(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6124725
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】家具類の転倒防止構造、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A47B 97/00 20060101AFI20170424BHJP
【FI】
A47B97/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-155622(P2013-155622)
(22)【出願日】2013年7月26日
(65)【公開番号】特開2015-24018(P2015-24018A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(72)【発明者】
【氏名】松崎 真豊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博之
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 耕次
(72)【発明者】
【氏名】川西 一至
(72)【発明者】
【氏名】小田 稔
(72)【発明者】
【氏名】前野 達弥
(72)【発明者】
【氏名】織田 直毅
【審査官】
蔵野 いづみ
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3020007(JP,U)
【文献】
特開2005−323635(JP,A)
【文献】
特開平10−113242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 97/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の内壁に形成された凹部と、
その室内側の表面が前記内壁の表面と略一致するように前記凹部内に配置されると共に、家具又は電化製品(以下、“家具類”とする)に連結される連結部材を係止可能な係止部材と、
該係止部材を前記内壁に固定する固定部材と、
を備え、
前記家具類と前記係止部材とを前記連結部材により連結することにより家具類の転倒を防止するように構成され、
前記係止部材は、前記連結部材のフックを引っ掛け可能な引っ掛け部を有し、
略水平方向に延設された前記凹部の上縁部及び/又は下縁部に沿って空隙部を形成するように空隙部形成部材が前記凹部内に配置され、
該空隙部には、前記連結部材のフックの挿脱を許容するための開口部を前記凹部の上縁部及び/又は下縁部との間に形成するように前記係止部材が配置された、
ことを特徴とする家具類の転倒防止構造。
【請求項2】
前記係止部材は金属製の形鋼であり、
前記固定部材は、前記係止部材を前記空隙部形成部材に固定する第1固定部材と、該空隙部形成部材を前記内壁に固定する第2固定部材と、からなり、
前記係止部材は、前記第1固定部材、前記空隙部形成部材及び前記第2固定部材を介して前記内壁に固定されてなる、
ことを特徴とする請求項1に記載の家具類の転倒防止構造。
【請求項3】
前記空隙部形成部材及び前記係止部材は、それらの室内側の表面が前記内壁の表面と略一致するように構成された、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の家具類の転倒防止構造。
【請求項4】
前記凹部は前記内壁の表裏の対応する位置にそれぞれ形成され、
表裏のそれぞれの凹部には、前記空隙部形成部材及び前記係止部材がそれぞれ配置され、
前記第2固定部材は前記内壁を貫通するように配置されて、前記内壁の表裏にそれぞれ配置された前記空隙部形成部材を連結してなる、
ことを特徴とする請求項2に記載の家具類の転倒防止構造。
【請求項5】
建物の内壁に形成された凹部であって略水平方向に延設されてなる凹部と、
その室内側の表面が前記内壁の表面と略一致すると共に前記凹部の上縁部及び/又は下縁部に沿って空隙部を形成するように第2固定部材により前記内壁に固定された状態で前記凹部内に配置されてなる空隙部形成部材と、
家具類に連結される連結部材のフックを引っ掛け可能な引っ掛け部を有すると共に、該フックの挿脱を許容するための開口部を前記凹部の上縁部及び/又は下縁部との間に形成するように第1固定部材により前記空隙部形成部材に固定された状態で前記空隙部に配置されてなる金属製の形鋼からなる係止部材と、
を備えた家具類の転倒防止構造の製造方法において、
前記凹部を建物の内壁に形成する工程と、
