(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記連結ロッドの車幅方向の内側面は、クランク軸及び変速出力軸の少なくとも一方の一端部を車幅方向外側から覆う外側カバーの、車幅方向の外側面よりも車幅方向の内側に、配置されている、
請求項1記載の車両。
前記連結ロッドの車幅方向の外側面は、クランク軸及び変速出力軸の少なくとも一方の一端部を車幅方向外側から覆う外側カバーの、車幅方向の外側面よりも車幅方向の内側に、配置されている、
請求項1記載の車両。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の自動二輪車では、連結ロッドは、変速出力軸に取り付けられた駆動スプロケットと後輪に取り付けられた後輪駆動用スプロケットとの間に巻き掛けられた、駆動チェーンの、車幅方向の外方側に配置されている。すなわち、側面視において、連結ロッドは駆動チェーンと重複した位置関係にある。この結果、連結ロッドに連結されたチェンジペダルは、駆動チェーンのさらに車幅方向の外方側へ位置することになり、自動二輪車の車幅方向の寸法が増大すると共に、ライダーの足下空間が制限される。すなわち、これらの操作力伝達機構の合理的な配置が要望されている。
【0007】
本発明の目的は、クランク軸の軸芯と変速出力軸の軸芯とを結ぶ基準線に対する、上方の区画にチェンジドラムが配置され、且つ、下方の区画にチェンジペダルが配置された車両において、車幅方向のコンパクト化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本願の第1の発明に係る車両は、クランク軸を収容するクランク室と、変速入力軸及び変速出力軸を収容する変速機室と、を有するクランクケースを含んだ、エンジンを備えた、車両であって、チェンジペダルの操作によってチェンジレバーを回動させて、これによりチェンジドラムを回動させて、変速を行う、変速装置を備え、前記クランク軸の軸芯と前記変速出力軸の軸芯とを結ぶ基準線で仕切られる上方の区画には、前記チェンジドラムが配置され、下方の区画には、前記チェンジペダルが配置され、前記チェンジペダルの回動を前記チェンジレバーに連動させる連結ロッドが、車両の側面視における、前記クランク軸と前記変速出力軸との前後方向間に配置されている、ことを特徴とする。
【0009】
上記第1の発明によると、(1)クランク軸と変速出力軸との間に連結ロッドを配置することにより、連結ロッドとクランク軸及び変速出力軸との干渉を防止して、連結ロッドを車幅方向内側に寄せて配置できる。これにより、車幅方向のコンパクト化を図ることができる。
【0010】
(2)チェンジドラムが前記基準線により仕切られた上方の区画に配置されているので、クランクケースの下部をコンパクトにできる。
【0011】
本願の第1の発明に係る車両は、前記車両に加えて、次の構成を備えることができる。
【0012】
(a)前記連結ロッドの車幅方向の内側面は、クランク軸及び変速出力軸の少なくとも一方の一端部を車幅方向外側から覆う外側カバーの、車幅方向の外側面よりも車幅方向の内側に、配置されている。
【0013】
上記構成(a)によると、連結ロッドが、外側カバーに近接して、配置されることになるので、連結ロッド及び連結ロッドに連結されたチェンジペダルを車幅方向にコンパクトに配設できる。これにより、さらに車幅方向のコンパクト化を図ることができる。
【0014】
(b)前記連結ロッドの車幅方向の外側面は、クランク軸及び変速出力軸の少なくとも一方の一端部を車幅方向外側から覆う外側カバーの、車幅方向の外側面よりも車幅方向の内側に、配置されている。
【0015】
上記構成(b)によると、連結ロッドの車幅方向の外側面が、少なくとも1つの外側カバーの外側面の外側面よりも車幅方向の内側に位置することになる。これにより、車幅方向の外方からの連結ロッドへの異物の衝突を、外側カバーにより阻止して、連結ロッドを保護できる。また、例えば、車両転倒時においては、外側カバーを路面に接触させて、連結ロッドの路面への接触を防止することにより、連結ロッドを保護できる。
【0016】
(c)前記連結ロッドは、前記クランク軸及び変速出力軸の少なくとも一方の一端部を車幅方向外側から覆う外側カバーの、車幅方向内側に、挿通されている。
【0017】
上記構成(c)によると、連結ロッドの車幅方向の外方側を外側カバーにより覆うことにより、車幅方向の外方から連結ロッドへの異物の衝突を、外側カバーにより確実に防止できる。すなわち、連結ロッドの保護効果をより一層高めることができる。
