(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転力付与部又は前記制動力付与部は、前記連結軸を介して前記軸体に回転力を付与するか、又は前記連結軸を介して前記軸体に制動力を付与することを特徴とする請求項1に記載の引込み装置。
【背景技術】
【0002】
開き戸等に引込み力を付与する引込み装置が知られている(例えば特許文献1参照)。典型的な引込み装置は枠及び開き戸のいずれか一方に取り付けられ、枠及び開き戸の他方に取り付けられるトリガと協働して開き戸に引込み力を付与する。引込み装置には、トリガに係合可能なアームが設けられる。開き戸が所定角度まで閉じると、アームとトリガが係合する。トリガに係合するアームが所定の中心線の回りを回転することによって、開き戸に引込み力が付与される。
【0003】
典型的な引込み装置の構造は以下のとおりである。
図9(A)に示すように、引込み装置は、枠に取り付けられるケース1と、ケース1に対して開き方向及び閉じ方向に回転するアーム2と、を備える。
図9(B)に示すように、ケース1には、回転可能に軸体3が設けられる。この軸体3にアーム2が結合される。ケース1には、軸体3に回転力を付与する回転力付与部4、及び回転する軸体3に制動力を付与する制動力付与部5が設けられる。回転力付与部4は、コイルばね6を備え、軸体3に開き方向及び閉じ方向の回転力を付与する。制動力付与部5は、ダンパ7を備え、回転する軸体3に制動力を付与する。回転力付与部4は、人手による開き戸の開閉動作を容易にするために設けられる。制動力付与部5は、開き戸がゆっくり閉まるようにし、高級感を出すために設けられる。
【0004】
アーム2と軸体3との結合方法は以下のとおりである。
図9(C)に示すように、アーム2には四角形の突起2aが形成される。
図9(B)に示すように、軸体3には四角形の孔3aが形成される。アーム2の四角形の突起2aを軸体3の四角形の孔3aに嵌め、その後両者をねじ8(
図9(A)参照)で締結することにより、アーム2と軸体3とを結合する。アーム2の突起2a及び軸体3の孔3aを四角形にするのは、アーム2と軸体3とを一緒に回転させるためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
開き戸はその性質上、開閉を繰り返されるものであり、引込み装置のアームにはその都度、開き方向及び閉じ方向の回転力が作用する。軸体にはアームに作用する回転力が集中する。従来の引込み装置にあっては、開き戸の開閉を数多く繰り返すと、繰り返しの回転力によって軸体が破損するおそれがあるという課題がある。
【0007】
そこで本発明は、軸体の耐久性を向上させることができる引込み装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、アームが所定の中心線の回りを回転することによって、対象物を引き込む引込み装置であって、ケースと、前記ケースに前記中心線の回りを回転可能に設けられる軸体と、前記軸体とは別体であると共に、前記軸体に結合されるアームと、前記軸体に回転力を付与する回転力付与部、及び/又は前記軸体の回転を制動する制動力を前記軸体に付与する制動力付与部と、前記中心線から離れた位置に配置され、前記軸体と前記アームを連結する連結軸と、を備え
、前記軸体が前記ケースの内側に収納され、前記アームが前記ケースの外側に配置され、前記ケースには、前記連結軸が通ると共に、前記連結軸が前記中心線の回りを回転するのを許容する溝が形成される引込み装置である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の引込み装置において、前記回転力付与部又は前記制動力付与部は、前記連結軸を介して前記軸体に回転力を付与するか、又は前記連結軸を介して前記軸体に制動力を付与することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の引込み装置において、前記連結軸は、互いに離れた位置に配置される第一及び第二の連結軸を備え、前記回転力付与部は、前記第一の連結軸を介して前記軸体に回転力を付与し、前記制動力付与部は、前記第二の連結軸を介して前記軸体に制動力を付与することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、アームの回転中心から離れた位置に連結軸が配置されるので、連結軸でも回転力を伝達するようになり、軸体の耐久性が向上する。
