(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1調整機構は、前記載置部材を支持する載置部材支持面と、前記側板と当接する側板当接部とを備える支持部材と、前記側板当接部に設けられた穴に挿通され、前記側板と前記支持部材とを締結するための前記締結手段とを含む、請求項1に記載の管支持装置。
【背景技術】
【0002】
トンネルを構築する際に使用される補助工法の1つとして、切羽の安定性を向上させ、地表面の沈下の抑制を図るために、鋼管による先受け工法が多く用いられている。その鋼管の長さが5m以上のものを用いた先受け工法として、長尺先受け工法がある。先受け工法は、フォアパイリング工法とも呼ばれ、トンネル掘削に先行して掘削箇所の上部の地山を支持する工法である。
【0003】
長尺先受け工法では、脆弱な地山が崩れないように先受け部材である鋼管をその地山に挿入する。その鋼管を挿入するための機械として、専用の機械を利用することができるが、汎用機械であるドリルジャンボを使用することができれば、低コストで施工を行うことができるので望ましい。
【0004】
ドリルジャンボを使用する場合、従来において、
図1に示すようなトンネルの形状に合わせて構築されたアーチ状の鋼材10に、2つの略平行に配置される棒状部11aと底上げ金具11bと棒状の逸脱防止ストッパ11cとを備える管支持装置11を取り付け、その管支持装置11により鋼管12を支持しつつ、
図2に示すようにドリルジャンボ13により鋼管12の長手方向である地山14へ向けて挿入している。鋼管12は、例えば、約3mの鋼管を継ぎ足し、約10〜20mとしたものを使用する。それ以上の長い区間を長尺先受けする場合は、
図3に示すように一部をオーバーラップさせ、地山14に設置する。この形状は、傘に似ていることから、アンブレラアーチと呼ばれる。
【0005】
このような望ましいオーバーラップを実現するためには、矢線Aで示すトンネル軸方向と平行に鋼管12を挿入するのではなく、トンネル軸方向に対して所定の角度で傾斜させるように挿入する必要がある。管支持装置11では、底上げ金具11b(単なる板または箱体)を現物に合わせて製作しているので、鋼管12を所定の角度で傾斜させるように挿入し、設置することを可能にしている。
【0006】
このように所定の角度で鋼管12を支持する構成としては、従来において、アーチ状の鋼材10の上面または下面に、複数の鋼管12を所定の角度で支持する管支持部材を有する構成(特許文献1参照)や、アーチ状の鋼材10自体に設けられた孔にガイドを備え、鋼管12をガイドに挿入して、そのガイドが鋼管を所定の角度で支持する構成(特許文献2参照)等もある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図4および
図5は、本実施形態の管支持装置に用いられる支持装置の構成例を示した図である。管支持装置は、少なくとも2つの支持装置100から構成される。
図4(a)は、この支持装置100の正面図であり、
図4(b)は、その側面図であり、
図5は、その斜視図である。支持装置100は、例えば、トンネル掘削時における長尺先受け工法において、トンネル形状に合わせたアーチ状の鋼材にクランプ等を用いて取り付け、管の長手方向へ向けて地山に挿入する際にその管の一部を支持するために用いられる。ここでは、長尺先受け工法に使用するものとして説明するが、この工法以外であっても、管を高い精度で挿入する必要がある場合に使用することができるものである。
【0015】
アーチ状の鋼材としては、断面がH形であるH形鋼を半円状に曲げたものが用いられる。この鋼材を一定間隔でトンネル軸方向へ設置し、複数の鋼材のそれぞれに、支持装置100をトンネル軸方向へ向けて配列するように取り付け、その配列する複数の支持装置100により、1本の管を支持する。
【0016】
管としては、例えば、口径が4〜6インチの鋼管が使用される。鋼管は、他端がドリルジャンボと呼ばれる汎用機械に連結され、一端にはビットと呼ばれる削孔部材が取り付けられる。鋼管の長手方向の途中が、配列する複数の支持装置100により支持される。
【0017】
