(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記全体温度調整手段によって各被試験物配置室に対して所定の目標温度近傍の送風目標温度に調整された送風を供給し、各被試験物配置室内に配置された被試験物を前記送風目標温度に調整された送風中に晒す全体調整運転と、
前記全体温度調整手段によって各被試験物配置室に対して所定の送風目標温度に調整された送風を供給し、さらに、前記補助熱源が対象温度測定手段の検知温度に基づいて、被試験物の温度が試験物目標温度となるように被試験物配置室の温度を調整し、被試験物を調整後の送風中に晒す個別調整運転を実行可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の試験装置。
前記個別調整運転における送風目標温度は試験物目標温度よりも低く、対象温度測定手段の検知温度に基づいて前記補助熱源を制御し、被試験物の温度が試験物目標温度となるように被試験物配置室を加熱することを特徴とする請求項4に記載の試験装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで上記した充放電試験と交流インピーダンス測定は、異なる試験装置で行われることが多い。すなわち、二次電池を異なる試験装置のチャンバー間で移動させて、充放電試験と交流インピーダンス測定を行う場合が多い。
【0008】
この点について説明すると、充放電試験は試験目的が二次電池を劣化させて耐久性を評価する目的であるため、二次電池自身の温度変化はある程度許容され、二次電池自身の温度は、所定の許容温度範囲(閾値)内に収まっていれば充放電試験が成立する。
一方、交流インピーダンス測定においては、二次電池の極めて小さな抵抗成分まで測定することが多く、温度等の条件によって抵抗値が大きく乱れてしまう。すなわち二次電池の現実の温度が試験条件として想定された目標温度から離れてしまうと測定誤差が大きくなる。
【0009】
このような事情から、従来技術においては、充放電試験を行う場合は、容積の大きな試験装置のチャンバーに多数の二次電池を設置し、多数の二次電池を同一の環境下に置き、一度に複数の二次電池に対して充放電を行っていた。
一方、交流インピーダンス測定を行う場合には、温度等の誤差や振動等のノイズを極力減らすため、容積の小さな試験装置のチャンバーに二次電池を一個ずつ設置し、二次電池自身の温度を一定温度に維持した状態で所定のデータを測定していた。
【0010】
しかしながら従来の評価手法のように、二次電池を異なる試験装置のチャンバーの間で移動させると、二次電池を移動させるごとに二次電池と測定装置の配線を繋ぎかえなければならない。二次電池と測定装置の配線を試験ごとに配線し直すことは、測定者にとって煩雑で面倒なものである。また、配線をし直すごとに、端子等の接続位置が異なったり、配線の内部抵抗が変わってしまうこともあるので、正確な二次電池の評価が困難であった。
【0011】
また上記したように充放電試験は、二次電池自身の温度が所定の許容温度範囲内(閾値内)に収まっていれば実施可能である。
【0012】
しかしながら、充放電試験を開始して長時間が経過すると、試験対象たる二次電池の劣化が進み、抵抗成分が増えて二次電池自身が発熱する。そのため、二次電池の表面に熱がこもり、表面温度が測定における許容温度範囲の上限を超えてしまう場合がある。また、この劣化速度は、同一仕様の二次電池であっても個々に相違するので、設置した二次電池間で発熱温度に差異が生じる。そのため、従来技術の試験装置を使用し、多数の二次電池を一つのチャンバーに収容し、複数の二次電池に対して充放電を行う試験方法によると、試験対象の二次電池に許容温度の上限を超えたものと超えないものが生じてしまい、再現性の良い評価結果を得られない場合があった。
【0013】
このような背景から、充放電試験中における劣化の程度に関わらず、表面温度を許容温度の範囲内に留めておくことができる試験装置の開発が望まれていた。
【0014】
そこで、本発明は、同一の試験室で性能特性評価試験と耐久性評価試験を行うことができ、耐久性評価試験中に、たとえ被試験物が発熱した場合でも被試験物の温度を所望の温度範囲に留めておくことができる試験装置を開発することを目的とする。また、本発明は、充放電試験後の二次電池の性能特性を正確に評価することができる二次電池の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、断熱壁で覆われた試験室と、全体温度調整手段と、複数の補助熱源と、被試験物の温度を測定する複数の対象温度測定手段とを有し、前記試験室は、被試験物を設置する複数の被試験物配置室に区画され、前記全体温度調整手段は、主熱源と主送風機とを有していて、前記試験室内の各被試験物配置室に対して所定の送風目標温度に調整された送風を供給可能であり、前記補助熱源は、対象温度測定手段の検知温度に基づいて、被試験物の温度が所定の試験物目標温度となるように被試験物配置室の温度を調整するものであり、前記全体温度調整手段は、主送風機の送風が通過する主送風通路を有し、当該主送風通路に全体温度センサーが設けられていて、当該全体温度センサーの検知温度が送風目標温度となるように主熱源が制御され、主送風通路と被試験物配置室とを繋いで主送風通路を流れる空気を被試験物配置室に導入する送風導入部があり、前記送風導入部の近傍に補助熱源が設けられていて、前記補助熱源によって温度が再調整された送風を被試験物配置室に導入可能であることを特徴とする試験装置である。
【0016】
本発明の構成によれば、一つの試験室内に全体温度調整手段と、複数の補助熱源と、複数の対象温度測定手段が内蔵されており、全体温度調整手段の主熱源と主送風機によって各被試験物配置室に対して所定の温度(送風目標温度)に調整された送風を供給可能である。すなわち本発明の構成によれば、各被試験物配置室の温度を全体温度調整手段によって調整することができる。
