特許第6124428号(P6124428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6124428
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】枕装着用頚部牽引シート
(51)【国際特許分類】
   A47G 9/10 20060101AFI20170424BHJP
【FI】
   A47G9/10 X
   A47G9/10 J
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-212734(P2016-212734)
(22)【出願日】2016年10月31日
【審査請求日】2016年10月31日
(31)【優先権主張番号】特願2016-185405(P2016-185405)
(32)【優先日】2016年9月23日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515143153
【氏名又は名称】岡▲崎▼ 公一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100171974
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 弘昭
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 公一郎
【審査官】 横山 幸弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−085230(JP,A)
【文献】 実開昭49−052812(JP,U)
【文献】 実開昭54−041718(JP,U)
【文献】 実開平03−125465(JP,U)
【文献】 特開2015−144798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枕に装着する頚部牽引シートであって、
前記頚部牽引シートは、
可橈性ポリマー材料よりなるシート状基部と、
前記シート状基部の面より突出する弾性発泡ポリマー材料の畝状隆起部と、を備え、
前記畝状隆起部は、互いに平行に配列しかつ前記シート状基部の面に対し同一方向に傾斜する多数列のリブにて構成されており、
前記畝状隆起部を構成するリブが、頭部と枕の間、又は枕と寝具の間、のいずれに介在する装着態様においても、頚部牽引効果を奏する
ことを特徴とする枕装着用頚部牽引シート。
【請求項2】
枕カバーと枕本体の間に挟んで装着する請求項1に記載の枕装着用頚部牽引シート。
【請求項3】
枕の長手方向を巻き軸とし、かつ前記リブは前記巻き軸と平行となるように、枕に巻いて装着することにより、頭部と枕の間に介在のリブ列が枕後方に傾斜する動きと、枕と寝具の間に介在するリブ列が枕後方に傾斜する動きとが連動する請求項1に記載の枕装着用頚部牽引シート。
【請求項4】
前記シート状基部の両端部に更に留め部を備える、請求項3に記載の枕装着用頚部牽引シート。
【請求項5】
前記リブは前記シート状基部の面に対し10〜45度の範囲で傾斜している請求項1〜4のいずれか一項に記載の枕装着用頚部牽引シート。
【請求項6】
リブ同士の離間距離がリブ幅以上であって、前記畝状隆起部内側に二つ折りにして、前記リブを相対するリブの間の凹部に組み込ませ、折りたたみ後の容積を縮小できる請求項1〜5のいずれか一項に記載の枕装着用頚部牽引シート。
【請求項7】
前記シート状基部と前記畝状隆起部とが、同一の弾性発泡ポリマー材料にて構成されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の枕装着用頚部牽引シート。
【請求項8】
前記弾性発泡ポリマー材料は、軟質ウレタンフォーム又は発泡ゴムである、請求項7に記載の枕装着用頚部牽引シート。
【請求項9】
前記軟質ウレタンフォーム又は発泡ゴムは、見掛け密度(JIS K7222)が10kg/m〜60kg/m、硬さ(JIS K6400−2A法)が20N〜600Nの範囲である請求項8に記載の枕装着用頚部牽引シート。
【請求項10】
前記畝状隆起部を構成するリブは、当該リブの配列方向に垂直かつ前記シート状基部の面に対し垂直に切込みを備えている、請求項1〜9のいずれかに記載の枕装着用頚部牽引シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は枕装着用頚部牽引シートに関する。さらに詳しくは、任意形状の枕に装着可能で、かつ枕使用時に頚部を適度に牽引する機能を有する枕装着用頚部牽引シートに関する。
