象とした第2実施例の動作波形図である。
図22図1の給電装置を対象とした第3実施例の動作波形図である。
図23図1の給電装置を対象とした第3実施例の動作波形図である。
図24図17の給電装置を対象とした第3実施例の動作波形図である。
図25図17の給電装置を対象とした第3実施例の動作波形図である。
図26図10の給電装置を対象とした第3実施例の動作波形図である。
図27図10の給電装置を対象とした第3実施例の動作波形図である。
図28】特許文献1に記載された従来技術の回路図である。
図29】特許文献2に記載された従来技術の回路図である。
図30】先願発明の回路図である。
図31図30に示した先願発明の動作説明図である。
図32図30に示した受電回路の入力側等価回路図である。
図33図30に示した先願発明の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態を示す給電装置の回路図である。なお、本発明は、非接触型、接触型の給電装置の何れにも適用可能であるが、以下の各実施形態では、本発明を非接触給電装置に適用した場合について説明する。
【0032】
図1に示す非接触給電装置は、図30と同様に構成されている。すなわち、受電回路320は、ブリッジ接続された半導体スイッチQ,Q,Q,Qと、各スイッチにそれぞれ逆並列に接続されたダイオードD,D,D,Dと、これらの素子からなるブリッジ回路の直流端子間に接続された平滑コンデンサCと、を備えている。ブリッジ回路の交流端子間には、共振コンデンサCと受電コイル120との直列回路が接続され、平滑コンデンサCの両端には負荷Rが接続されている。なお、100は高周波電源、110は一次側給電線である。
一方、制御装置200は、直流端子間電圧Vと、電流検出手段CTにより検出した受電コイル120の電流iとに基づいて、スイッチQ,Q,Q,Qの駆動信号を生成し、出力する。
【0033】
次に、図2図3に基づいて、請求項1に対応する第1実施例の力率改善作用について説明する。
図2は、図1の受電コイル120を流れる電流i、受電コイル120の誘起電圧vin、ブリッジ回路の交流端子間電圧v及びその基本波成分v’の動作波形と、スイッチQ,Q,Q,Qの駆動信号を示している。
また、図3はこのときの受電回路320の入力側等価回路であり、前記同様に、符号400は受電回路320と負荷Rとに相当するインピーダンスを示している。但し、一般的に、負荷Rに対してその他のインピーダンスは無視できるため、符号400は負荷Rに相当する純抵抗とみなすことができる。
【0034】
この実施例では、受電回路320の入力力率を改善するために、vの波高値が零となる期間の中点が電流iの一周期内の一方のゼロクロス点ZCPから補償期間(角度)βだけずれるように、制御装置200がスイッチQ,Q,Q,Qに駆動信号を与える。この駆動信号により、vの波形は、前記中点の前後の期間(それぞれαとする)は零電圧、その他の期間は直流端子間電圧Vを波高値とする正負電圧になり、iのゼロクロス点ZCPを中心として非対称な波形となる。よって、v’の位相はiの位相とずれる。このとき、図3に示すように、v’の容量性リアクタンス成分401による電圧降下がLにおける電圧降下vを補償するようにβを与えると、回路のインピーダンスは見かけ上、純抵抗のみとなる。よって、iとvinとの位相が一致するため、受電回路320の入力力率を1にすることができる。
【0035】
次に、入力力率を1にするための期間βの求め方を説明する。
まず、v’は、フーリエ級数展開により数式4のように表される。
【数4】
図2より、数式4におけるa,bはそれぞれ数式5,6のように求められる。
【数5】
【数6】
【0036】
一方、図3より、v’は数式7のように表すこともできる。
【数7】
【0037】
入力力率を1にするとき、iとvinとの位相は一致するため、iin(ωt)=Iinsin(ωt)と考えると、vin(ωt)=Vinsin(ωt)となる。従って、数式7は数式8のように表すことができる。
【数8】
【0038】
