特許第6124590号(P6124590)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6124590ポリフェニルスルホン−ポリテトラフルオロエチレン組成物、及び当該組成物の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6124590
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】ポリフェニルスルホン−ポリテトラフルオロエチレン組成物、及び当該組成物の使用
(51)【国際特許分類】
   C08L 81/02 20060101AFI20170424BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20170424BHJP
   C08L 27/18 20060101ALN20170424BHJP
【FI】
   C08L81/02
   C08J3/20 ZCEW
   C08J3/20CEZ
   !C08L27/18
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-519947(P2012-519947)
(86)(22)【出願日】2010年5月25日
(65)【公表番号】特表2012-532969(P2012-532969A)
(43)【公表日】2012年12月20日
(86)【国際出願番号】EP2010057125
(87)【国際公開番号】WO2011006706
(87)【国際公開日】20110120
【審査請求日】2013年5月10日
【審判番号】不服2015-10665(P2015-10665/J1)
【審判請求日】2015年6月5日
(31)【優先権主張番号】102009027659.9
(32)【優先日】2009年7月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009128
【氏名又は名称】エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】デートレフ ブーマン
(72)【発明者】
【氏名】アルベアト ドレクスラー
(72)【発明者】
【氏名】リカルド ルイス ヴィレマン
【合議体】
【審判長】 加藤 友也
【審判官】 原田 隆興
【審判官】 守安 智
(56)【参考文献】
【文献】 特表平5−500986(JP,A)
【文献】 特開2004−224821(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0190507(US,A1)
【文献】 特表2008−530330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 81/02
C08J 3/20
C08J 3/20
C08L 27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック成形体の製造方法において、
ポリフェニルスルホン(PPSU)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)という2種類のプラスチックを、340〜385℃の温度で、相互に押出成形機内で混合し、こうして得られたコンパウンドを顆粒化し、この顆粒を370〜390℃のスクリュー温度で、押出成形してプラスチック成形体にし、
混合物のPTFE含分が、2〜10質量%であり、
混合物のPPSU含分が、98〜90質量%である
ことを特徴とする、前記製造方法。
【請求項2】
前記プラスチック成形体が耐摩耗性テープである、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、摩擦を減少させるバンド(可撓性液体導管、例えば石油輸送管の摩擦緩和性中間挿入物として用いられるもの(=耐摩耗性テープ"anti-wear-tapes"))を製造するための、ポリフェニルスルホン(PPSU)と、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とから得られる混合物に関する。
【0002】
従来技術
GB 2 441 066(Technip France)は、炭化水素輸送用の、多層に構成された可撓性の管を記載している。少なくとも部分的に対向して動く金属バンドの間には、摩擦緩和性プラスチックバンドが配置されており、このプラスチックバンドは、ガラス転移点が175〜255℃の非晶質ポリマーから成る。このバンドは、ポリフェニルスルホン(PPSU)、及びペルフルオロ化されたポリマー、及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から成る。この発明の特定の実施態様では、85%のポリフェニルスルホン(PPSU)を、15%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と混合し、厚さ1.5mm、幅が約1mのバンドに押出成形される。使用されるプラスチックの分子量については、何ら述べられていない。