【背景技術】
【0002】
健康を保つためには十分で良質な睡眠が必要である。このため、快適に睡眠できるよう枕の性能、機能向上を目指す改良が続いている。材料面では、枕のクッション性を高めるため、軟質ウレタンフォーム等の軟質材料が多用されている。形状面では、頭・頚部の形に合わせ、枕の前・後部を隆起させた形状の枕もよく知られているところである。
一方、首・肩・腕の痛みを訴える患者に対し、専用の機械で軽く首を牽引する療法(牽引療法)が広く適用されている。牽引療法は、効果は認められるものの、治療費がかかる上に長期の通院を要する。
上記事情を背景に、就寝中に適度の牽引力が作用するよう、枕上面に特定構造のリブを設けた頚部牽引機能付きの枕が提案されている(特開2002−85230号公報、以下特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−85230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の枕は、枕上面の横方向(枕使用者の頭部より首部に伸びる方向に対し垂直方向)に多数のリブが配列しており、かつそれらのリブは枕底面に対し枕の後方に(使用者の首より頭に向かう方向に)傾斜した構造を備えるものである。当該構造を採用することにより、枕に頭部を置くと、リブが枕後方に傾き頚部が牽引される仕組みとなっている。
しかし、頭頚部の形状・寸法には個人差があるため、使用者にとっては枕形状が自分に最も適した枕でなければならず、他方枕製造業者は形状・寸法の異なる枕を多種類揃えなければならないという難点がある。
加えて、枕は容積がかさむので旅行に携行するのは難儀である。
そこで本発明者らは、頚部の牽引効果に優れ、かつ任意形状の枕に装着可能で、さらに旅行にも携行しやすい枕装着用頚部牽引シートの完成を課題として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題解決に向けて鋭意検討の結果、本発明者は、可橈性ポリマー材料よりなるシート状基部の面に、弾性発泡ポリマー材料よりなる特定の凹凸構造の隆起部を形成させたシートが、上記課題をすべて解決することを見出し、本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明は、枕に装着する頚部牽引シートであって、当該頚部牽引シートは、
可橈性ポリマー材料よりなるシート状基部と、
当該シート状基部の面より突出する弾性発泡ポリマー材料の畝状隆起部と、を備え、
当該畝状隆起部は、互いに平行に配列しかつ上記シート状基部の面に対し同一方向に傾斜する多数列のリブにて構成されている
ことを特徴とする枕装着用頚部牽引シートである。
【0007】
本発明の好ましい枕装着用頚部牽引シートは、上記枕装着用頚部牽引シートにおいて、枕の長手方向を巻き軸とし、かつ上記リブが当該巻き軸と平行となるように、枕に巻いて装着する枕装着用頚部牽引シートである。
【0008】
本発明の枕装着用頚部牽引シート(以下、「頚部牽引シート」の略称を用いる。)は、そのシート状基部が可橈性ポリマー材料よりなっているので、任意形状の枕に装着して使用できる。枕への装着は、当該頚部牽引シートの枕装着状態において、畝状隆起部を構成する各々のリブが、枕長手方向に平行に位置し、かつこれらのリブが枕前方より枕後方に傾く態様にて装着される(本発明においては、枕が頚部と接する側を枕前方と称し、枕が頚部と接しない側を枕後方と称する。)。
【0009】
本頚部牽引シートの枕への装着態様としては、
イ)枕上面(頭・頚部と接触する面)又は枕下面(寝具に接する面)に頚部牽引シートを挟む、
ロ)枕の長手方向を巻き軸として枕に巻く、態様がある。
イ)の装着態様においては、頚部牽引シートの位置がずれないよう、薄手の(例えば布製の)枕カバーと枕本体の間に当該頚部牽引シートを挿入するか、布製枕カバーに当該頚部牽引シートを収納するポケットを縫製し、その中に収納して使用するのが好ましい。
ロ)の装着態様においては、頚部牽引シートのサイズを、枕の長手方向を巻き軸として枕に巻いて装着できる寸法とし、かつ装着後の頚部牽引シートを固定できるようその両端部に留め部を備えるのが好ましい。
【0010】
かくのごとく本発明の頚部牽引シートを枕に装着すると、イ)、ロ)のいずれの装着態様においても枕使用時には、頚部より頭部に向けて傾斜する多数列のリブが、頭部と枕の間、又は枕と寝具の間の、少なくとも一方に介在する状態となる。このような状態にて、頭部を枕に置くと、その重量で上記リブ列は枕後方に傾くので頚部が牽引される。そしてロ)の装着態様においては、頭部と枕の間に介在のリブ列が枕後方に傾斜する動きと、枕と寝具の間に介在するリブ列が枕後方に傾斜する動きとが連動するので、牽引作用がさらに増す。
