特許第6124493号(P6124493)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6124493
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】内燃機関用回転電機およびそのステータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/52 20060101AFI20170424BHJP
   H02K 3/46 20060101ALI20170424BHJP
   H02K 3/50 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   H02K3/52 E
   H02K3/46 C
   H02K3/50 Z
【請求項の数】17
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-571772(P2016-571772)
(86)(22)【出願日】2016年5月27日
(86)【国際出願番号】JP2016002561
【審査請求日】2016年12月13日
(31)【優先権主張番号】特願2015-114905(P2015-114905)
(32)【優先日】2015年6月5日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599161580
【氏名又は名称】デンソートリム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(74)【代理人】
【識別番号】100170689
【弁理士】
【氏名又は名称】金 順姫
(72)【発明者】
【氏名】倉谷 義則
(72)【発明者】
【氏名】金光 憲太郎
(72)【発明者】
【氏名】水元 優一
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 辰哉
(72)【発明者】
【氏名】道明 正尚
【審査官】 三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−48908(JP,A)
【文献】 特開2015−46959(JP,A)
【文献】 特開2011−205817(JP,A)
【文献】 特開2012−29401(JP,A)
【文献】 特開2010−226832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/52
H02K 3/46
H02K 3/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコア(32)、前記ステータコアに装着されたインシュレータ(35)、および前記ステータコアに装着されたステータコイル(33)を備える内燃機関用回転電機のステータにおいて、
前記ステータの一方の端面において前記インシュレータに固定された端子(51)と、
前記ステータコイルから延び出し、前記端子に接続される複数のコイル端部(37)とを備え、
前記端子は、前記インシュレータの端面(42)から突出するように配置され、周方向に沿って配置された複数の接続部(52、352)を有し、
複数の前記コイル端部は、複数の前記接続部に分配されて対応付けられており、
複数の前記接続部のそれぞれは、前記ステータの径方向に面する板状であり、
複数の前記接続部のそれぞれは、前記径方向に面する面から突出しており、前記ステータの軸方向に沿って延びる突条(55)を有しており、
複数の前記接続部のそれぞれは、それに対応付けられた前記コイル端部であって前記突条と交差するように配置された前記コイル端部と、前記突条の頂部において、プロジェクション溶接によって接続されている内燃機関用回転電機のステータ。
【請求項2】
複数の前記接続部のそれぞれは、それに対応付けられた2つ以上の前記コイル端部と接続されている請求項1に記載の内燃機関用回転電機のステータ。
【請求項3】
ステータコア(32)、前記ステータコアに装着されたインシュレータ(35)、および前記ステータコアに装着されたステータコイル(33)を備える内燃機関用回転電機のステータにおいて、
前記ステータの一方の端面において前記インシュレータに固定された端子(51)と、
前記ステータコイルから延び出し、前記端子に接続される複数のコイル端部(37)とを備え、
前記端子は、前記インシュレータの端面(42)から突出するように配置された接続部(52、352)を有し、
前記接続部は、前記ステータの径方向に面する板状であり、
前記接続部は、前記径方向に面する面から突出しており、前記ステータの軸方向に沿って延びる突条(55)を有しており、
前記接続部は、前記突条と交差するように配置された複数の前記コイル端部と、前記突条の頂部において、プロジェクション溶接によって接続されている内燃機関用回転電機のステータ。
【請求項4】
ひとつの前記接続部に接続される複数の前記コイル端部は、前記ステータの軸方向に沿って積層して配置されている請求項2または請求項3に記載の内燃機関用回転電機のステータ。
【請求項5】
前記端子は、複数の前記接続部を接続しており、前記インシュレータに収容された連結部(57、557)を備える請求項1から請求項4のいずれかに記載の内燃機関用回転電機のステータ。
【請求項6】
前記連結部(57)は、前記ステータの周方向に沿って曲がっている板である請求項5に記載の内燃機関用回転電機のステータ。
【請求項7】
前記連結部(557)は、前記ステータの周方向に対する弦に沿って広がっている平板である請求項5に記載の内燃機関用回転電機のステータ。
【請求項8】
前記接続部と前記コイル端部とを含む複数の接続構造が、前記ステータの端面の上に、前記ステータの周方向に沿って配置されている請求項1から請求項7のいずれかに記載の内燃機関用回転電機のステータ。
【請求項9】
前記コイル端部は、前記接続部の径方向外側に配置されている請求項1から請求項8のいずれかに記載の内燃機関用回転電機のステータ。
【請求項10】
前記コイル端部は、前記接続部に巻き付くように配置されている請求項1から請求項9のいずれかに記載の内燃機関用回転電機のステータ。
【請求項11】
前記インシュレータは、前記ステータコイルと前記接続部との間において、前記コイル端部を保持する保持部(47、48)を備える請求項1から請求項10のいずれかに記載の内燃機関用回転電機のステータ。
【請求項12】
前記コイル端部は、前記保持部においてL字型に曲げられている請求項11に記載の内燃機関用回転電機のステータ。
【請求項13】
前記インシュレータは、前記端面を囲む側壁(43、44)を有する端子台(41)を備える請求項1から請求項12のいずれかに記載の内燃機関用回転電機のステータ。
【請求項14】
さらに、前記接続部および前記コイル端部の少なくとも一部を覆い、前記接続部および前記コイル端部の一部を保護する保護材(59)を備える請求項1から請求項13のいずれかに記載の内燃機関用回転電機のステータ。
【請求項15】
複数の前記コイル端部および前記端子は、前記ステータコイルの中性点(NT)を提供する請求項1から請求項14のいずれかに記載の内燃機関用回転電機のステータ。
【請求項16】
前記コイル端部はアルミニウム製またはアルミニウム合金製である請求項1から請求項15のいずれかに記載の内燃機関用回転電機のステータ。
【請求項17】
請求項1から請求項16のいずれかに記載の内燃機関用回転電機のステータと、
前記ステータと対向して配置されたロータとを備える内燃機関用回転電機。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2015年6月5日に出願された日本特許出願2015−114905号を基礎出願とするものであり、基礎出願の開示内容は参照によってこの出願に組み込まれている。
【技術分野】
【0002】
この明細書における開示は、内燃機関用回転電機およびそのステータに関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1および特許文献2は、内燃機関用回転電機を開示する。内燃機関用回転電機は、多相巻線を有する。特許文献1に記載されるように、ステータの上に、結線のための端子が設けられる場合がある。従来技術は、コイルの端部と、端子との接続に、はんだ付けを用いる。さらに、はんだ付けの前に、端子の一部を曲げる加工(かしめ)によって、コイルの端部を予備的に固定している。曲げ加工は、複数のコイルの端部の束を固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−63233号公報