=ωLIとおくと、数式4〜6,8より、数式9,10が成り立つ。
【数9】
【数10】
【0039】
従って、入力力率を1にするときのβ及びαは、それぞれ数式11,12により求められる。
【数11】
【数12】
【0040】
すなわち、電源周波数と共振周波数とが一致せずにL≠0である場合にも、制御装置200が数式11,12によるα,βを用いて演算した駆動信号によりスイッチQ,Q,Q,Qを駆動すれば、受電回路320の入力力率を1にする制御を行うことができる。
なお、配線インダクタンスが大きい場合など、他のインピーダンスの影響が大きく、図3における符号400を純抵抗と見なせない場合には、符号400に含まれるリアクタンス分も補償するように期間βを与えることで、入力力率を1とすることができる。このように符号400を純抵抗と見なせない場合の期間βの与え方については、他の第2実施例、第3実施例においても同様である。
また、vの波形が図2と同じであれば、スイッチQ,Q,Q,Qの駆動信号を例えば図4のようにした場合でも、数式11,12のα,βを適用してスイッチQ,Q,Q,Qを駆動すれば、受電回路320の入力力率を1にすることができる。
【0041】
次に、図5は本発明の第2実施形態を示す回路図であり、この非接触給電装置についても、請求項1に対応する第1実施例によって受電回路330の入力力率を1にする制御を行うことができる。
図5における受電回路330は、半導体スイッチQにダイオードDを逆並列接続したスイッチングアームと、半導体スイッチQにダイオードDを逆並列接続したスイッチングアームとを直列に接続したスイッチングアーム直列回路を備え、このスイッチングアーム直列回路と、ダイオードD,Dを直列接続したダイオード直列回路とを並列接続することにより、ブリッジ回路を構成している。また、ブリッジ回路の一方の直流端子(正側直流端子)にはダイオードDのアノードが接続され、ダイオードDのカソードとブリッジ回路の他方の直流端子(負側直流端子)との間に平滑コンデンサCが接続されている。その他の部分は図1と同様である。
【0042】
図6図9は、図5の受電コイル120を流れる電流i、受電コイル120の誘起電圧vin、ブリッジ回路の交流端子間電圧v及びその基本波成分v’の動作波形と、スイッチQ,Qの駆動信号とを示している。
図5の非接触給電装置において、vの波形が図2と同じであれば、スイッチQ,Qの駆動信号を例えば図6図9のようにした場合でも、数式11,12のα,βを適用してスイッチQ,Qを駆動すれば、受電回路330の入力力率を1にすることができる。
【0043】
また、図10は本発明に係る給電装置の第3実施形態を示す回路図である。請求項2に記載するように、図10の給電装置を対象として第1実施例を適用した場合にも、受電回路340の入力力率を1にする制御を行うことができる。
図10における受電回路340は、半導体スイッチQにダイオードDを逆並列接続したスイッチングアームとダイオードDとの直列回路と、半導体スイッチQにダイオードDを逆並列接続したスイッチングアームとダイオードDとの直列回路とを並列接続することにより、ブリッジ回路が構成されている。その他の部分は図1と同様である。
【0044】
図11図14は、図10の受電コイル120を流れる電流i、受電コイル120の誘起電圧vin、ブリッジ回路の交流端子間電圧v及びその基本波成分v’の動作波形と、スイッチQ,Qの駆動信号とを示している。なお、図11図14は、図6図9におけるスイッチQの駆動信号をスイッチQに置き換えたものと同一である。
図10の非接触給電装置において、vの波形が図2と同じであれば、スイッチQ,Qの駆動信号を例えば図11図14のようにした場合でも、数式11,12のα,βを適用してスイッチQ,Qを駆動すれば、受電回路340の入力力率を1にすることができる。
【0045】
次に、請求項3に対応する第2実施例の力率改善作用について説明する。
図15は、図1の受電コイル120を流れる電流i、受電コイル120の誘起電圧vin、ブリッジ回路の交流端子間電圧v及びその基本波成分v’の動作波形と、スイッチQ,Q,Q,Qの駆動信号を示している。このときの受電回路320の入力側等価回路は、図3と同様である。