ドリルジャンボに搭載されている削岩機による削孔では、一例として、スリーブと呼ばれる連結部材を用いて、鋼管内の削孔ロッドと削岩機内のシャンクロッドと呼ばれる一定方向に回転する回転部材に連結する。削岩機が削孔ロッドに回転力と推進力および打撃力を加えることにより、ドリルジャンボは、先端のビットにより地山を所定の傾斜角度で削孔し、それに伴ってビット後端部に連結された鋼管を地山の所望の位置に挿入して設置する。ちなみに、削孔終了後に削孔ロッドは回収され、鋼管のみが地山中に残置される。
【0018】
ドリルジャンボは、上記削岩機が搭載されるブームを複数持ち、同時に複数の鋼管を挿入し設置することが可能である。このドリルジャンボを使用して鋼管を地山の各位置に設置していき、最終的には、
図3に示すようなアンブレラアーチを形成する。
【0019】
支持装置100は、H形鋼から構成される1つのアーチ状の鋼材の上側曲面部分の一部を設置面とし、その設置面に一方の面が隣接する底板101と、その底板101の他方の面に接続され、その他方の面に対して垂直方向に平行に延びる2枚の側板102、103とを備える。アーチ状の鋼材は、非常に大きい曲率を有することから、その上側曲面部分の一部は、略平坦面とみなすことができる。
【0020】
底板101および側板102、103は、鋼製の板とされ、溶接等により互いに接続される。底板101は、例えば、平板とされるが、アーチ状の鋼材に合わせて一定の曲率を有する板とされていてもよい。側板102、103は、
図4(b)に示すように、共に、設置面に対して垂直方向に延びる3つの穴104、105、106が所定の位置に形成されている。
【0021】
側板102と側板103との間には、
図4(a)に示すように、破線で示される鋼管120の一部を支持する下部支持部107を有する載置部材108が設けられる。下部支持部107によって鋼管120の一部をしっかり支えるためである。なお、
図5では、鋼管120との配置関係を理解しやすくするために、鋼管120が切断されているが、実際は、支持装置100から両方に突出するように延びているものである。
【0022】
下部支持部107は、一方に突出する突出部とされ、鋼管120を点支持することができるものとされている。なお、点支持に限定されるものではなく、下部支持面とされ、面支持することができるものであってもよい。しかしながら、面支持すると、支持装置100への鋼管120の挿入時に、鋼管120と下部支持面とがこすれ、摩擦力が増大するので、点支持のほうが好ましい。
【0023】
下部支持部107は、例えば、
図6に示すように断面が半円状に突出した突出部とすることができる。このような半円状の突出部を設けることで、出来る限り鋼管120との接触部分を少なくしつつ、鋼管120を充分に支持することができ、鋼管挿入時における摩擦抵抗を減少させることができる。これにより、支持装置100への鋼管120の挿入が容易となる。
【0024】
ここでは半円状の突出部としたが、断面が山形や楕円形等の形状の突出部であってもよい。また、半円状の突出部は、半円部分が、
図6に示すように中空とされていなくてもよい。このことは、断面が山形や楕円形等とした場合も同様である。
【0025】
再び
図4および
図5を参照して、載置部材108は、第1調整機構109により設置面に対して垂直方向の位置(高さ位置)が調整される。鋼管120は、少なくとも2つの支持装置100が備える各第1調整機構109により各載置部材108の下部支持部107の高さ位置が調整され、これにより高低差が付けられ、所定の角度に傾斜される。角度は、鋼管120の長さや、地山の特性等を考慮して決定することができ、例えば、トンネル軸方向に対して2〜15°の角度とすることができる。これは一例であり、その範囲以下または以上の角度であってもよいものである。
【0026】
第1調整機構109は、例えば、側板102、103に設けられた2つの穴105、106と、載置部材108を支持する載置部材支持面と側板102または側板103と当接する側板当接部とを備える支持部材110と、その側板当接部に設けられた穴に挿通され、側板102または側板103と支持部材110とを締結するための締結手段111とを含む構成とすることができる。
【0027】
支持部材110は、
図4(a)に示すように略直方体の単なる板であってもよいが、
図7(a)に示すように、断面がL字形の部材とし、載置部材108をしっかり支えることができる構造のものとすることもできる。しかしながら、側板当接部112が、
