【実施例】
【0054】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、本実施例において、シゾフィランを「SPG」と表記することがある。また、本実施例において、ルシフェラーゼに対するsiRNAを「siLuc」と表記し、CD40に対するsiRNAを「siCD40」と表記することもある。
【0055】
実施例1:SPGとsiRNAの核酸多糖複合体の形成
以下の実施例で用いた核酸多糖複合体は次のようにして形成した。分子量約15万のSPGを、0.25N水酸化ナトリウム水溶液に最終濃度15mg/ml になるように調製した後、1時間振動攪拌して4℃で1日静置し変性させた。330mMの第1リン酸ナトリウムに溶解させたS化poly(dA)を付加したsiRNAの溶液を、この変性SPG溶液に加えて中和し4℃で24時間以上静置した。この時、siRNA 1モルに対してSPGが0.27モルとなるようにした。なお、S化poly(dA)を付加したsiRNAは、siRNAのセンス鎖5’末端にホスホロチオエート化された40個のデオキシアデニンが、リン酸エステル結合によって連結されたものである。以下の実施例において、S化poly(dA)をdA40(s)と略記することがある。また、以下の実施例で使用されるS化ポリデオキシアデニンのS化率はいずれも100%である。
【0056】
実施例2: S化poly(dA)を付加したsiRNAとSPGとの核酸多糖複合体の細胞培養培地中での安定性
表1に記載の条件になるように、試料をリン酸緩衝液(PBS)もしくは細胞培養培地(10%FBS+RPMI(FBS; バイオロジカルインダストリー社 Cat# 04-001-1A、RPMI; 和光純薬工業社 Cat# 189-02025))を加え調製した。その試料を37℃で4時間もしくは24時間インキュベートした後、12.5%ポリアクリルアミドゲル(Tris-ホウ酸-EDTA(TBE))を用いて100ボルト、60分の条件で電気泳動を行い、SYBRGold(ライフテクノロジーズジャパン社)で染色した。
【0057】
表1中、dA40(s)- siLuc(21nt)は、ルシフェラーゼに対する21merのsiRNA(配列番号1)にホスホチオエート化した40merのポリデオキシアデニンがセンス鎖の5’末端に付加したものを表す。dA40(s)-siLuc(27nt)は、ルシフェラーゼに対する27merのsiRNA(配列番号3)にホスホチオエート化した40merのポリデオキシアデニンがセンス鎖の5’末端に付加したものを表す。
【0058】
【表1】
【0059】
その結果、ホスホチオエート化した40merのpoly(dA)を付加したsiRNAについて、分解酵素が存在する細胞培養培地でsiRNAとSPGが複合体を形成していないもの(レーン2及び5)は、対照のレーン1及び4の位置のバンドは薄く分解されるが、siRNAとSPGが複合体を形成したもの(レーン3、6、7)は、濃いバンドであり、核酸多糖複合体として安定であることが示された。なお、ホスホロチオエート化していないpoly(dA)を付加したsiRNAに比べ、ホスホチオエート化したものは、分解酵素が存在する細胞培養培地でより安定であった。
【0060】
実施例3:核酸多糖複合体のDicer感受性
(3-1)非S化dAテイル核酸多糖複合体のDicer感受性
本実施例においては、Recombinant human dicer enzymeキット(Genlantis社製:Cat# T510002)を使用した。また、下記組成(A〜E)のプレミックスを調製した。
【0061】
A. 核酸試料: 2.5μl(25ng)
B. 10mM ATP : 1μl
C. 50mM MgCl
2 : 0.5μl
D. Dicer Reactionバッファー: 4μl
E. Recombinant Dicer Enzyme (1 Unit) : 2μl
PCRチューブに上記のB〜DもしくはB〜Eのサンプルを混合した後、Aの核酸試料を添加した。その後ヌクレアーゼフリーの蒸留水により最終容量を10μlに合わせた。その後、37℃にて15時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、反応停止液で反応を終了させた。15%ポリアクリルアミドゲル(Tris-borate-EDTA(TBE))を用いて150V、80分で電気泳動を行い、SYBR(r)Gold(ライフテクノロジーズジャパン社)で染色した。
【0062】
