(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る構造物解体システムが適用された構造物としての既存建物1の断面図である。
既存建物1は、24階建ての鉄骨造であり、複数本の角形鋼管である既存柱11と、これら既存柱11同士を連結する複数の鉄骨梁である既存梁12と、既存梁12に支持される既存スラブ13と、を備える。
【0022】
この既存建物1には、既存建物1を解体するために、構造物解体システム60が構築されている。構造物解体システム60は、既存建物1の24階部分を覆う仮設屋根61と、この仮設屋根61の外周に設けられた仮設壁としての外周足場62と、既存建物1の構造体に支持されて略鉛直方向に延びて仮設屋根61を支持する仮設柱20と、を備える。
【0023】
仮設屋根61は、24階床レベルの外周側の既存梁12と、24階の外周側の既存柱11と、R階床レベルの一部の既存梁12である仮設梁63と、この仮設梁63の上に張り付けられた透光性を有する板材64と、仮設梁63の梁上に設けられたテルハ65と、仮設梁63の梁下に設置された天井走行クレーン66と、を備える。
外周足場62は、仮設屋根61の仮設梁63に支持されている。
テルハ65の直下には、1階まで連通する床開口15が形成されている。このテルハ65は、床開口15を通して解体材を搬出階である1階に降ろすためのものである。
【0024】
仮設柱20は、既存建物1の既存柱11の近傍に設置される。
以下、既存柱11のうち既存柱11Aの近傍に設置された仮設柱20Aについて説明するが、他の仮設柱20も同様の構成である。
【0025】
図2は、仮設柱20Aの正面図および側面図である。
図2では、理解の容易のため、後述の水平支持レール23Bを省略している。
【0026】
仮設柱20Aは、鉛直方向に略平行に延びる一対の柱部材21と、これら2本の柱部材21を連結する連結部材22と、柱部材21に沿って延びる水平支持レール23A、23B(
図3参照)と、を備える。
【0027】
各柱部材21は、断面略H形状の下部211と、この下部211の上に設けられた断面略箱形状の中央部212と、この中央部212の上に設けられた断面略H形状の上部213と、を備える。
【0028】
また、下部211には、互いに対向する一対の貫通孔214が長さ方向に沿って2組形成されている。
【0029】
この仮設柱20には、仮設柱20の長さ方向に沿って延びるステップロッド24と、このステップロッド24に沿って移動可能なステップロッドジャッキ25と、このステップロッドジャッキ25の下端に取り付けられた第1かんぬき部材26と、仮設柱20に取り付けられた一対の直線状のかんざし部材27と、このかんざし部材27に連結された第2かんぬき部材30と、が内蔵されている。
【0030】
図3は、仮設柱20Aの下部211の横断面図である。
仮設柱20は、既存建物1の既存スラブ13を貫通して延びている。すなわち、既存柱11Aの近傍の各階の既存スラブ13には、床開口14が形成されており、仮設柱20は、各階の床開口14に挿通される。
【0031】
第2かんぬき部材30は、一対の柱部材21の間に挿通され、軸方向の長さが変更可能な構造である。すなわち、第2かんぬき部材30は、所定長さの本体31と、この本体31の両端側に水平方向に回動自在に設けられた係止部32と、を備える。
【0032】
この第2かんぬき部材30では、係止部32および本体31を一直線上に配置することで、第2かんぬき部材30の軸方向の長さを長くできる。一方、係止部32を水平方向に折り曲げることで、第2かんぬき部材30の軸方向の長さを短くできる。この状態では、第2かんぬき部材30の軸方向の長さが床開口14の内法寸法よりも短くなるため、第2かんぬき部材30は、床開口14を通って鉛直方向に移動可能となっている。
【0033】
一対のかんざし部材27は、柱部材21の上下の2組の貫通孔214のうちの上側の一組に挿通されている。
