(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記工程2において、溶存酸素濃度の低減開始時を基準として、分散液の溶存酸素濃度を40%以上に低減する、請求項1又は2に記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
前記工程2において、分散液の溶存酸素濃度を低減する方法として、前記工程1で調製した分散液を貯留した反応槽内を減圧した後に不活性ガスを導入して常圧に戻す操作を行う、請求項1〜3のいずれかに記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
前記工程1において、疎水性溶媒を含む油相成分に、親水性モノマーと共に予め重合開始剤を含んだ水相成分を分散させることにより分散液を調製する、請求項1〜4のいずれかに記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
親水性ポリマーが、カチオン性基を有するビニルモノマー及び/又はその塩、親水性ノニオン性基を有するビニルモノマー、並びに分子中に少なくとも2個の反応性不飽和基を有する架橋性ビニルモノマーの共重合体を含む、請求項1〜9のいずれかに記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
工程4で得た脱水後の親水性ポリマー粒子の分散液に含まれる疎水性溶媒を置換溶媒に置換する工程5を更に備えた、請求項12に記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0012】
本実施形態に係る親水性ポリマー粒子の製造方法では、疎水性溶媒を含む油相成分に親水性モノマー及び重合開始剤を含む水相成分が分散した分散液の溶存酸素濃度の低減開始から、分散液の加熱開始までの時間を制御し、また、分散液の体積に対して所定量の酸素を供給しながら加熱する。そして、本実施形態に係る親水性ポリマー粒子の製造方法によれば、好適な粘度を有する親水性ポリマー粒子を安定して製造することができる。
【0013】
重合工程において、分散液中の酸素濃度が低い条件で分散液を加熱した場合、生成するラジカル濃度は重合反応が開始するのに十分な濃度に早期に達するため、低温で重合反応が開始する。一方、分散液中の酸素濃度が高い条件で分散液を同一条件で加熱した場合、生成するラジカル濃度は重合反応が開始するのに十分な濃度に達するのに長い時間を要するため、高温で重合反応が開始し、その結果、得られる親水性ポリマー粒子は低分子量となる。
【0014】
ここで、発明者らは、まず、分散液の体積に対して所定量の酸素を供給しながら加熱することにより反応開始温度を一定に制御できることを見出した。しかしながら、加熱時の酸素供給量の調整のみでは、加熱開始までの間に生成するラジカル量が変動するため、好適な粘度を有する親水性ポリマー粒子を安定して製造することが困難であった。これに対し、発明者らは、更に、分散液の加熱開始までの時間を制御することにより、生成するラジカル量を制御することができることを見出し、それを組み合わせることにより好適な粘度を有する親水性ポリマー粒子を安定して製造することに成功した。
【0015】
本実施形態に係る方法で製造される親水性ポリマー粒子は、わずかな物性の差が感触に影響すると考えられる化粧料、洗浄料の感触を改善する添加剤として好適に用いることができる。
【0016】
(工程1:分散液調製工程)
工程1では、まず、反応槽内に疎水性溶媒を含む油相成分を仕込み、それを撹拌しながら親水性モノマー及び重合開始剤を含む水相成分を供給して混合する。
【0017】
1.油相成分
油相成分は、疎水性溶媒を含むが、それに加えて分散剤を構成成分として含んでもよい。
【0018】
(1)疎水性溶媒
本出願において「疎水性溶媒」とは、25℃での水に対する溶解度が1質量%以下である溶媒をいう。
【0019】
かかる疎水性溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの炭化水素系溶媒;四塩化炭素、ジクロルエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;イソパラフィン系炭化水素系溶媒が挙げられる。これらのうち、化学物性や取り扱い性の観点から、炭化水素系溶媒が好ましく、へキサン、シクロヘキサンがより好ましく、シクロヘキサンが更に好ましい。疎水性溶媒は、単一種を用いてもよく、また、複数種を混合して用いてもよい。
【0020】
疎水性溶媒の仕込み量は、分散液の安定性の観点より、全モノマー量に対して好ましくは1質量倍以上、より好ましくは2質量倍以上、更に好ましくは4質量倍以上、更に好ましくは6質量倍以上であり、また、生産性の観点より、好ましくは20質量倍以下、より好ましくは17質量倍以下、更に好ましくは15質量倍以下、更に好ましくは10質量倍以下である。
【0021】
(2)分散剤
分散剤としては、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤が挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ソルビタンステアリン酸エステル、ソルビタンパルミチン酸エステル、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシルエチルセルロース、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステルなどの多価アルコール型ノニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどのポリエチレングリコール型ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。これらのうち、分散安定性の観点から、多価アルコール型ノニオン性界面活性剤が好ましく、ソルビタンステアリン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステルがより好ましく、ショ糖ステアリン酸エステルが更に好ましい。分散剤は、単一種を用いてもよく、また、複数種を混合して用いてもよい。
【0022】
また、分散剤としては、分散安定性の観点から、親水性−親油性バランス(HLB)が好ましくは4〜30、より好ましくは5〜20、更に好ましくは6〜10の界面活性剤が挙げられる。なお、HLB値は、デービスの式に基づき、「HLB=7+Σ(親水基の数)−Σ(疎水基の数)」により、算出することができる[(参考)「界面活性剤」竹内節著、米田出版(1999年)]。
【0023】
分散剤の量は、水相成分を油相成分中に分散させる観点から、全モノマー100質量部に対して好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、親水性ポリマー粒子への混入量を低減する観点から、好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
【0024】
(3)その他の任意成分
油相成分は、その他にこの工程1の分散液調整工程、後述の工程3の重合工程に影響を及ぼさない成分を含んでいてもよい。
【0025】
2.水相成分
水相成分は、親水性モノマー、重合開始剤、及び水を含む水溶液である。
【0026】
(1)親水性モノマー
親水性モノマーとしては、例えば、アミノ基、アンモニウム基、ピリジル基、イミノ基などのカチオン性基を有するビニルモノマー及び/又はその塩(以下「カチオン性モノマー」という。);ヒドロキシ基、アミド基、エステル基、エーテル基などの親水性ノニオン性基を有するビニルモノマー(以下「ノニオン性モノマー」という。);カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基などのアニオン性基を有するビニルモノマー及び/又はその塩(以下「アニオン性モノマー」という。);ベタイン構造を有する親水性両性イオン性基含有ビニルモノマー(以下「両性モノマー」という。)が挙げられる。また、分子中に少なくとも2個の反応性不飽和基を有する架橋性ビニルモノマー(以下「架橋性モノマー」という。)が挙げられる。
【0027】
親水性モノマーとして、性能や感触向上の観点から、カチオン性モノマー及びノニオン性モノマーのうち少なくとも1種を構成成分として用いることが好ましい。これらの量は、溶媒への親和性の観点から、架橋性モノマーを除くモノマー全量に対して好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
【0028】
また、親水性ポリマー粒子を水に溶解させた際の水溶液粘度を向上させる観点から、親水性モノマーとして、架橋性モノマーを構成成分として用いることが好ましい。その量は、架橋性モノマーを除くモノマー100質量部に対して、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、親水性ポリマー粒子を水に溶解させた際の水溶液粘度、及び溶解時間を低減する観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは1質量部以下、更に好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.05質量部以下である。
【0029】
(1−1)カチオン性モノマー
カチオン性モノマーとしては、得られる親水性ポリマー粒子の物性安定性の観点から、好ましくはアミノ基若しくは4級アンモニウム塩を有するモノマーであり、より好ましくは4級アンモニウム塩を有するモノマーである。4級アンモニウム塩を有するモノマーしては、例えば、総炭素数が2〜44の4級アンモニウム塩基を有する(メタ)アクリル酸エステル、総炭素数が2〜44の4級アンモニウム塩基を有する(メタ)アクリルアミド、総炭素数が2〜44の4級アンモニウム塩基を有するスチレン、ビニルピリジンなどのN−ビニル複素環化合物類、総炭素数が2〜44の4級アンモニウム塩基を有するアルキルビニルエーテル、及びジアリル型4級アンモニウム塩構造を有するビニルモノマー等が挙げられる。
【0030】
得られる親水性ポリマー粒子の物性安定性の観点から、これらのうち好ましい4級アンモニウム塩基含有モノマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、及びジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、好ましくはジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートを硫酸ジエチルなどにより4級化して得られる4級アンモニウム塩基含有モノマー等が挙げられる。
【0031】
(1−2)ノニオン性モノマー
ノニオン性モノマーとしては、例えば、ビニルアルコール、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリルアミド、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、炭素数1〜8のアルキル(メタ)アクリルアミド、総炭素数が2〜8のジアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−ビニル環状アミド、炭素数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、環状アミド基を有する(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらのうち、モノマーの反応性の観点から、炭素数1〜8のアルキル(メタ)アクリルアミド、総炭素数が2〜8のジアルキル(メタ)アクリルアミドが好ましく、総炭素数が2〜8のジアルキル(メタ)アクリルアミドがより好ましい。
