(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6124492
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】クロマトグラフィー用の加熱式ロータリーバルブ
(51)【国際特許分類】
G01N 30/20 20060101AFI20170424BHJP
【FI】
G01N30/20 A
【請求項の数】21
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-518773(P2016-518773)
(86)(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公表番号】特表2016-532092(P2016-532092A)
(43)【公表日】2016年10月13日
(86)【国際出願番号】US2014072424
(87)【国際公開番号】WO2015103086
(87)【国際公開日】20150709
【審査請求日】2016年3月28日
(31)【優先権主張番号】14/146,596
(32)【優先日】2014年1月2日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516091488
【氏名又は名称】ヴァルコ インスツルメンツ カンパニー, エル.ピー.
(74)【代理人】
【識別番号】100167047
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸典
(74)【代理人】
【識別番号】100085785
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 昌典
(72)【発明者】
【氏名】スターンズ, スタンレー, ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ブリスビン, マーティン, ポール
(72)【発明者】
【氏名】ミラー, デイビット
【審査官】
黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−019757(JP,A)
【文献】
特表2012−533041(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/099823(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0178843(US,A1)
【文献】
特開2013−047695(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/078450(WO,A1)
【文献】
米国特許第05402668(US,A)
【文献】
米国特許第03203249(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00−30/96
G01N 1/00
F16K 3/00−3/36
F16K 27/00−27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフィー用の加熱式ロータリーバルブであって、該バルブは、
複数個のステーターコネクターを有するステーター第一面と、平板を含むステーター第二面とを有し、前記複数個のコネクターのそれぞれから前記ステーター第二面の前記平板まで延在するステーターポートを有するステーターと、
本体第一端から本体第二端までの内部ボアを有し、前記本体第一端のところで前記ステーターの前記ステーター第二面が固定される細長本体と、
前記ステーター第二面に接したローターシール第一面を有し、該ローターシール第一面内に前記ステーターポートの2つと連通するための少なくとも1つのチャンネルを有するローターシールと、
前記ローターシールに取り付けられ、前記細長本体の前記内部ボア内に回転自在に設けられ、前記ローターシールから前記本体第二端の先まで伸びているドライブシャフトと、
前記細長本体における前記ローターシール第一面及び前記ステーター第二面の近傍の前記本体第一端のところ又は前記ステーターの何れか一方に対して取り付けられる発熱部材と、を具備し、
前記ローターシール、前記ドライブシャフト、前記本体の少なくとも1つは、前記発熱部材の熱を前記ステーターに伝達する材料からなることを特徴とする加熱式ロータリーバルブ。
【請求項2】
請求項1に記載のバルブにおいて、前記細長本体は更に、前記ステーターから離れた位置に、前記本体を貫通し前記内部ボアから放射状に設けられた複数個の横方向排熱口を有することを特徴とする加熱式ロータリーバルブ。
【請求項3】
請求項1に記載のバルブにおいて、前記複数個のステーターコネクターのそれぞれに外径360マイクロメートルのチューブに適合する流体継手が接続されることを特徴とする加熱式ロータリーバルブ。