表2中のsiCD40(21nt)はCD40に対する21merのsiRNA(配列番号5及び6)を表す。dA40-siCD40(21nt)は、CD40に対する21merのsiRNA(配列番号5及び6)においてセンス鎖(配列番号5)の5’末端に40merのポリデオキシアデニンを付加したものを表す。siLuc21は、配列番号1及び2に示されるルシフェラーゼに対する21merのsiRNAを表す。dA40-siLuc(21nt)は、ルシフェラーゼに対する21merのsiRNA(配列番号1及び2)においてセンス鎖(配列番号1)の5’末端に40merのポリデオキシアデニンを付加したものを表す。
【0063】
【表2】
【0064】
以上の結果より、電気泳動によるバンドの濃さはレーン2と3は同等の濃さであり、また、レーン6と7は同等の濃さであったので、poly(dA)-siRNA(21nt)はDicerによって切断されないが、一方、レーン10のバンドは、レーン9より薄く、poly(dA)-siRNA(27nt)はDicerによって切断されることが示された。
【0065】
(3-2)S化dAテイル核酸多糖複合体のDicer感受性
上記(3-1)と同様の方法により、S化されたdAテイルを有する核酸多糖複合体のDicer感受性を評価した。
【0066】
【表3】
【0067】
表3中のsiLuc(21nt)は、ルシフェラーゼに対する21merのsiRNA(配列番号1及び2)を表す。siLuc(27nt)は、ルシフェラーゼに対する27merのsiRNA(配列番号3及び4)を表す。dA40(s)-siCD40(21nt)は、CD40に対する21merのsiRNA(配列番号5及び6)においてセンス鎖(配列番号5)の5’末端にホスホチオエート化した40merのポリデオキシアデニンを付加したものを表す。dA40(s)-siCD40(27nt)は、CD40に対する27merのsiRNA(配列番号7及び8)においてセンス鎖(配列番号7)の5’末端にホスホチオエート化した40merのポリデオキシアデニンを付加したものを表す。
【0068】
電気泳動の結果より、レーン6のバンドは対照のレーン4及びレーン5のバンドの濃さは同程度であり、S化されたポリdAを付加した場合でも21nt型siRNAはDicerによって切断されなかったが、一方、レーン12のバンドは、対照のレーン10およびレーン11のバンドより薄く、27nt型siRNAはDicerによって切断されることが示された。
【0069】
実施例4: poly(dA)が連結されたsiRNAのRNA干渉効果
Dual Luciferase発現ベクターpsiCHECK
TM-2(プロメガ社 Cat# C8021)を、Lipofectamine
TM LTX(ライフテクノロジーズジャパン社 Cat# 15338-500)を用いHEK293細胞に導入した。この時、1ウェルあたりの細胞数を5万個となるよう揃えた。これに、dA40-siLuc (21nt)又はdA40-siLuc (27nt)を、TransIT
TM-TKO(タカラバイオ社、Cat# V2154)を用いて細胞に導入し、CO
2インキュベーターで37℃、20時間インキュベーションをした。その後、Dual Luciferaseアッセイ(プロメガ社製, Dual-Glo Luciferase assay system , Cat# E2920)を行い、RNA干渉効果を測定した。コントロールとして、核酸試料を用いずに同様の操作を行った。RNA干渉効果は、コントロールにおける2つのルシフェラーゼの発現を比較し、その時のRNA干渉効果を0%とし、各試料における発現抑制の割合を%で表した。
【0070】
結果を
図1に示す。poly(dA)が連結された21merのdA40-siLuc (21nt)はDicerに切断されなくても、27merのdA40-siLuc(27nt)と同様のRNA干渉効果活性が得られることが示された。
【0071】
実施例5:S化poly(dA)が連結されたsiRNA/SPG複合体のRNA干渉効果
ホスホロチオエート化poly(dA)を有するキメラsiRNAとSPGの複合体を用いたRNA干渉効果を、Dual Luciferaseアッセイ(プロメガ社製、Dual-Glo Luciferase assay system, Cat# E2920)を用いて評価した。細胞はDectin-1を強く発現するRAW264.7細胞(dRAW細胞)(東京薬科大学 薬学部 免疫学安達禎之准教授より入手)を使用した。使用した試料は、下表4に示す通りである。下表3において試料4は、TransIT
TM-TKO(タカラバイオ社、Cat# V2154)を用いてdA40(s)-siLuc(21nt)を導入したものである。
【0072】
結果を下表4に併せて示す。
【0073】
【表4】
【0074】
