(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に用いられている壁紙は、裏打ち紙の上に、塩化ビニル樹脂、オレフィン系樹脂、紙などに印刷やエンボス加工などによる意匠を施した装飾層を印刷、塗工、貼り合わせ等の方法で積層することで構成されている。壁紙を壁に施工する際、裏打ち紙の裏面または壁面に澱粉、酢酸ビニルエマルジョン、メチルセルロース等の水溶性の糊を塗工し、石膏ボードやコンクリート等の壁面に貼り付けられる。
【0003】
また、近年、居住空間の高級化と多様化が進んでおり、これに伴い既存住宅のリフォームによる壁紙の貼り替え需要が多くなってきている。リフォームを行う際に問題となるのは、壁紙を壁から剥がす際の作業性である。したがって、壁紙を壁面から剥がす際の剥離強度が弱い、所謂ピール特性に優れた壁紙が求められている。
【0004】
ピール特性に優れた壁紙として、壁紙裏打ち紙上に合成樹脂装飾層を設けてなる壁紙であって、パルプ繊維と充填剤を主体として抄造された裏打ち紙の両面に無機質粉末を主体とした被覆層を設けた壁紙が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この壁紙では、被覆層を設けることによって、合成樹脂装飾層や糊が裏打ち紙に染み込むことがなく、また、被覆層が補強層としての役割を果たすため、ピール特性が向上している。また、パルプと無機顔料からなる原紙に難燃剤とアクリル系エマルジョンが含浸され、紙層剥離強度を高めた壁紙裏打ち紙も開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、パルプ繊維と充填剤や無機顔料とを主体とする壁紙裏打ち紙では、糊を塗工した際や壁に壁紙を貼り付けた後の乾燥する際に、壁紙裏打ち紙が伸縮することやカールすることがあった。また、層間強度も不十分であり、壁紙を剥がす際に、壁面に壁紙の一部がランダムに残り作業性を低下させるばかりではなく、貼り替え後の仕上がりに凹凸ができてしまうという問題があった。
【0005】
糊塗工時や乾燥時における伸縮やカールを抑制すると共に、ピール特性にも優れた壁紙を提供することを目的として、例えば、パルプ成分と合成樹脂成分を混抄してなる壁紙裏打ち紙を使用し、糊がメチルセルロース系糊であり、壁紙裏打ち紙の層間剥離強度が壁紙からの壁紙の剥離強度よりも大きい壁紙が開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、パルプ繊維に単に合成繊維を添加した壁紙用裏打ち紙では、パルプ繊維と充填剤や無機顔料とを主体とする壁紙裏打ち紙よりは伸縮やカールが抑制され、層間強度も強いものの、壁面に壁紙の一部がランダムに残る問題は完全には解決できていなかった。また、壁紙裏打ち紙には装飾層を設ける面と壁面に貼り付ける面があり、各面で求められる機能は当然異なるにもかかわらず、特許文献1〜3に記載されている単層の裏打ち紙では機能分離ができておらず、特に糊を塗工して壁面に貼り付ける面と壁面との剥がれの問題しか考慮されていないため、装飾層を設ける面における印刷や塗工に対する適性については課題が残っていた。
【0006】
カールや伸縮が抑制され、装飾層を設ける面と壁面に貼り付ける面での機能分離がされている壁紙裏打ち紙として、パルプ繊維と繊維状バインダーとを含む第1層と有機繊維とパルプ繊維と繊維状バインダーとを含む第2層とからなり、第1層が壁面に貼り付ける層である壁紙裏打ち用抄き合わせ不織布が開示されていて、2層構造でありながらも、不織布の層間で剥離が起こらず、ピール特性に優れていることが記載されている(例えば、特許文献4参照)。また、特許文献4では、第2層の繊維状バインダーとしてポリビニルアルコール繊維を使用した場合、毛羽立ちが少ない平滑な面が得られ、装飾層を設けるための加工適性に優れていることが記載されている。さらに、第2層表面に顔料が付与されることによって、毛羽立ちの抑制や装飾層形成時の目止め等の効果が得られることも記載されている。しかしながら、特許文献4の壁紙用不織布においても、壁紙への貼り付けの条件によっては、糊部分で壁紙を均一に剥離することができず、一部の壁紙が残ってしまう場合があった。
【0007】
最近では、意匠表現のために、壁紙表面に直接印刷を施すものが多く見られ、壁紙表面への直接加工が多くなってきている。このため、基材表面に熱分解型の発泡剤を含むペースト状塩化ビニル樹脂組成物をロータリースクリーン印刷にて塗布する方法も開示されている。(例えば、特許文献5参照)。特許文献5では、塩化ビニル樹脂成分がメインとなっているが、その他の意匠表現として、グラビア印刷に代表される印刷、ビーズ、小石等を糊にて接着される特殊壁紙の加工等があり、基材の表面性ばかりか糊およびインキの吸収性も問題となってくる。剥離性、不透明度に重点をおいた含浸タイプの壁紙では基材の各種吸収性は加味されていない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の壁紙用不織布は、壁紙装飾側層(以下、「装飾側層」と記す場合がある)と壁面貼り付け層(以下、「貼り付け層」と記す場合がある)とからなる2層構造である。石膏ボードやコンクリート等からなる壁面または壁紙用不織布の貼り付け層に塗布された糊によって、壁面に貼り付けられる。本発明の壁紙用不織布は、装飾側層も貼り付け層も、パルプ繊維と繊維状バインダーと有機繊維を含む。
