特許第6124363号(P6124363)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6124363流水エネルギーを利用した底無しカップ式水力変換装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6124363
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】流水エネルギーを利用した底無しカップ式水力変換装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 9/00 20060101AFI20170508BHJP
【FI】
   F03B9/00
【請求項の数】11
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-543306(P2014-543306)
(86)(22)【出願日】2013年10月22日
(86)【国際出願番号】JP2013078588
(87)【国際公開番号】WO2014065282
(87)【国際公開日】20140501
【審査請求日】2016年6月10日
(31)【優先権主張番号】特願2012-232758(P2012-232758)
(32)【優先日】2012年10月22日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】392001438
【氏名又は名称】清水 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154966
【弁理士】
【氏名又は名称】海野 徹
(72)【発明者】
【氏名】清水 忠雄
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−087840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流水受けカップを凹湾曲させた受水板及び略直角三角形状の両側板から成る底無しカップと底板との2つに分割させて、両者を回転自在に枢軸着をさせて、該底無しカップが底板に起立状態では流水を遮ぎり、底板に倒伏状態では流水は内外部を通過させて、両状態の間に流水抵抗差を生じさせる機構を、連続部材に多数個を配設させて、全没水させた一軸水車の外輪に固定させるか、或いは無端鎖帯水車では前後の回転車輪に張設させることで、併進回路では起立状態に、逆進回路では倒伏状態にさせて両者の抵抗差で回転又は周回するものであり、該底無しカップの倒伏から起立状態への転回は遠心力で行い、水中では遮水板を設けることで連続回転又は周回する水中水車と成した水力変換装置。
【請求項2】
前記無端鎖帯水車に於いて、函状とさせた中央躯体の上下方向に全周に亘って剛質な路面を形成させて、前記連続部材上に枢軸着された底無しカップの押圧力を支持させると共に、該中央躯体の側面には、前後に離して一対の回転車軸を、両側面に亘って貫通させて、各貫通車軸の両端部にはガンギ車を装着固定させて、該連続部材の幅方向に設けた多数の突出軸と、該ガンギ車のスプロケットとを噛み合わせて、流水エネルギーをガンギ車軸(以下、駆動軸と称す)の回転力に変換させることを特徴とする請求項1記載の水力変換装置。
【請求項3】
中央躯体を上流側のガンギ車より前方上側に延出させて、下面を逆傾斜面とさせ、当該前方延出部に小型先導車を設けて、底無しカップに作用する遠心力を増大させるか、又は遮水板内側を小内径の円筒形にして、その内側の底無しカップを押圧させて角加速度を矯め、その瞬発力を出口で発揮させても良く、或いは弱流速域では、先導車とテンショナーを近接させた二段組先導車とさせて、該先導車周りに連続部材を巻込ませるか、又は該逆傾斜面で枢軸周りに自然落下させることで、底無しカップを転回させることを特徴とする請求項2記載の水力変換装置。
【請求項4】
無端鎖帯水車の複数基を並列配置させて、各基の出力軸を1本の共通軸とさせたものを固定させて長尺装置とし、該長尺装置の両端には別個に中継プラットホームを設けて、該プラットホームの外部に備える支持柱で該長尺装置を中間固定させ、外部下方に備える係留具を使って係留索とアンカーで、該長尺装置を水中に浮揚固定させることで、前記各基で得られた水動力を集合させて、該共通軸に出力させることを特徴とする水力変換装置。
【請求項5】
複数基の無端鎖帯水車の複数個の駆動軸を、一本の実用長の共用駆動軸にした短尺装置を形成し、隣接する短尺装置の縦隔壁同士に間隙を形成させてギヤ室とし、前記共用駆動軸から共通軸へのトルク伝達路の途中に速度変換歯車と一方向クラッチを設けて該ギヤ室にセットしたことを特徴とする請求項4記載の水力変換装置。
【請求項6】
全没水させた無端鎖帯水車に於いて、連続部材が移動する周回路を、上側と下側の2つの回路に分割させて、それぞれの回路には両端部に流入口部と流出口部とを設けて、互い違いの方向に配置させており、当該流出口部に設ける遮水装置は、外部からの流入水(往流)を遮断して阻止させるか、又は管内流(復流)を開口して放出させる働きを行なわせ、且つ流動水の往流と復流とに応じてその働きを自動的に切換える機能を有させており、他の構成部材や構造は、中央の共通軸又は駆動軸を中心として、2回軸の回転対称に配置させることで、往復流を利用させたことを特徴とする請求項2記載の水力変換装置。
【請求項7】
無端鎖帯水車の装置に於いて、中央躯体の真中に一つの駆動輪を設けて、上側及び下側を周回する連続ベルトの突起軸と同時に噛み合わせており、最上方に設けた天盤または屋根型浮体による大きな浮力で該装置を自力浮上させると共に、最下方に設ける下床盤を水密の普通乃至重量コンクリートで造成させて、該装置の浮心と重心の距離である復元梃を大きく形成させており、両側の縦隔壁で各部材の相互間隔を維持して固定させることで、該装置の重量復元力(自己の姿勢制御力)を大きくさせて、流水エネルギーを捉えるように成したことを特徴とする請求項2に記載の水力変換装置。
【請求項8】
横長の耐圧潜水殻と、水面上に突出する細長いコラムとを一体結合させた半潜水殻構造体であり、該耐圧潜水殻の外方下部には係留環を固定させていて、耐圧潜水殻の内部は、半潜水状態の作業室と成すもので、殻内下部には重量バラストを設置させ、可搬バラスト等の重量物を搭載させて、重量復元力の増大と形状復元力の極小をさせて成る半潜水式プラットホームとさせたことを特徴とする請求項4記載の水力変換装置。
【請求項9】
連続部材は、相隣り合う不透水性底板の前端と後端を連結軸で連結させて、上側には底無しカップ乃至受圧部材を枢軸着させた板ベルト(連続ベルトとも称す)とさせ、中央躯体上の路面を周回する無端鎖帯水車に於いて、該板ベルトの連結軸部の下方を不透水性の膜材又は弾性部材(図示せず)で覆って、上下間を遮水させた遮水板ベルトと成しており、各連結軸の両端部では同径曲率とさせた切欠け円弧と円形部分を有するコースターを嵌合して連接させて、該路面両端の側面部とで摺動遮水をさせることで、該遮水板ベルトが水中で移動すると、該遮水板ベルト下面と路面との間で水潤滑走行がされることを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項に記載の水力変換装置。
【請求項10】
流水圧を受ける受圧部材の多数個を連続部材に枢軸着させて、流水中で回転させ、併進路では起立状態に逆進路では倒伏状態にさせて、その流水抵抗の差で以って、当該連続部材を牽引させる機構の無端鎖帯水車に於いて、圧力導水渠を使用する場合は、板ベルトの上側で受圧板を支持する支持梁を枢軸着させて、該導水渠の内部断面を当該受圧部材が遮蔽しながら走行させ、外部の走行溝は前記の円形コースターを連接させて塞ぐことで、流動エネルギーは該無端鎖帯が周回する牽引力と移動速度に変換されて、下記式に示す仕事率が生じる。
W/δt=(K―P)*A*V=Ft*Vである。
ここで、U=外界の流速、K=流速Uの流入動圧、P=流出動圧、A=挿入栓(円盤又は受圧板)の断面積、V=管内流速又は栓の移動速度、Ft=抵抗力(管内流とは反対方向の牽引力)とすると、入口と出口の動圧差(K―P)に管内流量Qを掛けたものが圧力エネルギーに依る仕事率(W/δt)となる圧力型水車の水力変換装置において、前記の圧力型とさせる無端鎖帯水車に於いて、逆進路に於いても当該圧力導水渠の側面から出口までの全域を密閉導水渠で囲繞させており、外界流動水に依って当該水車の後背域に生じる負圧を、前記圧力導水渠の流出口内域に印加させて、当該密閉導水渠内に生じるバイパス化流水を遮断させる手段を有させることで、当該圧力導水渠には流入口における動圧と流出口内域の該負圧を加えた圧力差に増大させるものであり、前記の手段とは、密閉導水渠内の高位置にエア溜まりを形成させて、内在水を分断させるか、或いは密閉導水渠入口に於いて、流入水を高速射出流と為して、バイパス化流水の侵入路を塞ぐことを特徴とする圧力型の水力変換装置。
【請求項11】
前記の負圧力を利用する無端鎖帯水車に於いて、当該水車の外形を上下両側面ともに平滑な表面の流線形とさせておき、流水中に没水させて固定することで生じる高速の側面流を、流速を維持させたまま流下させ、圧力導水渠の流出口後方に射出させることで、該流出口内水を連行して吸い出させて当該流出口内域を負圧に印加させて成り、下床盤の前部には開度調整可能な流入扉を設けることを特徴とする請求項10記載の圧力型の水力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流水のエネルギーを回転力に変換する水力変換装置に関し、特に抗力型水中水車並びに水中無端鎖帯水車に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋エネルギーで発電する方法は多種多様が発表されているが、その中でも海洋エネルギーの基本である流水による水力変換方法に着目すると、現時点では未だ揚力型翼車が実験的に使用され始めた段階である。