表5より、poly(dA)(s)-siRNA/SPG複合体でRNA干渉効果が得られることが示された。
【0075】
実施例6:
poly(dA)(s)-siRNA複合体によるRNA干渉効果の用量依存性
本実施例においては、siRNA活性の用量依存性を確認した。細胞は、10%血清培養において増殖性を示すdRAW 細胞を用いた。本実施例で使用した試料は下表5に示される。
【0076】
本実施例は下記手順に従って行った。
dRAW細胞を回収し、48ウェルプレートに20000細胞/ウェル/200μlになるように播種して、37℃のCO
2インキュベーターで20時間インキュベーションを行った。psiCHECK
TM-2/LTX複合体を20μl/ウェル、培地を180μl/ウェルで混合し、48ウェルプレートに添加した。その後、Dual Luc アッセイ(プロメガ社製, Dual-Glo Luciferase assay system, Cat#: E2920)を行った。結果を下表5に示す。
【0077】
【表5】
【0078】
表5より、poly(dA)(s)-siRNA複合体の用量依存的にRNA干渉効果が得られることが示された。
【0079】
実施例7:poly(dA)(s)-siRNA複合体の細胞導入性
(7-A)dRAW細胞への導入性
dRAW細胞を、1000000細胞/ディッシュ(5ml)になるように播種して、37℃のCO
2インキュベーターで20時間インキュベーションを行った。その後、Alexa 647標識ネイキッドdA40(s)siLuc(21nt)、及びAlexa 647標識dA40(s)siLuc(21nt)/SPG複合体をそれぞれ100nMの濃度で培地に添加し、dRAW細胞に接触させた。各siRNA添加後、1,2,4,8時間後に、細胞を回収した。回収した細胞を10%平衡化ホルムアルデヒド(100μl/dish)で固定し、フローサイトメトリー(FACS)で、Alexia647で標識されている細胞数を測定した。
【0080】
この結果、ネイキッドdA40(s)siLuc(21nt)と比較すると、dA40(s)siLuc(21nt)/SPG複合体は、Alexia647で標識されている細胞数は2倍以上であり、dA40(s)siLuc(21nt)/SPG複合体の細胞内取り込みが2倍以上になっていると考えられる。
【0081】
(7-B)CD11c(+)への導入性
マウス(C57BL/6,雄,7週齢;4匹)から常法に従い脾臓細胞を得た。得られた脾臓細胞の一部をコントロールとして使用するために氷冷保存した。残りの脾臓細胞をMACS MSカラムによりCD11c(-)細胞群とCD11c(+)細胞群に分離した。カラムによる細胞の分離は2回行った。CD11c(+)細胞群を7×10
5cellsに調製し、下表6に示す各条件で、6ウェルプレート(容量2ml)で48時間(37℃;5% CO
2)培養した。培養後、表6中の括弧内に示すFACS抗体を用いてFACS解析を行った。表中、Dectin-1-FITCはFITCで修飾された抗Dectin-1抗体を、CD11c-FITCはFITCで修飾された抗CD11c抗体を、PE Isotype controlはPEで修飾されたアイソタイプ・コントロール抗体を表す。
【0082】
【表6】
【0083】
この結果から、試料5は試料4よりDectin-1陽性細胞の割合は少なく、また試料7は試料4や試料6よりDectin-1陽性細胞の割合は少なく、siRNA/SPG複合体がDectin-1発現細胞内へ取り込まれると、その細胞のDectin-1の発現量が減少することが確認された。
【0084】
(7-C)RLC(RISC Loading Complex)への取り込み
マウス(C57BL/6,雄,7週齢;4匹)から常法に従って脾臓細胞を得た。得られた脾臓細胞の一部をコントロールとして使用するために氷冷保存した。残りの脾臓細胞をMACS MSカラムによりCD11c(-)細胞群とCD11c(+)細胞群に分離した。カラムによる細胞の分離は2回行った。CD11c(+)細胞群を2×10
4細胞になるように調製し、チャンバーカバーガラス(4ウェル、容量1ml/ウェル)で24時間(37℃;5% CO
2)培養した。その後、アンチセンス鎖の5'末端にAlexa647標識したsiLucおよびアンチセンス鎖の5'末端にAlexa647標識したdA40(s)siLuc/SPG複合体を100 nMとなるようにCD11c(+)細胞に添加し、1時間培養(37℃;5% CO
2)した。
【0085】