前記空隙部形成部材の表面であって前記空隙部の側に配置される側の表面に前記第1固定部材により前記係止部材を固定する工程と、
該係止部材が固定されてなる前記空隙部形成部材を前記凹部内に配置すると共に該空隙部形成部材を前記第2固定部材により前記内壁に固定する工程と、
を備えたことを特徴とする家具類の転倒防止構造の製造方法。
【請求項6】
前記第1固定部材及び前記第2固定部材は、くぎ、ねじ、ステープル、ボルト、鋲又はピンである、
ことを特徴とする請求項5に記載の家具類の転倒防止構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具や電化製品(以下、“家具類”とする)の転倒防止のための係止部材を建物の内壁に配置した家具類の転倒防止構造、及びその製造方法に係り、詳しくは、該係止部材を内壁に形成した凹部に配置した構造及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震発生時に家具(食器棚や本棚やタンス等)や電化製品(冷蔵庫やテレビ等)が転倒しないようにするために様々な対策が施されている。
【0003】
例えば、家具類と天井との間に配置する突っ張り棒について様々な構造のものが提案されたり販売されたりしている(例えば、特許文献1及び2参照)。また、紐やチェーン等の様々な連結部材(特許文献3参照)を使って家具類を建物の内壁に固定する方法も採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−262147号公報
【特許文献2】特開2013−94653号公報
【特許文献3】特開2008−154653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような突っ張り棒を本棚や食器棚や冷蔵庫の上に設置すると、室内が雑然として狭く見えてしまい、美観という点でも問題があった。また、上述のような連結部材を利用して家具類を建物の内壁に固定する場合にも種々の問題があった。例えば、内壁がコンクリート製の場合にはアンカーボルトを打つこと自体が大変な作業となるし、集合住宅の場合で内壁が共用部分である場合にはボルトを打つこと自体が認められない。
【0006】
本発明は、上述の問題を解消することのできる家具類の転倒防止構造及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項
1に係る発明は、
図1(a)〜(c)に例示するものであって、建物(2)の内壁(3)に形成された凹部(4)と、
その室内側の表面(6a)が前記内壁(3)の表面(3a)と略一致するように前記凹部(4)内に配置されると共に、家具又は電化製品(符号10参照。以下、“家具類”とする)に連結される連結部材(5)を係止可能な係止部材(6)と、
該係止部材(6)を前記内壁(3)に固定する固定部材(7A,7B)と、
を備え、
前記家具類(10)と前記係止部材(6)とを前記連結部材(5)により連結することにより家具類(10)の転倒を防止するように構成され、
前記係止部材(6)が、前記連結部材(5)のフック(5a)を引っ掛け可能な引っ掛け部(6b)を有し、
略水平方向(x)に延設された前記凹部(4)の上縁部(4a)及び/又は下縁部(4b)に沿って空隙部(8)を形成するように空隙部形成部材(9)が前記凹部(4)内に配置され、
該空隙部(8)には、前記連結部材(5)のフック(5a)の挿脱を許容するための開口部(8a)を前記凹部(4)の上縁部(4a)及び/又は下縁部(4b)との間に形成するように前記係止部材(6)が配置された
家具類の転倒防止構造(1)であることを特徴とする。
【0012】
請求項
2に係る発明は、請求項
1に係る発明において、前記係止部材(6)が金属製の形鋼であり、
前記固定部材(7A,7B)は、前記係止部材(6)を前記空隙部形成部材(9)に固定する第1固定部材(7A)と、該空隙部形成部材(9)を前記内壁(3)に固定する第2固定部材(7B)と、からなり、
前記係止部材(6)は、前記第1固定部材(7A)、前記空隙部形成部材(9)及び前記第2固定部材(7B)を介して前記内壁(3)に固定されてなることを特徴とする。
【0013】
請求項
3に係る発明は、請求項
1又は2に記載の発明において、前記空隙部形成部材(9)及び前記係止部材(6)が、それらの室内側の表面(9a,6a)が前記内壁(3)の表面(3a)と略一致するように構成されたことを特徴とする。
【0014】
請求項
4に係る発明は、請求項
2に記載の発明において、