また、ケースの内側に収納される軸体とケースの外側に配置されるアームとを連結軸で連結することが可能になる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、連結軸を回転力付与部又は制動力付与部から回転力又は制動力が作用する軸としても使用することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、連結軸が第一及び第二の連結軸からなるので、軸体の耐久性がより向上する。また、第一の連結軸を回転力付与部から回転力が作用する軸として使用することができ、第二の連結軸を制動力付与部から制動力が作用する軸として使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下添付図面に基づいて本発明の第一の実施形態の引込み装置を詳細に説明する。
図1は、建築物の開き戸に組み込まれた本実施形態の引込み装置を示す。建築物の壁の開口には枠11が取り付けられる。枠11には図示しないヒンジを介して開き戸12が垂直軸の回りを回転可能に取り付けられる。
【0018】
引込み装置は開き戸12の上面に埋め込まれる。
図1では引込み装置は隠れていて、引込み装置のアーム22のみが示される。引込み装置はステー14と協働して開き戸12に引込み力を付与する。開き戸12の上面には、ステー14との干渉を避けるために、開き戸12の上面から一段掘り下げた切り込み18aが形成される。この切り込み18aに引込み装置21が埋め込まれる。引込み装置21のアーム22は開き戸12から側方に突出する。
【0019】
ステー14は、枠11の上部に垂直軸の回りを回転可能に連結されるインナーレール15と、開き戸12の上面に垂直軸の回りを回転可能に連結されるアウターレール16と、を備える。インナーレール15及びアウターレール16はお互いに対して長さ方向にスライド可能であり、開き戸12の開閉動作に伴って伸縮する。アウターレール16にはトリガとしてのピン17が取り付けられる。ピン17はアーム22に形成される係合部としての長孔22aに嵌められる。開き戸12が全閉状態から全開状態まで至る間、ピン17はアーム22の長孔22aに嵌まったままである。
【0020】
開き戸12に引込み力が付与される原理は以下のとおりである。まず、開き戸12が全開のとき、ステー14は最も伸長した状態にある。ステー14は全開状態の開き戸12のストッパとして機能する。次に、全開状態の開き戸12を閉じるとステー14の長さが短くなる。ただし、開き戸12に対するステー14の開き角度θ1は、枠11に対する開き戸12の開き角度が所定角度(例えば30度)以下になるまであまり変化することはない。ステー14の開き角度θ1があまり変化することがないゆえに、開き戸12に対するアーム22の開き角度θ2もあまり変化することはない。このため、アーム22からステー14に引込み力が付与されることはない。
【0021】
開き戸12の開き角度が所定角度(例えば30度)以下になったとき、開き戸12に対するステー14の開き角度θ1が小さくなり始め、開き戸12に対するアーム22の開き角度θ2も小さくなり始める。するとアーム22は思案点(詳しくは後述する。
図8(B)の状態)を超えて、自動的に閉じる方向に回転しようとする。アーム22が閉じる方向に回転すると、アーム22からステー14を介して開き戸12に閉じ方向の引込み力が付与される。アーム22が閉じ方向に回転するとき、アーム22には回転を制動する制動力も付与される。アーム22に作用する制動力によって開き戸12がゆっくり閉まるようになる。
【0022】
なお、本実施形態では、引込み装置がステー14と協働して開き戸12に引込み力を付与しているが、
図9に示す引込み装置のように、枠11及び開き戸12の一方に引込み装置を取り付け、枠11及び開き戸12の他方にトリガを取り付け、引込み装置のアーム22がトリガを引き込むことによって、開き戸12に引込み力を付与するようにしてもよい。
【0023】
引込み装置21の構造は以下のとおりである。
図2は引込み装置21の外観斜視図を示す。引込み装置21は、開き戸12に取り付けられるケース24と、ケース24の外側に配置されるアーム22と、を備える。ケース24は細長い直方体形状に形成される。ケース24には長さ方向の両端部に一対の止め金24aが設けられる。ケース24は止め金24aを介して開き戸12の上面に固定される。
【0024】
アーム22は一方向に細長い板状に形成される。アーム22には長さ方向に伸びる長孔22aが形成される。アーム22はケース24に対して所定の中心線C(垂直線)の回りを回転する。
【0025】
図3及び
図4は、引込み装置21の分解斜視図を示す。
図3は上方からみた分解斜視図を示し、
図4は下方からみた分解斜視図を示す。ケース24の長さ方向の中央部には、軸体27が中心線Cの回りを回転可能に設けられる。軸体27はケース24内に収納される。アーム22は軸体27とは別体であり、ケース24の外側に配置される。軸体27は、軸体ブロック25と、軸体ブロック25を貫通する主軸26と、を備える。軸体ブロック25とアーム22とは互いに平行な三本の軸、すなわち主軸26、第一の連結軸28、及び第二の連結軸29により連結され、三本の軸により回転力を伝達する。第一の連結軸28及び第二の連結軸29の太さは略等しく、主軸26は第一の連結軸28及び第二の連結軸29よりも太い。ケース24の軸体27を挟んだ一方の側には、軸体27に回転力を付与する回転力付与部37が設けられる。ケース24の軸体27を挟んだ他方の側には、軸体27に制動力を付与する制動力付与部44が設けられる。