【請求項4】
請求項1に記載のバルブにおいて、前記発熱部材が電気駆動式の発熱部材であることを特徴とする加熱式ロータリーバルブ。
【請求項5】
請求項1に記載のバルブにおいて、前記発熱部材が前記本体第一端の周囲に施された外部溝の中に設けられていることを特徴とする加熱式ロータリーバルブ。
【請求項6】
請求項1に記載のバルブであって、更に前記ローターシールの周囲に、前記ローターシールを保持するための環状部材を有することを特徴とする加熱式ロータリーバルブ。
【請求項7】
請求項1に記載のバルブにおいて、前記細長本体の直径が前記ステーターの直径の75パーセント以下であることを特徴とする加熱式ロータリーバルブ。
【請求項8】
クロマトグラフィー用の加熱式ロータリーバルブシステムであって、該システムは、
ステーターと、細長本体と、ローターシールと、ドライブシャフトと、発熱部材とを有するバルブと、
スタート指示情報を受けるように構成され、該スタート指示情報を受けると同時に前記発熱部材を作動させるコントローラとを具備し、
前記バルブが、
複数個のステーターコネクターを有するステーター第一面と、平板を含むステーター第二面とを有し、前記複数個のコネクターのそれぞれから前記ステーター第二面の前記平板まで延在するステーターポートを有するステーターと、
本体第一端から本体第二端までの内部ボアを有し、前記本体第一端のところで前記ステーターの前記ステーター第二面が固定される細長本体と、
前記ステーター第二面に隣接したローターシール第一面を有し、該ローターシール第一面内に前記ステーターポートの2つと連通するための少なくとも1つのチャンネルを有するローターシールと、
前記ローターシールに取り付けられ、前記細長本体の前記内部ボア内に回転自在に設けられ、前記ローターシールから前記本体第二端の先まで伸びているドライブシャフトと、
前記細長本体における前記ローターシール第一面及び前記ステーター第二面の近傍の前記本体第一端のところ又は前記ステーターの何れか一方に対して取り付けられる発熱部材と、を具備し、
前記ローターシール、前記ドライブシャフト、前記本体の少なくとも1つは、前記発熱部材の熱を前記ステーターに伝達する材料からなることを特徴とする加熱式ロータリーバルブシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のバルブシステムにおいて、前記細長本体は更に、前記本体を貫通し前記内部ボアから放射状に設けられた複数個の横方向排熱口を有することを特徴とする加熱式ロータリーバルブシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のバルブシステムにおいて、前記複数個のステーターコネクターのそれぞれに外径360マイクロメートルのチューブに適合する流体継手が接続されることを特徴とする加熱式ロータリーバルブシステム。
【請求項11】
請求項10記載のバルブシステムにおいて、前記発熱部材が電気駆動式の発熱部材であることを特徴とする加熱式ロータリーバルブシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のバルブシステムにおいて、前記発熱部材が前記本体第一端の周囲に施された外部溝の中に設けられていることを特徴とする加熱式ロータリーバルブシステム。
【請求項13】
請求項11に記載のバルブシステムのバルブにおいて、前記細長本体の直径が前記ステーターの直径の75パーセント以下であることを特徴とする加熱式ロータリーバルブシステム。
【請求項14】
クロマトグラフィーシステムであって、該システムは、
ステーターと、細長本体と、ローターシールと、ドライブシャフトと、発熱部材とを有するバルブと、
コントローラと、
クロマトグラフィーカラムと、
試料供給源と、
オーブンとを備え、
前記ステーターは、多数のステーターコネクターを有するステーター第一面と平板を含むステーター第二面とを有し、前記多数のステーターコネクターのそれぞれから前記ステーター第二面の平板まで伸びるステーターポートを有し、
前記細長本体は、本体第一端から本体第二端まで伸びる内部ボアを有し、前記本体第一端に対して前記ステーターが前記ステーター第二面において固定され、
前記ローターシールは、前記ステーター第二面に近接してローターシール第一面を有し、前記ステーターポートの2つと連通するチャンネルを少なくとも1つ前記ローターシール面に有し、
前記ドライブシャフトは、前記細長本体の前記内部ボアの中に回転自在に設けられ、前記ローターシールに固定されて該ローターシールから前記本体第二端の先まで伸びており、
前記発熱部材は、前記本体における前記ローターシール第一面及び前記ステーター第二面の近傍の前記本体第一端のところ又は前記ステーターの内の何れか一方に固定され、