1時間経過後、培養上清を吸引により取り除いた。各ウェル500 mlの4% パラホルムアルデヒド/PBS溶液を加えて、15分間、室温でインキュベーションした。パラホルムアルデヒド/PBS溶液を吸引により取り除いた後、各ウェル1 mlのPBSを加え、室温で5分間、インキュベーションし、その後、PBSを吸引により取り除いた。この操作をもう一度繰り返した(以下、PBSによる室温での5分間インキュベーションの操作を洗浄操作と記載する)。各ウェル500 mlの0.1% Triton X-100/PBS溶液を加え、室温で10分間、インキュベーションし、その後、0.1% Triton X-100/PBS溶液を吸引により取り除いた。洗浄操作を2回行った。10% Normal Goat Serum (NGS)/PBS溶液を 各ウェルに500 ml加え、室温で30分間インキュベーションした。10% NGS/PBS溶液を吸引により取り除いた後、抗TRBP2マウス抗体を0.1% Triton X-100, 1.5% NGS, BSA/PBSで130 ng/mlに調製し、それを各ウェルに500 ml加え、室温で2時間、インキュベーションした。抗体溶液を吸引により取り除き、洗浄操作を3回行った。Alexa-488-anti-mouseIgG抗体(ライフテクノロジーズジャパン社)をTriton X-100, 1.5% NGS, BSA/PBSで750倍に希釈し、室温で1時間、インキュベーションした。抗体溶液を吸引により取り除き、洗浄操作を3回行った。PBSを吸引により取り除いた後、チャンバーを取り外し、退色防止剤入り封入剤でマウントした。この試料をレーザー共焦点顕微鏡で撮影、解析した。
【0086】
この結果、dA40(s)siLuc/SPG複合体によって細胞内に取り込まれたsiRNAと、RLCのコアタンパクであるTRBP2が、同じ位置に局在し、且つ同一焦点深度で画像が一致していることが確認された。この結果から、細胞内に取り込まれたsiRNAとTRBP2が相互作用できる距離に存在している、即ち siRNAがRLCに取り込まれていることが明らかになった。一方、Alexa647で標識されたsiLucのみの場合は、取り込まれたsiLucは観察できなかった。
【0087】
(7-D) in vitroでのCD40mRNAの発現抑制
(i) Real Time PCR
継代培養しているdRAW 細胞(80% confluency)を培地(10 % FBS-RPMI (ライフテクノロジーズジャパン社, cat No 12718011S ))に懸濁し、1×10
5個/mlに調製した。その細胞懸濁液を各ウェル10000 個ずつ(100μl/well)、96ウェルプレートに加え、37℃、5% CO
2条件下で一晩、培養した。培養後、培養上清をアスピレーターで取り除き、各ウェル100μlずつ培地を加えた。この操作を2回繰り返した。予め培地を用いて100nMの濃度に調整した各試料(表7)を各ウェル100μlずつ加え、37℃、5% CO
2条件下で20時間、培養した。培養後、各ウェルに100μlの培地を加え、その後、アスピレーターで培地を取り除いた。予め培地を用いて調製した60ng/ml interferon-gamma(IFN-γ、PEPRTOTECH社、cat No 315-05)を各ウェル100μlずつ加え、37℃、5% CO
2条件下で4時間、培養した。培養後、各ウェルの細胞からCellAmp Direct RNA Prep kit (タカラバイオ社、cat No 37329)を用いてtotal RNAを調製した。調製したtotal RNAをテンプレートとして、PrimerScript RT reagent Kit (タカラバイオ社、cat No RR037A)を用いてcDNAを合成した。合成したcDNAをSYBR Prime Ex Taq II
(タカラバイオ社、cat No RR081A)を用いてreal time qPCR を行い、CD40 mRNA 発現量を測定した。同時にbeta-actin mRNAの発現量を測定し、これを用いてCD40 mRNAの測定値の補正を行った。補正後の値を各条件におけるCD40 mRNA 発現量とした。qPCRに用いたプライマー配列は表8に示す通りである。
【0088】
【表7】
【0089】
【表8】
【0090】
この結果、SPGのみ、或いはネイキッドsiCD40をDectin-1発現細胞に添加しても、コントロール(No sample)に比べて、CD40の発現量は減少せず、RNAi活性を誘導しなかったが、siCD40/SPG複合体をDectin-1発現細胞に添加すると、siRNAが有する本来のRNAi活性を減弱することなくCD40mRNA発現を抑制することが確認された。
【0091】
(ii)FACS
