特許第6124350号(P6124350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6124350物質を細胞に導入するためのシステム、先端アセンブリ、方法、及びキット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6124350
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】物質を細胞に導入するためのシステム、先端アセンブリ、方法、及びキット
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20170424BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20170424BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20170424BHJP
   C12M 1/42 20060101ALI20170424BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   C12M1/00 A
   C12N1/00 U
   C12Q1/04
   C12M1/42
   C12N15/00 A
【請求項の数】19
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2013-552635(P2013-552635)
(86)(22)【出願日】2012年2月2日
(65)【公表番号】特表2014-504509(P2014-504509A)
(43)【公表日】2014年2月24日
(86)【国際出願番号】US2012023664
(87)【国際公開番号】WO2012106536
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2015年2月2日
(31)【優先権主張番号】61/438,824
(32)【優先日】2011年2月2日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/231,592
(32)【優先日】2011年9月13日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508053795
【氏名又は名称】タフツ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ディーフェンバッハ,トーマス
【審査官】 長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/105135(WO,A1)
【文献】 特表平11−505112(JP,A)
【文献】 特開2008−237221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
C12N 15/
C12N 5/
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内に流体中の組成物を導入するためのシステムであって、該システムは;
流体を流体経路に沿って推進させるため正圧及び負圧の少なくとも1つを生成するフローデバイス;及び、
細胞と流体の混合物を通過させるための流体経路内に取付可能な先端アセンブリを含み、該先端アセンブリは、フローデバイスに近接して接続する取り付け部分、取り付け部分とフローデバイスに隣接する及びそこから遠位にあるチャンネル部分、チャンネル部分と隣接する収縮部分を含み、ここで、収縮部分の内径と収縮部分の断面積は、チャンネル部分の内径と断面積よりも小さく、ここで、収縮部分の遠位端は、流体を排出又は引き抜くための開口部を含み、
流体経路に沿った先端アセンブリの内面の曲率により、および、先端アセンブリを通過する細胞が、チャンネル部分の速度と圧力と比較した、収縮部分における流体速度の増加と流体圧力の減少とを経験することにより、細胞の膜孔形成と細胞の膜透過性とを促進するように構成され、
その結果、細胞と流体とを先端アセンブリを通過させることによって、細胞生存率を低下させることなく、組成物を細胞内に膜を通して効果的に導入する、ことを特徴とする、システム。
【請求項2】
先端アセンブリを通る流体を受けるための開口部に隣接した容器を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
先端アセンブリは、ガラス、金属、プラスチック、ポリマー、ナノベースの組成物、少なくとも2つの異なるタイプの物質を含む複合材料などから成るグループから選択された、少なくとも1つを含み;随意に、以下の中から選択された1以上の特性:
フローデバイスは、シリンジ、プランジャー、バルブ、ダイアフラム、及びコンプレッサーから成るグループから選択された、少なくとも1つを含み;又は、
フローデバイスの操作は、正の流体圧力、負の流体圧力、流体速度、流体加速度、質量流量、最初の速度勾配、出発速度、最大速度、出発位置、流体がフローデバイスによって生成された圧力下にあるカットオフ速度の時間、温度、及びチャンネル部分、収縮部分、又はその両方において流体が保持される時間から成るグループから選択された、少なくとも1つの制御を含み;
フローデバイスは随意に、0.1cm/s乃至毎秒1センチメートル(cm/s)、1cm/s乃至5cm/s、5cm/s乃至15cm/s、及び15cm/s乃至20cm/sから随意に選択される、先端アセンブリの長さに沿って生成される流体速度;毎分0.01ミリリッター(ml/min)、1ml/min、10ml/min、25ml/min、50ml/min、100ml/min、及び150ml/minから随意に選択される、フローデバイスにより生成される質量流量;及び、0.6μl/s/s、1μl/s/s、6μl/s/s、10μl/s/s、12μl/s/s、24μl/s/s、36μl/s/s、48μl/s/s、及び60μl/s/sの先端アセンブリ内のフローデバイスにより生成される加速度の少なくとも1つを更に特徴とする:
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
フローデバイスは、手動で制御又は操作されることを特徴とする、請求項1乃至3の何れかに記載のシステム。
【請求項5】
フローデバイスの制御及び操作は、自動化、電気機械式、及びプログラム可能なものから選択された、少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1乃至3の何れかに記載のシステム。
【請求項6】
システムは、電源、ユーザーインターフェースと相互作用するコネクター、コンピュータ、携帯端末、送信器、又はディスプレイ;フローデバイスを先端アセンブリに接続させるためのコンジット;センサー;バルブ;及びハウジングのグループから選択された、少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1乃至5の何れかに記載のシステム。
【請求項7】
流体中の組成物を細胞内に導入するための先端アセンブリであって、該先端アセンブリは:
流体を方向づけるため正圧と負圧の少なくとも1つを生成するフローデバイスに近接して接続される、大気中に解放された接続用取り付け部分;
取り付け部分とフローデバイスに隣接した及びそこから遠位にあるチャンネル部分;
チャンネル部分に隣接した収縮部分を含み、ここで、収縮部分の内径と収縮部分の断面積は、チャンネル部分の内径と断面積よりも小さく、ここで、収縮部分の遠位端は、流体を排出又は引き抜くための開口部を含み、
流体経路の中心軸からのラジアル距離に基づく先端アセンブリの内面の曲率により、および、先端アセンブリを通過する細胞が、チャンネル部分の速度と圧力と比較した、収縮部分における流体速度の増加と流体圧力の減少とを経験することにより、細胞の膜孔形成と細胞の膜透過性とを促進するように構成され、
その結果、細胞と流体とを先端アセンブリを通過させることによって、細胞生存率を低下させることなく、組成物が、細胞内へ膜を通して効果的に導入されることを特徴とする、先端アセンブリ。
【請求項8】
先端アセンブリは、使い捨て、モジュール式、透明の、及び半透明のものの少なくとも1つから選択され;及び随意に、以下の中から選択される1以上の特性:
取り付け部分、チャンネル部分、及び収縮部分の少なくとも1つは、ガラス、金属、プラスチック、ポリマー、ナノベースの組成物、少なくとも2つの異なるタイプの物質を含む複合材料などのグループから選択された物質を含み;又は、
先端アセンブリの取り付け部分の内径又は外径は、雄雌配置においてそれぞれフローデバイスに適合し;又は、
チャンネル部分の断面積又は収縮部分の断面積は、連続円、楕円、長方形又は正方形などの正多角形によって境界づけられ、及び円多角形又は他の断面形状は連続的又は非連続的であり、ここで、収縮部分の遠心端は、開口部の内径未満又はその内径にほぼ等しい内径を含み;又は、
先端アセンブリは、2マイクロリッター(μl)、20μl、50μl、200μl、400μl、500μl、1ミリリッター(ml)、5ml、及び10mlである容積を含み、ここで、チャンネル部分の内径は、1.0ミリメーター(mm)乃至10.0mmであり、収縮部分の内径の直径は、0.05mm乃至2.0mmであり、ここで、収縮部分の内径は、チャンネル部分の内径よりも小さい:
ことを特徴とする、請求項7に記載の先端アセンブリ。
【請求項9】
チャンネル部分の曲率と収縮部分の内曲率は、先端アセンブリを通って流れる流体のための流体経路を特徴とし、ここで、組成物を細胞に導入するのに効果的である、流体経路の中心軸に沿って流体経路が狭まっていることを示すチャンネル部分の曲率と収縮部分の内曲率は、以下によって二次元で表される式:
f(x)=p1x+p2x+p3x+p4x+p5x+p6x+p7x+p8
[ここで、xは、流体経路上の中心軸から先端の内面までのラジアル距離であり、括弧内の95%の信頼限界を備えた係数は、次のものを含む:p1は−2.611e−16(−6.043e−16、8.206e−17)であり、p2は3.954e−13(−3.195e−13、1.11e−12)であり、p3は−1.845e−10(−7.821e−10、4.131e−10)であり、p4は1.662e−08(−2.394e−07、2.726e−07)であり、p5は7.537e−06(−5.186e−05、6.694e−05)であり、p6は−0.002137(−0.009375、0.005101)であり、p7は−0.003185(−0.4114、0.4051)であり、及びp8=268.6(261、276.3)であり]、又は、
f(x)=p1x+p2x+p3x+p4x+p5x+p6x+p7x+p8x+p9
[ここで、xは、流体経路上の中心軸から先端の内面までのラジアル距離であり、括弧内の95%の信頼限界を備えた係数は、次のものを含む:p1は2.285(1.388、3.182)であり、p2は3.465(1.782、5.149)であり、p3は−15.68(−20.04、−11.32)であり;p4は−20.38(−27.24、−13.52)であり;p5は44.27(36.5、52.04)であり;p6は53.96(45.69、62.23)であり;p7は−58.72(−64.02、−53.42)であり、p8は−123.5(−126.4、−120.6)であり、及びp9は186.5(185.6、187.4)である]を含む
ことを特徴とする、請求項7又は8に記載の先端アセンブリ。
【請求項10】
フローデバイスに対し先端アセンブリを接続または取り外すための、取り付け部分の外側表面から横に伸びるショルダーを更に含む
ことを特徴とする、請求項7乃至9の何れかに記載の先端アセンブリ。
【請求項11】
組成物を細胞に導入するための方法であって、該方法は:
貯蔵槽中の細胞を、組成物を含む流体と接触させる工程;
先端アセンブリを貯蔵槽に挿入する工程であって、ここで、先端アセンブリは、流体を方向づけるため正圧と負圧の少なくとも1つを生成するフローデバイスに近接して接続される、大気中に解放された取り付け部分;取り付け部分とフローデバイスに隣接した及びそこから遠位にあるチャンネル部分;チャンネル部分に隣接した収縮部分を含み、ここで、チャンネル部分は収縮部分の流体の中心軸に向かって内方へ湾曲し、収縮部分の内径と収縮部分の断面積は、チャンネル部分の内径と断面積よりも小さく、ここで、収縮部分の遠位端は、流体を排出又は引き抜くための開口部を含み、ここで、先端アセンブリの内面の曲率により、および、チャンネル部分の速度と圧力と比較した、収縮部分における流体速度の増加と流体の圧力の減少により膜孔形成を促進して、細胞の膜透過性に影響を及ぼす工程;及び
細胞生存率を低下させることなく組成物を細胞内へ膜を通して有効に導入するために、フローデバイスを使用して、細胞と、組成物を備えた流体との混合物を少なくとも1回先端アセンブリを通過させる工程を含む、ことを特徴とする、方法。
【請求項12】
混合物を通過させる工程は、貯蔵槽に混合物を方向づけ直す工程を含み、又は混合物を通過させる工程は、混合物を容器に分配する工程を更に含み;及び随意に、以下の中から選択された1以上の特性:
細胞は、多くの生細胞、随意に真核細胞の集団を含み、ここで、方法は、細胞生存率の維持を観察する工程を更に含み、細胞生存率は実質的に減少せず、先端アセンブリを通らない対照の細胞の少なくとも1%、10%、90%、又は95%を含み;又は、
流体は、200ナノモーラー(nM)、150nM、100nM、又は75nM未満の濃度のCa−2を含み、ここで、流体は200nM、150nM、100nM、又は75nM未満の濃度のMg+2を含み;又は、
組成物は、DNA又はRNAを含み、ここで、DNAは、天然DNA、合成DNA、cDNA、dsDNA、ssDNAのグループから選択され、及びここで、RNAは、mRNA、tRNA、rRNA、siRNA、RNAi、miRNA、及びdsRNA、又はそれらの一部分から選択され、並びに方法は更に、細胞のトランスフェクションをアッセイする工程を更に含む:
を更に特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