【0032】
好ましい(メタ)アクリルアミド系モノマーとしては、例えば、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等の総炭素数が2〜8のジアルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。これらのうちN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0033】
(1−3)架橋性モノマー
架橋性モノマーは、分子中に少なくとも2個の反応性不飽和基を有する。架橋性モノマーとしては、例えば、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミド、ジビニル化合物、ポリアリル化合物、不飽和アルコールの(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらのうち、モノマーの反応性の観点から、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートを用いることがより好ましく、ポリエチレングリコールジメタクリレートを用いることが更に好ましい。
【0034】
(1−4)アニオン性モノマー
アニオン性モノマーとしては、重合性の不飽和基を有するカルボン酸モノマー、重合性の不飽和基を有するカルボン酸モノマーの酸無水物、重合性の不飽和基を有するスルホン酸モノマー、重合性の不飽和基を有するリン酸モノマー等が挙げられる。これらのうち重合性の不飽和基を有するカルボン酸モノマー、重合性の不飽和基を有するカルボン酸モノマーの酸無水物、重合性の不飽和基を有するスルホン酸モノマーを用いることが好ましい。
【0035】
なお、アニオン性基は塩基性物質により任意の中和度に中和されていてもよく、その場合、生成する親水性ポリマー粒子中の塩における陽イオンとしては、例えば、アンモニウムイオン;例えばトリメチルアンモニウムイオンやトリエチルアンモニウムイオンなどのアルキル基の総炭素数が3〜54のトリアルキルアンモニウムイオン;炭素数2〜4のヒドロキシアルキルアンモニウムイオン;総炭素数4〜8のジヒドロキシアルキルアンモニウムイオン;総炭素数6〜12のトリヒドロキシアルキルアンモニウムイオン;アルカリ金属イオン;アルカリ土類金属イオン等が挙げられる。この中和は、モノマーで行ってもよく、また、親水性ポリマー粒子が生成した後に行ってもよい。
【0036】
(1−5)両性モノマー
両性モノマーには、重合性の不飽和基とカルボキシベタイン基とを有するモノマー、及び重合性の不飽和基とスルホベタイン基とを有するモノマーのうち少なくとも一方を用いることが好ましい。両性モノマーとしては、例えば、N−メタクロイルエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−メチルカルボキシベタイン、3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0037】
(2)重合開始剤
重合開始剤として、ラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤としては、重合反応を安定して開始させる観点から、水相成分中に均一に溶解するものが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化水素、有機過酸化物及びその塩、無機過酸化物及びその塩、アゾビス系化合物、並びにアゾビス系化合物と還元剤とを組み合わせたレドックス系重合開始剤が挙げられる。
【0038】
重合開始剤の10時間半減期温度は、重合反応の反応率を高くして残留モノマー量を少なくする観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは30℃以上、更に好ましくは50℃以上であり、また、水相成分への重合開始剤残存量を低減する観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは60℃以下である。[実施例]56℃
具体的には、重合開始剤としては、例えば、t−ブチルパーオキサイド、t−アミルパーオキサイド、クミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)二塩酸塩などの有機過酸化物、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸化物、過酸化水素、過硫酸塩とトリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエチルアニリンなどの第3級アミンとの組み合わせ等が挙げられる。これらのうち、反応速度の観点から、有機過酸化物が好ましく、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)二塩酸塩がより好ましく、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩が更に好ましい。重合開始剤は、単一種を用いてもよく、また、複数種を用いてもよい。
【0039】
重合開始剤の量は、重合反応の反応率を高くして残留モノマー量を少なくする観点から、全モノマー100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上である。また、重合開始剤の量は、重合反応後の重合開始剤由来成分の含有量低減の観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。
【0040】
(3)水
水としては、蒸留水、脱イオン水、水道水が挙げられる。水の量は、水相成分を油相成分中に分散させる観点から、全油相成分量に対して好ましくは1〜50体積%、より好ましくは5〜40体積%、10〜30体積%である。
【0041】
(4)その他の任意成分
水相成分は、その他に必要に応じて、前記の分散剤や重合禁止剤を構成成分として含んでいてもよい。
【0042】
3.分散液の調製方法
分散液の調製方法としては、疎水性溶媒を含む油相成分に、親水性モノマー、重合開始剤、及び水を含む水相成分を供給して分散液を調製する方法、疎水性溶媒を含む油相成分に、親水性モノマー及び水を供給口から供給すると同時に、重合開始剤を別の供給口から供給して分散液を調製する方法、疎水性溶媒を含む油相成分に、親水性モノマー及び水を供給した後に重合開始剤を供給して分散液を調製する方法が挙げられる。これらのうち、分散液を均一に混合する観点から、疎水性溶媒を含む油相成分に、親水性モノマー、重合開始剤、及び水を含む水相成分を供給して分散液を調製する方法が好ましい。
【0043】
分散液の調製に用いる分散装置としては、例えば、反応槽内の撹拌翼、駆動部を有する高圧ホモジナイザー、ラインミキサー、駆動部を有さない静止型混合器等が挙げられる。これらのうち、低動力で分散が可能であると共に、機器の洗浄やメンテナンスが容易であることから、静止型混合器を用いることが好ましい。
【0044】
静止型混合器を用いる場合、反応槽に外部循環ラインを設置すると共に、その外部循環ライン途中に静止型混合器を介設し、そして、水相成分及び油相成分を外部循環ラインに循環させて静止型混合器に流通させることにより、水相成分が油相成分に分散した分散液を得ることが好ましい。
【0045】
この場合、静止型混合器に流通させる水相成分及び油相成分或いは分散液の液流量は、静止型混合器部での分散性を高め、また静止型混合器での圧力損失を抑制する観点から、好ましくは0.1〜1000L/分、より好ましくは0.5〜500L/分である。外部循環ラインに循環させて静止型混合器に流通させる水相成分及び油相成分或いは分散液の温度は、重合反応の開始を制御する観点から、モノマーの重合開始温度以下であって、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下であり、分散液の安定性の観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上である。
【0046】
得られる分散液に含まれる水相成分の体積平均粒子径は、分散液の安定性、及び重合反応により得られる親水性ポリマー粒子内から効率的に疎水性溶媒を除去する観点から、好ましくは0.1μm以上であり、また、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下である。
【0047】
水相成分の粒子径の変動係数は、生産性の観点、及び重合反応により得られる親水性ポリマー粒子内から効率的に疎水性溶媒を除去する観点から、好ましくは1%以上、より好ましくは10%以上であり、また、好ましくは60%以下、より好ましくは55%以下である。
【0048】
(工程2:溶存酸素低減工程)
工程2では、重合反応の反応開始時期を制御するために、前記工程1で得られた分散液の溶存酸素濃度を低減する。
【0049】
疎水性溶媒の場合、酸素濃度計では溶存酸素濃度の絶対値の測定が困難であるため、工程2の分散液の溶存酸素濃度は、溶存酸素濃度低減操作前の溶存酸素濃度に対する相対値、すなわち、分散液の溶存酸素濃度の低減率にて表すことができる。このときの分散液の溶存酸素濃度の低減率は、重合反応の開始を制御する観点から、この工程2の溶存酸素濃度の低減開始時の溶存酸素濃度を基準として、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上、更に好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上である。また、このときの分散液の溶存酸素濃度の低減率は、この工程2に要する時間を短縮する観点から、好ましくは99%以下、より好ましくは90%以下である。
【0050】
溶存酸素濃度は公知の方法で測定することができる。溶存酸素濃度の測定方法としては、例えば、ガルバニ電池式酸素濃度計を用いる方法、ポーラログラフ式酸素濃度計を用いる方法等が挙げられる。
【0051】
分散液の溶存酸素濃度を低減する方法としては、例えば、前記工程1で調製した分散液を貯留した反応槽内の気体を排気して減圧にした後に不活性ガスを導入して常圧に戻す方法、分散液中に直接不活性ガスを導入する方法、分散液を貯留した反応槽内の上部空間部に不活性ガスを流通させる方法、及び反応槽内に不活性ガスを導入して加圧にした後にガスを反応槽内から排出して常圧に戻す方法等が挙げられる。
【0052】
前記の方法のうち、効率的に分散液の溶存酸素を低減する観点から、反応槽内の気体を排気して減圧にした後に不活性ガスを導入して常圧に戻す方法が好ましい。ここで、不活性ガスとは、重合反応に不活性なガスである。かかる不活性ガスとしては、具体的には、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられる。これらのうち、工業的な入手性及び取り扱いの容易性の観点から、窒素が好ましい。不活性ガスには、単一種の単体ガスを用いてもよく、また、複数種の混合ガスを用いてもよい。減圧時の圧力は、溶存酸素濃度の低減効率の観点から、好ましくは40kPa(絶対圧力)以下、より好ましくは30kPa(絶対圧力)以下であり、また、真空設備の負荷を軽減する観点から、好ましくは1kPa(絶対圧力)以上、より好ましくは3kPa(絶対圧力)以上、更に好ましくは10kPa(絶対圧力)以上、更に好ましくは20kPa(絶対圧力)以上である。
