特許第6124775号(P6124775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6124775ディスクドライブ装置およびディスク回転停止制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6124775
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】ディスクドライブ装置およびディスク回転停止制御方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 19/22 20060101AFI20170424BHJP
   G11B 19/28 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   G11B19/22 B
   G11B19/28 B
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-245557(P2013-245557)
(22)【出願日】2013年11月28日
(65)【公開番号】特開2015-103269(P2015-103269A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】工藤 信範
(72)【発明者】
【氏名】山口 新吾
【審査官】 斎藤 眞
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−069061(JP,A)
【文献】 特開平11−328838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/00−5/024
G11B 5/40−5/465
G11B 19/00−19/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャック機構により保持したディスクをスピンドルモータにより回転させてヘッド部により情報の記録または再生を行うとともに、ディスク交換またはディスク取り出しの際に上記ディスクを上記チャック機構から取り外してトレイに格納するようになされたディスクドライブ装置であって、
上記スピンドルモータの回転動作およびブレーキ動作を制御するスピンドル制御部と、
上記スピンドルモータの回転数であるFG値を検出するFG値検出部と、
上記FG値検出部により検出されたFG値が第1の閾値より小さいか否かを判定するFG値判定部と、
上記スピンドル制御部により上記スピンドルモータのブレーキ動作を開始してから、上記FG値判定部により上記FG値が上記第1の閾値より小さくなったと判定されるまでの経過時間を停止時間として計測する停止時間計測部と、
上記停止時間計測部により計測された停止時間が第2の閾値より短いか否かを判定する停止時間判定部とを備え、
上記FG値判定部は、上記停止時間判定部により上記停止時間が上記第2の閾値より短いと判定された場合に、上記FG値検出部により検出されたFG値が第1の閾値より小さいか否かを再判定し、
上記スピンドル制御部は、上記FG値判定部により上記FG値が上記第1の閾値より小さくなったと判定した時点で上記スピンドルモータのブレーキ動作を停止した後、上記FG値判定部による再判定の結果、上記FG値が上記第1の閾値より大きいと判定された場合に、上記ブレーキ動作を再実行することを特徴とするディスクドライブ装置。
【請求項2】
上記スピンドル制御部により上記スピンドルモータのブレーキ動作を開始した時点で上記FG値検出部により検出されたFG値および上記第1の閾値と、上記停止時間計測部により計測された停止時間とに基づいて、上記FG値の減少直線の傾きを算出する傾き算出部を更に備えるとともに、
上記傾き算出部により算出された傾きが第3の閾値より大きいか否かを判定する傾き判定部を上記停止時間判定部に代えて備え、
上記FG値判定部は、上記傾き判定部により上記傾きが上記第3の閾値より大きいと判定された場合に、上記FG値検出部により検出されたFG値が第1の閾値より小さいか否かを再判定することを特徴とする請求項1に記載のディスクドライブ装置。
【請求項3】
上記FG値判定部は、上記FG値が上記第1の閾値より小さくなったと最初に判定した時点から一定時間後に、上記FG値検出部により検出されたFG値が第1の閾値より小さいか否かを再判定することを特徴とする請求項1または2に記載のディスクドライブ装置。
【請求項4】
上記スピンドル制御部は、上記ブレーキ動作を再実行する際の制動力を、1回目のブレーキ動作を実行したときの制動力よりも小さくすることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のディスクドライブ装置。
【請求項5】
チャック機構により保持したディスクをスピンドルモータにより回転させてヘッド部により情報の記録または再生を行うとともに、ディスク交換またはディスク取り出しの際に上記ディスクを上記チャック機構から取り外してトレイに格納するようになされたディスクドライブ装置におけるディスク回転停止制御方法であって、
上記ディスクドライブ装置のスピンドル制御部が、上記スピンドルモータのブレーキ動作を開始する第1のステップと、
上記ディスクドライブ装置のFG値検出部が、上記スピンドルモータの回転数であるFG値を検出する第2のステップと、
上記ディスクドライブ装置のFG値判定部が、上記FG値検出部により検出されたFG値が第1の閾値より小さいか否かを判定する第3のステップと、
