特許第6124382号(P6124382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6124382発振装置、RFフロントエンド回路及び携帯型無線通信端末装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6124382
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】発振装置、RFフロントエンド回路及び携帯型無線通信端末装置
(51)【国際特許分類】
   H03L 7/00 20060101AFI20170424BHJP
   H03B 21/01 20060101ALI20170424BHJP
   H03B 5/30 20060101ALI20170424BHJP
   H04B 1/403 20150101ALI20170424BHJP
【FI】
   H03L7/00
   H03B21/01
   H03B5/30
   H04B1/403
【請求項の数】6
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-159045(P2016-159045)
(22)【出願日】2016年8月13日
【審査請求日】2016年10月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516282732
【氏名又は名称】アール・エフ・アーキテクチャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】特許業務法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森榮 真一
【審査官】 鬼塚 由佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−292030(JP,A)
【文献】 特開2008−072709(JP,A)
【文献】 特表2004−516740(JP,A)
【文献】 特開2011−176667(JP,A)
【文献】 特開2002−280838(JP,A)
【文献】 特開2013−115496(JP,A)
【文献】 特開2006−101530(JP,A)
【文献】 特開平11−122135(JP,A)
【文献】 特開2006−279798(JP,A)
【文献】 特開2004−241886(JP,A)
【文献】 特開平11−122121(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0084856(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03L 7/00
H03B 5/30
H03B 21/01
H04B 1/403
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振周波数が制御不可である発振器と、
前記発振器から出力される一次信号の周波数又はそれに応じた周波数の基準周波数に対する誤差周波数を検出し、前記誤差周波数に応じて前記一次信号から目標周波数の二次信号を発生する二次信号発生部とを具備し、
前記二次信号発生部は、
前記一次信号の周波数又はそれに応じた周波数の前記基準周波数に対する誤差周波数を検出する誤差周波数検出部と、
前記誤差周波数に応じた周波数の補正信号を発生する補正信号発生部と、
前記一次信号に前記補正信号を合成する信号合成部とを有し、
前記誤差周波数検出部は、
前記発振器から出力される一次信号をデジタル一次信号に変換するアナログ−デジタル変換部と、
前記基準周波数の波形を示すデジタル基準信号を発生する基準信号発生部と、
前記デジタル基準信号と前記デジタル一次信号とに基づいて、前記誤差周波数を演算する誤差周波数演算部とを有し、
前記補正信号発生部は、
前記誤差周波数に応じた周波数の波形を示すデジタル補正信号を発生するデジタル補正信号発生部と、
前記デジタル補正信号をアナログ信号に変換するデジタル−アナログ変換部とを有することを特徴とする発振装置。
【請求項2】
前記デジタル補正信号発生部は、
前記誤差周波数と所定周波数とに基づいて、前記デジタル補正信号を発生することを特徴とする請求項記載の発振装置。
【請求項3】
前記二次信号発生部は、
前記信号合成部の後段に設けられる、前記目標周波数を中心とした通過帯域を有するBPFをさらに有することを特徴とする請求項記載の発振装置。
【請求項4】
前記発振周波数が制御不可である発振器はSAW発振器であることを特徴とする請求項1記載の発振装置。
【請求項5】
アンテナによって受信した受信信号のベースバンド入力信号への変換及びベースバンドから出力されたベースバンド出力信号の前記アンテナによって送信する送信信号への変換を行うRFフロントエンド回路であって、
発振周波数が制御不可である発振器と、
前記発振器から出力される一次信号の周波数又はそれに応じた周波数の基準周波数に対する誤差周波数を検出し、前記誤差周波数に応じて、前記一次信号から目標周波数の二次信号を発生する二次信号発生部と、
前記受信信号に前記二次信号を乗算し、前記ベースバンド入力信号を出力する第1乗算器と、
前記ベースバンド出力信号に前記二次信号を乗算し、前記送信信号を出力する第2乗算器とを具備し、
前記二次信号発生部は、
前記一次信号の周波数又はそれに応じた周波数の前記基準周波数に対する誤差周波数を検出する誤差周波数検出部と、
前記誤差周波数に応じた周波数の補正信号を発生する補正信号発生部と、
前記一次信号に前記補正信号を合成する信号合成部とを有し、
前記誤差周波数検出部は、
前記発振器から出力される一次信号をデジタル一次信号に変換するアナログ−デジタル変換部と、
前記基準周波数の波形を示すデジタル基準信号を発生する基準信号発生部と、
前記デジタル基準信号と前記デジタル一次信号とに基づいて、前記誤差周波数を演算する誤差周波数演算部とを有し、
前記補正信号発生部は、
前記誤差周波数に応じた周波数の波形を示すデジタル補正信号を発生するデジタル補正信号発生部と、
前記デジタル補正信号をアナログ信号に変換するデジタル−アナログ変換部とを有することを特徴とするRFフロントエンド回路。
【請求項6】
請求項記載のRFフロントエンド回路を備えることを特徴とする携帯型無線通信端末装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振装置、RFフロントエンド回路、無線送受信回路及び携帯型無線通信端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やスマートフォン、モバイルルータといった、モバイル端末による無線通信による通信量は、端末装置の高機能化や、動画像ファイルや楽曲ファイル等の配信コンテンツの充実などが進み、年々増加し続けている。そういった需要に対応するために、無線通信技術の開発も進んでいる。現在は、第4世代(4G)の通信規格に対応した種々の端末装置や基地局設備の普及が進み、一般に広く利用されている。
【0003】
上記のような無線通信端末装置においてアンテナによって送受信する信号は、RF(Radio Frequency)信号と呼ばれる、高い周波数を持つ信号である。そして、RF信号を受信した際には、RFフロントエンド回路にて、ローカル発振器の出力信号と乗算することでダウンコンバートを行い、ベースバンドと呼ばれる、通信によってやり取りする情報そのものを含む帯域へと変換する。また、情報の送信を行う場合には、ベースバンド信号をローカル発振器の出力信号と乗算することでアップコンバートし、RF信号としてアンテナより送信する。
【0004】
ローカル発振器として一般的にはVCO(Voltage−Controlled Oscillator、電圧制御発振器)などの発振器が用いられる。VCOとは、入力する制御電圧によって出力周波数の制御を行う発振回路である。そして、通常は位相同期回路によって制御電圧を生成し、VCOの出力信号の周波数に種々の要因によって生じる誤差を補正し、ローカル発振器として用いる。
【0005】
例えば、特許文献1には、VCOの出力をADC(Analog−to−Digital Converter)へと入力し、変換後のデジタルデータによる位相比較を行い、それに基づいたVCOの制御電圧を出力する構成とすることにより、周波数の安定化を行う位相同期回路が記載されている。
【0006】
第4世代以降の通信においては256QAM(256 Quadrature Amplitude Modulation)などの多値変調を使用するが、そのためにはローカル発振器の周波数を一定に保っておく必要がある。そのために、位相同期回路によるローカル発振器の周波数の安定化を行う。
【0007】
また、上述した第4世代の通信規格においては、OFDMA(Orthogonal Frequency−Division Multiple Access、直行周波数分割多元接続)と呼ばれる、複数のサブキャリアを用いた通信を行うことで、周波数帯域の利用効率を高めている。高いスペクトル純度を持つローカル発振器を用いることで、サブキャリア間の干渉を防ぎ、より効率的に周波数帯域を利用して、通信の大容量化を図ることができる。
【0008】