【0013】
本発明の壁紙用不織布は、パルプ繊維を含むことで、繊維状バインダーを含んでいても、親水性に調整されている。また、適度に叩解されたパルプ繊維を用いることにより繊維間に一定の空隙部を有し、吸水性が調整されている。パルプ繊維の叩解度は、300mlCSF以上が好ましく、400mlCSF以上がより好ましい。叩解度が300mlCSF未満の場合には、空隙部分が少なくなって吸水性が低下することがあり、糊が入り込みにくくなって直ぐに乾いてしまい、作業性が低下する場合がある。
【0014】
パルプ繊維は、植物繊維として、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなどの木材パルプや藁パルプ、竹パルプ、リンターパルプ、ケナフパルプなどの木本類、草本類を含むものとする。これらの繊維は、本発明の性能を阻害しない範囲であれば、フィブリル化されていてもなんら差し支えない。さらに、古紙、損紙などから得られるパルプ繊維等を使用してもよい。本発明において、装飾側層に配合されるパルプ繊維の含有量は、装飾側層の全繊維量に対して、45〜83質量%であり、50〜80質量%がより好ましい。貼り付け層に配合されるパルプ繊維の含有量は、貼り付け層の全繊維量に対して、45〜77質量%であり、55〜70質量%がより好ましい。パルプ繊維の含有量が少な過ぎる場合、強度維持、壁紙としての寸法安定性は良好であるが、空隙部が多くなって、糊の必要量が増す。一方、多過ぎる場合、壁紙としての寸法安定性が得られなく、施工時に目隙き等の問題発生の原因となり得る。
【0015】
各層に配合される繊維状バインダーは、断面が扁平なパルプ繊維とは異なり、真円状または真円状に近い形状であり、パルプ繊維同士の間に存在させることによって、空隙部を増す働きをすると共に、耐水性に乏しいパルプ繊維同士を接着させることによって湿潤状態においても強度を維持する働きがある。本発明において、装飾側層に配合される繊維状バインダーの含有量は、装飾側層の全繊維量に対して、13〜30質量%であり、15〜25質量%がより好ましい。貼り付け層に配合される繊維状バインダーの含有量は、貼り付け層の全繊維量に対して、13〜35質量%であり、15〜30質量%がより好ましい。繊維状バインダーの含有量が少な過ぎる場合、湿潤状態下での強度維持が困難となり、抄造時の紙切れ等が問題となる。一方、多過ぎる場合、強度維持は良好であるが、抄造時乾燥時にヤンキードライヤーからの剥離不良の原因を招き、抄造が困難となる。
【0016】
繊維状バインダーの繊度は、0.1〜5.6デシテックスが好ましく、0.6〜3.3デシテックスがより好ましく、1.1〜2.2デシテックスがさらに好ましい。0.1デシテックス未満の場合、不織布が緻密で薄いものになってしまうことがある。一方、5.6デシテックスを超えた場合、パルプ繊維との接点が少なくなり、湿潤状態下での強度維持が困難になることがあるばかりでなく、均一な地合いが取れないことがある。繊維状バインダーの繊維長は、1〜20mmが好ましく、2〜15mmがより好ましく、3〜10mmがさらに好ましい。1mm未満の場合、抄造時に抄紙ワイヤーから抜け落ちることがあり、十分な強度が得られないことがある。一方、20mmを超えた場合、水に分散する際にもつれ等を起こすことがあり、均一な地合いが得られないことがある。
【0017】
繊維状バインダーとしては、単成分からなる単繊維のほか、芯鞘繊維(コアシェルタイプ)、並列繊維(サイドバイサイドタイプ)、放射状分割繊維などの複合繊維が挙げられる。複合繊維は、皮膜を形成しにくいので、不織布の空隙部を保持したまま、耐水強度を向上させることができる。繊維状バインダーとしては、例えば、ポリプロピレンの短繊維、ポリエステルの短繊維、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の組み合わせ、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせが挙げられる。また、ポリエチレン等の低融点樹脂のみで構成される単繊維(全融タイプ)や、PVA繊維のような繊維状バインダーも使用することができる。特に、芯鞘繊維が空隙部確保と強度発現の両方を備えているので好ましい。
【0018】
