(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
2液型塗料組成物中における亜鉛含有触媒及びビスマス含有触媒の合計含有量が0.1〜2.0質量%であり、亜鉛含有触媒(A)とビスマス含有触媒(B)の質量比(A/B)が0.1〜0.8であることを特徴とする請求項1又は2に記載の2液型塗料組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の2液常温硬化型樹脂液は、ラジカル架橋型であり、実際にはアクリレートモノマーが配合されている。このため、塗装時に臭気が生じ、作業環境に与える影響が大きく、問題視されていた。
【0005】
また、特許文献2及び3に記載の2液型塗料組成物は、塗装後にウレタン樹脂が形成される塗料組成物であり且つ無溶媒であることから、臭気の課題を解決できるものの、低温硬化性(具体的には5℃以下での硬化性)については依然として改善の余地があった。特に屋外で使用される塗料組成物は、四季を通じあらゆる地域で塗装が行える点にも焦点が当てられており、冬季や寒冷地等の低温環境下でも塗装が行える塗料組成物が求められている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、低温硬化性に優れる2液型塗料組成物及び該2液型塗料組成物の塗装により得られる塗装物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、特許文献2及び3に記載されるような2液型塗料組成物について検討したところ、これら2液型塗料組成物には、一般的に硬化触媒としてジブチルスズラウレートのようなスズ含有触媒が使用されているが、スズ含有触媒は低温環境下において固化することが知られており、塗料の組成によっては低温環境下でこのスズ含有触媒の十分な触媒作用が得られていないことが分かった。また、スズ含有触媒は環境負荷物質である。このような状況下、本発明者は、低温環境下で固化を起こさず優れた触媒作用を発揮できる上、環境負荷も無い硬化触媒の検討と、硬化剤に使用されるポリイソシアネートとの反応性が高いジアミン化合物についての検討を行ったところ、硬化触媒として亜鉛含有触媒とビスマス含有触媒との組み合わせ及びジアミン化合物として芳香族ジアミンを配合させることによって、低温硬化性に優れる2液型塗料組成物を提供できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明の2液型塗料組成物は、ポリオール、芳香族ジアミン、亜鉛含有触媒及びビスマス含有触媒を含む無溶媒主剤と、脂肪族ポリイソシアネートを含む無溶媒硬化剤とからなることを特徴とする。
【0009】
本発明の2液型塗料組成物の好適例においては、前記脂肪族ポリイソシアネートが、ビウレット構造を有する。
【0010】
本発明の2液型塗料組成物の他の好適例においては、2液型塗料組成物中における亜鉛含有触媒及びビスマス含有触媒の合計含有量が0.1〜2.0質量%であり、亜鉛含有触媒(A)とビスマス含有触媒(B)の質量比(A/B)が0.1〜0.8である。
【0011】
本発明の2液型塗料組成物の他の好適例においては、前記芳香族ジアミンがジエチルメチルベンゼンジアミンである。
【0012】
本発明の2液型塗料組成物の他の好適例においては、前記無溶媒主剤(C)と前記無溶媒硬化剤(D)の体積比(C:D)が1.00:0.95〜1.00:1.05である。
【0013】
本発明の2液型塗料組成物の他の好適例においては、前記無溶媒主剤が、遮熱性顔料を更に含む。
【0014】
本発明の2液型塗料組成物の他の好適例においては、前記無溶媒主剤が、中空粒子を更に含む。
【0015】
また、本発明の塗装物は、上記の2液型塗料組成物の塗装によって得られる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低温硬化性に優れる2液型塗料組成物及び該2液型塗料組成物の塗装により得られる塗装物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の2液型塗料組成物について詳細に説明する。本発明の2液型塗料組成物は、ポリオール、芳香族ジアミン、亜鉛含有触媒及びビスマス含有触媒を含む無溶媒主剤と、脂肪族ポリイソシアネートを含む無溶媒硬化剤とからなることを特徴とする。