【特許文献2】特開2013−27252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の曲げ加工では、複数のコイルの端部を、安定的に固定することが困難である。別の観点では、従来技術の曲げ加工では、端子が変形するから、インシュレータへの端子の固定が不安定になる場合がある。さらに、別の観点では、端子の設置と、接続作業とのために、接続構造の体格が大型化する場合がある。上述の観点において、または言及されていない他の観点において、内燃機関用回転電機およびそのステータにはさらなる改良が求められている。
【0006】
ひとつの目的は、改良された内燃機関用回転電機およびそのステータを提供することである。
【0007】
他のひとつの目的は、プロジェクション溶接によって複数のコイル端部を接続可能な内燃機関用回転電機およびそのステータを提供することである。
【0008】
さらに他のひとつの目的は、コイル端部と端子との間における小型の接続構造を提供することができる内燃機関用回転電機のステータ、および内燃機関用回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を示すものであって、技術的範囲を限定するものではない。
【0010】
ひとつの態様により、ステータコア(32)、ステータコアに装着されたインシュレータ(35)、およびステータコアに装着されたステータコイル(33)を備える内燃機関用回転電機のステータが提供される。内燃機関用回転電機のステータは、ステータの一方の端面においてインシュレータに固定された端子(51)と、ステータコイルから延び出し、端子に接続される複数のコイル端部(37)とを備える。端子は、インシュレータの端面(42)から突出するように配置され、周方向に沿って配置された複数の接続部(52、352)を有する。複数のコイル端部は、複数の接続部に分配されて対応付けられている。複数の接続部のそれぞれは、ステータの径方向に面する板状であり、複数の接続部のそれぞれは、径方向に面する面から突出しており、ステータの軸方向に沿って延びる突条(55)を有している。複数の接続部のそれぞれは、それに対応付けられたコイル端部であって突条と交差するように配置されたコイル端部と、突条の頂部において、プロジェクション溶接によって接続されている。
【0011】
この内燃機関用回転電機のステータによると、コイル端部は、突条と交差するように配置されているから、コイル端部と、突条との間に、プロジェクション溶接に適した接触が得られる。複数の接続部は、ステータの周方向に沿って配置されているから、プロジェクション溶接のための作業空間が周方向に沿って分散的に配置される。よって、ステータの端面を利用して、複数のコイル端部をプロジェクション溶接を利用して互いに接続することができる。
【0012】
ひとつの態様により、ステータコア(32)、ステータコアに装着されたインシュレータ(35)、およびステータコアに装着されたステータコイル(33)を備える内燃機関用回転電機のステータが提供される。内燃機関用回転電機のステータは、ステータの一方の端面においてインシュレータに固定された端子(51)と、ステータコイルから延び出し、端子に接続される複数のコイル端部(37)とを備え、端子は、インシュレータの端面(42)から突出するように配置された接続部(52、352)を有し、接続部は、ステータの径方向に面する板状であり、接続部は、径方向に面する面から突出しており、ステータの軸方向に沿って延びる突条(55)を有しており、接続部は、突条と交差するように配置された複数のコイル端部と、突条の頂部において、プロジェクション溶接によって接続されている。
【0013】
この内燃機関用回転電機のステータによると、複数のコイル端部は、突条と交差するように配置されているから、複数のコイル端部と、突条との間に、プロジェクション溶接に適した接触が得られる。よって、複数のコイル端部をプロジェクション溶接を利用して互いに接続することができる。
【0014】
ひとつの態様により、上記ステータを備える内燃機関用回転電機が提供される。コイル端部のための小型の接続構造を有する内燃機関用回転電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る内燃機関用回転電機の断面図である。
図2】ステータコイルの回路図である。
図3】ステータの斜視図である。
図4図3の一部を拡大して示す斜視図である。
図5】ステータの一部を拡大して示す平面図である。
図6】端子の斜視図である。
図7】製造方法を示すフローチャートである。
図8】第2実施形態に係る端子を示す斜視図である。
図9】第3実施形態に係る端子を示す斜視図である。
図10】第4実施形態に係る端子を示す斜視図である。
図11】第5実施形態に係るステータの一部を拡大して示す平面図である。
図12】端子の斜視図である。
図13】接続後のコイル端部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、内燃機関用回転電機10(以下、単に回転電機という)の断面図である。回転電機10は、電気的な負荷(LOAD)11と電気的に接続されている。負荷11は、電気回路と、バッテリとを含む場合がある。回転電機10と負荷11との間には、両者を電気的に接続する電力線11aが設けられている。回転電機10の用途の一例は、車両用の内燃機関12によって駆動される発電機である。回転電機10は、例えば、二輪車に利用することができる。
【0018】
回転電機10は、内燃機関12に組み付けられている。内燃機関12は、ボディ13と、ボディ13に回転可能に支持され、内燃機関12と連動して回転する回転軸14とを有する。回転電機10は、ボディ13と回転軸14とに組み付けられている。ボディ13は、内燃機関12のクランクケース、ミッションケースなどの構造体である。回転軸14は、内燃機関12のクランク軸、またはクランク軸と連動する回転軸である。回転軸14は、内燃機関12が運転されることによって回転し、回転電機10を発電機として機能させるように駆動する。
【0019】
回転電機10は、ロータ21と、ステータ31とを有する。ロータ21は、界磁子である。ステータ31は、電機子である。ロータ21は、全体がカップ状である。ロータ21は、その開口端をボディ13に向けて位置付けられる。ロータ21は、回転軸14の端部に固定される。ロータ21と回転軸14とは、キー嵌合などの回転方向の位置決め機構を介して連結されている。ロータ21は、固定ボルト25によって回転軸14に締め付けられることによって固定されている。ロータ21は、回転軸14とともに回転する。ロータ21は、永久磁石によって界磁を提供する。
【0020】
ロータ21は、カップ状のロータコア22を有する。ロータコア22は、内燃機関12の回転軸14に連結される。ロータコア22は、回転軸14に固定される内筒と、内筒の径方向外側に位置する外筒と、内筒と外筒との間に拡がる環状の底板とを有する。ロータコア22は、後述する永久磁石のためのヨークを提供する。ロータコア22は、磁性金属製である。
【0021】
ロータ21は、ロータコア22の内面に配置された永久磁石23を有する。永久磁石23は、外筒の内側に固定されている。永久磁石23は、径方向内側に配置された保持カップ24によって軸方向および径方向に関して固定されている。保持カップ24は、薄い非磁性金属製である。保持カップ24は、ロータコア22に固定されている。
【0022】
永久磁石23は、複数のセグメントを有する。それぞれのセグメントは、部分円筒状である。永久磁石23は、その内側に、複数のN極と複数のS極とを提供する。永久磁石23は、少なくとも界磁を提供する。永久磁石23は、12個のセグメントによって、6対のN極とS極、すなわち12極の界磁を提供する。セグメントの数、および/または磁極の数は、他の数でもよい。
【0023】
ステータ31は、環状の部材である。ステータ31は、ロータ21とボディ13との間に配置されている。ステータ31は、回転軸14とロータコア22の内筒とを受け入れることができる貫通穴を有する。ステータ31は、ロータ21の内面とギャップを介して対向する外周面を有する。外周面には、複数の磁極が配置されている。ステータ31は、例えば、18個の磁極を有する。磁極の数は、他の数でもよい。これら磁極は、ロータ21の界磁と対向して配置されている。ステータ31は、電機子巻線を有する。ステータ31は、多相の電機子巻線を有する。ステータ31は、ボディ13に固定される。ステータ31は、複数の磁極と、複数の三相巻線とを有する三相多極ステータである。
【0024】
ステータ31は、ステータコア32を有する。ステータコア32は、内燃機関12のボディ13に固定されることによってロータ21の内側に配置される。ステータコア32は、永久磁石23の内面と対向する複数の磁極を径方向外側に形成する。ステータコア32は、複数の磁極を形成するように所定の形状に成形された電磁鋼板または鋼板などの磁性材料を積層することにより形成されている。
【0025】