より高いスペクトル純度を持つ発振器としては、SAW(Surface Acoustic Wave)発振器が挙げられる。SAW発振器についても、位相同期回路と組み合わせ、その出力周波数を安定化して利用される。SAW発振器の周波数安定化には、バリキャップ(可変容量ダイオード)への印加電圧の調整による手法が主に用いられている。
【0009】
また、無線通信の大容量化をするための技術として、MIMO(Multiple−Input and Mulltiple−Output)が知られている。これは、無線通信に用いる送受信機の双方で、アンテナや変調器、復調器などによって構成される送受信系統を複数備え、それらを利用することにより、通信容量を大容量化するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−138581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
先に述べたように、現在の無線通信端末装置においては、ローカル発振器としてVCOが一般的に用いられている。先に述べたように、通信の大容量化のための一つの手法として、ローカル発振器のスペクトル純度を高めることが挙げられるが、VCOのスペクトル純度を高めるには限界がある。SAW発振器はVCOよりも高いスペクトル純度を持つ発振器であるため、これをローカル発振器として用いることができるのならば、通信の大容量化を期待できる。しかし、SAW発振器は外部衝撃や温度変動によって発振周波数が変動するという課題がある。携帯電話などのような無線通信装置に用いる場合には、先述したバリキャップによる周波数安定化では、周波数補正範囲を温度変動による周波数変動が逸脱してしまう場合には安定した出力周波数を得ることは不可能であるという問題があった。またSAW発振器は公称周波数が固定されていて、携帯電話端末のローカル発振器のような複数の周波数を発振させる用途には使用できないという問題があった。
【0012】
そこで、本発明の目的の一つは、発振周波数が制御不可である発振器を用いた発振装置、及びこの発振装置を用いたRFフロントエンド回路、無線送受信回路、携帯型無線通信端末装置を提供することにある。発振周波数が制御不可である発振器としてSAW発振器を使用することを想定する。この発振装置は、発振周波数が制御不可である発振器から出力される信号の周波数を安定化し、それによりスペクトル純度の高い発振信号を発生する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態に係る発振装置は、発振周波数が制御不可である発振器と、発振器から出力される一次信号の周波数又はそれに応じた周波数の基準周波数に対する誤差周波数を検出し、誤差周波数に応じて一次信号から目標周波数の二次信号を発生する二次信号発生部とを具備する。
【0014】
二次信号発生部は、一次信号の周波数又はそれに応じた周波数の基準周波数に対する誤差周波数を検出する誤差周波数検出部と、誤差周波数に応じた周波数の補正信号を発生する補正信号発生部と、一次信号に補正信号を合成する信号合成部とを備える。
【0015】
誤差周波数検出部は、発振器から出力される一次信号をデジタル一次信号に変換するアナログ−デジタル変換部と、基準周波数の波形を示すデジタル基準信号を発生する基準信号発生部と、デジタル基準信号とデジタル一次信号とに基づいて、誤差周波数を演算する誤差周波数演算部とを備える。補正信号発生部は、誤差周波数に応じた周波数の波形を示すデジタル補正信号を発生するデジタル補正信号発生部と、デジタル補正信号をアナログ信号に変換するデジタル−アナログ変換部とを備える。デジタル補正信号発生部は、誤差周波数と所定周波数とに基づいて、デジタル補正信号を発生する。
【0016】
このように、発振器の発振信号に対して、発振器の出力信号の周波数と目標周波数の差分に基づいて生成した補正信号を合成することで、発振器の出力信号の周波数が不安定な場合においても、それを安定化することができる。従来の位相同期回路と異なり、発振器に対する制御を行わないのでフィードフォワードによる位相安定化制御といえる。
【0017】
先述の衝撃により発振器の発振周波数が変動する場合に、従来の位相同期回路のようなフィードバック制御では衝撃への耐性とループ帯域外の位相雑音の低さを両立することができない。耐衝撃性を得るには従来のフィードバック制御ではループ帯域を広げる必要がある。一方、ループ帯域の安定性の問題により、ループ帯域を広げることでスペクトル純度の悪化をもたらす。本方式では、フィードフォワード制御であるためループ帯域の安定性の問題に縛られずに、ループ帯域と広げながら、なおかつスペクトル純度を損なうことがない。つまり、耐衝撃性とスペクトル純度を両立することができる。
【0018】
先述の温度変動による発振器の発振周波数の変動に対して、従来のバリキャップによる位相同期回路は周波数の温度変動範囲がバリキャップによる周波数調整範囲を超える場合は位相同期回路が正常に動作しなくなる。本発明のDACにより補正信号を生成すると、温度による周波数変動を十分にカバーできる周波数範囲の信号を生成できる。
【0019】
DACにより補正信号を生成する際に、DACの生成する正弦波の周波数は最大でも数十メガヘルツと想定している。DACの特性上、この周波数では優れたスペクトル純度の正弦波の生成が容易であり、得られる出力のスペクトル純度がDACにより損なわれることがない。
【0020】
誤差周波数補正用のDACは変調動作も兼ねることが可能であり、デジタル変復調方式の無線機器との親和性が優れている。
【0021】
さらに、本発明の一実施形態において、発振周波数が制御不可である発振器としてSAW発振器を適用することができる。これにより、高いスペクトル純度を持つが、温度変化や外部衝撃に弱い、公称周波数が固定であるという特性を有するSAW発振器の出力信号の位相安定化および周波数のシフトを行い、スペクトル純度が高く、かつ、安定した周波数をもつ信号を提供することができる。
【0022】
また、二次信号発生部は、信号合成部の後段に設けられる、目標周波数を中心とした通過帯域を有するBPFを有する。BPFを設けることで、製造誤差等により信号合成部から出力されてしまうローカルリーク信号とイメージ信号の除去、又はローカルリーク信号の信号レベルとイメージ信号の信号レベルとを低減することができ、スペクトル純度を高めることができる。
【0023】
本発明の一実施形態に係る発振装置は、発振周波数が制御不可である発振器と、周波数の異なる複数のチャンネル信号を選択的に出力するチャンネル信号出力部と、発振器から出力された発振信号にチャンネル信号出力部から出力されたチャンネル信号を合成する信号合成部とを備える。これにより、従来、発振周波数が制御不可であったSAW発振器から出力される信号の周波数をシフトすることができる。
【0024】
本発明の一実施形態に係るRFフロントエンド回路は、アンテナによって受信した受信信号のベースバンド入力信号への変換及びベースバンドから出力されたベースバンド信号のアンテナによって送信する送信信号への変換を行う。RFフロントエンド回路は、発振周波数が制御不可である発振器と、発振器から出力される一次信号の周波数又はそれに応じた周波数の基準周波数に対する誤差周波数を検出し、誤差周波数に応じて、一次信号から目標周波数の二次信号を発生する二次信号発生部と、受信信号に二次信号を乗算し、ベースバンド入力信号を出力する第1乗算器と、ベースバンド出力信号に二次信号を乗算し、送信信号を出力する第2乗算器とを備える。このように、本発明の一実施形態に係る発振装置を用いたRFフロントエンド回路を構成することにより、温度変化や外部衝撃に弱いローカル発振器を用いる場合でも、安定した動作を期待することができる。もちろん、発振周波数が制御不可である発振器としてSAW発振器を用いることができ、それにより高いスペクトル純度を持つローカル発振信号を提供し、通信容量を大容量化することができる。
【0025】
本発明の一実施形態に係る携帯型無線通信端末装置は、上記のRFフロントエンド回路を備える。それにより、上記RFフロントエンド回路の効果により、例えば温度変化や外部衝撃にさらされる携帯型端末装置においても、安定した無線通信を行うことができる。
【0026】
本発明の一実施形態に係る無線送受信回路は、アンテナによって受信した受信信号の入力データへの変換及び出力データのアンテナから送信する送信信号への変換を行う。無線送受信回路は、発振周波数が制御不可である発振器と、基準周波数の波形を示すデジタル基準信号を発生する基準信号発生部と、発振器から出力された一次信号をデジタル一次信号に変換する第1アナログ−デジタル変換部と、デジタル一次信号とデジタル基準信号とに基づいて、一次信号の周波数又はそれに応じた周波数の基準周波数に対する誤差周波数を検出する誤差周波数検出部と、誤差周波数に応じた周波数の波形を示すデジタル補正信号を発生するデジタル補正信号発生部と、受信信号に一次信号を乗算し、ベースバンド入力信号を発生する第1乗算器と、ベースバンド入力信号をデジタルベースバンド入力信号に変換する第2アナログ−デジタル変換部と、デジタルベースバンド入力信号にデジタル補正信号を乗算する第2乗算器と、第2乗算器から出力されたデジタル入力信号を復調し、入力データを発生する復調部と、出力データを変調し、デジタル出力信号を発生する変調部と、デジタル出力信号にデジタル補正信号を乗算し、デジタルベースバンド出力信号を発生する第3乗算器と、デジタルベースバンド出力信号をアナログベースバンド出力信号に変換するデジタル−アナログ変換部と、アナログベースバンド出力信号に一次信号を乗算し、送信信号を発生する第4乗算器とを備える。このように、復調、変調の際にローカル発振器の周波数の誤差の補正を共に行う構成とすることで、構成に必要なDACの数を減らし、製造コストや消費電力を抑えることができる。なお、本発明の一実施形態に係る無線送受信回路は、複数のアンテナでデータの送受信を行なう無線通信技術であるMIMOに対して適用することができる。MIMOに適用した無線送受信回路は、複数のアンテナにそれぞれ対応する複数の送受信経路を備える。