通過後、核;ミトコンドリア;ゴルジ体;小胞体;葉緑体;有色体;エンドソーム、ベシクル、リソソーム、軸索;細胞膜;核膜;細胞骨格、及び細胞質から選択された、少なくとも1つの細胞内区画への組成物の局在化を観察する工程を更に含み、ここで、局在化を観察する工程は更に、検知可能、蛍光性、比色定量、酵素的、放射性のものから成るグループから選択された、検知可能なマーカーにより組成物を視覚化する工程;及びmRNA、DNA、RNA、並びにタンパク質から成るグループから細胞に侵入する組成物の生成物を直接定量化する工程を含み;及び随意に、以下の中から選択された1以上の特性:
細胞は、上皮細胞、造血性細胞、幹細胞、脾臓細胞、腎臓細胞、膵臓細胞、肝細胞、神経細胞、膠細胞、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)、平滑筋細胞又は横紋筋細胞、精細胞、心臓細胞、肺細胞、視覚細胞、骨髄細胞、胎児の臍帯血細胞、始原細胞、末梢血単核細胞、白血球細胞、リンパ球、生きた分裂終了細胞、生理的に不活性な細胞、阻害された細胞、UVにより不活性化された細胞、除核細胞、無核細胞、熱により死滅させられた細胞、再生しない細胞、及び人工膜を有する合成細胞などから成るグループから選択された、細胞型を含む:
を更に特徴とする、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
通過後、細胞ペレットと上清を得るために混合物を遠心分離する工程、上清を取り除く工程、貯蔵槽に培養液を加える工程、培地中の細胞ペレットを再懸濁する工程、及び細胞を培養する工程を更に含むことを特徴とする、請求項11乃至13の何れかに記載の方法。
【請求項15】
電界、波長によって特徴付けられた光又は放射線、及び音波パルスから選択された少なくとも1つを、方法の前、その間、又はその後に、混合物に適用する工程を更に含むことを特徴とする、請求項11乃至14の何れかに記載の方法。
【請求項16】
流体中の組成物を細胞に導入するためのキットであって、該キットは:
細胞と流体の混合物を通過させるための請求項7に記載の先端アセンブリを含み、該先端アセンブリは、流体を方向づけるため正圧と負圧の少なくとも1つを生成するフローデバイスに近接して接続される、大気中に解放された取り付け部分;取り付け部分とフローデバイスに隣接した及びそこから遠位にあるチャンネル部分;チャンネル部分に隣接した収縮部分を含み、ここで、収縮部分の内径と収縮部分の断面積は、チャンネル部分の内径と断面積よりも小さく、ここで、収縮部分の遠心端は、流体を排出又は引き抜くための開口部を含み、ここで、チャンネル部分の速度と圧力と比較して、収縮部分における流体速度の増加と流体の圧力の減少は、細胞の膜透過性に影響を及ぼし、それにより、先端アセンブリは、膜を通って組成物を細胞に導入し;及び前記キットは、
容器を含む
ことを特徴とする、キット。
【請求項17】
貯蔵槽中の細胞を、組成物を含む流体と接触させる工程;先端アセンブリを貯蔵槽に挿入する工程;先端アセンブリの取り付け部分を、正圧と負圧の少なくとも1つを生成するフローデバイスに接触させる工程;及びフローデバイスを使用して少なくとも1回は先端アセンブリを通って、流体と組成物との混合物を通過させる工程であって、それにより、混合物を通過させる工程が、細胞の膜透過性に影響し、細胞へ組成物を導入する工程を含む使用のための、取扱説明書を更に含むことを特徴とする、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
貯蔵槽を更に含み;及び随意に、トランスフェクション薬剤、バッファー、又は細胞、細胞株、或いは株の型に特異的な培地の少なくとも1つを更に含むことを特徴とする、請求項16又は17に記載のキット。
【請求項19】
流体中の組成物を細胞に導入するためのフロースルーアセンブリであって、該フロースルーアセンブリは:
流体を侵入チャンネル部分に方向づけるため正圧と負圧の少なくとも1つを生成するフローデバイスに接続される及びそれに近接される、大気中に解放された侵入チャンネル部分;
侵入チャンネル部分とフローデバイスに隣接する及びそこから遠位にある収縮部分;
収縮部分に隣接し、且つフローデバイスと収縮部分から遠位にある出口チャンネル部分を含み、ここで、収縮部分の内径及び収縮部分の断面積は、侵入チャンネル部分と出口チャンネルのそれぞれの内径と断面積より小さく、ここで、出口チャンネル部分の遠位端は、流体を排出又は引き抜くための開口部を含み、ここで、流体は収縮部分を通って何れかの方向に流れ、及びここで、侵入チャンネル部分又は出口チャンネル部分の速度と圧力と比較した、収縮部分における流体速度の増加と流体の圧力の減少が、収縮部分または出口チャンネル部分の流体経路に面する先端アセンブリの内面の曲率とともに、膜孔形成を促進するとともに細胞の膜透過性に影響を及ぼし、それにより、フロースルーアセンブリが、細胞生存率を低下させることなく、組成物を細胞内へ膜を通して導入する、
ことを特徴とする、フロースルーアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〈関連出願〉
この出願は、発明者「Thomas Diefenbach」による、2011年2月2日出願の米国仮特許出願第61/438,824号、表題「Methods, tip assemblies and kits for introducing material into cells」と、2011年9月13日出願の、前述の特許出願と表題及び発明者が同じである米国特許一部継続出願第13/231,592号の利益を主張するものであり、それらは引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
物質を細胞に導入するためのシステム、先端アセンブリ、方法、及びキットを提供する。細胞へ導入される物質には、無機化合物、薬物、遺伝物質、又は医薬組成物が含まれる。
【背景技術】
【0003】
生細胞における遺伝物質の誘発発現(例えばDNA配列)は、分子遺伝学と分子生物学の基礎である。このプロセスにおいて、例えば遺伝子をコードする遺伝物質は、細胞の核へ人為的に導入され、その結果、細胞は、遺伝子工学によって達成されるように、非天然又は修飾されたタンパク質の形態で遺伝子生成物を生成する。微生物学において、1以上の特定の遺伝子因子が受容細胞中で変更される方法は、転移と呼ばれる。真核生物の生物学において、この方法は、トランスフェクション、即ち外来性のクローン化遺伝子又はcDNAを真核生物ゲノムへ導入することと、時々称される。ウイルス又はプラスミドのベクターは、導入されたDNA配列のビヒクルである。
【0004】
多くの方法が、生細胞の核又は細胞質へと遺伝物質を導入するために使用されてきた。これらの方法には制限があり、原形質膜をわたるプラスミドcDNAの運搬を必要とし、原形質膜は、すべての細胞で見出される脂質分子の異種混合の二分子層である。生細胞の核又は細胞質へと遺伝物質を導入するための周知の方法は、エレクトロポレーションであり、それは、遺伝物質が電子拡散によって細胞に侵入する膜において、直径120nmまでの誤差(準安定の水性の孔)を生じる、膜の絶縁破壊に依存する。別の方法は、DNAと関連して本質的には洗浄剤である、脂質を含むトランスフェクション試薬又は脂肪ベースの試薬(即ち、リポフェクタミン)を使用することであり、それにより、DNAが原形質膜を通るのを可能にする。
【0005】
微粒子銃のトランスフェクションは、また別の方法であり、原形質膜を通って高圧で金のナノ粒子に結合された遺伝物質を発射する「遺伝子銃」を含む。機械的な注射も、また別の方法であり、静水圧注射を使用して直接核へと遺伝物質を運ぶため、原形質膜に物理的に穴をあけるガラス針を典型的に使用する。
【0006】
これら方法の効率は、特に細胞に対する毒性、損傷又は死により、制限があるものと見出されてきた。このような方法のトランスフェクション効率は典型的に、方法と細胞型に依存して非常に低いか又は変化しやすく、処置した細胞の生存度の損失、又は細胞膜を通して遺伝物質を得る方法の不能性に関係する。例えば、異なる細胞株の可変性を処置する遺伝子銃のトランスフェクション効率は、処置した細胞のほんの約1%乃至4%で成功することが観察された。リポフェクションは、処置した細胞のほんの約10%乃至20%で成功した組み換え体を産出する。ポリカチオン性の脂質試薬は一般に、40%の効率を超過しない。最も重要なことに、特定の細胞型は、任意の方法に従順ではなく、そして、分割しないことから一次細胞としてのみ培地で維持される、免疫系細胞、ヒト幹細胞、筋細胞、神経細胞、及び他の細胞型の型を含む。
【0007】
より多くの生物学的な方法が、ウイルスを媒介としたトランスフェクション又は細胞への遺伝物質の導入に依存する。この方法は、細胞を感染させるためのアデノウイルス、シンドビスウィルス、レトロウイルス、バクロウイルス、又はレンチウイルスなどの株に由来した、特異的に設計されたウイルスベクターを利用する。ウイルスゲノムは、対象の遺伝子配列を運ぶために設計され、結果として、遺伝物質を導入する機械的手段と比べると、比較的時間のかかる且つ労働集約的な方法である。この方法には、遺伝物質を転写且つ翻訳する細胞の効率だけでなく、ウイルスの感染効率にも依存するタンパク質発現を得るための、時間の遅れ又はタイムラグにおいて、著しく方法論的な制限がある。加えて、生きたウイルスの使用は、特別な研究所の安全基準条件(即ち、生物災害レベル2+)を必要とする。
【0008】
感染効率は多くの変数に依存し、ウイルスを媒介とした技術は、細胞集団におけるタンパク質発現を観察するために少なくとも1日又は数日の遅延を特徴とする。更に、感染効率は細胞型特異性であり、即ち、特定のウイルスは特定の細胞を感染させない。
【0009】
以前は任意の市販の方法でトランスフェクトするのが難しい又は不可能であった細胞型を含む、細胞の任意の型へと遺伝物質を導入するための、迅速で、効率的で、普遍的な方法の必要性が残っている。
【発明の概要】
【0010】
本発明の実施例は、流体中の組成物を細胞に導入するためのシステムを提供し、該システムは、流体を推進させるため正圧及び負圧の少なくとも1つを生成するフローデバイス;及び、細胞と流体の混合物を通過させる(passaging)ための先端アセンブリを含み、該先端アセンブリは、フローデバイスに近接して接続する取り付け部分、取り付け部分とフローデバイスに隣接及びそこから遠位にあるチャンネル部分、チャンネル部分と隣接する収縮部分(constriction portion)を含み、その結果、収縮部分の内径と収縮部分の断面積は、チャンネル部分の内径と断面積よりも小さく、収縮部分の遠心端には流体を排出又は引き抜くための開口部が含まれ、チャンネル部分の速度と圧力と比較して、収縮部分における流体速度の増加と流体圧力の減少は、細胞の膜透過性に影響を及ぼし、前記システムは、膜を通って組成物を細胞に導入する。例えば、チャンネル部分の速度と圧力と比較して、収縮部分における流体速度の増加と流体の圧力の減少は、細胞中の膜孔の形成を促進し、システムは、膜孔を通って組成物を細胞に導入する。
【0011】
別の実施形態において、システムは、先端アセンブリを通る流体を受けるための開口部に隣接した容器を更に含む。
【0012】
前記システムの関連する実施形態において、先端アセンブリは、ガラス、金属、プラスチック、ポリマー、ナノベースの組成物、少なくとも2つの異なるタイプの物質を含む複合材料などから成るグループから選択された、少なくとも1つを含み;随意に、フローデバイスは、シリンジ、プランジャー、バルブ、ダイアフラム、及びコンプレッサーから成るグループから選択された、少なくとも1つを含み;随意に、フローデバイスの操作は、正の流体圧力、負の流体圧力、流体速度、流体加速度、質量流量、最初の速度勾配、出発速度、最大速度、出発位置、流体がフローデバイスによって生成された圧力下にあるカットオフ速度の時間、温度、及びチャンネル部分、収縮部分、又はその両方において流体が保持される時間から成るグループから選択された、少なくとも1つの制御を含み;随意に、フローデバイスは、先端アセンブリの長さに沿った流体速度、即ち、約0.1cm/s乃至毎秒約1センチメートル(cm/s)、約1cm/s乃至約5cm/s、約5cm/s乃至約15cm/s、及び約15cm/s乃至約20cm/sから選択された流体速度を生成し;その結果、フローデバイスは、毎分約0.01ミリリッター(ml/min)、1ml/min、10ml/min、25ml/min、50ml/min、100ml/min、及び150ml/minから成るグループから選択された、質量流量を生成し;ここで、フローデバイスは、約0.6μl/s/s、約1μl/s/s、約6μl/s/s、約10μl/s/s、約12μl/s/s、約24μl/s/s、約36μl/s/s、約48μl/s/s、及び約60μl/s/sの先端アセンブリにおける加速度を生成する。
【0013】
システムの1つの実施形態に従い、フローデバイスは、手動で制御又は操作される。別の実施形態に従い、フローデバイスは、自動化、電気機械式、及びプログラム可能なものから選択された、少なくとも1つである。
【0014】
様々な関連する実施形態において、システムには、電源、ユーザーインターフェースと相互作用するコネクター、コンピュータ、携帯端末、送信器、又はディスプレイ;フローデバイスを先端アセンブリに接続させるためのコンジット;センサー;バルブ;及びハウジングのグループから選択された、少なくとも1つが含まれる。
【0015】
本発明の別の実施形態は、流体中の組成物を細胞に導入するための先端アセンブリであり、該先端アセンブリは、流体を方向づけるため正圧と負圧の少なくとも1つを生成するフローデバイスに近接して接続される、大気中に解放された取り付け部分;取り付け部分とフローデバイスに隣接した及び又はそこから遠位にあるチャンネル部分;チャンネル部分に隣接した収縮部分があり;その結果、収縮部分の内径と収縮部分の断面積は、チャンネル部分の内径と断面積よりも小さく、収縮部分の遠心端には流体を排出又は引き抜くための開口部が含まれ、チャンネル部分の速度と圧力と比較して、収縮部分における流体速度の増加と流体の圧力の減少は、細胞の膜透過性に影響を及ぼし、先端アセンブリは、膜を通って組成物を細胞に導入する。例えば、チャンネル部分の速度と圧力と比較して、収縮部分における流体速度の増加と流体の圧力の減少は、細胞中の膜孔の形成を促進し、先端アセンブリは、膜孔を通って組成物を細胞に導入する。
【0016】