上記スピンドル制御部が、上記FG値判定部により上記FG値が上記第1の閾値より小さくなったと判定された場合に、上記スピンドルモータのブレーキ動作を停止する第4のステップと、
上記ディスクドライブ装置の停止時間計測部が、上記第1のステップで上記スピンドル制御部により上記スピンドルモータのブレーキ動作を開始してから、上記第4のステップで上記スピンドル制御部により上記スピンドルモータのブレーキ動作を停止するまでの経過時間を停止時間として計測する第5のステップと、
上記ディスクドライブ装置の停止時間判定部が、上記停止時間計測部により計測された停止時間が第2の閾値より短いか否かを判定する第6のステップと、
上記FG値判定部が、上記停止時間判定部により上記停止時間が上記第2の閾値より短いと判定された場合に、上記FG値検出部により検出されたFG値が第1の閾値より小さいか否かを再判定する第7のステップと、
上記スピンドル制御部が、上記FG値判定部による再判定の結果、上記FG値が上記第1の閾値より大きいと判定された場合に、上記ブレーキ動作を再実行する第8のステップとを有することを特徴とするディスク回転停止制御方法。
【請求項6】
上記ディスクドライブ装置の傾き算出部が、上記第1のステップで上記スピンドル制御部により上記スピンドルモータのブレーキ動作を開始した時点で上記FG値検出部により検出されたFG値および上記第1の閾値と、上記停止時間計測部により計測された停止時間とに基づいて、上記FG値の減少直線の傾きを算出する第9のステップと、
上記ディスクドライブ装置の傾き判定部が、上記傾き算出部により算出された傾きが第3の閾値より大きいか否かを判定する第10のステップと、を上記第6のステップに代えて有し、
上記第7のステップでは、上記FG値判定部が、上記傾き判定部により上記傾きが上記第3の閾値より大きいと判定された場合に、上記FG値検出部により検出されたFG値が第1の閾値より小さいか否かを再判定することを特徴とする請求項5に記載のディスク回転停止制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクドライブ装置およびディスク回転停止制御方法に関し、特に、チャック機構により保持したディスクをスピンドルモータにより回転させてヘッド部により情報の記録または再生を行うとともに、ディスク交換またはディスク取り出しの際にディスクをチャック機構から取り外してトレイに格納するようになされたディスクドライブ装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数枚のディスクを1つのマガジンに収納し、何れかのディスクを選択して再生する機能を有するチェンジャー装置が提供されている。このチェンジャー装置においてディスクの再生中にディスクチェンジボタンやイジェクトボタンが操作された場合、まずはディスクの回転を停止させる必要がある。そして、ディスクの回転が停止した後に、ディスクチェンジまたはイジェクトの動作に遷移する。
【0003】
図12は、ディスクの回転を停止させる際の従来の動作を示すフローチャートである。図12に示すように、まずスピンドルモータに対して再生時とは逆電圧を印加することにより(ステップS101)、ディスクの回転に対してブレーキをかける。そして、スピンドル回転の指標であるFG値が規定の閾値より小さくなったか否かを判定し(ステップS102)、閾値より小さくなった場合にディスクの回転が停止したと判断する。その後、スピンドルモータを電圧印加のないフリーラン状態として(ステップS103)、次動作(ディスクチェンジまたはイジェクト)に移行する。
【0004】
図13は、ディスクチェンジの動作を示すフローチャートである。図13に示すように、ディスクの回転停止が検出された後、ディスクをチャック機構から取り外してトレイに格納し(ステップS201)、ディスクチェンジの動作を開始する(ステップS202)。また、図14は、イジェクトの動作を示すフローチャートである。図14に示すように、ディスクの回転停止が検出された後、ディスクをチャック機構から取り外してトレイに格納し(ステップS301)、チェンジャー装置のシャッタを開く(ステップS302)。その後、ディスクのイジェクト動作を開始する(ステップS303)。
【0005】
ここで、トレイの構造を図15に示す。図15に示すように、トレイ400は、ディスクDの記録面を保持する樹脂製の保持爪401と、ディスクDのレーベル面を保持する金属製の保持爪402とを備えている。ディスクDがトレイ400に格納された状態で、保持爪401,402がディスクDの表裏面に圧着することにより、ディスクDがトレイ400内で保持されるようになっている。
【0006】
ところで、チェンジャー装置におけるディスクのチャッキングには、セルフチャック機構が用いられている。セルフチャック機構とは、ディスクの中央に開けられた円形の穴にチャック爪を通し、当該チャック爪を円周外側に開くことによってディスクを保持する機構である。このセルフチャック機構は、ディスクの表裏面を保持爪で圧着するタイプのチャック機構と比べて、ディスクの保持力が弱い。これに加えて、スピンドルテーブルの経年劣化や塵埃付着等によって、ディスク保持力が更に弱まってしまう可能性がある。
【0007】
ディスク保持力が弱まると、スピンドルモータの回転停止時にディスクスリップが発生する。すなわち、スピンドルモータは逆電圧印加によって停止しているものの、ディスクは惰性で回転し続けるといった事象となる。このとき監視しているFG値はスピンドル回転の指標であるため、スピンドルモータの回転停止時にFG値は閾値より小さくなり、ソフトウェアとしては回転停止と判断する。そのため、その後にスピンドルモータは電圧が印加されないフリーラン状態とされ、次動作(ディスクチェンジまたはイジェクト)に移行する。