【0027】
本発明の一実施形態に係る無線送受信回路は、第1のアンテナによって受信する第1の受信信号と第2のアンテナによって受信する第2の受信信号の入力データへの変換、及び出力データの第1のアンテナから送信する第1の送信信号と第2のアンテナから送信する第2の送信信号への変換を行う。無線送受信回路は、発振周波数が制御不可である発振器と、基準周波数の波形を示すデジタル基準信号を発生する基準信号発生部と、発振器から出力された一次信号をデジタル一次信号に変換する第1アナログ−デジタル変換部と、デジタル一次信号とデジタル基準信号とに基づいて、一次信号の周波数又はそれに応じた周波数の基準周波数に対する誤差周波数を検出する誤差周波数検出部と、誤差周波数に応じた周波数の波形を示すデジタル補正信号を発生するデジタル補正信号発生部と、第1受信信号に一次信号を乗算し、第1ベースバンド入力信号を発生する第1乗算器と、第2受信信号に一次信号を乗算し、第2ベースバンド入力信号を発生する第2乗算器と、第1ベースバンド入力信号を第1デジタルベースバンド入力信号に変換する第2アナログ−デジタル変換部と、第2ベースバンド入力信号を第2デジタルベースバンド入力信号に変換する第3アナログ−デジタル変換部と、第1デジタルベースバンド入力信号にデジタル補正信号を乗算し、第1デジタル入力信号を発生する第3乗算器と、第2デジタルベースバンド入力信号にデジタル補正信号を乗算し、第2デジタル入力信号を発生する第4乗算器と、第1デジタル入力信号を復調し、第1復調データを発生する第1復調部と、第2デジタル入力信号を復調し、第2復調データを発生する第2復調部と、第1復調データと第2復調データとを統合し、出力データを発生するデータ統合部と、出力データを第1分割データと第2分割データとに分割するデータ分割部と、第1分割データを変調し、第1デジタル出力信号を発生する第1変調部と、第2分割データを変調し、第2デジタル出力信号を発生する第2変調部と、第1デジタル出力信号にデジタル補正信号を乗算し、第1デジタルベースバンド出力信号を発生する第5乗算器と、第2デジタル出力信号にデジタル補正信号を乗算し、第2デジタルベースバンド出力信号を発生する第6乗算器と、第1デジタルベースバンド出力信号を第1アナログベースバンド出力信号に変換する第1デジタル−アナログ変換部と、第2デジタルベースバンド出力信号を第2アナログベースバンド出力信号に変換する第2デジタル−アナログ変換部と、第1アナログベースバンド出力信号に一次信号を乗算し、第1送信信号を発生する第7乗算器と、第2アナログベースバンド出力信号に一次信号を乗算し、第2送信信号を発生する第8乗算器とを備える。このように、複数の送受信経路を備える構成とすることにより、通信容量をより大容量にすることができる。なお、ここでは、無線送受信回路が2系統の送受信経路を備える例を記載したが、もちろん、送受信経路は、4系統等であってもよい。
【発明の効果】
【0028】
発振器の出力信号に対して周波数補正信号を合成する方法で出力信号の周波数の誤差を補正することで、周波数を安定化することができる。それにより、通信容量を大容量化することのできる無線送受信回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1実施形態に係る発振装置の構成を示すブロック図である。
図2図1の誤差周波数検出部の構成を示すブロック図である。
図3図1の補正信号発生部の構成と信号合成部の構成とを示すブロック図である。
図4図1のBPF通過前の二次信号の周波数スペクトルの一例を示す図である。
図5図1のBPF通過後の二次信号の周波数スペクトルの一例を示す図である。
図6図1のBPF通過前の二次信号の周波数スペクトルの他の例を示す図である。
図7図1のBPF通過後の二次信号の周波数スペクトルの他の例を示す図である。
図8図1の二次信号発生部による誤差周波数補正処理を示すフローチャートである。
図9】本発明の第2実施形態に係る無線送受信回路の構成を示すブロック図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る無線送受信回路によるデータの受信処理の手順を示すフローチャートである。
図11】本発明の第2実施形態に係る無線送受信回路によるデータの送信処理の手順を示すフローチャートである。
図12】本発明の第3実施形態に係る無線送受信回路の構成を示すブロック図である。
図13】本発明の第3実施形態における誤差周波数の検出処理の手順を示すフローチャートである。
図14】本発明の第3実施形態に係る無線送受信回路によるデータの受信処理の手順を示すフローチャートである。
図15】本発明の第3実施形態に係る無線送受信回路によるデータの送信処理の手順を示すフローチャートである。
図16】本発明の第4実施形態に係る無線送受信回路の構成を示すブロック図である。
図17】本発明の第4実施形態に係る無線送受信回路によるデータの受信処理の手順を示すフローチャートである。
図18】本発明の第4実施形態に係る無線送受信回路によるデータの送信処理の手順を示すフローチャートである。
図19】本発明の第5実施形態に係る発振装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、第1実施形態に係る発振装置10の構成を示すブロック図である。図2は、図1の誤差周波数検出部12の構成を示すブロック図である。図3は、図1の補正信号発生部14と信号合成部16の構成を示すブロック図である。
【0031】
第1実施形態に係る発振装置10は、発振周波数が制御不可である発振器11と、発振器11の発振信号LS1(以下、一次信号ともいう)を、一次信号LS1の周波数f1の所定周波数に対する差に応じて周波数変換し、二次信号LS2を発生する二次信号発生部20とを有する。発振周波数が制御不可である発振器11とは、電圧に応じて発振周波数を可変可能なVCO(Voltage-Controlled Oscillator:電圧制御発振器)等ではなく、典型的にはSAW発振器である。以下、発振周波数が制御不可な発振器11はSAW発振器11とする。なお、発振周波数が制御不可である発振器11は、サファイア、ダイヤモンド等を振動子とする発振器であってもよい。
【0032】
既に述べたように、SAW発振器11の発振周波数f1は物理的な衝撃等の種々の要因により、予め決められているSAW発振器11の固有の周波数f0に対してその周波数f0の0.01%程度の範囲内で変動する(式(1))。ここでは、SAW発振器11の固有周波数f0に対する、SAW発振器11から出力された一次信号LS1の周波数f1の誤差周波数をferrと表記する。理想的には、誤差周波数ferrはゼロである。
【0033】
f1=f0+ferr (1)
これに対して、式(2)に示すように、目標周波数ftgtは、固有周波数f0に対して周波数fsシフトした周波数である。周波数fs(以下、シフト周波数fsともいう)は、好適にはSAW発振器11から出力された一次信号の周波数f1の±5%程度の範囲から選択された周波数である。なお、目標周波数ftgtは固有周波数f0であってもよい。
【0034】
tgt =f0+fs (2)
二次信号発生部20は、SAW発振器11の一次信号LS1に対してフィードフォワード処理を実行し、一次信号LS1の周波数f1又はそれに応じた周波数の基準周波数frefに対する誤差周波数ferrを検出し、その誤差周波数ferrに応じて一次信号LS1から目標周波数ftgtの二次信号LS2を発生する。
【0035】
二次信号発生部20は、一次信号LS1の周波数f1又はそれに応じた周波数の、SAW発振器11の固有周波数f0に対する誤差周波数ferrを検出する誤差周波数検出部12、誤差周波数ferrに応じた周波数の補正信号LScorを発生する補正信号発生部14、一次信号LS1に補正信号LScorを合成する信号合成部16、及び信号合成部16の後段に設けられる、目標周波数ftgtを中心とした通過帯域を有するBPF18を有する。誤差周波数検出部12と補正信号発生部14とは、デジタルシグナルプロセッサ(Digital Signal Processor:DSP)等のデジタル信号処理を行うためのマイクロプロセッサに実装される。なお、DSPに代えてCPU(Central Processing Unit)などを用いるような構成としてもよい。ただし、発振装置10は一次信号LS1に対するフィードフォワード処理がなされるため、誤差周波数検出部12と補正信号発生部14とには高速な処理が求められる。それに対応するためにDSPを用いることが好ましい。
【0036】