前記ローターシール、前記ドライブシャフト及び前記細長本体の少なくとも1つが、前記発熱部材から発せられた熱を前記ステーターに伝達する素材からなり、
前記コントローラは、温度センサーからオーブンの温度に関する情報を受け取るように構成され、
前記コントローラは、スタート指示情報を受け取るように構成され、該スタート指示情報を受け取ると同時に、前記ステーターポートを前記オーブンの温度まで迅速に加熱するために前記発熱部材を作動させ、
前記クロマトグラフィーカラムは、カラムインレットにおいて前記加熱式ロータリーバルブに接続され、
前記試料供給源は、供給源アウトレットにおいて前記加熱式ロータリーバルブに接続され、
前記オーブンは、内部空間と、オーブン壁とを有し、前記クロマトグラフィーカラムと、前記試料供給源と、前記温度センサーがその内部に設けられ、
前記加熱式ロータリーバルブは、前記ステーター第一面が前記内部空間の中に露出するようにして前記オーブン壁を貫くように設けられることを特徴とするクロマトグラフィーシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のクロマトグラフィーシステムにおいて、前記細長本体は更に、前記本体を貫通し前記内部ボアから放射状に設けられた複数個の横方向排熱口を有することを特徴とするクロマトグラフィーシステム。
【請求項16】
請求項14に記載のクロマトグラフィーシステムにおいて、前記複数個のステーターコネクターのそれぞれに外径360マイクロメートルのチューブに適合する流体継手が接続されることを特徴とするクロマトグラフィーシステム。
【請求項17】
請求項15に記載のクロマトグラフィーシステムにおいて、前記発熱部材が電気駆動式の発熱部材であることを特徴とするクロマトグラフィーシステム。
【請求項18】
請求項16に記載のクロマトグラフィーシステムにおいて、前記発熱部材が前記本体第一端の周囲に施された外部溝の中に設けられていることを特徴とするクロマトグラフィーシステム。
【請求項19】
請求項18に記載のクロマトグラフィーシステムのバルブにおいて、前記細長本体の直径が前記ステーターの直径の75パーセント以下であることを特徴とするクロマトグラフィーシステム。
【請求項20】
クロマトグラフィーシステムであって、該システムは、
ステーターと、細長本体と、ローターシールと、ドライブシャフトと、発熱部材とを有するバルブと、
コントローラと、
クロマトグラフィーカラムとを備え、
前記ステーターは、複数個のステーターコネクターを有するステーター第一面と平板を含むステーター第二面とを有し、前記複数個のステーターコネクターのそれぞれから前記ステーター第二面の平板まで伸びるステーターポートを有し、
前記細長本体は、本体第一端から本体第二端まで伸びる内部ボアを有し、前記本体第一端に対して前記ステーターが前記ステーター第二面において固定され、
前記ローターシールは、前記ステーター第二面に接してローターシール第一面を有し、前記ステーターポートの2つと連通するチャンネルを少なくとも1つ前記ローターシール面に有し、
前記ドライブシャフトは、前記細長本体の前記内部ボアの中に回転自在に設けられ、前記ローターシールに固定されて該ローターシールから前記本体第二端の先まで伸びており、
前記発熱部材は、前記本体における前記ローターシール第一面及び前記ステーター第二面の近傍の前記本体第一端のところ又は前記ステーターの内の何れか一方に固定され、
前記ローターシール、前記ドライブシャフト及び前記細長本体の少なくとも1つが、前記発熱部材から発せられた熱を前記ステーターに伝達する素材からなり、
前記コントローラは、クロマトグラフィーカラムからカラム温度に関する情報を受けるように構成され、
前記コントローラは、スタート指示情報を受けるように構成され、該スタート指示情報を受けると同時に、前記ステーターポートを前記カラム温度まで迅速に加熱するために前記発熱部材を作動させ、
前記クロマトグラフィーカラムは、加熱装置を含み、カラムインレットにおいて前記加熱式ロータリーバルブに接続されされていることを特徴とするクロマトグラフィーシステム。
【請求項21】
請求項19に記載のクロマトグラフィーシステムにおいて、
前記細長本体は更に前記本体を貫通し前記内部ボアから放射状に設けられた複数個の横方向排熱口を有し、
前記複数個のステーターコネクターのそれぞれに外径360マイクロメートルのチューブに適合する流体継手が接続され、
前記発熱部材は電気駆動式の発熱部材であり、