【0008】
しかしながら、ディスク自体は惰性で回転したままの状態であるため、次動作におけるトレイ格納において、ディスクと保持爪401,402との間で擦れが発生してしまう。その結果、ディスクと保持爪401,402との擦れ音が発生したり、ディスクに傷が付いたりしてしまうといった問題があった。特に、数倍速のディスク再生に対応しているチェンジャー装置の場合、スリップ事象がより顕著であり、上記の問題が発生しやすい状況となる。
【0009】
なお、モータ駆動手段によるモータ駆動が停止した際に、少なくとも電源遮断による停止か否かを判定し、電源遮断による停止の場合には、スピンドルモータの回転を速やかに停止させるブレーキ手段を起動するようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
また、スピンドル手段を停止させる際に、スピンドル手段の回転速度が所定の低速回転速度(停止時にディスクのスリップが生じない回転速度)より高速な回転速度で駆動されている場合は、スピンドル手段の回転速度を低速回転速度に制御した後において、ブレーキ動作を実行するようにした技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平3−65085号公報
【特許文献2】特開平11−328838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1に記載の技術では、スピンドルモータのブレーキに関する工夫はされているものの、ディスクのスリップを抑えることはできない。そのため、特許文献1に記載の技術をチェンジャー装置に応用しても、ディスクの擦れ音が発生したり、ディスクに傷が付いたりしてしまうという問題を解消することはできない。
【0013】
一方、特許文献2に記載の技術によれば、一定の場合にはディスクのスリップを抑えることが可能であるため、ディスクの擦れ音や傷の発生を防止することができる。しかしながら、特許文献2では、停止時にディスクのスリップが生じない回転速度を固定の閾値として用いている。そのため、スピンドルテーブルの経年劣化や塵埃付着等によってディスクの保持力が弱まってきた場合などには、ディスクのスリップを抑えることができず、ディスクの擦れ音や傷の発生を防ぐことができないという問題があった。
【0014】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、経年劣化や塵埃付着等によってディスクの保持力に変化が生じても、ディスクとトレイとの間で擦れ音が発生したり、ディスクに傷が付いたりしてしまうことを防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した課題を解決するために、本発明では、スピンドルモータのブレーキ動作を開始した後、スピンドルモータの回転数であるFG値が第1の閾値より小さくなってブレーキ動作を停止するまでの経過時間を停止時間として計測し、計測した停止時間が第2の閾値より短いか否かを判定する。そして、停止時間が第2の閾値より短い場合は、FG値が第1の閾値より小さいか否かを再判定し、FG値が第1の閾値より大きいと判定された場合には、ブレーキ動作を再実行するようにしている。
【発明の効果】
【0016】
ブレーキ動作の実行中にディスクにかかる負荷が小さい場合には、スピンドルモータが短時間で停止し、停止時間が短くなる。この場合、スピンドルモータが停止しても、チャック機構でディスクスリップが発生してディスクが惰性で回転し続けている可能性が高い。ディスクが惰性で回転し続けていると、ディスクの回転に引っ張られてスピンドルモータの回転数が再び上昇する。このような現象に対して、上記のように構成した本発明によれば、停止時間の長さに基づいてディスクスリップが発生している可能性の高い状況であることが検知された場合に、スピンドルモータのFG値が第1の閾値より小さいか否かを再判定することによってスピンドルモータの回転数が上昇しているか否かが確認され、回転数の上昇が確認された場合に、ブレーキ動作が再び実行される。
【0017】
これにより、スピンドルモータの回転停止時にディスクスリップが実際に生じているか否かを確認した上で、ディスクスリップが生じている場合にはブレーキ動作の再実行によってスピンドルモータにブレーキがかけられ、これによってディスクの回転が停止されることとなる。したがって、本発明によれば、経年劣化や塵埃付着等によってディスクの保持力に変化が生じても、スピンドルモータの停止時にディスクスリップが生じた状態のままでディスクがトレイに格納されることをなくし、ディスクとトレイとの間で擦れ音が発生したり、ディスクに傷が付いたりしてしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態によるディスクドライブ装置の内部構造を示す平面図である。
図2】本実施形態によるディスクドライブ装置の内部構造を示す平面図である。
図3】本実施形態によるディスクドライブ装置においてディスクがトレイに保持された状態を示す平面図である。
図4】本実施形態によるディスクドライブ装置においてディスクの再生時または記録時の状態を示す平面図である。
図5】ディスク収納部の全体的な構成例を示す斜視図である。
図6】本実施形態によるディスクドライブ装置の制御系の構成例を示すブロック図である。