【0018】
本発明の2液型塗料組成物は、主剤と硬化剤とから構成されており、例えば塗装時に主剤と硬化剤とを混合することで使用される。本発明の2液型塗料組成物の塗装によって得られる塗膜は、脂肪族ポリイソシアネートとポリオールや脂肪族ポリイソシアネートと芳香族ジアミンの反応によって合成されるウレタン結合やウレア結合を有する樹脂を含む。
【0019】
本発明の2液型塗料組成物において、主剤及び硬化剤は、無溶媒タイプであり、水や有機溶剤等の溶媒を含まないものの、主剤や硬化剤に含まれる配合剤には溶媒を含んだ状態で市販されているものもあり、主剤や硬化剤の調製時にかかる溶媒を完全に除去することが困難な場合もある。このため、本発明の2液型塗料組成物において、無溶媒主剤及び無溶媒硬化剤とは、水や有機溶剤等の溶媒の含有量が5質量%以下、好ましくは0質量%の主剤及び硬化剤を意味する。
【0020】
本発明の2液型塗料組成物においては、無溶媒主剤(C)と無溶媒硬化剤(D)の体積比(C:D)が1.00:0.95〜1.00:1.05であることが好ましい。無溶媒主剤と無溶媒硬化剤の体積比が上記特定した範囲内にあれば、塗装や保管時の管理が容易になる。例えば、体積比が上記特定した範囲内にある無溶媒主剤と無溶媒硬化剤を想定し、この無溶媒主剤中に含まれるポリオールの水酸基と芳香族ジアミンのアミノ基の合計を1当量とした場合に、無溶媒硬化剤中に含まれるイソシアネート基の量が0.5〜1.5当量となるように、ポリオール、芳香族ジアミン及び脂肪族ポリイソシアネートの配合量を調整することで、実際に使用可能な2液型塗料組成物を調製することができる。
【0021】
本発明の2液型塗料組成物において、無溶媒主剤は、ポリオール、芳香族ジアミン、亜鉛含有触媒及びビスマス含有触媒を含む。
【0022】
ポリオールは、水酸基を2個以上有する化合物であり、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基と反応することでウレタン結合を形成する。なお、ポリオール1分子あたりの水酸基の数(n)は、ポリオールの持つ水酸基価(OHV)と数平均分子量(Mn)から次の計算式により求められる。
n=Mn(g/mol)×OHV(mgKOH/g)/56110
ここで、水酸基価とは、試料1g中の遊離水酸基を無水酢酸で完全にアセチル化した後、それを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数である。また、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定されるポリスチレン換算した数平均分子量である。
【0023】
ポリオールは、数平均分子量が300〜10,000であることが好ましく、400〜2,000であることが更に好ましい。また、ポリオールは、1分子あたりの水酸基の数が2.3〜9.0であることが好ましく、2.5〜5.0であることが更に好ましい。
【0024】
ポリオールは、液体であることが好ましい。具体的には23℃で粘度が100,000mPa・s以下の液体であることが好ましく、23℃で粘度が500〜5,000mPa・sの液体であることが更に好ましい。なお、本発明において、ポリオールの粘度は、液温23℃においてB型粘度計を用いて60rpmで測定された値である。
【0025】
ポリオールとしては、例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。アクリルポリオールは、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルと重合性不飽和基を有する化合物を共重合して得られる。水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを除く重合性不飽和基を有する化合物としては、スチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これら重合性不飽和基を有する化合物は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。ポリエステルポリオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと、フタル酸、マレイン酸、トリメリット酸、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、セバシン酸、ピメリン酸、スベリン酸等の多塩基カルボン酸とを脱水縮合反応して得られる。また、この脱水縮合反応の際に、大豆油、亜麻仁油、米ぬか油、綿実油、桐油、ひまし油、やし油等の天然油を多価アルコールで分解して得られる水酸基含有脂肪酸エステルを多価アルコールの全部又は一部として使用することもできる。ポリウレタンポリオールは、上記多価アルコールと、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等のポリイソシアネートとをアルコール過剰の条件で反応して得られる。また、上記水酸基含有脂肪酸エステルを多価アルコールの全部又は一部としてポリウレタンポリオールの合成にも使用できる。ポリエーテルポリオールは、例えば、上記多価アルコールや水酸基含有脂肪酸エステルに、エチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加させて得られる。なお、これらポリオールは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本発明の2液型塗料組成物において、ポリオールの含有量は、後述するように、芳香族ジアミンや脂肪族ポリイソシアネートの官能基の量に応じて適宜調整されるが、例えば、無溶媒主剤中におけるポリオールの含有量は、50〜80質量%であることが好ましい。
【0027】
芳香族ジアミンは、ポリオールより速く脂肪族ポリイソシアネートと反応するので、ポリオールを単独で使用する場合と比べて硬化完了までの時間を短くしたり、硬化中の塗料の粘性を調整したりすることができる。
【0028】
芳香族ジアミンの具体例としては、ジエチルジアミノトルエン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジクロロジフェニルメタン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、ジエチルメチルベンゼンジアミン(1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン等)、1,3,5−トリエチル−2,6−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5,3’,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミン、3,5−ジメチルチオ−2,6−トルエンジアミン等が挙げられる。なお、これら芳香族ジアミンは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
また、芳香族ジアミンとしては、ジエチルメチルベンゼンジアミンが好ましい。本発明の2液型塗料組成物は、低温硬化性に優れるため、屋外で使用される塗料組成物として好適に使用できるが、例えば道路の塗装に使用される場合、塗料組成物の硬化が完了する前に滑り止め用の骨材(例えば、砂利や砂)を撒いて塗膜中に固定化させる場合がある。この時、撒かれた骨材が塗膜中に十分に固定化できる程度に粘性や硬化完了までの時間を確保させる必要があると同時に、硬化完了までの時間が長すぎず、塗装を繰り返し行う場合も問題なく使用できることが必要である。ここで、芳香族ジアミンとしてジエチルメチルベンゼンジアミンを用いると、撒かれた骨材が塗膜中に十分に分散できる程度に粘性や硬化完了までの時間を確保できると共に、硬化完了までの時間が長すぎないため、塗装を繰り返し行う場合も問題なく使用できることを見出した。
【0030】
本発明の2液型塗料組成物において、芳香族ジアミンの含有量は、後述するように、ポリオールや脂肪族ポリイソシアネートの官能基の量に応じて適宜調整されるが、例えば、無溶媒主剤中における芳香族ジアミンの含有量は、10〜30質量%であることが好ましい。
【0031】