上述の第2かんぬき部材30の上面は、かんざし部材27の下面に当接して固定されている。これにより、第2かんぬき部材30は、仮設柱20とともに略鉛直方向に移動するようになっている。
【0034】
第2かんぬき部材30を所定高さに配置して、第2かんぬき部材30の軸方向の長さを長くすることで、第2かんぬき部材30は、既存柱11Aから互いに直交して延びる2つの既存梁12に跨って配置される。
この状態では、第2かんぬき部材30が既存梁12に係止し、この第2かんぬき部材30にかんざし部材27が係止するので、仮設柱20は第2かんぬき部材30を介して既存梁12に支持されることになる。
【0035】
また、床開口14のうち仮設柱20の下部211が挿通されるものには、既存建物1に支持されて仮設柱20の側面に当接する一対の水平反力受け部材51、52が設けられる。
すなわち、水平反力受け部材51、52は、既存梁12上に取り付けられて仮設柱20の側面に当接する略コの字形状の第1水平反力受け部材51と、既存スラブ13上に取り付けられて仮設柱20の側面に当接する略コの字形状の第2水平反力受け部材52と、からなる。
【0036】
各水平反力受け部材51、52は、水平支持レール23Aに当接する長尺状の第1ガイド部53と、この第1ガイド部53の両端から直交して延びて水平支持レール23Bに当接する第2ガイド部54と、を備える。これにより、仮設柱20を下方に向かって円滑に移動可能となっている。
水平反力受け部材51、52は、仮設柱20を挟んで略矩形枠状に配置されており、これにより、第2かんぬき部材30の上下方向の移動に干渉しないようになっている。
【0037】
図4は、仮設柱20の中央部212の横断面図である。
ステップロッドジャッキ25の下端面には、水平に直線状に延びる第1かんぬき部材26が連結され、この第1かんぬき部材26の両端側は、2つの既存梁12の直上に位置している。
第1かんぬき材の中央には、ステップロッド24が挿通される挿通孔が形成されている。
第1かんぬき部材26を所定高さに配置することで、第1かんぬき部材26は既存柱11Aから互いに直交して延びる2つの既存梁12に跨って配置される。このとき、これら2本の既存梁12の上面が露出しているため、第1かんぬき部材26は、既存梁12に直接載置される。
この状態では、第1かんぬき部材26が既存梁12に係止するので、仮設柱20は第1かんぬき部材26を介して既存梁12に支持されることになる。
【0038】
図5は、仮設柱20の平面図である。
仮設柱20は、既存柱11Aの上端から互いに直交して延びる2つの仮設梁63の間に設置されている。
仮設柱20の上端面には、水平に直線状に延びる支持部材28が設けられ、2つの仮設梁63は、この支持部材28の両端側の上面に位置している。これにより、仮設柱20の上端面は、支持部材28を介して、仮設屋根61の仮設梁63に連結されている。
【0039】
図2に戻って、仮設柱20の上部213の側面には、継手29が設けられている。仮設柱20の上部213の側面は、この継手29を介して、仮設屋根61の一部である24階の既存柱11Aの上側の側面に連結されている。
【0040】
図6は、仮設屋根61の平面図である。
図6では、理解の容易のため、板材64およびテルハ65を省略している。
図7は、外周足場62の側面図であり、
図8は、外周足場62の断面図である。
既存建物1の屋根面の外周側には、全周に亘って既存のゴンドラレール16が2列に配置されている。これらゴンドラレール16は仮設屋根61の一部であり、これらゴンドラレール16上には、既存建物1の外側に向かって突出するH鋼からなるブラケット67が所定間隔おきに配置されている。
外周足場62は、ブラケット67に支持されて、既存建物1の外壁面17に沿って設けられている。また、この外周足場62は、仮設屋根61の外周に沿って配置された足場ユニット70を連結したものである。
【0041】