【0053】
反応槽内の気体を排気して不活性ガスにより常圧に戻す操作は、溶存酸素濃度を低減する観点から、繰り返し行うことが好ましい。繰り返す回数は、溶存酸素濃度を低減する観点から、好ましくは2回以上、より好ましくは3回以上、更に好ましくは4回以上であり、生産性を向上させる観点から、好ましくは10回以下、より好ましくは8回以下、更に好ましくは6回以下である。
【0054】
工程2での分散液の温度は、分散液の安定性の観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上、更に好ましくは25℃以上であり、また、重合反応の開始を制御する観点から、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは35℃以下、更に好ましくは30℃以下である。
【0055】
(工程3:重合工程)
工程3では、前記工程2で溶存酸素濃度を低減した分散液を反応槽中で撹拌すると共に酸素を供給しながら、前記反応槽内で分散液を加熱して昇温させることにより水相中で親水性モノマーを重合させ、それによって親水性ポリマー粒子が油相成分に分散した分散液を得る。
【0056】
また、工程3での重合反応のための加熱開始時点は、前記工程2における分散液の溶存酸素濃度の低減開始から0.1時間以上且つ3.5時間以下経過後である。ここで、工程3での加熱開始時点とは、前記工程2で溶存酸素濃度を低減した分散液を貯留した反応槽に、酸素を供給しながら反応槽内の分散液の加熱を開始する時であり、昇温速度が毎時1℃以上になった時点をいう。
【0057】
前記工程2における分散液の溶存酸素濃度の低減開始から工程3での重合反応のための加熱開始までの時間は、前記工程2において分散液の溶存酸素を効率的に低減する観点、重合反応の開始時期を制御する観点及び得られる親水性ポリマー粒子を溶解させた水溶液の粘度を制御する観点から、0.1時間以上であり、好ましくは0.3時間以上、より好ましくは0.5時間以上、更に好ましくは0.7時間以上、更に好ましくは0.9時間以上、更に好ましくは1.0時間以上であり、また、得られる親水性ポリマー粒子を溶解させた水溶液の粘度を制御する観点から、3.5時間以下であり、好ましくは3時間以下、より好ましくは2.5時間以下、更に好ましくは2.0時間以下、更に好ましくは1.7時間以下、更に好ましくは1.3時間以下である。
【0058】
これらの観点を総合すると、前記時間は、0.1時間以上且つ3.5時間以下であり、好ましくは0.1時間以上且つ3時間以下、より好ましくは0.1時間以上且つ2.5時間以下、更に好ましくは0.1時間以上且つ2.0時間以下、更に好ましくは0.5時間以上且つ2.0時間以下、更に好ましくは0.7時間以上且つ2.0時間以下、更に好ましくは0.9時間以上且つ1.7時間以下、更に好ましくは1.0時間以上且つ1.3時間以下である。
【0059】
本実施形態に係る親水性ポリマー粒子の製造方法によれば、このように疎水性溶媒を含む油相成分に親水性モノマー及び重合開始剤を含む水相成分が分散した分散液の溶存酸素濃度の低減開始から、分散液の加熱開始までの時間を制御することで、反応開始までの反応槽内の酸素濃度が適切に制御され、反応開始時期を一定に制御することができ、好適な粘度を有する親水性ポリマー粒子を安定して製造することができる。
【0060】
工程3での加熱時の昇温速度は、重合反応の開始時期を制御する観点及び得られる親水性ポリマー粒子を溶解させた水溶液の粘度を制御する観点から、好ましくは毎時100℃以下、より好ましくは毎時80℃以下、更に好ましくは毎時70℃以下、更に好ましくは毎時60℃以下、更に好ましくは毎時50℃以下であり、また、昇温に要する時間を短くする観点、重合反応の開始時期を制御する観点及び得られる親水性ポリマー粒子を溶解させた水溶液の粘度を制御する観点から、好ましくは毎時1℃以上、より好ましくは毎時5℃以上、更に好ましくは毎時10℃以上、更に好ましくは毎時20℃以上、更に好ましくは毎時35℃以上、更に好ましくは毎時40℃以上である。
【0061】
工程3での分散液への酸素の供給量は、得られる親水性ポリマー粒子を溶解させた水溶液の粘度を制御する観点から、前記工程2で得た分散液の体積に対して、1時間当たり標準状態(25℃、101.3kPa(絶対圧力))で酸素として0.02体積%以上であり、好ましくは0.05体積%以上、より好ましくは0.10体積%以上、更に好ましくは0.20体積%以上、更に好ましくは0.30体積%以上であり、また、0.9体積%以下であり、好ましくは0.8体積%以下、より好ましくは0.7体積%以下、更に好ましくは0.6体積%以下、更に好ましくは0.5体積%以下、更に好ましくは0.45体積%以下、更に好ましくは0.40体積%以下である。
【0062】
これらの観点を総合すると、工程3での分散液への酸素の供給量は、前記工程2で得た分散液の体積に対して、1時間当たり標準状態(25℃、101.3kPa(絶対圧力))で酸素として0.02体積%以上且つ0.9体積%以下、好ましくは0.05体積%以上且つ0.8体積%以下、より好ましくは0.10体積%以上且つ0.8体積%以下、更に好ましくは0.10体積%以上且つ0.5体積%以下、更に好ましくは0.10体積%以上且つ0.45体積%以下、更に好ましくは0.30体積%以上且つ0.45体積%以下、更に好ましくは0.30体積%以上且つ0.40体積%以下である。
【0063】
工程3での分散液への酸素の供給方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、コンプレッサー、ボンベ、ガス貯留タンクなどの酸素供給源からの酸素供給、反応槽内を減圧した際の反応槽外部との圧力差による漏れ込みによる酸素供給等が挙げられる。また、酸素は反応槽の空間部に供給してもよく、溶液中に供給してもよい。分散液への酸素の溶解速度を高める観点から、溶液中に供給することが好ましい。
【0064】
工程3での分散液への酸素の供給量の調整は、操作性の観点から、酸素導入弁の開閉度、反応容器の減圧度の調整、反応槽の気密度の調整等により行うのが好ましい。
【0065】
分散液への酸素の供給に酸素含有ガスを用いる場合、その酸素含有ガス中の酸素含有量は、分散液への酸素の溶解速度を高める観点から、好ましくは1体積%以上、より好ましくは5体積%以上であり、また、酸素含有ガスを簡便に取り扱う観点から、好ましくは50体積%以下、より好ましくは40体積%以下である。酸素含有ガスの具体例としては、例えば、空気が挙げられる。
【0066】
工程3での反応槽内の圧力は、疎水性溶媒が反応中に還流し、一定温度で重合反応を行う観点から、好ましくは80kPa(絶対圧力)以下、より好ましくは60kPa(絶対圧力)以下であり、また、真空設備の負荷を軽減する観点から、好ましくは1kPa(絶対圧力)以上、より好ましくは5kPa(絶対圧力)以上、更に好ましくは20kPa(絶対圧力)以上、更に好ましくは40kPa(絶対圧力)以上である。
【0067】
工程3での反応温度、つまり、分散液の温度は、反応速度を高める観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、更に好ましくは50℃以上であり、また、重合反応を制御する観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下、更に好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下である。
【0068】
工程3で得られる親水性ポリマー粒子が油相成分に分散した分散液は、親水性ポリマー粒子の含有量((親水性ポリマー粒子の質量/(親水性ポリマー粒子の質量+油相成分の質量))×100)が、生産性を高める観点から、好ましくは8質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また、分散液の安定性を高める観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0069】
工程3で得られる分散液に含まれる親水性ポリマー粒子の体積平均粒子径は、親水性ポリマー粒子の生産性の観点から、好ましく0.1μm以上であり、また、親水性ポリマー粒子内から効率的に疎水性溶媒を除去する観点から、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは7μm以下である。また、親水性ポリマー粒子の粒子径の変動係数は、親水性ポリマー粒子内から効率的に疎水性溶媒を除去する観点から、好ましくは60%以下、より好ましくは55%以下である。親水性ポリマー粒子の体積平均粒子径及び粒子径の変動係数は、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置を用いて求めることができる。
【0070】
(工程4:脱水工程)
本実施形態に係る製造方法では、工程4として、工程3に続いて、工程3で得た分散液を脱水して水の含有量を低減した親水性ポリマー粒子の分散液を得る工程を有することができる。
【0071】
具体的には、例えば、工程3で得た親水性ポリマー粒子の分散液を反応槽内で昇温して水と疎水性溶媒とを共沸させ、発生した蒸気をコンデンサーで凝縮した後に水と疎水性溶媒とに静置分離する。分離した疎水性溶媒だけを反応槽内に還流させる一方、水のみを留去する。
【0072】
この工程4において、槽内温度は、生産性を高める観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは90℃以上であり、また、経済性の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下である。脱水時間は、水分量を低減する観点から、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上であり、また、経済性の観点から、好ましくは50時間以下、より好ましくは10時間以下である。槽内圧力は、必要に応じて例えば10〜100kPa(絶対圧力)に減圧する。
【0073】
脱水後の分散液における親水性ポリマー粒子の含有量は、生産性を高める観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、また、分散液において親水性ポリマー粒子の沈降を抑制する観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0074】
脱水後の親水性ポリマー粒子の体積平均粒子径は、親水性ポリマー粒子の生産性の観点から、好ましくは0.1μm以上、親水性ポリマー粒子内から効率的に疎水性溶媒を除去する観点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下である。脱水後の親水性ポリマー粒子の変動係数は、親水性ポリマー粒子内から効率的に疎水性溶媒を除去する観点から、好ましくは60%以下、より好ましくは55%以下である。
【0075】
(工程5:溶媒置換工程)
本実施形態に係る製造方法では、工程5として、工程4に続いて、工程4で脱水して得た分散液の疎水性溶媒を置換溶媒に置換した親水性ポリマー粒子の分散液を得る工程を有することができる。
【0076】