また本発明によれば、対象温度測定手段の検知温度に基づいて、被試験物の温度が所定の温度(試験物目標温度)となるように被試験物配置室の温度を調整できる補助熱源を備えている。すなわち本発明によれば、全体温度調整手段によって調整された温度を、補助熱源によって微調整することができる。
【0017】
これらの構成による作用効果について、被試験物として二次電池を使用し、当該二次電池について交流インピーダンス測定及び充放電試験を行う場合について説明する。
充放電試験を行う場合には、全体温度調整手段の主熱源と主送風機によって各被試験物配置室に対して試験温度に調整された送風を供給することによって、二次電池の温度を概ね試験温度にすることが可能である。
また、交流インピーダンス測定を行う場合には、精密な温度条件が求められるので、全体温度調整手段の主熱源と主送風機によって各被試験物配置室に対して概ね試験温度に近い温度に調整された送風を供給する。そして、二次電池の温度を測定する対象温度測定手段の検知温度に基づいて、二次電池の温度が試験温度となるように補助熱源が全体温度調整手段からの送風を被試験物の温度に合わせて再調整することによって、二次電池を試験温度にする。
こうすることによって、一つの試験室内で交流インピーダンス測定及び充放電試験の双方を正確に実施することが可能となる。
【0018】
また、上記したように、二次電池に対して充放電試験を行う場合において、充放電試験による劣化によって二次電池の抵抗が増大し、表面温度が上昇し、測定の誤差を許容する許容温度を超えてしまうような場合がある。このような場合でも、補助熱源は、二次電池の温度に基づいて調整が可能であるため、二次電池の温度上昇があっても、表面温度を許容温度の範囲内になるように温度調整することが可能である。それ故に、充放電試験中、常時二次電池の温度を所定の範囲内に抑えることが可能である。
また、一つの試験室内で性能特性評価試験及び耐久性評価試験を実施することが可能であるから、被試験物の移動や配線直しといった煩雑さや配線直しによる評価のバラツキを低減させることができる。
【0019】
請求項1に記載の発明は、前記全体温度調整手段は、主送風機の送風が通過する主送風通路を有し、当該主送風通路に全体温度センサーが設けられていて、当該全体温度センサーの検知温度が送風目標温度となるように主熱源が制御されることも特徴としている。
【0020】
本発明の構成によれば、主熱源は、全体温度センサーの検知温度が所定の送風目標温度となるように制御できる。そのため、被試験物の温度に対して補助熱源が温度を制御しやすいように、試験室全体の温度を調整することが可能である。
【0021】
請求項1に記載の発明は、主送風通路と被試験物配置室とを繋いで主送風通路を流れる空気を被試験物配置室に導入する送風導入部があり、前記送風導入部の近傍に補助熱源が設けられていて、前記補助熱源によって温度が再調整された送風が被試験物配置室に導入されることも特徴としている。
【0022】
ここでいう「送風導入部の近傍」とは、ここを通過する送風のほとんどが被試験物配置室に流れ込む領域である。
【0023】
本発明の構成によれば、被試験物と送風導入部の間に設けられた補助熱源によって温度が再調整された送風が被試験物配置室に導入される。すなわち、主熱源によって形成された所定の温度の空気を、補助熱源を通過させ、通過する空気の温度を再調整し、被試験物をその送風環境に晒すことが可能である。そのため、被試験物の温度をより正確に制御することが可能である。
【0024】
請求項2に記載の発明は、断熱壁で覆われた試験室と、全体温度調整手段と、複数の補助熱源と、被試験物の温度を測定する複数の対象温度測定手段とを有し、前記試験室は、被試験物を設置する複数の被試験物配置室に区画され、前記全体温度調整手段は、主熱源と主送風機とを有していて、前記試験室内の各被試験物配置室に対して所定の送風目標温度に調整された送風を供給可能であり、前記補助熱源は、対象温度測定手段の検知温度に基づいて、被試験物の温度が所定の試験物目標温度となるように被試験物配置室の温度を調整するものであり、各被試験物配置室には、補助送風機が設けられ、当該補助送風機によって被試験物配置室内の空気が撹拌されて被試験物に対する被試験物配置室内の空気の接触機会を増大可能であることを特徴とする試験装置である。
【0025】
本発明の構成によれば、被試験物に対する被試験物配置室内の空気の接触機会が増大されるので、被試験物配置室内の空気が被試験物に与える影響が大きく、より正確な温度調整が可能である。すなわち、各被試験物配置室内の被試験物の温度を均一化することができるので、正確な特性評価が可能である。
また本発明の構成によれば、被試験物の温度を早期に試験物目標温度に至らせることができる。
【0026】
請求項3に記載の発明は、各被試験物配置室にそれぞれ対応する補助熱源があり、補助熱源によって温度が再調整された送風を各被試験物配置室に導入可能であり、前記全体温度調整手段によって各被試験物配置室に対して所定の送風目標温度に調整された送風を供給し、いずれかの被試験物配置室に設置された被試験物の温度が上昇した場合には当該被試験物配置室の補助送風機を起動するとともに前記送風目標温度を下方に修正し、
他の被試験物配置室に対応する補助熱源が起動あるいは発熱量が増大されて各被試験物の温度が試験物目標温度に維持されることを特徴とする請求項2に記載の試験装置である。
【0027】
本発明の構成によると、例えば二次電池に対して充放電試験を行う場合において、二次電池が過度に発熱した様な場合に対処することができる。
二次電池に対して充放電試験を行う場合を想定すると、実験の開始直後は、いずれの二次電池も発熱しない。そこで実験の開始直後は、全体温度調整手段によって各被試験物配置室に対して試験物目標温度近傍の送風目標温度に調整された送風を供給することにより、複数の二次電池を試験物目標温度に維持することができる。