【0018】
(d)前記エンジンの下方に、略車両前後方向に沿うように、後輪用のリアショックアブソーバーが配置されている。
【0019】
上記構成(d)によると、下部がコンパクトに構成されたエンジンの下方に、後輪用のリアショックアブソーバーをコンパクトに配置できる。
【0020】
(e)上記構成(d)を有し、且つ、前記チェンジペダルを回動可能に支持するペダル支持部が、車体フレームに形成されている。
【0021】
上記構成(e)によると、ペダル支持部が車体フレームに形成されているので、ペダル支持部をエンジンに形成する場合に比して、エンジンの下部をよりコンパクトに形成できる。これにより、リアショックアブソーバーの配置の自由度を向上できる。
【0022】
(f)前記クランク軸から前記変速入力軸への動力伝達を操作するクラッチを、さらに備え、前記クラッチは、レリーズ操作するレリーズレバーを前記クランクケースの前記連結ロッドの配置側に備え、前記レリーズレバーの車幅方向外方の端部が、前記クランク軸及び変速出力軸の少なくとも一方の一端部を車幅方向外側から覆う外側カバーの、車幅方向内側に、配置されている。
【0023】
上記構成(f)によると、レリーズレバーの車幅方向の端部が、外側カバーの車幅方向の外側面より、車幅方向の内側に位置することになる。これにより、車幅方向の外方側からのレリーズレバーへの異物の衝突を、外側カバーにより阻止して、レリーズレバーを保護できる。また、例えば、車両転倒時においては、外側カバーを路面に接触させて、レリーズレバーの路面への接触を防止することにより、レリーズレバーを保護できる。
【0024】
(g)上記構成(f)を有し、且つ、前記レリーズレバーとハンドルバーに備えられたクラッチレバーとを連結するプッシュプルケーブルを、備え、前記プッシュプルケーブルのアウターケーブルを保持するケーブル保持部が、前記クランク軸及び変速出力軸の少なくとも一方の一端部を車幅方向外側から覆う外側カバーに、一体に形成されている。
【0025】
上記構成(g)によると、外側カバーにケーブル保持部を一体に形成することにより、別途新たな部材を追加することなく、プッシュプルケーブルを支持できる。これにより、プッシュプルケーブルを適切に配策しながら、部品点数を削減できる。
【0026】
また、本願の第2の発明に係る車両は、クランク軸を収容するクランク室と、変速入力軸及び変速出力軸を収容する変速機室と、を有するクランクケースを含んだ、エンジンを備えた、車両であって、チェンジペダルの操作によってチェンジレバーを回動させて、これにより、チェンジドラムを回動させて、変速を行う、変速機構を備え、前記クランク軸の軸芯と前記変速出力軸の軸芯とを結ぶ基準線で仕切られる上方の区画には、前記チェンジドラムが配置され、下方の区画には、前記チェンジペダルが配置され、前記エンジンの下方に、略車両前後方向に沿うように、後輪用のリアショックアブソーバーが配置されている。
【0027】
上記第2の発明によると、チェンジドラムが前記基準線により仕切られた上方の区画に配置されているので、クランクケースの下部をコンパクトにできる。しかも、下部がコンパクトに構成されたエンジンの下方に形成された空間内に、後輪用のリアショックアブソーバーをコンパクトに配置できる。
【発明の効果】
【0028】
要するに、本願の第1及び第2の発明によると、クランク軸の軸芯と変速出力軸の軸芯とを結ぶ基準線に対する、上方の区画にチェンジドラムが配置され、且つ、下方の区画にチェンジペダルが配置された車両において、車幅方向のコンパクト化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1〜
図5に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。なお、説明の都合上、車両の進行方向を車両及び各部品の「前方」とし、乗車したライダーから見た左右方向を、車両及び各部品の「左右方向」として、説明する。
【0031】
[車両全体構成]
図1はモトクロッサータイプの自動二輪車の左側面図である。