足場ユニット70は、ブラケット67の先端部の上に固定された支持フレーム71と、この支持フレーム71上に設けられた上部足場ユニット72と、支持フレーム71に吊下げ支持された下部足場ユニット73と、下部足場ユニット73を仮設屋根61に連結する固定壁繋ぎ74A〜74Dと、下部足場ユニット73の下端部を仮設屋根61に連結する吊りワイヤ75と、下部足場ユニット73を既存建物1の外壁面に連結する移動壁繋ぎ機構76と、下部足場ユニット73と既存建物1の外壁面との間を塞ぐ隙間塞ぎステージ77と、下部足場ユニット73の下端部に設けられた最下段フレーム78と、を備える。
【0042】
図9は、下部足場ユニット73の拡大断面図である。
下部足場ユニット73は、高さ方向に11段で水平方向に5スパンで構築された枠組足場80と、枠組足場80の各段の既存建物1側に設けられて水平方向に連結する軽量H鋼からなる水平補強部材81と、枠組足場80の外側に全面に亘って設けられた防音パネル82と、枠組足場80の支持フレーム71の直下に設けられたブレース87と、で構成される。
【0043】
枠組足場80は、所定間隔置きに配置された複数の建枠83と、建枠83の上端部同士を連結する布板84と、建枠83の両側端部同士を連結するブレース85と、建枠83の内側に設けられた鋼製足場板からなる巾木86と、を備える。
【0044】
建枠83は、略鉛直方向に延びる一対の円筒形状の主管831と、略水平に延びてこれら主管831の上部同士を連結する円筒形状の連結管832と、主管831の間で略鉛直方向に延びて連結管832に接続される円筒形状の副管833と、一対の主管831の一方(既存建物1側)と副管833との間に設けられてトラスを構成する補強管834と、を備える。
【0045】
上下に位置する主管831同士は、以下の手順で連結される。
すなわち、外径が主管831の内径よりも小さい連結ピン835を用意し、連結ピン835の両端それぞれの主管831の内部に挿入する。この状態で、主管831の外側から、主管831および連結ピン835にボルト836を貫通させ、このボルト836に図示しないナットを螺合して締付ける。
なお、上下に位置する副管833同士も、主管831と同様の手順で連結される。
【0046】
以上の枠組足場80は、支持フレーム71から吊り下げ支持される構造であるため、主管831、副管833、連結ピン835、ボルト836は、11段分の足場の荷重による引張力に十分耐えうる材質で形成されている。
【0047】
布板84は、平板状の部材であり、建枠83の連結管832同士の間に架設されている。
ブレース85は、建枠83の主管831同士の間に取り付けられている。
ブレース87は、枠組足場80の吊り下げ位置付近での剛性を向上させるものである。
【0048】
上部足場ユニット72は、鉛直方向に1段で水平方向に5スパンで構築された枠組足場80からなる。
【0049】
図10は、外周足場62の上部の拡大断面図である。
支持フレーム71は、ブラケット67の先端部の上に2列に配置される角型鋼からなる桁部材711と、これら2列の桁部材711を所定間隔置きに連結する連結部材712と、桁部材711に貫通固定されて略鉛直方向に延びる円筒形状の主管713と、連結部材712に貫通固定されて略鉛直方向に延びる円筒形状の副管714と、を備える。
【0050】
支持フレーム71の主管713の下端側は、下部足場ユニット73の主管831に連結され、支持フレーム71の主管713の上端側は、上部足場ユニット72の主管831に連結されている。
また、支持フレーム71の副管714の下端側は、下部足場ユニット73の副管833に連結され、支持フレーム71の副管714の上端側は、上部足場ユニット72の副管833に連結されている。
【0051】
図11は、外周足場62の中間部の断面図である。
固定壁繋ぎ74A〜74Dは、上から順に配置された4本の固定壁繋ぎ74A、74B、74C、74Dで構成される。
【0052】