誤差周波数検出部12は、アナログーデジタル変換部(ADC)121、乗算器122、NCO123、基準周波数出力部124、ローパスフィルタ(LPF)125、及び誤差周波数演算部126を有する。誤差周波数検出部12による誤差周波数ferrの算出には、より具体的には、基準周波数frefのN倍(Nは任意の数)が固有周波数f0となる、あるいは、基準周波数frefの周波数の1/Nが固有周波数f0となる、といったように、基準周波数frefを利用する。
【0037】
ADC121は、SAW発振器11から出力される一次信号LS1をデジタル一次信号LS1´に変換する。なお、SAW発振器11の発振周波数f0が後述の基準周波数frefより高いため、ADC121はアンダーサンプリングにより一次信号LS1をデジタル一次信号LS1´に変換することを想定する。
【0038】
基準周波数出力部124は、基準周波数frefの波形を示すデジタル基準信号LSrefを発生する。デジタル基準信号LSrefは、例えば水晶発振器の発振信号等をデジタル変換した信号である。なお、先に述べたように、発振装置10は、無線送受信回路において用いられるローカル発振器出力信号を得ることを目的としている。そのため、発振装置10の二次信号LS2の目標周波数ftgtは、数百メガヘルツから数ギガヘルツといった、高い周波数帯である。一方で、基準周波数frefは、目標周波数ftgtよりも低い、数十メガヘルツ程度でよい。数十メガヘルツ程度であれば、水晶発振器により基準周波数frefの発振信号を安定して出力することができる。基準周波数出力部124により発生されたデジタル基準信号LSrefはNCO123に入力される。
【0039】
NCO123は乗算器122とともに、ADC121により変換されたデジタル一次信号LS1´に対してPLL回路を構成する。乗算器122は、デジタル一次信号LS1´とNCO123の出力信号とを乗算する。乗算器122の出力信号は、NCO123とLPF125とに入力される。NCO123は、基準周波数frefにより動作し、一次信号LS1の周波数と位相とを表す周波数信号を出力する。NCO123は基準周波数frefにより動作し、発振器出力の周波数は基準周波数を元に検出される。
【0040】
LPF125は、乗算器122の後段に挿入される。LPF125は、乗算器122から出力された周波数を示す値に含まれる高い周波数のノイズを除去する。一般的に、PLL回路のループ帯域はできるだけ広いほうが好ましい。ループ帯域が広いほどデジタルNCO123は忠実にSAW発振器11の出力に追従する。ただし、ループ帯域を広くするほどADC121の変換ノイズに起因してSAW発振器11から出力された一次信号LS1の周波数f1に追従する一方で高いオフセット周波数にてノイズを生じる。従来の位相同期回路でも耐衝撃性を高めるためにループ帯域を広くすると高いオフセット周波数でノイズを生じる。ただし、従来の位相同期回路では高いオフセット周波数のノイズを除去するためにLPFを挿入することは難しい。従来の位相同期回路はフィードバック制御であり、LPF挿入により制御が不安定になる。
【0041】
誤差周波数演算部126は、デジタル基準信号とデジタル一次信号とに基づいて、誤差周波数ferrを演算する。具体的には、誤差周波数演算部126は、デジタル基準信号とデジタル一次信号に基づいて、一次信号LS1の周波数f1の値を特定し、固有周波数f0の値に対して、特定した周波数の値を減算する。それにより、誤差周波数ferrが演算される。式(3)に示すように、誤差周波数ferrは、SAW発振器11の固有周波数f0とSAW発振器11から実際に出力された一次信号の周波数f1との差である。
【0042】
err=f0−f1 (3)
また、誤差周波数演算部126は、誤差周波数ferrとシフト周波数fsとに基づいて、補正周波数fcorを演算する。シフト周波数fsは、目標周波数ftgtとSAW発振器11の固有周波数f0との差である。式(4)に示すように、補正周波数fcorは、誤差周波数ferrとシフト周波数fsとの和である。つまり、補正周波数fcorは、SAW発振器11から実際に出力された一次信号LS1の周波数の、目標周波数ftgtに対する差で表せる。誤差周波数ferrは固有周波数f0の0.01%程度であり、シフト周波数fsは周波数f0の5%程度である。周波数f0が1ギガヘルツ程度のとき、補正周波数fcorは、数十メガヘルツ程度である。
【0043】
cor=ferr+fs=(f0−f1)+( ftgt−f0)= ftgt−f1 (4)
補正信号発生部14は、基準周波数出力部141、デジタル補正信号発生部143及びデジタルーアナログ変換部145(DAC145)を有する。なお、補正信号発生部14の基準周波数出力部141は、誤差周波数検出部12の基準周波数出力部124と共用されてもよい。デジタル補正信号発生部143は、誤差周波数ferrに応じた周波数の波形を示すデジタル補正信号LScorを発生する。具体的には、デジタル補正信号発生部143は、誤差周波数ferrとシフト周波数fsとに基づいて計算された補正周波数fcorの波形を示すデジタル補正信号LScorを発生する。DAC145は、デジタル補正信号LScorをアナログ補正信号LScor´に変換する。
【0044】
デジタル補正信号発生部143は、典型的にはNCOで構成される。デジタル補正信号発生部143は、基準周波数frefにより駆動し、補正周波数fcorに応じたデジタル補正信号LScorを発生する。デジタル補正信号発生部143は、2つの出力端子を備える。デジタル補正信号発生部143は補正周波数fcorに応じた、位相が90度異なる2つの正弦波をそれぞれ示すデジタル補正信号LScor1、LScor2を出力する。
【0045】
DAC145は、ここでは2つのDAC146,147から構成される。DAC146は、デジタル補正信号発生部143から出力されたデジタル補正信号LScor1をデジタルーアナログ変換し、アナログ補正信号LScor1´を発生する。DAC147は、デジタル補正信号発生部143から出力されたデジタル補正信号LScor2をデジタルーアナログ変換し、アナログ補正信号LScor2´を発生する。
【0046】
信号合成部16は、90度移相器161と乗算器163、165と加算器167とを有する。信号合成部16は、典型的には直交変調器もしくはIQ変調器で提供される。90度移相器161は、SAW発振器11から出力された一次信号LS1の位相を90度変化させた一次信号LS11を発生する。乗算器163は、SAW発振器11から出力された一次信号LS1とDAC146から出力されたアナログ補正信号LScor1´とを乗算し、乗算信号LS21を発生する。乗算器165は、90度移相器161から出力された90度位相が変化された一次信号LS11とDAC147から出力されたアナログ補正信号LScor2´とを乗算し、乗算信号LS22を発生する。加算器167は、乗算器163から出力された乗算信号LS21と乗算器165から出力された信号LS22とを加算し、二次信号LS2を発生する。
【0047】
例えば、デジタル補正信号発生部143により、位相0度のデジタル補正信号LScor1と、位相90度のデジタル補正信号LScor2とが発生されるよう設定したとき、信号合成部16から出力された二次信号LS2は、図4に示すようなスペクトル分布を有する。すなわち信号合成部16から出力された二次信号LS2の周波数f2は、SAW発振器11の一次信号の周波数f1よりも、補正周波数fcor分低い周波数にシフトされる。
【0048】
一方、デジタル補正信号発生部143により、位相90度のデジタル補正信号LScor1と、位相0度のデジタル補正信号LScor2とが発生されるよう設定したとき、信号合成部16から出力された二次信号LS2は、図6示すようなスペクトル分布を有する。すなわち信号合成部16から出力された二次信号LS2の周波数f2は、SAW発振器11の一次信号の周波数f1よりも、補正周波数fcor分高い周波数にシフトされる。
【0049】
なお、デジタル補正信号発生部143から信号合成部16にかけて実行される処理により、二次信号LS2の周波数を一次信号LS1の周波数f1よりも高い周波数にシフトさせるか、又は一次信号LS1の周波数f1よりも低い周波数にシフトさせるかは、補正周波数fcorの符号に従って選択される。補正周波数fcorの符号が負のとき、デジタル補正信号発生部143から信号合成部16にかけて実行される処理により、二次信号LS2の周波数f2は、一次信号LS1の周波数f1よりも低い周波数にシフトさせる。補正周波数fcorの符号が正のとき、デジタル補正信号発生部143から信号合成部16にかけて実行される処理により、二次信号LS2の周波数f2は一次信号の周波数f1よりも高い周波数にシフトさせる。
【0050】
BPF18は、SAW発振器11のローカルリーク信号と信号合成部16により発生される二次信号LS2のイメージ信号とを減少する。これは、信号合成部16、例えばI信号合成部(IQ変調器)16は製造誤差で、イメージ信号とローカルリーク信号と呼ばれる意図しない成分を出力する。これらはSAW発振器11のスペクトル純度を劣化させる要因となる。そのため、信号合成部16の後段にBPF18を設け、信号合成部16から出力された二次信号LS2をBPF18を通過させる。BPF18通過後の二次信号LS2をLS2´と表記する。これにより、例えば、図4に示すような周波数スペクトル分布を有する二次信号LS2は、BPF18を通過させることで、図5に示すような周波数スペクトル分布を示す。同様に、図6に示すような周波数スペクトル分布を有する二次信号LS2は、BPF18を通過させることで、図7に示すような周波数スペクトル分布を示す。第1実施形態のように、固有周波数が目標周波数ftgtとは異なるSAW発振器11を用い、目標周波数ftgtとSAW発振器11の固有周波数f0との間のシフト周波数fsと誤差周波数ferrとの和で表される補正周波数fcorを数十メガヘルツになるようにすることで、二次信号LS2の周波数f2をローカルリーク信号の周波数とイメージ信号の周波数とに対して離間させ、これにより誘電体共振タイプのバンドパスフィルタで容易にローカルリークとイメージ周波数を除去できる。