図1に示すように、自動二輪車は、車体フレーム1を備えている。車体フレーム1は、ヘッドパイプ2と、該ヘッドパイプ2から略後下方に延びる左右一対のメインフレーム3と、ベッドパイプ2から略下方へ延びる一本のダウンフレーム5と、該ダウンフレーム5の下端二股部に接続された左右一対のロワーフレーム6と、を有している。メインフレーム3の後端部は、スイングアームブラケット部3aとして、下方へ延びている。ロワーフレーム6は、ダウンフレーム5の下端部から下向きに延びると共に後向きに湾曲し、略水平状態で後方へ延びており、ロワーフレーム6の後端部が、スイングアームブラケット部3aの下端部に結合されている。
【0032】
メインフレーム3の前後方向の略中間部には、略後方へ延びるシートレール10が接続され、スイングアームブラケット部3aの上端部には、後上方に延びるリヤフレーム11が接続され、該リヤフレーム11の後端部はシートレール10の後端部に結合されている。
【0033】
ヘッドパイプ2には、操舵軸(図示せず)及び上下のブラケット13を介して左右一対のフロントフォーク15が支持されており、フロントフォーク15の下端部に、前車軸16を介して前車輪17が回転自在に支持されている。上側のブラケット13の上面には、ハンドルバー8が固着されており、該ハンドルバー8の左端部にはクラッチレバー9が設けられている。
【0034】
メインフレーム3及びシートレール10の上には、燃料タンク18及びシート19が設けられ、リヤフレーム11の下側には排気マフラー20が設けられ、フロントフォーク15には前フェンダー21が設けられている。
【0035】
エンジン30は車体フレーム1内に搭載されており、ロワーフレーム6に形成された左右一対の下側取付部22と、メインフレーム3に設けられた左右一対の上側取付部23と、スイングアームブラケット部3aのピボット軸部24と、ダウンフレーム5の下端部に設けられた左右一対の前側取付部25と、により、車体フレーム1に支持されている。ダウンフレーム5にはラジエータ26が取り付けられ、メインフレーム3の後部内には、吸気用エアクリーナボックス27が配置されている。
【0036】
後車輪支持用のスイングアーム40は、スイングアームブラケット部3aのピボット軸部24に回動自在に支持され、後方に延びており、スイングアーム40の後端部に、後車軸41を介して後車輪42が回転自在に支持されている。後車軸41に設けられた被駆動スプロケット43と、エンジン30のクランクケース31の左側面に設けられた出力スプロケット44との間に、駆動チェーン45が巻き掛けられており、この駆動チェーン45を介して後車輪42を駆動する。クランクケース31には、出力スプロケット44を車体左側から覆う、スプロケットカバー46が取り付けられている。
【0037】
スイングアーム40はリヤサスペンション装置50により車体フレーム1に弾性的に支持されている。リヤサスペンション装置50は、エンジン30のクランクケース31の下側に配置されたショックアブソーバ51と、メインフレーム3のスイングアームブラケット部3aの後側に配置されたリンク機構52と、クランクケース31の前側に配置されたリザーブタンク53と、を備えている。
【0038】
[エンジン30]
エンジン30は、変速装置を一体に備えた4サイクルエンジンであり、
図1に示すように、クランクケース31の上側に、シリンダ32及びシリンダヘッド33が順次結合されて構成されている。以下、
図2、
図3を参照しながら、エンジン30に備えられた変速装置について説明する。
図2はクランクケース31の内部を示す左側面図であり、
図3は変速装置の各軸を通る断面で切断した簡略断面図である。
【0039】
図2に示すように、クランクケース31内には、クランク軸34が収容されたクランク室35と、該クランク室35の後部に一体に形成された変速機室36と、が形成されている。変速機室36内には、ギヤ式変速機構60と、ギヤ式変速機構60の変速操作を行う変速操作機構70と、が収容されている。
【0040】
図3に示すように、ギヤ式変速機構60の変速入力軸61の右端部には、クラッチ90が装着されている。クラッチ90は、クランク軸34(
図2参照)と変速入力軸61との間の動力伝達を断続する多板式摩擦クラッチであり、レリーズ機構100によって動力伝達が断続されるようになっている。
【0041】
(変速機構60)
図2に示すように、変速機構60は、クランク軸34と平行且つ略同じ高さ位置に配置された、変速入力軸61及び変速出力軸62を、備えている。
図3に示すように、変速入力軸61は、変速段数分の複数の入力ギヤからなる入力側変速ギヤ列610を備えると共に、クラッチ90を介してクランク軸34(