R階床レベルの仮設梁63の下フランジには、壁繋ぎ固定ピース741が固定されている。
下部足場ユニット73の水平補強部材81のうち仮設梁63に対向するものは2本あるが、このうち、上側を水平補強部材81A、下側を水平補強部材81Bとする。
固定壁繋ぎ74Aは、仮設梁63の壁繋ぎ固定ピース741から斜め上方に延びて、水平補強部材81Aに連結されている。
固定壁繋ぎ74Bは、仮設梁63の壁繋ぎ固定ピース741から斜め下方に延びて、水平補強部材81Bに連結されている。
【0053】
仮設屋根61の24階床レベルの既存梁12の上フランジには、壁繋ぎ固定ピース742が固定され、下フランジには、壁繋ぎ固定ピース743が固定されている。
下部足場ユニット73の水平補強部材81のうち既存梁12に対向するものは2本あるが、このうち、上側を水平補強部材81C、下側を水平補強部材81Dとする。
固定壁繋ぎ74Cは、既存梁12の壁繋ぎ固定ピース742から略水平に延びて、水平補強部材81Cに連結されている。
固定壁繋ぎ74Dは、既存梁12の壁繋ぎ固定ピース743から斜め下方に延びて、水平補強部材81Dに連結されている。
【0054】
以上の固定壁繋ぎ74A〜74Dは、壁繋ぎ固定ピース741〜743に連結される連結部745と、水平補強部材81A〜81Dに連結される連結部746と、これら連結部745、746に両端が螺合するロッド747と、を備える。
ロッド747の一端側は、他端側に対して逆ねじとなっており、このロッド747を回転させることで、壁繋ぎ固定ピース741〜743と水平補強部材81A〜81Dとの距離を調整できるようになっている。
【0055】
吊りワイヤ75は、仮設梁63の壁繋ぎ固定ピース741から斜め下方に延びて、水平補強部材81Bの内側を通り、最下端の水平補強部材81に連結されている。
この吊りワイヤ75には、ターンバックル751が設けられており、このターンバックル751を回転させることで、吊りワイヤに導入する張力を調整できるようになっている。
【0056】
図12は、外周足場62の下部の拡大断面図である。
移動壁繋ぎ機構76は、下部足場ユニット73の下端側に2段で設けられた移動壁繋ぎ90を備える。
【0057】
図13(a)〜(c)は、移動壁繋ぎ90の上面図、側面図、および正面図である。
移動壁繋ぎ90は、下部足場ユニット73の下端側2段の水平補強部材81に取り付けられた基部としての受け金物92と、この受け金物92から略水平に直線状に延びる腕部93と、この腕部93の先端に設けられて略鉛直方向に延びる2本の棒状のスライド部94と、を備える。
【0058】
ここで、既存建物1の外壁面17には、鉛直方向に延びるゴンドラガイド18が所定間隔おきに形成されている。このゴンドラガイド18は、略鉛直方向に延びるスリット181が形成された矩形筒状である。このスリット181の幅をt
1、ゴンドラガイド18の内部の幅を、スリット181の幅t
1よりも大きいt
2とする。
【0059】
腕部93は、受け金物92に略鉛直方向の回転軸931で回転可能に支持されている。
スライド部94は、ゴンドラガイド18内に配置されて、ゴンドラガイド18に係合する。これにより、移動壁繋ぎ90は、ゴンドラガイド18に沿って移動可能となり、かつ、外壁面17の面外方向への移動が規制されることになる。
このとき、ゴンドラガイド18と外周足場62との相対変位が生じても、腕部93が
図13(a)中破線で示すように回転し、このゴンドラガイド18と外周足場62との相対変位に追従する。
【0060】
このスライド部94は、2つのスライド片95A、95Bを組み合わせて構成される。つまり、スライド部94は、2つのスライド片95A、95Bに割可能となっている。
スライド片95Aは、棒状であり、腕部93の先端に取り付けられる。また、このスライド片95Aの上下両端は、紡錘形状となっている。このスライド片95Aの幅を、t
3とする。
【0061】