具体的には、例えば、工程4で脱水して得た分散液に置換溶媒を添加した後、分散液を反応槽内で昇温して疎水性溶媒を留去する。
【0077】
この工程5において、槽内温度は、生産性を高める観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、また、経済性の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下である。留去時間は、疎水性溶媒を留去ずる観点から、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは10時間以上、更に好ましくは15時間以上であり、また、経済性の観点から、好ましくは50時間以下、より好ましくは40時間以下、更に好ましくは30時間以下である。槽内圧力は、生産性を高める観点から、好ましくは100kPa(絶対圧力)以下、より好ましくは50kPa(絶対圧力)以下であり、経済性の観点から、好ましくは10kPa(絶対圧力)以上、より好ましくは20kPa(絶対圧力)以上である。
【0078】
置換溶媒としては、例えば、多価アルコール、界面活性剤、油脂等が挙げられる。置換溶媒は親水性粒子の凝集を防ぐ観点から、界面活性剤が好ましい。置換溶媒は、単一種を用いてもよく、また、複数種を混合して用いてもよい。
【0079】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩などの陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステルなどのノニオン性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は親水性粒子の凝集を防ぐ観点からポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。
【0080】
置換溶媒の融点は、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上である。また、置換溶媒の沸点は、溶媒置換工程時に置換溶媒が留出するのを抑制する観点から、常圧における沸点が好ましくは101℃以上、より好ましくは110℃以上である。
【0081】
工程5で溶媒置換されて最終的に得られる分散液における置換溶媒の含有量((置換溶媒の質量/(親水性ポリマー粒子の質量+置換溶媒の質量))×100)は、親水性ポリマー粒子同士の凝集を抑制する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、また、生産性を高める観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
【0082】
親水性ポリマー粒子の重合に用いた全モノマー質量に対する置換溶媒の添加量は、親水性ポリマー粒子同士の凝集を抑制する観点から、好ましくは0.3kg-置換溶媒/kg-全モノマー以上、より好ましくは0.5kg-置換溶媒/kg-全モノマー以上、更に好ましくは0.8kg-置換溶媒/kg-全モノマー以上、更に好ましくは1.0kg-置換溶媒/kg-全モノマー以上であり、また、生産性を高める観点から、好ましくは10kg-置換溶媒/kg-全モノマー以下、より好ましくは8kg-置換溶媒/kg-全モノマー以下、更に好ましくは5kg-置換溶媒/kg-全モノマー以下、更に好ましくは2kg-置換溶媒/kg-全モノマー以下である。
【0083】
工程5で溶媒置換されて最終的に得られる分散液における親水性ポリマー粒子の含有量((親水性ポリマー粒子の質量/(親水性ポリマー粒子の質量+置換溶媒の質量))×100)は、生産性を高める観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20重量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、また、親水性ポリマー粒子同士の凝集を抑制する観点から、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、更に好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。この親水性ポリマー粒子の含有量は、置換溶媒の量によって制御することができる。
【0084】
工程5で得られる分散液に含まれる親水性ポリマー粒子の体積平均粒子径及び変動係数は、工程4の親水性ポリマー粒子のものとほぼ同一である。親水性ポリマー粒子の体積平均粒子径は、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下であり、また、好ましくは0.1μm以上である。親水性ポリマー粒子の変動係数は、好ましくは60%以下、より好ましくは55%以下である。
【0085】
工程5で得られた分散液を水に溶解させて親水性ポリマー粒子の濃度を1.0質量%に調製した水溶液の30℃における粘度は、化粧料や洗浄料に配合した際の化粧料や洗浄料の感触を改善する観点から、好ましくは1500mPa・s以上、より好ましくは1700mPa・s以上、更に好ましくは2000mPa・s以上、更に好ましくは2100mPa・s以上、更に好ましくは2300mPa・s以上であり、また、好ましくは4000mPa・s以下、より好ましくは3300mPa・s以下、更に好ましくは2800mPa・s以下、更に好ましくは2600mPa・s以下である。水溶液の30℃における粘度は、例えば、後述の実施例に記載の通り、B型粘度計を用いて測定することができる。
【0086】
(濾過・乾燥工程)
必要に応じ、工程3、工程4、及び工程5のうち、いずれかの工程で得られた分散液から、親水性ポリマー粒子を公知の方法で濾別し、次いで濾別した固形分を乾燥することにより親水性ポリマー粒子粉末を得てもよい。この場合、粒子同士の凝集を低減する観点からは、工程4又は工程5から得られた分散液から、親水性ポリマー粒子の固形分を濾別して乾燥することが好ましい。
【0087】
本実施形態に係る製造方法によって得られる親水性ポリマー粒子は、化粧料及び/又は洗浄料の添加剤、各種化学物質の担持体、記録紙用表面改質剤等に利用される。
【0088】
上述した実施形態に関し、更に以下の親水性ポリマー粒子の製造方法を開示する。
【0089】
<1>25℃での水に対する溶解度が1質量%以下である疎水性溶媒を含む油相成分に、親水性モノマー及び重合開始剤を含む水相成分が分散した分散液を調製する工程1と、
前記工程1で調製した分散液の溶存酸素濃度を低減する工程2と、
前記工程2で溶存酸素濃度を低減した分散液を貯留した反応槽に、酸素を供給しながら、前記反応槽内で分散液を加熱して昇温させることにより水相中で親水性モノマーを重合させる工程3とを備え、
前記工程2における分散液の溶存酸素濃度の低減開始から、前記工程3における分散液の加熱開始までの時間を0.1時間以上且つ3.5時間以下とし、
前記工程3における前記反応槽への酸素の供給量を、分散液の体積に対して、1時間当たり温度25℃及び絶対圧力101.3kPaの標準状態で0.02体積%以上且つ0.9体積%以下とする親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0090】
<2>前記工程2における分散液の溶存酸素濃度の低減開始から、前記工程3における分散液の加熱開始までの時間を0.1時間以上とし、好ましくは0.3時間以上、より好ましくは0.5時間以上、更に好ましくは0.7時間以上、更に好ましくは0.9時間以上、更に好ましくは1.0時間以上とし、また、3.5時間以下とし、好ましくは3時間以下、より好ましくは2.5時間以下、更に好ましくは2.0時間以下、更に好ましくは1.7時間以下、更に好ましくは1.3時間以下とする、前記<1>に記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0091】
<3>前記工程2における分散液の溶存酸素濃度の低減開始から、前記工程3における分散液の加熱開始までの時間を0.1時間以上且つ3.5時間以下とし、好ましくは0.1時間以上且つ3時間以下、より好ましくは0.1時間以上且つ2.5時間以下、更に好ましくは0.1時間以上且つ2.0時間以下、更に好ましくは0.5時間以上且つ2.0時間以下、更に好ましくは0.7時間以上且つ2.0時間以下、更に好ましくは0.9時間以上1.7時間以下、更に好ましくは1.0時間以上1.3時間以下とする、前記<1>に記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0092】
<4>前記工程3における前記反応槽への酸素の供給量を、前記工程2で得た分散液の体積に対して、1時間当たり温度25℃及び絶対圧力101.3kPaの標準状態で0.02体積%以上とし、好ましくは0.05体積%以上、より好ましくは0.10体積%以上、更に好ましくは0.20体積%以上、更に好ましくは0.30体積%以上とし、また、0.9体積%以下とし、好ましくは0.8体積%以下、より好ましくは0.7体積%以下、更に好ましくは0.6体積%以下、更に好ましくは0.5体積%以下、更に好ましくは0.45体積%以下、更に好ましくは0.40体積%以下とする、前記<1>〜<3>のいずれかに記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0093】
<5>前記工程3における前記反応槽への酸素の供給量を、前記工程2で得た分散液の体積に対して、1時間当たり温度25℃及び絶対圧力101.3kPaの標準状態で0.02体積%以上且つ0.9体積%以下とし、好ましくは0.05体積%以上且つ0.8体積%以下、より好ましくは0.10体積%以上且つ0.8体積%以下、更に好ましくは0.10体積%以上且つ0.5体積%以下、更に好ましくは0.10体積%以上且つ0.45体積%以下、更に好ましくは0.30体積%以上且つ0.45体積%以下、更に好ましくは0.30体積%以上且つ0.40体積%以下とする、前記<1>〜<3>のいずれかに記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0094】
<6>前記工程1における分散液の調製方法が、好ましくは、疎水性溶媒を含む油相成分に、親水性モノマー、重合開始剤、及び水を含む水相成分を供給して分散液を調製する方法、疎水性溶媒を含む油相成分に、親水性モノマー及び水を供給口から供給すると同時に、重合開始剤を別の供給口から供給して分散液を調製する方法、疎水性溶媒を含む油相成分に、親水性モノマー及び水を供給した後に重合開始剤を供給して分散液を調製する方法であり、より好ましくは疎水性溶媒を含む油相成分に、親水性モノマー、重合開始剤、及び水を含む水相成分を供給して分散液を調製する方法である、前記<1>〜<5>のいずれかに記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0095】
<7>前記工程1における分散液の調製に用いる分散装置が、好ましくは高圧ホモジナイザー、ラインミキサー、又は静止型混合器であり、より好ましくは静止型混合器である、前記<6>に記載の親水性ポリマーの製造方法。
【0096】
<8>前記工程1における分散液の調製に用いる分散装置として静止型混合器を用いる場合、前記静止型混合器に流通させる水相成分及び油相成分或いは分散液の温度が、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下であり、また、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上である、前記<7>に記載の親水性ポリマーの製造方法。