図2参照)に動力伝達可能に連結している。変速出力軸62は、上記入力側変速ギヤ列610の各ギヤに常時噛み合う変速段数分の出力ギヤからなる、出力側変速ギヤ列620を備えている。つまり、変速機構60は、変速段毎に常時噛み合うギヤ対を有する、所謂常時噛み合い式とされる。
【0042】
ニュートラル状態においては、変速段毎に噛み合うギヤ対の、一方のギヤは軸に空転自在に嵌合され、他方のギヤは軸に一体に回転するように固定されており、具体的には、入力側の3速、4速ギヤ613、614が軸方向移動可能に変速入力軸61にスプライン嵌合し、出力側の5速、6速ギヤ625、626が軸方向移動可能に変速出力軸62にスプライン嵌合している。上記各移動可能なギヤを、シフトフォークで軸方向に移動することにより、ドグクラッチの噛み合わせを変更し、変速する。これにより、空転自在に嵌合されたギヤが、スプライン嵌合されたギヤを介して、軸と一体に回転するようになり、各変速段に対応する所定の減速比で、変速入力軸61から変速出力軸62への動力伝達が行われる。
【0043】
(変速操作機構70)
スプライン嵌合されたギヤの軸方向への移動は、変速操作機構70により、行われる。
図2に示すように、変速操作機構70は、クランク軸34の軸芯と変速出力軸62の軸芯とを結ぶ基準線Mよりも上方に配置されており、チェンジドラム71と、チェンジ軸72と、第1、第2支持軸73、74と、をクランク軸34と平行に備えると共に、第1、第2シフトフォーク75、76(第2シフトフォークは2本)と、チェンジ軸72に固着されてチェンジドラム71を回動させるチェンジレバー77とを、備えている。第1支持軸73には1本の第1シフトフォーク75が軸方向移動可能に支持され、第2支持軸74には2本の第2シフトフォーク76が軸方向移動可能に支持されている。
【0044】
チェンジドラム71は、略円筒状の形態を有しており、周部に周方向に形成された複数のカム溝(図示しない)を備えている。第1、第2シフトフォーク75、76は、上部に駆動ピン751、761を備えていると共に、下部に爪部752、762(
図3参照)を備えている。
【0045】
駆動ピン751、761は、前記カム溝にそれぞれ係合しており、爪部752、762は、
図3に示すように、変速入力軸61及び変速出力軸62上にスプライン嵌合されたギヤに設けられた係合溝611、621にそれぞれ係合している。つまり、第1シフトフォーク75は、チェンジドラム71と変速入力軸61との間にそれぞれに係合して配置され、第2シフトフォーク76は、チェンジドラム71と変速出力軸62との間にそれぞれに係合して配置されている。
【0046】
図2を参照して、後述する操作力伝達機構80(
図4参照)により、チェンジドラム71が所定回転量だけ回動すると、各カム溝により駆動ピン751、761が案内されて、第1及び/又は第2シフトフォーク75、76が軸方向へ移動する。これにより、
図3に示すように、第1、第2シフトフォーク75、76の爪部752、762に係合する、各軸上にスプライン嵌合されたギヤの軸方向への移動が、前記カム溝の形状に対応して選択的に行われる。
【0047】
(クラッチ90)
図3に示すように、クラッチ90は、変速入力軸61に軸方向及び回転方向に固定されたインナーハブ91と、インナーハブ91に摩擦プレート93及びクラッチプレート94を介して連結可能に構成されたアウターケース92と、インナーハブ91の外周つば部91aに軸方向に間隔を置いて対向する押圧部材99と、該押圧部材99とインナーハブ91のつば部91aとの間に交互に配置された多数の摩擦プレート93及びクラッチプレート94と、押圧部材99を軸方向のクラッチ接続側(矢印R2側)に付勢するクラッチばね96等から構成されている。
【0048】
クラッチプレート94はアウターケース92の外周部に形成された溝92aに係合し、アウターケース92と一体回転するようになっており、摩擦プレート93はインナーハブ91の外周部の外周面に、インナーハブ91と一体回転するようにスプライン嵌合している。アウターケース92はクラッチ入力ギヤ97に結合され、該クラッチ入力ギヤ97はクランクギヤ34aに噛み合っている。
【0049】
上記クラッチ90は、通常は、押圧部材99がクラッチばね96の弾性力によりクラッチ接続側(矢印R2側)に付勢されていることにより、押圧部材99とインナーハブ91の外周つば部91aとの間で両プレート93、94を挟圧し、これによりアウターケース92からインナーハブ91に、両プレート93、94を介して動力が伝達される状態(クラッチ接続状態)に維持されている。クラッチ90による動力伝達を切断する場合、後述するレリーズ機構100により、押圧部材99をR1側に移動させることにより、行う。