スライド片95Bは、棒状であり、このスライド片95Bには、板状の取付けプレート951が設けられている。また、このスライド片95Bの上下両端は、紡錘形状となっている。このスライド片95Bの幅は、スライド片95Aと同じt
3である。
スライド片95Bの取付けプレート951は、ボルト952で腕部93に固定可能となっている。
【0062】
スライド片95A、95Bを組み合わせると、棒状のスライド片95A、95Bが略平行に並んで配置されて、スライド部94は、略鉛直方向に延びる2本の棒状となる。また、このスライド部94の幅は、2t
3となる。
【0063】
ここで、スライド片95A、95Bの幅t
3は、t
2>2t
3>t
1>t
3となるように設定される。つまり、スライド部94の幅2t
3は、ゴンドラガイド18のスリット181の幅t
1よりも大きくなっている。また、スライド片95A、95Bの幅t
3は、ゴンドラガイド18のスリット181の幅t
1よりも小さくなっている。
【0064】
以上のスライド部94を組み立てる手順は、以下の通りである。
まず、
図14に示すように、スライド片95Aを、スリット181を通してゴンドラガイド18の内部に挿入する。次に、スライド片95Bを、スリット181を通してゴンドラガイド18の内部に挿入し、ゴンドラガイド18の内部で、これら2つのスライド片95A、95Bを組み合わせてスライド部94とする。すると、このスライド部94は、ゴンドラガイド18のスリット181よりも幅が大きくなるので、ゴンドラガイド18に係止する。
【0065】
図12に戻って、隙間塞ぎステージ77は、移動壁繋ぎ機構76の上下に設けられており、下部足場ユニット73の建枠83に取り付けられた受け金物771と、この受け金物771に上方に向かって回動可能に取り付けられたステージ部材772と、を備える。
ステージ部材772の先端縁には、ゴム部材774が取り付けられており、ステージ部材772が水平の状態では、ステージ部材772と外壁面17との隙間を塞ぐようになっている。
このステージ部材772は、チェーン773で上方に吊られており、このチェーン773によりステージ部材772が水平を維持できるようになっている。
【0066】
最下段フレーム78は、略水平方向に直線状に延びる基部781と、基部781の両端から上方に向かって円弧状に延びる円弧部782と、基部781から略鉛直方向に延びる円筒形状の一対の主管783と、主管783の間で基部781から略鉛直方向に延びる副管784と、を備える。
【0067】
最下段フレーム78の主管783の上端は、下部足場ユニット73の下端の主管831に連結されている。また、最下段フレーム78の副管784の上端は、下部足場ユニット73の下端の副管833に連結されている。
また、防音パネル82の下端から、最下段フレーム78の外周面を通り、隙間塞ぎステージ77の受け金物771まで、シート785が張り付けられている。
【0068】
次に、既存建物1を解体する手順について説明する。
ステップ1では、
図1に示すように、屋上階としてのR階の設備機器、目隠し壁、およびフレーム等を解体する。また、R階床レベルの既存梁12の一部を残して解体して、残った既存梁12を仮設梁63とする。さらに、24階床レベルの外周の既存梁12を残して、24階の外壁を含む立上りおよび24階床レベルの内側の既存梁12を解体する。
また、仮設柱20の外側に仮設梁63に支持される外周足場62を構築する。この外周足場62を構築する手順については、後に詳述する。
【0069】
ステップ2では、仮設梁63の梁上にテルハ65を取り付け、仮設梁63の梁下に天井走行クレーン66を取り付ける。また、仮設梁63に透光性を有する板材64を貼り付けて、仮設屋根61を完成させる。これにより、仮設屋根61および外周足場62で囲まれた解体作業スペースを形成する。
なお、図示しないが、仮設屋根61には、雨水を利用した散水設備およびドライミスト装置を設ける。
【0070】