ステータ31は、ステータコア32に巻回されたステータコイル33を有する。ステータコイル33は、電機子巻線を提供する。
【0026】
ステータ31とボディ13とは、固定ボルト34を介して連結されている。ステータ31は、複数の固定ボルト34によってボディ13に締め付けられることによって固定されている。ステータ31は、ボディ13から延び出すボス部13aに固定されている。ボス部13aは、筒状の部分である。ボス部13aは、ボディ13と一体の金属製の部材である。
【0027】
ステータコア32とステータコイル33との間には絶縁材料製のインシュレータ35が配置されている。インシュレータ35は、樹脂製である。インシュレータ35は、ボビンとも呼ばれる。インシュレータ35の一部は、磁極に隣接して位置づけられることによって、ボビンのフランジ部を提供する。インシュレータ35の一部は、磁極の軸方向における両側に配置されている。インシュレータ35は、ステータコア32の径方向内側の部位にも露出している。インシュレータ35は、ステータコア32の径方向内側の部位において、筒状部分を提供している。以下の説明では、多くの場合、インシュレータ35は、筒状部分を指す。
【0028】
図2において、ステータコイル33は、多相巻線である。ステータコイル33は、三相巻線である。ステータコイル33は、スター結線されている。ステータコイル33は、複数の相コイルu1、u2、v1、v2、w1、w2を有する。電気的に同相の複数の相コイルu1、u2は並列接続されている。複数の相コイルv1、v2も並列接続されている。複数の相コイルw1、w2も並列接続されている。複数の相コイルu1、u2、v1、v2、w1、w2は、一組の三相巻線(u1、u2)−(v1、v2)−(w1、w2)を形成するように接続されている。よって、ステータコイル33は、3つの出力端PTと、ひとつの中性点NTとを有する。中性点NTは、6つのコイル端部を接続する。なお、複数の相コイルu1、u2、v1、v2、w1、w2は、二組の三相巻線u1−v1−w1、u2−v2−w2を形成するように接続されてもよい。
【0029】
図3において、中性点NTは、複数のコイル端部37と、端子台41と、端子51とによって提供されている。コイルは絶縁被覆によって被覆された単線導体である。コイルを形成する導線は、アルミニウム製またはアルミニウム合金製である。コイル端部37は、コイルを形成する導線の端部である。中性点NTでは、6本のコイル端部37が電気的に接続される。
【0030】
端子台41は、インシュレータ35の上に設けられている。端子台41は、インシュレータ35を形成する樹脂材料によって、インシュレータ35と一体的に成形されている。端子台41は、電気絶縁性の樹脂材料によって形成されている。端子台41は、インシュレータ35の筒状部分に形成されている。端子台41は、筒状部分の径方向内側に突出するように形成されている。端子台41は、筒状部分の一部の弧と、この弧に対応する弦とで囲まれる範囲に広がっている。
【0031】
端子台41は、端子51を固定するための基台を提供する。端子台41は、端子51を固定し、保持するための固定部とも呼ばれる。端子台41は、ステータコア32の端面から、軸方向に突出している。端子台41は、ステータコイル33の端面とほぼ同じ高さに突出している。端子台41は、ステータコイル33から延び出すコイル端部37を受け入れる。端子台41は、ステータコイル33の軸方向端面の高さから、径方向に沿って、コイル端部37を受け入れることができる高さを与えられている。
【0032】
図4および図5において、端子台41は、ステータ31の上において軸方向に面する端面42を有する。端面42は、ステータ31の端面上において、1/3円周以下の円弧に沿って広がっている。端面42は、弧と弦とで囲まれた弓形である。なお、端子台41が広がる周方向の範囲は、より広い範囲でもよい。例えば、端子台41は、1/2円周以下の範囲に広がっていてもよい。
【0033】
端子台41は、端面42を囲む側壁43、44を有する。側壁43、44は、端面42からステータ31の軸方向に延び出している。側壁43、44は、ステータ31の軸方向の一端から、軸方向に凹む凹部を区画形成する。側壁43、44は、弦に沿って延びる側壁43と、弧に沿って延びる側壁44とを有する。側壁43は、インシュレータ35の径方向内側の縁を提供する。側壁44は、ステータコイル33のためのボビンの内側のフランジを提供する。側壁43は、端子台41の内壁である。側壁44は、端子台41の外壁である。端面42は、凹部の底面を提供している。
【0034】
側壁44の頂は、ステータコイル33から、ステータコイル33の軸方向端面とほぼ平行に、かつ径方向に沿って、コイル端部37を受け入れるために、ステータコイル33の軸方向端面とほぼ同じ高さに位置づけられている。端面42からの側壁43、44の高さは、保護材の流出を阻止できるように設定されている。
【0035】
端子台41は、端子51を受け入れるスリット45を有する。スリット45は、端面42に開口している。スリット45は、ステータコア32の周方向におおよそ沿って延びている。スリット45は、端子51の形状に対応して、やや多段に折れ曲がった形状で、周方向に沿って延びている。スリット45は、端子51を受け入れるために、軸方向に所定の深さを有する。スリット45の軸方向深さは、端子51の接続部52を端面42から突出させるように設定されている。
【0036】
端子台41は、コイル端部37を保持する保持部47、48を有する。保持部47、48は、ステータコイル33と接続部52との間において、コイル端部37を保持する。保持部47、48は、コイル端部37を案内する案内部でもある。保持部47、48は、その表面に沿ってコイル端部37が巻き付けられる巻き付け部でもある。また、保持部47、48は、コイル端部37が挿入される細長い隙間を区画形成する部材でもある。
【0037】
保持部47、48は、端子台41の径方向外側に配置されている。保持部47と保持部48とは、ステータコア32の周方向に沿って並んで配置されている。保持部47、48は、側壁44の上に設けられている。保持部47、48は、端面42から側壁44より高く軸方向に延び出している。保持部47、48は、軸方向に延びる柱状の部材として形成されている。保持部47、48は、コイル端部37を緩やかに曲げるように、角が丸い柱状である。保持部47と、保持部48との間には、コイル端部37を受け入れ可能な隙間が区画形成されている。隙間は、コイル端部37を受け入れ可能な周方向幅を有する。隙間の幅は、保持部47、48をやや変形させながら、コイル端部37を受け入れるように設定されている。隙間は、少なくとも2本のコイル端部37、37を軸方向に積層した状態で受け入れ可能な軸方向深さを有する。
【0038】
保持部47は、保持部48より太い。保持部47は、コイル端部37の曲げに関して内側に位置している。保持部47は、コイル端部37を曲げるためのコアとして利用される。保持部47は、曲げられたコイル端部37の弾性力に抗して、曲げられたコイル端部37の形状を維持するために貢献する。保持部48は、コイル端部37の曲げに関して外側に位置している。保持部48は、コイル端部37を保持部47の上に保持する外壁を提供する部材として機能する。保持部48は、曲げられたコイル端部37の弾性力に抗して、曲げられたコイル端部37の形状を維持するために貢献する。
【0039】
端子台41は、複数組の保持部47、48を有する。図示の例では、端子台41は、三組の保持部47、48を有する。ひとつの保持部47、48が2本のコイル端部37を保持する。
【0040】
端子51は、導電性の金属製である。端子51は、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄系合金、銅、黄銅などによって提供することができる。端子51の材料は、そこに接続される導線、例えば、コイル端部37の材料に応じて選定される。例えば、端子51の材料は、コイル端部37との組み合わせに起因する腐食を抑制するように選定される。コイル端部37がアルミニウムまたはアルミニウム合金である場合、端子51には、アルミニウム、アルミニウム合金、または鉄系合金が用いられる。端子51にアルミニウムまたはルミニウム合金と、銅とが接続される場合、端子51は鉄系合金によって提供される場合がある。
【0041】
端子51は、複数の接続部52を有する。図示の例では、端子51は、3つの接続部52を有する。ひとつの接続部52は、少なくともひとつのコイル端部37と電気的に接続されている。ひとつの接続部52は、複数のコイル端部37と電気的に接続されている。図示の例では、ひとつの接続部52は、2つのコイル端部37と電気的に接続されている。
【0042】
ひとつの接続部52は、板状である。接続部52は、ステータ31の軸方向に沿って端面42から延び出している。接続部52は、ステータ31の周方向または接線方向に沿って広がっている。接続部52は、ベース部分53を有する。ベース部分53は、平板状である。ベース部分53は、やや湾曲した板状に形成されてもよい。