【0046】
この実施例においては、受電回路320の入力力率を改善するために、vの波高値が零となる期間の中点が電流iの一周期内の両方のゼロクロス点ZCPからそれぞれ補償期間(角度)βだけずれるように、制御装置200がスイッチQ,Q,Q,Qに駆動信号を与える。
この駆動信号により、vの波形は、前記中点の前後の期間(それぞれα/2とする)は零電圧、その他の期間は直流端子間電圧Vを波高値とする正負電圧になり、vはiのゼロクロス点ZCPを中心として非対称な波形となる。よって、v’の位相はiの位相とずれる。このとき、図3に示すように、v’の容量性リアクタンス成分401による電圧降下がLにおける電圧降下vを補償するようにβを与えると、回路のインピーダンスは見かけ上、純抵抗のみとなる。よって、iとvinとの位相が一致するため、受電回路320の入力力率を1にすることができる。
【0047】
次に、入力力率を1にするためのβの求め方を説明する。v’は、第1実施例と同様に数式4によって表される。また、図15より、a,bはそれぞれ数式13,14により求められる。
【数13】
【数14】
【0048】
第1実施例と同様にして、数式4,8,13,14より、入力力率を1にするときのβ及びαは、それぞれ数式15,16のように求められる。
【数15】
【数16】
【0049】
従って、L≠0である場合にも、制御装置200が数式15,16によるα,βを用いて演算した駆動信号によりスイッチQ,Q,Q,Qを駆動すれば、受電回路320の入力力率を1にする制御を行うことができる。
なお、vの波形が図15と同じであれば、スイッチQ,Q,Q,Qの駆動信号を例えば図16のようにした場合でも、数式15,16のα,βを適用してスイッチQ,Q,Q,Qを駆動すれば、受電回路320の入力力率を1にすることができる。
【0050】
更に、図17は本発明に係る給電装置の第4実施形態を示す回路図であり、第2実施例を図17の非接触給電装置に適用することも可能である。
図17に示す受電回路350は、半導体スイッチQにダイオードDを逆並列接続したスイッチングアームと、半導体スイッチQにダイオードDを逆並列接続したスイッチングアームと、を直列に接続したスイッチングアーム直列回路を備え、このスイッチングアーム直列回路と、ダイオードD,Dを直列接続したダイオード直列回路とを並列接続することにより、ブリッジ回路が構成されている。その他の部分は図1と同様である。なお、この受電回路350は、図5の受電回路330からダイオードDを除去したものに相当する。
【0051】
図18図19は、図17の受電コイル120を流れる電流i、受電コイル120の誘起電圧vin、ブリッジ回路の交流端子間電圧v及びその基本波成分v’の動作波形と、スイッチQ,Qの駆動信号とを示している。
図17の非接触給電装置において、vの波形が図15と同じであれば、スイッチQ,Qの駆動信号を例えば図18図19のようにした場合でも、数式15,16のα,βを適用してスイッチQ,Qを駆動すれば、受電回路350の入力力率を1にすることができる。
【0052】
また、請求項4に示すように、図10の非接触給電装置に第2実施例を適用することも可能である。
図20図21は、図10の受電コイル120を流れる電流i、受電コイル120の誘起電圧vin、ブリッジ回路の交流端子間電圧v及びその基本波成分v’の動作波形と、スイッチQ,Qの駆動信号を示している。なお、図20図21は、図18図19におけるスイッチQの駆動信号をスイッチQに置き換えたものと同一である。
図10の非接触給電装置において、vの波形が図15と同じであれば、スイッチQ,Qの駆動信号を例えば図20図21のようにした場合でも、数式15,16のα,βを適用してスイッチQ,Qを駆動すれば、受電回路340の入力力率を1にすることができる。
【0053】
次いで、請求項5に対応する第3実施例の力率改善作用について説明する。