抗力型については、非特許文献1で示された、水中で使用可能な方法は何れも実用化されておらず、特許文献1では、絞り口に於ける大きなロスの発生が危惧されるもので、抗力型水車で実用可能なものは皆無である。
即ち、流体の運動エネルギーを利用する方法には、揚力型と抗力型に2大別されるが、これを流向に対する回転軸の方向で分けると、平行するのが揚力型で直交するのが抗力型となり、水中使用が可能な抗力型は皆無であり、揚力型も未だ水中では実績が無い。
従って、課題点を汎用の風力発電機を代表例に挙げて説明すると、揚力型の風力発電は運動エネルギーを最大にして利用する方式であるが、一方では過大エネルギーに対する制御方法がカットオフだけであり、また失速現象もあって適応流速範囲が狭い欠点があり、一基当りの最大発電量には限界が生じる。
更に述べると、回転面は一枚の円形となり、高速回転をさせると、擾乱が生じて翼効果が発揮されないので、非特許文献2のように翼幅と翼枚数を少なくさせているが、翼間空隙を素通りして、何の力も及ぼさない無駄な流量が多くなる矛盾が生じて効率は30%台であり、また大パワーで小トルクの動力発生は、大トルクの必要な発電機用としては不向きである。
更に、隣同士が連結出来ないので大容量発電は不可能となり、多数を林立させてもコストは下げられない。
【0003】
【特許文献1】日本国特許第4917690号
【非特許文献1】波力発電(原理から応用まで) 海流・潮流発電システム P7 パワー社
【非特許文献2】図解風力発電のすべて 風車の基礎知識 P48 株式会社工業調査会
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の如き揚力型の難点を、抗力型水車を使って解決させることで、安価で無公害で、大容量発電を可能とした水力変換装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る水力変換装置は、水中水車であって、水車は回転軸廻りに回転する回転水車又は、一対のガンギ車の間に連続ベルトを張設した無端鎖帯水車であり、回転水車の外輪上又は、無端鎖帯水車の連続ベルト上に、底無しカップを起立乃至倒伏自在に枢軸にて枢着してあり、外輪又は連続ベルトが流水方向と併進の状態では底無しカップが起立状態になり、カップの底部が外輪上又は連続ベルト上に設けた底板によりふさがれて、流水抵抗大の水受けカップとして機能し、流水方向と逆進の状態では底無しカップが倒伏状態になり、カップの底部が開口状態になることで流水抵抗が小さくなって、両者の抵抗差で回転又は周回するものであり、底無しカップが倒伏状態となる上流側に遮水板を設けることで、逆進路に停滞水域を形成させて底無しカップに遠心力を作用させ、倒伏状態から起立状態へと転回させることを特徴とする。
これにより、カップが流水の流れを受けた併進する併進路では、底有りカップとして流れのエネルギーを吸収し、流水の流れに逆らう逆進路では底無しカップが開口した底部から流水が通り抜けるようになり、水車が水中であっても連続的に回転する。
また、底無しカップの逆進路の前方に遮水板を設けて停滞水域を形成したことで底無しカップの受圧板背面に対する流水力が小さくなる。
一軸水車或いは連続ベルト等の抗力型水車に於いては、水受けカップの併進路と逆進路に於ける抗力差で回転をするが、全没水中ではその差を大きくさせることが困難であった。
公知の連鎖帯水車では、起立から倒伏状態への転回は約一直角分の回転であるが、倒伏から起立状態への転回では約3直角分の回転が必要となり、且つ受圧板の背面を流水で押圧されることから、カップの転回方法の解決を困難としていたが、本願では、底無しカップの重心は枢軸から遠く離れているので、遠心力で転回を行うもので、流水中では遮水板で停滯水域とさせた中で、該カップを遠心力で半起立状態とさせて、次の流入射水を該カップの内側に当てて、起立状態とさせたものである。
また、カップが流水の流れを受けて併進する併進路では、底有りカップとして流れのエネルギーを吸収し、流水方向と逆行する逆進路では底無しカップが開口した底部から流水が通り抜けるようになり、両者の抗力差によって、回転力を生じさせるもので、たて型でもよこ型でも可動し、水車が水中であっても連続して回転又は周回させる抗力型水車を可能とさせたものである。
なお、抗力型水車では流水が受圧板6aに当たって力を発揮することから、流水中に置かれた底無しカップの抗力は、D=発生する抗力、C=抗力係数、S=投影面積、K=動圧(Pa)、K=1/2*ρ*U、U=外界の流速、ρ=流体の密度とすると、起立状態の抗力はD=CD1*S*Kで表され、同様に倒伏状態の抗力はD=CD2*S*Kで表される。
両式を比べると、S1>S2であり、且つCD1 >CD2であるので、D1>>D2となり、抗力差が大きいので回転する。
次に、各々の係数の比を見ると、投影面積の比RS=S/Sは、受圧板の最大面積と板厚の比で何十倍にもなり、抗力係数の比RC=CD1/CD2は、半球状カップではCD1=1,33で、CD2=0,33なので、比RC=CD1/CD2=4となるが、底無しカップは湾曲した板なのでそれ以上となる。
依って、RSとRCは共に大きくなり、D1/D2=(RC*RS)*Kの抗力比は甚だ大きくなり、性能の良い翼の揚抗比も遥かに超える。
従って、広い流速範囲に適合し、ベッツの最大効率を不要とさせ、更に外界流速を利用してエネルギーを高めることが出来て実用的となる。
揚力型の翼に比べて抗力型カップは製作が容易である。
なお、逆進路の管路では、底無しカップの受圧板は流水と略平行で走行するので、断面積と抵抗係数の両方とも小さくなって抗力は小さくなる。
【0006】
本発明は、水中浮力を有する中央躯体の全周に連続ベルトの路面を形成して当該連続ベルトを周回配置し、中央躯体の両側面にわたって貫通装着したガンギ車軸の両端部にガンギ車をそれぞれ固定し、連続ベルトの両側に形成した突出軸と当該ガンギ車に設けたスプロケットとを噛み合せることで流水エネルギーをガンギ車軸の回転力に変換する無端鎖帯水車であってもよい。
このようにすると、連続ベルトで併進路と逆進路に分割できるとともに、ベルトの長さで流水路の長さを容易に調整できる。
また、連続ベルトに設けた突出軸にガンギ車のスプロケットを噛み合せる構造にしたことにより、漂流するゴミや海藻等が絡みにくい。
中央躯体の全周を上下方向に連続ベルトが周回すると、該躯体は宙ブラ状態となるので、該躯体の内部に複数のガンギ車軸を貫通させて、縦隔壁に設けた軸受で固定支持させる。
ここで、中央躯体を上流側のガンギ車より前方上側に延出させて下面を逆傾斜面にし、当該前方延出部に小型先導車を設けるが、更に遮水板内側を小内径の円筒形を設けるか、弱流速域では当該逆傾斜面を使うか、当該小型先導車に近接してテンショナーを設けるか、のいずれかにより底無しカップを回転させてもよい。
中央躯体に第3のガンギ車軸を貫通させて、小径の先導車を設けると、連続ベルトの角速度は大きくなり、底無しカップに働く遠心力は増強される。
また、遮水板を装置と一体化させて、その内側を小内径の円筒形とさせて、底無しカップの先端部が自由回転する外径よりも小さくさせると、受圧板の外面は円筒面に押圧されながら回転して、円筒面出口に設けたガイドローラーで一挙に解放されるようにしてもよく、先導車軸周りの角速度と枢軸周りの角加速度を二重に受けて、瞬発力が発揮されて、底無しカップの転回力は増強される。
また、小型先導車と上流側のガンギ車との間に周回する連続ベルトを内側方向に牽引するテンショナーを設けることで底無しカップに回転力を付加して、遮水板を設けることなく底無しカップを起立状態に転回させるか、又は小型先導車付近に底無しカップが自重で起立する方向の逆傾斜面を形成してもよい。
本発明は回転出力の取り出し方法に制限が無く、例えば、ガンギ車に同軸で取り付けられた原動歯車から伝達される出力軸の間の伝達系に速度変換歯車と一方向クラッチを単独又は組み合せて用いることができる。
先導車とテンショナーの二段組みで、予め連続ベルトを緩く吊架させておいて、先導車の回りに連続ベルトを巻き込ませて、起立状態とさせるか、或いは逆傾斜面を形成させて、枢軸に支えられた底無しカップを自然落下させて、小流速でも転回を完遂させることで、完全自起動をさせるものである。
【0007】
本発明は、無端鎖帯水車の2つ以上の複数基を連結具で並列連結して、浮揚配置させることで長尺装置とし、別個に設けた外部浮力体に支持柱と係留具を備え、前記連結具を支持柱につなぎ係留索を係留具に緊結しており、前記各基に設けたガンギ車軸に生じた回転力を共通軸に出力させてもよい。
【0008】
本発明では、連続ベルトの回転軸が流向に直交する抵抗型水車なので、Uは外界流速(m/s)、ρは質量(kg/m)、Qは体積流量(m/s)、Pは運動エネルギー(J/s=W)とすると、理論発電量は、P=ρQU/2(W)となり、流入水量Qに比例する。
従って、無端鎖帯水車の各基を連通具で多数基を結合して、浮揚並列配置させた長尺装置とさせて、夫々の装置で得たトルクを一本の共通軸に集合させて、大角運動量を発生させるもので、浮揚させると表層部の高エネルギー密度の流水が大量に得られる。
該長尺装置の両端に支持柱と係留具を有する外部浮力体を設けておき、連結具(連通具)を支持柱に固定をさせ、係留索とアンカーで該外部浮力体を繋留すると、長尺装置は流水圧力に抗って水中に浮揚固定されるので、大容量の発電能力が発揮されて、発電コストは下げられる。
また、外部浮力体を設けて、中間支持と係留の外力を分担させることで、装置は均一製品の配列でよくなり、大量生産を可能とさせる。
一方、揚力型では隣接の水車同士は連結出来ないので、大容量発電は単独基の大型化に依るしか無く、経済コストは下げられない。
【0009】
本発明は、無端鎖帯水車の複数個のガンギ車軸を一本の実用長の共用駆動軸にした短尺装置を形成し、隣接する短尺装置の縦隔壁同士に間隔を形成してギヤ室とし、前記共用駆動軸から共通軸へのトルク伝達路の途中に速度変換歯車と一方向クラッチを設けてギヤ室にセットしてもよい。