有機繊維は、パルプ繊維と繊維状バインダー以外の合成繊維である。空隙部を埋め易い断面形状が扁平な繊維よりも、断面形状が真円に近い繊維の方が好ましい。有機繊維を配合することによって、水浸漬における伸縮を抑え、壁紙施工時の寸法安定性にも寄与することができる。有機繊維としては、再生繊維としてのレーヨン、キュプラ、リヨセル繊維等が、半合成繊維としては、アセテート、トリアセテート、プロミックスが、合成繊維としては、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリアクリル系、ビニロン系、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル系、ベンゾエート、ポリクラール、フェノール系などの繊維が挙げられる。各層における有機繊維の含有量は特に限定しないが、装飾側層に配合される有機繊維の含有量は、装飾側層の全繊維量に対して、4〜25質量%であり、5〜20質量%がより好ましい。貼り付け層に配合される有機繊維の含有量は、貼り付け層の全繊維量に対して、10〜20質量%であり、15〜20質量%がより好ましい。原布に配合される有機繊維の含有量が、原布全繊維量に対して20〜40質量%がより好ましい。有機繊維の含有量が少な過ぎる場合、パルプ繊維リッチとなり、寸法安定性が維持できなくなる。一方、多過ぎる場合、壁面からの剥離が軽くなり過ぎる問題が発生する。
【0019】
有機繊維の繊度は、0.1〜11デシテックスが好ましく、0.6〜2.2デシテックスがより好ましい。0.1デシテックス未満の場合、不織布が緻密で薄いものになってしまうことがある。一方、2.2デシテックスを超えた場合、抄紙工程での表面毛羽抑制ができない場合がある。有機繊維の繊維長は、1〜20mmが好ましく、2〜15mmがより好ましく、3〜10mmがさらに好ましい。1mm未満の場合、抄造時に抄紙ワイヤーから抜け落ちることがある。一方、20mmを超えた場合、水に分散する際にもつれ等を起こすことがあり、均一な地合いが得られないことがある。
【0020】
本発明において、各層には、パルプ繊維、繊維状バインダー、有機繊維に加えて、必要に応じて、性能を阻害しない範囲で、金属繊維、ガラス繊維、岩石繊維等の無機繊維を加えることができる。
【0021】
本発明の壁紙用不織布の装飾側層における層表面は、発泡性ポリ塩化ビニル樹脂等が表面に塗工されたり、印刷がなされたりする面であることから、この層表面には繊維の毛羽は好ましくなく、抄紙工程のヤンキードライヤーでの乾燥時に表面を平滑にし、繊維の毛羽立ちを押さえる必要がある。そのため、装飾側層が繊維状バインダーとしてポリビニルアルコール(PVA)繊維を含有することによって、毛羽立ちのより少ない平坦な表面が得られることから、塗工や印刷時の影響が少なくなる。
【0022】
PVA繊維は、PVA原料を用いて製造した繊維であり、常温の水ではほとんど溶解しないで繊維形態を保っているが、抄紙後のヤンキードライヤー面に表面が接して加熱されると容易に溶解し始め、その瞬間にタッチロールのごとき設備で加圧することにより、繊維間にまたがって繊維状バインダーとなり、その後の脱水乾燥によって再凝固し、芯鞘繊維のみでは得られない毛羽立ちの少ない平滑な面が得られる。また、高温水中でなければ容易に離れない強力な紙層構成繊維となる。装飾側層におけるPVA繊維の含有量は、特に限定しないが、装飾側層の全繊維量に対して、5〜10質量%が好ましく、装飾側層に含有される有機繊維と同等質量比率若しくはそれ以上の質量比率で含有されることがより好ましい。PVA繊維の含有量が5質量%未満の場合、装飾側層の表面繊維の毛羽立ちを押さえることが困難となる場合がある。10質量%を超えた場合、装飾側層面への装飾層の加工が困難になるばかりではなく、層内の強度にも影響を及ぼし、スムーズな剥離ができない場合がある。
【0023】
このPVA繊維の接着力に及ぼす影響は色々考えられるが、大別して水中軟化点、繊度、繊維長の3点から考えることができる。まず、水中軟化点について説明する。水中軟化点は、実際抄紙の場合、湿紙がドライヤーにより熱を受け、繊維状バインダーが溶け始めて接着機能を示す温度を大体示している。水中軟化点の低いPVA繊維を使用する程、接着の前提条件である繊維状バインダーの溶解が容易となり接着効果が大きくなる。水中軟化点の低い方が、接着効果の点からは良いが、ドライヤーへの付着は起こり易い。PVA繊維が溶解するためには、その水中軟化点以上に湿紙の温度が高くなる必要があり、したがって、乾燥温度が高い程接着効果が大きく、強度は向上する。湿紙中の水温がPVA繊維の水中軟化点以下では、繊維状バインダーの溶解が起こらず、したがって、バインダー効果はまったく失われる。ヤンキードライヤーの場合、ドライヤーのスチーム温度は100〜160℃程度で、これに接触している湿紙の温度は60〜90℃と考えられるから、PVA繊維の水中軟化点として65〜85℃のものを選定すると十分な接着力を得ることができる。
【0024】