【0097】
<9>前記工程2において、溶存酸素濃度の低減開始時を基準として、分散液の溶存酸素濃度を、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上、更に好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上に低減し、また、好ましくは99%以下、より好ましくは90%以下に低減する、前記<1>〜<8>のいずれかに記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0098】
<10>前記工程2における分散液の溶存酸素濃度を低減する方法が、好ましくは、前記工程1で調製した分散液を貯留した前記反応槽内の気体を排気して減圧にした後に不活性ガスを導入して常圧に戻す方法、分散液中に直接不活性ガスを導入する方法、分散液を貯留した前記反応槽内の上部空間部に不活性ガスを流通させる方法、又は前記反応槽内に不活性ガスを導入して加圧にした後にガスを前記反応槽内から排出して常圧に戻す方法であり、より好ましくは前記工程1で調製した分散液を貯留した前記反応槽内の気体を排気して減圧にした後に不活性ガスを導入して常圧に戻す方法である、前記<1>〜<9>のいずれかに記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0099】
<11>前記工程2における分散液の溶存酸素濃度を低減する方法が、前記工程1で調製した分散液を貯留した前記反応槽内の気体を排気して減圧にした後に不活性ガスを導入して常圧に戻す方法である場合、不活性ガスとして、好ましくは、窒素、アルゴン、又はヘリウムを導入し、より好ましくは窒素を導入する、前記<10>に記載の親水性ポリマーの製造方法。
【0100】
<12>前記工程2における分散液の溶存酸素濃度を低減する方法が、前記工程1で調製した分散液を貯留した前記反応槽内の気体を排気して減圧にした後に不活性ガスを導入して常圧に戻す方法である場合、減圧時の圧力が好ましくは40kPa(絶対圧力)以下、より好ましくは30kPa(絶対圧力)以下であり、また、好ましくは1kPa(絶対圧力)以上、より好ましくは3kPa(絶対圧力)以上、更に好ましくは10kPa(絶対圧力)以上、更に好ましくは20kPa(絶対圧力)以上である、前記<10>又は<11>に記載の親水性ポリマーの製造方法。
【0101】
<13>前記工程2における分散液の溶存酸素濃度を低減する方法が、前記工程1で調製した分散液を貯留した前記反応槽内の気体を排気して減圧にした後に不活性ガスを導入して常圧に戻す方法である場合、前記反応槽内の気体を排気して不活性ガスにより常圧に戻す操作の繰り返す回数は、好ましくは2回以上、より好ましくは3回以上、更に好ましくは4回以上であり、また、好ましくは10回以下、より好ましくは8回以下、更に好ましくは6回以下である、前記<10>〜<12>のいずれかに記載の親水性ポリマーの製造方法。
【0102】
<14>前記工程2において、分散液の温度を、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上、更に好ましくは25℃以上とし、また、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは35℃以下、更に好ましくは30℃以下とする、前記<1>〜<13>のいずれかに記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0103】
<15>前記工程3において、分散液の昇温速度を、好ましくは毎時100℃以下、より好ましくは毎時80℃以下、更に好ましくは70℃以下、更に好ましくは毎時60℃以下、更に好ましくは毎時50℃以下とし、また、好ましくは毎時1℃以上、より好ましくは毎時5℃以上、更に好ましくは毎時10℃以上、更に好ましくは毎時20℃以上、更に好ましくは毎時35℃以上、更に好ましくは毎時40℃以上とする、前記<1>〜<14>のいずれかに記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0104】
<16>前記工程3において、酸素を、好ましくは前記反応槽の空間部又は前記反応槽の溶液中に供給し、より好ましくは前記反応槽の溶液中に供給する、前記<1>〜<15>のいずれかに記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0105】
<17>前記工程3における分散液への酸素の供給に酸素含有ガスを用い、前記酸素含有ガスの酸素含有量が、好ましくは1体積%以上、より好ましくは5体積%以上であり、また、好ましくは50体積%以下、より好ましくは40体積%以下である、前記<1>〜<16>のいずれかに記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0106】
<18>前記工程3における分散液への酸素の供給に酸素含有ガスとして空気を用いる、前記<1>〜<17>いずれかに記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0107】
<19>前記工程3での前記反応槽内の圧力を、好ましくは80kPa(絶対圧力)以下、より好ましくは60kPa(絶対圧力)以下とし、また、好ましくは1kPa(絶対圧力)以上、より好ましくは5kPa(絶対圧力)以上、更に好ましくは20kPa(絶対圧力)以上、更に好ましくは40kPa(絶対圧力)以上とする、前記<1>〜<18>のいずれかに記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0108】
<20>前記工程3における分散液の温度を、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、更に好ましくは50℃以上とし、また、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下、更に好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下とする、前記<1>〜<19>のいずれかに記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0109】
<21>前記工程3で得られる親水性ポリマー粒子が油相成分に分散した分散液における親水性ポリマー粒子の含有量((親水性ポリマー粒子の質量/(親水性ポリマー粒子の質量+油相成分の質量))×100)が、好ましくは8質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である、前記<1>〜<20>のいずれかに記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0110】
<22>前記工程1における油相成分に含まれる疎水性溶媒が、好ましくは炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、及びイソパラフィン系炭化水素系溶媒のうちから選ばれる1種又は2種以上を含み、より好ましくは炭化水素系溶媒を含み、更に好ましくはヘキサン及びシクロヘキサンのうち少なくとも一方を含み、更に好ましくはシクロヘキサンを含む、前記<1>〜<21>のいずれかに記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0111】
<23>前記工程1における疎水性溶媒の仕込み量を、全モノマー量に対して好ましくは1質量倍以上、より好ましくは2質量倍以上、更に好ましくは4質量%以上、更に好ましくは6質量倍以上とし、また、好ましくは20質量倍以下、より好ましくは17質量倍以下、更に好ましくは15質量倍以下、更に好ましくは10質量倍以下とする、前記<1>〜<22>のいずれかに記載の親水性ポリマーの製造方法。
【0112】
<24>前記工程1における親水性モノマーが、カチオン性モノマー及びノニオン性モノマーのうち少なくとも一方を含む、前記<1>〜<23>のいずれかに記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0113】
<25>前記カチオン性モノマー及びノニオン性モノマーの量を、架橋性モノマーを除くモノマー全量に対して、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは100質量%以上とする、前記<24>に記載の親水性ポリマーの製造方法。
【0114】
<26>前記カチオン性モノマーが、好ましくはアミノ基若しくは4級アンモニウム基を有するモノマーであり、より好ましくは4級アンモニウム基を有するモノマーを含み、更に好ましくは総炭素数が2〜44の4級アンモニウム塩基を有する(メタ)アクリル酸エステル及び総炭素数が2〜44の4級アンモニウム塩基を有する(メタ)アクリルアミドのうち少なくとも一方を含み、更に好ましくはジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、及びジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのうちから選ばれる1種又は2種以上を硫酸ジエチル等により4級化して得られる4級アンモニウム塩基含有モノマーを含み、更に好ましくはジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートを硫酸ジエチル等により4級化して得られる4級アンモニウム塩基含有モノマーを含む、前記<24>又は<25>に記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0115】
<27>前記ノニオン性モノマーが、好ましくは炭素数1〜8のアルキル(メタ)アクリルアミド及び総炭素数が2〜8のジアルキル(メタ)アクリルアミドのうち少なくとも一方を含み、より好ましくは総炭素数が2〜8のジアルキル(メタ)アクリルアミドを含み、更に好ましくはN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド及びN,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドのうち少なくとも一方を含み、更に好ましくはN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドを含む、前記<24>〜<26>のいずれかに記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0116】
<28>前記工程1における親水性モノマーが架橋性モノマーを含む、前記<1>〜<27>のいずれかに記載の親水性ポリマーの製造方法。
【0117】
<29>前記架橋性モノマーの量を、前記架橋性モノマーを除くモノマー100質量部に対して、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上とし、また、好ましくは5質量部以下、より好ましくは1質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以下、更に好ましくは0.05質量部以下とする、前記<28>に記載の親水性ポリマーの製造方法。
【0118】