【0051】
なお、ローカルリーク信号の信号強度とイメージ信号の信号強度とが二次信号LS2の信号強度に対して十分小さい場合や、ローカルリーク信号の周波数とイメージ信号の周波数とが二次信号LS2の周波数f2に対して十分離間されているような場合など、信号合成部16から発生されるローカルリーク信号とイメージ信号とを無視してもよい場合は、BPF18は省略してもよい。
【0052】
図8は、二次信号発生部20によるSAW発振器11から出力された一次信号LS1の補正処理を示すフローチャートである。ステップS11において、ADC121により、SAW発振器から出力された一次信号LS1がデジタル一次信号LS1´に変換される。ステップS12において、デジタル一次信号LS1´と基準周波数信号LSrefとに基づいて、誤差周波数ferrが検出される。ステップS13において、誤差周波数ferrに応じた、具体的には誤差周波数ferrとシフト周波数fsとに基づいて計算された補正周波数fcorの波形を示すデジタル補正信号LScorがデジタル補正信号発生部143により発生される。ステップS14において、DAC145により、デジタル補正信号LScorがアナログ補正信号LScor´に変換される。ステップS15において、信号合成部16により、SAW発振器11から出力された一次信号LS1に対して、アナログ補正信号LScor´が合成される。ステップS15の処理の結果、SAW発振器11から出力された一次信号LS1から二次信号LS2が発生される。二次信号LS2は、目標周波数ftgtを持つものとなる。
【0053】
以上のようにして、第1実施形態に係る発振装置10は、SAW発振器11から出力された一次信号LS1に補正周波数fcorの補正信号を合成し、それにより目標周波数ftgtを持つ二次信号LS2を出力することができる。第1実施形態に係る二次信号発生部20による処理により、SAW発振器11のもつスペクトル純度を活かしながら周波数を安定化させることができる。
【0054】
また、第1実施形態係る発振装置10の二次信号発生部20は、SAW発振器11のような周波数を意図して可変させることが困難な発振器の発振周波数を、シフト周波数fsを変化させることで、意図して可変することを実現する回路といえる。その周波数可変幅が大きいとき、SAW発振器11の発振信号のスペクトル純度が補正信号発生部14で発生される補正信号により悪化する。そのため、シフト周波数fsは、発振器の固有周波数の±5%程度の範囲が適用である。しかしながら、シフト周波数fsは、この範囲内でしか可変させてはいけない訳ではなく、SAW発振器11のスペクトル純度を大きく劣化させてもよいのであれば、上記範囲よりも大きな可変幅で使用してもよい。
【0055】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る無線送受信回路は、ローカル発振器として第1実施形態に係る発振装置10を備える。第2実施形態に係る無線送受信回路では、第1実施形態に係る発振装置10により発生された二次信号とベースバンド出力信号とを乗算し、送信信号を生成する。また、第1実施形態に係る発振装置10により発生された二次信号と受信信号とを乗算し、ベースバンド入力信号を生成する。
【0056】
図9は、第2実施形態に係る無線送受信回路の構成を示すブロック図である。第2実施形態に係る無線送受信回路は、無線信号の送受信を行うアンテナ70とRFフロントエンド回路30とベースバンド処理部40とを備える。RFフロントエンド回路30は、アンテナ70によって受信した受信信号RSrcvをベースバンド入力信号BSinに変換し、また、ベースバンド出力信号BSoutをアンテナ70によって送信する送信信号RSsndに変換する。ベースバンド処理部40は、ベースバンド入力信号BSinを復調しシステム71への入力データDinを生成する。また、ベースバンド処理部40は、システム71から出力された出力データDoutを変調し、ベースバンド出力信号BSoutを生成する。
【0057】
RFフロントエンド回路30は、SAW発振器11と、二次信号発生部20と、アンテナ70による送受信を切り替える送受信切り替えスイッチ39と、受信信号RSrcvより必要な周波数帯の信号を抽出するバンドパスフィルタ31と、発振装置10から出力された二次信号LS2とバンドパスフィルタ31の処理後の受信信号RSrcvとを乗算し、ベースバンド入力信号BSinを生成する乗算器33と、ベースバンド入力信号BSinをデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換部(ADC)35と、ベースバンド出力信号BSoutをアナログ信号に変換するデジタル−アナログ変換部(DAC)34と、発振装置10から出力された二次信号LS2とアナログ信号に変換されたベースバンド出力信号BSoutとを乗算し、送信信号RSsndを生成する乗算器32とを有する。
【0058】
ベースバンド処理部40は、ベースバンド入力信号BSinを復調し、システム71への入力データDinを出力する復調部41と、システム71からの出力データDoutを変調し、ベースバンド出力信号BSoutを出力する変調部42とを有する。
【0059】
ここで、システム71は、無線通信によるデータの送受信を要求する、任意のシステムである。例えば、第2実施形態に係る無線送受信回路を携帯電話やスマートフォン端末などに用いる場合には、システム71は、OS(Operating 71tem、基本ソフトウェア)による入出力や、それを介した種々のアプリケーションプログラムであり得る。あるいは、第2実施形態に係る無線送受信回路を携帯電話等の基地局に用いる場合には、それを管理するシステムであり得る。また、二次信号LS2は、先に説明したように、SAW発振器11から出力された一次信号LS1の周波数f1を補正し、安定化させた、目標周波数ftgtを持つ信号である。
【0060】
図10は、第2実施形態に係る無線送受信回路によるRF信号の受信処理の手順を示すフローチャートである。図10では、アンテナ70により受信した受信信号RSrcvを復調し、入力データDinを得るまでの処理手順が記されている。まず、ステップS21で、受信信号RSrcvにバンドパスフィルタ31を適用することにより、受信信号RSrcvより必要な周波数帯の信号のみが抽出される。そして、ステップS22に進み、乗算器33によってバンドパスフィルタ適用後の受信信号RSrcvと二次信号LS2とが乗算され、ベースバンド入力信号BSinが生成される。ステップS23でベースバンド入力信号BSinがデジタル信号に変換される。そして、ステップS24で、デジタル信号に変換されたベースバンド入力信号BSinが復調され、システム71への入力データDinが生成される。以上のようにして、第2実施形態に係る無線送受信回路によって、受信信号RSrcvの復調処理を行い、システム71への入力データDinを得ることができる。
【0061】
図11は、第2実施形態に係る無線送受信回路によるRF信号の送信処理の手順を示すフローチャートである。図11では、システム71の出力データDoutを変調し、送信信号RSsndを得るまでの処理手順が記されている。ステップS31で、システム71から出力された出力データDoutが変調され、ベースバンド出力信号BSoutが生成される。ステップS32で、DAC34によってベースバンド出力信号BSoutがアナログ信号に変換される。ステップS33で、アナログ信号へと変換されたベースバンド出力信号BSoutと、発振装置10から出力された二次信号LS2とが乗算器32により乗算され、アンテナ70からの送信信号RSsndが生成される。以上のようにして、第2実施形態に係る無線送受信回路によって、システム71からの出力データDoutの変調処理を行い、送信信号RSsndを得ることができる。なお、図10の受信処理と、図11に示す送信処理は、送受信切り替えスイッチ39を切り替えることによってそれぞれ行うことができる。
【0062】
このように、第1実施形態に係る発振装置10を組み込んだ無線送受信回路を構成することができる。これにより、第1実施形態に係る発振装置10の効果を得られ、例えばSAW発振器11から出力された一次信号の周波数が、外部からの衝撃や温度変化によって変動した場合であっても、二次信号発生部20のフィードフォワード処理により、その変動分を補正し、高いスペクトル純度を持つというSAW発振器の利点を活かすことができる。
【0063】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る無線送受信回路は、第1実施形態に係る発振装置10の構成を利用して、第2実施形態に係る無線送受信回路の回路構成の規模を縮小したものである。