本発明の2液型塗料組成物においては、脂肪族ポリイソシアネートとポリオールや芳香族ジアミンとの反応を触媒する硬化触媒として、亜鉛含有触媒とビスマス含有触媒の組み合わせを用いることによって、優れた低温硬化性を達成することができる。亜鉛含有触媒は、低温環境下でも固化を起こすことなく使用可能であるが、硬化触媒として亜鉛含有触媒を単独で用いる場合は、十分な硬化性を確保することができない。また、ビスマス含有触媒も、低温環境下でも固化を起こすことなく使用可能であるが、硬化触媒としてビスマス含有触媒を単独で用いる場合は、亜鉛含有触媒と併用する場合と比較して塗膜強度が低くなる。このため、亜鉛含有触媒とビスマス含有触媒の組み合わせによって初めて低温硬化性に優れる2液型塗料組成物を提供することができる。
【0032】
亜鉛含有触媒としては、例えば、オクタン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、脂肪酸亜鉛、ジエチル亜鉛系触媒、亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体、酢酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトノエート、トール油酸亜鉛、水酸化亜鉛、亜鉛−2−エチルヘキソエート、ステアリン酸亜鉛、亜鉛オクトエート、ヘキサン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトナ−ト、ビス(亜鉛モノアセト酢酸塩)オキサイド、ビス(亜鉛モノ酢酸塩)オキサイド、亜鉛ジベンゾイルメタン、亜鉛−2−エチルオクトエート、亜鉛ビス(2−エチルヘキサノエート)、ラウリン酸亜鉛等が挙げられる。また、ビスマス含有触媒としては、有機ビスマス化合物、カルボン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、オクチル酸ビスマス、三酸化二ビスマス、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)、硝酸ビスマス、ビスマス トリス(ネオデカノエート)、ビスマスカルボキシレート、2−エチルヘキサン酸ビスマス、ビスマスオクトエート、ビスマスネオデカノエート等が挙げられる。なお、これら亜鉛含有触媒やビスマス含有触媒は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本発明の2液型塗料組成物において、亜鉛含有触媒(A)とビスマス含有触媒(B)の質量比(A/B)は0.1〜0.8であることが好ましい。
【0034】
本発明の2液型塗料組成物中において、亜鉛含有触媒及びビスマス含有触媒の合計含有量は0.1〜2.0質量%であることが好ましい。亜鉛含有触媒及びビスマス含有触媒の合計含有量が0.1質量%未満では、硬化性が十分に確保できない場合もあり、一方、2.0質量%を超えると、硬化完了までの時間が短くなりすぎる場合がある。
【0035】
本発明の2液型塗料組成物において、無溶媒硬化剤は、脂肪族ポリイソシアネートを含む。なお、無溶媒硬化剤中における脂肪族ポリイソシアネートの含有量は、80〜100質量%であることが好ましい。
【0036】
ポリイソシアネートはイソシアネート基(NCO基)を複数有する化合物であるが、これらポリイソシアネートの中でも、脂肪族ポリイソシアネートは、反応性が比較的低く、更に耐候性も向上できるポリイソシアネートとして知られており、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられるが、これら脂肪族ポリイソシアネートの変性体も含まれる。変性体の具体例としては、ビウレット変性体、イソシアヌレート変性体、アダクト変性体(例えばトリメチロールプロパン付加物)、アロファネート変性体、ウレトジオン変性体等が挙げられる。特に耐候性の観点からヘキサメチレンジイソシアネートの各種変性体、イソホロンジイソシアネートの各種変性体が好ましい。なお、これら脂肪族ポリイソシアネートは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
また、脂肪族ポリイソシアネートとしては、ビウレット構造を有する脂肪族ポリイソシアネート(即ちビウレット変性体)が好ましい。ビウレット構造を有する脂肪族ポリイソシアネートは、無溶媒主剤に対する相溶性に優れており、塗膜の仕上がりが良好である。