関連する実施形態において、先端アセンブリは、使い捨て、モジュール式、透明の、及び半透明のものの少なくとも1つから選択され;随意に、先端アセンブリは再使用可能であり;随意に、取り付け部分、チャンネル部分、及び収縮部分の少なくとも1つは、ガラス、金属、プラスチック、ポリマー、ナノベースの組成物、少なくとも2つの異なるタイプの物質を含む複合材料などのグループから選択された、少なくとも1つを含み;随意に、先端アセンブリの取り付け部分の内径又は外径は、雄雌配置においてそれぞれフローデバイスに適合し;随意に、チャンネル部分の断面積又は収縮部分の断面積は、連続円、楕円、長方形又は正方形などの正多角形によって境界づけられ、及び円多角形(circle polygon)又は他の断面形状は連続的又は非連続的であり、その結果、収縮部分の遠心端には、開口部の内径未満又はその内径にほぼ等しい内径が含まれ;随意に、先端アセンブリには、約2マイクロリッター(μl)、約20μl、約50μl、約200μl、約400μl、約500μl、約1ミリリッター(ml)、約5ml、及び約10mlである容積が含まれ、ここで、チャンネル部分の内径は、約1.0ミリメーター(mm)乃至約10.0mmであり、収縮部分の内径の直径は、約0.05mm乃至約2.0mmであり、ここで、収縮部分の内径は、チャンネル部分の内径よりも小さい。
【0017】
先端アセンブリの関連する実施形態に従い、チャンネル部分の曲率と収縮部分の内曲率は、先端アセンブリを通って流れる流体のための流体経路を特徴とし、その結果、組成物を細胞に導入するのに必要なチャンネル部分の曲率と収縮部分の内曲率は、以下によって二次元で表される式:
f(x)=p1x+p2x+p3x+p4x+p5x+p6x+p7x+p8
[ここで、xは、流体経路上の重心軸から先端の内面までのラジアル距離であり、括弧内の95%の信頼限界を備えた係数は、次のものを含む:p1は−2.611e−16(−6.043e−16、8.206e−17)であり、p2は3.954e−13(−3.195e−13、1.11e−12)であり、p3は−1.845e−10(−7.821e−10、4.131e−10)であり、p4は1.662e−08(−2.394e−07、2.726e−07)であり、p5は7.537e−06(−5.186e−05、6.694e−05)であり、p6は−0.002137(−0.009375、0.005101)であり、p7は−0.003185(−0.4114、0.4051)であり、及びp8=268.6(261、276.3)であり]、又は、
f(x)=p1x+p2x+p3x+p4x+p5x+p6x+p7x+p8x+p9
[ここで、xは、流体経路上の重心軸から先端の内面までのラジアル距離であり、括弧内の95%の信頼限界を備えた係数は、次のものを含む:p1は2.285(1.388、3.182)であり、p2は3.465(1.782、5.149)であり、p3は−15.68(−20.04、−11.32)であり;p4は−20.38(−27.24、−13.52)であり;p5は44.27(36.5、52.04)であり;p6は53.96(45.69、62.23)であり;p7は−58.72(−64.02、−53.42)であり、p8は−123.5(−126.4、−120.6)であり、及びp9は186.5(185.6、187.4)である]
を含む。
【0018】
本発明の別の実施形態において、先端アセンブリは、取り付け部分の外側表面から横に伸びるショルダーをさらに含み、例えば、フローデバイスのより低いエジェクターセクションは、フローデバイスから先端アセンブリを取り外す。
【0019】
本発明の別の実施形態において、フローデバイスに接続する先端アセンブリの収縮部分は、第2のチャンネルに通じる連続チャンネルを含み、流体はその後、連続チャンネルを通って、随意に貯蔵層、細胞処理装置などの何れかが含まれるシステムの出口部分に向かって流れる。この実施形態において、流体は、侵入チャンネルから、収縮部を通り、その後連続フロースルーシステム中の出口チャンネルを通って流れる。
【0020】
本発明の別の実施形態は、組成物を細胞に導入するための方法であり、該方法は、貯蔵槽中の細胞を、組成物を含む流体と接触させる工程;先端アセンブリを貯蔵槽に挿入する工程、ここで、先端アセンブリは、流体を方向づけるため正圧と負圧の少なくとも1つを生成するフローデバイスに近接して接続される、大気中に解放された取り付け部分;取り付け部分とフローデバイスに隣接した及びそこから遠位にあるチャンネル部分;チャンネル部分に隣接した収縮部分を含み;その結果、収縮部分の内径と収縮部分の断面積は、チャンネル部分の内径と断面積よりも小さく、収縮部分の遠心端は、流体を排出又は引き抜くための開口部を含み、チャンネル部分の速度と圧力と比較して、収縮部分における流体速度の増加と流体の圧力の減少は、細胞の膜透過性に影響を及ぼし;及び前記方法は、フローデバイスを使用して少なくとも1回先端アセンブリを通る、細胞と、組成物を備えた流体との混合物を通過させる工程を含み、その結果、混合物を通過させる工程は、膜を通って組成物を細胞に導入する。例えば、チャンネル部分の速度と圧力と比較して、収縮部分における流体速度の増加と流体の圧力の減少は、細胞中の膜孔の形成;及びフローデバイスを使用して少なくとも1回は先端アセンブリを通る、細胞と、組成物を備えた流体との混合物を通過させる工程を促進し、混合物を通過させる工程は、孔を通って組成物を細胞に導入する。
【0021】
方法の関連する実施形態において、混合物を通過させる工程は、貯蔵槽に混合物を方向づけ直す工程を含み:随意に、混合物を通過させる工程は、混合物を容器に分配する工程を更に含み;随意に、連続チャンネルの収縮部を通って混合物を通過させた後、混合物はその後、出口チャンネルを通って連続的に進み;随意に、細胞は、多くの生細胞、随意に真核細胞の集団であり、方法は、細胞生存率の維持を観察する工程を更に含み、細胞生存率は実質的に減少せず、先端アセンブリを通らない対照の細胞の少なくとも約1%、10%、30%、50%、75%、90%、又は95%を含み;随意に、流体は、約200ナノモーラー(nM)、約150nM、約100nM、又は約75nM未満の濃度のCa−2を含み、ここで、流体は、約200nM、約150nM、約100nM、又は約75nM未満の濃度のMg+2を含み;随意に、その結果、組成物はDNA又はRNAを含み、DNAは、天然DNA、合成DNA、cDNA、dsDNA、ssDNAのグループから選択され、RNAは、mRNA、tRNA、rRNA、siRNA、RNAi、miRNA、及びdsRNA、又はそれらの一部分から選択され、方法は更に、細胞のトランスフェクションをアッセイする工程を含む。
【0022】
他の関連する実施形態に従い、方法は、通過後、少なくとも1つの細胞内区画への組成物の局在化を観察する工程を含み、該細胞内区画は、核;ミトコンドリア;ゴルジ体;小胞体;葉緑体;有色体;エンドソーム、ベシクル、空胞、リソソーム、軸索;細胞膜;核膜;細胞骨格、及び細胞質から選択され、その結果、局在化を観察する工程は更に、検知可能、蛍光性、比色定量、酵素的、放射性のものから成るグループから選択された、検知可能なマーカーにより組成物を視覚化する工程;及びmRNA、DNA、RNA、並びにタンパク質から成るグループから細胞に侵入する組成物の生成物を直接定量化する工程を含み;随意に、その結果、細胞は、上皮細胞、造血性細胞、幹細胞、脾臓細胞、腎臓細胞、膵臓細胞、肝細胞、神経細胞、膠細胞、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)、平滑筋細胞又は横紋筋細胞、精細胞、心臓細胞、肺細胞、視覚細胞、骨髄細胞、胎児の臍帯血細胞、始原細胞、末梢血単核細胞、白血球細胞、リンパ球、生きた分裂終了細胞、生理的に不活性な細胞、阻害された細胞、UVにより不活性化された細胞、除核細胞、無核細胞、熱により死滅させられた細胞、再生しない細胞、及び人工膜を有する合成細胞などから成るグループから選択された、細胞型を含む。
【0023】
関連する実施形態において、方法は更に、通過後、細胞ペレットと上清を得るために混合物を遠心分離する工程、上清を取り除く工程、貯蔵槽に培養液を加える工程、培地中の細胞ペレットを再懸濁する工程、及び細胞を培養する工程を含む。
【0024】
他の関連する実施形態において、方法は更に、電界、波長によって特徴付けられた光又は放射線、及び音波パルスから選択された少なくとも1つを混合物に適用する工程を含む。
【0025】
本発明の別の実施形態は、流体中の組成物を細胞に導入するためのキットであり、該キットは、細胞と流体の混合物を通過させるための先端アセンブリを含み、該先端アセンブリは、流体を方向づけるため正圧と負圧の少なくとも1つを生成するフローデバイスに近接して接続される、大気中に解放された取り付け部分;取り付け部分とフローデバイスに隣接した及びそこから遠位にあるチャンネル部分;チャンネル部分に隣接した収縮部分が含まれ;その結果、収縮部分の内径と収縮部分の断面積は、チャンネル部分の内径と断面積よりも小さく、収縮部分の遠心端は、流体を排出又は引き抜くための開口部を含み、チャンネル部分の速度と圧力と比較して、収縮部分における流体速度の増加と流体の圧力の減少は、細胞の膜透過性に影響を及ぼし、先端アセンブリは、膜を通って組成物を細胞に導入し;及び前記キットは、容器を含む。例えば、チャンネル部分の速度と圧力と比較して、収縮部分における流体速度の増加と流体の圧力の減少は、細胞中の膜孔の形成を促進し、先端アセンブリは、膜孔を通って組成物を細胞に導入する。
【0026】
関連する実施形態において、キットは、貯蔵槽中の細胞を、組成物を含む流体と接触させる工程;先端アセンブリを貯蔵槽に挿入する工程;先端アセンブリの取り付け部分を、正圧と負圧の少なくとも1つを生成するフローデバイスに接触させる工程;及びフローデバイスを使用して少なくとも1回は先端アセンブリを通って、流体と組成物との混合物を通過させる工程であって、混合物を通過させる工程が、細胞の膜透過性に影響し、細胞へ組成物を導入する工程を含む使用のための、取扱説明書を有する。例えば、フローデバイスを使用して少なくとも1回は先端アセンブリを通って、流体と組成物の混合物を通過させる工程は、細胞に膜孔を形成し、細胞へ組成物を導入する。別の関連する実施形態において、キットはさらに貯蔵槽を含み;随意に、トランスフェクション薬剤、バッファー、又は培地、細胞株或いは株を更に含む。
【0027】
本発明の別の実施形態は、流体中の組成物を細胞に導入するためのフロースルーアセンブリであり、該フロースルーアセンブリは、流体を侵入チャンネル部分に方向づけるため正圧と負圧の少なくとも1つを生成するフローデバイスに接続される及びそれに近接される、大気中に解放された侵入チャンネル部分;侵入チャンネル部分とフローデバイスに隣接する及びそこから遠位にある収縮部分;収縮部分に隣接し、且つフローデバイスと収縮部分から遠位にある出口チャンネル部分を含み、ここで、収縮部分の内径及び収縮部分の断面積は、侵入チャンネル部分と出口チャンネルのそれぞれの内径と断面積より小さく、ここで、出口チャンネル部分の遠心端は、流体を排出又は引き抜くための開口部を有し、ここで、流体は収縮部分を通って何れかの方向に流れ、及びここで、侵入チャンネル部分又は出口チャンネル部分の速度と圧力と比較して、収縮部分における流体速度の増加と流体の圧力の減少は、細胞の膜透過性に影響を及ぼし、その結果、フロースルーアセンブリは、膜を通って組成物を細胞に導入する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A】典型的なトランスフェクションシステムの一連の写真である。USBコンバーター(103)、及びジャンプボックス(106)の金属蓋(105)の内面に構成されるRS232インターフェース(104)により外部コンピュータに接続された、コンピュータープログラム可能なシリンジポンプ(101)(102)の写真である。USBコンバーター(103)へのRS232インターフェース(104)の接続は、データ解析ソフトウェアMATLAB(Mathworks、Natick、MA)を使用する制御のため、ケーブルによって外部コンピュータに接続される。
図1B】典型的なトランスフェクションシステムの一連の写真である。ジャンプボックス(106)の右に位置付けられた、プログラム可能なシリンジ(101)とポンプ機構(102)の拡大図である。典型的なシリンジ(101)はホウケイ酸ガラスであり、潤滑して且つ耐溶媒性であるUHMWPE(超高分子量ポリエチレン)シール107を備え、及びプランジャー(108)を備える。シリンジの一端に接続される、TYGON(登録商標)チューブ(109)の長さは、ジャンプボックス(106)(図1Aを参照)の金属蓋(105)を通って、コネクターにまで、及びソーダ石灰ガラスキャピラリーチューブの近接端部に直接付くチューブにまで及ぶ。
図1C】典型的なトランスフェクションシステムの一連の写真である。ジャンプボックス(106)の内部の左隅にある電力供給装置(110)を示す。
図1D】典型的なトランスフェクションシステムの一連の写真である。滅菌状態にある組織培養フローフードの内部にあるジャンプボックス(106)の写真を示す。金属蓋(105)は閉位置にあり、外蓋(111)は開位置にある。先端に接続するためのTYGON(登録商標)チューブ(109)は、金属蓋(105)から金属蓋(105)の縁部(112)にまで及ぶ。
図2】8つのサイクルを備えた流体サイクル(fluid cycling)における、シリンジプランジャー(108)の典型的な移動を示す略図である。戻り行程は、実行行程と同じパラメーターに従って作動し、すなわち、流出運動には、流入運動と同じ特徴がある。サイクルは、戻り行程後の実行行程から成る。サイクル中の時点でのシリンジの長さに沿ったプランジャー配置の位置は、縦座標上で表わされ、時間は横座標上で表わされる。プランジャーは、最初に位置0から位置500(負荷位置(load position))まで移動し、200ミリ秒(ms)の間停止し、流量を最初の充填容量未満にまで減らして、先端に循環容量を残す位置400にまで下がる。100msの停止後、プランジャーは位置400から0まで下がる。各傾斜は、出発速度、最終速度、及び出発速度から最終速度までの加速度を有するように示される。各サイクルには、対称的又は非対称的な行程パラメーターのいずれかがあり、その結果、実行行程と戻り行程は類似するか、又はそれぞれ異なる。
図3A】流体中の組成物等の物質を細胞に導入するための先端アセンブリの内面の典型的な形状を示す、図面とグラフである。物質、流体、及び圧力のソースの近くに位置する頂部又は近位の開口部、並びに、物質、流体、及び圧力のソースから遠位にある下部又は遠位の開口部を備えた、典型的な先端アセンブリの内面の三次元表現の図面である。図面は、先端アセンブリに、遠位に位置付けた収縮部分より大きな内径及び断面積のチャンネル部分があることを示す。半径方向寸法の変化は、先端アセンブリの遠心端の形状寸法を強調するため、近位−遠位の寸法に対して比例しないと示される。スケールバーは200マイクロメーター(ミクロン;μm)である。