マウス脾臓細胞中のCD11(+)細胞を分離し、CD11(+)細胞におけるCD40陽性細胞の割合をFACSにて解析した。さらに、細胞培養と同様の環境、すなわち、10%FBS+RPMI培地に添加し、CO2インキュベーションで37℃に加温して指定の4時間〜48時間培養した。この時、CD11(+)細胞にSPG、ネイキッドdA40(s)siCD40(27nt)及びdA40(s)siCD40(27nt)/SPG複合体で処理し、その後のCD40発現をFACSで解析した。脾臓細胞の処理方法は上記(7-B)に記載の通りである。FACSで用いた抗体を下表9の括弧内に示す。表中、PE Isotype controlはPEで修飾されたアイソタイプ・コントロール抗体を、CD40-PEはPEで修飾された抗CD40抗体を表す。
【0092】
【表9】
【0093】
その結果、試料4ではCD陽性細胞の発現細胞は少なくなっており、siCD40/SPG複合体は、プライマリ細胞表面上のCD40発現を抑制することが示された。一方、SPGを複合化させていないsiCD40では、CD40陽性細胞の数は減少が見られず、CD40発現を十分に抑制できなかった。
【0094】
本実施例においては、siRNAとSPGとの複合体を形成してsiRNAを血清下、血中下で安定化させることにより、ネイキッドのsiRNAよりも細胞内への導入効率が向上し、細胞質内までsiRNAが届けられた結果、mRNAの発現が抑制され、細胞膜表面の標的分子の発現が抑制されたと考えられる。
【0095】
実施例8
免疫反応の初期応答因子として知られる共刺激因子CD40を標的分子として設定し、本分子に対するsiRNAによりResponder mouseの細胞を処理した。薬理効果はStimulator細胞とsiRNA未処理あるいは処理Responder細胞群とのMLR(Mixed Lymphocyte Reaction)を行い、それぞれの細胞増殖率をBrdU化学発光キットで測定することによって評価した。
【0096】
MLRを行う際、CD11c(-) Responder脾臓細胞を用いると、抗原提示細胞(Antigen Presenting Cells; APC)が欠乏して正常なリンパ球反応が抑えられ細胞増殖が抑制される。ここにsiCD40/SPG複合体で処理したCD11c(+)脾臓細胞を添加し細胞増殖の回復程度を観察した。dA40(s)-siCD40(27nt)/SPG複合体を添加又は非添加のアロジェニックMLR及びシンジェニックMLRをそれぞれ比較したところ、dA40(s)-siCD40(27nt)/SPG複合体の添加によって顕著な免疫抑制の誘導が達成されることが確認された(細胞増殖の回復程度が下がった:
図2及び
図3)。
【0097】
本実施例においては、ResponderマウスとしてC57BL/6マウス、StimulatorマウスとしてBalb/cを用いた。MLR時には、Stimulator脾臓細胞は、採取時にマイトマイシンC(MMC)を添加して細胞増殖を制止させて使用した。
【0098】
前培養in vitro MLRとは、Responder マウス 脾臓細胞から分離したCD11c陽性細胞にsiCD40/SPG複合体を添加後、CD11陰性細胞群に戻し、その後マイトマイシンC(MMC)処理したStimulator脾臓細胞と混合してMLR反応を観察する方法を指す。即ち、予め標的細胞にdA40(s) siRNA/SPG複合体を結合(または導入)させてMLR反応において免疫抑制誘導を評価した。
【0099】
(8-A):CD11c陽性細胞を用いた前培養MLRでの核酸多糖複合体による免疫抑制効果
本試験においては、dA40(s)-siCD40(27nt)/SPG複合体が免疫抑制作用を発揮することを確認した。
【0100】
細胞の調製
マウス(Balb/c(雄9週齢;2匹)、C57BL/6(雄9週齢;2匹))から脾臓細胞を回収した。溶血剤(塩化アンモニウム、カリウム)を添加して赤血球を溶解させた(溶血剤 5 ml, RPMI 5ml)。10% FBS(DSファーマバイオメディカル社)、RPMI 5mlで細胞を懸濁し、responder 側の脾臓細胞にマイトマイシンC(MMC)処理を行った(最終10
7細胞に対して25μgのMMC添加)。
【0101】
CD11c陽性細胞の精製(磁気標識)
脾臓細胞より回収した細胞を10
8細胞/試料に調整し、緩衝溶液(400μl)に懸濁した。CD11cマイクロビーズを100μl添加し、15分間冷蔵庫(2〜8℃)で静置した。
【0102】
磁気分離
カラムを緩衝溶液(MACSバッファー:2mM EDTA, 0.5% BSA in PBS (1×)の溶液を調製後、脱気)でリンスした後、磁気標識された細胞の懸濁液500μlをピペットで注いで流出させた。流出した液を回収し、CD11c(-)細胞として用いた。