前記細長本体の直径が前記ステーターの直径の75パーセント以下であることを特徴とするクロマトグラフィーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィー用のバルブ及びシステムに関する。より詳しくは、本発明は、カラムの中で分離される試料と関連して使用され、バルブのポート内で試料をカラムの温度まで加熱するための加熱式ロータリーバルブに関する。本発明に係る加熱式ロータリーバルブによれば、幅広い沸点範囲の化合物を、改善された正確なピーク面積及び保持時間のもとで、ガスクロマトグラフに導入することができる。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフィー(GC)は通常、オーブン又はその他の装置の中に配置されて且つこれらによって加熱されるカラムを用いて試料に対して実施される。その試料はカラムに導入される前に加熱される。カラムの中で分離された化合物(試料)は次に、化合物を特定するための検出器に導かれる。クロマトグラフィーオーブンは、摂氏40度から摂氏400度の範囲に昇温させた上で動作させることができる。カラムは、内側にポリマーコーティングが施されており、典型的には金属や石英ガラスといった素材からなる薄いチューブがコイル状になっているため、カラムは、オーブンの中における周囲温度又は付加された外部発熱部材の温度に迅速に達し、そのような状態の下で試料はカラムの中を移動する。ここで問題となるのは、試料は、昇温されたカラムの温度まで加熱される必要があるという点である。この問題点は時として、試料の大きさが十分に小さい場合には加熱式注入ポートを用いることで対処されてきた。例えば、厚いゴム板の隔膜を貫くシリンジを用いるような注入形態である。加熱式注入ポートは十分に温度が高く、試料を沸点にまで達しさせ、その試料をヘリウム又はその他のキャリアガスによってガス状態でカラム内へ送出する。
【0003】
従来、ガスクロマトグラフィーにおける液状注入の形態としてシリンジによる液状注入の形態があった。この形態はカラムにおいて化合物を分離でるかどうかは別として、単純な形態ではあったものの、隔膜の寿命の点や、バルブに関連する自動化システムが複雑化してしまう点が課題であった。従来の代替的な注入形態として、バルブによる注入形態がある。この注入形態には、単一領域システム(例えば、標準的な液状試料バルブ)、又は試料が試料供給源のような低温領域からカラムのような高温領域に移動させられる2領域注入システムがある。これらのバルブシステムは、操作性の容易さと反復性の面で利点があったが、試料が高温領域に到達する際に試料の温度が高温領域の温度に確実に達しているかと言う点で課題があった。
【0004】
加えて、上述のバルブシステムにおいて公知のバルブは内部容積が大きいため、加熱することができないだけでなく、高い分離性を得るために試料をカラムの中で繰り返し再循環させることは大部分が理論上のことに過ぎなかった。また、公知のバルブは、典型的には相対的に大きな流体継手(例えば、1/16インチ又は1/32インチ)を用いていたが、そのような流体継手は、それぞれのスイッチにおいてピークの幅が大きくなってしまうために小径のカラムとは相性が悪かった。代替的なシステムでは、キャリアガスの方向を制御するため、外部ソレノイドバルブを用いるディーンズスイッチング及びその他の差圧方式が用いられていた。しかしながら、いずれもカラムの選択性について高い効果を得るには至っていなかった。
【0005】
従って、試料は、機械的に制御されたシステムに基づいて取り入れられ、クロマトグラフィーシステムによる処理のための温度に加熱される一方で、熱を伝達することがなく又はヒートソークによって影響されないことが望まれる。
【0006】
加えて、クロマトグラフィーシステムでは、典型的には、分析が望まれないか又は行われていない間にも試料がバルブの中を流れる。そのため、流れている試料に接するバルブが、分析が行われていない間に昇温されると、それは試料に対して有害なものとなり、分析が行われる前に試料が繰り返し気化される結果を招き得る。
【0007】
従って、試料供給源と連通するバルブであって、分析している間は、試料をカラムの温度まで加熱しながら同時に試料のカラムへの流入を許容し、他方、分析していない間は、包囲するシステム又は試料自体に対して熱を与えないバルブを提供することが望まれる。
【0008】
また、望ましくない冷却設備や不必要な追加の加熱設備を具えることなく、昇温した状態でカラムスイッチングに用いることが可能な、僅か数ナノリットル容量の内部容積を有するバルブを提供することが望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のニーズ及び上記の先行技術に係る一つ又はそれ以上の欠点を解決するためになされたものである。即ち、本発明は、一つ又はそれ以上の加熱されたカラムと関連して用いるための加熱式ロータリーバルブであって、バルブ内の温度まで加熱され又はその温度で維持された試料が次に、前記と同じ温度まで加熱されたカラムの中で分離される加熱式ロータリーバルブを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る加熱式ロータリーバルブは、ステーターと、細長本体と、ローターシールと、ドライブシャフトと、発熱部材とを有する。ステーターは、ステーター第一面とステーター第二面とを有し、ステーター第一面は多数のステーターコネクターを有する一方で、ステーター第二面は平板を有する。ステーターは複数のステーターポートを有し、その各ステーターポートはコネクターからステーター第二面の平板へ 伸びている。