図12は、第3実施形態に係る無線送受信回路の構成を示すブロック図である。なお、同実施形態において、第2実施形態と基本的に同一の構成要素については、同一符号を付してその説明を簡略化する。
【0064】
第3実施形態に係る無線送受信回路は、無線信号の送受信を行うアンテナ70とRFフロントエンド回路50とベースバンド処理部60とを備える。RFフロントエンド回路50は、アンテナ70によって受信した受信信号RSrcvをベースバンド入力信号BSinに変換し、また、ベースバンド出力信号BSoutをアンテナ70によって送信する送信信号RSsndに変換する。ベースバンド処理部60は、ベースバンド入力信号BSinを復調しシステム71への入力データDinを生成する。また、ベースバンド処理部40は、システム71から出力された出力データDoutを変調し、ベースバンド出力信号BSoutを生成する。
【0065】
RFフロントエンド回路50は、SAW発振器11と、アンテナ70による送受信を切り替える送受信切り替えスイッチ39と、受信信号RSrcvより必要な周波数帯の信号を抽出するバンドパスフィルタ31と、SAW発振器11から出力された一次信号LS1とバンドパスフィルタ31の処理後の受信信号RSrcvとを乗算し、ベースバンド入力信号BSinを生成する乗算器33と、ベースバンド入力信号BSinをデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換部(ADC)35と、ベースバンド出力信号BSoutをアナログ信号に変換するデジタル−アナログ変換部(DAC)34と、SAW発振器11から出力された一次信号LS1とアナログ信号に変換されたベースバンド出力信号BSoutとを乗算し、送信信号RSsndを生成する乗算器32とを有する。
【0066】
ベースバンド処理部60は、ベースバンド入力信号BSinを復調し、システム71への入力データDinを出力する復調部41と、システム71からの出力データDoutを変調し、ベースバンド出力信号BSoutを出力する変調部42とを有する。
【0067】
更に、ベースバンド処理部60は、SAW発振器11の固有周波数f0とSAW発振器11から出力された一次信号LS1の周波数f1との誤差である、誤差周波数ferrを検出する誤差周波数検出部43と、誤差周波数ferrとシフト周波数fsとに基づいて計算された補正周波数fcorに応じたデジタル補正信号LScorを生成するデジタル補正信号発生部45と、ベースバンド入力信号BSinにデジタル補正信号LScorを合成するデジタル信号合成部46と、ベースバンド出力信号BSoutにデジタル補正信号LScorを合成するデジタル信号合成部47とを備える。デジタル信号合成部46は、ベースバンド入力信号BSinとデジタル補正信号LScorとを合成するために乗算器とフィルタとで構成される。式(5)、(6)に示すように、ベースバンド入力信号BSinとデジタル補正信号LScorとを乗算した信号には、ベースバンド入力信号BSinの周波数とデジタル補正信号LScorの周波数との差で表される周波数成分とベースバンド入力信号BSinの周波数とデジタル補正信号LScorの周波数との和で表される周波数成分との2つの周波数成分が含まれる。2つの周波数成分のうち一方が、フィルタにより除去又は信号レベルが低下される。
【0068】
BSin − LScor (5)
【0069】
BSin + LScor (6)
デジタル信号合成部47は第1実施形態に係る発振装置10の信号合成部16をデジタル演算で実現したものであり、ベースバンド出力信号BSoutの周波数を補正周波数fcorだけ低い周波数にシフトさせるか、又は補正周波数fcorだけ高い周波数にシフトさせるかを容易に変更、選択することができる。これにより、後にステップS64にてベースバンド出力信号BSoutと一次信号LS1とを合成した際に、誤差周波数ferrを補正した上で、必要であれば周波数シフトさせた送信信号RSsndを得ることができる。
【0070】
目標周波数ftgtは、送受信を行う周波数帯域に応じてローカル発振器に要求される周波数であり、無線送受信回路によって送受信を行う周波数帯に応じて、予め決定された値である。一次信号LS1の周波数f1と目標周波数ftgtは、SAW発振器11にかかる外部衝撃や温度変化等の影響と通信を行いたい周波数の変化に応じて、差が生じる。
【0071】
第3実施形態において、RFフロントエンド回路50でSAW発振器11から出力される一次信号LS1の周波数を補正せず、そのままローカル発振器の出力として用いる。そして、ベースバンド処理部60内において、デジタル補正信号LScorが復調処理前の信号に合成され、また変調処理後の信号にも合成される。
【0072】
図13は、第3実施形態に係る無線送受信回路による誤差検出処理の手順を示すフローチャートである。図13のフローチャートでは、SAW発振器11から出力された一次信号LS1の周波数f1と固有周波数f0との間に発生する誤差を検出する手順を記している。ステップS41で、誤差周波数検出部43により、SAW発振器11から出力された一次信号LS1がデジタル変換される。ステップS42で、誤差周波数検出部43により、デジタル信号に変換された一次信号LS1の周波数f1と、通信したい周波数帯に応じて要求されローカル発振器の周波数、との間の周波数差fcorが検出される。周波数差fcorが補正信号の周波数(補正周波数)となる。ステップS43で、デジタル補正信号発生部45により、周波数差fcorに応じた周波数の正弦波を示すデジタル補正信号LScorが生成される。なお、第3実施形態に係る無線送受信回路による誤差検出処理は、第1実施形態に係る発振装置10の二次信号発生部20により、一次信号からデジタル補正信号を生成するまでの処理と同様である。このようにして生成したデジタル補正信号LScorは、後に説明する復調処理及び変調処理における補正処理に利用する。
【0073】
図14は、第3実施形態に係る無線送受信回路によるRF信号の受信処理の手順を示すフローチャートである。図14では、アンテナ70により受信した受信信号RSrcvを復調し、入力データDinを得るまでの処理手順が記されている。ステップS51で、受信信号RSrcvにバンドパスフィルタ31を適用することにより、受信信号RSrcvより必要な周波数帯の信号のみが抽出される。ステップS52で、乗算器33によってバンドパスフィルタ適用後の受信信号RSrcvと一次信号LS1とが合成され、ベースバンド入力信号BSinが生成される。なお、一次信号LS1を受信信号RSrcvのダウンコンバートに用いているため、この時点においては、ベースバンド入力信号BSinには、一次信号LS1の周波数f1と目標周波数ftgtとの間に生じる誤差成分が含まれている。ステップS53でベースバンド入力信号BSinがデジタル信号に変換される。ステップS54で、デジタル信号合成部46により、デジタル信号に変換されたベースバンド入力信号BSinとデジタル補正信号LScorとが合成される。これにより、一次信号LS1の周波数f1と目標周波数ftgtとの間に生じる誤差成分が補正される。そして、ステップS55で、デジタル信号合成部46から出力されたデジタル信号が復調部41により復調され、システム71への入力データDinが生成される。
【0074】
図15は、第3実施形態に係る無線送受信回路によるRF信号の送信処理の手順を示すフローチャートである。図15では、システム71の出力データDoutを変調し、送信信号RSsndを得るまでの処理手順が記されている。ステップS61で、システム71から出力された出力データDoutが変調され、ベースバンド出力信号BSoutが生成される。なお、この時点においては、ベースバンド出力信号BSoutには、一次信号LS1の周波数f1と目標周波数ftgtとの間の誤差周波数が含まれていない。ステップS62で、デジタル信号合成部47により、ベースバンド出力信号BSoutとデジタル補正信号LScorとが合成される。これにより、ベースバンド出力信号BSoutに誤差周波数に応じた補正信号が含められる。具体的には、一次信号LS1の周波数f1が目標周波数ftgtよりも小さかった場合(ftgt>f1)には、デジタル信号合成部47の乗算処理により、ベースバンド出力信号BSoutの周波数は補正周波数fcorだけ高い周波数にシフトされる。一次信号LS1の周波数f1が目標周波数ftgtよりも大きかった場合(ftgt<f1)には、デジタル信号合成部47の乗算処理により、ベースバンド出力信号BSoutの周波数は補正周波数fcorだけ低い周波数にシフトされる。
【0075】
そして、ステップS63で、DAC34によってベースバンド出力信号BSoutがアナログ信号に変換される。ステップS64で、アナログ信号へと変換されたベースバンド出力信号BSoutと一次信号LS1とが乗算器32により乗算され、アンテナ70からの送信信号RSsndが生成される。一次信号LS1に含まれる誤差周波数が、ステップS62においてベースバンド出力信号BSoutに含められたデジタル補正信号により補正され、送信信号RSsndは誤差の影響を受けないものとなる。なお、図14の受信処理と、図15に示す送信処理は、送受信切り替えスイッチ39を切り替えることによってそれぞれ行うことができる。
【0076】