図3B】流体中の組成物等の物質を細胞に導入するための先端アセンブリの内面の典型的な形状を示す、図面とグラフである。図3Aに示される先端アセンブリの曲率を特徴付ける8次多項式関数(eighth degree polynomial function)を使用して適合される、近位の開口部から遠位の開口部までの流体径路に沿った先端の長さと、流体経路上の中心軸から先端アセンブリの内面までのラジアル距離との関係を示す曲線である。流体経路(ミクロン)上の中心軸からの先端アセンブリの内面のラジアル距離は、縦座標に示され、流体経路(ミクロン)に沿った先端の長さは横座標に示される。近位(頂部)開口チャンネル部分及び収縮部から、遠位(下部)開口部までの、先端の内面に沿った流体経路は、左から右までに示される。
図3C】流体中の組成物等の物質を細胞に導入するための先端アセンブリの内面の典型的な形状を示す、図面とグラフである。より小さな先端直径(175−200μm)を備えた流体中の物質を細胞に導入するための先端アセンブリの典型的な先端と、先端アセンブリの遠位開口部に近接した長さ250μmの収縮部分の写真である。先端アセンブリは、0.88mmのID、1.23mmのOD、及び0.14mmの壁厚がある、カスタムメイドのガラス管から作られる。
図3D】流体中の組成物等の物質を細胞に導入するための先端アセンブリの内面の典型的な形状を示す、図面とグラフである。図3Cで示されるような典型的な先端の三次元表現の図面である。図面は、先端開口部が、図3Aに示される先端の開口部よりも狭いことを示す。図面は。先端アセンブリの遠心端に近接した、250μmの長さの収縮部分も示す。スケールバーは500μmである。
図4A】流体中の材料を細胞に導入するための先端アセンブリ及びフロースルーアセンブリの典型的な形状を示す、一連の図面とグラフである。物質、流体、及び圧力のソースに近接して位置する頂部又は近接した開口部と、物質、流体、及び圧力のソースから遠位にある下部又は遠位の開口部を備えた、典型的な先端アセンブリの内面の三次元表現の図面である。図面は、先端アセンブリに、遠位に位置した収縮部分よりも大きな内径及び断面積のチャンネル部分があることを示す。半径方向寸法の変化は、先端アセンブリの遠心端の形状寸法を強調するため、近位−遠位の寸法に対して比例しないと示される。スケールバーは、200マイクロメーター(μm)である。
図4B】流体中の材料を細胞に導入するための先端アセンブリ及びフロースルーアセンブリの典型的な形状を示す、一連の図面とグラフである。図4Aに示される先端アセンブリの曲率を特徴付ける8次多項式関数を使用して適合される、近位開口部から遠位開口部までの流体径路に沿った先端の長さと、流体経路上の中心軸から先端アセンブリの内面までのラジアル距離との関係を示す曲線である。流体経路(μm)上の中心軸からの先端アセンブリの内面のラジアル距離は、縦座標に示され、流体経路(μm)に沿った先端の長さは横座標に示される。近位(頂部)開口チャンネル部分及び収縮部からの、遠位(下部)開口部の先端の内面に沿った流体経路は、左から右までに示される。
図4C】流体中の材料を細胞に導入するための先端アセンブリ及びフロースルーアセンブリの典型的な形状を示す、一連の図面とグラフである。フロースルーアセンブリーシステムを示す。この実施形態において、流体は、侵入チャンネルを通って侵入し、収縮部を通り抜け、その後、システムから出る前に別のチャンネル(出口チャンネル)を通り抜ける。
図5】近位開口部(900)、アタッチメントショルダー(901)、取付け部分(902)、チャンネル部分(903)、収縮部分(904)、及び遠位開口部(905)を含む本体がある、先端アセンブリの典型的な形状を示す、三次元表現の図面である。流体経路方向は、近位開口部(900)から遠位開口部(905)まで、又は代替的に遠位開口部(905)から近位開口部(900)までである。チャンネル部分(903)は、収縮部分(904)より大きな内径及び断面積を有するように設計された。スケールバーは200μmである。
図6A】先端アセンブリが、増強された緑色の蛍光性のタンパク質(EGFP)及びヒト・ブタ内在性レトロウイルス受容体(HuPAR2)の融合タンパク質をコードするプラスミドにより細胞をトランスフェクトするために使用されてから24時間後の、主要なヒト臍静脈の内皮細胞(HUVEC)を示す、一連の顕微鏡写真である。HuPAR2タンパク質は、特に細胞核を囲む細胞内の膜の区画に局在化する。細胞は、ペトリ皿に取り付けるため15分間、ガラスボトムの35ミリメーターのペトリ皿上で播種され、37℃で成長培地中で培養された。増強した緑色の蛍光性のタンパク質(EGFP)とHuPAR2の融合タンパク質をコードする遺伝子を運ぶベクターを備えた、先端アセンブリを使用してトランスフェクトされた、HUVEC細胞を示す。左の写真は、微分干渉(DIC)によって視覚化された細胞を示し;中央の写真は、EGFP蛍光の共焦点レーザー走査顕微鏡法(CLSM)によって視覚化された同じ細胞を示し;及び右の写真は、DIC写真と蛍光顕微鏡写真を重ねたものを示す。データから、細胞中のEGFP−HuPAR2融合タンパク質の存在を示す核周囲の細胞内区画において観察される、強い染色(intense staining)によって決定されるように、先端アセンブリが、細胞を効果的にトランスフェクトしたことが分かる。蛍光画像における光学的切片の厚みは0.7μmである。したがって、画像は、細胞内区画内のEGFP−HuPAR2の発現を示す細胞を通る、光学断面積である。スケールバーは10μmである。
図6B】先端アセンブリが、増強された緑色の蛍光性のタンパク質(EGFP)及びヒト・ブタ内在性レトロウイルス受容体(HuPAR2)の融合タンパク質をコードするプラスミドにより細胞をトランスフェクトするために使用されてから24時間後の、主要なヒト臍静脈の内皮細胞(HUVEC)を示す、一連の顕微鏡写真である。HuPAR2タンパク質は、特に細胞核を囲む細胞内の膜の区画に局在化する。細胞は、ペトリ皿に取り付けるため15分間、ガラスボトムの35ミリメーターのペトリ皿上で播種され、37℃で成長培地中で培養された。EGFPとHuPAR2の融合タンパク質をコードする遺伝子を運ぶ、ベクターを備えた先端アセンブリを使用してトランスフェクトされた、様々なHUVEC細胞の顕微鏡写真である。細胞は、明視野DICとCLSM蛍光の組み合わせによって視覚化され、DICチャンネルと蛍光チャンネルを重ねたものが示された。顕微鏡写真は、HUVEC細胞におけるGFP−HuPAR2タンパク質の重要な核周囲の染色を示す。EGFPとHuPAR2の融合タンパク質をコードする遺伝子によりトランスフェクトされたこれら多くのHUVEC細胞の画像は、1つのトランスフェクトされたHUVEC細胞の写真(図6Aの左の写真)の画像にほぼ類似している。
図7A】本明細書における方法とシステム使用してプラスミドによりトランスフェクトされ、融合タンパク質EGFP−CDC42(増強した緑色の蛍光性のタンパク質−細胞分裂制御タンパク質42)をコードする、主要なHUVEC(ヒト臍静脈の内皮細胞)の一連のCLSM蛍光画像である。スケールバーは20μmである。レーザー走査型共焦点顕微鏡法を使用してトランスフェクションを行った24時間後に観察された、EGFP−CDC42染色を示す。染色は、細胞の核内の染色がほとんどなかったもの又は全くなかったものと比較して、周辺にある細胞質中で観察されなかった。
図7B】本明細書における方法とシステム使用してプラスミドによりトランスフェクトされ、融合タンパク質EGFP−CDC42(増強した緑色の蛍光性のタンパク質−細胞分裂制御タンパク質42)をコードする、主要なHUVEC(ヒト臍静脈の内皮細胞)の一連のCLSM蛍光画像である。スケールバーは20μmである。最近分割した1組の娘細胞のトランスフェクションの結果として、EGFP−CDC42発現を示す。発現は、娘細胞間の領域で集中されることが観察された。
図7C】本明細書における方法とシステム使用してプラスミドによりトランスフェクトされ、融合タンパク質EGFP−CDC42(増強した緑色の蛍光性のタンパク質−細胞分裂制御タンパク質42)をコードする、主要なHUVEC(ヒト臍静脈の内皮細胞)の一連のCLSM蛍光画像である。スケールバーは20μmである。標準PMT(光電子増倍管)感度でEGFP−CDC42によりトランスフェクトされたHUVEC細胞の、より大きな倍率を示す。蛍光は、大きな果粒に局在化されると観察された。
図7D】本明細書における方法とシステム使用してプラスミドによりトランスフェクトされ、融合タンパク質EGFP−CDC42(増強した緑色の蛍光性のタンパク質−細胞分裂制御タンパク質42)をコードする、主要なHUVEC(ヒト臍静脈の内皮細胞)の一連のCLSM蛍光画像である。スケールバーは20μmである。EGFP−CDC42によりトランスフェクトされたHUVEC細胞を示し、その画像は、標準PMT感度より高い感度で走査される。EGFP−CDC42発現は、図7Cで観察され、且つ細胞周辺を含む細胞の至る所に位置する果粒よりも小さなサイズの細胞内果粒において観察された。
図8A】EGFP−アクチン融合タンパク質をコードする7kbのプラスミドにより、本明細書における方法とデバイスを使用してトランスフェクトされた主要なHUVEC細胞から得たデータを示す、一連の共焦点蛍光顕微鏡画像及び棒グラフである。EGFP−アクチンによりトランスフェクトされた主要なHUVEC細胞のクラスターを示す。EGFPのトランスフェクション及び発現は、細胞骨格のアクチンフィラメントに局在化されると観察された。
図8B】EGFP−アクチン融合タンパク質をコードする7kbのプラスミドにより、本明細書における方法とデバイスを使用してトランスフェクトされた主要なHUVEC細胞から得たデータを示す、一連の共焦点蛍光顕微鏡画像及び棒グラフである。細胞のアクチンフィラメントにおいてEGFPの発現を示す、EGFP−アクチンによりトランスフェクトされた主要なHUVEC細胞の画像である。
図8C】EGFP−アクチン融合タンパク質をコードする7kbのプラスミドにより、本明細書における方法とデバイスを使用してトランスフェクトされた主要なHUVEC細胞から得たデータを示す、一連の共焦点蛍光顕微鏡画像及び棒グラフである。本明細書における方法とデバイスにより、又はAMAXA Nucleofactor(商標)(Lonza Cologne GmbH、Cologne、Germany)のエレクトロポレーション装置によりトランスフェクトされた、HUVEC細胞におけるEGFPアクチンmRNAのコピー数を示す棒グラフである。TCは、本明細書に記載される方法を使用したプラスミドによるトランスフェクションを示し、CTは、EGFPアクチンプラスミドが無い制御手順を示す。AMAXAは、データがAMAXA Nucleofactor(商標)のエレクトロポレーション装置により得られることを示す。本明細書に記載の方法によるトランスフェクションは、市販のAMAXAトランスフェクションデバイスによるものよりも、かなり多くの1つの細胞当たりのmRNAのコピー数をもたらした。
図9】EGFPをコードするプラスミドの量(50μlの液量につき、2μg、5μg、又は10μg)でトランスフェクトされたジャーカット細胞のEGFP蛍光のフローサイトメトリー定量化を示す、線グラフである。5.0μgのプラスミドにより処置された細胞は、制御細胞の中で観察された背景蛍光より大きなEGFP蛍光を示した。
図10A】EGFPプラスミド又はCy3により標識化したmiRNAにより、本明細書における方法とデバイスを使用してトランスフェクトした、培養された主要なマウス脳の星状細胞の一連の共焦点顕微鏡蛍光画像である。スケールバーは10μmである。EGFPプラスミドによりトランスフェクトされた、少数の主要なマウス脳の星状細胞の共焦点蛍光顕微鏡画像である。円形の細胞には、背景レベルに近い蛍光強度がある。
図10B】EGFPプラスミド又はCy3により標識化したmiRNAにより、本明細書における方法とデバイスを使用してトランスフェクトした、培養された主要なマウス脳の星状細胞の一連の共焦点顕微鏡蛍光画像である。スケールバーは10μmである。様々なレベルの蛍光強度を備えた細胞を示す、EGFPプラスミドによりトランスフェクトされた主要なマウス脳の星状細胞のクラスターの共焦点蛍光顕微鏡画像である。
図10C】EGFPプラスミド又はCy3により標識化したmiRNAにより、本明細書における方法とデバイスを使用してトランスフェクトした、培養された主要なマウス脳の星状細胞の一連の共焦点顕微鏡蛍光画像である。スケールバーは10μmである。蛍光強度の下位レベルを備えた細胞に囲まれた、高い蛍光強度を備えた細胞を示す、EGFPプラスミドによりトランスフェクトされた主要なマウス脳の星状細胞のグループの共焦点蛍光顕微鏡画像である。
図10D】形態学的特徴を示す、同じ細胞の明視野画像上のEGFPプラスミドによりトランスフェクトされた主要なマウス脳の星状細胞の共焦点蛍光顕微鏡画像と、培養細胞の形状の明白な輪郭を重ねたものである。
図10E】EGFPプラスミド又はCy3により標識化したmiRNAにより、本明細書における方法とデバイスを使用してトランスフェクトした、培養された主要なマウス脳の星状細胞の一連の共焦点顕微鏡蛍光画像である。スケールバーは10μmである。内面化されたmiRNAを示す、Cy3により標識化したmiRNAによりトランスフェクトされた2つの主要なマウス脳の星状細胞の共焦点蛍光顕微鏡画像であり、それは、小さなラウンドスポット(round spot)として細胞質中で大半が局在化される。核を通る共焦点形のセクション内の2つのCy3により標識化した点又は斑点に見られるように、左下にある細胞はまた、核へのmiRNAの別個の内面化を示し、トランスフェクションによって細胞の核にmiRNAが侵入したことを実証する。
図10F】EGFPプラスミド又はCy3により標識化したmiRNAにより、本明細書における方法とデバイスを使用してトランスフェクトした、培養された主要なマウス脳の星状細胞の一連の共焦点顕微鏡蛍光画像である。スケールバーは10μmである。異なる細胞の中でmiRNAの内面化のレベルを変更することを示す、Cy3により標識化したmiRNAによりトランスフェクトされたマウス脳の星状細胞のグループの共焦点蛍光顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