【0011】
細長本体は、本体第一端から本体第二端までの内部ボアを有し、ドライブシャフトが内部ボアの中に回転自在に設けられる。ステーターは、その第二端のところで、本本体に対して本体第一端のところへ接続される。その結果、ローターシールがその中で回転できるような一体型ユニットが構成される。ローターシールは、ステーターに対して高い圧力シールを与えることができる高分子材料製のディスクであり、ローターシールのローターシール第一面は、ステーター第二面に接して設けられる。ローターシールは、所望される時に、二つのステーターポートを連通させるチャンネルをその第一面内に少なくとも1つ有する。ドライブシャフトは、細長本体の第二端の先まで伸びており、特定のポートを連通させることが所望される時にアクチュエーターがバルブをスイッチできるよう、ローターシールに固定される。発熱部材は、細長本体及び/又はステーターからステーターポートに対して熱が伝達されるよう、ローターシールの第一面及びステーターの第二面に近接して、細長本体の内部又は本体第一端に固定される。細長本体及びステーターは、発熱部材からステーターポートに熱を伝達することができる素材からなる。
【0012】
本発明の代替実施形態は、加熱式ロータリーバルブがロータリーバルブシステムの一部であり、ロータリーバルブシステムはさらに、スタート指示を受け取ることができ且つスタート指示を受け取ることで発熱部材を作動させるように構成されたコントローラを備える。
【0013】
本発明のさらなる実施形態は、ロータリーバルブシステムがクロマトグラフィーカラム、試料供給源、オーブン及び温度センサーと共にクロマトグラフィーシステムに統合されており、バルブが発熱部材によってオーブンの温度まで加熱されるよう、コントローラが、オーブン内に設けられた温度センサーからオーブンの温度に関する情報を受け取ることができるようにさらに構成される。このクロマトグラフィーシステムにおいて、加熱式ロータリーバルブは、カラムインレットにおいてクロマトグラフィーカラムと接続され、供給源アウトレットにおいて試料供給源と接続される。クロマトグラフィーカラム、試料供給源及び温度センサーはオーブンの内部に設けられる。加熱式ロータリーバルブそのものは、オーブン側の本体部の後部がオーブン壁を貫通しそのオーブン壁と接触する一方で、反対側の本体部がオーブンの外に位置する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一つ又はそれ以上の加熱されたカラムと関連して用いるための加熱式ロータリーバルブであって、バルブ内の温度まで加熱され又はその温度で維持された試料が同じ温度まで加熱されたカラムの中で分離される加熱式ロータリーバルブを提供できる。
【0015】
本発明の他の特徴、利点、及び具体例は、当業者であれば、以下に詳述する色々な具体例及び添付図面から明確になるであろう。
【0016】
本発明の他の特徴、利点、及び具体例は、当業者であれば、以下に詳述する色々な具体例及び添付図面から明確になるであろう。但し、それらは、本発明の代表的な実施例を示すものに過ぎないものであって、本発明をこれらの実施例に限定されるものではないことに注意しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る加熱式ロータリーバルブを組み立てた状態を示した図である。
【
図2】
図1に示す加熱式ロータリーバルブのB−B線断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る加熱式ロータリーバルブの斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る加熱式ロータリーバルブが有するステーターの外側面を示した図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る加熱式ロータリーバルブが有するローターシールの面を示した図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る加熱式ロータリーバルブの分解図である。
【
図7】本発明の更なる他の実施形態に係る、オーブン内の加熱式ロータリーバルブシステム及びクロマトグラフィーシステムを示した図である。
【
図8】本発明の更なる他の実施形態に係る、オーブン内の加熱式ロータリーバルブシステム及び加熱式カラムシステムを示した図である。
【
図9】本発明に係る加熱式ロータリーバルブを用いて2つのカラムを再循環させる状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1乃至