図1(a)に例示するように、前記凹部(4)は前記内壁(3)の表裏の対応する位置にそれぞれ形成され、
表裏のそれぞれの凹部(4)には、前記空隙部形成部材(9)及び前記係止部材(6)がそれぞれ配置され、
前記第2固定部材(7B)は前記内壁(3)を貫通するように配置されて、前記内壁(3)の表裏にそれぞれ配置された前記空隙部形成部材(9)を連結してなることを特徴とする。
【0015】
請求項
5に係る発明は、建物(2)の内壁(3)に形成された凹部(4)であって略水平方向(x)に延設されてなる凹部(4)と、
その室内側の表面(9a)が前記内壁(3)の表面(3a)と略一致すると共に前記凹部(4)の上縁部(4a)及び/又は下縁部(4b)に沿って空隙部(8)を形成するように第2固定部材(7B)により前記内壁(3)に固定された状態で前記凹部(4)内に配置されてなる空隙部形成部材(9)と、
家具類(10)に連結される連結部材(5)のフック(5a)を引っ掛け可能な引っ掛け部(6b)を有すると共に、該フック(5a)の挿脱を許容するための開口部(8a)を前記凹部(4)の上縁部(4a)及び/又は下縁部(4b)との間に形成するように第1固定部材(7A)により前記空隙部形成部材(9)に固定された状態で前記空隙部(8)に配置されてなる金属製の形鋼からなる係止部材(6)と、
を備えた家具類の転倒防止構造の製造方法において、
前記凹部(4)を建物(2)の内壁(3)に形成する工程と、
前記空隙部形成部材(9)の表面であって前記空隙部(8)の側に配置される側の表面に前記第1固定部材(7A)により前記係止部材(6)を固定する工程と、
該係止部材(6)が固定されてなる前記空隙部形成部材(9)を前記凹部(4)内に配置すると共に該空隙部形成部材(9)を前記第2固定部材(7B)により前記内壁(3)に固定する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項
6に係る発明は、請求項
5に係る発明において、前記第1固定部材(7A)及び前記第2固定部材(7B)が、くぎ、ねじ、ステープル、ボルト、鋲又はピンであることを特徴とする。
【0017】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0018】
請求項1乃至4に係る発明によれば、前記係止部材は前記内壁の凹部内に配置されていて出っ張らないので、家具類を前記内壁に接するように配置することが出来、室内が狭くなることも無い。また、家具類と天井との間に突っ張り棒を配置しなくて済むので室内が雑然として狭く見えてしまうことも無く、美観の点でも優れる。さらに、フックや係止具を利用して家具類との連結作業を簡単に行うことができ、集合住宅の場合で前記内壁が共用部分であっても該内壁を家具類の転倒防止のために利用することができる。
【0019】
請求項
1乃至3、5及び6に係る発明によれば、係止部材には汎用品である形鋼を流用できるので、部品コストを下げることができる。また、溝が浅い形鋼であってもぐらつくことなく堅固に内壁に固定することができる。
【0020】
請求項
4に係る発明によれば、前記空隙部形成部材をより堅固に前記内壁に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1(a) は、本発明に係る家具類の転倒防止構造の一例を示す断面図であり、(b) はその要部を示す拡大断面図であり、(c) は正面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る家具類の転倒防止構造の他の例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1及び
図2に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
本発明に係る家具類の転倒防止構造は、
図1及び
図2に符号1,11で例示するものであって、
・ 建物2の内壁3に形成された凹部4と、
・ その室内側の表面(家具や電化製品が配置される側の表面)6a,16aが前記内壁3の表面3aと略一致するように前記凹部4内に配置されると共に、家具類10に連結される連結部材5を係止可能な係止部材6,16と、
・ 該係止部材6,16を前記内壁3に固定する固定部材7A,7Bと、
を備えており、前記家具類10と前記係止部材6,16とを前記連結部材5により連結することにより家具類10の転倒を防止するように構成されている。
【0024】