以上のように、第3実施形態における無線送受信を用いることにより、SAW発振器11をそのままローカル発振器として用いても、ベースバンド処理部60内におけるデジタル演算によって、SAW発振器11から出力された一次信号に含まれる誤差周波数を補正した上で、必要であれば周波数をシフトさせることができる。
【0077】
第3実施形態に係る無線送受信回路は、第2実施形態に係る無線送受信回路に用いられた発振装置10のアナログ処理部とデジタル処理部とを分離し、それぞれをRFフロントエンド回路50とベースバンド処理部60とに含めた構成である。このような構成にすることで、発振装置10においてデジタル補正信号をアナログ信号に変換するDACと、ベースバンド出力信号BSoutをアナログ信号に変換するためのDACとを単一のDACで兼用させることができる。それにより、第3実施形態に係る無線送受信回路は、第2実施形態に比べて、回路の小規模化や省電力化ができる。
【0078】
また、ベースバンド処理部60はDSPによって実現され、デジタル演算を行う。そのため、ベースバンド処理部60内に誤差補正用のデジタル信号合成部46、47などの機能の追加を、DSP内の論理的な処理ブロックの追加によって簡単に実現できる。そのため、アナログ素子としての乗算器などを追加する場合と比較して、回路規模や消費電力、生産コストの増加を抑えることができる。
【0079】
また、乗算器32、33、ADC35、DAC34、復調部41、変調部42、誤差周波数検出部43などを単一のIC(Integrated Circuit、集積回路)として構成すれば、無線送受信回路を更に小規模化することができる。
【0080】
なお、第3実施形態においても、システム71は無線通信によるデータの送受信を要求する、任意のシステムであってよく、第3実施形態に係る無線送受信回路は、携帯電話やスマートフォン端末などのような端末装置から、携帯電話等の基地局のような設備まで、種々の無線通信機器に用いることができる。
【0081】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る無線送受信回路は、2系統の送受信回路を備え、MIMO技術に対応する。それにより、第4実施形態に係る無線送受信回路は、1系統の送受信回路を用いる場合よりも通信容量を大容量化することができるものである。
【0082】
図16は、第4実施形態に係る無線送受信回路を示すブロック図である。なお第4実施形態において、第2、第3実施形態と基本的に同一の構成要素については、同一符号を付してその説明を簡略化する。
【0083】
図16に示すように、第4実施形態に係る無線送受信回路は、無線信号の送受信を行う2つのアンテナ400、500と、RFフロントエンド回路200と、ベースバンド処理部300とを有する。RFフロントエンド回路200は、アンテナ400,500で受信した受信信号RSrcv1、RSrcv2をそれぞれベースバンド入力信号BSin1、BSin2に変換する。また、RFフロントエンド回路200は、ベースバンド出力信号BSout1、BSout2をアンテナ400、500によって送信する送信信号RSsnd1、RSsnd2に変換する。ベースバンド処理部300は、ベースバンド入力信号BSin1、BSin2を復調し、それぞれのデータを統合することによりシステム600への入力データDinを生成する。また、ベースバンド処理部300は、システム600から出力された出力データDoutを分割し、分割したそれぞれのデータを変調することにより、ベースバンド出力信号BSout1、BSout2を生成する。
【0084】
RFフロントエンド回路200において、SAW発振器210は第1、第2送受信系統で共用される。RFフロントエンド回路200は、2つの送受信系統で共用するSAW発振器210以外の構成を、2つの送受信系統でそれぞれ利用するために、2つずつ有している。
【0085】
具体的には、RFフロントエンド回路200の第1送受信系統は、アンテナ400による送受信を切り替える送受信切り替えスイッチ201と、受信信号RSrcv1より必要な周波数帯の信号を抽出するバンドパスフィルタ271と、SAW発振器210から出力された一次信号LSout1とバンドパスフィルタ271による処理後の受信信号RSrcv1とを乗算し、ベースバンド入力信号BSin1を出力する乗算器231と、ベースバンド入力信号BSinをデジタル信号に変換するADC251と、ベースバンド出力信号BSout1をアナログ信号に変換するDAC261と、SAW発振器210から出力された一次信号LSoutとアナログ信号に変換されたベースバンド出力信号BSout1とを乗算する乗算器241とを有する。
【0086】
同様に、RFフロントエンド回路200の第2送受信系統は、アンテナ500による送受信を切り替える送受信切り替えスイッチ202と、受信信号RSrcv2より必要な周波数帯の信号を抽出するバンドパスフィルタ272と、SAW発振器210から出力された一次信号LSout2とバンドパスフィルタ272による処理後の受信信号RSrcv2とを乗算し、ベースバンド入力信号BSin2を出力する乗算器232と、ベースバンド入力信号BSin2をデジタル信号に変換するADC252と、ベースバンド出力信号BSout2をアナログ信号に変換するDAC262と、SAW発振器210から出力された一次信号LSoutとアナログ信号に変換されたベースバンド出力信号BSout2とを乗算する乗算器242とを有する。
【0087】
ベースバンド処理部300において、デジタル補正信号を生成するための誤差周波数検出部330とデジタル補正信号発生部340とは、第1、第2送受信系統で共用される。誤差周波数検出部330は、SAW発振器210の固有周波数f0と一次信号LS1の周波数f1との間の誤差である、誤差周波数ferrを検出し、さらに誤差周波数ferrにシフト周波数を加算して補正周波数fcorを算出する。デジタル補正信号発生部340は、補正周波数fcorに応じた周波数の波形を示すデジタル補正信号LScorを生成する。第3実施形態と同様に、図13を参照して説明した手順に従って、一次信号LS1の周波数f1と目標周波数ftgtとの誤差の検出及びデジタル補正信号LScorの生成がなされる。そして、生成されたデジタル補正LScorは、後に説明する復調処理及び変調処理における補正処理に利用される。
【0088】
なお、ここで、目標周波数ftgtとは、送受信を行う周波数帯域に応じてローカル発振器に要求される周波数であり、無線送受信回路によって送受信を行う周波数帯に応じて、予め決定された値である。一次信号LS1の周波数f1と目標周波数ftgtは、SAW発振器11にかかる外部衝撃や温度変化等の影響と通信を行いたい周波数の変化に応じて、差が生じる。ベースバンド処理部300は、2つの送受信系統で共用する誤差周波数検出部330とデジタル補正信号発生部340と以外の構成を、2つの送受信系統でそれぞれ利用するために、2つずつ有している。
【0089】
具体的には、ベースバンド処理部300の第1送受信系統は、ベースバンド入力信号BSin1を復調し、入力データDin1を生成する復調部311と、出力データDout1を変調し、ベースバンド出力信号BSout1を生成する変調部321と、デジタル信号に変換されたベースバンド入力信号BSin1にデジタル補正信号LScorを合成するデジタル信号合成部361と、ベースバンド出力信号BSout1にデジタル補正信号LScorを合成するデジタル信号合成部371とを有する。
【0090】
同様に、ベースバンド処理部300の第2送受信系統は、ベースバンド入力信号BSin2を復調し、入力データDin2を生成する復調部312と、出力データDout2を変調し、ベースバンド出力信号BSout2を生成する変調部322と、デジタル信号に変換されたベースバンド入力信号BSin2にデジタル補正信号LScorを合成するデジタル信号合成部362と、ベースバンド出力信号BSout2にデジタル補正信号LScorを合成するデジタル信号合成部372とを有する。
【0091】
ベースバンド処理部300は、アンテナ400、500によって発生した混信による影響を取り除くために、復調部311、312によって復調された入力データDin1、Din2の入力を受け付け、それぞれの入力データから混信データを分離する混信データ分離部380と、混信データ分離部380から出力された混信による影響を排した入力データDin1、Din2を統合し、システム600への入力データDinを生成するデータ統合部390と、システム600からの出力データDoutを2つの出力データDout1、Dout2に分割するデータ分割部310とを有する。
【0092】
第4実施形態では、第3実施形態と同様に、RFフロントエンド回路200でSAW発振器210から出力される一次信号LS1の周波数を補正せず、そのままローカル発振器の出力として用いる。一次信号LS1の周波数f1とSAW発振器210の固有周波数f0との間の誤差周波数ferrと固有周波数f0と目標周波数ftgtとの間のシフト周波数fsとを補正するデジタル補正信号LScorは、ベースバンド処理部300内において、復調処理前の信号と変調処理後の信号とに合成される。RF信号の受信処理において、ベースバンド処理部300のデジタル信号合成部361,362の段階で、一次信号の周波数が補正される。また、RF信号の送信処理において、ベースバンド処理部300内のデジタル信号合成部371,372の段階で、補正信号が含められ、補正信号が含められたベースバンド出力信号に一次信号を合成した段階で、一次信号の周波数が補正される。