図22は、図1の受電コイル120を流れる電流i、受電コイル120の誘起電圧vin、ブリッジ回路の交流端子間電圧v及びその基本波成分v’の動作波形と、スイッチQ,Q,Q,Qの駆動信号を示している。このときの受電回路320の入力側等価回路は、図3と同様である。
【0054】
この第3実施例では、受電回路320の入力力率を改善するために、電流iの一周期内でvの波高値が零となる期間αによって挟まれる期間の中点が、電流iの一周期内の二つのゼロクロス点ZCPからそれぞれ補償期間(角度)βだけずれるように、制御装置200がスイッチQ,Q,Q,Qに駆動信号を与える。この駆動信号により、vの波形は、前記中点の前後の期間は直流端子間電圧Vを波高値とする正負電圧となり、その他の期間αでは零電圧となって、iのゼロクロス点ZCPを中心として非対称な波形となる。よって、v’の位相はiの位相とずれる。このとき、図3に示すように、v’の容量性リアクタンス成分401による電圧降下がLにおける電圧降下vを補償するようにβを与えると、回路のインピーダンスは見かけ上、純抵抗のみとなる。従って、iとvinとの位相が一致するため、受電回路320の入力力率を1にすることができる。
【0055】
次に、受電回路320の入力力率を1にするためのβの求め方を説明する。
v’は、第1実施例と同様に数式4によって表される。図22より、a,bはそれぞれ数式17,18のように求められる。
【数17】
【数18】
【0056】
第1実施例と同様にして、数式4,8,17,18より、入力力率を1にするときのβ及びαは、それぞれ数式19,20によって求められる。
【数19】
【数20】
【0057】
従って、L≠0である場合にも、制御装置200が数式19,20によるα,βを用いて演算した駆動信号によりスイッチQ,Q,Q,Qを駆動すれば、受電回路320の入力力率を1にする制御を行うことができる。
なお、図1の非接触給電装置において、vの波形が図22と同じであれば、スイッチQ,Q,Q,Qの駆動信号を例えば図23のようにした場合でも、数式19,20のα,βを適用してスイッチQ,Q,Q,Qを駆動すれば、受電回路320の入力力率を1にすることができる。
【0058】
同様にして、図17に示す非接触給電装置に第3実施例を適用することも可能である。
図24図25は、図17の受電コイル120を流れる電流i、受電コイル120の誘起電圧vin、ブリッジ回路の交流端子間電圧v及びその基本波成分v’の動作波形と、スイッチQ,Qの駆動信号を示している。
図17の非接触給電装置において、vの波形が図22と同じであれば、スイッチQ,Qの駆動信号を例えば図24図25のようにした場合でも、数式19,20のα,βを適用してスイッチQ,Qを駆動すれば、受電回路350の入力力率を1にすることができる。
【0059】
また、請求項6に記載するように、図10に示す非接触給電装置に第3実施例を適用することも可能である。
図26図27は、図10の受電コイル120を流れる電流i、受電コイル120の誘起電圧vin、ブリッジ回路の交流端子間電圧v及びその基本波成分v’の動作波形と、スイッチQ,Qの駆動信号を示している。なお、図26図27は、図24図25におけるスイッチQの駆動信号をスイッチQに置き換えたものと同一である。
図10の非接触給電装置において、vの波形が図22と同じであれば、スイッチQ,Qの駆動信号を例えば図26図27のようにした場合でも、数式19,20のα,βを適用してスイッチQ,Qを駆動すれば、受電回路340の入力力率を1にすることができる。
【符号の説明】
【0060】
100:高周波電源
110:一次側給電線
120:受電コイル
200:制御装置
320,330,340,350:受電回路
400:インピーダンス
401:容量性リアクタンス成分
,Q,Q,Q:半導体スイッチ
,D,D,D,D:ダイオード
:平滑コンデンサ
:共振コンデンサ
CT:電流検出手段
R:負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図27
図28
図29
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図33