図7】本実施形態によるサーボコントローラの機能構成例を示すブロック図である。
図8】本実施形態のサーボコントローラのブレーキ動作によって生じるスピンドルモータの回転数(FG値)の変化の様子を示す図である。
図9図7のように構成したサーボコントローラの動作例を示すフローチャートである。
図10】本実施形態によるサーボコントローラの他の機能構成例を示すブロック図である。
図11図10のように構成したサーボコントローラの動作例を示すフローチャートである。
図12】ディスクの回転を停止させる際の従来の動作を示すフローチャートである。
図13】ディスクチェンジの動作を示すフローチャートである。
図14】イジェクトの動作を示すフローチャートである。
図15】トレイの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1および図2は、本実施形態によるディスクドライブ装置100の内部構造を示す平面図であり、主に筐体1内に構成された駆動ユニット10とディスク収納部30を示している。なお、図の右側にディスク挿入口2を有し、ディスクは、矢印Aの方向にディスクドライブ装置100内に挿入され、矢印Bの方向に排出される。
【0020】
駆動ユニット10は、その一端に設けられた支持軸14を支点にして、図1で示す退避位置と、図2で示す介入位置との間で回動可能であり、他端にターンテーブル11を備えている。駆動ユニット10は、介入位置にあるときディスク収納部30に収納したディスクを選択してターンテーブル11に載置し、ディスクを回転駆動して再生または記録を行う。
【0021】
なお、ディスク収納部30は、図5に示すように、複数のディスクを収納するため積層型のトレイ31を有している。トレイ31は、例えば薄い金属板で形成され、上下方向に重ねて6枚設けており、それぞれ扇状を成している。各トレイ31は、外縁部の3箇所において選択軸32a,32b,32cに支持されている。
【0022】
この選択軸32a,32b,32cが反時計方向へ回転すると、トレイ31は選択軸32a,32b,32cに沿って1枚ずつ下向きに送られる。一方、選択軸32a,32b,32cが時計方向へ回転すると、トレイ31は選択軸32a,32b,32cに沿って1枚ずつ上向きに送られる。このように、各トレイ31は、選択軸32a,32b,32cの回転によってエレベータのように上昇または下降する。選択軸32a,32b,32cの中央部分に位置するトレイ31は、隣接する下方のトレイ31から大きく離れ、そのスペースに駆動ユニット10を進入させることができ、再生や記録が可能となる。
【0023】
駆動ユニット10は、図1に示すように、ユニット支持ベース13に支持されている。また、駆動ユニット10は、細長い駆動ベース12を有している。ユニット支持ベース13の奥側には、支持軸14が上向きに突出しており、駆動ベース12は支持軸14に支持されている。駆動ユニット10は、図2に示すように、支持軸14を支点にして矢印Cの方向に回動する。
【0024】
図2に示すように、駆動ユニット10が介入位置へ回動すると、ターンテーブル11がディスク収納部30へ移行する。この介入位置では、ターンテーブル11の回転中心がトレイ31に支持されたディスクの中心穴の下側に位置する。
【0025】
駆動ベース12の回動端には、スピンドルモータが取り付けられ、このスピンドルモータのモータ軸11aにターンテーブル11が固定されている。ターンテーブル11は、ディスクの中心穴内に入り込む中心凸部11bと、この中心凸部11bから周囲に延びるフランジ部11cを有している。
【0026】
また、ターンテーブル11内にはセルフチャック機構が搭載されている、このチャック機構は、中心凸部11bから放射状に突出するチャック爪(図示せず)を有している。チャック爪が中心凸部11b内に退行しているときは、非チャックモードである。また、チャック爪が突出すると、ディスクの中心穴の周縁部が、チャック爪とフランジ部11cとで挟持され、ディスクがターンテーブル11にチャッキングされ、チャックモードとなる。このように、中心凸部11b、フランジ部11cおよび図示しないチャック爪によりセルフチャック機構が構成されている。
【0027】
図3は、ディスクDがトレイ31に保持された状態を示す平面図である。選択軸32a,32b,32cに挿通された軸受34には、それぞれ保持部材46,47,48が設けられている。トレイ31に供給されたディスクDは、保持部材46,47,48によって保持される。なお、ここでは説明を分かりやすくするため、トレイ31を透視して保持部材46,47,48を図示している。
【0028】
保持部材46は、選択軸32a上の軸受34の外周に回動可能に支持されている。同様に、保持部材47は選択軸32b上の軸受34の外周に、保持部材48は選択軸32c上の軸受34の外周に、それぞれ回動可能に支持されている。保持部材46,47,48は、その先端部に段状の保持爪46b,47b,48bを有している。この保持爪46b,47b,48bがγ2方向に回動することにより、ディスクDの周縁を記録面の側から保持することができる。また、ディスクDのレーベル面側には、ラットルノイズ防止用の保持爪51,52が備えられており、ディスクDをレーベル面の側から保持することができる。
【0029】