【0010】
本発明は、全没水させた連続ベルトの周回路を、上側と下側の2つの回路に分割し、それぞれの回路は両端部に流入口部と流出口部とを有し、当該流出口部には可動式又は固定式の遮水板を設けて成すことで、前記上側と下側の回路のうち、一方は流入口から水流を流入併進路として働き、他方は流入水を阻止して底無しカップを転回させる逆進路として働くように、前記遮水板でその働きを交互に自動的に切り替えるように成してもよい。
連続ベルトでは周回路を上下二段の回路に分割させると、どちらも水中に開口するので、夫々の流入口を装置の前と後にさせて、往流と復流を夫々の流入口に遮水板を使って誘導させて、夫々の管路に併進路の作用と逆進路の作用を働かせるもので、流向が反転する毎に併進路と逆進路の作用を交代させて働かせるものである。
併進路の作用としては管路の入口と出口を開口させて、逆進路の作用としては入口を閉鎖又は外界流の誘導をさせて、出口では底無しカップの転回をさせるものである。
往復流を利用する水力変換装置は、どちら側からの流れに対しても、連続ベルトの回転を常に同一方向とさせることで、達成させたものである。
連続ベルトの周回路を上側と下側の2つの回路に分割して、夫々の回路の両端を流入口部と流出口部とさせて、相互を逆方向に向けて設ける。
両側に出来た流出口部では自動開閉制御される遮水板を装着させて、流入口部からの流入水に対しては、開いて流出させるが、逆方向からの浸入水に対しては閉鎖をして阻止させる。
全没水式の水車なので、前後に出来る流入口部は水中開口しており、往復流に対応させて、どちら側からの流入水に対しても、回路他端の遮水板が開いて流出するので、併進路となって駆動力が得られる。
また流入口部に於いて、下向きの回転をする側では逆傾斜面で自然落下をさせ、上向き回転をする側では既述の二段組先導車とさせて、どちら側からの流入水に対しても自己起動をする。
回路は開水路で作動するが、上下の天盤や下床盤を利用した導水渠を形成させて漂流物からカップを守ったり、或いは圧力管路を形成させて効率向上をさせても良い。
自動開閉制御の遮水板とは長周期の潮流では水との比重差と流速で制御する可動式とするが、周期の短い波浪流では鎧戸構造(以下スリットと称す)の固定アームを使用するもので、不動なので故障発生を激減させる。
自動開閉制御の遮水板は、可動式遮水板では上段は沈降式で下段は浮上式とさせて、水との比重差と流速の強弱とで開閉作動を行わせる。
また固定式では、厚味のある湾曲させた腕木(以下アームと称す)に一様方向の溝を刻んだもので、アームの形状やスリットの溝の傾斜角度は、外界流水の流入を反射させて、他方の流入口へ誘導させている。
反対に、流入口部からの流れに対しては、同一スリットの傾斜角度と充分な陥凹部を使って、外部に流出させている。
揚力型では一方向の流れしか利用出来ないが、全没水型水車では往復流を利用するので効率は倍加する。
併進路の作用としては管路の入口と出口を開口させて、逆進路の作用としては入口を閉鎖又は外界流の誘導をさせて、出口では底無しカップの転回をさせるものである。
【0011】
本発明は、水中水車又は無端鎖帯水車は、水密性とさせるセメント結合材中に、表面殻壁が密閉された中空体(以下、密閉型中空体と称す)の大小の粒径を適正な粒度分布に配合させた水密軽量コンクリートを使用して、装置を構成する部材を造ってそれらを組合せるか、或いは鉄筋構造体を組んで、該水密径量コンクリートと結合させる水密軽量鉄筋コンクリートを使用して、密閉された区画体を有する構造物とさせて、自力浮上をさせてもよい。
水密軽量コンクリートとは、セメント結合材を使用するコンクリート複合体なので、配合する材料と比率に依って、性能と比重と強度が調整されることから、水密性とさせるセメント結合材を使用して、中性化や劣化を失くした耐久性の高いコンクリートとさせ、配合する密閉型中空体の見掛比重を小さくさせて、セメント結合材中でも吸水しない浮力材として機能させ、使用深度に応じて、適合する耐圧強度を有する中空体を使用する水密軽量コンクリートである。
また、大小の密閉型中空体の粒度分布を調整して充填率を上げた超軽量水密コンクリートとさせて、水中で吸水せず比重も耐久性も変化しない、水に浮くコンクリートも製作可能とする。
また大きな浮力が必要な所では、外力に対抗する鉄筋組みと一体結合させた水密軽量鉄筋コンクリートとすることで、密閉された区画体を造って水中浮力を発生させて達成させる。
水密軽量コンクリートは各種浮力材の中から密閉型中空体を使用するものであり、密閉型の各種中空体として、微小中空体や中空多胞体、硬質中空体或いは低発泡率の発泡樹脂体等があり、これ等から選択したり、加工をして目的に適うものを得る。
また、各種防水剤やゴムラテックスや樹脂エマルジョン入りのポリマーセメント等は水密性とさせるセメント結合材中に含まれる。
この様に水密軽量コンクリートを使って自力で浮揚する装置とすれば、形状や設計の自由度は大きくなり、複雑な装置でも製作可能となり、小型化も可能である。
また、普通コンクリートのように水中で強アルカリ性を放出する公害は発生させず、装置自体を自力で浮揚させることで、外部浮力体との結合部が失くなって流失事故は激減され、施工は簡易となり、大量生産で安価な製品を提供する。
また、水密軽量コンクリートとしたことで、従来の無駄な壁厚を削ぎ落とし、軽量としたことで浮力発生の為の空間を無用として小排水量化をさせる。
従来では、浮き桟橋等の大型構造物では普通コンクリートで函体を造り、内部空間に発泡スチロール等の成形品を充填させて自力で浮上させるが、浸透水によるコンクリート劣化に対しては、壁厚を増厚させて規定の耐用年数を維持させている。
また普通コンクリートは重過ぎる(比重ρ=2.3)ために小型構造物の浮揚は出来なかった。
また軽量コンクリート(ρ=1.3〜1.9)では、軽量骨材が吸水性であるため、水中使用には耐えられない。
従って、装置等を浮揚させるには、不透水性材料で造った汎用定形品の外部浮力体を使用して、本体の懸吊や連結支持をさせるが、連結具の破損や結合材の変形・破断に起因した流失事故が多発していた。
自力浮上の水力装置とすることで、流体抵抗の小さい外形とさせ、装置の小型化をさせて、流速の早い高エネルギー密度の流水を利用可能とする。
また、装置の小型化は材工費の低減を初め、浮上曳航の利便や工事費の削減を可能とする。
また、無端鎖帯水車を天盤と下床盤との内側に設け、無端鎖帯水車の中央部に設けたガンギ車のスプロケットと、上下の回路を周回する連続ベルトの突起軸とを同時に噛み合せ、トルク伝達のギヤ類を前記ギヤ室に収納させて、太くて重い共通軸を前記下床盤の位置まで低下させ、天盤は自力浮上のための浮力を有させて、下床盤は必要に応じて水密重量コンクリートとしてもよい。
波長が短い波浪に対しては、一つのガンギ車を装置の中央に設けて、連続ベルトの周回路を短縮させており、最上方の大きな浮力と、最下方に搭載させた重量物との間で、大きな重量復元力を働かせることで、波浪による搖動を、装置自体の安定力で抑制させて、波動流のエネルギーを利用するものである。
即ち、波浪による揺れを抑制する方法は、従来では船長を長くさせてピッチングを止めるしか無かったが、本願は装置をより短くさせながら、尚且つ揺動を抑制させて、波浪の運動エネルギーを捉えて利用する装置である。
復元力の一般式として、S=W*GZ=W*GM*sinθがある。
上式に於いて、W=重力(排水量)、γV=浮力、M=メタセンタ、G=重心、B=浮心、GZ=復元梃(Gから浮力作用線への垂線)、GM=メタセンタ高(GとMとの間の距離)、θ=船の傾斜角である。
これはθの小さな初期復元力に使われ、大角度の復元力では、
S=W*GZ=W*(BR−BQ)=W*(BR−BG*sinθ)が使われる。
上式に於いて、GZ=復元梃、B=傾斜角0のときの浮心、Bθ=傾斜後の浮心、Mθ=傾斜後のメタセンタ、BR=BθMθの浮力作用線へBからの垂線、BG=BからGへの距離、である。
上式で第一項は、W*BR、は船型だけに関する項である。
また、第二項は、W*BQ、は重量復元力と呼ばれ、重心の高さだけに関係している。
本願は、上記の式で、BG(BからGへの距離)を大きくして、重量復元力を働かせるものであり、このため、最上方の大きな浮力と最下方に搭載させた重量物と距離を大きくさせて達成している。
即ち、重量復元力を働かせて搖動を抑制させるものであり、必要ならば、下床盤を比重の高い水密重量コンクリートとさせて、より大きな重心低下をさせても良い。
また、波向に対して連続ベルトの回転方向を上向きとさせ、周回路を短くさせるており、短周期波浪の水粒子運動によく追随させる。
ガンギ車のスプロケットは、上下の連続ベルトと同時に噛み合わせることで、タルミを生じさせずに確実に伝達させており、ガンギ車に過剰回転が生じても、底無しカップは逆流での使用が可能で問題は生じない。
さらに外部浮力体は、横長で紡錘形の耐圧潜水殻と、水面上に突出する細長いコラムとを一体結合させた半潜水殻構造であり、前記耐圧潜水殻の外部に支持柱と係留具とを有し、耐圧潜水殻の内部は、半潜水状態の作業室と外部水中への開口部を有し、殻内底部にはバラスト又は重量物を搭載可能にした半潜水式プラットホームとさせてもよい。
長尺装置を浮揚固定する外部浮力体とは通常は作業台船を使って、上部に支持柱を組み立てて行うが、流れや波力を受けて揺動し、更に長尺装置の両端では別々の動きとなるため定点での支持は困難であるが、更に台船上に重い発電機等を搭載するには、大きな水線面積と形状復元力を得る為の大排水量が必要となり、大型にすると荒天時の波力が大きくなって作業中止や退避となるので、発電を継続するには更に大型化させるという悪循環が生じて来ており、未だその解決方法が見付けだせないのが現状である。
前記の大角度復元力の式;
S=W*GZ=W*(BR−BQ)=W*(v*hh’/V−BQ)に於いて、第一項の、W*BR、=形状復元力、と呼ばれる。
ここで、BR=浮心の水平移動距離である。
そこで船を傾斜させると、傾斜によって露出部と没入部が出来て、その容積をv=として、その容積浮心の移動距離はhh’とする。