図7(a)に示すように平面とされている場合、締結手段111の緩みが生じたとき、側板102との間にずれが生じ、載置部材108の高さ位置が変化することになる。これでは、鋼管120の挿入方向にずれが生じてしまう。
【0028】
そこで、
図7(b)に示すように、側板当接部112と側板102とが、互いに嵌合する凹凸を有する嵌合面113、114を備えるものとすることができる。これにより、鋼管挿入時における振動等により、締結手段111の緩みが生じたとしても、嵌合面113、114により互いの歯が噛み合った状態で保持されるので、載置部材108の高さ位置が変化することがなくなり、鋼管120の挿入精度を維持することができる。
図7では、側板102のみを例示したが、側板103についても同様の構成を採用することができる。
【0029】
このように嵌合面113、114を備える構成は好ましいものの、隣接する歯のピッチ毎に高さ位置が調整されることになるので、微調整を行うことができなくなる。このため、出来る限りの微調整を可能にするべく、出来る限り歯を小さくし、その数を多くすることが望ましい。また、歯は、
図7(b)に示すような山形のものに限られない。ここでは凹凸を有する嵌合面113、114を備える構成を例示したが、同様の効果を有するこれまでに知られた他の構成を採用することも可能である。
【0030】
締結手段111は、例えば、ボルトおよびナットとすることができる。また、締結手段111は、ワッシャを含み、ワッシャを介してボルトおよびナットにより、側板102または側板103と支持部材110とを締結することができる。
【0031】
締結手段111としては、そのほか、クランプ等を採用することができる。ここでは、締結手段111を用いて締結するように構成しているが、所定の高さ位置となるように調整した後、接着剤を用いて接着したり、溶接したりして、側板102または側板103と支持部材110とを恒久的に固定することも可能である。
【0032】
第1調整機構109による載置部材108の高さ位置の調整は、締結手段111であるナットを緩め、側板102または側板103に設けられた穴105、106に挿通されたボルトを滑動(スライド)させることにより行うことができる。所望の高さ位置に調整された後、ナットを締め付けることにより、載置部材108はその位置に固定される。
【0033】
再び
図4および
図5を参照して、支持装置100は、鋼管120の長手方向に対して垂直方向に延びる棒状部材115と、その棒状部材115の、設置面に対して垂直方向の高さ位置を調整し、鋼管120が浮き上がらないようにその棒状部材115を鋼管120の上部に隣接させて固定する第2調整機構116とを備える。
【0034】
棒状部材115は、所定径を有する単なる丸棒であってもよいが、丸棒とボールベアリングとを組み合わせ、丸棒を回転可能に構成としたものを採用することも可能である。このように回転可能に構成することで、鋼管120の挿入時の摩擦抵抗をさらに低減させることができる。ここでは、ボールベアリングを用いる構成を例示したが、ローラベアリング等、他の手段を用いて丸棒を回転可能に構成することも可能である。
【0035】
側板102、103に設けられた1つの穴104に、棒状部材115の両端が挿通され、第2調整機構116により、その棒状部材115の高さ位置が調整され、側板102および側板103に固定される。棒状部材115の両端は、一例では、ねじ切りされている。第2調整機構116は、側板102、103に設けられた穴104と、棒状部材115の両端に螺合されるナットとを含む。この場合も、ワッシャをさらに含むことができる。
【0036】
棒状部材115の高さ位置の調整は、ナットを緩め、穴104に挿通された棒状部材115をスライドさせることにより行うことができる。この場合も、所望の高さ位置に調整された後、ナットを締め付けることにより、棒状部材115はその位置に固定される。
【0037】
図8に示したフローチャートを参照して、管支持装置を使用して管を支持する方法を説明する。ステップ800からこの方法を開始し、ステップ810では、各支持装置100につき、各支持装置100が設置される設置面に対して垂直方向の、鋼管120の一部を支持する載置部材108の位置を調整し、適切な位置で載置部材108を固定する。
【0038】