【発明の効果】
【0011】
本発明の頚部牽引シートにより、枕使用時に優れた頚部牽引作用が働く。本頚部牽引シートは使用者が普段愛用の任意形状の枕に装着できるので汎用性が高い。また枕からの着脱が容易であるばかりでなく、枕より取り外した後の本体は軽量かつ必要に応じ折りたためるので、旅先に携行し、収納するのに便利である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の頚部牽引シートの一態様における枕装着前の斜視図である。
図2】頚部牽引シートの図1におけるA−A線断面図である。
図3図2の部分拡大図である。
図4】頚部牽引シートの枕への装着の一態様を示す断面模式図である。
図5】頚部牽引シートの他の装着態様を示す断面模式図である。
図6図4の装着態様での枕使用時のリブの変形を示す断面模式図である。
図7図5の装着態様での枕使用時のリブの変形を示す断面模式図である。
図8】頚部牽引シートを折りたたんだ状態を示す断面模式図である。
図9】本発明の頚部牽引シートの変法を示す断面模式図である。
図10図9の部分拡大断面図である。
図11】リブに切込みを有する頚部牽引シートの斜視図である。
図12】切込みの無いリブの寝返り前後の変形の様子を示す模式図である。
図13】切込みを有するリブの寝返り前後の変形の様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の頚部牽引シートの実施態様を、上記ロ)の装着態様(枕に巻いて装着する態様)を例に説明する。
本態様において、頚部牽引シート(2)は、枕の長手方向を巻き軸として枕(1)に巻いて装着される。
図1は本態様の頚部牽引シート(2)の、枕装着前の全体を示す斜視図である。頚部牽引シート(2)は、可橈性ポリマー材料よりなるシート状基部(3)と、本シート状基部の面(31)より突出する弾性発泡ポリマー材料よりなる畝状隆起部(4)を基本構成とする。ここで、図2の断面図にて示すように、畝状隆起部(4)は、平行に配置された多数列のリブ(41)にて構成される。さらに、その各々のリブ(41)は、面(31)に対し、同一方向に傾斜している。
以下、頚部牽引シート(2)を構成する部材ごとに説明する。
【0014】
シート状基部(3)は、頚部牽引シート(2)を枕(1)に巻きつけられるよう、可橈性ポリマー材料よりなる。上記可橈性ポリマー材料としては、弾性発泡ポリマーやエラストマーが挙げられる。弾性発泡ポリマーとしては軟質ウレタンフォームやポリエチレンフォームを用いることが出来る。中でも軟質ウレタンフォームが好ましい。エラストマーとして発泡ゴムも好適に使用できる。
シート状基部(3)の形状は平面視にて略矩形に形成されるのを基本とするが、ファッション性を加味した形状とすることもできる。
【0015】
シート状基部(3)の厚さ(t)は、上記可橈性ポリマー材料の物性にもよるが、頚部牽引シート(2)が枕(1)を一巻きできる程度の屈曲性を保つよう、2mm〜20mmが好ましく、5mm〜10mmがより好ましい。
【0016】
シート状基部(3)の長さ(上記巻き軸に垂直方向の長さ)は、枕(1)を一巻きできる程度であればよい。通常50cm〜80cmの範囲である。
またシート状基部(3)の幅は、少なくとも頭部の幅以上である。寝返りを考慮すれば、枕の長手方向と略同等の幅を有することが好ましい。
【0017】
先に述べたように、装着後に頚部牽引シート(2)が枕(1)より外れないよう、シート状基部(3)の両端部に更に留め部(5)(図示しない)を備えるのが好ましい。留め部(5)としては、面ファスナー、ホック、ボタン、ゴムベルト、紐その他公知の係合部材を用いることができる。
【0018】
次に畝状隆起部(4)を構成するリブ(41)について説明を加える。
各々のリブ(41)はシート状基部の面(31)に対し同一方向に傾斜している。傾斜しているリブ(41)に頭部の重量が加わることでリブ(41)は傾斜している方向に更に傾き、その結果頚部が牽引される。
ここで、リブ(41)が面(31)に対し傾斜する角度(リブの傾斜角、θ)(図3)は、上記弾性発泡ポリマーの見かけ密度と硬さにもよるが、面(31)の法線に対し10度〜45度の範囲が好ましい。
【0019】
リブ(41)の高さ(h)(図3)は、上記弾性発泡ポリマーの見かけ密度と硬さにもよるが、3mm〜15mmの範囲が好ましく、5mm〜10mmの範囲がより好ましい。
【0020】