BR=浮心の水平移動距離は、BR=hh’*v/Vである。
これは、水線面の浮面心を通る縦軸に対する二次モーメントである。
即ち、重量復元力を大きくさせると、形状復元力は小さく出来てることから、それは水線面積を最小にさせることであり、形状としては、細長いコラムとさせることで解決したものである。
BRの形状復元力を極小とさせると、細長いコラムにすると、それは、透波性が良くなり、波力を働かせなくさせる。
小さな水線面積によって波が越波しても搖動が小さくなる。
重い発電機は底部に設置して、逆に安定力として作用させて、小型化をさせるので、流体抵抗力を小さくさせる。
水線面積を小さくしたことで、透波性を良くしたものである。
波力を働かせなくして、次に波による搖動を失くしたことである。
波力に対して安定で、強くなる。
波力に強い舟型を探していて、前記式から、舟型の項から水線面積を小さくして、解決したものである。
これに対して、半潜水式のプラットホームは作業台船とは逆に水線面積を小さくさせ、形状復元力を極減させることで、透波性を良くして波力を働かなくさせて、長尺装置には無駄な応力を掛けず、重い発電機は底部に設置して、逆に安定力として作用させて、小型化をさせるので、流体抵抗力を小さくさせるものである。
また水線面積が小さいことは、長尺装置の浮上・沈降をさせる可搬バラストの積載と卸下の量を減少させて効率的に行うものである。
また、半潜水式プラットホームは定点に係留させて海洋作業を行うもので、潜水状態の耐圧殻では流体力が小さくなり、海上の暴風波の影響は受け難くさせ、コラムで海面上と連通させて半潜水状態の作業空間とさせており、水中開口部を通じて長尺装置を連結させたり、共通軸の水中接続作業を行うもので、コラムの海面上部分を使って、航行船舶への警戒器具を装着させ、緊急時の脱出路も常時確保されていて安全である。
細長いコラムは、浮力と潜水深度の調整が容易となり、浮上沈降が容易で、浅喫水線位置までの浮上も可能とするが、同時に、形状復元力を極減させて、波浪に対して搖動し難くさせる。
本発明は、請求項2に記載の無端鎖帯水車であって、併進回路は周囲壁面と路面で閉じた導水渠の内部に内部断面を遮蔽しながら移動する複数の受圧部材を有し、路面に沿って上下間を密閉させた板ベルトを有し、当該板ベルトは両側の端部から複数の軸部を突出させ、当該軸部にコースターを装着し、当該コースターを摺動遮水させつつ連接し、板ベルトの上側に前記受圧部材を枢着し、板ベルトの下側を水潤滑走行させる無端鎖帯にしたことにより周回する牽引力と移動距離を回転力に変換する出力手段を有するものでもよい。
水流に沿った両端開口の閉じた管路(以下、圧力管と称す)を使って、前記圧力管の内部に当該圧力管内の断面を遮蔽しながら移動する複数の挿入栓を有し、各挿入栓は等間隔に連結させて無端鎖帯を形成させ、該無端鎖帯が周回する牽引力と移動距離を回転力に変換する出力手段を有する構成とすることで、流水の有する運動エネルギーは同量の流動仕事(圧力エネルギー)に変換されて、下記式に示す仕事率が生じることから、圧力型の変換装置となり、管内流速が小さくなり、効率が良くなる特徴が発揮される。
提案式は;W/δt=(K―P)*A*V=(K―P)*Q=Ft*Vである。
式に於いて、U=外界の流速(m/s)、K=流速Uの流入動圧(Pa)K=1/2*ρ*U、ρ=流体の密度(kg/m)ρ=1000、P=流出動圧(Pa)P=1/2*ρ*V、A=圧力管内の断面積で、挿入栓乃至受圧板(以下栓と略称)の断面積と等しい(m)、V=管内流速又は栓の移動速度(m/s)、Q=管内流量(m/s)Q=A*V,Ft=抵抗力(管内流とは反対方向の引張力)(N)、とすると、L=移動距離(m)、L=V*δtなので、W=仕事(J)は、W=Ft*Lであり、W/δt=仕事率(J/s)は、W/δt=Ft*V、となる。
即ち、圧力管内の流水を挿入栓で遮断することで、管内にはKの動圧が生じて、栓にはFk=K*A、Fk=動圧力(N)が働くが、挿入栓には無端鎖帯を通じて抵抗力Ftの力が働くので、Fk―Ft=Fpの定常状態となり、Fp=流出力(N)が流出口で働いており、Fp/A=Pの流出動圧で、V=(2*P/ρ)の流出速度Vとなっている。
管内流速Vが生じると、挿入栓は同速で移動して、抵抗力FtはVの速度で移動するので、定義からFt*Vの仕事率がされる。
また、無端鎖帯に負荷を掛けて、抵抗力Ftを変化させると、Fkは淀み圧で一定外力なので、流出力Fpで自律的にVが調整されて、仕事率に従って移動距離Lが変化する。
この様に圧力型の水力変換では、入口と出口の動圧差(K―P)に管内流量Qを掛けたものが圧力エネルギーに依る仕事率(W/δt)となり、運動エネルギーの全量とも一致し、無論エネルギー保存則とも合致している。
また従来は、ベルヌーイの定理に於いて、運動、位置、圧力の各エネルギーの次元は全て同一であるにも拘らず、圧力エネルギーのみが力学的エネルギーでは無いとされて来たが、本願に依ってそれが覆された意義は大きい。
次に、揚力型水車では運動エネルギーの利用による変換なので、最大効率は59,3%のベッツの限界値に従うが、圧力型変換では、提案式からベルトの周回速度V(m/s)が小さい程、仕事率は向上するので、限界値の取除かれた高効率を可能とする。
また、提案式で示された圧力型の変換装置とする為に、本願では各軸部に装着したコースターを前後に連接させて突出軸の走行溝を塞いで、複数の受圧部材で区画された内部圧力を保持させており、上下間を密閉した板ベルトの下側では水潤滑走行をさせると共に、後述の先導車軸曲面との間で、バイパス化流水の止水作用を行っている。
また、揚力型では最大流速や最大回転速度とさせて効率を上げるが、限界値のロスと損失抵抗のロスが大きくなる。
一方の圧力型では、淀み点圧という外界流速の最大エネルギー値を利用しており、遅い管内流速や周回速度にすると逆に高効率となることから、既述の如く弱流速でも転回を可能とさせて、低速回転で得た高トルクは速度変換歯車で増速させて、共通軸から発電機軸に伝達させて、発電機固有の高効率で電力に変換させている。
なお揚力型では、失速やカットオフ等が発生して、適応流速範囲は狭く制限されるが、圧力型では、無端鎖帯の受圧部材は複数個を等間隔で連結するので、管の入口と出口に於ける動圧差が分割されて、夫々の受圧部材に均等に掛るので、高エネルギー流水や最大負荷に対しても問題無く適応出来る。
図9では、圧力管の前部に圧力溜りを設けると、定常流の取込み口になると共に、淀み点圧力が安定して確保され、カップ周縁からの横溢や乱流入が無くなる。
【0012】
本発明は、併進路を圧力管又は圧力導水渠で覆い、当該圧力管の側面から逆進路を密閉した密閉導水渠とし、当該密閉導水渠のバイパス化によって生じる流動水を遮断させることで前記圧力がかかる導水渠の流出口内域に生じた負圧を流入口における動圧に加えた圧力差としてもよい。
流動水中に置かれた抵抗物体の背後には、粘性圧力抵抗(造渦抵抗)に依り、境界層の剥離による負圧領域が生じて、流出口周辺も負圧と為るが、圧力導水渠の側面に開口する逆進路を通じて周辺水が流入して、圧力導水渠内はゼロ圧以下とは為らないので、負圧の利用は不可であった。
本願は逆進路の全域を囲繞した密閉導水渠とさせ、密閉導水渠に内在する水の流動化を遮断して、圧力導水渠の流出口内に発生する負圧を保持させることで、他端の流入口に於ける動圧との圧力差として利用するものである。
密閉導水渠の内在水がバイパス化によって流動化を起こすのを阻止させる為に、密閉導水渠の高位置でエア溜りを形成して、内在水を分断させる。
即ち、流入口部では圧力が高くて高水位となり、流出口部では圧が低いので低水位となり、両水面間では落差が生じるが、両水面は路面等で仕切られていて、その高さを越えられないので、バイパス化流水は生じず、両者の圧力差は保たれる。
従って、圧力管の入口には動圧の押込み圧が、管内出口には外界流水による負圧が生じて、両管端の圧力差が大きくなるので、管内のエネルギー密度は外界流水よりも増強される。
【0013】
本発明は、圧力管又は圧力導水渠を有するとともに外形を上下両側面ともに流線形にした無端鎖帯水車を流水中に没水固定させることで高速側面流を圧力管又は圧力導水渠の流出口後方に射出し吸引作用を生じさせて、当該流出口内域を負圧にしてもよい。
流線形にさせた抵抗物体を没水させると、流水は該物体の両側面で高速の外側流を生じるので、外形を流線形にして剥離をさせず、表面を平滑にさせて高速流を維持させて、流出口までコアンダ効果で流下させて、流出口の後方に射出させることで、流出水を両側からの流水の粘性によって、連行して吸出すことで、流出口内水に吸出し負圧を生じさせる。
上側の流線形天盤と下側の流線形下床盤とで成す翼型は、最大翼厚が大きいと、流水の投影面積に相当する流水量が多くなり、それが両側面から流出して高速側面流となるが、最大流速は一定値となるので、高速流の層厚が厚くなって、安定した流れとなるが、抵抗も大きくなる。
一方、翼弦長が大きいと流速が低下する。
従って翼厚比(=最大翼厚/翼弦)が大きい程、有利となるが、逆に剥離が生じ易くなり、レイノズル数も関与するので、現地状況に合わせて決定する。
また、前縁から最大翼厚までの前半部の形状は、流水圧を受けて剥離は生じないので、滑らかな曲線とすれば良い。
また、遮水板の円筒内面に装着したローラーを有し、当該ローラーに受圧部材背面が遠心力で押圧され、その反動で板ベルトの下面が先導車の円形路面に押圧されることで上下の接触部が遮水され、両側面のコースターは摺動遮水されており、内側は二段組先導車により受圧部材が板ベルト上面に起立することで遮水され、当該受圧部材の起立位置からガイドローラーとの間でバイパス化流水が進入するが、前記圧力管の流入口に開度調節可能な流入扉を設け、当該流入扉にて高速流入射水させることで逆方向のバイパス化流水を抑えてもよい。