具体的には、最初に、少なくとも2つの支持装置100を各設置面に設置する。例えば、各支持装置100につき、底板101とアーチ状の鋼材とを、
図1に示すようにクランプを用いて締結することにより設置する。そして、各支持装置100につき、第1調整機構109が備える締結手段111であるナットを緩める。次に、各支持装置100につき、側板102、103の穴105、106に挿通されたボルトをスライドさせる。
【0039】
まず、1つの支持装置100の載置部材108の底面の、例えば、鋼管120の先端側および末端側の各縁部の高さ位置を決め、ナットを締めてその位置に固定する。高さ位置は、鋼管120の長さ、挿入する角度、支持装置100から地山までの距離等により決定される。次の支持装置100の載置部材108も同様に、高さ位置を決定するが、この支持装置100が、先の1つの支持装置100より地山側である場合は、先の1つの支持装置100の載置部材108の高さ位置より高く、ドリルジャンボ側である場合は低くなるように、その高さ位置を決定し、その位置に固定する。これにより、鋼管120の挿入角度を、所定の角度として挿入することが可能となる。
【0040】
ステップ820では、各支持装置100の2枚の側板102、103、載置部材108、棒状部材115により形成された開口部に鋼管120を挿入する。すなわち、鋼管120の長手方向に配列する各支持装置100の各開口部に鋼管120を挿入する。そして、ステップ830では、各支持装置100の第2調整機構116により、棒状部材115の高さ位置を調整し、鋼管120が浮き上がらないように棒状部材115を鋼管120の上部に隣接させて固定する。各支持装置100の各棒状部材115で鋼管120の上部を固定したところで、ステップ840で終了する。
【0041】
ステップ820の挿入に際して、各第2調整機構116により各棒状部材115を上部へ持ち上げ、各開口部を出来るだけ広くしておく。ドリルジャンボにより鋼管120をその広くした各開口部に挿入する。ステップ830では、まず、各第2調整機構116が備えるナットを緩める。次に、各側板102、103の穴104に挿通された各棒状部材115をスライドさせて降下させる。そして、各棒状部材115が鋼管120の上部に隣接する位置に達したところを調整すべき高さ位置とし、その位置でナットを締め、その位置に固定する。
【0042】
支持装置100は、第1調整機構109を備えることで、鋼管120を所定の高さ位置に自由に微調整を行うことができ、この支持装置100を2つ以上用いることで、高低差を付け、所定の角度で鋼管120を挿入することが可能となる。このように高さ位置を調整することが可能であるため、他の現場等への転用が可能となる。また、現物合わせで製作する必要がなくなり、設置の手間を軽減し、余分なコストの発生をなくすことができる。
【0043】
また、支持装置100は、第2調整機構116を備えることで、鋼管120の挿入を妨げることがなく、挿入された鋼管120のがたつきを抑制することができる。これにより、鋼管120の地山等への挿入精度を向上させることができる。さらに、載置部材108を
図6に例示したような断面が凸状の突出部を備えるものとすることで、鋼管挿入時の摩擦抵抗を減少させることができ、スムーズに挿入することができる。
【0044】
これまで本発明の管支持装置および管支持方法について図面に示した実施形態を参照しながら詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0045】
上述した実施形態では、鋼管120の下部と上部を、載置部材108の下部支持部107と棒状部材115により挟持して、鋼管120が上下にがたつくのを抑制しているが、鋼管120の側部にも、載置部材108や第1調整機構109、棒状部材115や第2調整機構116のような部材や機構を設け、鋼管120が左右にがたつくのを抑制することも可能である。
【0046】
例えば、鋼管120の側部に近隣して配置される、上記載置部材108や棒状部材115のような側部接触部材と、その側部接触部材を移動させ、鋼管120の側部に隣接させて固定する、上記第1調整機構109や第2調整機構116のような第3調整機構とをさらに備えることができる。これは、一例であり、鋼管120が左右にがたつくのを抑制することができれば、これ以外の構成を採用することができるものである。