【0038】
本発明の2液型塗料組成物において、脂肪族ポリイソシアネートの含有量は、ポリオールの水酸基と芳香族ジアミンのアミノ基の合計を1当量とした場合にイソシアネート基が0.5〜1.5当量であることが好ましい。
【0039】
脂肪族ポリイソシアネートは、液体であることが好ましい。具体的には23℃で粘度が100,00mPa・s以下の液体であることが好ましく、23℃で粘度が100〜5000mPa・sの液体であることが更に好ましい。なお、本発明において、脂肪族ポリイソシアネートの粘度は、液温23℃においてB型粘度計を用いて60rpmで測定された値である。
【0040】
本発明の2液型塗料組成物は、各種顔料を含むことができるが、屋外で使用する観点から、遮熱性顔料を含むことが好ましい。遮熱性顔料とは、近赤外波長域(波長:780nm〜2500nm)の光を吸収しない又は近赤外波長域(波長:780nm〜2500nm)の光の吸収率が小さい顔料を指す。遮熱性顔料としては、例えば、黒色遮熱性顔料、白色遮熱性顔料、赤色遮熱性塗料、青色遮熱性顔料、黄色遮熱性顔料等が挙げられる。黒色遮熱性顔料としては、例えば、アゾメチアゾ系顔料、ペリレン系顔料、アニリン系顔料、複合酸化物焼成顔料等が挙げられ、白色遮熱性顔料としては、酸化チタン等が挙げられる。これら遮熱性顔料は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
本発明の2液型塗料組成物において、顔料は、無溶媒主剤と無溶媒硬化剤のどちらに配合されていてもよいが、通常、無溶媒主剤に配合される。なお、本発明の2液型塗料組成物中において、顔料の含有量は、5〜40質量%であることが好ましい。
【0042】
本発明の2液型塗料組成物は、中空粒子を更に含むことが好ましい。中空粒子は、シェル(外殻)の内部に空洞を有する粒子である。このため、塗膜が中空粒子を含むと、塗膜に断熱効果を付与することができ、難燃性を向上させることができる。中空粒子としては、球状中空粒子、繊維状中空粒子、チューブ状中空粒子、シート状中空粒子等が挙げられる。塗料組成物中に中空粒子を使用することにより、塗料組成物の比重を小さくすることができる。その結果、厚膜で塗装した場合にもタレにくく、塗装作業性が良好な塗料組成物が得られる。
【0043】
上記中空粒子は、特に限定されるものではなく、種々のものを使用することが出来る。例えば、材質により中空粒子を分類することができ、樹脂等からなる有機素材の中空粒子、ガラス、シリカ、アルミナ、ジルコニア、カーボン、セラミック、火山性ガラス質等の無機素材からなる中空粒子が挙げられるが、塗料の貯蔵安定性が良好になることから、無機素材の中空粒子がより好ましい。これら中空粒子は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
上記中空粒子は、平均粒子径が10〜80μmであることが好ましく、20〜60μmであることが更に好ましい。中空粒子の平均粒子径が10μm未満では、塗料の粘度が高くなる場合があり、中空粒子の平均粒子径が80μmを超えると、塗膜形成性が低下するとともに、塗膜の平滑性が低下する場合がある。中空粒子の平均粒子径は、体積基準粒度分布の50%粒子径(D
50)を指し、粒度分布測定装置(例えばレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置)を用いて測定される粒度分布から求めることができる。なお、中空粒子の粒子径は、レーザ回折・散乱法による球相当径で表される。
【0045】
上記中空粒子は、真密度が0.2〜1.2g/cm
3であることが好ましく、0.2〜0.8g/cm
3であることが更に好ましい。真密度が0.2g/cm
3未満では、練合時、塗装時、及び貯蔵時において、塗料内における中空粒子の安定性が低下する。真密度が1.2g/cm
3を超えると、塗料の粘度が高くなる場合があり、中空粒子を配合することによるメリット(塗料の比重を低くすること)が得られにくい。真密度は、ピクノメーター(気相置換式真密度計、例えば、Micromeritics社製のAccuPycII1340)を用いて測定できる。
【0046】