図4は、ディスクDの再生時または記録時の状態を示す平面図である。ディスクDは、保持部材46,47,48による保持が解除され、ターンテーブル11に支持される。すなわち、トレイ31に保持されたディスクDを駆動するときには、介入位置にある駆動ユニット10に設けたターンテーブル11の中心凸部11bがディスクDの中心穴に入り込み、ディスクDをチャッキングする。このとき、保持部材46,47,48はγ1方向へ回動し、保持爪46b,47b,48bがディスクDの外周縁よりも外側へ離れる。また、ラットルノイズ防止用の保持爪51,52もディスクDの外周縁よりも外側へ離れる(図示せず)。
【0030】
このあと駆動ユニット10は、非チャックモード時よりも底面側へ移動し、ディスクDはトレイ31の下面から離れる。こうしてターンテーブル11にチャッキングされたディスクDは、ターンテーブル11によって回転駆動され、ディスクDに記録された信号が読み取られ、あるいはディスクDに信号が記録される。
【0031】
なお、再生または記録が完了したディスクDをイジェクトするとき、あるいは他のディスクに交換するときには、スピンドルモータが停止し、ターンテーブル11の回転が停止する。また、支持ベース13が持ち上げられて、ディスクDは選択位置にあるトレイ31の下面に押し付けられる。このとき、図3に示すように、保持部材46,47,48がγ2方向へ回動して、ディスクDの記録面を各保持爪46b,47b,48bで保持する。また、ディスクDのレーベル面を保持爪51,52で保持する。
【0032】
そして、ターンテーブル11によるディスクDのチャッキングが解除され、ユニット支持ベース13と駆動ユニット10が底面に向けて下降し、ディスクDは、ターンテーブル11から抜ける。その後、移送ユニット20によって、ディスクDのイジェクトまたは交換が行われる。
【0033】
図6は、本実施形態によるディスクドライブ装置100の制御系の構成例を示すブロック図である。図6において、マイクロコンピュータで構成された制御部60が、ディスクドライブ装置100の全体の動作を制御する。
【0034】
ディスクDは、スピンドルモータ61によって一定の線速度で回転され、ディスクDからの情報の読み取りあるいはディスクDへの情報の記録が、光ヘッド64によって行われる。光ヘッド64は、スレッドモータ65によってディスクDの半径方向に移動する。
【0035】
サーボコントローラ66は、制御部60の制御のもとに、スピンドルモータ61の回転を制御するとともに、光ヘッド64のトラッキング制御やフォーカス制御、およびスレッドモータ65の駆動を制御する。スピンドルモータ61は、スピンドルドライバ62によって駆動される。サーボコントローラ66は、制御部60からのスピンドル起動指令に応じて、スピンドルドライバ62に対して回転スタート信号を出力する。スピンドルドライバ62は、回転スタート信号に応じてスピンドルモータ61の回転駆動を開始させる。
【0036】
一方、サーボコントローラ66は、制御部60からのスピンドル停止指令に応じて、スピンドルドライバ62に対して回転ストップ信号を出力する。この回転ストップ信号は、回転スタート信号に対して極性を反転させた信号である。スピンドルドライバ62は、極性の異なる回転ストップ信号に応じてスピンドルモータ61のブレーキ電力(逆起電力)を発生させ、スピンドルモータ61を停止させる。
【0037】
スピンドルドライバ62にはFG信号発生器(周波数発生器)63が設けられている。FG信号発生器63は、スピンドルモータ61の回転数であるFG値を発生する。このFG値はサーボコントローラ66に供給される。サーボコントローラ66は、FG信号発生器63より供給されるFG値を用いて、スピンドルモータ61の回転制御を行う。この回転制御の詳細については、図7を用いて後述する。
【0038】
RFアンプ67は、光ヘッド64によって読み出した情報に対応するRF信号を増幅して次段に伝達する。また、RFアンプ64は、RF信号からフォーカス制御用の信号およびトラッキング制御用の信号を分離して、これらの制御信号をサーボコントローラ66に送る。デジタル信号処理部68は、RFアンプ64から出力されたRF信号をデジタル化し、デジタル化された信号の復調処理と誤り訂正処理等を行う。
【0039】
図7は、サーボコントローラ66の主要な機能構成例を示すブロック図である。図7に示すように、サーボコントローラ66は、その機能構成として、スピンドル制御部71、FG値検出部72、FG値判定部73、停止時間計測部74および停止時間判定部75を備えている。
【0040】
スピンドル制御部71は、スピンドルドライバ62に対する回転スタート信号および回転ストップ信号の出力を通じて、スピンドルモータ61の回転動作およびブレーキ動作を制御する。
【0041】
FG値検出部72は、FG信号発生器63より供給されるFG値に基づいて、スピンドルモータ61の回転数であるFG値を検出する。FG値判定部73は、FG値検出部72により検出されたFG値が第1の閾値より小さいか否かを判定する。第1の閾値は、ディスクの回転が停止したと判断するための規定の閾値である。
【0042】
スピンドル制御部71は、回転ストップ信号をスピンドルドライバ62に出力してスピンドルモータ61のブレーキ動作を開始した後、FG値判定部73によりFG値が第1の閾値より小さくなったと判定した時点で、スピンドルモータ61のブレーキ動作を停止する。これにより、スピンドルモータ61を電圧印加のないフリーラン状態とする。
【0043】
停止時間計測部74は、スピンドル制御部71によりスピンドルモータ61のブレーキ動作を開始してから、FG値判定部72によりFG値が第1の閾値より小さくなったとFG値判定部73により判定されるまでの経過時間を停止時間として計測する。
【0044】