<30>前記架橋性モノマーが、好ましくは多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルを含み、より好ましくはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートのうち少なくとも一方を含み、更に好ましくはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートを含み、更に好ましくはポリエチレングリコールジメタアクリレートを含む、前記<28>又は<29>に記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0119】
<31>前記工程1における水相成分に含まれる重合開始剤がラジカル重合開始剤である、前記<1>〜<30>のいずれかに記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0120】
<32>前記ラジカル重合開始剤が、好ましくは過酸化水素、有機過酸化物及びその塩、無機過酸化物及びその塩、アゾビス系化合物、並びにアゾビス系化合物と還元剤とを組み合わせたレドックス系重合開始剤のうちから選ばれる1種又は2種以上を含み、より好ましくは有機過酸化物を含み、更に好ましくは2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、及び2,2’−アゾビス(2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)二塩酸塩のうちから選ばれる1種又は2種以上を含み、更に好ましくは2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を含む、前記<31>に記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0121】
<33>前記ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度が、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは30℃以上であり、また、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下である、前記<31>又は<32>に記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0122】
<34>前記工程1における水相成分に含まれる重合開始剤の量を、全モノマー100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部とし、また、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは1質量部以下とする、前記<1>〜<33>のいずれかに記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0123】
<35>前記工程1における水相成分に含まれる水の量を、全油相成分量に対して、好ましくは1〜50体積%、より好ましくは5〜40体積%、更に好ましくは10〜30体積%とする、前記<1>〜<34>のいずれかに記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0124】
<36>前記工程1において、分散剤を含む油相成分を用いて分散液を調製する、前記<1>〜<35>のいずれかに記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0125】
<37>前記油相成分に含まれる分散剤が、好ましくはノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤のうちから選ばれる1種又は2種以上を含み、より好ましくはノニオン界面活性剤を含み、更に好ましくは多価アルコール型界面活性剤を含み、更に好ましくはソルビタンステアリン酸エステル及びショ糖ステアリン酸エステルのうち少なくとも一方を含み、更に好ましくはショ糖ステアリン酸エステルを含む、前記<36>に記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0126】
<38>前記油相成分に含まれる分散剤の親水性−親油性バランスが、好ましくは4〜30、より好ましくは5〜20、更に好ましくは6〜10の界面活性剤である、前記<36>又は<37>に記載の親水性ポリマーの製造方法。
【0127】
<39>前記油相成分に含まれる分散剤の量を、全モノマー100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上とし、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、更に好ましくは2質量部以下とする、前記<36>〜<38>のいずれかに記載の親水性ポリマーの製造方法。
【0128】
<40>前記工程3で得た親水性ポリマー粒子の分散液を脱水して水の含有量を低減する工程4を更に備えた、前記<1>〜<39>のいずれかに記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0129】
<41>前記工程4が、工程3で得た親水性ポリマー粒子の分散液を前記反応槽内で昇温して水と疎水性溶媒とを共沸させ、発生した蒸気をコンデンサーで凝縮した後に水と疎水性溶媒とに分離し、分離した水のみを留去する工程である、前記<40>に記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0130】
<42>前記工程4における槽内温度を、好ましくは60℃以上、より好ましくは90℃以上とし、また、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下とする、前記<40>又は<41>に記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0131】
<43>前記工程4における脱水後の分散液における親水性ポリマー粒子の含有量が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である、前記<40>〜<42>のいずれかに記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0132】
<44>前記工程4で得た脱水後の親水性ポリマー粒子の分散液に含まれる疎水性溶媒を置換溶媒に置換する工程5を更に備えた、前記<40>〜<43>のいずれかに記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0133】
<45>前記工程5における槽内温度を、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上とし、また、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下とする、前記<44>に記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0134】
<46>前記工程5における槽内圧力を、好ましくは100kPa(絶対圧力)以下、より好ましくは50kPa(絶対圧力)以上とし、また、好ましくは10kPa(絶対圧力)以上、より好ましくは20kPa(絶対圧力)以上とする、前記<44>又は<45>に記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0135】
<47>前記置換溶媒が、好ましくは多価アルコール、界面活性剤、及び油脂のうちから選ばれる1種又は2種以上を含み、より好ましくは界面活性剤を含み、更に好ましくは陰イオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤のうち少なくとも一方を含み、更に好ましくはノニオン性界面活性剤を含み、更に好ましくはポリオキシエチレンアルキルエーテル及びグリセリン脂肪酸エステルのうち少なくとも一方を含み、更に好ましくはポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む、前記<44>〜<46>のいずれかに記載の親水性ポリマー粒子の製造方法。
【0136】
<48>前記置換溶媒の融点が、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上である、前記<44>〜<47>のいずれかに記載の親水性ポリマーの製造方法。
【0137】
<49>前記工程5で溶媒置換されて最終的に得られる分散液における置換溶媒の含有量(置換溶媒の質量/(親水性ポリマー粒子の質量+置換溶媒の質量)×100)が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である、前記<44>〜<48>のいずれかに記載の親水性ポリマーの製造方法。
【0138】
<50>前記工程5における親水性ポリマー粒子の重合に用いた全モノマー質量に対する置換溶媒の添加量を、好ましくは0.3kg-置換溶媒/kg-全モノマー以上、より好ましくは0.5kg-置換溶媒/kg-全モノマー以上、更に好ましくは0.8kg-置換溶媒/kg-全モノマー以上、更に好ましくは1.0kg-置換溶媒/kg-全モノマー以上とし、また、好ましくは10kg-置換溶媒/kg-全モノマー以下、より好ましくは8kg-置換溶媒/kg-全モノマー以下、更に好ましくは5kg-置換溶媒/kg-全モノマー以下、更に好ましくは2kg-置換溶媒/kg-全モノマー以下とする、前記<44>〜<49>のいずれかに記載の親水性ポリマーの製造方法。
【0139】
<51>前記工程5で溶媒置換されて最終的に得られる分散液における親水性ポリマーの含有量((親水性ポリマー粒子の質量/(親水性ポリマー粒子の質量+置換溶媒の質量))×100)が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である、前記<44>〜<50>のいずれかに記載の親水性ポリマーの製造方法。
【0140】
<52>前記工程5で得られた分散液を水に溶解させて親水性ポリマー粒子の濃度を1.0質量%に調製した水溶液の30℃における粘度が、好ましくは1500mPa・s以上、より好ましくは1700mPa・s以上、更に好ましくは2000mPa・s以上、更に好ましくは2100mPa・s以上、更に好ましくは2300mPa・s以上であり、また、好ましくは4000mPa・s以下、より好ましくは3300mPa・s以下、更に好ましくは2800mPa・s以下、更に好ましくは2600mPa・s以下である、前記<44>〜<51>のいずれかに記載の親水性ポリマーの製造方法。
【実施例】
【0141】
[測定方法]
<親水性ポリマー水溶液の粘度の測定方法>
以下の実施例1〜11及び比較例1〜5で得られた親水性ポリマー粒子の分散液に脱イオン水を加え、親水性ポリマー粒子が完全に溶解するまで撹拌を行って、親水性ポリマー粒子濃度が1.0質量%の水溶液を調製し、B型粘度計(東機産業製、TVB−15)を用いて、30℃における粘度を測定した。
【0142】
<溶存酸素濃度の測定方法>
以下の実施例1〜11及び比較例1〜5において、工程2における溶存酸素低減操作前後のそれぞれで、反応槽底部に設けられたサンプリング口より分散液を採取し、その溶存酸素濃度をガルバニ電池式酸素濃度計「UC−12−SOL」(セントラル科学株式会社製)を用いて測定した。そして、溶存酸素低減操作前の溶存酸素濃度に対する溶存酸素低減操作後の溶存酸素濃度の相対値の百分率を求め、それを溶存酸素濃度の低減率とした。