【0026】
各部品の詳細な構造は以下のとおりである。
図3に示すように、ケース24は、上壁部24−1と、左右一対の側壁部24−2と、を有する。
図4に示すように、ケース24の下面及び長さ方向の両端部には、部品を組み込むための開口24cが形成される。ケース24には側壁部24−2の一部を折り曲げることで底壁部24−3が形成される。この底壁部24−3は上壁部24−1に対向し、上壁部24−1と平行である。ケース24の上壁部24−1と底壁部24−3との間に軸体ブロック25が挟まれる。
【0027】
図5のケース24の平面図に示すように、ケース24の上壁部24−1には、円弧状の溝24bが形成される。溝24bには第一の連結軸28及び第二の連結軸29が嵌まる。アーム22は中心線Cの回りを回転するので、第一の連結軸28及び第二の連結軸29は、円弧状の溝に沿って周方向に移動する。溝24bを第一の連結軸28及び第二の連結軸29の移動軌跡に沿った円弧状に形成することで、第一の連結軸28及び第二の連結軸29がケース24に干渉するのを防止することができる。
【0028】
図3に示すように、軸体27は、ケース24に中心線Cの回りを回転可能に支持される主軸26と、主軸26が貫通する主軸用貫通孔25a、第一の連結軸28及び第二の連結軸29が貫通する二つの連結軸用貫通孔25bが形成される軸体ブロック25と、を備える。軸体ブロック25は三角柱形状に形成される。主軸用貫通孔25a、二つの連結軸用貫通孔25bは、軸体ブロック25の三角形の頂点付近に形成される。軸体ブロック25の側面には、回転力付与部37のリンク38が挿入されるスリット25c(
図6(B)参照)が形成される。
図3には軸体27のスリット25cにリンク38を挿入した状態が示されている。また、軸体ブロック25の側面には、制動力付与部44のスライドブロック43が挿入可能な切り欠き25d(
図6(B)参照)が形成される。
【0029】
図4に示すように、主軸26はアーム22の回転の中心になる中心線C上に配置される。主軸26はその両端部がケース24の上壁部24−1及び底壁部24−3に回転可能に支持される。ケース24の上壁部24−1には樹脂製のすべり軸受51が取り付けられる。ケース24の底壁部24−3には樹脂製のすべり軸受52が取り付けられる。
図6(A)に示すように、主軸26はケース24に軸受51,52を介して回転可能に支持される。主軸26の下端部にはフランジ26aが形成される。主軸26の上端部はケース24から突出する。主軸26の上端部には、かしめ等の固定手段によってアーム22が結合される。
【0030】
図4に示すように、第一の連結軸28はアーム22の回転の中心になる中心線Cから離れた位置に配置される。第一の連結軸28は軸体ブロック25とアーム22とを連結する。
図6(B)に示すように、第一の連結軸28は軸体ブロック25を貫通すると共に、リンク38を貫通する。第一の連結軸28の上端部はケース24から突出する。第一の連結軸28の上端部には、かしめ等の結合手段によってアーム22が結合される。
【0031】
図4に示すように、第二の連結軸29はアーム22の回転の中心になる中心線Cから離れた位置に配置される。第二の連結軸29は第一の連結軸28とも離れている。中心線Cから第二の連結軸29までの距離は、中心線Cから第一の連結軸28までの距離に等しい。
図6(B)に示すように、第二の連結軸29は軸体ブロック25を貫通すると共に、スライドブロック43を貫通する。第二の連結軸29の上端部はケース24から突出する。第二の連結軸29の上端部には、かしめ等の結合手段によってアーム22が結合される。
【0032】
図7は、主軸26、第一の連結軸28及び第二の連結軸29によって連結される軸体ブロック25及びアーム22を示す。この
図7ではリンク38及びスライドブロック43が省略されているが、実際にはリンク38は第一の連結軸28に連結され、スライドブロック43は第二の連結軸29に連結される。軸体ブロック25とアーム22とは主軸26だけでなく、第一の連結軸28及び第二の連結軸29によっても連結される。軸体ブロック25が中心線の回りを回転するとき、軸体ブロック25の回転力は主軸26だけでなく、第一の連結軸28及び第二の連結軸29を介してアーム22に伝達される。このため、軸体ブロック25とアーム22との連結部分の耐久性を向上させることができる。
【0033】
回転力付与部37の構造は以下のとおりである。