停止時間判定部75は、停止時間計測部74により計測された停止時間が第2の閾値より短いか否かを判定する。スピンドル制御部71によるブレーキ動作の実行中にディスクにかかる負荷が小さい場合には、スピンドルモータ61が短時間で停止し、停止時間が短くなる。この場合、スピンドルモータ61が停止しても、チャック機構でディスクスリップが発生してディスクが惰性で回転し続けている可能性が高い。第2の閾値は、ディスクスリップが発生しているか否かを判断するために設定された閾値である。
【0045】
上述のFG値判定部73は、停止時間判定部75により停止時間が第2の閾値より短いと判定された場合に、FG値検出部72により検出されたFG値が第1の閾値より小さいか否かを再判定する。なお、FG値判定部73は、FG値が第1の閾値より小さくなったと最初に判定した時点から一定時間後に再判定をするのが好ましい。
【0046】
すなわち、スピンドルモータ61がいったん停止してFG値が第1の閾値を下回ったとしても、ディスクスリップが発生してディスクが惰性で回転し続けていると、スピンドルモータ61がフリーラン状態となっているために、ディスクの回転に引っ張られてスピンドルモータ61の回転数が再び上昇し、FG値が第1の閾値を上回る。FG値判定部73によってFG値が第1の閾値より小さいか否かを再判定するのは、このような現象が実際に生じているか否かを確認するためである。
【0047】
スピンドル制御部71は、FG値判定部73による再判定の結果、FG値が第1の閾値より大きいと判定された場合に、スピンドルモータ61のブレーキ動作を再実行する。このときスピンドル制御部71は、ブレーキ動作を再実行する際の制動力(逆電圧の大きさ)を、1回目のブレーキ動作を実行したときの制動力と同じとしてもよいが、1回目の制動力よりも小さくするのが好ましい。
【0048】
1回目のブレーキ動作を開始する時点と2回目のブレーキ動作を開始する時点とでスピンドルモータ61のFG値を比較した場合、2回目の方がFG値は小さくなっているため、1回目より小さな制動力でも十分にブレーキをかけることが可能である。また、2回目のブレーキ動作時に1回目よりも小さな制動力をかけることにより、再びディスクスリップが生じてしまうことを抑制することが可能となる。
【0049】
図8は、サーボコントローラ66のブレーキ動作によって生じるスピンドルモータ61の回転数(FG値)の変化の様子を示す図である。図8(a)は、スピンドルモータ61の停止時間が第2の閾値より長くディスクスリップが生じていない場合の動作例を示している。一方、図8(b)は、スピンドルモータ61の停止時間が第2の閾値より短くディスクスリップが生じている場合の動作例を示している。
【0050】
図8(a)に示すように、スピンドルモータ61の停止時間が第2の閾値より長い場合、スピンドル制御部71は、FG値判定部73によりFG値が第1の閾値より小さくなったと判定した時点で、スピンドルモータ61のブレーキ動作を停止し、スピンドルモータ61を電圧印加のないフリーラン状態とする。この場合、スピンドルモータ61の回転はやがて止まり、ディスクもスリップすることなく回転が停止する。
【0051】
一方、図8(b)に示すように、スピンドルモータ61の停止時間が第2の閾値より短い場合、FG値判定部73は、FG値が第1の閾値より小さくなったと最初に判定した時点から一定時間後に、FG値検出部72により検出されたFG値が第1の閾値より小さいか否かを再判定する。この場合、ディスクスリップが発生してディスクが惰性で回転し続けているため、ディスクの回転に引っ張られてスピンドルモータ61の回転数が上昇し、再判定を行った時点でFG値は第1の閾値より大きくなっている。
【0052】
したがって、スピンドル制御部71は、スピンドルモータ61のブレーキ動作を再実行する。これにより、スピンドルモータ61の回転数は再び下降し始める。その後、スピンドル制御部71は、FG値判定部73によりFG値が第1の閾値より再び小さくなったと判定した時点で、スピンドルモータ61のブレーキ動作を停止し、スピンドルモータ61を電圧印加のないフリーラン状態とする。これにより、スピンドルモータ61の回転はやがて止まり、ディスクもスリップすることなく回転が停止する。
【0053】
なお、ブレーキ動作を再実行する際の制動力を1回目のブレーキ動作を実行したときの制動力よりも小さくする場合、ディスクスリップが再び発生する可能性は低い。よって、2回目のブレーキ動作に関しては、停止時間の判定は省略してもよい。もちろん、万全を期するために、2回目以降のブレーキ動作に関しても停止時間の判定を行うようにしてもよい。
【0054】
図9は、図7のように構成したサーボコントローラ66の動作例を示すフローチャートである。図7に示すフローチャートは、制御部60からサーボコントローラ66に対してスピンドル停止指令が出力されたときに開始する。
【0055】
まず、FG値検出部72は、スピンドルモータ61の回転数であるFG値を検出する(ステップS1)。また、停止時間計測部74は、停止時間の計測を開始する(ステップS2)。そして、スピンドル制御部71は、スピンドルドライバ62に対する回転ストップ信号の出力を通じて、スピンドルモータ61に対して逆電圧を印加することによってブレーキ動作を行う(ステップS3)。
【0056】
その後、FG値判定部73は、FG値検出部72により検出されたFG値が第1の閾値より小さくなったか否かを判定する(ステップS4)。ここで、FG値が第1の閾値より小さくなっていない場合、ステップS4の判定を繰り返す。一方、FG値が第1の閾値より小さくなった場合、スピンドル制御部71は、スピンドルモータ61に対する逆電圧の印加を停止することによってブレーキ動作を停止し、スピンドルモータ61を電圧印加のないフリーラン状態とする(ステップS5)。