ステップ3では、各階の既存スラブ13に床開口14、15を形成し、20〜23階床レベルの床開口14に水平反力受け部材51、52を設置する。
その後、既存建物1の外周の既存柱11の近傍に仮設柱20を配置する。
【0071】
ステップ4では、ステップロッドジャッキ25駆動して、23階床レベルの既存梁12に第1かんぬき部材26を係止させ、仮設柱20を23階床の既存梁12に支持させる。また、第2かんぬき部材30を収縮させておく。
その後、23階の既存柱11を柱頭部で切断し、23階の外壁を含む立上がりを解体する。このとき、天井走行クレーン66を利用して、解体材を床開口15に移動し、テルハ65によりこの解体材を搬出階に荷下ろしする。荷下ろしした解体材は、リサイクル可能な材料と産業廃棄物との仕分けを行って、場外に搬出する。
【0072】
ステップ5では、
図15に示すように、ステップロッドジャッキ25を駆動して、ステップロッド24の上方に向かって移動させる。
これにより、仮設柱20が下降し、仮設屋根61および外周足場62も下降し、第2かんぬき部材30は21階床レベルの高さに位置する。このとき、水平反力受け部材51、52により、仮設柱20の移動を案内する。
次に、第2かんぬき部材30を伸長させて、この第2かんぬき部材30を21階床レベルの既存梁12に係止させ、仮設柱20の荷重を21階床の既存梁12に支持させる。
【0073】
ステップ6では、
図16に示すように、ステップロッドジャッキ25を駆動して、第1かんぬき部材26を上方に向かってわずかに移動し、解体対象である23階床から退避させる。
また、23階床レベルに設置した水平反力受け部材51、52を19階床レベルに盛り替える。
次に、解体作業スペース内で、23階の床から22階の外壁を含む立上がりまで(
図16中破線で示す部分)を解体する。このとき、天井走行クレーン66を利用して、解体材を床開口15に移動し、テルハ65によりこの解体材を搬出階に荷下ろしする。
【0074】
ステップ7では、
図17に示すように、ステップロッドジャッキ25を駆動して、第1かんぬき部材26を下方に向かって移動し、22階床レベルの既存梁12に係止させ、仮設柱20を22階床の既存梁12に支持させる。また、第2かんぬき部材30を収縮させておく。
【0075】
以下、ステップ5〜7の作業を繰り返すことで1層毎に解体して、1階まで解体する。
【0076】
次に、外周足場62を構築する手順について説明する。
まず、
図18に示すように、地上にて、外周足場62を5スパン毎に分割した足場ユニット70を組み立てる。
具体的には、架台96を構築し、この架台96上に、下から順番に、最下段フレーム78、下部足場ユニット73、支持フレーム71、上部足場ユニット72を5スパン分組み立てる。
【0077】
次に、隙間塞ぎステージ77を下部足場ユニット73に取り付けて、この隙間塞ぎステージ77のステージ部材772を上方に向かって回動させて退避させておく。
【0078】
また、移動壁繋ぎ機構76が設けられる下部足場ユニット73の下端側2段の水平補強部材81に、移動壁繋ぎ90を取り付ける。さらに、移動壁繋ぎ90と同様の構造の移動壁繋ぎ97を用意し、この移動壁繋ぎ97を残りの水平補強部材81にも取り付ける。
【0079】
ここで、ゴンドラガイド18は、外壁面17のうち3階床レベルより上の部分にのみ形成されている。よって、移動壁繋ぎ90、97のうちゴンドラガイド18に対向するもののみを取り付けて、ゴンドラガイド18内に係合させておき、残りの移動壁繋ぎ90、97は取り外しておく。
【0080】
次に、
図19に示すように、クレーンにより足場ユニット70を上昇させる。すると、移動壁繋ぎ90、97が次々とゴンドラガイド18に対向するようになるため、移動壁繋ぎ90、97を取り付けて、ゴンドラガイド18内に係合させる。これにより、移動壁繋ぎ機構76を完成させて、足場ユニット70が風の影響を受けて不安定な姿勢になるのを防止しつつ、円滑に揚重できる。
【0081】