【0043】
接続部52は、ステータ31の径方向に向けて突出したプロジェクション部分を有する。プロジェクション部分は、接続部52の一部に湾曲部分として形成されている。プロジェクション部分は、ベース部分53と隣接して設けられている。プロジェクション部分の周方向の両側にベース部分53が設けられている。プロジェクション部分は、コイル端部37が配置される方向へ突出している。プロジェクション部分は、軸方向に沿って長く延びている。
【0044】
プロジェクション部分は、凹溝54と、突条55とによって形成されている。凹溝54および突条55は、プレス加工によって形成されている。凹溝54は、径方向内側から径方向外側に向けて凹んでいる。凹溝54は、ステータ31の軸方向に沿って延びている。突条55は、径方向内側から径方向外側に向けて突出している。突条55は、ステータ31の軸方向に沿って延びている。突条55によってプロジェクション部分が提供されている。
【0045】
接続部52は、軸方向の先端に先端縁56を有する。先端縁56は、鋭い角部を減らすように丸い縁として形成されている。先端縁56は、ベース部分53の先端において、丸い肩部としてあらわれている。
【0046】
複数の接続部52は、ステータ31の周方向に沿って配置されている。複数の接続部52は、複数の突条55の頂部を、ステータ31の周方向に沿って位置づけるように配置されている。複数の突条55の頂部は、ステータ31と同心の円周CPの上に位置づけられている。複数の突条55のそれぞれの突出方向は、円周CPの径外方向を指向している。
【0047】
ひとつの接続部52は、一組の保持部47、48と、対応付けられている。接続部52は、保持部47、48より径方向内側に配置されている。接続部52は、対応付けられた保持部47、48から、隙間を介して、径方向内側に配置されている。この隙間は、コイル端部37を配置することができる大きさを有する。図示の例では、保持部47の径方向内側縁と、接続部52の径方向外側縁、すなわち突条55の頂部との間に、径方向隙間RGが区画形成されている。径方向隙間RGは、コイル端部37を配置可能な大きさである。
【0048】
接続部52は、対応付けられた保持部47、48の径方向内側において、周方向にずれた位置に配置されている。周方向に関する接続部52の位置と、これに対応付けられた保持部47、48の位置とは、保持部47、48の間に径方向に沿ってコイル端部37を配置することができるように、周方向に関してずれている。周方向に関する接続部52の位置と、これに対応付けられた保持部47、48の位置とは、保持部47、48の間を通過したコイル端部37を接続部52の径方向外側面に接触させることができるように設定されている。周方向に関する接続部52の位置と、これに対応付けられた保持部47、48の位置とは、径方向に関して接続部52と保持部47、48とが重複することがないように設定されている。
【0049】
図6において、端子51は、連結部57を有する。連結部57は、複数の接続部52を連結する。連結部57は、スリット45内に収容されている。連結部57の端面は、スリット45の開口端に位置づけられている。端子51は、接続部52を露出させるように、スリット45内に挿入され、固定されている。端子51は、スリット45内に圧入されている。図示の例では、連結部57がスリット45内に圧入されることによって、端子51は端子台41に固定されている。接続部52は、連結部57から突出して延び出している。複数の接続部52は、互いに離れて位置づけられている。接続部52は、接続片とも呼びうる独立した形状を与えられている。
【0050】
図4および図5に戻り、コイル端部37は、ステータコイル33から径方向内側に向けて配置されている。コイル端部37は、径方向外側から、保持部47、48の間を通り、径方向内側へ突出するように配置されている。コイル端部37は、保持部47、48より径方向内側において、ステータ31の端面に沿って延びるように配置されている。コイル端部37は、保持部47の外面におよそ1/4周にわたって巻き付けられることによって、ほぼ90度曲げられている。コイル端部37は、保持部47に沿って曲げ部を有している。コイル端部37は、曲げ部より先において、ステータ31の周方向に沿って延びるように配置されている。コイル端部37は、保持部47と接続部52との間の隙間を通るように配置されている。コイル端部37は、保持部47、48の前後において、L字型に曲げられている。コイル端部37は、保持部47、48の間を通過した後に、接続部52の径方向外側に向けて曲げられている。コイル端部37は、保持部47と接続部52とに接触するように配置されている。
【0051】
コイル端部37は、その先端部分に、特に接続部52と接触する所定範囲に、絶縁被覆が剥かれたストリップ部分38を有する。ストリップ部分38は、接続部52の径方向外側に位置づけられている。ストリップ部分38は、保持部47、48よりも径方向内側に位置づけられている。ストリップ部分38は、接続部52に電気的に接続されている。ストリップ部分38と接続部52とは、プロジェクション溶接によって溶接されている。ストリップ部分38は、接続部52のプロジェクション部分の頂部に溶接されている。
【0052】
保持部47、48の間には、複数のコイル端部37、37が配置されている。複数のコイル端部37、37は、保持部47、48の間において、ステータ31の軸方向に積層された状態で配置されている。図示の例では、2本のコイル端部37、37が平行に配置されている。複数のコイル端部37、37は、同じ形状を与えられている。複数のコイル端部37、37は、接続部52の径方向外側において、ステータ31の軸方向に積層されるように配置される。プロジェクション部分の長手方向は、ステータ31の軸方向に延びている。複数のコイル端部37、37は、プロジェクション部分の長手方向に沿って並ぶように配置される。複数のコイル端部37、37は、共通の接続部52に接続されている。
【0053】
図中には、複数の接続構造が図示されている。ひとつの接続構造は、複数のコイル端部37と、保持部47、48と、ひとつの接続部52とを有する。複数の接続構造は、ステータ31の端面の上に、ステータ31の周方向に沿って配置されている。図示される3つの接続構造によって中性点NTが提供される。
【0054】
それぞれの接続構造は、保護材59によって覆われている。保護材59は、流動性がある状態で接続構造に付与され、硬化されている。保護材59は、少なくともストリップ部分38および接続部52を覆う。図示の例では、保護材59は、3つの接続構造を覆っている。保護材59は、端面42の上に到達している。保護材59の一部は、端面42の上にも広がっている。保護材59の一部は、側壁43、44に到達している。側壁43、44は、保護材59の流出を阻止する。側壁43、44は、保護材59を端子台41の上に保持する。側壁43、44は、端子台41の上に保護材59を溜める容器部分を区画形成している。先端縁56の丸い形状は、保護材59の厚さが薄くなりすぎることを阻止する。
【0055】
図5には、回転電機10を製造するための製造装置の一部が図示されている。製造装置は、プロジェクション溶接のための溶接機(WELD)61を備える。溶接機61は、一対の電極62、63を備える。電極62、63は、接続構造の径方向外側に位置づけられる外側の電極62と、接続構造の径方向内側に位置づけられる内側の電極63とを含む。電極62、63は、溶接対象物であるコイル端部37と接続部52とを挟み、接触させるために利用される。電極62、63は、コイル端部37と接続部52とに通電し、溶接するためにも利用される。図中には、製造方法の中における電極62、63の移動の過程が破線によって図示されている。
【0056】
製造装置は、電極62、63、および端子51のための移動装置(INDEX)65を備える。移動装置65は、電極62、63を、待機位置と、図示される作業位置との間で移動させる。作業位置において、移動装置65は、電極62、63を、図示される閉位置と、開位置との間で移動させる。図中には、開閉方向が径方向の矢印によって示されている。移動装置65は、電極62、63と端子51との間の相対的な位置関係を変化させる。例えば、移動装置65は、ステータ31を回転させることによって、電極62、63を、複数の接続構造の上に順に移動させる。図中には、相対的な回転移動が、周方向の矢印によって示されている。移動装置65は、電極62、63を支持するロボットアーム、およびステータ31を回転させるインデックステーブルなど多様な機器によって提供することができる。
【0057】