【0057】
そして、停止時間計測部74は、停止時間の計測を終了する(ステップS6)。停止時間判定部75は、ステップS2からステップS6までの間に停止時間計測部74により計測された停止時間が第2の閾値より短いか否かを判定する(ステップS7)。ここで、停止時間が第2の閾値より短くない場合は、ディスクスリップが発生している可能性はないとして、図9に示すフローチャートの処理を終了する。
【0058】
一方、停止時間が第2の閾値より短い場合、FG値検出部72は、ステップS4でFG値が第1の閾値より小さくなったと判定した時点から一定時間が経過したか否かを判定し(ステップS8)、一定時間が経過した時点で、スピンドルモータ61のFG値を検出する(ステップS9)。そして、FG値判定部73は、FG値検出部72により検出されたFG値が第1の閾値より小さいか否かを再判定する(ステップS10)。
【0059】
ここで、FG値が第1の閾値より小さい場合は、ディスクスリップが実際には発生していないので、図9に示すフローチャートの処理を終了する。一方、FG値が第1の閾値より大きいと判定された場合、スピンドル制御部71は、スピンドルモータ61に対し、ステップS3で印加した逆電圧よりも弱い逆電圧を印加することによってブレーキ動作を再び行う(ステップS11)。その後、FG値検出部72は、スピンドルモータ61のFG値を検出する(ステップS12)。
【0060】
そして、FG値判定部73は、FG値検出部72により検出されたFG値が第1の閾値より小さくなったか否かを判定する(ステップS13)。ここで、FG値が第1の閾値より小さくなっていない場合、ステップS13の判定を繰り返す。一方、FG値が第1の閾値より小さくなった場合、スピンドル制御部71は、スピンドルモータ61に対する逆電圧の印加を停止することによってブレーキ動作を停止し、スピンドルモータ61を電圧印加のないフリーラン状態とする(ステップS14)。これにより、図9に示すフローチャートの処理を終了する。
【0061】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、スピンドルモータ61のブレーキ動作を開始した後、スピンドルモータ61の回転数であるFG値が第1の閾値より小さくなってブレーキ動作を停止するまでの経過時間を停止時間として計測し、計測した停止時間が第2の閾値より短いか否かを判定する。そして、停止時間が第2の閾値より短い場合は、FG値が第1の閾値より小さいか否かを再判定し、FG値が第1の閾値より大きいと判定された場合には、ブレーキ動作を再実行するようにしている。
【0062】
このように構成した本実施形態によれば、停止時間の長さに基づいてディスクスリップが発生している可能性の高い状況であることが検知された場合に、スピンドルモータ61のFG値が第1の閾値より小さいか否かを再判定することによってスピンドルモータ61のFG値が上昇しているか否かが確認され、FG値が第1の閾値を上回っていることが確認された場合に、ブレーキ動作が再び実行される。
【0063】
これにより、経年劣化や塵埃付着等によってチャック機構でのディスクの保持力に変化が生じても、スピンドルモータ61の停止時にディスクスリップが生じた状態のままでディスクがトレイ31に格納されることをなくし、ディスクとトレイ31との間で擦れ音が発生したり、ディスクに傷が付いたりしてしまうことを防止することができる。
【0064】
なお、上記実施形態では、スピンドルモータ61のブレーキ動作を開始してから停止するまでの経過時間を停止時間として計測し、計測した停止時間が第2の閾値より短いか否かを判定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、スピンドルモータ61のブレーキ動作を開始してから停止するまでのFG値の減少直線の傾きを求め、この傾きが所定の閾値より大きいか否かを判定するようにしてもよい。
【0065】
図10は、傾きを判定する場合におけるサーボコントローラ66の機能構成例を示すブロック図である。なお、この図10において、図7に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。図10に示す構成例では、図7に示した停止時間判定部75に代えて、傾き算出部76および傾き判定部77を備えている。また、FG値判定部73に代えてFG値判定部73’を備えている。
【0066】
傾き算出部76は、スピンドル制御部71によりスピンドルモータ61のブレーキ動作を開始した時点でFG値検出部72により検出されたFG値と、第1の閾値と、停止時間計測部74により計測された停止時間とに基づいて、FG値の減少直線の傾きを算出する。具体的には、以下の式によってFG値の減少直線の傾きを算出する。
減少直線の傾き=(ブレーキ動作開始時のFG値−第1の閾値)/停止時間
【0067】
傾き判定部77は、傾き算出部76により算出された傾きが第3の閾値より大きいか否かを判定する。FG値判定部73’は、傾き判定部77により傾きが第3の閾値より大きいと判定された場合に、FG値検出部72により検出されたFG値が第1の閾値より小さいか否かを再判定する。
【0068】
図11は、図10のように構成したサーボコントローラ66の動作例を示すフローチャートである。図11に示すフローチャートは、制御部60からサーボコントローラ66に対してスピンドル停止指令が出力されたときに開始する。