次に、繊度については、細くなるにしたがって、強度は向上する。このことは同一質量比で添加した場合、細い繊維を用いると、添加本数が多くなって接着点の数が増えるため、接着力が大きくなるからである。ただし、あまり繊度が小さくなり過ぎると、不織布が緻密になり過ぎることがある。PVA繊維の繊度は、特に限定しないが、0.1〜5.6デシテックスが好ましく、0.3〜3.3デシテックスがより好ましく、0.6〜2.2デシテックスがさらに好ましい。最後に、PVA繊維の繊維長は、1〜20mmが好ましく、2〜15mmがより好ましく、3〜10mmがさらに好ましい。1mm未満の場合、抄造時に抄紙ワイヤーから抜け落ちることがあり、十分な強度が得られないことがある。一方、20mmを超えた場合、水に分散する際にもつれ等を起こすことがあり、均一な地合いが得られないことがある。
【0025】
本発明において、有機繊維と繊維状バインダーの含有量が、不織布を構成する全繊維に対して、30〜45質量%であることが好ましく、30〜40質量%であることがより好ましい。有機繊維と繊維状バインダーの含有量が30質量%未満の場合、寸法安定性が悪くなるばかりか、各層表面の毛羽立ち、さらには剥離性が目標品質を捉えられないという問題が起こる場合がある。また、45質量%を超えると、剥離性が良過ぎることで、壁紙施工時に問題が起こる場合がある。
【0026】
本発明において、被覆層を設ける前の壁紙用不織布原布は、湿式抄造法で製造することができる。湿式抄造法で使用される抄紙機としては、例えば、長網、円網、傾斜ワイヤー等の抄紙網を有する抄紙機を用いることができる。これらの抄紙網を単独で使用した抄紙機を使用しても良いし、同種または異種の2機以上の抄紙網がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機を使用しても良い。また、本発明の壁紙用不織布は2層構造であり、各々の抄紙機で抄き上げた湿紙を積層する抄き合わせ法や、一方のシートを形成した後に、該シートの上に繊維を分散したスラリーを流延する方法等で製造することができるが、層間剥離が起こりにくいことから、抄き合わせ法が好ましい。
【0027】
壁紙用不織布原布は、例えば、以下のように製造することができる。装飾側層は、パルプ繊維、繊維状バインダー、有機繊維、必要に応じてサイズ剤等を混合分散した後、パルプスラリーとして貯蔵タンクに送り、装飾側層用として一定量ずつ抄紙機に送り、目標の坪量となるように装飾側層を先に抄造する。次に、貼り付け層は、パルプ繊維、繊維状バインダー、必要に応じてサイズ剤等を混合分散した後、貯蔵タンクに送り、このスラリーを貼り付け層用として一定量ずつ抄紙機に送り、先に抄造した装飾側層に貼り付け層の目標の坪量となるように抄き合わせる。さらに、この抄き合わせたシートをプレス後、装飾側層面がヤンキードライヤー面に当たるようにして乾燥し、壁紙用不織布原布とすることができる。
【0028】
本発明の壁紙用不織布原布には、必要に応じてサイズ剤を配合することができる。サイズ剤としては、本発明の所望の効果を損なわないものであれば、強化ロジンサイズ剤、ロジンエマルジョンサイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、合成サイズ剤、中性ロジンサイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)など公知のサイズ剤のいずれをも用いることができる。
【0029】
この他に、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、各種アニオン性、ノニオン性、カチオン性、あるいは両性の歩留り向上剤、濾水剤、分散剤、紙力向上剤や粘剤が必要に応じて適宜選択して使用される。なお、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添助剤を目的に応じて適宜添加することも可能である。
【0030】
また、必要に応じて、クレー、カオリン、焼成カオリン、タルク、炭酸カルシウム、二酸化チタン等の填料や、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の自己消火性を有する填料等も配合できる。
【0031】
本発明の壁紙用不織布における被覆層は、無機顔料と高分子バインダーを主体としている。無機顔料としては、クレー、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン等の水分散性の良い無機顔料が使用できる。しかしながら、壁紙の特性の一つである不透明性を重視した場合には、二酸化チタンが有用となる。また、被覆層における無機顔料の含有量は、60〜70質量%が好ましく、65〜70質量%がより好ましい。60質量%未満だと、付着量が乗らず、不透明度の低下を招く場合がある。また、70質量%超だと、顔料の分散不良、使用する高分子バインダー減に伴う後加工での粉落ちの恐れがある。
【0032】