一方、試験が進むと、劣化して発熱する二次電池が出現し、試験物目標温度近傍の送風に晒すだけでは二次電池を試験物目標温度に維持することができないものが現れる。
本発明の試験装置では、この様な状況に至った場合、補助送風機を起動して二次電池(被試験物)に風を当て、二次電池(被試験物)をさます。また送風目標温度を下方に修正し、二次電池(被試験物)に当てられる送風の温度を低下させる。
一方、他の被試験物配置室に対応する補助熱源が起動あるいは発熱量が増大され、各被試験物の温度を試験物目標温度に維持する。
【0028】
請求項4に記載の発明は、前記全体温度調整手段によって各被試験物配置室に対して所定の目標温度近傍の送風目標温度に調整された送風を供給し、各被試験物配置室内に配置された被試験物を前記送風目標温度に調整された送風中に晒す全体調整運転と、前記全体温度調整手段によって各被試験物配置室に対して所定の送風目標温度に調整された送風を供給し、さらに、前記補助熱源が対象温度測定手段の検知温度に基づいて、被試験物の温度が試験物目標温度となるように被試験物配置室の温度を調整し、被試験物を調整後の送風中に晒す個別調整運転を実行可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の試験装置である。
【0029】
ここで全体調整運転における「所定の目標温度」と、個別調整運転における「所定の目標温度」は、同一であってもよく、異なっていてもよい。多くの場合、両者は異なる。
本発明の構成によれば、全体調整運転と個別調整運転が行われる。例えば、要求される試験条件が比較的緩やかな場合には、全体調整運転を行い、要求される試験条件が厳格な場合には、個別調整運転を行うことによって要求される試験条件を満たしつつ、消費電力を低減できる。
【0030】
また請求項5に記載の発明は、前記個別調整運転における送風目標温度は試験物目標温度よりも低く、対象温度測定手段の検知温度に基づいて前記補助熱源を制御し、被試験物の温度が試験物目標温度となるように被試験物配置室を加熱することを特徴とする請求項4に記載の試験装置である。
【0031】
本発明によると、補助熱源で被試験物の温度を微調整することができ、被試験物の温度を精密に制御することができる。
二次電池に対して所定の試験温度において充放電を繰り返させる充放電試験を行う充放電基本モードと、所定の試験温度における電気的な性能特性を評価する性能特性評価試験を行う性能特性評価モードとを、切り替え実施可能である
ことが望ましい。
【0032】
請求項
6に記載の発明は、請求項1〜
5のいずれかに記載の試験装置を用いて被試験物たる二次電池を評価する二次電池の評価方法であって、二次電池に対して所定の試験温度において充放電を繰り返させる充放電試験と、所定の試験温度における電気的な性能特性を評価する性能特性評価試験を少なくとも一回ずつ行うことを特徴とする二次電池の評価方法である。
【0033】
ここで充放電試験を行う際の「試験温度」と、性能特性評価試験を行う際の「試験温度」は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
本発明の評価方法によれば、劣化による二次電池の温度上昇が、測定環境に影響しにくいため、性能特性評価試験において正確な性能特性を評価することが可能である。
【発明の効果】
【0034】
本発明の試験装置によれば、同一の試験室で性能特性評価試験と耐久性評価試験を行うことができ、耐久性評価試験中に、たとえ被試験物が発熱した場合でも被試験物の温度を所望の温度範囲に留めておくことができる。
本発明の二次電池の評価方法によれば、充放電試験後の二次電池の性能特性を正確に評価することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、本発明の第1実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明において、特に断りがない限り、上下の位置関係は、通常の設置位置(
図1)を基準に説明する。また、特に断りの無い限り、物性は、標準状態を基準とする。
【0037】
本発明の第1実施形態の試験装置1は、主に二次電池50の評価試験を行うための環境試験装置であり、主に温度を制御する恒温装置である。
試験装置1は
図1,
図6のように、本体装置6と評価装置3によって構成されている。本体装置6は、試験室2と後述の全体温度調整手段28を内蔵するものである。また評価装置3は、試験評価を行う装置である。
【0038】
本体装置6は、
図2、
図3に示されるように、壁面が断熱壁5で覆われた本体側筐体8と、扉部材7によって構成されている。
本体側筐体8は、前方が開放した直方体状の筐体であり、
図2、
図3、
図6から読み取れるように、四角形状の底面部41と、底面部41と略同一形状の天面部42と、これらの三辺を繋ぐ左右側壁部43,44及び背面部45から形成されており、正面側が開口している。
【0039】
扉部材7は、
図1,
図6から読み取れるように、本体側筐体8に対して相対的に開閉な扉であり、本体側筐体8の正面の開口を塞ぐように設けられた扉である。
扉部材7には、
図6のように、その内側(本体装置6側)の内側壁部46に前後仕切り壁31a,31bが設けられている。
【0040】
本体装置6の内部には、
図2、
図3に示すように、背面部45に対して平行に設けられた大きな縦仕切り壁55と、底面部41に対して平行に設けられた大きな横仕切り壁56があり、これらの仕切り壁55,56によって試験室2が形成される領域と、全体温度調整手段28として機能する領域とに分かれている。
本実施形態においては、試験室2は本体装置6の中央部に位置し、その周囲に全体温度調整手段28として機能する領域がある。
【0041】