【0050】
[操作力伝達機構80]
図4、
図5を参照して、操作力伝達機構80について説明する。
図4はクランクケース31周辺を示す拡大左側面図であり、
図5は操作力伝達機構80周辺を示す斜視図である。なお、
図5において、クランクケース31、シリンダ32、車体フレーム1を破線で示し、出力スプロケット44、駆動チェーン45は図示していない。
【0051】
図4に示すように、操作力伝達機構80は、クランクケース31の左側面に設けられている。操作力伝達機構80は、チェンジペダル81と、クランクケース31から突出したチェンジ軸72の先端部に固着された、リンクレバー82と、チェンジペダル81とリンクレバー82とに回動自在に連結された連結ロッド83と、を備えており、チェンジペダル81の回動動作を、リンクレバー82及び連結ロッド83を介して、チェンジ軸72へ連動させるように構成されている。
【0052】
チェンジペダル81は、ライダーの左足で操作可能な位置に配置されており、前記基準線Mよりも下方であって、クランクケース31よりも左側に配置されている。チェンジペダル81は、車体フレーム1に設けられたペダル軸部28に回動自在に連結されており、基端部81aから略前方へ延びるペダル本体部81bと、基端部81aから前下方に延びるリンク部81cと、を有している。ペダル本体部81bの先端部81dには、左側へ延びる操作ペダル81eが設けられている。リンク部81cの先端部81fには、連結ロッド83の下端部が回動自在に連結されている。
【0053】
リンクレバー82は、基端部82aがチェンジ軸72の先端にスプライン嵌合されており、基端部82a設けられたスリット82bをボルトを用いて締め付けることで、チェンジ軸72に固定されている。リンクレバー82の先端側は前下方へ延び、その先端部82cには連結ロッド83の上端部が回動自在に連結されている。
【0054】
連結ロッド83は、チェンジペダル81の先端部81fと、リンクレバー82の先端部82cとを、直線状に連結するように構成されており、クランクケース31の左側に配置されている。また、
図4に示される側面視において、連結ロッド83は、クランク軸34と変速出力軸62(
図2参照)との間に位置すると共に、上下方向の略中間部がスプロケットカバー46に重複して配置されている。しかも、連結ロッド83は、上端部から下端部へ進むにつれて後傾するように配置されているので、チェンジ軸72に対して、連結ロッド83の上端部を離して配置することができる。これにより、連結ロッド83の上端部とチェンジ軸72との間に、リンクレバー82を容易に配置できる。
【0055】
また、ロッド本体部83aは、全体として六角形状を有し、スプロケットカバー46との重複部分において、上部及び下部の六角形状部よりも縮径された縮径部83dを有している。これにより、
図5に示すように、連結ロッド83を、スプロケットカバー46との干渉を防止しながら、スプロケットカバー46の車幅方向の内方側へ配置できる。
【0056】
図4に示すように、連結ロッド83は、ロッド本体部83aと、ロッド本体部83aの上端部及び下端部に螺旋嵌合されて、本体部から突出後退可能に構成された、チェンジペダル連結部83b及びリンクレバー連結部83cから構成されている。各連結部には、結部への泥、水等の付着を防止するための、ダストカバー(図示しない)が装着されている。
【0057】
すなわち、変速操作機構80によれば、チェンジペダル81のペダル軸部28周りの回動操作が、リンクレバー82及び連結ロッド83を介して、チェンジ軸72へ連動させることができる。
【0058】
しかも、チェンジペダル81及び連結ロッド83は、クランクケース31の左側に位置しており、且つ、車体フレーム1に設けられたペダル軸部28周りを上下に回動するので、クランクケース31の下方に配置されたリアショックアブソーバー51との干渉を防止しながら、チェンジペダル81及び連結ロッド83の回動可能範囲を十分に確保できる。
【0059】
また、本体部83aを軸線周りに回転させることにより、チェンジペダル連結部83b及びリンクレバー連結部83cを、本体部83aに対して軸方向に突出後退させることができるように構成されている。これにより、連結ロッド83の長さを適宜調整でき、チェンジペダルの角度及び操作力をライダーの好みに合わせて適宜調整できるようになっている。