本発明の壁紙用不織布は、被覆層で両面が被覆されている。例えば、装飾側層のみが被覆層で被覆されている場合、貼り付け層において剥離不良が発生する場合がある。逆に、貼り付け層のみが被覆層で被覆されている場合には、装飾加工時に毛羽立ちや表面の凹凸により図柄に問題が発生する場合がある。
【0033】
また、被覆層に含有される高分子バインダーには、塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、スチレン・ブタジエン・ラバー、メタクリレート・ブタジエン・ラバー等の高分子バインダーを使用することができる。これらのバインダーは、エマルジョンであることが好ましい。本発明の壁紙用不織布が壁紙に加工される場合、装飾層として塩化ビニル共重合体が使用されることが多く、乾燥時に200℃以上の熱がかかるため、被覆層の高分子バインダーとしては、耐熱性の高いアクリル系樹脂の使用が有効である。被覆層における高分子バインダーの含有量は、20〜30質量%が好ましく、20〜25質量%がより好ましい。20質量%未満だと、無機顔料の粉落ちを招く場合があり、30質量超だと、無機顔料比率が下がり、不透明度を満足できないことがあるばかりか、壁面との剥離性にも影響を及ぼす場合がある。
【0034】
さらに、被覆層の塗布液における液安定性を増すため、保水剤、増粘剤等の助剤を添加しても問題ない。例えば、被覆層の塗布液にポリビニルアルコール樹脂を添加して、増粘、保水効果を持たせることができる。被覆層における助剤の配合量は、5〜10質量%が好ましく、5〜7質量%がより好ましい。5質量%未満だと、保水や増粘効果が得られない場合があり、10質量%を超えると、塗布液の濃度が薄くなり、目標の付着量が得られ難くなる。
【0035】
本発明において、被覆層の付着量は、両面の合計固形分質量で、25〜45g/m
2(但し、25g/m2を除く)であることを特徴としている。付着量が25g/m
2未満だと、目標としている不透明度が得られず、45g/m
2超だと、壁面からの剥離が軽過ぎ、施工最中に壁紙がめくれる問題を発生させる場合がある。
【0036】
被覆層を設ける方法としては、抄紙工程の中間に設置された2ロールサイズプレス、ゲートロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、コンマコーター、バーコーター、グラビアコーター、キスコーター等の含浸または塗工装置による処理が可能であるが、これに限定されるものではない。また、抄紙後にオフマシン装置での含浸または塗工処理も可能である。
【0037】
本発明の壁紙用不織布において、装飾側層と貼り付け層の両方が有機繊維を含むことによって、層間剥離が起こりにくいという効果が得られる。また、有機繊維を含有する貼り付け層面が被覆層で被覆されることによって、壁紙を剥がす際に、糊部分で剥離し易くなり、例えば、糊の接着力が高かった場合や壁紙が日光や熱によって劣化した場合であっても、層間剥離することなく、糊部分で壁紙を剥がし易いという効果が得られる。
【0038】
本発明の壁紙用不織布原布の坪量は、特に限定しないが、30g/m
2以上が好ましく、90g/m
2以上がより好ましい。30g/m
2未満では、引張強度、硬さに問題があり、塗工や印刷の際にカールの発生や断紙を起こす恐れがある。一方、カールや断紙の抑制効果は、坪量が200g/m
2を超えた領域ではほとんど変わらないため、坪量は200g/m
2以下であることが好ましく、150g/m
2以下でもよい。
【0039】
装飾側層の坪量は、20g/m
2以上が好ましく、35g/m
2以上がより好ましい。20g/m
2未満の場合、均一な地合いを得ることが困難となり、乾燥後の表面毛羽立ちが発生する恐れがある。湿式抄造法における2層抄き合わせ法において、装飾側層の坪量が重過ぎると、抄造時の安定性が損なわれるため、坪量は100g/m
2以下とすることが好ましい。また、100g/m
2を超えた領域では、毛羽立ちの抑制効果はほとんど変わらないことからも、装飾側層の坪量は100g/m
2以下とすることが好ましい。
【0040】
貼り付け層の坪量は、20g/m
2以上が好ましく、35g/m
2以上がより好ましい。20g/m
2未満の場合、均一な地合いを得ることが困難となり、また、糊が装飾側層にまで達する恐れがある。一方、糊の浸透を抑制する効果は、坪量が100g/m
2を超えた領域ではほとんど変わらないため、貼り付け層の坪量は100g/m
2以下とすることが好ましく、80g/m
2以下としてもよい。
【0041】
不織布の目空き状態を表す指標として、透気度を用いることが一般的である。通気度は一定量の空気がどの位の時間で測定物を通過するかを表したもので、数値が低いと目が開いており、高いと目が詰まっていることとなる。本発明の壁紙用不織布の場合、装飾側層に直接印刷が施されることを想定し、不織布の目空き状態を王研式透気度が3.0〜150secにすることが好ましく、5.0〜100secがより好ましい。3.0sec未満だと印刷インキの浸み込みが多過ぎ、150sec超だと、インキの乾燥性が低下し、インキの足も入らない場合がある。