図7を参照しながら説明すると、加熱式ロータリーバルブ100は、オーブン712又はその他の加熱装置によって加熱されたカラム704の中で分離される試料と関連して用いられるものである。本発明の加熱式ロータリーバルブ100は、分析する期間中は、試料をバルブのポート内でカラム704の温度まで加熱する一方で、そうでない期間中は試料を加熱しない。加熱式ロータリーバルブ100は、カラム704に導入される試料が加熱式ロータリーバルブ100の本体第一端116内でクロマトグラフィーカラム704の温度まで加熱されるように、且つ、加熱式ロータリーバルブ100の周囲に過剰な熱を伝達しないように、ステーター第一面104及びステーター102のステーターコネクター108が試料供給源708と関連してオーブン712の中に露出するように設けることができる。
図8を参照しながら説明すると、加熱式ロータリーバルブ100は、取り付けられた加熱部材などからの直接的又は間接的な熱伝達によって加熱されるカラム804に隣接して設けることができる。加熱式ロータリーバルブ100は、その細長本体112の内部または外部に、ステーター102、細長本体112、ローターシール230、ドライブシャフト134及び発熱部材236を備える。ステーター102、細長本体112、ローターシール230及びドライブシャフト134は、ステンレス鋼で構成することができる。
【0019】
図7を参照しながら説明すると、ステーター102は細長本体112と一体的に構成され、該ステーター102は、加熱式ロータリーバルブ100にとっての、試料供給源708及びカラム704との接続点を提供する。
図1乃至
図6を参照しながら説明すると、ステーター102は、ステーター第一面104及びステーター第二面106を有する。ステーター第一面104は、試料供給源708及びカラム704との連通点を提供する複数個のステーターコネクター108を有する。ステーター第二面106は、作動中の加熱式ロータリーバルブ100において流路となる部分を提供する平板502を有する。ステーター102は、ステーターコネクター108からステーター第二面106の平板502へそれぞれ伸びる複数個のステーターポート210を有する。好ましくは、ステーターポート210のそれぞれが
外径360マイクロメートルの
チューブに適合する流体継手と共に用いるように形成され、そうすることにより、ステーター102の中の試料体積がそこで減少し、その結果、ステーター102からの熱伝達率が高まる。
【0020】
図1乃至
図7を参照しながら説明すると、細長本体112はステーターには熱の伝導を許容するが第二端118には熱の伝導を許容しないことを意図した部分を有し、この第二端118の所で、バルブ100及び用いられる全流路の制御を行うドライブシャフト134がアクチュエーター718に接続される。
図2及び
図6を特に参照しながら説明すると、細長本体112は、本体第一端116から本体第二端118へ延在する内部ボア214を有している。ドライブシャフト134は、アクチュエーター718によって作動したときに自由に回転できるように、細長本体112の内部ボア214の中に設けられている。加熱は、本体第一端116の中でのみ行われることが望ましい。
【0021】
図1乃至
図6を参照しながら説明すると、ステーター102は、ステーター第二面106が本体第一端116のところで細長本体112に対して固定される。ステーター102は迅速に加熱されることが望ましい一方で細長本体112は伝達された熱を保持しないことが望ましいため、本体第二端118の方向へ容易に熱が伝達せず且つ伝達された熱が容易に放出されるように、細長本体112の直径はステーター102の直径よりも小さく構成される。それゆえ、細長本体112の本体直径140は、ステーター102のステーター直径504の75%以下とすることができる。
【0022】
図2及び
図6を参照しながら説明すると、ローターシール230は、その位置に依存して加熱式ロータリーバルブ100を通る流路を終端させる。ローターシール230は、加熱式ロータリーバルブ100が組み立てられたときにステーター第二面106に隣接するローターシール第一面632を有する。ローターシール230は、所定の位置の時に2つのステーターポート210を連通させるチャンネル606を、ローターシール第一面632の表面又は内部に少なくとも1つ有する。
図7を参照しながら説明すると、ローターシール230は、試料供給源708から加熱式ロータリーバルブ100を経てカラム704に至る試料の流れを許容するように位置することができ、又は、そのような流れを阻止するように位置することができる。さらに、ローターシール230は、試料をループに進入させるように位置することができ、又は、その他所望の流路を構成するように位置することができる。