閉位置において、電極62、63は、ステータ31の径方向に沿って互いに接近するように移動され、コイル端部37と接続部52とを締め付ける。開位置において、電極62、63は、ステータ31の径方向に沿って互いに離れるように移動され、コイル端部37および接続部52から離れる。電極62、63は、ステータ31の部分と干渉することなくステータ31の周方向に移動できる位置まで離される。
【0058】
複数のコイル端部37のうち、最もステータ31に近い部分は、ステータ31の軸方向の表面よりも高く離れて位置している。言い換えると、コイル端部37のステータ31に最も近い面は、ステータコイル33の軸方向表面よりも高く離れて位置している。さらに、接続部52は、ステータ31の軸方向の表面よりも高く離れるように延び出している。言い換えると、接続部52は、ステータコイル33の軸方向表面よりも高く離れて位置している。このような配置は、電極62、63とステータ31との干渉を回避するために貢献している。
【0059】
一方で、ボディ13またはロータ21との干渉を避けるために、接続部52の突出量は小さいことが望ましい。ステータ31は、コイル端部37および接続部52のステータ31からの突出高さを抑制するように構成されている。ステータコイル33は、径方向外側において太く、径方向内側において細く巻かれている。ステータコイル33は、ひとつの磁極の周囲において、集中巻きされる場合がある。ステータコイル33は、ひとつの磁極の周囲に、複数の層をなすように巻かれている。ステータコイル33は、径方向内側の層数が、径方向外側の層数より少なくなるように巻かれている。この結果、ステータコイル33の径方向内側における軸方向の厚さは、径方向外側における軸方向の厚さより小さい。この構成は、ステータ31の一方の端面において、径方向内側の高さを径方向外側の高さより低くすることを可能とする。端子51は、ステータ31の径方向内側、特にステータコイル33より径方向内側に配置されているから、ステータ31の端面の上における比較的低い位置に設けられる。これにより、ステータ31の端面上における接続部52の高さが抑制される。さらに、ステータコイル33の径方向内側における細い部分、言い換えると低い部分は、電極62が位置づけられる部分でもある。よって、ステータコイル33の形状は、接続部52の高さを抑制しながら、プロジェクション溶接を可能とするために貢献する。
【0060】
製造装置は、電極62、63の開閉移動と、電極62、63とステータ31との相対的な回転方向の移動とによって、複数の接続構造における接続作業を順に遂行する。
【0061】
図7は、回転電機10の製造方法を示すフローチャートである。製造方法180は、ステータ31の製造方法でもある。ステップ181は、部品を製造する工程である。このステップでは、ステータコア32、インシュレータ35、および端子51が製造される。
【0062】
ステップ182は、端子51をインシュレータ35に固定する工程である。端子51は、インシュレータ35がステータコア32に装着された後に、またはインシュレータ35がステータコア32に装着される前に、インシュレータ35のスリット45に挿入され、固定される。ステップ183は、ステータコイル33を巻く工程である。この工程の前に、ステータコア32にインシュレータ35が装着される。ステータコイル33は、インシュレータ35の上に巻き付けられる。端子51は、この巻線工程の後にインシュレータ35に固定されてもよい。
【0063】
ステップ184は、コイル端部37にストリップ部分38を形成する工程である。ステップ185は、コイル端部37を図示される形状に配置する工程である。この工程は、コイル端部37を接続部52に隣接するように予備的に位置づける予備工程とも呼ばれる。この構成は、保持部47、48と接続部52とによって、コイル端部37を規定の位置に位置づける仮留め工程とも呼ばれる。
【0064】
ステップ185において、コイル端部37は、まず、ステータコイル33から、保持部47、48の間を通るように配置される。保持部47、48の間には、2本のコイル端部37が配置される。次に、コイル端部37は、保持部47に沿ってL字型に曲げられる。この曲げ工程において、コイル端部37は、接続部52の径方向外側に位置づけられる。このとき、コイル端部37は、弾性変形しながら接続部52の径方向外側に位置づけられる。この結果、コイル端部37は、自らの弾性によって接続部52に向けて押し付けられる。また、コイル端部37は、自らの弾性によって、保持部47、48と接続部52との間において、規定の位置に位置付けられる。ステップ185は、3つの接続構造のそれぞれにおいて実行される。
【0065】
ステップ186は、電極62、63を待機位置から作業位置に移動させる移動工程である。例えば、電極62、63は、ロボットアームによって規定の作業位置に位置付けられる。ステップ186では、電極62、63は、開位置にある。電極62、63は、接続作業が実行されるべきひとつの接続構造の径方向両側に配置される。
【0066】
ステップ187は、電極62、63を閉じる工程である。電極62、63が閉じられることにより、接続作業の対象となっている複数のコイル端部37と接続部52とが電極62、63の間において締め付けられる。
【0067】
ステップ188は、電極62、63にプロジェクション溶接のための電流を流すことによりプロジェクション溶接を実行する工程である。ステップ188により、複数のコイル端部37と接続部52とが溶接される。ここでは、1回のプロジェクション溶接、すなわち通電によって複数のコイル端部37がひとつの接続部52の上に溶接される。
【0068】
ステップ189は、電極62、63を開く工程である。電極62、63は、ステータ31が回転されても、ステータ31の部品に干渉しない位置まで開かれる。
【0069】
ステップ190は、接続構造の数に対応するn回の溶接が完了したか否かを判定する工程である。ステップ190は、すべての接続構造における溶接作業が完了したか否かを判定する判定部を提供する。すべての接続構造における溶接作業が完了していない場合、NOに分岐し、ステップ191へ進む。すべての接続における溶接作業が完了した場合、YESに分岐しステップ192へ進む。
【0070】
ステップ191は、電極62、63と、ステータ31とを相対的に回転させる工程である。ここでは、電極62、63を、他の接続構造の径方向外側および内側に移動させるように、相対的な回転量が設定されている。これにより、電極62、63は、他の接続構造の径方向外側と内側とに移動する。ステップ191の後、再びステップ187が実行される。ステップ187−191の工程がすべての接続構造に対して繰り返される。この結果、複数の接続構造における溶接作業が順に実行される。しかも、電極62、63の開閉と、電極62、63およびステータ31(端子51)の間の相対回転とによって、複数の接続構造に対する溶接作業が実行される。
【0071】
ステップ192は、電極62、63を作業位置から待機位置へ移動させる工程である。ステップ186−192の工程により、中性点NTのための電気的な接続作業が実行される。ステップ186−192は、中性点NTのための溶接工程を提供する。
【0072】
ステップ193は、接続構造に保護材59を付与する工程である。保護材59は、複数の接続構造の帯電部を覆うように付与される。保護材59は、付与時には比較的低粘度であり、付与後に硬化する樹脂材料である。例えば、保護材59は、接続構造の軸方向先端から滴下される。保護材59は、接続構造における、少なくともストリップ部分38および接続部52の表面を覆うように流れ、それらの上に絶縁皮膜を形成する。保護材59の一部は、端面42の上に到達する。余剰の保護材59は、側壁43、44によって堰き止められる。
【0073】
以上に述べた実施形態によると、ステータコア32、ステータコア32に装着されたインシュレータ35、およびステータコア32に装着されたステータコイル33を備える内燃機関用回転電機のステータが提供される。内燃機関用回転電機のステータ31は、ステータ31の一方の端面においてインシュレータ35に固定された端子51と、ステータコイル33から延び出し、端子51に接続される複数のコイル端部37とを備える。端子51は、インシュレータ35の端面42から突出するように配置され、周方向に沿って配置された複数の接続部52を有する。複数のコイル端部37は、複数の接続部52に分配されて対応付けられている。複数の接続部52のそれぞれは、ステータ31の軸方向に沿って延びる突条55を有している。複数の接続部52のそれぞれは、それに対応付けられたコイル端部37であって突条55と交差するように配置されたコイル端部37と、突条55の頂部において、プロジェクション溶接によって接続されている。
【0074】
コイル端部37は、突条55と交差するように配置されているから、コイル端部37と、突条55との間にプロジェクション溶接に適した接触が得られる。複数の接続部52は、ステータ31の周方向に沿って配置されているから、プロジェクション溶接のための作業空間が周方向に沿って分散的に配置される。よって、ステータ31の端面を利用して、複数のコイル端部37をプロジェクション溶接を利用して互いに接続することができる。