細胞は、脂質及び脂肪分子の二重層を含む原形質膜に囲まれる。原形質膜の保全性は、個々の脂質分子中の静電力によって、及び膜と基礎的な細胞骨格の間の相互作用によって影響される。個々の脂質分子は、二重層の内側の小葉及び外側の小葉の平面を通って拡散する。二重層内のこれら脂質分子の活動は、脂質二重層が負荷され水を忌避し(polar)、且つ細胞への及び細胞からの水の通過を妨げると明示する、原形質膜の流動モザイクモデルを使用して記載される。二重層は、核酸、タンパク質、及び脂肪を含む生体分子のための障壁としても役立つ。
【0030】
細胞のトランスフェクションのための加圧された流量装置及び方法は、2010年3月12日出願のPCT/US2010/0271040(WO2010/105135 A1)において、Diefenbach T.によって記載される。Diefenbachの方法を使用する細胞のトランスフェクションは、受容細胞において組み換え型タンパク質の発現をもたらす。装置には、パイプ部分及び隣接する先端部分があり、装置は、パイプ部分の近位端部で吸引デバイスに接続される。
【0031】
本明細書における発明は、物質を細胞に導入するため、例えば、遺伝物質等の組成物を生細胞又は生育不能な細胞に導入するための、システム、先端アセンブリ、方法、及びキットを提供する。本明細書における発明はまた、流体が1つのチャンネルを通って収縮部に侵入し、システムから出る前に別のチャンネルを通って流れる、フロースルーアセンブリを提供する。本明細書における発明によって提供されるシステムにおいて、フローデバイスに接続する先端アセンブリは、再使用可能な先端アセンブリであり、その結果、同じ先端が複数のトランスフェクションに使用される。随意に、使い捨ての先端アセンブリは、以前に未使用の先端アセンブリを各トランスフェクションに使用することを可能にする、フローデバイスに接続する。
【0032】
任意の特定の理論又は作用の機構によって制限されることなく、本明細書における方法は、流体力学技術(fluid dynamic technology)を使用し、低いCa+2の条件と組み合わせ、血漿と恐らくは核膜が瞬間的に伸ばされるほど早い速度で細胞を通過させ、それにより、長くて比較的薄い分子形状におけるプラスミド又は線形のDNAの侵入を可能にする膜に、一時的な穴を生成する。細胞の細胞質への物質の侵入は、細胞骨格に沿った輸送と、及び核輸送体の助けにより角膜を通って核に侵入することにより、細胞における目標(例えば、核)に物質を運ぶ、細胞輸送機構によって行われる。単一のDNAらせんの直径は2ナノメーター(nm)である。しかしながら、環状DNAプラスミドは、コイル化とスーパーコイル化に晒される。本明細書に記載される方法によって生成された細胞膜の開口部は、細胞へのプラスミドの侵入を可能にすることができる構成を得る。エレクトロポレーションは、直径120nmほどの大きな開口部をもたらす。本明細書における実施例は、本明細書における方法が、このサイズ、例えば、少なくとも約1nm乃至約10nm、約10nm乃至約60nm、約60nm乃至約100nm、約100nm乃至約120nm、又は少なくとも約120nm乃至約140nmに類似する膜の開口部をもたらすことを示す。
【0033】
本明細書で使用されるように、用語「導入する」は、インビトロ(in vitro)又はインビボ(in vivo)の何れかにおいて、巨大分子又は低分子量の分子などの組成物を細胞に送達するための様々な方法の何れかを指し、前記方法は、変形、形質導入、トランスフェクション、及び感染を含む。ベクターには、プラスミドベクターとウイルスベクターが含まれる。ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、或いは、アデノウイルスベクター又はアデノ関連のベクターなどの他のベクターを含む。ベクターを構築する方法は、例えば「Ericsson, T. A. et al. 2003 PNAS vol. 100 (10): 6759−6764」に示される。
【0034】
用語「細胞」は、生細胞、新陳代謝しない細胞、休止細胞又は阻害細胞、及び再生しない細胞を含む。本明細書における方法のため、細胞は、容器中の流体又は培地において懸濁され、圧力差は原形質膜にわたって適用される。圧力差は、とりわけ、培地、細胞質のイオンの成分によってかけられた異なる圧力、及び培地にかかる圧力によって引き起こされる。培地の圧縮性は、圧力差に影響する因子である。細胞は、様々なタイプの溶媒に、一般的には血液又は組織などの、生物学的に及び自然発生する流体を含む水性溶媒に、都合良く入れられる。水は比較的圧縮不可能であり、圧縮性は、水性溶媒中の細胞に課された、観察された圧力差と関係がない。定常性の場合の水温は、定常性のまま残る流体密度に影響しない。非圧縮性流体のこの圧力は、静圧と称される。
【0035】
本明細書で使用されるように、用語「通過(passage)」は、先端アセンブリの一部又は長さの少なくとも1つを通る流体と細胞の通過(transit)、或いは、貯蔵槽から先端アセンブリを通る容器までの細胞の輸送を指す。一つの通過は、先端アセンブリを通って細胞を備えた流体を少なくとも促進又は運ぶことを含む。複数の通過の反復は、流体が容器に集められ、先端アセンブリを通って吸引によって後ろに運ばれる通過サイクルを含み得る。関連する実施形態において、通過は、全体的に先端アセンブリを通って流体を推進させることを意味し、容器から細胞の懸濁液を除去してチャンネル部分へ移すこと、及び細胞を同じ容器に戻すこと、又は先端アセンブリ部分を通って細胞を複数の容器に、或いは複数の容器の少なくとも1つに分配することを含む。
【0036】
一般に、通過中に圧力下で混合物を排出することは、特定の周波数を有する圧力波を生成することを含む。句「力学的な波」は、物質媒体の弾性及び慣性の特性に依存する波の速さで、物質媒体(固体、液体、又は気体)を通って伝わる波を指す。力学的な波の波動には、縦波と横波が含まれる。一般に、本明細書における方法において、圧力波は縦波であり、粒子変位は波が伝わる方向と平行である。
【0037】
流体中の分子は、常に移動している状態であり、全圧と称される圧力を、容器の壁にかける。方向付けられた移動又は順序づけられた移動に設定されると、分子を移動させる運動量に関連した圧力の更なるタイプである動圧が、生成される。したがって、分子の移動は、静圧(すなわち動圧)に寄与する。動圧を静圧に加えることで、フローイングシステム(flowing system)に全圧が生じる。故に、流体中の細胞は、多くの原動力及び動圧にさらされる。
【0038】
追加の流体の動的因子は、コンジット又はチューブを通って、狭窄した又は収縮した部分に向かう流体の条件下で考慮される。変化する断面積を備えたチューブを通る、流体速度の変化に付随する圧力の変化は、流体がチューブの断面積の減少によって流れた場合に、付随する圧力の減少及び流体速度の増加が観察されるであろうと提示する、ベルヌーイ方程式によって記載される。ベルヌーイ方程式は、以下の式を提示する:
/2+gz+p/r=定常
ここで、vは、流線形(streamline)における点での流体の流速であり、gは重力による加速度であり、zは、重力の加速度の方向に対向するz方向による基準面上の点までの上昇であり、pは圧力であり、rは流体密度である。ベルヌーイの原理は、流体圧力の減少をもたらすチューブ直径の減少、即ち、ヴェンチュリ効果として知られているプロセスを解明する。
【0039】
ヴェンチュリ効果は、質量を保存するため、収縮部における流体速度を増加させる収縮部を通過する流体から、エネルギー保存の法則の達成の結果として生じる。流体の速度が増加するにつれ、運動エネルギーが増加する。したがって、流体圧力の減少は、運動エネルギーの増加に反作用するように生じる。
【0040】
流体で満たされたチャンネル又は通路を移動する細胞は、より狭い直径の出射口を通る際に、チャンネルの収縮部において速度の増加を受ける。懸濁液中のこれら細胞は、高圧力又はそれより高い圧力から、低圧力又はそれより低い圧力までの突然の変化を経験する。低圧力は、細胞の一時的な伸縮、又は原形質膜の流動性の一時的な変化をもたらし、それにより、細胞膜に一時的な穴、孔、又は小さな裂け目を作り、限定されないが、遺伝物質、cDNA、siRNA、miRNAを含む。流体又は溶液中の低いCa+2濃度は、細胞膜の密閉に要求される時間の延長を促進し、更に、濃度勾配を下げる物質が、膜の穴を通って細胞内部に侵入することを促進する。ベルヌーイの原理は、流体圧力が、DNAなどの大きな分子、又は薬物を含む小さな分子などの流体中の他の分子の、細胞への侵入を促進する構造である。
【0041】
本明細書における実施例は、細胞膜に孔又は穴を作るため、チャンネル部分と収縮部が含まれる先端アセンブリを利用する。先端アセンブリの形状の典型的な三次元表現の図面は、図3Aで示される。任意の特定の理論又は作用の機構に制限されることなく、細胞が例えば図3に示されるような狭窄部又は収縮部を通った後、2方向の通過のための曲線状の縁部を備えた遠位開口部、1つの実施形態において、同じ、大きな又は小さな直径を有するセクションへの、チャンネルの更に遠位の収縮部の拡大があることを想定する。図3Aに示される形状の内曲率は、断面として二次元で表わされる(図3B)。先端アセンブリの断面は、流量と平行である。1つの実施形態において、流量の典型的な曲率と先端アセンブリの形状は、以下の方程式によって二次元で特徴化され:
f(x)=p1x+p2x+p3x+p4x+p5x+p6x+p7x+p8x+p9
ここで、xは、流体経路上の中心軸から先端の内面までのラジアル距離であり、係数(括弧内に95%の信頼限界を備えた)は以下のものである:p1は2.285(1.388、3.182)であり;p2は3.465(1.782、5.149)であり;p3は−15.68(−20.04、−11.32)であり;p4は−20.38(−27.24、−13.52)であり;p5は44.27(36.5、52.04)であり;p6は53.96(45.69、62.23)であり;p7は−58.72(−64.02、−53.42)であり、p8は−123.5(−126.4、−120.6)であり;及びp9は186.5(185.6、187.4)である。適合度を得るため適用されるパラメーターは、次の通りであった:エラー(SSE)による平方和は66.5であり、r−正方形(R)は0.9997であり、調節されたRは0.9997であり、及び二乗平均平方根のエラー(RMSE)は1.341である。
【0042】
当業者は、圧力が流量中に変化する速度を変化させるため、先端アセンブリの曲率の変化の程度を変える。例えば、様々なチャンネル部分は、物質を細胞に導入するのに必要な流体の容積、流体圧力、又は流体速度に依存する、様々な長さを有するように構築される。例えば、近接端部で1ミリメーター(mm)の内径を有する2センチメーター(cm)のチャンネル部分は、先端アセンブリを通る50μlの流体を十分に加速するために構築される。故に、曲率は、図3A及びBに示される曲率の実施形態よりも急勾配で、又は、浅くされる。より浅い曲率が、図4Aに三次元で示される。二次元での流体経路の内曲率の断面形状は、図4Bに示される。この2次元曲線は、以下に示される8次多項式を使用して適合される:
f(x)=p1x+p2x+p3x+p4x+p5x+p6x+p7x+p8
ここで、xは、流体経路上の中心軸から先端の内面までのラジアル距離であり、係数(括弧内に95%の信頼限界を備えた)は、以下の通りである:p1は−2.611e−16(6.043e−16、8.206e−17)であり;p2は3.954e−13(−3.195e−13、1.11e−12)であり;p3は−1.845e−10(−7.821e−10、4.131e−10)であり;p4は1.662e−08(−2.394e−07、2.726e−07)であり;p5は7.537e−06(−5.186e−05、6.694e−05)であり;p6は−0.002137(−0.009375、0.005101)であり;p7は−0.003185(−0.4114、0.4051)であり;及びp8=268.6(261、276.3)である。適合度を得るために使用されるパラメーターは、次の通りであった:SSEは31.09であり、Rは0.9998であり、調整されたRは0.9997であり、RMSEは1.189である。
【0043】
任意の特定の理論又は作用の機構に制限されることなく、先端アセンブリの曲率の変化は、使用される流体の特徴(例えば粘性、温度、及び分子の成分)のため、及びまた、より大きな細胞がより大きな収縮部のサイズを必要とし得るために利用される細胞のタイプ上でカスタマイズされる。血液細胞は例えば、直径約5μm乃至約10μmしかない。対照的に、アフリカツメガエルの卵母細胞は、直径1000μm又は1mmである。体積比率に対してより大きな表面積を有する細胞(すなわちより小さな細胞)は一般に、より小さな直径の収縮部とより大きな減圧による、本明細書における方法において使用される。例えば、本明細書における先端アセンブリの適切な減圧は、少なくとも約0.1%、約0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、又は約95%を含む。遠位開口部に通じる経路の直径の減少から結果として生じる圧力降下は、容積の流量及び直径の変化に依存する。例えば、1mmから0.25mmまでの直径の段階的な減少が行われると、水の5ml/minの流量により、圧力降下は0.28ミリバール(mbar)になり;10ml/minの流量により、圧力降下は5.55mbarになり;10ml/minの流量により、圧力降下は5.55mbarになり;50ml/minの流量により、圧力降下は27.9mbarになり;100ml/minの流量により、圧力降下は55.6mbarになり;及び150ml/minの流量により、圧力降下は2643.4mbarになる。本明細書における先端アセンブリは、動物細胞、植物細胞、及び原核細胞を含む、より小さな又はより大きな細胞を含む任意の細胞型に使用される。
【0044】
流体経路の直径の減少の範囲は、流体圧力の減少を決定する。流体圧力が減少する方法及び程度は、流体経路を移動する細胞の細胞膜における孔形成の速度及び量に影響する。図3A及び図4Aは、狭くなり、従って流体圧力を減少させ、並びに流体経路中の細胞の孔形成を促進する、典型的な流体経路とチャンネル形状を示す。収縮部の近くに位置するチャンネルは、遠位の狭窄部又は収縮部に通じる、均一な不変の形状を有する。本明細書において想定される先端アセンブリには、上記の式によって例証される流体経路又は曲率がある。