【0042】
また、本発明の壁紙用不織布の場合、被覆層を設けることで、室内の水分などの影響を受けても収縮の発生を抑え寸法変化を抑えることができ、施工後の目隙も抑制できる。この指標として、壁紙用不織布の乾燥収縮率が小さい方が好ましく、例えば1.0%以下とすることが好ましい。さらに0.5%以下がさらに好ましい。乾燥収縮率が1.0%を超えて大きくなると、施工時の接着剤の影響で基材が伸ばされ、乾燥する際の収縮が原因で目隙が発生したり、施工後の室内湿度の影響を受けてしまう可能性があり、好ましくない。
【0043】
本発明の壁紙用不織布の貼り付け層は、石膏ボードやコンクリート等の壁面に接着される面であり、装飾側層は印刷されたり、発泡性ポリ塩化ビニル樹脂を塗工されたりする面である。坪量比率は、特に限定されないが、壁紙としての印刷適性、塗工適性、ボリューム感を付与することを考慮して、貼り付け層より装飾側層の坪量を大きくすることが好ましい。
【実施例】
【0044】
以下実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部数や百分率は質量基準である。
【0045】
実施例1
パルパー分散タンク中の水に500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)、芯鞘繊維状バインダー(商品名:メルティー4080、ユニチカ株式会社製、2.2デシテックス×5mm)、有機繊維(帝人株式会社製、ポリエステル繊維、0.6デシテックス×5mm)、PVA繊維状バインダー(商品名:VPB107、株式会社クラレ製、1.0デシテックス×3mm)を50:25:20:5の比率で投入して10分間混合分散した後、貯蔵タンクに送り、抄紙ヘッドタンクから坪量60g/m
2となるような抄造条件で、装飾側層に対応する第1層を抄造した。
【0046】
別のパルパー分散タンク中の水に500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)、芯鞘繊維状バインダー(商品名:メルティー(登録商標)4080、ユニチカ株式会社製、2.2デシテックス×5mm)、有機繊維(帝人株式会社製、ポリエステル繊維、0.6デシテックス×5mm)を70:15:15の比率で投入して10分間混合分散した後、貯蔵タンクに送り、抄紙ヘッドタンクから坪量40g/m
2となるような抄造条件で、第1層の裏面に抄き合わせを行い、湿紙の不織布を抄造する。抄き合わされた湿紙の状態でプレスを行い、装飾側層の第1層表面がヤンキードライヤーに当たるようにして乾燥し、坪量100g/m
2の壁紙用不織布原布を得た。
【0047】
無機顔料として、二酸化チタン(商品名:TITONE(登録商標) R−25、堺化学工業株式会社製)、高分子バインダーのエマルジョンとして、アクリルエマルジョン(商品名:ポリトロン(登録商標) Z431、旭化成ケミカルズ株式会社製)およびポリビニルアルコール(商品名:PVA−117、株式会社クラレ製)をそれぞれ70:25:5の比率で水に分散、混合し、塗工液を作製した。本塗工液を含浸装置にて、上記抄合わせ不織布原布に乾燥質量40g/m
2を含浸して乾燥し、坪量140g/m
2の壁紙用不織布を得た。
【0048】
実施例2
実施例1の装飾側層のパルプ繊維、芯鞘繊維状バインダー、有機繊維、PVA繊維状バインダーを70:15:10:5の比率に変え、貼り付け層のパルプ繊維、芯鞘繊維状バインダー、有機繊維を70:15:15の比率に変えた以外は実施例1と同様にして壁紙用不織布を得た。
【0049】
比較例1
実施例1の装飾側層のパルプ繊維、芯鞘繊維状バインダー、有機繊維、PVA繊維状バインダーを40:25:30:5の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙用不織布を得た。
【0050】
比較例2
実施例1の装飾側層のパルプ繊維、芯鞘繊維状バインダー、有機繊維、PVA繊維状バインダーを85:10:0:5の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙用不織布を得た。
【0051】
比較例3
実施例1の装飾側層のパルプ繊維、芯鞘繊維状バインダー、有機繊維、PVA繊維状バインダーを48:27:20:5の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙用不織布を得た。
【0052】
比較例4
実施例1の装飾側層のパルプ繊維、芯鞘繊維状バインダー、有機繊維、PVA繊維状バインダーを70:5:20:5の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙用不織布を得た。
【0053】
比較例5