【0003】
US 2005/0229991は、GB 2 441 066と似た構成を記載しており、中間層の材料はこの場合、エラストマー性熱可塑性ポリマー、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンゴム(SBS)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン−コポリマー(SEBS)、又はEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン)コポリマーであり、さらにはポリブタジエン、ポリイソプレン、又はポリエチレン−ブチレンコポリマーである。
【0004】
本発明の課題
上述の従来技術の観点から、石油輸送配管における摩擦減少性バンド用の材料及び/又は材料混合物(その場所で支配的な条件(温度は約130℃、圧力300〜400bar)に、従来技術の材料よりも良好に適合されたもの)を発見するという課題が存在した。
【0005】
課題の解決方法
本発明の課題は、ポリフェニルスルホン(PPSU)と、分子量が非常に高く、粒径若しくは粒径分布が小さいポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から、均質な混合物を提供することによって、解決された。使用されるPTFEは、特に高い分子量を有する。しかしながらこのPTFEは、非常に高い溶融温度で加工される工業用プラスチックへの混入に特に適している。
【0006】
本発明による解決法の完全な開発で非常に重要なのは、PPSUマトリックスの断面全体にわたって、PTFEを非常に均一かつ細かく分布させることだけで、テープの厚さが低減する使用持続時間にわたって所望の効果、及び特に調整された機械的特性が、押出方向に対して横方向でも保証されることである。
【0007】
ポリフェニルスルホン(PPSU)
PPSUとしてはポリフェニルスルホンを使用し、これはRADEL(登録商標)Rという名称で、Solvay Advanced Polymers社から市販で手に入る。
【0008】
ポリマーの繰返単位は、以下の式を有する:
【化1】
【0009】
これは、応力亀裂感受性が特に僅かな、透明な高性能プラスチックであり、耐ノッチ衝撃性が非常に高く、また熱によるエージング後も、優れた化学耐性を有するものである。使用されるRADEL R 5000 ntは、防火剤で保護されていないPPSUであり、これは航空(Luftfahrt)のあらゆる要求を満たすものではない。
【0010】
このプラスチックは、医療分野、化学産業、及び衛生設備で部材製造に使用される。このポリマーの密度は、1.29g/cm3(ISO 1183準拠で測定)、降伏応力は、70MPa(ISO 527準拠で測定)、破断点伸びは60%(ISO 527準拠で測定)、引張弾性率が、2,340MPa(ISO 527準拠で測定)、アイゾッド耐ノッチ衝撃性が、23℃で49.4KJ/m2(ISO 180/1 A準拠で測定)、シャルピー耐ノッチ衝撃性が、23℃で58.3KJ/m2(ISO 179/1 eA準拠で測定)である。
【0011】
誘電率が、50Hzで3.4(IEC 60250準拠で測定)、1MHzで3.5(IEC 60250準拠で測定)、誘電損失係数が、50Hzで6 1e−4(IEC 60250準拠で測定)、1MHzで76 1e−4(IEC 60250準拠で測定)、誘電強度は、15kV/mm(IEC 60243-1準拠で測定、ASTM準拠で測定)。誘電強度のための厚さは、3.2mmであり、 IEC 60093準拠の比抵抗は、9e15Ωmである。
【0012】
流れ方向に対して横断面での線膨張は、55×10-6K(ISO 11359準拠で測定)、溶融温度若しくはガラス転移点は、215℃(ISO 11357準拠で測定)、熱変形耐性Aは、207℃(ISO 75 HDT/A(1.8MPa)準拠で測定)、熱変形耐性Bは、214℃(ISO 75 HDT/A(0.45MPa)準拠で測定)、最大温度(短時間)は、180℃、最大温度(継続的)は、160℃(UL 746 (RTI)準拠(Mechanical W/O Imp., 40 000 h)の熱によるエージング)である。最小適用温度は、マイナス100℃である。
【0013】
本発明はとりわけ、部材を製造するための、ポリフェニルスルホンと、ポリテトラフルオロエチレンとから得られる混合物に関し、その特徴は、前記混合物のPTFE含分が、1〜15質量%であり、前記混合物のPPSU含分が、99〜85質量%であることである。