即ち、先導車の円形路面と板状ベルト下面との間、及び遮水板の円筒内径に設けた弾性ローラーと底無しカップの受圧板背面との間で、夫々が凸出して狭間隔となる処を遠心力で押圧して遮水をさせると共に、圧力管なので両側壁面との間は、コースターで摺動遮水をされており、また全没水なので、水潤滑用の板ベルトが使用されている。
従って、連続ベルトとこれを囲繞する圧力管又は圧力導水渠との間隙は全て遮水されており、一方の内側については、受圧部材を二段組先導車で巻き込んで、板ベルトの上面に当該受圧部材の底部を押圧して起立をさせて遮水がされることから、この起立位置からガイドローラーまでの転回する区間を通じて、バイパス化流水が進入することになる。
そこで、圧力管の流入口に開度調節可能な流入扉を有し、流入扉で流入速度を上げて、高速流入射水を作り、当該流水膜で該転回する区間を塞ぐもので、これに対して真逆方向から進入するバイパス化流水は阻止される。
従って、高速射出流の射出力又は粘性力で逆流水は遮断されるので連続ベルト周りの外面と内部を遮水させる手段と協働させることで、バイパス化は阻止される。
圧力変換で生じる管内流速は、その流量が流入口に設けた流入扉を通じて流入するので、流入扉の開度を調節して高速射出流とさせるが、流量は揚力型に較べて遙かに少量である。
なお、開水路で外界流水を受け止める抗力型水車では、カップへの流入水は横溢したり、渦流を起こして、流水エネルギーを充分に吸収出来なかったが、圧力型では圧力溜りを作り、流入水量も少ないので、各受圧部材間の間隔を狭めても、乱流入が生じ難くなる。
そこで、相互の間隔を狭めて走行路を短縮させると共に、逆進路では受圧部材どうしを重ね合せると、前記の転回路区間を塞ぐ距離は縮められる。
エア溜りによるバイパス化防止に較べて、天盤が低い流線形となり表面からの剥離を生じ難くさせる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る流水エネルギーを回転力に変換する抗力型の水力変換装置は構造が簡単で、流水のエネルギーを効率良く回転力に変換できる。
また、海流の変化にも容易に対応でき、小型の装置で大容量発電が可能である。
初期投資額が少なく、維持費も小額で済む。
さらには、耐久性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】底無しカップ式水中水車の原理説明図を示す。
図2】底無しカップ式連続ベルトの概要構造図を示す。
図3】抗力型連続ベルトの水底設置の概観図を示す。
図4】抗力型連続ベルトの浮揚固定と着座の一部断面図を示す。
図5】連続ベルトを浮揚連結させた長尺装置の構造図を示す。
図6】往復流を利用する連続ベルト装置の断面図を示す。
図7】波浪流動を利用する連続ベルト装置の断面図を示す。
図8】半潜水式プラットホームと圧力導水渠の断面図を示す。
図9】装置背後の粘性圧力抵抗を利用する圧力型変換装置を示す。
図10】流線形にして高速外側流を利用する圧力型変換装置を示す。
図11】先導車の曲面と高速流入水でバイパス化防止の切欠け図を示す。
図12】圧力管方式の連続ベルト構造例を示す。
【符号の説明】
【0016】
5=枢軸
6c=底無しカップの重心
7=底板
8=遮水板
17a=併進路
17b=逆進路
20=中央躯体
21=ガンギ車
25=(速度)変換歯車
26=共通軸
27=一方向クラッチ
43=原動歯車
44=圧力導水渠(併進路)
48=板状先導車
24=テンショナー
64=高速側面流
70=半潜水式プラットホーム
89=コースター
49=板ベルト
59=受圧部材
96=境界層
97=浮上式二段フラップ
98=鎧戸(スリット)式のアーム
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る一軸水車型水力変換装置を図1示す。
水中水車1は抗力型なので回転軸1aを流水に直交させて置くため、流水と同方向に回転する併進路と、反対方向の逆進路が同時に出来て、両者の抗力差で回転が行われる。
【0018】
図1は水中水車1の例であり、水面4より下に取り付けられる。
底面部2から支柱3を立設し、水中水車を設置してある。
水中水車1の外輪1c上に設ける水受けカップを、図2に示すように流水を受ける受圧板6aと両側の側板6bとを一体と成した底無しカップ6と、底板7(7a,7b)とに分割させて、両者を一本の枢軸5で貫通して回転自由とさせて、両者の該底無しカップ6の底面と該底板7とで成す挟角を、開閉自在で且つ密閉して止水が可能に装着させて、該底板7は該外輪1c上に固定させることで、該底無しカップ6は併進路では流水を受けて該挟角は密閉されて該外輪1c上に起立状態6eとなり、且つ底板7を押圧して止水がされて底有りカップと同等の大きな流水抵抗値を発揮させ、逆進路では流水を受けて該枢軸5周りを回転して、該外輪1c上に倒伏状態6fとなるので、該挟角は大きく開放されて流水は該底無しカップ6の内・外側を通過するので流水抵抗は殆どゼロとなり、抵抗差は非常に大きく出来る。
なお、流水中に直交して置かれた受圧板6aの抗力は、(抗力)=(抗力係数)*(流速)*(投影面積)となり、抗力型水車では流水が直接当たって力を発揮する。
【0019】
図1図2より、また逆進路から併進路への約3直角分の転回では、水中水車1の外部に遮水板8を設けて流水を遮断させた停滞水域9とすることで、該底無しカップ6には遠心力が働いて、水車回転軸1aと枢軸5との線上に重心6cが来るので該受圧板6aは外方に伸展されて半開き状態6gとなり、そのまま回転を続けるので、次の流入水の射水が該受圧板6aの内面に当たる位置まで、該遮水板8の高さとさせて遮水をさせると、その後は流水力と自然落下とで、該底無しカップ6は起立状態6eとなって自動転回は完了される。
なお起立状態6eから倒伏状態6fへの転回は、約1直角分なので流水のままに自然と行われる。
従って、流水中に全没した水中水車の自動回転は連続して行われ、且つ起立状態6eと倒伏状態6fとの間の抵抗差は極大化を可能とさせるもので、底無しカップ6と底板7とを分割させて一軸回転で両者の挟角を開閉させることを特徴とする、回転軸1aを流向に直交して置く水中水車1を自動回転させることができる。
【0020】
無端鎖帯からなる連続ベルトタイプの水力変換装置を図2に示す。
水中水車1では底板7が外輪上1cに固定されているのに対して、図2に於いて無端鎖帯の連続ベルトに底板を固定させることで、底無しカップ6は底板7との間の機能を保持したまま路面上を周回する。
即ち、枢軸5に平行して等間隔で新たに従軸10を加えて、各軸の間を回転自在に連結する軸間リンク11(11a〜11c)を設けることで、駆体19の上面の路面18の全周を覆う連続ベルトを形成させるものである。
帯状底板12は枢軸5とその前方の従軸10との間の軸間リンク11に内有固定されており、底無しカップ6は枢軸5に装着されているので、該帯状底板12と底無しカップ6の底面は枢軸5を中心とする挟角を形成して、前記水中水車で述べた機能を果たしながら周回する。
【0021】
帯状底板12は硬質底板7bの下側と、弾性底板7aの上側との結合で両性能を有していて、底面との密着性を良くしており、交換が容易となるように、軸間リンクは切欠リンク11bまたは噛合せリンク11cとさせている。
同様に、枢軸5とその後の従軸10との間の軸間リンク11にも、遮水の為の帯状硬質板12bを内有固定させて、水潤滑方式の採用を可能とさせており、軸間リンクは全周リンク11aとさせている。
なお、底無しカップの底辺部に弾性帯13を貼付けて、全ての帯状底板12を同一種の帯状硬質板とさせても良い。
また受圧板6aの角度や曲率を変えて、流水圧力の中心位置を上下させて、底無しカップ底面が適正な押圧力を底板に掛けながら周回させる。
また同時に、帯状底板12は歪んで漏水が起きないように、枢軸5と従軸10には小車15を一様分布で装着させて、均等な支持力を働かせる。
なお、全路面18が水中にあれば、バネ板と潤滑板を用いた水潤滑方式(図示せず)とさせて、摩擦抵抗を極減させることも可能である。
【0022】
底無しカップ6の形状は、受圧板6aの幅と高さ及び底面積は獲得目標のエネルギー値に応じて決定し、何れも容易に製作可能であり、特に材質が金属製であれば、ベンダーで曲げると簡単に加工が出来て、翼車が複雑で高価なのに較べて有利となる。
また、連続ベルトは出来るだけ軽量で幅広く製作すれば経済コストが下げられるので、受圧板6aには縦リブ14を設けて軽量化を図っており、連続ベルトは軽量に造られて軽快に周回するようになる。
図12に圧力管内104に受圧部材106を配設した連続ベルト型の水力変換装置の構造例を示す。
圧力管104からなる水流による併進路を遮断するように受圧部材106が移動し、圧力管104内を通過した受圧部材は、図12に106Bで示すように枢着軸109にて回動し倒伏状態になり、周回するようになっている。
受圧部材106Aは起立状態で圧力管104の内側断面を遮断する大きさ,形状であり、遮断板として機能する。
連続ベルトは、圧力管の下側にて上下間を密閉するように板状の周回板ベルト112になっており、板ベルト112が周回する路面111との間は、水潤滑になっている。
また、板ベルト112を幅方向に貫通配置した軸の突出部105に円板状の一部を円弧状107aに切り欠いたコースター107を連節し、周回可能になっている。
なお、周回部の構造は図3と同様にガンギ車軸でもよく、また一般的なローラ軸でもよい。
コースター107は、遮水路108に沿って摺動し、圧力管内が密閉状態になるよう遮水されている。
また、遮断板である受圧部材106の逆進路は密閉導水渠とすることができる。
【0023】
図3は、水中底部に固定部28から支柱3を立設し、設けた無端鎖帯水車の例である。
起立状態の底無しカップの受圧板6aで流水圧を受けて、受圧板6aの面積に応じた水力を発生させて、一連の連続ベルト17に並進運動を起こさせて、中央躯体20上の路面18を周回させると、連続ベルト17の図2に示した枢軸5と従軸10の突出部分が、該中央躯体20の貫通軸37に装着されているガンギ車21a,21bのスプロケットと噛み合って、ガンギ車21を回転させて、該ガンギ車21に同軸で取付けられている原動歯車43に軸駆動力を発生させて、そのトルクは被駆動の共通軸26に働かせて、共通軸26の角運動量を変化させることで、流水エネルギーは回転力に変換される(図4参照)。