実施例1の装飾側層のパルプ繊維、芯鞘繊維状バインダー、有機繊維、PVA繊維状バインダーを68:25:2:5の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙用不織布を得た。
【0054】
比較例6
実施例1の装飾側層のパルプ繊維、芯鞘繊維状バインダー、有機繊維、PVA繊維状バインダーを50:15:30:5の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙用不織布を得た。
【0055】
比較例7
実施例1の貼り付け層のパルプ繊維、芯鞘繊維状バインダー、有機繊維を75:10:15の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙用不織布を得た。
【0056】
比較例8
実施例1の貼り付け層のパルプ繊維、芯鞘繊維状バインダー、有機繊維を45:40:15の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙用不織布を得た。
【0057】
比較例9
実施例1の貼り付け層のパルプ繊維、芯鞘繊維状バインダー、有機繊維を80:15:5の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙用不織布を得た。
【0058】
比較例10
実施例1の貼り付け層のパルプ繊維、芯鞘繊維状バインダー、有機繊維を60:15:25の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙用不織布を得た。
【0059】
比較例11
実施例1の含浸装置による含浸乾燥質量を20g/m
2に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙用不織布を得た。
【0060】
比較例12
実施例1の含浸装置による含浸乾燥質量を50g/m
2に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙用不織布を得た。
【0061】
比較例13
実施例1の含浸装置を表面塗工装置に変え、装飾側層面のみを被覆層で被覆した以外は、実施例1と同様にして壁紙用不織布を得た。
【0062】
比較例14
実施例1の含浸装置を表面塗工装置に変え、貼り付け層面のみを被覆層で被覆した以外は、実施例1と同様にして壁紙用不織布を得た。
【0063】
比較例15
実施例1の貼り付け層のパルプ繊維、芯鞘繊維状バインダー、有機繊維の比率を75:25:0の比率に変えた以外は実施例1と同様にして壁紙用不織布を得た。
【0064】
比較例16
実施例1の貼り付け層のパルプ繊維、芯鞘繊維状バインダー、有機繊維の比率を75:25:0の比率に変え、含浸装置を表面塗工装置に変え、装飾側層面のみを被覆層で被覆した以外は、実施例1と同様にして壁紙用不織布を得た。
【0065】
比較例17
実施例1の貼り付け層のパルプ繊維、芯鞘繊維状バインダー、有機繊維の比率を75:25:0の比率に変え、含浸装置を表面塗工装置に変え、貼り付け層面のみを被覆層で被覆した以外は、実施例1と同様にして壁紙用不織布を得た。
【0066】
試験1(印刷適性)
RI−II型印刷試験機を用い、オフセット印刷用インキ(DIC株式会社製:FINEINK(登録商標))を1.5cc使用して簡易印刷試験を行い、下記の評価をした。
「×」ムラが多くグラディエーションが劣るもの
「△」部分的なムラはあるが、グラディエーションがあるもの
「○」グラディエーションのはっきりしたもの
【0067】
試験2(ブローイング)
壁紙用不織布の製造において、抄き合わせた湿紙の不織布をプレスし、ヤンキードライヤーで乾燥する工程で、湿紙をタッチロールにて押し付ける際、湿紙にエアー溜まりがあった場合には、シワが発現する。この時のエアー溜まりを一般に「ブローイング」と表現している。このブローイングによるシワの発現について、下記の度合いで評価した。
「×」ブローイングが発生し、紙面にシワが見られた。
「△」ブローイングは発生するが、シワは見られない。
「○」ブローイングが見られない。
【0068】
試験3(毛羽立ち)
壁紙用不織布を温度23℃、湿度50%RH環境下で24時間調湿した後、MD方向(抄紙流れ方向、縦方向)32cm×CD方向(横方向、幅方向)15cmとなるように裁断した。なお、サンプリングの際は紙面を擦らないように十分注意した。ガラス板上に坪量150g/m
2の上質紙2枚を敷き、クリップにて固定した。次に幅250mm×長さ130mm×厚さ15mmの金属直方体(重さ400g)にガーゼを4重に巻きつけ、上質紙面を2回擦りガーゼ面をならした。上質紙上に壁紙用不織布を、装飾側層を上にしてのせ、装飾側層表面を用意したガーゼを巻きつけた金属直方体にて、自重によりMD方向に向かって1回擦った。壁紙用不織布の向きを変え、先ほどとは逆方向に向かって1回擦り、中央部の5cm×10cmの面積表面を目視観測し、下記の度合いで評価した。
「◎」毛羽の数が0本