ここで、本明細書における建物とは、土地に定着する工作物のうち、屋根、柱及び壁を有し、人間の居住、作業空間、物品の保管等に用いられる建築物をいい、集合住宅及び一戸建てを含む概念である。また、内壁とは、一般には屋内を間仕切る壁を意味するが、集合住宅における戸境壁も含む概念であり、コンクリート製の壁及びコンクリート製以外の壁の両方を含む概念である。さらに、
図1(c) に示す凹部4は、前記内壁3の略水平方向xに延設されているが、略水平方向x以外の方向(例えば、鉛直方向)に延設されているもの、或いは“延設されている”とは言えないような寸法のもの(つまり、内壁3に局所的に短く形成された凹部)を排除するものでは無い。またさらに、本明細書における連結部材とは、家具類10と前記係止部材6,16とを連結する部材であってベルトや紐やワイヤーやチェーン等の可撓性に富む長尺部材、及び可撓性に富まない部材(樹脂や木や金属等で形成された様々な形状の部材)を含む概念である。また、
図2に例示する係止部材16は、前記連結部材5のフック5aを引っ掛け可能な引っ掛け部16bをその上部に有しているが、もちろんこれに限られるものではなく、該引っ掛け部16bを上部以外の部分に有していても良く、さらには、該引っ掛け部16bを有さずに、前記連結部材5を係止するための係止具(不図示。くぎ、ねじ、ステープル、ボルト、鋲又はピン等のように該連結部材5を係止するための公知の部品)を打ち込み可能な係止具打ち込み部(例えば、木製や樹脂製や金属製の部分)を全体又は少なくとも一部に有していても良いし、該引っ掛け部16b及び該係止具打ち込み部の両方を有していても良い。またさらに、前記固定部材7A,7Bは、くぎ、ねじ、ステープル、ボルト、鋲又はピン等を含む概念である。なお、家具類10を上述のようなフック5aで前記係止部材6,16に連結する場合には、地震発生時に該フック5aが前記係止部材6,16から外れてしまわないように適切な方法を採る必要がある。
【0025】
本発明によれば、前記係止部材6,16は前記内壁3の凹部4内に配置されていて出っ張らないので、家具類10を前記内壁3に接するように配置することが出来、室内が狭くなることも無い。また、家具類10と天井との間に突っ張り棒を配置しなくて済むので室内が雑然として狭く見えてしまうことも無く、美観の点でも優れる。さらに、上述のようにフック5aや係止具を利用して家具類10との連結作業を簡単に行うことができ、集合住宅の場合で前記内壁3が共用部分であっても該内壁3を家具類10の転倒防止のために利用することができる。
【0026】
一方、
図1(b) に例示するように、前記係止部材6が、前記連結部材5のフック5aを引っ掛け可能な引っ掛け部6bを有するようにし、前記凹部4を略水平方向xに延設し、該凹部4の内部には、該凹部4の上縁部4a及び/又は下縁部4bに沿って空隙部8を形成するように(言い換えれば、空隙部8を残して前記凹部4を埋めるように)空隙部形成部材9を配置し、該空隙部8には前記係止部材6を配置すると良い。この場合、前記連結部材5のフック5aの挿脱を許容するための開口部8aを前記凹部4の上縁部4a及び/又は下縁部4bとの間に形成しておくと良い。また、前記係止部材6を金属製(例えば、アルミ製やステンレス製や鋼製)の形鋼とし、前記固定部材7A,7Bは、
・ 前記係止部材6を前記空隙部形成部材9に固定する第1固定部材7Aと、
・ 該空隙部形成部材9を前記内壁3に固定する第2固定部材7Bと、
により構成するようにして、前記係止部材6が、前記第1固定部材7A、前記空隙部形成部材9及び前記第2固定部材7Bを介して前記内壁3に固定されるようにすると良い。さらに、前記空隙部形成部材9及び前記係止部材6は、それらの室内側の表面9a,6aが前記内壁3の表面3aと略一致するように構成すると良い。なお、前記空隙部形成部材9は、全体又は少なくとも一部を樹脂製や木製として前記係止具(つまり、くぎ、ねじ、ステープル、ボルト、鋲又はピン等のように該連結部材5を係止するための公知の部品)を打ち込み可能とし、該係止具によっても家具類10を固定できるようにしても良い。また、
図1(b) に例示する係止部材6は溝形鋼(コの字形をした形鋼)であるが、フックを引っ掛けることができる形状であれば良く、L形鋼やH形鋼やT形鋼等の他の形状の形鋼を排除する趣旨ではない。
【0027】
地震発生時の衝撃を考慮すると、前記フック5aを引っ掛ける部分(つまり、前記係止部材6,16の引っ掛け部6b,16b)では十分な強度を確保しておく必要があり、該係止部材を木製とするよりもアルミやステンレスや鉄鋼等の金属で形成することが望まれる。ここで、
図2に例示するような係止部材16の場合、特殊な形状をしているので金属製にする場合には製作コストが高くなってしまうが、