図6を参照しながら説明すると、ローターシール230は、細長本体112と組み合わせてエンドキャップ610及びスプリング608を用いるなどによってドライブシャフト134が押し込まれることにより、ステーター第二面106との接触が維持される。
【0023】
発熱部材236から発せられた加熱式ロータリーバルブ100内の熱はローターシール230にも伝達されることから、ローターシール230を包み込むと共に加熱中におけるクリープといったローターシール230の動きを防ぐため、環状部材のローターリング634をローターシール230に設けることができる。特に、ローターシール230が加熱された時に軟化しやすく動きやすい高分子材料で構成される場合に効果的である。
【0024】
図2及び
図6を参照しながら説明すると、ドライブシャフト134は、ローターシール230に固定されるか、又は、ローターシール230と一体化することができる。
図1乃至
図7を参照しながら説明すると、ドライブシャフト134は、ローターシール230の位置、ひいては加熱式ロータリーバルブ100を通る流路を制御するアクチュエーター718を固定できるよう、ローターシール230から本体第二端118の先まで伸びる。
【0025】
図2及び
図6を参照しながら説明すると、加熱式ロータリーバルブ100は、ローターシール第一面632及びステーター第二面206に近接して本体第一端116において細長本体112の内部又は外部に固定されるか、又は、ステーター102の内部又は外部に固定される発熱部材236を有する。
図6を参照しながら説明すると、発熱部材236は、本体第一端の側面604に施された外部溝602の中に設けることができる。発熱部材236は、公知の化学的または電気的な発熱部材であって良いが、外部からその温度を調節できる必要がある。実施形態の一つとしては、発熱部材236は電気エネルギーを供給するためのリード線250及びリード線252が接続される電気駆動式の発熱部材である。この発熱部材236は、電気を印加することによって発熱するものであり、電力、電流、電圧及び/又は抵抗を測定することによって温度を制御したり、熱電対、サーミスタ、抵抗温度検出器(RTD)又はその他の温度検出器を備えることで温度を制御したりする。発熱部材236は、コントローラに統合されるか又はコントローラとは別途設けられて電力を供給する電源に接続することができる。
【0026】
クロマトグラフィーに関連する部品が小型であるため、低質量及び高い熱伝達率が確保される。そのため、作動させる上で必要なサイズを維持しつつも低質量化が図れる。特に、ステーターコネクター108、これに関連するステーターポート210及びチャンネル606は、
外径360マイクロメートルの
チューブに適合する流体継手に合わせたサイズとする。低質量であることにより、オーブンの中の空気をもって加熱されるどころか直接的に加熱される。結果として、加熱式ロータリーバルブ100の内部容積が極端に小さいため、ステーター102を通過している試料に対する熱伝達が速まる。その結果、加熱式ロータリーバルブ100は、摂氏400度ほどの高い最大作動温度を実現し、また、回転距離が短いことにより、約125ミリ秒又は約250ミリ秒でローターシール230の位置を切り替えることができる。さらに、加熱式ロータリーバルブ100が低質量であることにより、毎分摂氏200度加熱することができ、また、素早く冷却することができる。その結果、試料を注入している間の試料の気化が最小限となり、また、キャリーオーバーも低減する。加えて、試料の量が40ナノリットルまたはそれ以下で済むようになる。
【0027】
加熱式ロータリーバルブ100は、小型、低質量、加熱及びスイッチングが迅速であるため、ガスクロマトグラフィーの液状注入における選択性を改善することができる。加熱式ロータリーバルブ100は操作が簡単でありながら、バルブ注入の問題点を改善すると共にシリンジ注入における問題点を排除する。
【0028】
カラム704やカラム804への試料の導入に関連するようなスタート信号(スタート指示)によって加熱式ロータリーバルブ100が作動すると、発熱部材236が加熱式ロータリーバルブ100に対して熱を供給し、発熱部材236から供給された熱を伝達する素材からなるステーター102、ドライブシャフト134または細長本体112を介して、ステンレス鋼といった金属からなるステーターポート210を加熱する。ここで、発熱部材236は、ステーターポート210を間接的に加熱するために用いられる。もっとも、ステーターポート210以外の部品は、ステーターポート210、ひいてはステーターポート210を流れる試料に対して熱を伝達するために直接的に加熱される。ステーターポート210は、試料に対する迅速な熱の伝達を確保するため、十分に小さい。加熱式ロータリーバルブ100の一連の操作においては、発熱部材236は、試料を加熱する必要がある時に作動され、試料をカラム704の温度まで迅速に気化させる。一方、試料を加熱する必要がないとき、特に試料の分析が行われていないときは、発熱部材236は作動されず、本体第一端116がオーブン712の周囲温度になるまで加熱式ロータリーバルブ100が冷却される。