図3に示すように、回転力付与部37は、スライドブロック31と、リンク38と、スライドブロック31を軸体ブロック25に向かって押す付勢手段としてのコイルばね32と、コイルばね32を支持する支持ブロック33と、コイルばね32のばね力を調整するばね力調整機構34,35と、固定ブロック36と、を備える。
【0034】
スライドブロック31はケース24に長さ方向にスライド可能に支持される。リンク38はその一端部が軸体ブロック25に回転可能に連結されると共に、その他端部がスライドブロック31に回転可能に連結される。固定ブロック36はケース24にリベット等の結合手段を介して結合される。ばね力調整機構34,35は、調整ねじ35を備える。調整ねじ35の回転をさせると、ねじブロック34が上下動する。支持ブロック33及びねじブロック34には、傾斜したカム面が形成される。ねじブロック34が上下動するのに伴い、支持ブロック33がケース24の長さ方向に移動する。
【0035】
制動力付与部44の構造は以下のとおりである。
図3に示すように、制動力付与部44は、ケース24にリベット等の結合手段を介して固定される支持ブロック41と、支持ブロック41内に支持される平行な一対のダンパ42a,42bと、支持ブロック41に長さ方向にスライド可能に支持されるスライドブロック43と、を備える。ダンパ42a,42bは支持ブロック41とスライドブロック43との間に配置される。スライドブロック43が長手方向にスライドすると、ダンパ42a,42bからスライドブロック43に制動力が付与される。スライドブロック43は第二の連結軸29に連結される。ダンパ42a,42bの制動力は第二の連結軸29を介して軸体ブロック25に伝達される。
【0036】
以下に
図8を参照しつつ回転力付与部37及び制動力付与部44の動作を説明する。
図8(A)はアーム22が開いた状態を示し、
図8(B)は思案点まで回転した状態を示し、
図8(C)はアーム22が閉じた状態を示す。この
図8には、底面側からみた引込み装置21が示されており、
図8(C)ではアーム22はケース24の背面に隠れている。
【0037】
図8(A)に示すアーム22が開いた状態では、回転力付与部37のコイルばね32はリンク38を介してアーム22にさらに開く方向に付勢力を付与する。このとき、軸体ブロック25はケース24の側壁部24−2に当接しており、アーム22は開いた状態を維持する。
【0038】
アーム22を閉じる方向に回転させると、アーム22は思案点まで回転する。思案点では、
図8(B)に示すように、軸体27の主軸26、リンク38の軸体ブロック25側の第一の連結軸28、リンク38のスライドブロック31側の回転軸39が一直線に並ぶ。
【0039】
アーム22を思案点からさらに閉じ方向に回転させると、回転力付与部37のコイルばね32はアーム22に閉じ方向(1)の回転力を付与する。アーム22は回転力によって、
図8(C)に示す閉じた状態になるまで回転する。アーム22が閉じた状態では、軸体ブロック25がケース24の側壁部24−2に当接しており、アーム22が閉じた状態を維持する。
【0040】
アーム22が
図8(B)に示す思案点を経由して
図8(C)に示す閉じた状態まで回転するとき、スライドブロック43は図中左方向(2)に移動する。スライドブロック43の左方向への移動に伴ってダンパ42a,42bが縮む。ダンパ42a,42bの縮みにともなって軸体ブロック25に制動力が付与される。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で様々な実施形態に具現化できる。
【0042】
上記実施形態では、引込み装置が開き戸を引き込んでいるが、開き戸に限らず、引戸、折戸、引出し等の対象物を引き込むことができる。
【0043】
上記実施形態では、回転力付与部の回転力及び制動力付与部の制動力の双方を軸体に作用させているが、回転力及び制動力の一方を軸体に作用させてもよい。また、回転力及び制動力の一方をアームに直接的に作用させ、アームを介して軸体に回転力及び制動力の一方を作用させてもよい。
【0044】
上記実施形態では、制動力付与部として伸縮式のダンパを使用しているが、ロータリーダンパを使用することもできる。また、ロータリーダンパの回転軸となる軸体にアームを結合することもできる。
【0045】
上記実施形態では、軸体とアームとを第一の連結軸及び第二の連結軸からなる二本の連結軸で連結しているが、一本の連結軸のみで連結することもできる。
【0046】
上記実施形態では、軸体の主軸と軸体ブロックとを別体としているが、軸体の主軸と軸体ブロックとを一体にすることもできる。
【0047】
上記実施形態の回転力付与部及び制動力付与部の構造は一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で様々な構造に変更できる。