【0060】
[スプロケットカバー46]
図5に示すように、スプロケットカバー46は、出力スプロケット44(
図4参照)の前方及び上方を覆う側壁46aと、出力スプロケット44の側面視における斜め上前側の略半分を覆う左壁46bと、を有し、左壁46bの前方下部に設けられた下部取付部46cと左壁46bの前方上部に設けられた上部取付部46dとを介して、クランクケース31に装着されている。
【0061】
左壁46bの車体方向の内方側であって、側壁46aと下部取付部46cとの間に、前記連結ロッド83の縮径部83dが位置している。
【0062】
[レリーズ機構100]
図3を参照して、クラッチ90の動力伝達を切断するためのレリーズ機構100について説明する。なお、
図3において、レリーズレバー103及びプッシュプルケーブル104を破線で示している。レリーズ機構100は、クランクケース31内において、変速入力軸61の軸芯孔61aに軸方向移動自在に挿入されて先端が押圧部材99の左側面に当接するレリーズロッド101と、該レリーズロッド101の左端部に当接するカム面102aを有し、且つ、クランクケース31を上下に貫通する回動ロッド102と、回動ロッド102の上端部に固着されたレリーズレバー103と、ハンドルバー8(
図1参照)に設けられたクラッチレバー9(
図1参照)と、レリーズレバー103とクラッチレバー9とを連結するプッシュプルケーブル104と、を備えている。
【0063】
レリーズレバー103は、クランクケース31の上部左端部に、回動ロッド102周りに回動可能に設けられており、車幅方向の端部が、スプロケットカバー46の左壁46bの車幅方向の端部Sよりも、車幅方向の内方側に位置している。また、プッシュプルケーブル104のアウターケーブル104a(
図4参照)は、クランクケース31の左側面に装着された、ジェネレータカバー38に一体に形成された、ケーブル保持部38aに保持されている。
図5に示すように、ケーブル保持部38a及びレリーズレバー103のプッシュプルケーブル104との連結部103aは、連結ロッド83よりも車幅方向の外方側に位置している。
【0064】
すなわち、プッシュプルケーブル104(又はアウターケーブル104a)は、連結ロッド83よりも車幅方向の外方側に位置する、ケーブル保持部38a及びレリーズレバー103のプッシュプルケーブル連結部103aに、保持又は連結されている。これにより、プッシュプルケーブル104を連結ロッド83との干渉を防止しながら、連結ロッド83よりも車幅方向の外方側にコンパクトに配策できる。しかも、プッシュプルケーブル104は、連結ロッド83の近傍の前後位置において、ケーブル保持部38a及びプッシュプルケーブル連結部103aにより、保持又は連結されているので、レリーズ機構100の作動時においても、プッシュプルケーブル103の動きが規制されるので、連結ロッド83との干渉が確実に防止される。
【0065】
すなわち、レリーズ機構100によれば、クラッチレバー9(
図1参照)を操作することにより、
図5に示すように、プッシュプルケーブル104を介して、レリーズレバー103が矢印R3側に回動され、これにより、
図3に示すように、回動ロッド102のカム面102aが矢印R4側に回動され、この結果、レリーズロッド101がレリーズ側(矢印R1側)に押し出されて、押圧部材99をクラッチばね96の付勢力に抗してレリーズ側(矢印R1側)に移動させることができる。これにより、クラッチ90の両プレート93、94の挟圧状態を解除し、クラッチ90にてクランク軸34から変速入力軸61への動力伝達を切断できる。
【0066】
[変速装置の作動]
図2に示すニュートラル状態から、クラッチレバー9(
図1参照)を操作することにより、プッシュプルケーブル104(
図4参照)、レリーズレバー103(
図4参照)、回動ロッド102、及びレリーズロッド101を介して、クラッチ90による動力伝達が切断される。次に、
図4を参照して、チェンジペダル81を操作して、リンクレバー82及び連結ロッド83を介して、チェンジ軸72を回動させる。次に
図2を参照して、チェンジ軸72に固着されたチェンジレバー77を回動させ、チェンジドラム71が所定回転量だけ回動する。
【0067】
チェンジドラム71の回動により、チェンジドラム71の周部に形成されたカム溝に係合する駆動ピン751、761を介して、第1、第2シフトフォーク75、76の少なくとも1つが、軸方向に移動し、これにより、