【0075】
コイル端部37と端子51とは、プロジェクション溶接によって接続される。プロジェクション溶接は、はんだ付けに比べると、小型の接続構造を可能とする。はんだ付けは、フラックスの塗布、フラックスの除去のための洗浄を必要とする場合がある。このため、はんだ付けが採用される場合、接続構造の周囲には、作業のための広く空間が必要となる。これに対して、プロジェクション溶接を用いることにより、狭い空間に接続構造を配置することができる。
【0076】
複数のコイル端部37、すなわち複数のコイル素線が、ひとつの接続部52に接続される。複数のコイル端部37が一箇所で接続されるから、小型の接続構造が提供される。複数のコイル端部37は、軸方向に積層して配置される。言い換えると、複数のコイル端部37は、軸方向に関して上下に配置される。しかも、複数のコイル端部37は、軸方向に配置されたまま、接続部52に接触する。このような配置も、接続構造の小型化に貢献する。
【0077】
接続部52は、軸方向に長手方向をもつ突条55を備える。突条55は、複数のコイル端部37と接触する。突条55は、プロジェクション溶接のために利用される。この結果、ステータ31上の狭い範囲において複数のコイル端部37との電気的な接続が提供される。
【0078】
複数のコイル端部37は、保持部47、48によって案内される。複数のコイル端部37は、保持部47、48によって規定の位置、および規定の形状に保持される。これにより、コイル端部37を仮留めする作業を正確に実行できる。しかも、保持部47、48においても、複数のコイル端部37が軸方向に配置されるから、小型の接続構造が提供される。
【0079】
コイル端部37は、保持部47を利用して、L字型に曲げられる。このため、コイル端部37を規定の形状に加工することができる。さらに、コイル端部37がL字型に曲げられることにより、コイル端部37は、ステータ31の周方向に沿って延びる。この結果、コイル端部37と接続部52との接触部分は、ステータ31上の径方向外側の部位に配置される。
【0080】
突条55の突出軸は、ステータ31の径方向に沿って延びている。また、複数の接続構造は、ステータ31の周方向に沿って分散的に配置されている。これにより、プロジェクション溶接のための電極62、63の移動方向を径方向に設定することができる。これにより、電極62、63の開閉と、相対的な回転移動とによって、複数の接続構造における接続作業を順に実行することができる。しかも、突条55は、径方向外側に向けて突出しており、コイル端部37は、接続部52の径方向外側に配置される。この配置も、径方向外側における広い空間の利用を可能とする。
【0081】
ひとつの端子51の上に、複数の接続部52が設けられる。この構成は、複数のコイル端部37との接続を可能とする。さらに、ひとつの接続部52に複数のコイル端部37が接続されるから、多数のコイル端部37の間の接続を端子51によって提供することができる。より具体的には、複数の同相のコイルを備えるステータコイル33において、小型の中性点NTを提供することができる。
【0082】
インシュレータ35に設けられた側壁43、44は、保護材59の過剰な広がりを抑制するための容器部分を提供する。よって、保護材59の過剰な広がりを抑制しながら、帯電部分の確実な絶縁保護が提供される。
【0083】
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、連結部57がインシュレータ35に圧入される。これに加えて、この実施形態では、図8に図示されるように、端子51は、挿入片258を有する。挿入片258は、連結部57から、接続部52とは反対側に延び出している。挿入片258は、インシュレータ35の中に挿入される。挿入片258は、端子51とインシュレータ35との連結を強化する。ステータコア32は、インシュレータ35と挿入片258とを受け入れるための凹部を備えることができる。
【0084】
(第3実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、複数の接続部52が周方向に関して互いに離れるように設けられている。これに代えて、この実施形態では、図9に図示されるように、連続した板状部分に、複数の接続部352が設けられている。この形状では、複数の接続部352は周方向に互いに連接して設けられている。この形状でも、複数の接続部352は、周方向に沿って配置されているといえる。
【0085】
(第4実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態は、中性点NTである。これに代えて、他の用途の電気的な接続を提供してもよい。この実施形態では、端子51は、複数のコイル端部37の間の接続を提供するとともに、さらに、ひとつの電力線411aとの接続を提供する。
【0086】
図10において、端子51は、複数の接続部52を有する。端子51は、2つの接続部52を有する。ひとつの接続部52には、複数のコイル端部37がプロジェクション溶接によって接続されている。ひとつの接続部52には、2つのコイル端部37がプロジェクション溶接によって接続されている。
【0087】
さらに、端子51は、接続部452を有する。接続部452は、プロジェクション溶接とは異なる他の溶接手法が適用される接続部である。接続部452は、かしめ、フュージング、および/または、はんだ付けのための接続部である。接続部452は、電力線411aとの接続のために提供されている。電力線411aは、複数の導線を含む撚り線である。接続部452は、撚り線との接続に適した接続部とも呼ぶことができる。一方で、接続部52は、単線であるコイル端部37との接続に適した接続部とも呼ぶことができる。
【0088】
複数の接続部52、452は、連結部57によって機械的に、かつ、電気的に接続されている。この構成では、複数のコイル端部37がひとつの接続部52によって電気的に接続される。この構成では、複数のコイル端部37が複数の接続部52と連結部57とによって電気的に接続される。この構成では、複数のコイル端部37と、少なくともひとつの電力線411aとが、それらに適した接続部52によって電気的に接続される。上記実施形態において説明した作用効果のうちの対応する少なくともひとつを得ることができる。
【0089】
この実施形態の端子51は、例えば、出力端PTに利用することができる。例えば、デルタ結線における出力端に利用することができる。
【0090】
(第5実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態の連結部57は、ステータ31の周方向に沿って曲がっている板である。これに代えて、連結部は平板、または曲面板など多様な形状をもつことができる。この実施形態では、端子51は、平板状の連結部557を備える。
【0091】
図11および図12において、端子51は、連結部557を有する。図12は、溶接工程の前、または溶接工程の間の状態を示している。連結部557は、平板である。連結部557は、ステータ31の周方向に対する弦に沿って延在している。この結果、複数の接続部52は、弦に沿って配置されている。複数の接続部52は、共通の平面上に配置されている。複数のベース部分53は、一直線上に配置されている。複数の接続部52は相似形または同じ形状である。
【0092】
突条55は、端子51の両面のうち、ステータ31の径方向内側に面する面から突出している。突条55は、対応するベース部分53の径方向内側の面から、ベース部分53に垂直な方向へ向けて突出している。突条55は、対応する接続部52の内側面から突出している。
【0093】
突条55は、ステータ31の直径線または直径線と平行な平行線に沿って、ステータ31の内方向へ突出している。3つの接続部52を有する図示される例では、中央の接続部52のベース部分53は、そこを通る直径線と直交している。中央の接続部52に設けられた突条55は、上記直径線に沿って、ステータ31の径方向内側へ向けて突出している。両端の接続部52のベース部分53は、そこを通る直径線に対して傾斜している。両端の接続部52に設けられた突条55は、上記直径線と平行な平行線に沿って、ステータ31の内方向へ突出している。言い換えると、突条55は、その突条55が設けられた位置におけるステータ31の接線に対して、ステータ31の内方向に突出している。
【0094】
接続部52の両面のうち、突条55が突出する面を第1面と呼び、凹溝54が形成された面を第2面と呼ぶことができる。端子51は、第1面をステータ31の接線方向よりも中心側に向けて位置付けられている。端子51は、第1面をステータ31の径方向内側に向け、第2面をステータ31の径方向外側に向けて位置づけられている。