すなわち試験室2が形成される領域は、
図2、
図3の様に、縦仕切り壁55と横仕切り壁56及び本体側筐体8の天面部42と、左右側壁部43,44によって囲まれた領域である。
試験室2は、二次電池50を収容する領域であり、前記した扉部材7を開閉することによって、二次電池50を出し入れすることが可能となっている。
【0042】
試験室2は、
図3に示されるように、6個の被試験物配置室11a〜11fに区画されている。
すなわち試験室2は、横2列、縦3段に区画されている。より具体的には、試験室2に棚板部材10が2枚設けられており、試験室2は縦方向に3段に仕切られている。
また各段の中央には、中仕切り壁13があり各段が2室に区切られている。その結果、試験室2は、6個の被試験物配置室11a〜11fに区画されている。
各被試験物配置室11a〜11fは、いずれも、奥面と、天面と、底面と、左右側面が壁で覆われており、それぞれが独立している。
被試験物配置室11a〜11fは、
図2のように、評価試験を行う際に、二次電池50を配置し、所望の試験環境が形成される空間である。
【0043】
被試験物配置室11a〜11fには、
図2及び
図3から読み取れるように、補助熱源17(17a〜17f)と、補助送風機18(18a〜18f)と、対象温度測定手段20(20a〜20f)がそれぞれ1個ずつ設けられている。
すなわち各被試験物配置室11a〜11fに対応して一個ずつ補助熱源17(17a〜17f)が設けられている。また各被試験物配置室11a〜11f内に一個ずつ補助送風機18(18a〜18f)が設けられている。
補助送風機18(18a〜18f)は、縦仕切り壁55に設けられた開口たる送風導入部15a〜15fの近傍に設けられており、補助送風機18(18a〜18f)を通過する送風の全てが、対応する各被試験物配置室11a〜11fの一つに導入される。
【0044】
補助熱源17a〜17fは、対象温度測定手段20a〜20fが検知する温度に応じて被試験物配置室11a〜11fを通過する空気の温度を調整し、間接的に二次電池50a〜50fの温度を調節可能な熱源である。具体的には、補助熱源17a〜17fは、電気ヒーター等の被試験物配置室11a〜11fの空気を昇温できる個別加熱装置である。
補助熱源17a〜17fは、
図5のように、制御装置33a〜33fを介して対象温度測定手段20a〜20fと接続されている。
【0045】
補助送風機18a〜18fは、被試験物配置室11a〜11f内の空気を撹拌させる送風機である。具体的には、補助送風機18a〜18fは、
図3のように、軸流ファンである。補助送風機18a〜18fは、送風量を変化させることができるものであることが望ましい。
補助送風機18a〜18fは、被試験物配置室11a〜11fの側壁に相当する部位に設けられており、送風は被試験物配置室11a〜11fの側壁側から中央に向かう。
補助送風機18a〜18fの周囲には邪魔板58が設けられている。
【0046】
対象温度測定手段20a〜20fは、各二次電池50(50a〜50f)の温度を測定するものである。
具体的には、対象温度測定手段20a〜20fは、被試験物配置室11a〜11fに設置された二次電池50a〜50fの表面に貼り付けて二次電池50a〜50fの表面温度を測定する個別温度センサーである。
【0047】
一方、全体温度調整手段28として機能する領域は、縦仕切り壁55と横仕切り壁56及び本体側筐体8の背面部45と底面部41によって囲まれた領域であって一連の主送風通路12を構成している。
また全体温度調整手段28を構成する主送風通路12は、大きく機器配置領域57と、分配流路60に分かれている。
機器配置領域57は、試験室2の下部にあり、横仕切り壁56と本体側筐体8の底面部41によって囲まれた領域部位である。
一方、分配流路60は、縦仕切り壁55と本体側筐体8の背面部45によって囲まれた領域である。
【0048】
試験室2と全体温度調整手段28の分配流路60とは、
図2の様に送風導入部15a〜15fで連通している。
すなわち全体温度調整手段28の分配流路60と、試験室2の各被試験物配置室11a〜11fとは、縦仕切り壁55に設けられた開口たる送風導入部15a〜15fで連通している。
また前記した扉部材7を閉じると、
図2の様に、棚板部材10の端部が扉部材7の前後仕切り壁31a, 31bと接し、各被試験物配置室11a〜11fと、送風排出部16a〜16fとを繋ぐ一連の流路が形成される。
ここで送風導入部15a〜15fは、主送風通路12から各被試験物配置室11a〜11fに空気を導入する導入口である。
また送風排出部16a〜16fは、各被試験物配置室11a〜11fから主送風通路12に空気を戻す戻り口である。
【0049】
全体温度調整手段28の機器配置領域57内には、主熱源21が内蔵されている。
また主送風通路12の分配流路60には、主送風機22(22a,22b)と全体温度センサー23が設けられている。
主熱源21は、全体温度センサー23の検知温度に基づいて各被試験物配置室11a〜11f内の温度を調整するものであり、冷却手段25と、加熱手段26から形成されている。
【0050】
冷却手段25は、冷凍サイクルを備えた全体冷却装置であり、冷凍サイクルの一部たる蒸発器27が機器配置領域57内に配されている。
加熱手段26は、加熱ヒーター等の全体加熱装置であり、全体温度センサー23の測定温度に基づいて熱量を調整可能となっている。加熱手段26は、
図5のように、制御装置34を介して全体温度センサー23と接続されている。
主送風機22は、試験室2内の空気を全体温度調整手段28の機器配置領域57内に導入し、温度調節した後、分配流路60に送って試験室2内に戻すものである。すなわち主送風機22は、試験室2と全体温度調整手段28の間で空気を循環させるものであり、具体的には、遠心ファンであって主送風通路12の空気を各被試験物配置室11a〜11fに供給するものである。主送風機22は、送風量を変化させることができるものであることが望ましい。