【0093】
図17は、第4実施形態に係る無線送受信回路のRF信号の受信処理の手順を示すフローチャートである。図17では、アンテナ400,500でRF信号を受信し、受信信号RSrcv1、RSrcv2を復調し、復調した受信信号RSrcv1、RSrcv2を統合し、入力データDinを得るまでの手順が記されている。
【0094】
ステップS71では、第1送受信系統により、アンテナ400によって受信した受信信号RSrcv1の入力データDin1が復調される。ステップS71の受信処理は、第3実施形態の図16を参照して説明した処理と同様の処理を、バンドパスフィルタ271、乗算器231、ADC251、デジタル信号合成部361、復調部311を用いて行うものである。なお、ここでの復調処理は、図14を参照して説明したように、ベースバンド処理部300へと入力されたベースバンド入力信号BSin1とデジタル補正信号LScorとを乗算した後に行われる。これにより、SAW発振器210から出力された一次信号LS1の周波数f1と目標周波数ftgtとの誤差に影響されず、入力データDin1を生成することができる。
【0095】
ステップS72では、第1送受信系統によるステップS71と同様の処理が第2の送受信系統によりなされる。アンテナ500によって受信した受信信号RSrcv2の入力データDin2への復調処理が、バンドパスフィルタ272、乗算器232、ADC252、デジタル信号合成部362、復調部312を用いて行われる。
そして、ステップS73で、ステップS71とステップS72とで生成された入力データDin1、入力データDin2が混信データ分離部380に入力され、アンテナ400、500による混信の影響が排される。
【0096】
ステップS74で、ステップS73で混信データ分離部380から出力された混信の影響が排された入力データDin1、入力データDin2がデータ統合部390により統合され、システム600への入力データDinが生成される。生成された入力データDinはシステム600に入力される。
【0097】
図18は、第4実施形態に係る無線送受信回路によるRF信号の送信処理の手順を示すフローチャートである。図18では、システム600から出力された出力データDoutを分割、変調し、送信信号RSsnd1、RSsnd2を得るまでの手順が記されている。
【0098】
ステップS81で、データ分割部310により、システム600から出力された出力データDoutが第1送受信系統より出力するための出力データDout1と、第2送受信系統より出力するための出力データDout2へと分割される。
【0099】
ステップS82で、第1送受信系統により、出力データDout1がアンテナ400による送信信号RSsnd1に変調される。ステップS82の送信処理は、第3実施形態で図15を参照して説明した処理と同様の処理を、変調部321、デジタル信号合成部371、DAC261、乗算器241を用いて行うものである。なお、ここでの変調処理においては、図15を参照して説明したように、変調部322によって出力データDout2が変調された後に、その変調後の出力データDout2とデジタル補正信号LScorとを乗算することによって、ベースバンド出力信号BSoutに予め一次信号LS1の周波数f1を補正する補正信号成分を含めておく。これにより、ベースバンド出力信号BSoutとローカル発振器の出力としての一次信号LS1とを乗算した際に、誤差周波数を補正した上で、必要であれば周波数をシフトさせることができる。
【0100】
ステップS83では、第1送受信系統によるステップS82と同様の処理が第2送受信系統によりなされる。第2送受信系統により、出力データDout2のアンテナ500からの送信信号RSout2への変調処理が、変調部322、デジタル信号合成部372、DAC262、乗算器242を用いて行われる。
【0101】
図17に示したような受信処理と、図18に示したような送信処理は、送受信切り替えスイッチ201,202を切り替えることによってそれぞれ行うことができる。
【0102】
以上のように、第4実施形態に係る無線送受信回路を用いることにより、SAW発振器の高いスペクトル純度を用いることによる通信の大容量化に加え、複数の送受信系統を用いることによる通信の大容量化を図ることができる。
【0103】
第4実施形態においては2つの送受信系統を有する構成を例示したが、無線送受信回路が更に多くの送受信系統を備える構成としてもよい。これにより、通信容量をより大容量にすることができる。
【0104】
なお、第4実施形態においても、システム600は無線通信によるデータの送受信を要求する、任意のシステムであってよく、第4実施形態に係る無線送受信回路は、携帯電話やスマートフォン端末などのような端末装置から、携帯電話等の基地局のような設備まで、種々の無線通信機器に用いることができる。
【0105】
また、変調部321、322において位相の制御を行い、アンテナ400、500から電波を送信する方向や距離などを制御する、ビームフォーミングが可能な構成としてもよい。このような構成とすれば、第4実施形態に係る無線送受信回路を携帯電話等の基地局設備に適用した場合にも、より効果的に電波を搬送することができる。
【0106】
(第5実施形態)
第1実施形態に係る発振装置10では、目標周波数ftgtと周波数が異なる固有周波数f0のSAW発振器11を用いることができる。目標周波数ftgtと周波数が異なる固有周波数f0のSAW発振器11を用いることで、目標周波数ftgtのSAW発振器11を用いる場合に比べて、補正周波数fcorを意図的に大きくし、一次信号LS1と補正信号LScorとの合成後の二次信号LS2に含まれるローカルリーク信号の周波数とイメージ信号の周波数とを目標周波数ftgtから離間させることができる。それにより、二次信号にローカルリーク信号とイメージ信号とが含まれた状態であっても、二次信号LS2の周波数スペクトルの純度の劣化を抑制することができる。また、安価なBPF18でも、二次信号LS2からローカルリーク信号とイメージ信号とを除去することが期待できる。このように、あえて目標周波数ftgtと周波数が異なる固有周波数f0のSAW発振器11を用いることで、安価なBPF18を使用でき、又はBPF18を省略することができる。
【0107】
しかしながら、第1実施形態に係る発振装置10は、目標周波数ftgtを可変可能なローカル発振器として使用することもできる。発振器から出力される信号の周波数と固有周波数との間の誤差を補正しなくてもよい場合、例えばそれほど高いスペクトル純度の発振信号が要求されない場合であれば、第1実施形態に係る発振装置10の構成は簡略化されてもよい。
【0108】
図19は、第5実施形態に係る発振装置910の構成を示すブロック図である。第5実施形態に係る発振装置910は、発振周波数が制御不可である発振器911と二次信号発生部920とを有する。ここでは、発振周波数が制御不可である発振器911はSAW発振器とする。SAW発振器911は一次信号を出力する。二次信号発生部920は、SAW発振器911から出力された一次信号から二次信号を発生する。二次信号の周波数は、一次信号のそれとは異なる。
【0109】
二次信号発生部920は、チャンネル信号出力部914と信号合成部916とを有する。チャンネル信号出力部914は、周波数の異なる複数のチャンネル信号を選択的に出力する。チャンネル信号出力部914は、第1実施形態の補正信号発生部14と同様の構成を備える。すなわち、チャンネル信号出力部914は、CPU等のシステムから指示されたチャンネルに応じた周波数とSAW発振器911の固有周波数との間の周波数差を示すデジタルチャンネル信号を生成し、生成したデジタルチャンネル信号をアナログチャンネル信号に変換する。信号合成部916は、SAW発振器911から出力された一次信号とチャンネル信号出力部914から出力されたアナログチャンネル信号とを合成し、二次信号を発生する。信号合成部916により発生された二次信号の周波数は、システムから指示されたチャンネルに対応する周波数を有する。
【0110】
以上説明した第5実施形態に係る発振装置910により、発振周波数が制御不可であった発振器、例えばSAW発振器から出力される信号の周波数を意図した周波数にシフトすることができる。
【0111】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0112】
10…発振装置、11…SAW発振器、12…誤差周波数検出部、14…補正信号発生部、16…信号合成部、18…BPF20…二次信号発生部。
【要約】
【課題】 スペクトル純度の高い発振信号を得ることにある。
【解決手段】 本発明の一実施形態に係る発振装置10は、発振周波数が制御不可である発振器11と、発振器11から出力される一次信号の周波数又はそれに応じた周波数の基準周波数に対する誤差周波数を検出し、誤差周波数に応じて一次信号から目標周波数の二次信号を発生する二次信号発生部20とを備える。二次信号発生部20は、一次信号の周波数又はそれに応じた周波数の基準周波数に対する誤差周波数を検出する誤差周波数検出部12と、誤差周波数に応じた周波数の補正信号を発生する補正信号発生部14と、一次信号に補正信号を合成する信号合成部16とを具備する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19