【0014】
前記混合物のPTFE含分は好適には、2〜10質量%であり、前記混合物のPPSU含分は、98質量%〜90質量%である。
【0015】
極めて特に好ましくは、前記混合物のPTFE含分は、5〜10質量%であり、前記混合物のPPSU含分は、95質量%〜90質量%である。
【0016】
本発明はさらに、プラスチック成形体の製造方法に関し、その特徴は、PPSU及びPTFEという2種類のプラスチックを、相互に混合し、押出成形することである。
【0017】
本発明はとりわけ、PPSU及びPTFEという2種類のプラスチックを、340〜385℃の温度で、相互に押出成形機内で混合し、こうして得られたコンパウンドを顆粒化し、この顆粒を370〜390℃のスクリュー温度で、押出成形してプラスチック成形体にする方法に関する。
【0018】
本発明によるプラスチック成形体の製造方法はとりわけ、PPSU及びPTFEという2種類のプラスチックを、345〜385℃の温度で、相互に押出成形機内で混合し、こうして得られたコンパウンドを顆粒化し、この顆粒を375〜390℃のスクリュー温度で、押出成形してプラスチック成形体にする方法である。
【0019】
本発明はさらに、上述の混合物を、耐摩耗性テープの製造に用いる使用に関する。
【0020】
この耐摩耗性テープは、上記の混合物を、押出成形することによって得られる。
【0021】
本発明はまた、液体用の導管に関し、その特徴は、上記の耐摩耗性テープを少なくとも1つ備えていることである。
【0022】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
高分子のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)としては、Zonyl(登録商標)MP 1300という、微粒子状のポリテトラフルオロエチレンを使用する。このPTFEはとりわけ、HT熱可塑性樹脂がベースのポリマー混合物における添加剤として適している。
【0023】
実施例
コンパウンド化の実施例
PPSU95質量%〜60質量%と、PTFE40質量%〜5質量%とからの混合物を、以下のようにコンパウンド化した。
【0024】
2スクリュー式押出成形機(製造者及び名称:Werner & Pfleiderer ZSK25 WLE (K4))で、PPSUを345℃〜380℃のスクリュー温度で1分あたり250回転で溶融させ、脱気し、PTFEは側方の供給用開口部を通じて供給した。
【表1】
【0025】
得られたコンパウンドを、顆粒化した。
【0026】
本発明によるプレートは、それ自体公知の方法で押出成形により、第一工程で得られる顆粒から製造できる。
【0027】
このため、熱により可塑化された溶融物を、一回の押出成形の場合には1つの押出成形機によって、共押出の場合には複数の押出機によって製造し、押出型へと供給する。押出機と、押出ノズルとの間には、それ自体公知の方法でさらなる装置、例えば溶融ポンプ及び/又は溶融フィルターが配置されていてよい。押出成形されたベルトは引き続き、スムーザー又はキャリブレーター装置に送ってもよい。
【0028】
顆粒を新たに溶融させ、長さ1,000mm、幅150mm、厚さ1.5mmの寸法のバンドに押出成形した。溶融温度は、約385℃であった。
【0029】
押出成形の実施例
比較例6は、実施例1に記載の組成を有するバンドに関し、顆粒は347℃の溶融温度でバンドへと押出成形した。
【0030】
実施例7は、実施例1に記載の組成を有するバンドに関し、顆粒は379℃の溶融温度でバンドへと押出成形した。
【0031】
実施例8は、実施例1に記載の組成を有するバンドに関し、顆粒は380℃の溶融温度でバンドへと押出成形した。
【0032】
比較例9は、実施例2に記載の組成を有するバンドに関し、顆粒は347℃の溶融温度でバンドへと押出成形した。
【0033】
比較例10は、実施例2に記載の組成を有するバンドに関し、顆粒は358℃の溶融温度でバンドへと押出成形した。
【0034】
比較例11は、実施例1に記載の組成を有するバンドに関し、顆粒は350℃の溶融温度でバンドへと押出成形した。
【0035】
比較例12は、比較例4又は5に記載の組成を有するバンドに関し、顆粒は352℃の溶融温度でバンドへと押出成形した。
【0036】
得られたバンドは、以下の機械的特徴を有している:
【表2】
【0037】
測定方法
弾性率は、ISO 527-2/1 BA/0,5に従って測定し、シャルピー耐ノッチ衝撃性は、ISO 179-1 /1eAに従って、ガードナー試験は、ASTM D 5420に従って行い、摩擦係数は、ISO 8295に従って測定した。
【0038】
得られた混合物は、液体用導管(例えば可撓性石油輸送管)の製造に用いられる耐摩耗性テープの製造に適している。