全ての移動壁繋ぎ90をゴンドラガイド18内に係合させた後、
図20に示すようなゴンドラガイド塞ぎ部材98を用意し、ゴンドラガイド18内を塞いでおく。このゴンドラガイド塞ぎ部材98は、ゴンドラガイド18内に配置される塞ぎ部材本体981と、この塞ぎ部材本体981に螺合された固定ボルト982と、を備える。固定ボルト982を締付けることにより、固定ボルト982の先端面と塞ぎ部材本体981とでゴンドラガイド18を挟持するようになっている。
【0082】
ここで、外壁面17にゴンドラガイド18が設けられていない場合、移動壁繋ぎ90を取り付けられないので、
図21に示すように、水平補強部材81に車輪部材99を取り付ける。この車輪部材99によれば、移動壁繋ぎ90、97のように足場ユニット70の外壁面17から離れる方向への移動を規制できないが、足場ユニット70を外壁面17に沿って上下に移動可能である。
【0083】
このまま足場ユニット70を上昇させて、仮設屋根61の近傍に位置させ、支持フレーム71をブラケット67の先端部の上に載置して、足場ユニット70を仮設屋根61に支持させる。
次に、
図12に示すように、隙間塞ぎステージ77のステージ部材772を水平に配置する。
その後、移動壁繋ぎ97を撤去して外壁を解体しながら、固定壁繋ぎ74A〜74Dおよび吊りワイヤ75を取り付ける。
【0084】
以上の手順で足場ユニット70を順番に揚重して仮設屋根61の外周に沿って配置し、足場ユニット70同士を連結することにより、外周足場62を構築する。
【0085】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)外周足場62に取り付けられた受け金物92に対して腕部93を回転可能とした。よって、移動壁繋ぎ90がゴンドラガイド18に沿って下降した際、ゴンドラガイド18の外周足場62に対する相対位置が変化する場合であっても、腕部93が回転して、スライド部94は、ゴンドラガイド18の外周足場62に対する相対位置の変化に追従する。よって、移動壁繋ぎ90を外周足場62から一旦取り外して、所定位置に取り付け直す必要がなく、既存建物1の解体作業を円滑に行うことができる。
【0086】
(2)スライド部94をスライド片95A、95Bで構成した。よって、まず、各スライド片95A、95Bを、スリット181を通してゴンドラガイド18の内部に挿入する。これらスライド片95A、95Bは、スリット181よりも幅が小さいので、スリット181を円滑に通過する。次に、ゴンドラガイド18の内部でスライド片95A、95Bを組み合わせてスライド部94とする。すると、スライド部94は、スリット181よりも幅が大きくなるので、ゴンドラガイド18に係止することになる。
よって、従来のようにゴンドラガイドの下端を通すことなく、スライド部94をゴンドラガイド18の内部に容易に配置できるから、構造物解体システム60がゴンドラガイド18の途中に位置している場合でも、スライド部94を容易に交換できる。また、構造物解体システム60の高さ位置にかかわらず、スライド部94の追加設置や撤去が可能となる。
【0087】
(3)スライド部94を略鉛直方向に延びる2本の棒状としたので、ゴンドラガイド18の内面に段差があっても、スライド部94がゴンドラガイド18の内面を上下に円滑に摺動する。よって、外周足場62が外壁面17の面外方向に移動するのを規制しつつ、構造物解体システム60が下降する際には、スライド部94がゴンドラガイド18に沿って下降し、外周足場62の移動を案内する。
【0088】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、本実施形態では、スライド部94を、略鉛直方向に延びる2本の棒状としたが、これに限らず、
図22に示すように、スライド片95A、95Bに、ゴンドラガイド18の底面を走行する複数の車輪953を設けてもよい。このようにしても、上述の(3)と同様の効果がある。