【0024】
図4は、抗力型の連続ベルトを浮上させた例で、中央躯体の内部空間と、水位低下で着座させてもよいので、潮差の大きな潮間帯や干潮河川では有効となる。
連続ベルトとすることで併進路と逆進路33とに分割が出来て、長さが調整可能となるので、斜面を形成させれば、両者の比率も変更可能となる。
またガンギ車21(21a,21b)のスプロケットと枢軸5及び従軸10の突出部分との噛合わせは、簡単で余裕のある構造なので、漂流ゴミや海藻等は絡みにくくて外れ易くなっており、また水中水車の原理と同様に、流水のみで自起動して転回も完遂されるので、高速回転でも故障は生じ難くなる。
【0025】
連続ベルト17が周回する中央躯体20は、図5に於いて、全周の路面18と両側面とから成る函体とさせ、該中央躯体20の内部に2本のガンギ車軸42を貫通させて、その両側の外方に在る縦隔壁に設けた軸受で支承させることで、該中央躯体20の両側面に夫々のガンギ車21を設けるが、同一貫通軸42の左右両側にガンギ車21を同一角度で装着させるので、該路面18上に在る連続ベルト17の両側の突起軸と噛み合わせると、左右で相等しい力が伝達されて、連続ベルト17には歪みが生じず、事故発生は極減される。
【0026】
図5において、連続ベルト17が全周18を上下方向に周回可能とさせるには、中央躯体20と連続ベルト17の重量を支える必要があり、且つ貫通軸42に過大な荷重が掛からない様にさせる為に、該函体の側面と貫通軸及び共通軸との間を軸受や固定管で密封して、該中央躯体20と連続ベルト17との合計水中重量が略ゼロと成る様に、該中央躯体20の函体内部の容積で水中浮力を働かせるものである。
【0027】
図3に於いて、ガンギ車21の動輪21aと従輪21bの他に、第三軸を遮水板8の後方位置で、中央躯体20を貫通させて設けて、小径の先導車23を装着させて、連続ベルト17を周回させると、其処では曲率が小さくて回転角速度が大となるので、底無しカップの重心6cには、大きな遠心力が働いて、カップの受圧板6aの半開き状態6gが更に外方に拡がり、転回力を増強させる効果が大きくなる。
【0028】
また小型の先導車23を設けてカップの転回を行うと、遮水板8も小型にさせることが出来て、第三軸の小型先導車23とガンギ車の動輪21aとの間隔は広くなり、斜進路17cが形成される。
従って、流速が弱くて小型先導車に依る遠心力が小さい時でも、遮水板の停滞水域の中で、底無しカップの重心は枢軸の支持の下で、下方に落下する回転が行われて、完全に転回完了後に、次の併進路17aに進入するので、二軸並行配列での問題は解消される。
また流入水がカップに当る面積は増大され、或るいはコアンダ効果で斜面に沿った流れも生じるので、オープン方式に於けるカップへの受水効果は、二軸並行に較べて格段に向上する。
【0029】
図4に於いて、小型先導車を設けることで、遮水板8は小型化が可能となり、且つ本体と一体化させてケーシング30を形成させることが出来る。
そこで該ケーシングを円筒形とさせて、その内側で小型先導車23と連続ベルトを回転させるが、該ケーシング内径を底無しカップが自由に遠心力転回をする外径よりも小さく形成させて、受圧板6aの外面をケーシングの内壁面30で押圧させて、該カップの重心6c位置を後方に遅らせた状態で回転させて、ケーシング出口手前のローラー31を越えると一気に押圧を解放させて、先導車23の回転角速度と枢軸5周りの角速度の二重の角速度を同時にカップに与えることで、カップ重心6cには遠心転回力が増強されて、受圧板6aは大きく開くので、流入射水を受圧板6aの内面に当てて転回をさせるものであり、周回速度の遅い時でも、強い転回力を生じさせる方法である。
また、外付けの遮水板は本体と一体結合されるので、設置工事が不要となる。
【0030】
図4に於いて、先導車23にテンショナー24を近接して設けて、一組みにさせることで、先導車23のまわりを周回する連続ベルト17を、テンショナー24で強く牽引して、先導車23のまわりを強制的に大きな角度まで巻き込ませることで、底無しカップの受圧板6aの内面に流入射水を当てるもので、その後は流水圧で転回される。
また、図3に示すように逆傾斜の斜進路17cにすると更に自然落下の力が加わって完遂されるもので、底無しカップ6の遠心力や流速に頼らずに、確実に転回させる方法となる。
【0031】
図5に於いて、自力浮楊する連続ベルト装置の多数基を浮揚並列配置させて、それ等を連通パイプ40で固定させて長尺装置とさせることで、各々の装置で水力を発生させて、それ等を同一の共通軸26に伝達させることで、共通軸26に大トルクを発生させる方法である。
即ち、自然ネルギーは一般にエネルギー密度が希薄なので、大量の流入水によって必要エネルギー量を確保して、発電力を得るもので、理論発電量はP=ρQV/2(W)となり、流入水量Q(m)と流速V(m/t)に比例する。
【0032】
本願は、天盤と上屋盤とで充分な浮力を持った屋根形浮体を形成させて、該屋根形浮体を最上部に、通常比重の下床盤を最下部に、水中重量をゼロと成した中央躯体を真中に置いて、これ等を両側の縦隔壁で挟んでUボルトや高張力繊維製結束帯で固定をさせることもできる。
【0033】
流速が小さくなると、図4に示すように変換歯車25のギア比で増速させた後の回転速度が未だ共通軸26よりも小さい時には、共通軸26の回転力が逆方向に供給されないように一方向クラッチ27を設けて空転をさせて、伝達を遮断させる。
特に長尺装置の共通軸26では、波の位相差や流動の方向が変化するので、共通軸26の回転を弱める成分は、一方向クラッチ27で取除かれる。
【0034】
即ち原動歯車(A)43のトルクを変換歯車(B)25で増速して、共通軸(C)26に伝達させる場合に、ギア比Gは、G=(出力の歯数)/(入力の歯数)=nB/nA、G<1.0、と1.0より小さくさせると、回転数が上がりトルクの伝達比は小となる。
またこの時、歯車の噛合わせ箇所での、両方の歯車の周速度v、及び伝達されるトルクTは同じ値となっている。
【0035】
ところで、共通軸26には発電機軸(図示せず)が連結されていて、既に同一方向に回転をしており、変速された変換歯車25の周速度vBが共通軸26の周速度vCと同一速度(vB−vC)=0、の時には、供給されるトルクはゼロとなり、変換歯車25の周速度vBが共通軸26の周速度vCより大きいと、(vB−vC)>0、その時には、その差分の速度が加速度α、α=d(vB−vC)/dt=|F/r|sinθ、となり、rは回転半径である。
そうして、トルクTは共通軸の角運動量Lに供給されて、回転角度θの変位を与える仕事が行われて、共通軸はエネルギーを持つようになる。
それで、同一の周速度に至るまでのトルク分ΔTに就いては、共通軸に伝達されないことから、原動歯車43には力Fが働かず、ガンギ車21の回転抵抗も小さくて軽くなり、従って連続ベルト(D)17の周回速度vDは低下しない。
また、周速度の差分がマイナス(vB−vC)<0、の時にも、一方向クラッチ27が空転して、トルク分ΔTの供給は断たれて、連続ベルト17の周回速度vDは低下しない。
【0036】
依って、流速の遅い所ではギア比を小さくさせて、早期にトルクを働かせた後では、トルクの伝達比が小さくなり、一方、高流速の所ではギア比を大きくさせて、晩期にトルクを働かせた後では、トルクの伝達比が大きくなるので、連続ベルトの周回速度は自律的に調整が行われる様になる。
従って、このギア比Gを場の流速と装置の特性に応じて、適正な値に設定をさせるものである。
尚、一方向クラッチは総称名で使用しており、図8にその一具体例を示しており、従力歯車27bはキー溝27dで共通軸26に固定をされているが、入力歯車27aは共通軸26とは自由で空転可能となっており、入力歯車のトルクは従力歯車にキーストン27cで、一方向に供給されるものである。
【0037】
図5の36凹湾隔壁は不透水性材料であり、内部に発泡樹脂の成形体を封入させた外部浮力体を示すが、流水抵抗が大きく、邪魔物となっている。
図5の20中央躯体は不透水性材料であるが、図8の20中央躯体は水密軽量コンクリートで造られて、自由な形状とさせている。
図5の36外部浮力体の不透水性材料は、図6又は図7の51天盤の水密軽量コンクリート製とさせており、図6では低比重の水密軽量コンクリートの内部に46c低発泡樹脂が封入されており、両者の比重差が小さいので、打設時の分離浮上力は小さくなり、封入作業は容易となる。
或いは図7では106大型の密閉型中空体を内部に充填させており、大径と微小粒径の比表面積は直径に反比例して小さくなるが、粘性が大きいので分離浮上は殆ど問題とならず、また両者の素材が同質ならば、見掛比重を同一にさせると、均質な耐圧強度を持った製品が出来る。
図7の32下床盤では比重を重くさせた水密重量コンクリートであり、重心低下をさせて重量復元力を大きくさせている。
図8の70半潜水式プラットホームは水密軽量鉄筋コンクリートである。
【0038】
処で、水密軽量コンクリート材料を使用して丁寧に造った装置の内部に密閉された空隙を作ると、浮力と装置とが一体となって、水中浮力は半永久的に不変となり、重心も不変なので、浮心と重心の相互位置と強さも不変となる。
従って、自己浮力で浮上し、自己復元力で姿勢制御を行う自力浮上装置が可能となる。 図6に於いて、中央躯体20は既述の如く水中重量をゼロとさせるが、材質を水密軽量コンクリートとすることで、浮力は何時までも不変となる。
また同様に上屋盤50と天盤51とで内部に密閉された空隙を造ると、充分な浮力を持った屋根形浮体となる。
【0039】
海洋構造物が水面下〜表層部で浮揚又は漂流し始めると、航行船舶と衝突する危険性が非常に大きくなることから、水面に、確実に浮上・維持をさせて、発見を容易とさせ、回収を簡易とさせることが最重要となる。