「○」毛羽の数が5本未満
「△」毛羽の数が5本以上10本未満
「×」毛羽の数が10本以上
【0069】
試験4(壁面からの剥離性)
メチルセルロース系壁紙用粉末糊を5質量%濃度となるように水で希釈して十分撹拌した糊溶液を、壁紙用不織布の貼り付け層面にウェット塗工量が150g/m
2になるように塗工し、厚さ12.5mmの準不燃石膏ボード(商品名:タイガーハイクリンボード、(登録商標)吉野石膏株式会社製)に貼着し、10日後に、幅5cm、長さ10cmの長方形に切れ目を入れ、引張試験機(商品名:RTC−1150、熊谷理器工業製)にて50m/minの定速且つ40Nの一定加重下で剥がし、剥がれた状態を観察し、下記の度合いで評価した。剥離性は、剥離する速度と力によってバラツキが大きく、引張試験機を導入して測定した。
「○」石膏ボードと貼り付け層面の間で綺麗に剥離できた。
「△」石膏ボード表面に少量貼り付け層面の一部が残るが全面剥離できた。
「×」壁紙用不織布の層間で剥離または切れた。
【0070】
試験5(乾燥収縮率)
壁紙用不織布を温度23℃、湿度55%RHの環境下で純水中に2時間浸漬し、サンプルの横方向の長さ(原寸)を正確に測定し、30分自然乾燥したのちに、サンプルの長さを測定し、原寸に対する収縮率を求めた。0.0%に近い程、寸法変化がなく良好である。
【0071】
試験6(王研式透気度)
壁紙用不織布の透気度をJIS P 8117:2009に準じた王研式測定器にて測定し、目空き状態の評価を行った。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
表1〜2の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜2の壁紙用不織布は、印刷適性、ブローイング、毛羽立ち、壁面からの剥離性、乾燥収縮率、王研式透気度の評価において、優れた壁紙用不織布として使用が可能である。
【0075】
装飾側層において、装飾側層の全繊維に対するパルプ繊維の含有量が、比較例1では45質量%未満であったため、有機繊維の配合量が増え、目が開く方向となり、透気度が3.0sec未満となり、王研式透気度が低く、好ましい範囲の限界となった。比較例2では、83質量%を超えているため、抄造可能なバインダー量を確保するには有機繊維が配合できなくなり、乾燥収縮率が1.0%を超えた。
【0076】
装飾側層において、装飾側層の全繊維に対する繊維状バインダーの含有量が、比較例3では30質量%を超えているため、毛羽立ちが抑制されて面質は向上するものの、印刷時のインキ吸収性が阻害され、印刷でのグラディエーションが劣る結果となった。比較例4では、装飾側層において、装飾側層の全繊維に対する繊維状バインダーの含有量が13質量%未満であったため、ブローイングによるシワが発生し、壁面から剥離する際に、装飾側層と貼り付け層との間で層間剥離が生じた。
【0077】
装飾側層において、装飾側層の全繊維に対する有機繊維の含有量が、比較例5では4質量%未満であったため、乾燥収縮率が1.0%を超えた。比較例6では、25質量%を超えているため、基材の目が開き、目標の印刷適性が得られない。
【0078】
貼り付け層において、貼り付け層の全繊維に対する繊維状バインダーの含有量が、比較例7では13質量%未満であったため、パルプ繊維の配合量が増え、施工時の糊の吸収が多くなり糊の乾燥が悪くなり、施工時に問題を抱えることになる。比較例8では、35質量%を超えているため、抄造での問題が発生し、抄紙が困難となる。
【0079】
貼り付け層において、貼り付け層の全繊維に対する有機繊維の含有量が、比較例9では10質量%未満であったため、壁面からの剥離が重くなり、壁面に不織布が残った。比較例10では20質量%を超えているため、乾燥収縮率は良い方向に行くものの、壁面からの剥離が軽くなり、施工時に問題となった。
【0080】
実施例1と比較例11、12から、被覆層の両面における付着量が25g/m
2未満である場合、装飾側層の毛羽が抑えられず、表面性の悪化を招き、壁面からの剥離においては、少量の不織布が壁面に残る結果(紙層取られ)となった(比較例11)。被覆層の両面における付着量が45g/m
2超である場合、不織布の目が詰まり、壁面からの剥離が軽くなるばかりか、生産の上で乾燥が鈍くなり、汚れを誘発し、操業性に影響を及ぼす結果となった(比較例12)。被覆層の付着量を適正値にすることで、壁面からの剥離性を良好なものにすることが可能である。
【0081】
実施例1と比較例13、14から、壁紙用不織布の両面が被覆層で被覆されずに、それぞれの面のみが被覆層で被覆された場合には、印刷適正問題(比較例14)、未塗工面側で剥離性の不良(比較例13)や表面の毛羽立ちが発生する(比較例14)といった結果となった。
【0082】
実施例1と比較例15、16、17から、貼り付け層の有機繊維を抜いた場合には、壁面からの剥離する際に、層間剥離や紙層取られが発生する結果となった。