【0143】
[親水性ポリマー粒子の製造]
以下の実施例1〜11及び比較例1〜5の親水性ポリマー粒子の製造を行った。その内容及び結果は表1及び2にも示す。
【0144】
<実施例1>
実施例1では、次の工程1〜5の操作を行った。
【0145】
(工程1:分散液調製工程)
100Lの反応槽に、シクロヘキサン44.9kg及び分散剤(ショ糖ステアリン酸エステル(HLB=7)、三菱化学フーズ株式会社製、「S−770」)51.2gを仕込んだ。また、30Lのモノマー槽に、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチルの硫酸ジエチル四級化塩(花王株式会社製)の90%水溶液1.5kg、N,N−ジメチルアクリルアミド(株式会社興人製)3.8kg、ポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、「NKエステル14G」、分子量736)1.1g、脱イオン水7.3kg、及び重合開始剤(2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、和光純薬工業株式会社製、「V−50」、10時間半減期温度=56℃)25.2gを仕込んだ。
【0146】
次いで、反応槽内でシクロヘキサン及び分散剤の混合液を撹拌しながら、その中に、モノマー槽からモノマー及び重合開始剤を含んだ水相成分を供給し、引き続いて攪拌を行って混合液を得た。
【0147】
続いて、反応槽中の混合液の温度を27℃に温調すると共に、混合液を静止型混合器が介設された循環ラインに循環させて分散液を調製した。
【0148】
そして、得られた分散液を反応槽内において撹拌しながら、分散液の温度を27〜28℃に調整した。
【0149】
(工程2:溶存酸素低減工程)
反応槽内の圧力を大気圧から26.7kPa(絶対圧力)まで減圧し、その後、反応槽内に窒素ガスを導入して圧力を大気圧に戻す、いわゆる窒素置換操作、つまり、溶存酸素濃度低減操作を合計5回行った。この操作による溶存酸素濃度の低減率は83%であった。なお、窒素置換操作に要した時間は1.4時間であった。
【0150】
(工程3:重合工程)
反応槽内の圧力を57kPa(絶対圧力)にして、酸素含有ガスとして空気(酸素含有量:21体積%)を分散液中に供給した。このときの酸素供給量は、反応槽内の分散液の体積に対して1時間当たり標準状態(25℃、101.3kPa(絶対圧力))で0.60体積%となるように制御した。
【0151】
そして、工程2の窒素置換操作開始、つまり、溶存酸素濃度の低減開始から2.6時間経過後、分散液の加熱を開始して反応槽内の分散液の温度を54〜57℃に昇温し、その温度範囲に維持して40分間重合反応させ、親水性ポリマー粒子が分散した分散液を得た。なお、分散液への酸素の供給開始から0.2時間経過後に分散液の加熱を開始し、分散液の昇温速度は毎時50.8℃であった。
【0152】
(工程4:脱水工程)
工程3の重合反応終了後、反応槽のジャケット温度を95℃に設定してシクロヘキサン及び水を反応槽内から留出させて脱水操作を行なった。留分は、蒸気をコンデンサーで凝縮した後に水とシクロヘキサンとに静置分離し、分離したシクロヘキサンを脱水操作中は連続的に反応槽内に還流させる一方、水のみを反応槽内から留去して行った。脱水操作に要した時間は6.9時間であった。
【0153】
(工程5:溶媒置換工程)
工程4で得られた分散液に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(花王株式会社製、「エマルゲン116」、分子量891、融点25℃)6.5kgを添加し、ジャケット温度を80℃に設定すると共に槽内圧力を26.7kPa(絶対圧力)に減圧してシクロヘキサンを留去した。
【0154】
次いで、ポリオキシエチレンアルキルエーテル1.3kgと脱イオン水0.15kgとの混合溶解液を添加し、再度ジャケット温度を80℃に設定すると共に槽内圧力を40kPa(絶対圧力)に減圧して2回目のシクロヘキサンの留去を行って親水性ポリマー粒子5.2kgを含む分散液を得た。留去に要した時間は、合計で23.1時間であった。
【0155】
得られた分散液を水に溶解させて親水性ポリマー粒子の濃度を1.0質量%に調製した水溶液の30℃における粘度は3470mPa・sであった。また、得られた親水性ポリマー粒子を含む分散液を用いて、表3に示す組成の毛髪洗浄料を調製したところ、程よい滑り性が得られ、濯ぎ時の感触があっさりとした毛髪洗浄剤が得られた。
【0156】
<実施例2>
実施例2では、工程3での酸素供給量を0.35体積%とし、また、工程2の窒素置換操作開始から1.7時間経過後に分散液の加熱を開始した以外は実施例1と同様の操作を行った。なお、工程2での溶存酸素濃度の低減率は89%で、窒素置換操作に要した時間は1.3時間であった。また、工程3での分散液への酸素の供給開始から0.2時間経過後に分散液の加熱を開始し、分散液の昇温速度は毎時46.9℃であった。工程4で脱水操作に要した時間は5.8時間であった。工程5で留去に要した時間は、合計で21.1時間であった。
【0157】
得られた分散液を水に溶解させて親水性ポリマー粒子の濃度を1.0質量%に調製した水溶液の30℃における粘度は2660mPa・sであった。
【0158】
<実施例3>
実施例3では、工程3での酸素供給量を0.35体積%とし、また、工程2の窒素置換操作開始から1.0時間経過後に分散液の加熱を開始した以外は実施例1と同様の操作を行った。なお、工程2での溶存酸素濃度の低減率は77%で、窒素置換操作に要した時間は0.9時間であった。また、工程3での分散液への酸素の供給開始から0.1時間経過後に分散液の加熱を開始し、分散液の昇温速度は毎時47.8℃であった。工程4で脱水操作に要した時間は6.6時間であった。工程5で留去に要した時間は、合計で20.7時間であった。
【0159】
得られた分散液を水に溶解させて親水性ポリマー粒子の濃度を1.0質量%に調製した水溶液の30℃における粘度は2500mPa・sであった。また、得られた親水性ポリマー粒子を含む分散液を用いて、表3に示す組成の毛髪洗浄料を調製したところ、良好な滑り性が得られ、濯ぎ時の滑らかさが持続する毛髪洗浄剤が得られた。
【0160】
<実施例4>
実施例4では、工程2での窒素置換操作を3回行い、工程3での酸素供給量を0.35体積%とし、また、工程2の窒素置換操作開始から0.9時間経過後に分散液の加熱を開始した以外は実施例1と同様の操作を行った。なお、工程2での溶存酸素濃度の低減率は64%で、窒素置換操作に要した時間は0.7時間であった。また、工程3での分散液への酸素の供給開始から0.2時間経過後に分散液の加熱を開始し、分散液の昇温速度は毎時45.0℃であった。工程4で脱水操作に要した時間は6.9時間であった。工程5で留去に要した時間は、合計で24.2時間であった。
【0161】
得られた分散液を水に溶解させて親水性ポリマー粒子の濃度を1.0質量%に調製した水溶液の30℃における粘度は2180mPa・sであった。
【0162】
<実施例5>
実施例5では、工程3での酸素供給量を0.77体積%とし、また、工程2の窒素置換操作開始から1.6時間経過後に分散液の加熱を開始した以外は実施例1と同様の操作を行った。なお、工程2での溶存酸素濃度の低減率は82%で、窒素置換操作に要した時間は1.3時間であった。また、工程3での分散液への酸素の供給開始から0.1時間経過後に分散液の加熱を開始し、分散液の昇温速度は毎時43.4℃であった。工程4で脱水操作に要した時間は6.7時間であった。工程5で留去に要した時間は、合計で21。0時間であった。
【0163】
得られた分散液を水に溶解させて親水性ポリマー粒子の濃度を1.0質量%に調製した水溶液の30℃における粘度は1640mPa・sであった。また、得られた親水性ポリマー粒子を含む分散液を用いて、表3に示す組成の毛髪洗浄料を調製したところ、程よい滑り性が得られ、濯ぎ時の感触がしっとりとした毛髪洗浄剤が得られた。
【0164】
<実施例6>
実施例6では、工程3での酸素供給量を0.25体積%とし、また、工程2の窒素置換操作開始から1.1時間経過後に分散液の加熱を開始した以外は実施例1と同様の操作を行った。なお、工程2での溶存酸素濃度の低減率は60%で、窒素置換操作に要した時間は0.9時間であった。また、工程3での分散液への酸素の供給開始から0.2時間経過後に分散液の加熱を開始し、分散液の昇温速度は毎時46.3℃であった。工程4で脱水操作に要した時間は7.7時間であった。工程5で留去に要した時間は、合計で21.8時間であった。
【0165】
得られた分散液を水に溶解させて親水性ポリマー粒子の濃度を1.0質量%に調製した水溶液の30℃における粘度は2760mPa・sであった。
【0166】
<実施例7>
実施例7では、次の工程1〜5の操作を行った。
【0167】
(工程1:分散液調製工程)
5Lの反応槽に、シクロヘキサン2.2kg及び分散剤(ショ糖ステアリン酸エステル(HLB=7))2.6gを仕込んだ。また、1Lのモノマー槽に、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチルの硫酸ジエチル四級化塩の90%水溶液75g、N,N−ジメチルアクリルアミド190g、ポリエチレングリコールジメタクリレート0.06g、脱イオン水365g、及び重合開始剤(2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩)1.3gを仕込んだ。
【0168】
次いで、反応槽内でシクロヘキサン及び分散剤を撹拌しながら、その中に、モノマー槽からモノマー及び重合開始剤を含んだ水相成分を供給し、引き続いて攪拌を行って混合液を得た。
【0169】
続いて、反応槽中の混合液を36℃に温調すると共に、ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製、T.K. ROBO MICS)を用い、回転数を9000rpmとして5分間混合を行って分散液を調製した。
【0170】
そして、得られた分散液を反応槽内において撹拌しながら、分散液の温度を36〜37℃に調整した。
【0171】
(工程2:溶存酸素低減工程)
反応槽内の圧力を大気圧から26.7kPa(絶対圧力)まで減圧し、その後、反応槽内に窒素ガスを導入して圧力を大気圧に戻す、いわゆる窒素置換操作を合計5回行った。この操作による溶存酸素濃度の低減率は61%であった。なお、窒素置換操作に要した時間は0.2時間であった。
【0172】
(工程3:重合工程)
反応槽内の圧力を57kPa(絶対圧力)にして、酸素含有ガスとして空気(酸素含有量:21体積%)を分散液中に供給した。このときの酸素供給量は、反応槽内の分散液の体積に対して1時間当たり標準状態(25℃、101.3kPa(絶対圧力))で0.28体積%となるように制御した。
【0173】
そして、工程2の窒素置換操作開始から0.3時間経過後、分散液の加熱を開始して反応槽内の分散液の温度を54〜57℃に昇温し、その温度範囲に維持して40分間重合反応させ、親水性ポリマー粒子が分散した分散液を得た。なお、分散液への酸素の供給開始から0.1時間経過後に分散液の加熱を開始し、分散液の昇温速度は毎時15.3℃であった。
【0174】
(工程4:脱水工程)