このため図5に於いて、ギヤ室等の空隙には発泡体の成形品46aを装填させ、中央躯体20の内部46bには反応性樹脂を注入して化学反応で発泡をさせながら充填をさせる。
発泡充填をさせ、図6の上屋盤50と天盤51との間には打設時に成形体46cを封入させれば、安全性は向上する。
【0040】
本願装置の製作は、既述の如く、屋根形浮体を最上部に、下床盤32を最下部に、中央躯体20を真中に置いて、これ等を両側の縦隔壁90で挟んでUボルト91や高張力繊維製結束帯92等で固定をさせて自力浮上の単位装置を作る。
そうして通常は、これ等の単位装置の天盤51と上屋盤50と下床盤32の各盤に水平方向の貫通孔38を開けた単位装置を並列配置させて、連通パイプ40を挿入して長尺装置を形成させて固定する。
【0041】
この組立て方式では、連通パイプ40は各コンクリート盤の内部を貫通するので、外表面には突起物が生じず、流体抵抗が小さくなり、特に高速の側面流を利用する吸込み負圧方式の装置ではその効果が顕著となる。
【0042】
図9に於いて、導水渠44,33内部には板状ガンギ車41(41a,41b)以外の障害物は何も無いので、水中で曳きだせば、後はトンネルだけなので、潜水士が導水渠内に入って、高圧ジェット水とケレン作業で隅々まで清掃が可能となる。
【0043】
図6に於いて、共通軸26を中心に左右にガンギ車41c、41dと先導車48c、48d及び可動式遮水板96a,96b(以下フラップと称す)を夫々180度(以下2回軸と称す)の回転対称の位置に1組ずつ設けて、連続ベルトを中央躯体20の硬質路面18上を周回させ、フラップは上段は沈降式96aで下段は浮上式96bの比重差に依る作動と、流水の強弱で開閉作動を行わせるものである。
また、往復流に対して2回軸の回転対称に部品を配置させることで、連続ベルトの周回方向並びに共通軸26の回転方向を常に同一方向に回転させたものである。
【0044】
潮汐流は長周期の往復流動なので、流入口52及び縦隔壁90は前後に在り、圧力導水渠44cも上下に2進路を作って、夫々の流向に対応させる。
即ち、連続ベルト17の周回方向並びに共通軸26の回転方向が、往復流に対して常に同一方向で同一大きさにさせる為には、共通軸26を中心に180度(2回軸)の回転対称形とすることで解決させたものであり、従って、板状ガンギ車41cの原動歯車43cと先導車48cと可動式遮水板(以下フラップと称す)を夫々1組づつ対称位置に配列させたものである。
【0045】
またフラップは上段と下段とに設けるため、作動方向が逆方向となるので、水に対する比重差を付けることで、上段は沈降式フラップ96aに、下段は浮上式フラップ96bにさせて、どちらも圧力導水渠内の流水の強弱に依って開閉作動を行わせるものである。
即ち、上下の圧力導水渠は共に、併進路17aと逆進路17bの両方の状態となり、逆進路から併進路に移行する時に底無しカップ転回の為に遮水板8が必要となるが、この時圧力導水渠44内の流速は略ゼロとなるので、沈降型96a並びに浮上型96bのどちらのフラップも、夫々の比重差が働いて閉じる。
また他方の併進時には、圧力導水渠44c、44d内の流勢が強くてフラップは開放されるので、完全な自起動が可能となる。
【0046】
図7に於いて、中央のガンギ車100を中心に前後に流入口と板状先導車48(48c,48d)を設け、遮水板を固定させて、2回軸の回転対称に配置をさせ、連続ベルトの周回方向と共通軸26の回転方向を同一方向とさせている。
また波浪は波長が短い為、波動運動に良く追随する様に、大型ガンギ車の動輪100からのトルク伝達はギア室に収納させて、共通軸は下側の連続ベルトの回路より下方に位置させている。
従って、ガンギ車の従輪を失くして装置を短縮化させ、連続ベルトの行程も短くさせて、波動流を良く捉えると共に、太くて重くなる共通軸は装置の最下方に置くことで、天盤の浮力との間で復元梃を大きく機能させて、重量復元力を働かせるものである。
即ち、波の流動エネルギーを利用するには、装置が搖動するのを止めなければならず、船舶では船長を長くするしか方法が無いが、本願では逆に装置を短くさせており、水中固定は自力の重量復元力を働かせるものである。
【0047】
又、波浪は頻繁に流動方向と強さが変わるので、遮水板98(98c,98d)は厚味のある湾曲させた腕木(以下アーム98と称す)の形状で、鎧戸構造(以下スリットと称す)とさせて、アームの形状やスリットの溝の傾斜角度を、外界流水が流入口に導かれ易くなる様にさせて固定させている。
即ち、波の回転運動を妨げずに、波の流れを流入口に導くが、導水渠44内には入らせない様に反射をして拒み、逆に導水渠内からの併進流は通過をさせて外部に放流をさせるもので、放流抵抗が掛からない様に膨大な陥凹部99(99c,99d)を設けており、通常の波浪では短周期で水量が少ないことから問題は生じない。
【0048】
尚、底無しカップは、逆進路で倒伏状態6fになると効力係数は非常に小さくなるので、例え導水渠44の中に在って、周りの流速がゼロであっても、殆ど抵抗無く周回を行い、周りの水も宙水状態が保持される。
従って、連続ベルトを出来るだけ軽量で短く作っておけば、流入水が途絶えても、倒伏状態6fとなって周回を続けて、エネルギーロスは非常に小さくなる。
従って大径の板状ガンギ車100に一方向クラッチが無くて周回が続いても、次の流入水に依って自動的に起立状態6eとなって加速をされて、回転が続行される。
また一方向回転なのでフライホイール(図示せず)を設けておくと、どちら側からの流水に対しても起立状態6eとなって有効に加速されて、脈動回転が平滑化されるので、不規則波には有利となる。
【0049】
図8に於いて、多数の装置を並列連結させて一定長の長尺装置を形成させて、その両端には半潜水式プラットホーム70を設けて、該長尺装置の内部を貫通する連通パイプ40を該半潜水式プラットホーム70に設けた支柱78に連結して固定具84で固定をさせ、該半潜水式プラットホーム70の外側下方に設けた係留具を使って、係留策とアンカーとで該半潜水式プラットホーム70を水中に浮揚係留させて固定する。
【0050】
従って、半潜水式プラットホームの外部に設けた支柱78で、連通パイプ40を止着させて中間支持をさせることで、長尺装置に掛かる流体抗力や風力等の全ての外力は、両端の半潜水式プラットホームで支持されることから、長尺装置の夫々の単位装置には外力が掛からず、全ての装置は統一規格品でも良くなることから、大量生産には好都合となる。
また長尺装置を単位構成として扱うことで、浮揚曳航や水中接続や布設等の海上作業は、安全で迅速で効率良く行われて、工事費は低減される。
【0051】
図8に於いて、上記の半潜水式プラットホームは、半潜水殻構造とさせて、内部に重量バラスト74を設置し可搬バラスト75を搭載又は卸下させるが、これを重量バッテリーや変圧器や発電機とすれば、重量物を下方に搭載可能な半潜水式の作業台船(プラットホーム)70と同等のものとなる。
【0052】
図8に於いて、流水抵抗が小さくなる様に横長の形状とさせ、耐圧性の潜水殻71は半潜水状態で作業可能な空間88を有すると共に自力浮上浮力を有しており、コラム72は細長くして、作業員や物資の連絡路とさせると共に、透波性を良くして風浪に耐えさせ、水面上に突出する部分には夜間警戒灯やレーダー反射板を設け、水密ハッチ73は潜水可能な完全密閉性とさせ、重量バラスト74を設けて重量復元力を働かせて垂直自立力を有している。
また、高速側面流を利用する長尺装置では完全没水される為、正確な深度調整が必須となるが、コラムの断面積が小さいので、毎メーター排水量が小さくなり、潜水殻内へ搭載又は卸下する可搬バラスト75の量が小さくなり、小重量でも大きな喫水線移動が可能なので、長尺装置の没水深度の調整は効果的となる。
【0053】
ここで半潜水式プラットホームとは、水中の耐圧潜水殻71と水面上に突出する連絡通路(コラム72)とで構成されていて、自力で海面上に浮上する浮力と水面に立脚する重量復元力を有しており、半潜水状態とは水面下の風波の穏やかな潜水殻内に居て、水面上に突出する連絡通路で、大気の循環、物資の供給、人員の移動が可能なので、陸上と同様の環境下となり、潜水とは違って常に海上脱出路が確保されている。
【0054】
本願は、連続ベルトの併進路を囲繞させる圧力管、または併進路を取り囲む周囲構成材料で囲繞させた圧力導水渠を形成させて、その断面形状は該併進路を起立状態のカップが周回する時の形状と同じにさせ、両者の間隙を小さくさせて漏水量や圧力漏洩を無くして、確実にカップで流水圧を受け止め、内部圧力を保持させる圧力導水渠を形成させることができる。
【0055】
連続ベルト17の併進路17aを囲繞させる圧力管または該併進路を取り囲む周囲構成材料で囲繞させて圧力導水渠を形成させるものであり、図8に於いて、周囲構成材料には中央躯体20の硬質路面18と下床盤32の内側面と左右の縦隔壁90であるので、これ等の相互間を密閉させて導水渠を形成させ、更に内部を周回する起立状態のカップとの間で、漏水防止や圧力漏洩を小さくさせて、内部圧力を保持させて効率を上げた圧力導水渠44とするものである。
この為に、ガンギ車41を板状とさせて、その両側を中央躯体20の側壁と縦隔壁90とで挟んだ狭い間隙とさせて摺動を行わせる。
またその間隙にはテフロン(登録商標)板等を貼り付けて水潤滑方式(図示せず)とさせても良い。
また圧力導水渠の内面には水流に依る磨耗を防ぐ為に、硬質モルタルや金属製や合成樹脂製等でライニング(図示せず)をさせており、ギア類は全て縦隔壁90を隔てたギア室47でセットをさせて、遮圧をさせると共に、流水中のゴミが入らない
【0056】
内部圧力が保持される圧力導水渠44を使うと、入口と出口とに於ける圧力の差は、圧力導水渠44内では圧力勾配が直線状となるので、内部で起立する多数のカップには、その個数に応じて均等な差圧が働いて、全てのカップに略同等の圧力が有効に作用するので、高圧や高速の高エネルギー水に対しても、無理なく無駄なく安全に大駆動力として利用可能となる。
また管内には、一切の障害物を不要とさせるので、最大の効率が得られる。