上記中空粒子は、耐圧強度が2〜200MPaであることが好ましい。耐圧強度が2MPa未満では、真密度が低い場合と同様に、練合時、塗装時、及び貯蔵時において、塗料内における中空粒子の安定性が低下する。耐圧強度は、ASTM D 3102−78で定義されており、グリセリンの中に中空粒子を適量入れ加圧し、10体積%破壊する時の圧力を指標として用いる。
【0047】
本発明の2液型塗料組成物において、中空粒子は、無溶媒主剤と無溶媒硬化剤のどちらに配合されていてもよいが、通常、無溶媒主剤に配合される。なお、本発明の2液型塗料組成物中において、中空粒子の含有量は、2〜10質量%であることが好ましい。
【0048】
本発明の2液型塗料組成物には、防錆剤、分散剤、消泡剤、脱水剤、レベリング剤、沈降防止剤、ダレ止め剤、防藻剤、防カビ剤、防腐剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を必要に応じて適宜配合してもよい。
【0049】
本発明の2液型塗料組成物は、無溶媒主剤と無溶媒硬化剤とからなるが、これらは、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することによって調製できる。
【0050】
次に、本発明の塗装物について詳細に説明する。本発明の塗装物は、上述した本発明の2液型塗料組成物の塗装によって得られるが、塗装方法としては、特に限定されないが、主剤と硬化剤を混合してから硬化までの時間が非常に短いため、塗布直前に混合し、噴霧することが可能な2液衝突混合型エアレススプレー塗装機の使用が好ましい。なお、硬化後の膜厚は、例えば200〜500μmである。
【0051】
本発明の2液型塗料組成物の塗装は、アスファルト舗装路面上で行われることが好ましい。アスファルト舗装路面は、様々な粒度の骨材とアスファルトを混合させたアスファルト混合物を表層に用いており、使用する骨材の粒度や施工方法によって区分される。例えば、耐摩耗性等に優れる密粒度アスファルトや透水性に優れる開粒度アスファルト等がある。
【実施例】
【0052】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0053】
(実施例1〜7)
表1に示す配合処方に従って、原料を混合し、実施例1〜7の主剤を調製した。
また、実施例1及び3〜7においては、硬化剤として、脂肪族ポリイソシアネートビウレット変性体(商品名:デスモジュールN3200A、住化バイエルウレタン株式会社製)を用い、実施例2においては、硬化剤として、脂肪族ポリイソシアネートイソシアヌレート変性体(商品名:スミジュールN3300、住化バイエルウレタン株式会社製)を用いた。
【0054】
なお、実施例1〜7において、主剤と硬化剤を1.00:1.00の体積比で混合する場合、主剤中のポリオールの水酸基と芳香族ジアミンのアミノ基の合計を1.0当量とした場合の硬化剤中のイソシアネート基は、1.1当量である。
【0055】
【表1】
【0056】
表1中、主剤に用いた配合剤は、以下の通りである。
ポリオール・・・ヒマシ油変性ポリオール樹脂(商品名:URIC−H420、伊藤製油株式会社製)
芳香族ジアミン・・・ジエチルメチルベンゼンジアミン(商品名:ETHACURE100、ALBEMARLE社製)
硬化触媒A・・・ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)と2−エチルヘキサン酸亜鉛の混合触媒(混合比約1:1)(商品名:BorchiKat0244、OMG Borchers GmbH社製)
硬化触媒B・・・2−エチルヘキサン酸亜鉛(商品名:BorchiKat22、OMG Borchers GmbH社製)
硬化触媒C・・・ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)(商品名:BorchiKat24、OMG Borchers GmbH社製)
遮熱性顔料A・・・酸化チタン系白色顔料(商品名:タイペークCR−97、石原産業株式会社製)
遮熱性顔料B・・・アゾメチアゾ系黒色顔料(商品名:クロモファインA−1103、大日精化工業株式会社製)
着色顔料・・・カーボンブラック(商品名:三菱カーボンブラック、三菱化学株式会社製)
【0057】
(比較例1〜4)
表2に示す配合処方に従って、原料を混合し、比較例1〜4の主剤を調製した。