全体温度センサー23は、主熱源21及び主送風機22の下流側にあり、送風導入部15a〜15fの上流側の温度を測定する温度センサーである。なお全体温度センサー23は、主熱源21の下流側にありさえすれば良く、主熱源21と主送風機22との間に設けられていてもよい。
【0051】
主送風通路12の分配流路60は、
図2のように、機器配置領域57と被試験物配置室11a〜11fの送風導入部15a〜15fを繋ぐ通路である。
【0052】
図1に示される評価装置3は、公知の測定装置であり、二次電池50に電気的に接続することによって充放電測定や交流インピーダンス測定が可能な装置である。
評価装置3は、二次電池50の電極端子と接続可能な電源を備えている。
【0053】
二次電池50(50a〜50f)は、公知の二次電池であり、例えば、リチウム二次電池やマグネシウム二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池などである。
【0054】
続いて、試験装置1の被試験物配置室11a〜11fにそれぞれ二次電池50a〜50fを設置した状態における各構成部材の位置関係について説明する。
【0055】
なお本実施形態の試験装置1では、6個の被試験物配置室11a〜11fを有しているが、各被試験物配置室11a〜11fの基本構造は、同一である。すなわち6個の被試験物配置室11a〜11fの内、図面左列の3個の被試験物配置室11a〜11cは、同一の構造である。また図面右列の3個の被試験物配置室11d〜11fは、補助送風機18の配置が左右逆である点を除いて図面左列の3個の被試験物配置室11a〜11cと同一である。
そのため本実施形態の試験装置1は、6個の被試験物配置室11a〜11fを有しているが、各被試験物配置室11a〜11fの説明は、代表して左列最上段の被試験物配置室11aの説明だけに止める。
【0056】
本実施形態の試験装置1は、
図2のように、主送風通路12と、主熱源21と、主送風機22と、全体温度センサー23によって全体温度調整手段28を構成しており、全体温度調整手段28によって、各被試験物配置室11a〜11f全体の温度をまとめて調整可能となっている。
主送風通路12には、空気の流れ方向上流側(送風排出部16a〜16c側)から下流側(送風導入部15a〜15f)にかけて、冷却手段25、加熱手段26、主送風機22a,22b、全体温度センサー23の順に配されている。
主送風機22a,22bは、左右方向Xに並列されている。各主送風機22a,22bの送風口は、ともに同じ方向を向いており、具体的には、各主送風機22a,22bの送風口は、ともに上方に向かって開口している。
【0057】
扉部材7の内側壁部46と前後仕切り壁31aは、前後方向Zに所定の間隔を空けて平行に配されており、前後仕切り壁31aと前後仕切り壁31bも、前後方向Zに所定の間隔を空けて平行に配されている。
【0058】
各被試験物配置室11a〜11fには、
図2のように、送風導入部15a〜15fの近傍に補助熱源17a〜17fが配されている。すなわち、送風導入部15a〜15fを補助熱源17a〜17fが塞ぐように配されており、主送風通路12を通過した直後の空気が補助熱源17a〜17fの部位を通過する。そして補助熱源17a〜17fを通過した空気は、その全てがそれぞれ対応する各被試験物配置室11a〜11fに流れ込む。
【0059】
左右方向X(上下方向Yに直交し、かつ前後方向Zに直交する方向)に注目すると、
図3に示されるように、被試験物配置室11aの左右方向Xの一方(左側)に、補助送風機18aが設けられている。すなわち、補助送風機18aは、被試験物配置室11aの二次電池50aに直接風を当てることができる位置に設けられている。
被試験物配置室11aの下に位置する被試験物配置室11b及び被試験物配置室11cについても同様である。
また右列の被試験物配置室11d,11e,11fについては、被試験物配置室11aの左右方向Xの他方(右側)に、補助送風機18d,18e,18fが設けられている。
【0060】
図4に示すように補助送風機18aに対して左右方向Zに所定の間隔が空いた位置に邪魔板58があり、邪魔板58の端部が、補助送風機18aに対する吸気口29,30として機能する。すなわち邪魔板58には開口62が設けられており、開口62に臨む位置に補助送風機18aがある。
吸気口29,30は、被試験物配置室11a〜11f内の空気を吸気して補助送風機18(18a〜18f)に導入する開口である。
すなわち、各被試験物配置室11a〜11f内の空気は、吸気口29,30から吸気されて、補助送風機18a〜18fによって、主に主送風機22により送風される空気の流れ方向(前後方向Z)に対して交差する方向に送風される。
【0061】
二次電池50(50a〜50f)は、
図2,
図4から読み取れるように、補助熱源17(17a〜17f)の下流側であって、左右方向Xにおいて補助送風機18(18a〜18f)と対面するように設置可能となっている。
すなわち、二次電池50a〜50fの設置位置は、送風導入部15a〜15fから供給された空気が通過し、かつ、補助送風機18a〜18fによって撹拌された空気にも接触する位置となっている。
【0062】
続いて、試験装置1を用いて、複数の二次電池50の性能特性評価試験及び耐久性評価試験を行う二次電池50の評価方法について説明する。なお、以下の実施例は、各被試験物配置室11a〜11fにそれぞれ二次電池50a〜50fを設置して行われたものであるが、
図11乃至
図15のタイムチャートは、理解を容易にするために6個の被試験物配置室11a〜11fの内、左列の3個の被試験物配置室11a〜11cに設置した二次電池50a〜50cに注目して記載している。
【0063】
本実施形態の二次電池の評価方法は、基本的には、従来の評価方法と同様である。