リブ(41)の幅(w)(図3)は、上記弾性発泡ポリマーの見かけ密度と硬さにもよるが、5mm〜15mmの範囲が好ましく、8mm〜10mmの範囲がより好ましい。
【0021】
また、リブ(41)は其の各々が互いに離間して配列していることが好ましい。シート状基部(3)の上面に単に切断面を設けただけの、離間していないリブ配列では、押圧を受けてもリブ同士の摩擦により、各々のリブがスムースに傾斜しづらくなり、牽引効果が減殺されてしまう。よって本発明では、リブ同士、少なくとも2mm以上、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上のリブ離間距離(d)を設けるのがよい(図3)。
他方、離間距離を設ける代わりに、互いに接触するリブの少なくとも一方の壁面を低摩擦性材料の層で被覆する構成としてもよい。被覆手段として、低摩擦性材料の塗膜を形成させる方法や低摩擦材料の薄片を接着する方法が挙げられる。薄片として用いる低摩擦材料として、紙、発泡ポリスチロールを例示できる。上記薄片の厚みは1mm以下であることが好ましい。
【0022】
リブ(41)により形成される畝状隆起部(4)は弾性発泡ポリマー材料よりなる。弾性発泡ポリマー材料としては、軟質ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、発泡ゴムを例示できるが、中でも軟質ウレタンフォームが好ましい。
【0023】
なお、シート状基部(3)を構成する可橈性ポリマー材料として、畝状隆起部(4)に用いたと同じ弾性発泡ポリマー材料を用いてもよい。シート状基部(3)と畝状隆起部(4)を共通の材料とすることにより、一体成形ができるので製造工程を簡素化できる。そのような材料としては、軟質ウレタンフォームや発泡ゴムが挙げられる。両材料ともに可橈性と弾性を併せ持つため、上記目的に好適な材料である。リブ傾斜角(θ)、リブの高さ(h)、リブの幅(w)にもよるが、上記目的で使用される材料の特性としては、見掛け密度(JIS K7222)の下限は10kg/m以上であることが好ましく、15kg/m以上であることがより好ましい。見掛け密度(JIS K7222)の上限は60kg/m以下であることが好ましく、40kg/m以下であることがより好ましい。また、硬さ(JIS K6400−2A法)の下限は20N以上であることが好ましく、30N以上であることがより好ましい。硬さ(JIS K6400−2A法)の上限は600N以下であることが好ましく、300N以下であることがより好ましい。以上の範囲のうち、見掛け密度(JIS K7222)が15kg/m以上40kg/m以下であり、かつ硬さ(JIS K6400−2A法)が30N以上300N以下であるものが一層好ましい。
【0024】
以上の構成になる本態様の頚部牽引シート(2)は、シート状基部(3)が可橈性ポリマー材料よりなっているので、任意形状の枕に装着できる。装着に際しては、リブ(41)が枕前方より枕後方に傾斜する態様にて、枕全体をほぼ一巻きするように装着する。この際、外側に現れる部位が、畝状隆起部(4)又はシート状基部(3)のいずれであってもよい。畝状隆起部(4)が外側に現れる装着状態を図4に示し、シート状基部(3)が外側に現れる装着状態を図5に示す。
【0025】
本発明の頚部牽引シート(2)を装着した枕に頭部をあずけると、頭部及び頚部の重みが頚部牽引シート(2)に及ぶので、上記図4図5のいずれの装着態様においても、頭部と枕の間に介在のリブ列と、枕と寝具等(マットレス、敷布団、たたみ、床など)の間に介在するリブ列の双方がともに弾性変形し、枕前方より枕後方へ傾く(図6図7)。その結果、肩を支点として頸部を枕前方より枕後方に牽引する力が働く。こうして就寝中に頚部が牽引される。リブ(41)は弾性発泡性ポリマーより形成されているので過度に牽引されることはない。
【0026】
本発明の頚部牽引シート(2)は、着脱が容易であるばかりでなく、構成材料が柔軟であるので必要に応じ折りたたんで収納できる。
また、上記リブ離間距離(d)の値がリブの幅(w)の値と等しいか又は大きい場合には、畝状隆起部(4)内側に二つ折りにし、リブ(41)を相対するリブの間の凹部に組み込ませることができるので、折りたたんだ後の容積がさらに縮小し、携行するのに便利である(図8)。
【0027】
以上、ロ)の装着態様を例に説明したが、シート状基部(3)の寸法を調節すれば、同様の材料を用いて、イ)の装着態様に適用可能な頚部牽引シートとすることができる。イ)の装着態様の場合、リブ(41)が介在するのは、頭部と枕の間、又は枕と寝具の間の一方のみであるため、ロ)の装着態様と比較して牽引作用は小さくなるが、リブ高さ(h)を大きくすることで牽引効果を補い得る。