【0095】
コイル端部37は、ステータコイル33から径方向内側に向けて延びるように配置されている。コイル端部37は、ステータ31の端面上において、対応する接続部52の横側を通るように配置されている。コイル端部37は、対応する接続部52よりもステータ31の径方向外側から、対応する接続部52よりもステータ31の径方向内側へ回り込むように配置されている。コイル端部37は、対応する突条55の上に到達している。コイル端部37は、接続部52に巻き付くように配置されている。コイル端部37は、接続部52に引っ掛けられるように配置されている。
【0096】
コイル端部37は、保持部47、48によって保持された被保持部37aを有する。コイル端部37は、保持部47、48によって、少なくとも周方向に関して規定の位置に位置づけられている。被保持部37aは、一組の保持部47、48の間において、後述するクランク部37bよりも比較的まっすぐに長く延びている。保持部47、48は、対応する接続部52よりも径方向外側に配置されている。保持部47、48は、コイル端部37が、その軸方向、すなわちステータ31の径方向に関して移動することを許容する。
【0097】
コイル端部37は、クランク部37bを有している。クランク部37bは、コイル端部37を曲げることによって形成された曲がり部である。クランク部37bは、ほぼ90度の曲がりを提供している。クランク部37bは、L字型部分とも呼ぶことができる。
【0098】
クランク部37bは、保持部47、48と接続部52との間に位置している。クランク部37bは、保持部47、48より径方向内側に位置している。図示の例では、クランク部37bの多くの部分は、端子51が規定する平面よりもステータ31の径方向内側に位置している。クランク部37bの一部は、接続部52の横に位置している。クランク部37bの半分未満の一部が、接続部52より径方向外側に位置していてもよい。
【0099】
少なくともひとつのクランク部37bは、端の接続部52の外側を通って配置されている。少なくともひとつのクランク部37bは、2つの接続部52の間を通って配置されている。2つの接続部52の間には、コイル端部37を配置するために十分な大きさの隙間が設けられている。コイル端部37は、保持部47、48を通り、さらに、隙間を通って、突条55の上に到達している。隙間は、端子51に設けられた切欠部とも呼ぶことができる。隙間は、保持部47、48と突条55との間において、コイル端部37をステータ31の端面に沿って配置するための通路空洞を提供する。隙間は、ステータ31の軸方向に向けて開いており、この軸方向に沿って、コイル端部37は隙間の中に押し込まれ、規定の位置に位置付けられる。
【0100】
コイル端部37は、先端部37cを有する。先端部37cは、保持部47、48より径方向内側に位置づけられている。先端部37cは、接続部52よりも径方向内側に位置づけられている。コイル端部37は、接続部52の横を経由し、さらに突条55の頂きを経由するように形成されている。コイル端部37は、突条55の頂きを経由した後に、先端部37cが再び接続部52に向けて接近するように形成されている。言い換えると、コイル端部37は、接続部52の第1面の上に沿って、やや湾曲している。この湾曲は、コイル端部37が接続部52に巻き付くような湾曲である。
【0101】
回転電機10の製造方法において、コイル端部37は、図11に図示されるように配置される。コイル端部37の形状は、高品質の溶接部を形成するために貢献する複数の特徴を有している。これらの特徴は、実施形態のように組み合わせて利用することができる。また、これらの特徴は、単独でも利用することができる。
【0102】
ひとつの特徴は、真っ直ぐに配置された複数の接続部52である。この形状は、真っ直ぐの連結部557によって提供される。この形状は、複数の接続部52をステータ31上の規定の位置に安定的に位置づけることを可能とする。この形状は、連結部557に曲げ形状を有しないから、特に両端の連結部52の位置決めに誤差を生じ難い。この結果、コイル端部37と接続部52との二者を確実に規定の位置に位置付けることができる。また、溶接工程において、コイル端部37と接続部52と電極62、63との三者を確実に規定の位置に位置付けることができる。よって、高品質の溶接部を安定的に形成することができる。
【0103】
他のひとつの特徴は、保持部47、48より径方向内側に比較的長いコイル端部37が配置される形状である。この形状は、端子51の第1面に設けられた突条55によって可能とされている。この形状は、コイル端部37が接続部52に回りこむように配置されることで可能とされている。
【0104】
ひとつの観点において、長いコイル端部37は、容易な曲げ加工を可能とする。コイル端部37は、プロジェクション溶接に適した形状に加工することができる。よって、高品質の溶接部を安定的に形成することができる。
【0105】
別の観点において、コイル端部37は、クランク部37bにおいて、接続部52に巻き付くように曲げられる。コイル端部37は、それ自身の弾性力を利用して、コイル端部37を接続部52に引っ掛けることができる。この製造方法は、コイル端部37を突条55の上に安定的に位置づけることを可能とする。よって、高品質の溶接部を安定的に形成することができる。
【0106】
さらに別の観点において、長いコイル端部37は、コイル端部37自身のたるみを許容する。また、長いコイル端部37は、コイル端部37の寸法誤差、または変形に起因するたるみの変化を許容する。言い換えると、長いコイル端部37は、長いたるみ代を提供する。
【0107】
さらに別の観点において、コイル端部37は、被保持部37aとクランク部37bとの間において、比較的長い距離にわたって比較的真っ直ぐに配置される。比較的真っ直ぐのコイル端部37は、保持部47、48に対してコイル端部37が滑らかに移動することを許容する。このような移動は、溶接工程におけるコイル端部37の移動を容易にする。しかも、被保持部37aとクランク部37bとの間に設けられた比較的長い真っ直ぐの部分は、コイル端部37の滑らかな滑りを可能とする。
【0108】
回転電機10の製造方法において、コイル端部37は、接続部52に溶接される。溶接用の電極62、63は、接続部52の第2面と接触する電極62と、コイル端部37と接触する電極63とを有する。電極62は、背面電極、支持電極、または外側電極とも呼ばれる。電極63は、正面電極、作用電極、または内側電極とも呼ばれる。接続部52の第2面と電極52とは、安定した接触状態、すなわち通電状態を提供するように形成されている。
【0109】
溶接用の電極62、63は、コイル端部37と接続部52とをクランプするように位置づけられ、駆動される。先行する実施形態では、ステップ191において、ステータ31と電極62、63とが相対回転されるが、この実施形態では、ステータ31と電極62、63とが相対的に平行移動される。これにより、複数の接続作業が順に実行される。溶接工程において、電極62、63がコイル端部37と接続部52とをクランプすると、コイル端部37が接続部52に向けて移動する。クランク部37bと先端部37cとの間の部位は、接続部52に向けて平行移動する。すなわち、ストリップ部分38は、接続部52に向けて平行移動する。これにより、ストリップ部分38は突条55に強く押し付けられ、望ましい接触状態が提供される。同時に、クランク部37bも径方向外側へ平行移動する。
【0110】
このとき、保持部47、48と先端部37cとの間の長いコイル端部37は、ストリップ部38の移動を許容するたるみを提供する。長いコイル端部37は、突っ張りを抑制しながら、変形することができる。このため、コイル端部37の位置修正が容易に行われる。同時に、被保持部37aと保持部47、48とは、コイル端部37が保持部47、48の間を滑りながら移動することを許容する。このため、コイル端部37の位置修正が容易に行われる。
【0111】
上述の長いコイル端部37は、「たるみ」と「滑り」とによって、上記移動を許容する。上記移動は、溶接工程におけるコイル端部37の位置修正を提供する。この結果、コイル端部37と接続部52との間に望ましい接触状態を形成することができる。さらに、望ましい接触状態は、望ましい溶接状態の形成にも貢献する。なお、「たるみ」と「滑り」とは、いずれか一方のみが利用されてもよい。例えば、保持部47、48と被保持部37aとが強固に噛み合っていても、「たるみ」だけでコイル端部37の位置修正が可能である。
【0112】