すなわち、まず最初に試験装置1により、所望の測定環境を形成し、各被試験物配置室11a〜11fに配された二次電池50a〜50fについて、交流インピーダンス測定を行い、初期特性を計測する。
【0064】
交流インピーダンス測定を行った後に、
図11に示されるように所定の温度及び所定の電圧範囲において二次電池50a〜50f(
図11には左列の3個の被試験物配置室11a〜11c内の様子のみ表示 以下同じ)に充放電を繰り返させる充放電試験を行う。
【0065】
そして、充放電試験が終了した後に、
図11に示されるように再び交流インピーダンス測定を行い、その後、二次電池50a〜50fの充放電試験を行う。このように、交流インピーダンス測定と充放電試験を交互に行い、これらの繰り返しを所定の回数又は二次電池50a〜50fが完全に劣化して電池として機能しなくなるまで続ける。
【0066】
ここで、上記したように充放電試験においては、試験目的が二次電池を劣化させて耐久性を評価する目的であるため、設置温度に対して所定の許容温度(閾値)に収まっていれば、評価可能である。
一方、交流インピーダンス測定は、正確な測定結果を得るためには極めて厳密に測定温度を制御しなければならない。
【0067】
このような観点から、一つの試験室内で充放電試験と交流インピーダンス測定を連続して行う場合には、より条件の厳しいインピーダンス測定に温度環境を合わせて試験を実施する必要がある。しかしながら、インピーダンス測定に温度環境を合わせると、駆動させる装置の数が増えるため、試験装置の消費電力が大きいという問題がある。
【0068】
そこで、本実施形態の試験装置1は、充放電試験を行う場合と、インピーダンス測定などの性能特性を評価する場合とで、温度制御の方法を変えて制御可能となっている。
すなわち、本実施形態の試験装置1は、充放電試験を行う際の充放電基本モード(全体調整運転)と、インピーダンス測定などの電気的な性能特性を評価する性能特性評価モード(個別調整運転)と言う異なる評価モードが実施可能である。
また充放電試験を実施した場合における二次電池50a〜50fの発熱に備えて、充放電調整モード(個別調整運転)を備えている。
【0069】
以下、各評価モードについて説明する。
充放電基本モード(全体調整運転)は、
図11,
図12のように、主熱源21と主送風機22と全体温度センサー23によって被試験物配置室11a〜11f(
図11、
図12には左列の3個の被試験物配置室11a〜11cの様子のみ表示 以下同じ)全体が設定温度になるように制御するモードである。言い換えると、二次電池50a〜50fに対応する補助熱源17a〜17f及び補助送風機18a〜18fを駆動させない。
【0070】
この充放電基本モードにおける空気の流れについて説明すると、
図7のように、主送風通路12内の空気は、主熱源21により設定温度(所望の送風目標温度)に調整され、主送風機22によって下流側に送風される。主送風機22によって送風された空気は、全体温度センサー23を通過し、送風導入部15a〜15fを介して各被試験物配置室11a〜11fに供給される。すなわち各被試験物配置室11a〜11fに送風目標温度に温度調節された送風が通過し、各二次電池50a〜50fは、その通風雰囲気中に置かれる。そのため各被試験物配置室11a〜11fに供給された空気は、その一部が二次電池50a〜50fと接触しながら、送風排出部16a〜16fに至り、主送風通路12に戻る。なお、主熱源21の出力は、全体温度センサー23の測定値に基づいて、所望の送風目標温度になるようにフィードバック制御されている。
このように、充放電基本モードでは、全体温度調整手段28のみによって各被試験物配置室11a〜11fの温度が調整される。
【0071】
性能特性評価モードは、充放電基本モードと同様、
図11、
図12のように主熱源21と主送風機22と全体温度センサー23によって被試験物配置
室11a〜11f(
図11、
図12には被試験物配置室11a〜11c内のみ表示)全体が所定の温度(試験温度または試験物目標温度よりも低い温度)になるように制御する。
さらに、各二次電池50a〜50fの表面の温度を対応する対象温度測定手段20a〜20fで監視し、対象温度測定手段20a〜20fの測定温度に基づいて対応する補助熱源17a〜17fによる供給熱量を調整する。このようにして各被試験物配置室11a〜11fに配された二次電池50a〜50fの温度が試験物目標温度になるように再度温度が調整される。
【0072】
また性能特性評価モードでは、原則として補助送風機18a〜18fを駆動しないが、補助送風機18a〜18fを駆動してもよい。
補助送風機18a〜18fを駆動した場合における空気の流れについて説明すると、
図8,
図9に示されるように、主送風通路12内の空気は、主熱源21により所定の温度(試験温度または試験物目標温度よりも低い温度、基準温度)に調整され、主送風機22によって下流側に送風される。主送風機22によって送風された空気は、全体温度センサー23を通過し、送風導入部15a〜15fを介して各被試験物配置室11a〜11fに供給される。さらに、各被試験物配置室11a〜11fに供給された空気は、補助熱源17a〜17fで設定温度(所望の温度)に加熱され、補助送風機18a〜18fによって撹拌されながら二次電池50a〜50fと接触する。そして、二次電池50a〜50fを通過した空気は、送風排出部16a〜16fに至り、主送風通路12に戻る。
【0073】
このように、性能特性評価モードでは、全体温度調整手段28による温度調整によって大まかな温度が調整され、補助熱源17a〜17fによって二次電池50a〜50fの表面温度が設定温度となるように各被試験物配置室11a〜11f内の温度が、二次電池50a〜50fごとに個別に制御される。