【0029】
図1乃至
図3を参照しながら説明すると、細長本体112への熱の伝達を低減するために、細長本体112は、ステーター102から遠い位置に、細長本体112を内部ボア214から横方向に貫通する排熱口138を多数有することができる。
【0030】
図7を参照しながら説明すると、加熱式ロータリーバルブ100は、コントローラ702と共に加熱式ロータリーバルブシステムに統合することができる。コントローラ702は、カラム704を用いる分析が開始されるといったスタート信号(スタート指示)を受け取ると同時に、発熱部材236を作動させると共に、カラム704への試料の流れを許容するようなバルブ100の位置を取らせるようにアクチュエーター718を作動させる。
【0031】
図7を参照しながら説明すると、加熱式ロータリーバルブシステムは、クロマトグラフィーシステムを提供するために、改良されたコントローラ702、検出器に接続することができるクロマトグラフィーカラム704、試料供給源708、オーブン712及び温度センサー716と組み合わせることができる。このクロマトグラフィーシステムにおいて、コントローラ702はさらに、オーブン712内の温度センサー716からオーブンの温度に関する情報を受け取るように構成することができる。クロマトグラフィーカラム704は、吊り索720のようなものを用いてオーブン712内に設けることができ、カラムインレット706において加熱式ロータリーバルブ100に接続される。一方、試料供給源708も同様にオーブン712内に設けることができ、供給源アウトレット710において加熱式ロータリーバルブ100に接続される。加熱式ロータリーバルブ100は、ステーター第一面104及びステーターコネクター108だけがオーブン712の内部空間722に露出する一方で、本体第二端118及びドライブシャフト134の端がバルブアクチュエータ718と接続できるように十分にオーブン壁714から外へ突出するように、オーブン壁714を貫くように設けることができる。
【0032】
図8を参照しながら説明すると、加熱式ロータリーバルブ100は、代替形態のクロマトグラフィーシステムを提供するために、改良されたコントローラ802、検出器に接続することができるクロマトグラフィーカラム804及び試料供給源808と組み合わせることができる。この代替形態のクロマトグラフィーシステムにおいて、コンロトーラ802はさらに、加熱部材(加熱装置)と直接的または間接的に接触して加熱されるカラム804の温度を制御するように構成することができる。クロマトグラフィーカラム804は、カラムインレット806において加熱式ロータリーバルブ100に接続される。一方、試料供給源808は、供給源アウトレット810において加熱式ロータリーバルブ100に接続される。このように構成することで、加熱式ロータリーバルブ100及びカラム804は、携帯型のクロマトグラフィーシステムとして構成することができる。
【0033】
以上説明した加熱式ロータリーバルブ100によれば、複雑な分離法または二次元ガスクロマトグラフィー分離法において有用な、カラムの迅速なスイッチングが実現できる。
【0034】
さらに、加熱式ロータリーバルブ100によれば、ガスクロマトグラフィーシステムにおいて、
図9に示されるように2つのカラムを再循環させることで化合物の分離性が改善される。極小な内部容積及びステーターポート210の迅速な加熱は、試料供給源908からの試料成分を、第一カラム902及び第二カラム904を複数回行ったり来たり循環できることを許容する。これにより、マイクロフルイディクス又はディーンズスイッチングでは実現できなかった極めて高い分離性能を発揮することができる。加えて、検出器906に接続されたカラム904の下流における負の温度プログラミングを用いることにより、どんなピークであれその広がりが低減され、ピークの容量が拡大する。
【0035】
加えて、加熱式ロータリーバルブ100は、低質量、極小な内部容積、迅速なスイッチング及び高温度規制によって、広範囲用途の二次元ガスクロマトグラフィー(GCxGC)モジュレーターとして活用することができる。以上の説明から理解できるように、加熱式ロータリーバルブ100は、ダイヤフラムバルブよりも優れた性能を有し、マイクロフルイディクスよりも第二の保持時間が長く且つスイッチング時間が短く、そして、低い二次流量の使用及び微小な口径の二次カラムの使用が可能となる。
【0036】
上記明細書内で用いた用語及び表現は、あくまでも説明のためのものであって、決してその表現に限定するものではなく、また、その用語及び表現の使用は、図示され且つ説明された特徴と同等なものを排除することを意図したものではない。