また、比較例1〜4においては、硬化剤として、脂肪族ポリイソシアネートビウレット変性体(商品名:デスモジュールN3200A、住化バイエルウレタン株式会社製)を用いた。
【0058】
なお、比較例1〜3において、主剤と硬化剤を1.00:1.00の体積比で混合する場合、主剤中のポリオールの水酸基と芳香族ジアミンのアミノ基の合計を1.0当量とした場合の硬化剤中のイソシアネート基は、1.1当量である。
【0059】
また、比較例4において、主剤と硬化剤を1.00:1.00の体積比で混合する場合、主剤中のポリオールの水酸基と芳香族ジアミンのアミノ基の合計を1.0当量とした場合の硬化剤中のイソシアネート基は、1.2当量である。
【0060】
【表2】
【0061】
表2中、ポリエーテルジアミンは、Huntsman社製「ジェファーミンD230」であり、硬化触媒Dは、ジブチル錫ジラウレート(商品名:ネオスタンU−100、日東化成株式会社製)である。他の配合剤については、表1において説明した通りである。
【0062】
実施例1〜7及び比較例1〜4について、各種評価を行った。なお、いずれの評価においても、主剤と硬化剤を混合する際の体積比は1.00:1.00であった。
【0063】
(低温硬化性の評価)
5℃環境下にて試験塗料を混合した直後に20ミルアプリケーター(500μm)を用いてブリキ板に塗装し、塗膜のタック感がなくなるまでの時間を測定した。
塗装後に散布する滑り止め骨材を固定化させるためには塗膜乾燥速度が速すぎてはならず、また、塗り重ね塗装をすばやく行うためには硬化速度が遅すぎてはならない。一般的に塗装してからタック感がなくなるまでの時間は30分程度が好ましいとされる。評価結果を表3および4に示す。
【0064】
(塗膜外観の評価)
低温硬化性の評価と同様の方法にて塗装した試験片について、目視にて塗膜の外観評価を行った。
主剤と硬化剤の相溶性が悪い場合、塗膜が白濁し、外観不良となる。判断基準は以下の通りである。評価結果を表3および4に示す。
○:塗膜外観が濁りなく良好
△:塗膜の一部が薄く白濁
×:塗膜外観全体が白濁
【0065】
(塗膜強度の評価)
JIS K 5600−5−9塗膜の機械的性質−耐摩耗性(摩耗輪法)に規定される方法に従って、塗膜硬度を評価した。具体的には、直径6.35mm中心孔をもった直径100mmの円盤状試験板に試験塗料を常温にてエアスプレー塗装し、十分乾燥させた後、以下の条件によって試験を行い、試験前と試験後の塗膜の摩耗減量を測定した。評価結果を表3および4に示す。
試験条件
摩耗輪の種類:CS−17
荷重:1kg
回転数:5000回転
【0066】
(明度の測定)
低温硬化性の評価と同様の方法にて塗装した試験片に対し、色差計(商品名:CR−400、使用光源:D光源、コニカミノルタセンシング株式会社製)を用いて、塗膜の明度(L
*)を測定した。評価結果を表3および4に示す。
【0067】
(日射反射率の測定)
20ミルアプリケーターを用いて、試験塗料を常温にて白黒隠蔽率試験紙(JISK5600−4−1 4.1.2で規定、日本テストパネル株式会社製)に塗装し、JIS K 5602に従い、白黒隠蔽率試験紙黒地上の塗膜の反射率を250nm〜2500nmまで分光光度計(商品名:UV3100PC;株式会社島津製作所製)で測定し、近赤外波長域(780nm〜2500nm)および全波長域(300nm〜2500nm)の、塗膜の日射反射率を求めた。さらに、求めた値の小数点以下一桁を、JIS Z 8401に従って四捨五入した。さらに、それぞれの塗膜において得られた近赤外波長域日射反射率ρおよび明度L
*について、L
*が40.0超の場合には、ρ≧L
*を満たすものが遮熱性を有する塗膜であると判定し、L
*が40.0以下の場合には、ρ≧40.0を満たすものが遮熱性を有する塗膜であると判定した。なお、遮熱性の評価基準は下記の通りである。評価結果を表3および4に示す。
○:L
*が40.0超の場合にはρ≧L
*を満たすもの
L
*が40.0以下の場合にはρ≧40.0を満たすもの
×:L
*が40.0超の場合にはρ≧L
*を満たさないもの
L
*が40.0以下の場合にはρ≧40.0を満たさないもの
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】