図3を参照して、減速入力軸61又は減速出力軸62上に空転自在に嵌合されたギヤに、同軸にスプライン嵌合されたギヤが連結される。そして、クラッチレバー9(
図1参照)を操作することにより、
図2を参照して、クラッチ90が接続されて、この結果、変速段に対応した減速比で、減速入力軸61から減速出力軸62へ動力伝達が行われる。
【0068】
[実施形態の効果]
以上説明したように、本発明に係る操作力伝達機構80を備えた車両によれば、次の効果を発揮できる。
【0069】
(1)クランク軸34と変速出力軸62との間に連結ロッド83を配置することにより、連結ロッド83と、クランク軸34及び変速出力軸62と、の干渉を防止しながら、連結ロッド83を車幅方向内側に寄せることができる。これにより、車幅方向の寸法をコンパクトにできる。
【0070】
(2)チェンジドラム71が、クランク軸34の軸芯と変速出力軸62の軸芯とを結ぶ基準線Mにより仕切られた上方の区画に配置されているので、クランクケース31の下部にチェンジドラムを配設する場合に比して、クランクケース31の下部をコンパクトに構成できる。
【0071】
(3)連結ロッド83の車幅方向の外側面が、スプロケットカバー46の外側面の外側面よりも車幅方向の内側に位置するように、連結ロッド83を配置することにより、車幅方向の寸法をよりコンパクトにできる。
【0072】
(4)しかも、車幅方向の外方からの連結ロッド83への異物の衝突を、スプロケットカバー46により阻止して、連結ロッド83を保護できる。また、例えば、車両転倒時においては、スプロケットカバー46を路面に接触させて、連結ロッド83の路面への接触を防止することにより、車両転倒時における連結ロッド83の保護性能を向上できる。
【0073】
(5)連結ロッド83の車幅方向の外方側をスプロケットカバー46により覆うことにより、車幅方向の外方から連結ロッド83への異物の衝突を、外側カバーにより確実に防止できる。すなわち、連結ロッド83の保護効果をより一層高めることができる。
【0074】
(6)下部がコンパクトに構成されたエンジン30の下方に形成された空間内に、後車輪41用のリアショックアブソーバー51を配置することにより、車両をコンパクトに構成できる。
【0075】
(7)チェンジペダル81の基端部81aが車体フレーム1に形成されているので、基端部81aをエンジン30により回動自在に支持させる場合に比して、エンジン30の下部をよりコンパクトに形成できる。これにより、リアショックアブソーバー51の配置の自由度を向上できる。
【0076】
(8)レリーズレバー103の車幅方向の端部が、スプロケットカバー46の車幅方向の外側面より、車幅方向の内側に位置している。これにより、車幅方向の外方側からのレリーズレバー103への異物の衝突を、スプロケットカバー46により阻止して、レリーズレバー103を保護できる。また、例えば、車両転倒時においては、スプロケットカバー46を路面に接触させて、レリーズレバー103の路面への接触を防止することにより、車両転倒時におけるレリーズレバー103の保護性能を高めることができる。
【0077】
(9)ジェネレータカバー38にケーブル保持部38aを一体に形成することにより、別途新たな部材を追加することなく、プッシュプルケーブル104を支持できる。これにより、プッシュプルケーブル104を適切に配策しながら、部品点数を削減できる。
【0078】
[他の実施形態]
第1の実施形態では、スプロケットカバー46の車幅方向の端部よりも、操作力伝達機構80の連結ロッド83、及びレリーズ機構100のレリーズレバー103を、車幅方向の内方側へ配置するように構成しているが、これに代えて、ジェネレータカバー38の外側端部より、連結ロッド83及びレリーズレバー103を車幅方向の内側へ配置するように構成してもよい。
【0079】
これによっても、第1の実施形態と同様の効果を奏する。すなわち、車両の外方から、連結ロッド83及びレリーズレバー103への異物の衝突を、ジェネレータカバー38により防止できると共に、車両転倒時において、ジェネレータカバー38を先に路面に接触させることにより、連結ロッド83及びレリーズレバー103が路面に接触することを防止できる。したがって、連結ロッド83及びレリーズレバー103の保護性能を向上できる。
【0080】
なお、本発明は、本実施形態において説明したようなモトクロッサータイプの自動二輪車に限らず、アメリカンタイプ、ロードレーサータイプの自動二輪車や、その他の車両においても適用可能である。