【0069】
まず、FG値検出部72は、スピンドルモータ61の回転数であるFG値を検出する(ステップS21)。また、停止時間計測部74は、停止時間の計測を開始する(ステップS22)。そして、スピンドル制御部71は、スピンドルドライバ62に対する回転ストップ信号の出力を通じて、スピンドルモータ61に対して逆電圧を印加することによってブレーキ動作を行う(ステップS23)。
【0070】
その後、FG値判定部73は、FG値検出部72により検出されたFG値が第1の閾値より小さくなったか否かを判定する(ステップS24)。ここで、FG値が第1の閾値より小さくなっていない場合、ステップS24の判定を繰り返す。一方、FG値が第1の閾値より小さくなった場合、スピンドル制御部71は、スピンドルモータ61に対する逆電圧の印加を停止することによってブレーキ動作を停止し、スピンドルモータ61を電圧印加のないフリーラン状態とする(ステップS25)。
【0071】
そして、停止時間計測部74は、停止時間の計測を終了する(ステップS26)。傾き算出部76は、ステップS21でFG値検出部72により検出されたFG値と、第1の閾値と、ステップS26において停止時間の計測を終了した時点でカウントされた停止時間とに基づいて、FG値の減少直線の傾きを算出する(ステップS27)。
【0072】
傾き判定部77は、傾き算出部76により算出された傾きが第3の閾値より大きい否かを判定する(ステップS28)。ここで、傾きが第3の閾値より大きくない場合は、ディスクスリップが発生している可能性はないとして、図11に示すフローチャートの処理を終了する。
【0073】
一方、傾きが第3の閾値より大きい場合、FG値検出部72は、ステップS24でFG値が第1の閾値より小さくなったと判定した時点から一定時間が経過したか否かを判定し(ステップS29)、一定時間が経過した時点で、スピンドルモータ61のFG値を検出する(ステップS30)。そして、FG値判定部73は、FG値検出部72により検出されたFG値が第1の閾値より小さいか否かを再判定する(ステップS31)。
【0074】
ここで、FG値が第1の閾値より小さい場合は、ディスクスリップが実際には発生していないので、図11に示すフローチャートの処理を終了する。一方、FG値が第1の閾値より大きいと判定された場合、処理はステップS22に戻り、ステップS22以降の処理を再び実行する。この場合、ステップS23における再度のブレーキ動作によってFG値が第1の閾値より再び小さくなったとき、ステップS27では、ステップS30でFG値検出部72により検出されたFG値と、第1の閾値と、ステップS26において停止時間の計測を終了した時点でカウントされた停止時間とに基づいて、FG値の減少直線の傾きが算出される。そして、ステップS28において、2回目のブレーキ動作時におけるFG値の減少直線の傾きが第3の閾値より大きいか否かが再び判定される。
【0075】
図8(b)に示したように、1回目のブレーキ動作を開始する時点でFG値検出部72により検出されるFG値よりも、2回目のブレーキ動作を開始する時点でFG値検出部72により検出されるFG値は小さくなっている。そのため、2回目のブレーキ動作時に傾き算出部76により算出される減少直線の傾きは、1回目のブレーキ動作時に傾き算出部76により算出された傾きより小さくなっており、第3の閾値より小さくなっている可能性が高い。よって、これによって図11に示すフローチャートの処理は終了する。
【0076】
図10のようにサーボコントローラ66を構成した場合、FG値の減少直線の傾きによってディスクスリップが発生している可能性を判定しているので、停止時間が第2の閾値より短くても、傾きが第3の閾値より大きくない場合には、FG値が第1の閾値より小さいか否かの再判定は行われない。つまり、1回目のブレーキ動作を開始した時点でのFG値が大きくなければ、停止時間が第2の閾値より短くても急ブレーキとなっているわけではなく、ディスクスリップが発生する可能性は低い。このような場合には、FG値が第1の閾値より小さいか否かの再判定を省略し、処理時間が長くなることを防止することができる。
【0077】
逆に、停止時間が第2の閾値より長くても、傾きが第3の閾値より大きい場合には、FG値が第1の閾値より小さいか否かの再判定が行われる。つまり、ブレーキ動作を開始した時点でのFG値が大きければ、停止時間が第2の閾値より長くても急ブレーキに近い状態となり、ディスクスリップが発生する可能性がある。このような場合には、FG値が第1の閾値より小さいか否かの再判定を行い、必要に応じてブレーキ動作を再実施することができる。
【0078】
これにより、スピンドルモータ61の停止時にディスクスリップが生じている可能性をより高い確度で判定することができる。したがって、ディスクスリップが生じた状態のままでディスクがトレイ31に格納されることをより確実に防止し、ディスクとトレイ31との間で擦れ音が発生したり、ディスクに傷が付いたりしてしまうことを防止することができる。
【0079】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0080】
71 スピンドル制御部
72 FG値検出部
77,73’ FG値判定部
74 停止時間計測部
75 停止時間判定部
76 傾き算出部
77 傾き判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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