【0045】
先端アセンブリは、様々な適切な材料及び適切な開口サイズの何れかの様々な実施形態において製造される。関連する実施形態における先端は撥水剤などのポリマーから製造され、又は流体の正確な分配を防ぐ細胞の先端アセンブリへの接着又は液滴形成を妨げるための薬剤でコーティングされる。
【0046】
先端を構築する方法には、吹込成形、真空成形、及び熱成形が含まれ、それらは、2008年1月15日、2002年11月19日、及び2000年9月12日に発行された、Smithの米国特許第7,318,911号、第6,482,362号、及び第6,117,394号;2010年9月14日に発行された、Pelletierらの米国特許第7,794,664号;2003年7月22日に発行された、Taggartらの米国特許第6,596,240号;及び1994年8月9日に発行された、Tezukaらの米国特許第5,336,468号に記載される。ホウケイ酸ガラス材料及び方法は、例えば、2008年3月11日に発行された、Marquesの米国特許第7,341,966号、及び1998年4月7日に発行された、Watzkeらの米国特許第5,736,476号に示される。
【0047】
方法と先端アセンブリは、迅速な高スループット方法においてDNAを細胞に確実に導入するため、自動ロボットシステムへの組み込みに適している。例えば、本明細書における先端アセンブリは、細胞の汚染を少なくする自動の方法において、細胞をトランスフェクトして形質導入するために使用される。本明細書における先端アセンブリは、様々な実施形態において、手動ピペット及び自動ピペットに付着するように、並びに単一の先端ピペットシステム及び複数先端ピペットシステム等のシステムをそれぞれ分配するように想定される。
【0048】
本発明を更に制限することなく、1以上の代替の機構が、観察されたトランスフェクション効果を生み出すように操作され得ることが、本明細書で想定される。孔を通る輸送(pore transport)のエネルギー学に影響を及ぼす衝撃、pH、高エネルギー、又は超音波に依存する、大半の既存の方法とは異なり、これらの他の仮定された機構は、狭窄チャンネルを流れる細胞から生じる変形ではなく、それ自体での細胞変形に依存する。
【0049】
細胞の形状が球状と偏球の間で変わる方法で、流体懸濁液中の細胞を、歪曲に繰り返し曝すことにより、原形質膜の基礎にある皮質の細胞骨格の転位が引き起こされ得、脂質又は脂質ラフトの可動性に影響し、或いは、膜の代謝回転に影響し、それは、膜の孔の形成に影響を及ぼし得る。細胞膜の流動性は、(「Sventina et. al., 2004, Bioelectrochemistry, 62: 107−113」による、赤血球において明示された方法に類似した方法で)根本的な細胞骨格の変化によって影響を受けることがあり;及び、(細胞の平滑化等の)全体の細胞の変形は、流動性の変化に寄与し得る。流量と無関係である繰り返しの圧縮/拡張に細胞を暴露し得る圧力変化(即ち、静的な停止(static suspension))はまた、孔形成自体が膜の流動性に依存するため、潜在的に孔形成を引き起こし得る。既存の音波周波数又は超音波周波数よりも略低い速度でのこのような反復はまた、静的な細胞状態下にある孔に広がる障壁エネルギーに影響を及ぼし得る、細胞の蠕動又は低周波パルスをもたらすように、視覚化され得る。特定の細胞及びトランスフェクション薬剤に対するこの効果を最適化するために、このような効果の範囲が、静止流体柱内に突然の圧力変化又は配列の変化を導入するため、異なる試験計器を使用して、試験され、定量化され、又は他に立証され得る。このフローフリー機構は、先行技術のトランスフェクションプロトコルにおいて細胞を傷つけると知られている、潜在的に破壊的なせん断条件が比較的無い。
【0050】
遺伝子物質等の組成物を細胞に導入するための、本明細書における方法は、該方法が急速で、信頼でき、(高価な試薬を必要とすること無く)経済的であるため、先行技術にわたって著しい改善を提供し;受容細胞は、非常に高い生存度及び発現効率を特徴とする。本明細書における方法は有利に、潜在的な伝染性により生物学的安全性のレベル2を必要とするウイルス(例えば、組み換え型のアデノウイルス)を必要としない。
【0051】
本明細書における方法は、有毒化学物質、複雑な手順、又はウイルスを使用することなく実行される。組織から又は培養皿の表面から分離される細胞は、本明細書における方法で使用するのに適切な物質である。したがって、本明細書における方法は、分離によって得られた組織の細胞に、及び細胞懸濁液(例えば、一次細胞、細胞株の培養細胞)に適用可能である。
【0052】
エレクトロポレーションの先行技術の方法を使用して、得られた最も高い効率は、核酸を発現する受容細胞のわずか約40%である。アデノウイルス感染症の発現に関して、得られた最も高い効率は約30%乃至85%であり、一般に低い。遺伝子銃は、1%と5%の効率の間で典型的に達成する。対照的に、本明細書における方法は、約85%乃至90%のトランスフェクション効率で、一次細胞のHUVEC(ヒト臍静脈内皮細胞)における可視のタンパク質発現をもたらした。
【0053】
本明細書における方法は、インサイツ(in situ)における組織、及び培養液中の細胞の単層にも適用可能である。本明細書における方法は、機能分析のため遺伝子を発現させるために、化学的又はウイルスのベクターを必要とする比較的長い時間(数時間又は数日)を回避する(bypass)。カチオン試薬、遺伝子銃、及びエレクトロポレーション等の方法は、使用され得るcDNAのサイズ又は長さによって制限され、それにより、実験又はスクリーンにおいて取り組まれ得るタンパク質のタイプを制限する。
【0054】
本明細書における実施例は、大きなプラスミド、増強した緑色の蛍光性のタンパク質(EGFP)−アクチン(7kb)の使用を示す。実施例7におけるデータは、プラスミドが、AMAXA Nucleofactor(商標)の装置(Lonza, Cologne GmbH, Cologne, Germany)などのエレクトロポレーションを使用する従来の方法を使用するよりも、本明細書におけるシステム、先端アセンブリ、及び方法を使用する方がより効果的及び効率的に細胞に導入されたことを示す。本明細書の実施例における方法には、1つのトランスフェクション薬剤又は複数のトランスフェクション薬剤を使用する工程が含まれる。例えば、トランスフェクション薬剤は、ナノ粒子、リポソーム、ウイルスベクター、バクテリオファージ、及び洗浄剤である。例えば、トランスフェクション薬剤はリポフェクタミンである。
【0055】
典型的な方法は、少なくとも1つの通過、又は複数の通過を含み、例えば、通過の約5乃至10の反復は、1分以内に行われる。例えば、1回の通過又は通過の複数の反復、1回以上行われる繰り返しの通過は、急速に行なわれる。細胞型に依存して、方法には、特定の時間内(例えば、約1時間、約2時間、又は約5時間の間)に、10分ごとに通過を5回繰り返す工程が含まれる。例えば、複数の通過は、短期間で急速に行われ、例えば、1分で10乃至50、又は50乃至100が流れる。
【0056】
一般に、複数の通過が、物質(例えば、遺伝物質及び薬物)を複数の細胞に導入するのに十分であったことが観察された。細胞は、1回の処置後、又は処置の間に、適切な温度(例えば37℃)で細胞培地中に維持された。
【0057】
本明細書における方法は、異なる細胞型上で実行され、異なる細胞型の幾つかは、遺伝子操作に抵抗性があるものとして以前は分類されていた。細胞型には、例えば、不死化細胞、活発に増殖する細胞(例えば、培養液中の細胞)、一次細胞、及び本明細書において同定して実証された細胞株が含まれる。本明細書における実施例は、過去に都合良く、トランスフェクション試薬、又はエレクトロポレーションに順調に応答せず、低い生存度、又はトランスフェクション効果における細胞型の特異的差異をもたらした細胞を用いる方法の成功的な使用を実証する。
【0058】
一般に、システムから細胞を排出する工程は、細胞の核への物質(例えば遺伝物質)の局在化をもたらす。代替的に、排出は、細胞(例えば、小胞体、ゴルジ体、ミトコンドリア、及びリソソーム)の細胞質の部分への物質の局在化をもたらす。
【0059】
一般に、細胞は複数の細胞である。方法の実施形態において、細胞は、生細胞の母集団内の生細胞であり、細胞の生存度は実質的に減少されない。
【0060】
一般に、遺伝物質はDNA又はRNAである。例えば、DNAはcDNAである。例えば、RNAは、mRNA、tRNA、rRNA、siRNA、RNAi、miRNA、及びdsRNAから成るグループから選択された、RNAの少なくとも1つの分類である。他の実施形態における物質は、インスリン、EGF、EPO、又はIGF IIなどの、タンパク質又はポリペプチドである。また他の実施形態における物質は、デキストラン又はアミロース等の多糖類である。
【0061】
一般に、細胞は、以下のものから成るグループから選択された細胞型を含む:上皮細胞、造血性細胞、幹細胞、脾臓細胞、腎臓細胞、膵臓細胞、肝細胞、神経細胞、膠細胞、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)、平滑筋細胞又は横紋筋細胞、精細胞、心臓細胞、肺細胞、視細胞、骨髄細胞、胎児の臍帯血細胞、始原細胞、末梢血単核細胞、白血球細胞、リンパ球、生きた分裂終了細胞、生理的に不活性な細胞、阻害された細胞、UVにより不活性化された細胞、除核細胞、無核細胞、熱により死滅させられた細胞、再生しない細胞、及び人工膜を有する合成細胞など。
【0062】
一般に、組織は哺乳動物の組織である。例えば、哺乳動物の組織は、ヒト組織(例えば、皮膚、腎臓、膵臓、肝臓、肺、心臓、脳、脊髄、骨髄、及び目)である。単層の実施形態は、幹細胞(例えば、造血細胞(hematopoietic)、血管芽細胞、間充織、肝細胞、膵臓、肺、神経、胎児、及び胚から選択された、少なくとも1つの幹細胞)を含む。組織はまた、マウス、ラット、ブタ、ヤギ、ウマ、サル、魚類、及び鳥類を含む他の脊椎動物種から由来し得る。代替的に、方法はまた、線虫、扁形動物、軟体動物、昆虫、棘皮動物などを含む無脊椎動物種由来の生細胞、又は、植物細胞或いは酵母菌由来の生細胞と共に使用され得る。
【0063】
本発明が現在十分に記載され、説明的であって更なる制限を意図しない以下の実施例及び請求項によって、更に示される。当業者は、所定の実験だけを、本明細書に記載される具体的な手順に対する多くの同等物を使用して、認識するか又は確認することができる。このような同等物は、本発明及び請求項の範囲内にある。本出願の全体にわたって引用される、発行された特許及び公開された特許出願を含む、すべての引用文の内容は、その全体を引用により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0064】
〈実施例1:トランスフェクションデバイスの実施形態の設計〉
本明細書に記載されているトランスフェクションデバイスの実施形態は、図1のパネルAからDに示される。デバイスの主要構成要素は、先端アセンブリ、USBコンバーター(103)とRS232インターフェース(104)によって先端アセンブリへ接続されたコンピュータープログラム可能なシリンジポンプ(101)、(102)、そして電力供給装置(110)である。図1のパネルAに示されるように、シリンジポンプ(101)、(102)は、ジャンプボックス(106)の金属蓋(105)の内部側面へ付けられている。USBコンバーター(103)及び、前記シリンジポンプを外部コンピュータへ接続するRS232インターフェース(104)も、ジャンプボックス(106)の金属蓋(105)の内部側面に付けられている。ハードウェアは、実験室における前記デバイスの使用中は見えない。RS232インターフェース(104)及びUSBコンバーター(103)を介して通信する外部コンピュータは、データ解析ソフトウェアMATLAB(Mathworks、Natick、MA)を用いて、シリンジポンプ(101)、(102)を制御するために使用される。代替的に、トランスフェクションデバイスは、単純なグラフィカルユーザーインターフェース・ソフトウェア(LabWindows(登録商標)/CVI Run−Time Engine 8.5.1(National Instruments、Austin、Texas)を使用する。
【0065】
ジャンプボックス(106)の右側にあるプログラム可能なシリンジ及びポンプ機構(101),(102)の位置は、図1Bに示される。ホウケイ酸ガラスシリンジ(101)は、潤滑及び耐溶剤性のためのUHMWPE(超高分子量ポリエチレン)シール(107)を有する。タイゴン(登録商標)チューブ(109)は、ジャンプボックス(106)の金属蓋(105)を通じて、追加のチューブによってソーダ石灰ガラスキャピラリーチューブ(先端)の近接端部に接続する。前記キャピラリーチューブは、寸法:内径1.1−1.2mm、壁厚0.2mm、長さ75mmである典型的な先端(図3パネルA)である。
【0066】
電力供給装置(110)は、ジャンプボックス(106)内部の左下に位置する(図1パネルC)。電力供給装置(110)は、ディストリビュータ・ボード及び平らなコントロールパネルの基準である、単相24V、2.5A電力供給装置(PHOENIX CONTACT GmbH Co. KG, Step Power, Blomberg、Germany)である。電力供給装置(110)は待機損失が少なく、高効率である。代替的に、電力アダプターは24V、2.5Aの出力をもつFSP60−11(FSP North America)である。電源は、100−240V、2.0A、50−60Hzの入力を要する。
【0067】
図1パネルD内に示されるように、ジャンプボックス(106)は、滅菌状態にある組織培養フローフード内に位置する。使用中、金属蓋(105)は閉位置に、外蓋は開位置(111)にとどまる。
【0068】
〈実施例2:トランスフェクション中の流体サイクルパラメーター〉
本実施例は、本明細書中に記載されている方法及びシステム、又はデバイスで用いられる先端アセンブリの先端を通じた流体サイクル中の一般的な流体パラメーターを示す。
【0069】