【0028】
本発明においては、その変法として、シート状基部(3)の一方の面(31)のみでなく、他方の面(32)側にも、多数列のリブ(42)が突出する構造としてもよい(図9)。本変法において、リブ(42)の、高さ(h)、幅(w)、離間距離(d)、リブ傾斜角(θ)の各々は、設計・加工の観点からは、相対するリブ(41)の、高さ(h)、幅(w)、離間距離(d)、傾斜角(θ)と略等しくするのが好ましいが、必要に応じ異なる値とすることもできる(図10)。要すれば更に、リブ(41)とリブ(42)を構成する弾性発泡材料につき、特性の異なるものを採用しても良い。
当該変法を採用の場合、牽引作用は、面(31)側のリブ(41)及び面(32)側のリブ(42)の双方の傾斜により引き起こされるため、牽引作用を調整するに際し、設計の自由度が増す等の利点がある。
【0029】
本発明においては、畝状隆起部(4)を構成するリブ(41)は、当該リブ(41)の列に垂直かつシート状基部(3)の面に対し垂直に、切込み(6)を備えるものであってもよい(図11)。当該切込み(6)を加えることにより、リブ(41)の列は当該切込み(6)により各々独立して変形可能なリブ部分により構成されることとなる。(以下、上記の「独立して変形可能なリブ部分」を独立リブ(41i)と称する。)
リブ(41)に切込み(6)を加えることにより、牽引作用上、下記の優位性が生じる。
頭部重量が負荷されると、切込み(6)が無い場合には直接頭部が当たるリブ領域のみならず、その周辺のリブ領域も変形を伴い頭部重量を支えることとなる(図12)。(以後、頭部が当たっていないが変形を伴い頭部重量を支えるリブ領域を「頭部周辺リブ領域」と称する。)他方、切込み(6)が有る場合には、直接頭部が当たるリブ領域のみで頭部重量を支えることになる(図13)。結果、切り込み(6)が有る場合のリブの凹み(s)は切り込みの無い場合のリブの凹み(s)よりも大きくなる(図12図13)。リブの凹みが大きいほどリブの傾きが増すため、切込み(6)はより強い牽引効果をもたらす。
就寝中は寝返りを打つことが多いが、切込み(6)を加えることにより以下の効果も期待できる。
すなわち、切込み(6)が有る場合には、頭部に当たっていない独立リブ(41i)は常に無負荷状態の初期状態にあるので、寝返りにより新たに頭部が当たる独立リブ(41i)は初期状態より大きく変形することとなる。他方寝返りにより頭部が当たらなくなった独立リブ(41i)は直ちに無負荷の初期状態に戻るので、その後寝返りが戻り再び頭部が当たる場合にも、常に初期状態より変形を開始する。このように、切込み(6)が備わると寝返りを何度行っても大きな牽引効果を維持できる。
他方、切込み(6)が無い場合には、寝返りが開始されると、頭部は先ず頭部周辺リブ領域に当たることとなるが、当該頭部周辺リブ領域は既に変形を伴っている状態(初期状態でない状態)にあるため、頭部重量が加わってもその更なる変形は切込み(6)のある場合よりも減ることとなる。同様の現象は、寝返りが戻る際にも生じる。
以上の理由により、畝状隆起部(4)を構成するリブ(41)に、当該リブ(41)の列に垂直方向かつシート状基部(3)の面に対し垂直方向に切込み(6)を加えることにより、牽引効果の一層優れる頚部牽引シートとすることができる。
【0030】
上記切込み(6)の深さに制約は無いが、上記リブのi),ii)の効果を発揮するためには、リブの高さ(h)の0.5〜1.0倍であることが好ましい。また切込み(6)間距離(D)に制約はないが、同様の理由で、1cm〜4cmの範囲であることが好ましい。
【符号の説明】
【0031】
1 枕
2 頚部牽引シート
3 シート状基部
31,32 面
4 畝状隆起部
41,42 リブ
41i 独立リブ
5 留め部
6 切込み
t シート状基部厚み
θ,θ,θ リブの傾斜角
h,h,h リブの高さ
w,w,w リブの幅
d,d,d リブ離間距離
D 切込み間距離
s,s リブの凹み

【要約】
【課題】任意断面形状の枕に装着可能で、就寝中に頚部を牽引する作用を有する枕装着用頚部牽引シートを提供すること。
【解決手段】枕装着用頚部牽引シートの構造を、可橈性ポリマー材料よりなるシート状基部(3)と、シート状基部の面(31)より突出する弾性発泡ポリマー材料よりなる畝状隆起部(4)を備え、かつその畝状隆起部が、シート状基部の面(31)に対し同一方向に傾斜する多数のリブ(41)よりなっている構造とした。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13