従って、圧力導水渠44で流水エネルギーのロスを無くし、高速から低速まで適応流速範囲を広くさせると共に、カップの強度は大きく出来るので、高トルクが発揮され、且つカップの小型化が可能となり、高性能化が可能となる。
【0057】
流水エネルギーと圧力エネルギーとは相等しいことから、圧力導水渠44を用いて、両端の開口部に於けるエネルギーの保存則を成立させると共に、連続ベルトを使用して内部のエネルギーを総て動圧力による仕事に変換させる方法である。
即ちW=P*A*V*tとなる。
ここで、連続ベルトのカップに掛かる圧力Pと、ベルトの周回速度Vとすると、単位時間t当りの仕事量は、W/t=P*A*Vとなる。
依って、W/t=1/2*ρ*A*(U―V)=P*A*Vとなる。
【0058】
また、管内の流速VまたはV‘は連続の法則により、周回速度VまたはV‘並びに放流速度VまたはV‘と一致をするので、カップに負荷が掛かって、圧力がP‘と周回速度がV’になると、上記の式は、W‘/t=1/2*ρ*A*(U―V‘)=P’*A*V‘に変化をする。
従って、W=W’ではないのは、流入水のエネルギーが、放流口に於ける外圧(通常はゼロ)に抗して押出す為のエネルギーとして使われる為であり、外界流水の速度エネルギーは、全量が有効に仕事量として変換されると言える。
従って、流水エネルギーを並進運動量やトルクに使うほど、管内流速V‘は小さくなり、見掛けのロス分は小さくなって、効率は良くなる。
【0059】
処で、揚力型水車は運動エネルギーによる変換方法なので、最大効率は59,3%のベッツの限界値に従うが、圧力による仕事量の変換方法では、上記の如く管内流速を小さくさせて、限りなく高効率とさせることが可能となり、例えば陸上の反動型フランシス水車では90〜95%の高効率を上げている。
従って、圧力導水渠を用いた連続ベルトの方法では、最大効率はベッツの限界値を打ち破ることが出来る。
【0060】
W=K*A*U=K*Q=1/2*ρ*Q*U2(J/s)となり、上記運動エネルギー率のEと等しくなり、従って当然のことながら、運動エネルギーと動圧力による仕事とは相等しくなる。
【0061】
図9に於いて、圧力導水渠44の入口と出口に於ける圧力を、圧力導水渠の距離で割った、圧力傾斜は一定であり、そこを同一形状のカップの個数で分割されるので、各カップには等しい圧力差が生じていると見做せる。
従って、強力な高エネルギー水であっても、管内に有るカップの個数で等分に分割されるので、1個のカップに掛かる力は小さくなって制御が可能となり、利用が出来る様になる。
また圧力導水渠44を使えば、管両端の開口部に掛かる圧力の差を、外圧エネルギーとして利用が出来る。
【0062】
本願は、流水中に置かれた抵抗物体の背後で、境界層の剥離によって生じた負圧領域と、該抵抗物体の前面とを、圧力管で連通させると、該圧力管の両端間の流水エネルギーは、動水圧に該剥離領域内の負圧が追加されて増大するようにすることができる。
【0063】
図9に於いて、流水中に置かれた抵抗物体58の背後では、粘性により境界層が剥離を受けて、不連続面が生じて負圧領域56が発生している。
また該抵抗物体の前面では淀み点に相当する動圧が生じているので、両水域を圧力導水渠44で連通させると、該圧力導水渠44の両端に於ける圧力の差分は、該動圧に該剥離領域56内の負圧が追加されることから、該動圧または運動エネルギーは増大される。
因って、外界流水のエネルギー密度は増大されるので、これを動圧力による仕事の方法で利用するものである。
【0064】
図9於いて、逆進路は上屋盤50と硬質路面と左右の縦隔壁及びケーシング54の各材料で囲繞されているので、これ等の相互間を密閉させた導水渠55を形成させると、導水渠55内を連続ベルトが周回しても、底無しカップは倒伏状態6fとなるので、形状抵抗は小さくて、付加質量も殆んど生じず、内部の水は不動の宙水となっている。
然し、導水渠55の両端は流入口52と流出口53に連通する口内域に開口しており、当該開口部に於ける圧力差が高くなると、導水渠55がバイパス化を起こして、内部の宙水が逆流を起こし、延いては圧力導水渠44の圧力差を低下させることから、これを阻止させる為に、導水渠55内にエアを注入して、一番高い位置に在るケーシング54の内部でエア溜りを作って、内部の宙水を前後に分断させて、完全な遮水と遮圧を行なう方法である。
【0065】
図10に於いて、流線形状にさせた抵抗物体60を没水させると、該物体の両側面部では高速側面流64が生じることから、この高速流を、抵抗物体の後方を流線形状とさせて剥離が生じないようにさせて、またコアンダ効果で外表面に沿って流出口53まで誘導させて来ることで、流出口53の両側から射出流を当てると、放流水には高速射出流の粘性に依って遅い内部水は加速をされて、連行流水66となって吸い出されるので、流出口内水53には吸出し負圧が生じて、圧力差に依るエネルギーの増大が行なわれる。
従って、大きな速度差を作って、粘性剪断応力による不連続面である境界剪断面65を形成させて、逆流や渦流を生じさせて負圧領域の負圧を増大させても良く、或るいは側面流の射出角度を調整させて、最適の混合拡散効果を得て連行水量の大きさと強さを変えても良い。
【0066】
前記と同様に縦置きの円柱周りの流速計算では、V=2sinθで表されて、θ=90度の側面では場の流速の2倍となる。
従ってこの高速流水を流出口で両側から挟み込む様にして射出をさせると、流速差が大きくなるほど、粘性に依る剪断力が大きくなる。
因みに計算上では、2倍の流速が流出口で追加されると、動圧の合計は3倍となり、エネルギーは9倍となるので、前者の負圧領域56よりも更に大きなエネルギーの獲得が可能となる。
【0067】
また動圧力による仕事の変換方法では、共通軸26に大きな発電負荷が掛かっていると、原動歯車に大きなトルクTが働いて、連続ベルトの周回速度Vが遅くなり、流出水の速度Vも遅くなるので、吸出し負圧の効果はより著しく発揮される。
またこれは、反動水車の吸出し管による負圧の利用と似ているが、前者は水柱の重量による負圧発生であり、後者は粘性に依る負圧の発生でマイナス圧となっている。
よって流水エネルギーの小さな処でもエネルギー密度が上げられることは、至る処での地産地消の発電を可能とさせるもので真に有意義な方法となる。
【0068】
図10に於いて、下床盤32の前方の流入扉32pを回転可能とさせて、回転角度の操作で、流入水量を調整するが、流入扉32pは主に長尺配置とさせた時の、個別装置の能力差の調整に用いて、全体のバランスを整える。
例えば、長尺装置が河川を横断して布設される時に、中央部の主流域から外れた両端部では大きく開口させて流入水量を多くさせたり、或るいは長尺装置の中の一基を完全停止させても、共通軸26の一方向クラッチ27が働いて、その他の装置には影響を及ぼさないので、故障を起こした装置の流入扉32pを閉鎖させたり、半開にさせて潜水士が中で修理をしたり、或るいは大時化には前後の扉を閉じて、内部の連続ベルト17を保護する。
【0069】
図11に於いて、密閉導水渠内部にバイパス化流水を生じさせない為に、板状先導車48に於ける曲面部を使って、無端鎖帯水車と周囲壁面との間を全て遮水させており、内側は受圧部材59が板ベルト49の上面に起立して遮水をさせるので、当該起立位置からガイドローラー31の間でバイパス流水が侵入するので、流入扉32pの開度を調節して高速流入射水とさせて、当該区間を覆って、高速流水と真逆方向のバイパス化流水を抑止させるものである。
圧力変換で生じる管内流速は、その流量が流入口に設けた流入扉を通じて流入するので、流入扉の開度を調節して流入速度を上げて、高速射出流とさせるが、流量は揚力型に較べて遙かに少量である。
また、バイパス化に依って底無しカップの底面から流入する水流は、この射出流とは真逆の方向であるので、高速射出流でこの逆流水を覆うことで、射出力又は粘性力で逆流水は抑制されて遮断されるので板ベルト周りの外面と内部を遮水させる手段と協働させることで、バイパス化は阻止される。
また、開水路で外界流水を受け止める抗力型では、カップへの流入水は横溢したり、渦流を起こして、流水エネルギーを充分に吸収出来なかったが、圧力型では圧力溜りを作り、流入水量も少なく、各受圧部材間の間隔を狭めても、乱流入が生じ難くなる。
そこで、相互の間隔を狭めて走行路を短縮させると共に、逆進路では受圧部材どうしを重ね合せる17dと、前記の転回路を塞ぐ距離が縮められる。
エア溜りによるバイパス化防止に較べて、天盤が低い流線形となり表面からの剥離を生じ難くさせる。
図11に於いて、遮水板の円筒内面に設けたローラー31に受圧部材背面59aが遠心力で押圧され、その反動で板ベルト49の下面が先導車の円形路面18に押圧されて、上下の夫々の凸出部と狭窄部との間が遮水され、両側面ではコースター89が走行溝を塞いで摺動遮水を行っているので、受圧部材59と周囲壁面との間隙は、全て同時に遮水をしている。
内側は板状先導車48とテンショナー24との二段組先導車48wの作用で受圧部材59を該板ベルト49の上面に起立させて底面を塞いで遮水をすることから、流入扉32pの開度を調節して得た高速流入射水とさせて、ガイドローラー31から底面が塞がれるまでの転回路を流水膜で覆って内側流入水域とを隔絶させている。
なお、先導車の円形路面は回転可能とさせても良い。
また、図10の二段組先導車48wの後ろの点線位置で受圧部材の底面は完全に塞がれる。
流入扉32pは、個別基又は短尺装置毎に設けて、係留状態で閉鎖して、故障基を止めたり、或いは台風時には総てを閉じて、内部の装置を守る。
圧力変換で生じる管内流速は、その流量が流入口に設けた流入扉を通じて流入するが流量は揚力型に較べて遙かに少量である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、流れのある海や湖の水中に設置する水車に適用でき、発電装置として応用できる。
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