流体中の細胞へ導入されるべき細胞及び組成物を含有する混合物は、本明細書に記載されているトランスフェクションデバイスの先端へ反復的に引き込まれ、なおかつ前記先端から押し出されることで、結果的に流入と流出のサイクルを生じる。戻り行程が後続する実行行程はサイクルを構成する。戻り行程及び実行行程は同じパラメーターに従って作動する。実施例1に記載されているプログラム可能なシリンジ(101)、(102)は、フローサイクルを生む。図2において、流体サイクルの実施形態におけるシリンジプランジャー(1008)の動きを示した略図が示され、横軸には時間、縦軸には表示されているサイクル間に、その時間でプランジャーが位置するシリンジの長さに沿った位置が示されている。
【0070】
この実施形態において、以下のコマンドシーケンスが使用された:
/1L14v400V900c200A500M200gL20v100v1000c1000A400M100A0G8L14v400V900c200A0R
【0071】
左から右へ進むこのコマンドシーケンスにおけるプランジャー運動及び関連するパラメーターが本明細書に記載される。前記コマンドシーケンスでのプランジャー位置は、接頭辞としてとして加えられた文字Aで、図2内の縦座標上に示されたプランジャー位置と対応する。例えば、図2内でのプランジャー位置(500)は、コマンドシーケンスにおける位置A(500)である。図2は、以下のように実行された8つのサイクルを示す:
【0072】
L14は初速ランプ(加速)であり、v400は始動速度であり、V900はこのランプ間での最大速度である。A500は、シリンジプランジャー(108)が先端を充填し(loading)、最初に移動する位置である。A500は充填位置と呼ばれる。プランジャーがA500に達する場合、c200は遮断速度である。M200は充填位置での200ミリ秒(ms)の一次停止である。サイクルは200msの一時停止の後に始まり、コマンドシーケンスでのgで示される。サイクルのランプには、加速L14がある初速ランプを除いて、最大加速L20、始動速度100(v100)、最大速度1000(v1000)及び終速又は終了速度1000(c1000)がある。位置A400への下降運動は、流量を最初の充填容量未満までに減らし、循環容量を先端に残す。M100は、ランプ位置がA400からA0まであった後の、100ミリ秒の一次停止を示す。これは、最初のサイクルの終了を表わし、コマンドシーケンスでのGで示される。数字8は、このコマンドシーケンスが8つのサイクルを有していることを示す。最初のサイクルは、充填工程を含む点で、後続するサイクルとは異なる。コマンドシーケンスの終わりは、速度ランプL14、始動速度v400、最大速度V900、終了位置A0、及び終速c200のサイクルである。文字「R」は終端で実行コードを表わす。
【0073】
本明細書に記載されている実施例において、類似のサイクルが、細胞、プラスミドDNA又はsiRNA又はmiRNAと共に使用された。
【0074】
〈実施例3:先端アセンブリの設計〉
生細胞へ物質を導入するデバイスを生産するために、ホウケイ酸ガラスチューブは、開口部の大きさを縮小するため1つの端(先端)を精密に火炎研磨された。このデバイスを用いて、細胞は、細胞の通過用にこれまで使用されてきたものよりも、直径がかなり小さく、異なる先端形状を有する通路を通じて送られ、結果通路の直径が狭まったため細胞の速度がかなり上昇した。ガラスチューブの出口先端アセンブリの狭小化は、生細胞への遺伝物質の導入のためにより大きな流体速度を生み出した。最も重要なこととして、前記細胞は、流体速度の変化の結果として、必然的に流体圧力の迅速な変化を経験した。流体経路の狭まった部分の内面の曲率は、細胞孔形成及び細胞膜の開口に寄与した。さらに、高度に研磨された端は、細胞が流体経路に沿ったエッジに遭遇した際に、剪断力が生じるのを防ぐために作られため、研磨された端は、細胞の生存率を向上させたことが観察された。
【0075】
本明細書に記載されている実施例は、先端アセンブリ及び細胞へ物質を導入するための使用方法を記載する。図3パネルA及び図4パネルAは、流体、収縮部につながるチャンネル部分、及び流体を放出するための遠位の開口部を推進するポンプなど、圧力を適用するフローデバイスに近接した、上端開口部を有する先端の内面の典型的な形状を示した三次元表現の図面である。チャンネル部分は、収縮部より大きな内径及び断面積を有する。
【0076】
図3パネルB及び図4パネルBは、それぞれ図3パネルA及び図2パネルBの先端アセンブリのプロットを示すために用いられる8次多項式関数のグラフである。前記グラフは、横座標上の先端の長さに応じて、縦座標上で流体経路の中心軸からの先端のラジアル距離を示す。前記プロットは、以下のものを含む長さに沿った流体経路を示す:チャンネル部分及び収縮部に近接する開口部から遠位の開口部までの先端の内面。
【0077】
図4Cは、先端アセンブリの代わりにフロースルーアセンブリを有するシステムのフロースルー実施形態を示す。この実施形態において、流体はフローデバイスに近接する侵入チャンネル部分を通過した後、収縮に入り、次に別のチャンネル部分である出口チャンネル部分に入る。先端アセンブリの場合のように、前記収縮は、遠位端にある代わりに、2つのチャンネル部分の間にある。流体は、前記収縮を通して前後に通過するか一度流れる。類似又は非類似の直径又は形状をもつ多数の収縮は、前記フロースルーアセンブリの関連実施形態において想定される。前記フロースルーアセンブリは、流体が容器へ流れ込まずむしろ前記システムを出る前に出口チャンネルを通して続くような先端アセンブリとは異なる。
【0078】
〈実施例4:先端アセンブリの構成及び適応〉
本明細書における方法での使用に適した先端アセンブリは、様々な異なる物質、及び異なる大きさと形状で構成されたものを含む。細胞及び物質を有する流体は先端アセンブリへ導入され、物質を細胞へ導入するための先端アセンブリの有効性は、細胞ランスフェクションの技術者によって決定される。先端アセンブリの設計の適応は、変化する流体経路形状、収縮部分の数、及び有機又は無機の薬剤の存在を含む組成物における物質の濃度を変動することによって、構造を作り出すことを含む。
【0079】
先端アセンブリは様々な既知の種類の貯蔵槽及びフローデバイスと共に使用され得る。例えば、貯蔵槽は、遠心分離チューブ、ビン、バッグ又はボトルであり、前記フローデバイスは、携帯型の200μLピペットまたは手押ポンプである。先端アセンブリの各々は、多数の先端アセンブリの各々、及び先端アセンブリにおける物質の変動濃度の各々についてデータ(例えば圧力差、細胞膜多孔度、トランスフェクション効率、細胞内での物質の存在、及び細胞の生存率)を得ることにより適応される。
【0080】
図5は、貯蔵層と流体フローデバイスに近接する頂部に示される開口部である近接開口部(900)、取り付け部分(902)、フローデバイスに取り付けられたときに先端アセンブリを取り外すための先端アセンブリショルダー(901)、チャンネル部分(903)、収縮部分(904)、及び一番下に示されている遠位の開口部(905)を含むボディを有する、典型的な先端アセンブリの三次元表現の図面である。流体経路方向は近接開口部(900)から遠位の開口部(905)へ進行する。チャンネル部分(903)は、収縮部分(904)より大きな内径及び断面積を有する。先端アセンブリショルダー(901)は、取り付け部分(902)の外部表面から横方向へ伸びる。フローデバイスの実施形態のより低いエジェクターセクションは、先端をフローデバイスから取り除く。
【0081】
作動するために、特定の実施形態におけるフローデバイス又は流体取扱デバイスは、前記取付け部分で先端アセンブリに取り付けられた。細胞及び物質を含有している流体は、先端アセンブリのねじれ部分からチャンネル部分を通って、遠位の開口部から先端アセンブリへと引き込まれる。流体表面の頂部メニスカスとフローデバイスの端は、異なる物質が各先端で使用され得るように、流体の間でフローデバイスとの接触を防ぐのに充分な距離で離れている。流体デバイスは、チャンネル部分からねじれ部分及び遠位の開口部を通じて流体を促進し、前記チャンネル部分と比べて減少した圧力がねじれ部分で達成され、流体中で含有される細胞において孔を形成し、前記流体に含まれる物質は前記細胞へと導入される。関連実施形態において、前記細胞を含有する流体は、先端アセンブリの収縮部分を通り抜ける際、十分な流体速度が得られるようにより長い流体経路へ引き込まれる。
【0082】
先端アセンブリは、上記の実施例の条件の下、使用された方法によって評価される。得られたデータは細胞の生存率及び前記細胞内の物質の存在を測定ために使用された。データは、生細胞と非分裂細胞中において、流体の流体圧力を低下させ、細胞の膜多孔度を上昇させることにより、先端アセンブリ物質を細胞の中へ導入したことを示す。これらの先端アセンブリは、以前の方法及びデバイスよりも、物質を細胞へ導入することについて、より効果的、より効率的、より便利であることが本明細書の実施例により示された(実施例6参照)。
【0083】
〈実施例5:ヒト内皮細胞における遺伝物質の発現〉
ほとんどの一次細胞に類似するヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)は、ヌクレオフェクション、エレクトロポレーションのような既知のトランスフェクション方法を用いた、及びリポフェクタミンのような現在のトランスフェクション製品を用いた、未熟なトランスフェクション率によって特徴づけられる。本明細書の方法及び先端アセンブリは、HUVEC細胞を、高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)とヒト・ブタ内在性レトロウイルス受容体(HuPAR2)の融合タンパク質をコードするプラスミド(核周囲の細胞内の膜の区画に特異的に局在化するタンパク質)でトランスフェクトするために使用された。
【0084】
本明細書の実施例は、高感度GFP(EGFP)標識C末端HuPAR−2融合タンパク質(HuPAR−2/EGFP)を産生した。HuPAR−2オープンリーディングフレーム(ORF)は、KpnIとBglIIの制限部位を含有しているプライマー:5′−ACGCGGTACCCAGGGGTCTACACAGTCCTTT−3′(配列番号:1)及び5′−ACGCAGATCTAGCATCTTTGGACCTACCTAG−3′(配列番号:2)を使用することによってTopo−pCRIIクローンから増幅された。産生物は、Topo−pCRII(Invitrogen Life Technologies)へクローンを作成され、KpnIとBglIIを使用して切り取られた。この断片は、EGFP融合ベクターEGFP−N1(BD Biosciences CLONTECH;San Jose、CA)のKpnI及びBglIIの断片においてEGFP ORFの上流及びイン・フレームでクローンを作成された。
【0085】
HUVEC細胞はATCC内皮細胞培地中で育成され、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS;Sigma−Aldrich,St.Louise,MO)内の懸濁されたEGFPとHuPAR2の融合タンパク質をコードするベクター(35μg/ml;7005塩基対)と接触させられた。トランスフェクションは本明細書の前記システムと方法を使用用いて行なわれた。35mMガラス底ペトリ皿の表面に定着及び付着させるために、細胞は15分間前記皿上に播種された。増殖培地は加えられ、前記細胞は5%のCO及び37°Cで24時間培養された。
【0086】
細胞は、レーザー走査共焦点蛍光顕微鏡及び、コントラストが高められた明視野顕微鏡検査、すなわちDIC(微分干渉工学顕微鏡)を使用して視覚化され、蛍光はトランスフェクションの24時間後に10つの無作為に選ばれた顕微鏡視野で分析された。HUVEC細胞の総数及びGFP−HuPAR2蛍光を示す細胞の数が測定され、GFP−HuPAR2蛍光とのHUVEC細胞の割合が計算され、比較された(表1)。表2は、データの統計解析を示す。
【0087】
HUVEC細胞の顕微鏡写真は蛍光顕微鏡法を使用して分析された。70%のトランスフェクション効率より高い平均が培養HUVEC細胞について達成されたことが観察された。表1及び表2を参照。ひとつの細胞、及び複数の細胞についての代表的なDIC顕微鏡写真データ及び蛍光顕微鏡写真データは図6パネルAとBに示され、これらのデータは前記細胞が効率的にトランスフェクトされた細胞であったことを示す。暗い果粒は、ひとつのHUVEC細胞(図6パネルA左の顕微鏡写真)及び複数のHUVEC細胞(図6パネルB)の核を囲む膜区画においてDICによって観察された。HUPAR2タンパク質は、特に、核周囲の細胞内の膜区画内で局在化し、本明細書で観察される細胞は、本明細書の方法及びシステムを用いてGFP−HuPAR2プラスミドをトランスフェクトされた細胞の核周囲の細胞内の膜区画内において染色する、有意なGFP蛍光を示した。図6パネルAの中央の顕微鏡写真。DIC顕微鏡写真及び蛍光顕微鏡写真を重ね合わせると、GFP−HuPAR2が特に核周囲の細胞内の膜区画内において局在化されたことを示す。これらのデータは、HUVEC細胞がシステム、本明細書の方法を使用して、うまくトランスフェクトされたことを示す。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
この実施例における細胞は、大きなプラスミド(7005塩基対)であるあらかじめ冷凍されたベクターをトランスフェクトされ、本明細書の方法及び先端アセンブリは、遺伝物質をトランスフェクト及び形質導入する際、及び他の方法によってはるかに非効率的であると証明されている環境下において驚くほどより効率的であった。
【0091】
〈実施例6:HUVEC細胞へのEGFP−CDC42プラスミドの導入〉
本明細書の方法及びシステム又はデバイスは、長年実験室において増殖されてきた形質転換細胞よりも、トランスフェクションに対してより繊細かつ通常より脆弱な一次細胞をトランスフェクトすることにより検証された。一次HUVEC(ヒト臍静脈内皮細胞)はこの目的のために選ばれた。
【0092】
HUVECは、EGFP−CDC42(高感度緑色蛍光タンパク質−細胞分裂制御タンパク質42)融合タンパク質をコードするプラスミドをトランスフェクトされた。細胞と混合されたプラスミド濃度は70μg/mlであった。細胞は、トランスフェクションの前に2日間培養することによりコンフルエントとなるようにされ、細胞培養基質から細胞を脱離され、トランスフェクションのために流体中で懸濁された。
【0093】
トランスフェクションは以下のパラメーターを使用して行なわた:流体加速度6μl/s/s、流量160μl/s、循環容量50μl、サイクルの2回連続セットで各セットは2.5mlのシリンジによって促進された先端を介して流体の流出入を25つ有する。63μlの容積は、500,000個の細胞及びプラスミドを含有していた。