また、補助熱源17a〜17fによって温度が再度調整された空気を、必要に応じて補助送風機18a〜18fによって撹拌することで二次電池50a〜50fに温度が調整された空気が接触する機会を増加させて、二次電池50a〜50fの表面温度をより設定温度に近づけた状態に調整することができる。
そのため、交流インピーダンス測定において正確な測定評価を行うことができる。
【0074】
以上のように、評価モードごとに温度制御方法が異なり、充放電基本モードでは性能特性評価モードに比べて駆動機器が少ないことから、常に性能特性評価モードである場合に比べて、消費電力を削減することができる。
【0075】
ここで、本実施形態の試験装置1は、上記したように、充放電試験において正確な測定結果を得るために、許容温度(例えば、プラスマイナス摂氏0.5度程度)を設けている。
上記した交流インピーダンス測定と充放電試験のサイクルは、所定の回数を達成するか、完全に劣化するまで続けられる。そのため充放電試験において二次電池50a〜50fが劣化していくにつれて発熱し、二次電池50a〜50fの表面温度が許容温度の上限を超えて高い温度になる場合がある。
この点について説明すると、
図15(左列の3個の被試験物配置室11a〜11cに設置した二次電池50a〜50cに注目して表示 以下同じ)のように、充放電基本モードのまま、二次電池50a,50bが劣化すると、二次電池50a,50bの表面温度が高くなり、許容温度の上限を超えて温度が高くなる。許容温度の上限を超えると、充放電試験のそれぞれの二次電池50a〜50fの表面温度のバラツキが大きくなってしまい、各二次電池50a〜50fを同一の条件下で測定したとは言えない。
【0076】
そこで、本実施形態の試験装置1は、上記した充放電基本モードと、性能特性評価モードに加えて、充放電試験において、許容温度の範囲内に二次電池50a〜50fの表面温度を留めるための充放電調整モード(個別調整モード)を有している。
【0077】
充放電調整モードについて説明すると、基本的には、充放電試験において、二次電池50a〜50fがほとんど劣化していない場合には、二次電池50a〜50fの発熱量が小さいので、二次電池の表面温度は、被試験物配置室11a〜11fの全体温度に比例する。そのため、試験装置1は、充放電基本モードを行い、主熱源21と主送風機22と全体温度センサー23によって被試験物配置室11a〜11f全体が試験物目標温度になるように制御することで正確に特性評価を行うことができる。
【0078】
一方、試験装置1は、充放電試験を繰り返すうちに、いずれかの二次電池50a〜50fの発熱量にばらつきが生じ、例えば
図13(左列の3個の被試験物配置室11a〜11cに設置した二次電池50a〜50cに注目して表示 以下同じ)の様に一つの二次電池50aが他の二次電池よりも劣化が進み、二次電池50aの発熱が激しくなった場合には、充放電基本モードから充放電調整モードに切り替えて試験を続行する。充放電基本モードから充放電調整モードへの切り替えは、二次電池50a〜50fの温度ばらつきが一定量を越えたことや、いずれかの二次電池50a〜50fの温度が一定値を越えたこと等を契機として自動的に行われることが望ましい。
【0079】
例えば
図13の様に、左列最上段の対象温度測定手段20aに設置された二次電池50aの温度が、許容温度範囲(閾値)の上限を越えた場合に充放電基本モードから充放電調整モードに切り替わる。
すなわち、試験装置1は、
図13,
図14のように二次電池50aに取り付けられた対象温度測定手段20aが、二次電池50aの温度が上昇して許容温度の上限に近づいていることを検知すると、送風目標温度を下方に修正する。そうして主熱源21の供給熱量を抑制して試験室2を循環する送風の全体温度を低くし、二次電池50aの温度が許容温度の上限(閾値)を超えないようにする。
【0080】
ここで充放電調整モードにおける空気の流れについて説明すると、主送風通路12内の空気は、送風目標温度が下方に修正され、主熱源21により低めの温度(試験物目標温度よりも低い温度,基準温度)に調整され、
図10の様に主送風機22によって下流側に送風される。主送風機22によって送風された空気は、送風導入部15a〜15fを介して各被試験物配置室11a〜11fに供給される。各被試験物配置室11a〜11fの内、発熱が激しい二次電池50aが載置された被試験物配置室11aは、補助熱源17aが停止状態とされ、試験物目標温度よりも低い温度に調整された送風がそのまま流れ込む。すなわち通常よりも低温の送風が被試験物配置室11aに流れ、中の発熱した二次電池50aは低温の通風にさらされる。
【0081】
一方、温度上昇を来していない二次電池50b〜50fが設置された他の各被試験物配置室11b〜11fは、対応する補助熱源17b〜17fに通電されて送風が加熱され、温度補償された送風が被試験物配置室11b〜11fに流れ込む。
そして各被試験物配置室11a〜11fにおいては、送風の一部が二次電池50と接触しながら、送風排出部16a〜16fに至り、主送風通路12に戻る。
また温度上昇した二次電池50aが載置された対象温度測定手段20aの補助送風機18aだけを駆動し、二次電池50aの側面に補助送風機18aから風を送る。その結果、二次電池50aに対する冷風の衝突機会が増大し、二次電池50aだけが急速に冷却される。
【0082】
すなわち充放電調整モードにおいては、各被試験物配置室11a〜11fに設けられた補助熱源17a〜17fを個別に駆動させて、各被試験物配置室11a〜11fに配された二次電池50a〜50fの温度が許容温度の範囲内に収まるように制御する。そして強冷が必要な二次電池50aには、補助送風機18aから送風し、二次電池50aを冷ます。
その結果、二次電池50aに対する冷風の衝突機会が増大し、二次電池50aだけが急速に冷却される。
【0083】