図1(b) に例示するような係止部材6の場合には汎用品である形鋼を流用できるので、部品コストを下げることができるという効果がある。また、溝が浅い形鋼(つまり、
図1(b) にてy方向の寸法が小さい形鋼)を上述のような空隙部形成部材9を使用せずに直接アンカーボルトなどで前記内壁3に固定しようとしても、該y方向の寸法が小さいためにアンカーボルトを貫通させるための貫通孔を開けるだけのスペースが該形鋼の側に無いおそれがあるし、貫通孔を開けることができてアンカーボルトにより該形鋼を前記内壁3に取り付けたとしても形鋼がぐらついてしまうおそれがある。しかし、本発明の場合、係止部材6である形鋼は前記内壁3にではなく前記空隙部形成部材9の側に固定することとなるので該形鋼はz方向の幅広の部分が該空隙部形成部材9にしっかりと固定されることとなり、溝が浅い形鋼であってもぐらつくことなく堅固に内壁3に固定されることとなる。
【0028】
ところで、
図1(a) に例示するように、前記凹部4は前記内壁3の表裏の対応する位置にそれぞれ形成され、
表裏のそれぞれの凹部4には、前記空隙部形成部材9及び前記係止部材6がそれぞれ配置され、
前記第2固定部材7Bは前記内壁3を貫通するように配置されて、前記内壁3の表裏にそれぞれ配置された前記空隙部形成部材9を連結するようにすると良い。そのようにした場合には、該空隙部形成部材9をより堅固に該内壁3に固定することができる。
【0029】
一方、本発明に係る家具類の転倒防止構造の製造方法は、
・ 建物2の内壁3に形成された凹部4であって略水平方向xに延設されてなる凹部4と、
・ その室内側の表面9aが前記内壁3の表面3aと略一致すると共に前記凹部4の上縁部4a及び/又は下縁部4bに沿って空隙部8を形成するように第2固定部材7Bにより前記内壁3に固定された状態で前記凹部4内に配置されてなる空隙部形成部材9と、
・ 家具類10に連結される連結部材5のフック5aを引っ掛け可能な引っ掛け部6bを有すると共に、該フック5aの挿脱を許容するための開口部8aを前記凹部4の上縁部4a及び/又は下縁部4bとの間に形成するように第1固定部材7Aにより前記空隙部形成部材9に固定された状態で前記空隙部8に配置されてなる金属製の形鋼からなる係止部材6と、
を備えた家具類の転倒防止構造を製造する方法であって、
・ 前記凹部4を建物2の内壁3に形成する工程と、
・ 前記空隙部形成部材9の表面であって前記空隙部8の側に配置される側の表面に前記第1固定部材7Aにより前記係止部材6を固定する工程と、
・ 該係止部材6が固定されてなる前記空隙部形成部材9を前記凹部4内に配置すると共に該空隙部形成部材9を前記第2固定部材7Bにより前記内壁3に固定する工程と、
を備えたことを特徴とする。この場合、前記第1固定部材7A及び前記第2固定部材7Bは、くぎ、ねじ、ステープル、ボルト、鋲又はピンにすると良い。また、前記凹部4を建物2の内壁3に形成する方法は、コンクリート打設時に押し型を押し付けるなどの公知の方法で行うようにすると良い。
【0030】
本発明によれば、上述したような効果を奏する。すなわち、溝が浅い形鋼(つまり、
図1(b) にてy方向の寸法が小さい形鋼)を上述のような空隙部形成部材9を使用せずに直接アンカーボルトなどで前記内壁3に固定しようとしても、該y方向の寸法が小さいためにアンカーボルトを貫通させるための貫通孔を開けるだけのスペースが該形鋼の側に無いおそれがあるし、貫通孔を開けることができてアンカーボルトにより該形鋼を前記内壁3に取り付けたとしても形鋼がぐらついてしまうおそれがある。しかし、本発明の場合、係止部材6である形鋼は前記内壁3にではなく前記空隙部形成部材9の側に固定することとなるので該形鋼はz方向の幅広の部分が該空隙部形成部材9にしっかりと固定されることとなり、溝が浅い形鋼であってもぐらつくことなく堅固に内壁3に固定されることとなる。
【0031】
なお、上述の構造では、開口部8a以外の部分(つまり、前記係止部材6,16や前記空隙部形成部材9など)はクロス(壁紙)で覆ってしまうと良く、その方が部屋の美観を損ねにくくて好ましい。
【符号の説明】
【0032】
1 家具類の転倒防止構造
2 建物
3 内壁
3a 内壁の表面
4 凹部
4a 凹部の上縁部
4b 凹部の下縁部
5 連結部材
5a フック
6 係止部材
6a 係止部材の室内側の表面
6b 引っ掛け部
7A 固定部材(第1固定部材)
7B 固定部材(第2固定部材)
8 空隙部
8a 開口部
9 空隙部形成部材
9a 空隙部形成部材の室内側の表面
10 家具類
11 家具類の転倒防止構造
16 係止部材
16a 係止部材の室内側の表面
16b 引っ掛け部