【0094】
トランスフェクションの24時間後にレーザー走査蛍光顕微鏡で撮られた細胞の画像は、点状の(又は斑点のある)細胞内EGFP−CDC42蛍光を示した。蛍光は細胞質であり細胞の周囲にあり、CDC42の局所化と一致しており、核から排除された(図7パネルA)。20つの無作為に選択された20x拡大顕微鏡視野において蛍光性細胞がサンプルされた。結果は、前記細胞の88.2%(135/153)のプールされた平均がEGFP蛍光様のCDC42を表示したことを示した。AMAXA Nucleofactor(商標)(Lonza Cologne GmbH、Cologne、Germany)エレクトロポレーション・ユニットを使用するトランスフェクションは比較のために検証され、トランスフェクションがなかった又はトランスフェクション効率が低い(30%未満)ことが観察された。
【0095】
本明細書の方法及びトランスフェクションデバイスを用いてEGFP−CDC42プラスミドをトランスフェクトされたHUVEC細胞の画像は、画像化前に分裂した細胞内でのEGFP発現のうちの1つを含む(図7パネルB)。細胞分裂における役割があるタンパク質の発現パターンと一致して、EGFP蛍光は娘細胞間の部位に局在化する。
【0096】
本明細書の方法及びトランスフェクションデバイスを用いてEGFP−CDC42をトランスフェクトされたHUVEC細胞のEGFP蛍光は、正常なPMT感受性で観察され、より高いPMT感受性で観察されたものと比較された(図7パネルC及びD)。正常なPMT感受性では、ほとんどの蛍光は、大きな果粒へ局在化されることが観察された(図7パネルC)。より高いPMT感受性では、EGFP−CDC42発現は、よりサイズの小さい多数の細胞内果粒内の細胞のサブセットにおいて検出された(図7パネルD)。より高いPMT感度で走査することは、正常なPMT感度の大きな果粒で観察された潜在的な自己蛍光をオフセットすることが観察された。より小さな顆粒における蛍光は、走査方式の高感度レーザー光線を用いて光退色することにより検証され、EGFP−CDC42融合タンパク質の発現に特異的なものであることが観察された。
【0097】
上記の実施例は、本明細書に記載されている方法及びデバイスが、一次細胞へのプラスミドの効率的な移動をもたらし、前記プラスミドがmRNAへ転写され、前記mRNAはタンパク質へ翻訳され、そして前記タンパク質は正確な局在化を発現し、それによりトランスフェクションの成功をもたらしたことを実証する。
【0098】
〈実施例7:HUVEC細胞への7kbのEGFP−アクチンプラスミドの導入〉
トランスフェクションの成功は、トランスフェクションに続くmRNAの複製数の測定を用いて検証され得る。mRNAの複製数の測定は、発現されている蛍光性タンパク質特有の性質により蛍光シグナルが弱い場合、又は高い自己蛍光バックグラウンドがある場合のような状況において、有用である。
【0099】
P5マウスからの一次HUVEC細胞は、細胞骨格のアクチンフィラメント成分におけるEGFPアクチンの発現を観察するために、本明細書に記載されている方法及びデバイスを用いてEGFPアクチン融合タンパク質をコードする7kbのプラスミドをトランスフェクトされた。500,000個の細胞は、終末濃度70μg/mlのEGFPアクチン発現プラスミドが加えられ、細胞と混合された1500μl遠心分離チューブ内の100μlのリン酸塩緩衝食塩水において懸濁された。
【0100】
以下のパラメーターがトランスフェクションに用いられた:流体加速6μl/s/s、流量160μl/s、循環容量60μl、使用されたシリンジの容量2.5ml、及び先端を介した流体運動の25サイクルの3連続セットから成る連続するフローサイクル。細胞は培養内で48時間育成され、トランスフェクションから結果として生じるmRNAの産生は、1細胞当たりのmRNAの正確な複製数を測定する方法を使用して評価された。Shih et al. 2005,Exp Mol Pathol 79:14。
【0101】
結果は、図8パネルA、B及びCに示される。トランスフェクションされたデバイスでトランスフェクトされた細胞は、図8パネルCにおいてTCとして表示される。対照として、細胞もプラスミドの不在下でトランスフェクションプロトコルを受ける。これらの細胞は、EGFPアクチンmRNAの複製数について検査もされた(図8パネルCでCTと表示される)。細胞はAMAXA Nucleofector(商標)エレクトロポレーション・ユニットを用いてトランスフェクトもされ、図8パネルCでAMAXAと表示される。AMAXA Nucleofector(商標)エレクトロポレーターを用いてトランスフェクトされた細胞は、対照細胞については1細胞当たりのmRNAの複製が平均たったの0.08のバックグラウンドであったのに反し、1細胞当たり平均1152.75のmRNAの複製の産生をもたらした。対照的に、トランスフェクションデバイスでトランスフェクトされた細胞は、1細胞当たり平均3652.66のEGFPアクチンmRNAの複製の産生をもたらした(図8パネルC)。類似の条件下で行なわれた別の試験において、比較可能な平均のmRNAの複製数が観察された(AMAXA Nucleofector(商標)エレクトロポレーターでのトランスフェクションで1細胞当たりmRNAの1152.75の複製対本明細書に記載されているトランスフェクションデバイスでのトランスフェクションで1細胞当たりmRNAの3853.95の複製)。これらの結果は、本明細書に記載されているトランスフェクションデバイスを使用したトランスフェクションが、1細胞当たりのEGFPアクチンmRNAの複製数の劇的な増加をもたらし、そしてこの増加が再現可能であったことを示す。
【0102】
故に、mRNA複製数の測定は、本明細書に記載されている方法及びデバイスが、一次細胞においてでさえ効率的なトランスフェクションを達成するのに有用であることを裏付けた。
【0103】
〈実施例8:ジャーカット細胞への遺伝物質の導入〉
本明細書の方法及びシステムを用いて、トランスフェクション受容体として不応性(refractory)だと知られている細胞であるタイプジャーカット細胞は、EGFP(Addgene、Cambridge、MA)でトランスフェクション効率について検証された。およそ250,000個の細胞が50μlのトランスフェクション培地(transfection medium)、HBSS(ハンクス平衡塩類溶液、Invitrogen Carlsbad、CA)不在のカルシウム又はマグネシウムにおいて懸濁され、0.2%w/vのEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を含有した。対照として、模擬のトランスフェクトされたサンプルは、プラスミド不在でトランスフェクトされた。他のトランスフェクションは、プラスミドの2.0μg(細胞との全容量55μl、36μg/ml)、5.0μg(細胞との全容積62.5μl、80μg/ml)、又は10.0μg(細胞の全容積75μl、130μg/ml)を含有していた。トランスフェクション・パラメーターは以下の通りであった:液体加速6μl/s/s、流量160μl/s、2.5mlのシリンジを用いた循環容量60μl、先端を介した25の流出入から成る連続的なサイクル。細胞は培養内で48時間育成され、EGFP蛍光(FL1−Hチャンネル内)はフローサイトメトリー(図9)を用いて定量化された。
【0104】
細胞の10%がEGFP蛍光の最大強度の50−90%を示したことが観察された。5.0μgのプラスミドで処理された細胞から得られたデータは、プラスミド不在の対照トランスフェクション内で観察されたバックグラウンドレベルよりも高いEGFP蛍光を示した。2.0又は10.0μgのプラスミドのいずれかを用いて観察された蛍光強度は、バックグラウンドレベルにあった。
【0105】
〈実施例9:本明細書のトランスフェクションシステムを用いた一次のマウスの脳の星状細胞のトランスフェクション〉
本明細書に記載されている方法及びトランスフェクションシステム又はデバイスは、幾つかの変更を伴い、一次細胞の別の種類のトランスフェクションを検証するために使用された。
【0106】
一次星状細胞(1−200万個の細胞)はマウス脳から分離され、DMEM培地(ダルベッコ変法イーグル培地、Invitrogen、Carldbad、CA)内で懸濁され、トランスフェクションまで細胞培養インキュベーター(加湿、37°C及び5%CO)内で維持された。トランスフェクションのために、細胞は、20μg/mlのEGFP対照プラスミド(Invitrogen、Carlsbad、CA)又は20μg/mlのCy3標識miRNA(AM17011、25塩基対設計RNAオリゴヌクレオチド、Ambion、Austin、TX)を含有する100μlのHBSS(Ca2+/Mg2+free)内で遠心分離にかけられ再懸濁された。
【0107】
細胞は以下のように準備された先端を用いてトランスフェクトされた。0.88mmの内径、1.23mmの外径、0.14mmmの壁厚をもつ特注生産のフリントグラスチューブは、本明細書に記載されているような曲率を得るために加熱された。先端の開口部に最も近い、縮小するほぼ円筒状の部分をもつ250μm長のさらなる追加のマイクロチャンネルが、前記先端の構成へ加えられた。前記先端は最終的に直径175から200μmの小さな先端開口部となった。(図3パネルC及びD)。
【0108】
EGFPプラスミドでのトランスフェクションは、200μmの直径の先端を用いて行われ、Cy3標識miRNAでのトランスフェクションは、175μmの直径の先端を用いて行なわれた。
【0109】
細胞の混合物とEGFPプラスミド又はmiRNAは、本明細書に記載されている方法及びトランスフェクションデバイスを使用して、60−100回反復的に先端を通過した。混合物は60−80μlの循環容量で先端へ引き込まれた。このトランスフェクションで用いられる先端開口部のより小さな直径を考慮して、循環パラメーターは実施例6から8で用いられたもの、実施例2で一般に記載されたものから変更された。流入パラメーターのみが変更された。詰まることなく細胞懸濁が先端へスムーズに移入できるよう、流入速度は50−80μl/sに減らされ、加速は1−4μl/sに減らされた。故に、より低い流入及び最大流出速度(240μl/s)の非対称のサイクルが利用される。トランスフェクション後、細胞は3日間細胞培養インキュベーター内で培養されインキュベートされ、次に、共焦点顕微鏡を用いて画像化のためにスライドガラスに固定され、取り付けられた。
【0110】
より縮小した先端開口部を備え、近接端部に追加のマイクロチャンネルを含有する先端アセンブリ(図3C及びD)を用いた一次星状細胞のトランスフェクションは、細胞へのEGFPプラスミド又はCy3識別miRNAのトランスフェクションの成功をもたらした。トランスフェクションの3日後に観察された代表的な画像は、図10パネルA−Fに示される。パネルA及びBは、EGFP蛍光強度の変動レベルをもつ細胞を示す。パネルCは、バックグラウンド蛍光と同等又はほんの少し高い蛍光強度を備えた細胞のクラスター中の一つの明るい蛍光性細胞を示す。図Dは、トランスフェクトされた一次星状細胞の蛍光画像の、同じ細胞の明視野画像上への重ね合わせを示す画像である。画像は、高感度蛍光トランスフェクトされた細胞は、一次マウス脳星状細胞の形態特性を有する培養基質上に広がることを示す。
【0111】
上記のバックグラウンドの蛍光を有する細胞を観察することにより、トランスフェクションの1日後に測定されたトランスフェクション効率は、13.8%(5つの異なる顕微鏡視野から237個の細胞)であると測定された。効率は、トランスフェクションの3日後には29.8%まで上昇することが観察された(13の異なる顕微鏡視野から188個の細胞)。
【0112】
パネルE及びFは、細胞の細胞質における内部以降されたCy3標識miRNAの中等レベル(パネルE)又は高いかバックグラウンドレベル(パネルF)のどちらかを有しているトランスフェクトされた一次マウス脳星状細胞を示す。miRNAは核から排除される。標識miRNAは、小さな丸い蛍光性スポットとして現れる。バックグラウンドより上に蛍光を有する細胞を観察することにより、トランスフェクションの3日後に測定されたトランスフェクション効率は、40.9%(3つの顕微鏡視野から41個の細胞)であると測定された。
【0113】
この実施例はさらに、一次細胞のトランスフェクションの成功のために、本明細書に記載されている方法及びトランスフェクションデバイスの適用可能性を実証し、それによって、本明細書の方法及びデバイスの実用性を拡大する。
【0114】
〈実施例10:本明細書のシステム及び方法を用いた細胞内の遺伝物質の発現〉
本明細書に記載されているシステム及び方法は、次のものから成る群から選ばれた細胞へ遺伝物質を導入するために使用される:上皮細胞、造血性細胞、幹細胞、脾臓細胞、腎細胞、膵臓細胞、肝細胞、神経細胞、膠細胞、平滑又は横紋筋細胞、精細胞、心細胞、肺細胞、眼球細胞、骨髄細胞、胎児臍帯血細胞、始原細胞、末梢血単核細胞、白血球細胞、リンパ球、生きている分裂終了細胞、生理学的に不活発な細胞、阻害された細胞、UV不活性化細胞、除核細胞、無核細胞、熱殺菌された細胞、非再生細胞、原核細胞、及び人工膜を有する合成細胞。
【0115】
細胞とGFP−HuPAR2をコードするプラスミド(実施例5参照)又は別のプラスミドとの混合物、又は、例えば、治療上のタンパク質だけをコードするプラスミド又はEGFPのような蛍光性タンパク質をコードするレポータープラスミドをもつプラスミドの混合物を含有する流体は、本明細書のトランスフェクションデバイスの先端へ反復的に引き込まれそして押し出され、流体サイクルを生み出した。(実施例2及び図2)。流体サイクルは、トランスフェクションをもたらす。前記システムは、実施例3−4及び図3−4に記載されている先端アセンブリを使用する。トランスフェクションの後、育成培地が加えられ、細胞は12−24時間37°C及び5%のCOでインキュベートされる。次に前記細胞は、レーザー走査共焦点蛍光顕微及びコントラストが高められた明視野顕微鏡を用いて、生存率について評価され、さらには視覚化される。細胞は、トランスフェクションのために負の対照をもたらすためにプラスミドの不在下でトランスフェクトされる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]