逆に言えば、正常温度を維持している他の二次電池50b〜50fは、送風目標温度が下方に修正された結果、本来よりも低い温度の送風にさらされることとなるから、二次電池50b〜50fを載置した被試験物配置室11b〜11fに対応する補助熱源17b〜17fに通電して被試験物配置室11b〜11fを通過する送風の温度を元の温度に維持する。
正常温度を維持している他の二次電池50b〜50fが載置された被試験物配置室11b〜11fでは、補助送風機18b〜18fは駆動されない。
【0084】
各補助熱源17の発熱量を比較すると、発熱をきたした二次電池50aが載置された被試験物配置室11aに対応する補助熱源17aは、熱の供給量(出力)が
図14のように他の補助熱源17b,17cの熱の供給量(出力)よりも少なくなっている。より具体的には、発熱をきたした二次電池50aが載置された被試験物配置室11aに対応する補助熱源17aは停止している。
【0085】
また、上記した調整後、
図13の様にさらに他の二次電池50bの劣化が進み、二次電池50bに取り付けられた対象温度測定手段20bが二次電池50bの温度が上昇して許容温度の上限(閾値)に近づいていることを検知すると、送風目標温度がさらに下方に修正される。すなわち主熱源21の供給熱量(出力)をさらに抑制して全体温度をさらに低くし、二次電池50bの温度が許容温度の上限(閾値)を超えないようにする。
そして、各被試験物配置室11a〜11fに設けられた補助熱源17a〜17fを個別に駆動させて、各被試験物配置室11a〜11fに配された二次電池50a〜50fの温度が許容温度の範囲内に収まるように制御する。
このときの各補助熱源17a.17b,17cの発熱量は、
図14の通りであり、二次電池50a,50b,50bの発熱量に逆比例する。
すなわち発熱をきたしていない二次電池50cが載置された被試験物配置室11cに対応する補助熱源17cの熱の供給量(出力)は、
図14のように他の補助熱源17b,17cよりも多くなっている。
【0086】
また温度が上昇した二次電池50a,50bが載置された被試験物配置室11a,11bでは、補助送風機18a,18bが駆動される。一方、正常温度を維持している他の二次電池50cが載置された被試験物配置室11cでは、補助送風機18cは駆動されない。
【0087】
ここで、この充放電調整モードにおける空気の流れについて説明すると、
図10のように、主送風通路12内の空気は、主熱源21によりさらに低い温度に調整され、主送風機22によって下流側に送風される。主送風機22によって送風された空気は、送風導入部15a〜15fを介して各被試験物配置室11a〜11fに供給される。各被試験物配置室11a〜11fに供給された空気は、補助熱源17a〜17fで設定温度(所望の温度)に加熱されて、その一部が二次電池50a〜50fと接触しながら、送風排出部16a〜16fに至り、主送風通路12に戻る。
このように、試験装置1は、劣化により二次電池50が発熱し、二次電池50の温度が許容温度の上限を超えて上昇することを検知すると、送風目標温度を下方に修正して全体の温度を下げ、発熱していない二次電池50が設置された被試験物配置室11では補助熱源17で必要な熱を補充し、全ての二次電池50の表面温度が許容温度の範囲内に収まるように制御されているため、全ての二次電池50において、同一の表面温度での正確な測定が可能である。
【0088】
上記した実施形態では、状況に応じて、充放電基本モードと、性能特性評価モードと、充放電調整モードを切り替えて評価試験を行ったが、本発明はこれに限定されるものではなく、常に性能特性評価モードを実行して評価試験を行ってもよい。
【0089】
上記した実施形態では、試験室2内に6つの被試験物配置室11a〜11fを内蔵するものであったが、本発明はこれに限定されるものではない。試験室2内に2以上の被試験物配置室を内蔵していればよい。
【0090】
上記した実施形態では、温度のみ調整するものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば主送風通路12に加湿器を設けて湿度を制御してもよい。この場合、試験装置は、温度及び湿度を制御できる恒温恒湿装置となる。
【0091】
上記した実施形態では、被試験物配置室11a〜11fに直接二次電池50を設置して評価装置3と電気的に接続させるものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、二次電池50を試料台に取り付けてエッジコネクタ等によって評価装置3と電気的に接続してもよい。
【0092】
上記した実施形態では、性能特性評価試験として交流インピーダンス測定を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の性能特性評価試験であってもよい。
【0093】
上記した実施形態では、耐久性評価試験として充放電試験を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の耐久性評価試験であってもよい。
【0094】
上記した実施形態では、性能特性評価試験及び耐久性評価試験の双方の評価試験を行ったが、本発明はこれに限定されるものではなく、性能特性評価試験及び耐久性評価試験の内、一方の評価試験のみ行ってもよいし、これらに加えて他の試験を行ってもよい。
【0095】
上記した実施形態では、補助熱源17として加熱装置を使用していたが、本発明はこれに限定されるものではなく、冷却装置であってもよいし、加熱装置及び冷却装置を備えていてもよい。
【0096】
上記した実施形態では、二次電池50を被試験物配置室11に対して平置き状態に設置した。すなわち上記した実施形態では、被試験物配置室11の棚板部材10に、二次電池50の平面部分が接するような姿勢で、二次電池50を被試験物配置室11内に載置した。しかしながら本発明はこの設置姿勢に限定されるものではなく、棚板部材10に対して垂直姿勢(縦置き姿勢)となるように二次電池50を設置してもよい。