接続部52の幅WD1は、電極62の幅WD2より小さく設定されている(WD1<WD2)。2つの接続部52の間の切欠部の幅WD3は、接続部52の幅WD1を電極62の幅WD2より小さくするように設定されている。切欠部が設けられることにより、溶接工程において、接続部52と電極62、63との間の安定的な接触状態が提供される。例えば、接続部52と電極62とが規定の位置からわずかにずれても、接続部52と電極62との間に規定の接触面積が安定的に提供される。この結果、高品質の溶接部を安定的に形成することができる。さらに、切欠部には、コイル端部37が配置されるから、幅WD3は、コイル端部37の配置を可能とするように設定されている。電極62と電極63とは、同じ幅を有することができる。また、電極62と電極63とは、異なる幅を有していてもよい。例えば、電極63は、幅WD2より小さいが、突条55の幅より大きい幅を有していてもよい。
【0113】
図13は、溶接後のコイル端部37と接続部52を示している。クランク部37bは、曲げ角DG1を提供する。曲げ角DG1は、接続部52の横におけるコイル端部37の中心軸AX1と接続部52と平行なコイル端部37の中心軸AX2との間の角度である。曲げ角DG1は、コイル端部37が接続部52に巻き付く形状をコイル端部37に与える。巻き付く形状は、1/4周回未満によって実現可能である。先端部37cは、突条55を越えた後に再び接続部52に接近するように曲がっている。先端部37cは、曲げ角DG2を提供する。曲げ角DG2は、中心軸AX2とコイル端部37の先端面の中心軸AX3との間の角度である。
【0114】
コイル端部37のうち、電極63と接触した部分には、接触痕37dが形成されている。接触痕37dは、電極63の表面形状に対応した面である。図示の例では、接触痕37dは、平面である。接触痕37dは、ストリップ部分38の上に形成されている。コイル端部37と突条55とが望ましい接触状態であるとき、ストリップ部分38の延在方向と、突条55の延在方向とは直交する。この望ましい接触状態が実現される場合、接触痕37dの形状は、コイル端部37の延在方向と、突条55の延在方向とに延びる十字形または菱形である。コイル端部37は、接触痕37dの周囲において突条55に沿うように変形している。コイル端部37は、突条55の延在方向に沿って延び出す幅広部を提供する。幅広部は、コイル端部37と突条55との間に広い接触面積を形成する。
【0115】
(他の実施形態)
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0116】
例えば、上記実施形態では、突条55は、凹溝54を形成するプレス加工によって形成されている。これに代えて、凹溝54なしで突条55を形成してもよい。また、突条55は、半円断面、三角断面、台形断面など多様な断面形状を採用することができる。
【0117】
上記実施形態では、接続部52の径方向外側にコイル端部37を配置した。これに代えて、接続部52の径方向内側にコイル端部37を配置してもよい。この場合、突条55は、径方向内側に向けて突出する形状を与えられる。この場合も、突条の突出軸は、径方向である。
【0118】
上記実施形態では、コイルを形成する導線はアルミ製である。これに代えて、銅製の導線を使用してもよい。
【0119】
上記実施形態では、同じ相に2つのコイルを配置した。これに代えて、同じ相に3つ以上のコイルを配置してもよい。さらに、上記実施形態では、すべてのコイルをひとつの三相結線に組み込んでいる。これに代えて、複数の三相結線を形成してもよい。
【0120】
上記実施形態では、ひとつの接続部52に2つのコイル端部37を接続している。これに代えて、ひとつの接続部52とひとつのコイル端部37とを接続してもよい。また、ひとつの接続部52と3つ以上のコイル端部37とを接続してもよい。
【0121】
上記実施形態では、接続部52は、径方向に面する板状である。これに代えて、接続部52を90度ひねってもよい。この場合、接続部は、周方向に面する板状である。この場合でも、複数の接続部は、周方向に沿って配置される。上記実施形態では、接続部52は平板状である。これに代えて、接続部52は、湾曲した板でもよい。さらに、端子51の全体が、ステータ31の周方向に沿って湾曲していてもよい。
【0122】
上記実施形態では、ステータ31のボディ13側の端面に端子51を設けている。端子51は、ステータ31のどちらか一方の端面または両面に設けることができる。例えば、端子51は、ロータ21に面する端面に設けられてもよい。
【0123】
上記実施形態では、コイル端部37の先端にストリップ部分38を形成した。これに代えて、ストリップ部分38を形成することなく、絶縁皮膜を付けたままで、コイル端部37と接続部52とをプロジェクション溶接してもよい。この場合、プロジェクション溶接によって絶縁皮膜を破ることができる。
【0124】
上記実施形態では、コイル端部37は、ステータ31上においてL字型である。コイル端部37は、逆方向を指向するL字型でもよい。また、複数のコイル端部37は、同方向のL字型である。これに代えて、例えば、少なくともひとつのコイル端部37をL字型とし、残るコイル端部37を逆方向のL字型としてもよい。このようなコイル端部37の形状は、コイル端部37と接続部52との多様な配置を可能とする。例えば、ステータ31上における他の部品を避けるコイル端部37の配置を可能とする。
【0125】
上記実施形態では、端子51は、複数のコイル端部37および電力線411aと電気的に接続されている。これに加えて、端子51は、他の部材と電気的に接続されてもよい。例えば、中性点NTを地絡する場合、端子51はステータコア32と電気的に接続される。端子51とステータコア32とは、直接的な接触により、および/または電線などを介して電気的に接続される。
【0126】
上記実施形態では、インシュレータ35に端子51を圧入することによって端子51を固定している。これに代えて、インシュレータ35を樹脂成形する工程において、端子51をインサート成形してもよい。
【0127】
上記実施形態では、ステータコア32とインシュレータ35とは別体の部品である。これに代えて、ステータコア32とインシュレータ35とを一体化してもよい。例えば、ステータコア32をインシュレータ35の中にインサート成形してもよい。また、上記実施形態では、端子台41を提供するインシュレータ35は、ステータコイル33のためのボビンを提供している。これに代えて、端子台41を提供するインシュレータと、ボビンを提供するインシュレータとを別部品としてもよい。例えば、端子台41の部分だけを別部品として、ステータ31上に装着可能に構成してもよい。
【0128】
上記実施形態では、ロータ21は、回転軸14の端部からボディ13側に覆いかぶさるようなカップ形状である。これに代えて、回転軸の端部に向けて開いたカップ形状のロータを用いてもよい。この場合、ステータ31は、ボディ13としてのカバー部材に装着される場合がある。上記実施形態では、回転電機10は、いわゆるアウタロータ型である。これに代えて、回転電機10は、インナロータ型であってもよい。インナロータ型であっても、端子51を利用することができる。
【0129】
上記実施形態では、回転電機10は、発電機を提供する。これに代えて、回転電機10は、特許文献2に開示される交流発電機スタータ(AC Generator Starter)として構成されてもよい。回転電機10が交流発電機スタータとして構成される場合、特許文献2に記載の内容を援用することができ、同記載の内容は参照により引用される。
【符号の説明】
【0130】
10 内燃機関用回転電機、11 負荷、11a 電力線、
12 内燃機関、13 ボディ、14 回転軸、
21 ロータ、22 ロータコア、23 永久磁石、24 保持カップ、
31 ステータ、32 ステータコア、33 ステータコイル、
35 インシュレータ、37 コイル端部、38 ストリップ部分、
41 端子台、42 端面、43 側壁、44 側壁、45 スリット、
47 保持部、48 保持部、
51 端子、52、352 接続部、53 ベース部分、
54 凹溝、55 突条、56 先端縁、57、557 連結部、
258 挿入片、59 保護材、
61 溶接機、62 電極、63 電極、65 移動装置。
【要約】
プロジェクション溶接によってコイル端部と接続可能な内燃機関用回転電機を提供する。内燃機関用回転電機のステータ31は、インシュレータ35に固定された端子51を有する。端子51は、複数の接続部52を有する。接続部52は、ステータ31の軸方向に延びる突条55を有する。インシュレータ35は、複数のコイル端部37を保持するための保持部47、48を有する。複数のコイル端部37は、保持部47、48の間を通るように配置され、L字型に曲げられている。複数のコイル端部37は、接続部52に接触するように予備的に仮留めされる。複数のコイル端部37と、突条55とは、プロジェクション溶接によって接続されている。端子51は、複数の接続部52を有するから、端子51は、複数のコイル端部37を電気的に接続する。選択図は図4である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13