工程3の重合反応終了後、反応槽のジャケット温度を95℃に設定してシクロヘキサン及び水を反応槽内から留出させて脱水操作を行なった。留分は、蒸気をコンデンサーで凝縮した後に水とシクロヘキサンとに静置分離し、分離したシクロヘキサンを脱水操作中は連続的に反応槽内に還流させる一方、水のみを反応槽内から留去して行った。脱水操作に要した時間は4.9時間であった。
【0175】
(工程5:溶媒置換工程)
工程4で得られた分散液に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル325gを添加し、ジャケット温度を80℃に設定すると共に槽内圧力を26.7kPa(絶対圧力)に減圧してシクロヘキサンを留去した。
【0176】
次いで、ポリオキシエチレンアルキルエーテル65gと脱イオン水7.5gとの混合溶解液を添加し、再度ジャケット温度を80℃に設定すると共に槽内圧力を40kPa(絶対圧力)に減圧して2回目のシクロヘキサンの留去を行って親水性ポリマー粒子259gを含む分散液を得た。留去に要した時間は、合計で17.7時間であった。
【0177】
得られた分散液を水に溶解させて親水性ポリマー粒子の濃度を1.0質量%に調製した水溶液の30℃における粘度は1990mPa・sであった。
【0178】
<実施例8>
実施例8では、工程2での分散液の温度を16℃〜17℃に調整した以外は実施例7と同様の操作を行った。従って、工程3では、酸素供給量は、反応槽内の分散液の体積に対して1時間当たり標準状態(25℃、101.3kPa(絶対圧力))で0.28体積%となるように制御し、また、工程2の窒素置換操作開始から0.3時間経過後に分散液の加熱を開始した。なお、工程2での溶存酸素濃度の低減率は69%で、窒素置換操作に要した時間は0.2時間であった。また、工程3での分散液への酸素の供給開始から0.1時間経過後に分散液の加熱を開始し、分散液の昇温速度は毎時18.6℃であった。工程4で脱水操作に要した時間は3.5時間であった。工程5で留去に要した時間は、合計で18.1時間であった。
【0179】
得られた分散液を水に溶解させて親水性ポリマー粒子の濃度を1.0質量%に調製した水溶液の30℃における粘度は2070mPa・sであった。
【0180】
<実施例9>
実施例9では、工程3での酸素供給量を0.13体積%とし、また、工程2の窒素置換操作開始から0.2時間経過後に分散液の加熱を開始し、工程2での分散液の温度を27℃〜28℃に調整した以外は実施例7と同様の操作を行った。なお、工程2での溶存酸素濃度の低減率は67%で、窒素置換操作に要した時間は0.15時間であった。また、工程3での分散液への酸素の供給開始から0.05時間経過後に分散液の加熱を開始し、分散液の昇温速度は毎時16.4℃であった。工程4で脱水操作に要した時間は4.8時間であった。工程5で留去に要した時間は、合計で17.4時間であった。
【0181】
得られた分散液を水に溶解させて親水性ポリマー粒子の濃度を1.0質量%に調製した水溶液の30℃における粘度は2060mPa・sであった。
【0182】
<実施例10>
実施例10では、工程3での酸素供給量を0.67体積%とし、また、工程2の窒素置換操作開始から0.8時間経過後に分散液の加熱を開始した以外は実施例1と同様の操作を行った。なお、工程2での溶存酸素濃度の低減率は79%で、窒素置換操作に要した時間は0.6時間であった。また、工程3での分散液への酸素の供給開始から0.2時間経過後に分散液の加熱を開始し、分散液の昇温速度は毎時65.1℃であった。
【0183】
得られた分散液を水に溶解させて親水性ポリマー粒子の濃度を1.0質量%に調製した水溶液の30℃における粘度は1650mPa・sであった。工程4で脱水操作に要した時間は7.5時間であった。工程5で留去に要した時間は、合計で21。8時間であった。
【0184】
<実施例11>
実施例11では、疎水性溶媒をノルマルヘキサンとし、また、工程3での酸素供給量を0.21体積%とし、工程2での分散液の温度を27℃〜28℃に調整した以外は実施例7と同様の操作を行った。従って、工程3では、工程2の窒素置換操作開始から0.3時間経過後に分散液の加熱を開始した。なお、工程2での溶存酸素濃度の低減率は71%で、窒素置換操作に要した時間は0.2時間であった。また、工程3での分散液への酸素の供給開始から0.1時間経過後に分散液の加熱を開始し、分散液の昇温速度は毎時16.1℃であった。工程4で脱水操作に要した時間は5.0時間であった。工程5で留去に要した時間は、合計で18.3時間であった。
【0185】
得られた分散液を水に溶解させて親水性ポリマー粒子の濃度を1.0質量%に調製した水溶液の30℃における粘度は1780mPa・sであった。
【0186】
<比較例1>
比較例1では、工程2での窒素置換操作を10回行い、工程3での酸素供給量を0.58体積%とし、また、工程2の窒素置換操作開始から3.8時間経過後に分散液の加熱を開始した以外は実施例1と同様の操作を行った。なお、工程2での溶存酸素濃度の低減率は87%で、窒素置換操作に要した時間は3.0時間であった。また、工程3での分散液への酸素の供給開始から0.3時間経過後に分散液の加熱を開始し、分散液の昇温速度は毎時52.8℃であった。工程4で脱水操作に要した時間は7.0時間であった。工程5で留去に要した時間は、合計で31.8時間であった。
【0187】
得られた分散液を水に溶解させて親水性ポリマー粒子の濃度を1.0質量%に調製した水溶液の30℃における粘度は5330mPa・sであった。また、得られた親水性ポリマー粒子を含む分散液を用いて表3に示す組成の毛髪洗浄料を調製したところ、濯ぎ時の軋み感が強かった。従って、この親水性ポリマー粒子を含む分散液は、毛髪洗浄剤への配合が困難なものであった。
【0188】
<比較例2>
比較例2では、工程2を行わず、工程3での酸素供給量を0.65体積%として分散液の加熱を開始した以外は実施例1と同様の操作を行った。なお、工程2での溶存酸素濃度の低減率は0%であった。また、工程3での分散液の昇温速度は毎時42.9℃であった。工程4で脱水操作に要した時間は6.8時間であった。工程5で留去に要した時間は、合計で22.3時間であった。
【0189】
得られた分散液を水に溶解させて親水性ポリマー粒子の濃度を1.0質量%に調製した水溶液の30℃における粘度は1450mPa・sであった。また、得られた親水性ポリマー粒子を含む分散液を用いて表3に示す組成の毛髪洗浄料を調製したところ、濯ぎ時にぬるつきが残った。従って、この親水性ポリマー粒子を含む分散液は、毛髪洗浄剤への配合が困難なものであった。
【0190】
<比較例3>
比較例3では、次の工程1〜5の操作を行った。
【0191】
(工程1:分散液調製工程)
10Lの反応槽に、シクロヘキサン4.5kg及び分散剤(ショ糖ステアリン酸エステル)5.1gを仕込んだ。また、3Lのモノマー槽に、ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩の90%水溶液0.15kg、N,N−ジメチルアクリルアミド0.38kg、ポリエチレングリコールジメタクリレート0.11g、脱イオン水0.73kg、及び重合開始剤(2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩)2.5gを仕込んだ。
【0192】
次いで、反応槽内でシクロヘキサン及び分散剤を撹拌しながら、その中に、モノマー槽からモノマー及び重合開始剤を含んだ水相成分を供給し、引き続いて攪拌を行って混合液を得た。
【0193】
続いて、反応槽中の混合液を27℃に温調すると共に、ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製、T.K. ROBO MICS)を用い、回転数を9000rpmとして5分間混合を行って分散液を調製した。
【0194】
そして、得られた分散液を反応槽内において撹拌しながら、分散液の温度を27〜28℃に調整した。
【0195】
(工程2:溶存酸素低減工程)
大気圧下で、反応槽上部より窒素ガスを標準状態(25℃、101.3kPa(絶対圧力))で毎時60Lの流量で供給すると共に撹拌を0.2時間継続し、分散液中の溶存酸素濃度を低下させた。この操作による溶存酸素濃度の低減率は26%であった。
【0196】
(工程3:重合工程)
溶存酸素濃度の低減を確認した後、大気圧下で撹拌を継続し、工程2での窒素ガスの導入操作開始、つまり、溶存酸素濃度の低減開始から0.3時間経過後、分散液の加熱を開始した。このとき、反応槽内には酸素を供給しなかった。加熱開始後、反応槽内の分散液の温度を54〜57℃に昇温し、その温度範囲に維持して40分間重合反応させ、親水性ポリマー粒子が分散した分散液を得た。なお、分散液の昇温速度は毎時41.7℃であった。
【0197】
(工程4:脱水工程)
工程3の重合反応終了後、反応槽のジャケット温度を95℃に設定してシクロヘキサン及び水を反応槽内から留出させて脱水操作を行なった。留分は、蒸気をコンデンサーで凝縮した後に水とシクロヘキサンとに静置分離し、分離したシクロヘキサンを脱水操作中は連続的に反応槽内に還流させる一方、水のみを反応槽内から留去して行った。脱水操作に要した時間は5.4時間であった。
【0198】
(工程5:溶媒置換工程)
工程4で得られた分散液に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル0.65kgを添加し、ジャケット温度を80℃に設定すると共に槽内圧力を26.7kPa(絶対圧力)に減圧してシクロヘキサンを留去した。
【0199】
そして、シクロヘキサンの留出が目視で確認できなくなった時点で、ポリオキシエチレンアルキルエーテル0.13kgと水14.5gとの混合溶解液を添加し、再度ジャケットの温度を80℃に設定すると共に槽内圧力を40kPa(絶対圧力)に減圧して2回目のシクロヘキサンの留去を行って親水性ポリマー粒子0.52kgを含む分散液を得た。留去に要した時間は、合計で18.7時間であった。
【0200】
得られた分散液を水に溶解させて親水性ポリマー粒子の濃度を1.0質量%に調製した水溶液の30℃における粘度は1080mPa・sであった。
【0201】
<比較例4>
比較例4では、工程3での酸素供給量を0.94体積%とし、また、工程2の窒素置換操作開始から0.9時間経過後に分散液の加熱を開始した以外は実施例1と同様の操作を行った。なお、工程2での溶存酸素濃度の低減率は61%で、窒素置換操作に要した時間は0.7時間であった。また、工程3での分散液への酸素の供給開始から0.2時間経過後に分散液の加熱を開始し、分散液の昇温速度は毎時43.1℃であった。工程4で脱水操作に要した時間は7.2時間であった。工程5で留去に要した時間は、合計で21。9時間であった。
【0202】
得られた分散液を水に溶解させて親水性ポリマー粒子の濃度を1.0質量%に調製した水溶液の30℃における粘度は1170mPa・sであった。
【0203】
<比較例5>
比較例5では、工程3を大気圧下で行い、また、反応槽内の分散液への酸素の供給を行わず、更に、工程2の窒素置換操作開始から1.1時間経過後に分散液の加熱を開始した以外は実施例7と同様の操作を行った。なお、工程2での溶存酸素濃度の低減率は81%で、窒素置換に要した時間は0.8時間であった。また、工程3での分散液の昇温速度は毎時15.3℃であった。工程4で脱水操作に要した時間は3.9時間であった。工程5で留去に要した時間は、合計で26.1時間であった。
【0204】
得られた分散液を水に溶解させて親水性ポリマー粒子の濃度を1.0質量%に調製した水溶液の30℃における粘度は4190mPa・sであった。
【0205】
【表1】
【0206】
【表2】
【0207】
【表3】