【0103】
複合体群添加操作
回収したCD11c陽性細胞を1.0×10
5 cells/conditionに分けた。そこにネイキッドsiCD40、siCD40/SPG複合体を最終濃度100 nMになるように添加し、37℃で4時間インキュベーションを行った。MLRは、5×10
5responder (splenocyte) 、5×10
5stimulator(CD11c陽性細胞 2.5×10
4とCD11c陰性細胞4.75×10
5の混合)を用いた。MLR条件を下表10に示す。
【0104】
【表10】
【0105】
結果を
図2に示す。
図2はアロ反応による増殖回復の抑制率を示す。Balb/c全脾臓細胞とC57BL/6から分離したCD11c(-)細胞をMLRにかけると細胞増殖は確認されなかった。一方、Balb/c全脾臓細胞と、C57BL/6から分離したCD11c(-/+)細胞のMLRをおこなうと、アロジェニック反応が活性化し、細胞増殖反応が回復した。標的細胞であるCD11c(+)細胞に複合体を接触させた後、CD11c(-)細胞と混ぜ戻してBalb脾臓細胞とMLRを行うと、細胞増殖回復が抑制された。すなわち、CD11c陽性細胞は前培養MLRにおいて免疫抑制を誘導することが示された。
【0106】
(8-B):CD11c陽性細胞を用いた核酸多糖複合体による免疫抑制作用の用量依存性
本試験においては、dA40(s)-siCD40(27nt)/SPG複合体が用量依存的に免疫抑制作用を発揮することを確認した。細胞の調製は、マウス(Balb/c(雄7週齢;2匹)、C57BL/6(雄7週齢;2匹))を用い、上記(A)に記載の方法と同様に行った。また、CD11c陽性細胞の精製、磁気分離についても上記(A)の方法に従った。MLR条件を下表11に示す。
【0107】
【表11】
【0108】
MLRの結果を
図3に示す。
図3より、CD11c陽性細胞は、前培養MLRにおいて免疫抑制を用量依存的に誘導することが示された。
【0109】
実施例9
(9-A)in vitro MLR
本試験においては、in vitroでdA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体を投与した場合のリンパ球の増殖抑制効果を評価した。細胞の調製方法は次の通りである。
【0110】
マウス(stimulator:Balb/c(雄7週齢;2匹)、responder:C57BL/6(雄7週齢;2匹))から脾臓細胞を回収した。溶血剤(塩化アンモニウム、カリウム)を添加して赤血球を溶解させた(溶血剤 3ml、2分)。RPMI 8mlを添加し、300×g、10分間遠心分離を行った。上清をアスピレーターで取り除き、そこに10mlのRPMIを加え、細胞を懸濁した。遠心分離操作以降、同様の操作を繰り返して行った。上清をアスピレーターで除去後、10%FBS/RPMI 5mlで細胞を懸濁し、細胞数を計数した。stimulator側の脾臓細胞にマイトマイシンC(MMC)処理(37℃、30分)を行った(最終10
7細胞に対して25μgのMMC添加)。MMC処理後、細胞をRPMI 10mlで懸濁し、300×g、10分間遠心分離を行った。上清をアスピレーターで取り除き、そこに10mlのRPMIを加え、遠心分離操作以降、同様の操作を4回繰り返した。上清をアスピレーターで除去後、10%FBS/RPMI 3mlで細胞を懸濁し、細胞数を計数し、細胞濃度を5×10
6個/mlに調製した。Responder側の脾臓細胞(各条件5×10
6個)に複合体(又はsiMOCK)を最終濃度10nMになるように添加し、4時間、37℃で培養した。培養後、細胞液に10mlのRPMI加えて懸濁し、300×g、10分間遠心分離を行った。上清をアスピレーターで取り除き、そこに10mlのRPMIを加え、遠心分離操作以降、同様の操作を2回繰り返した。10%FBS/RPMI 1mlで細胞を懸濁し、細胞数を計数し、細胞濃度を5×10
6個/mlに調製した。Stimulator細胞、Responder細胞それぞれ5×10
5個ずつを1ウェル中で混ぜ合わせ(最終容量200ml/well)、37℃、5%CO
2環境下で72時間培養した。培養後、BrdU取り込みによる化学発光を用いたアッセイ(Cell Proliferation ELISA、BrdU)(Roche Applied Science社)により細胞増殖を測定した。
【0111】
また、siRNAをStimulator脾臓細胞に対して処理したin vitro MLRも行った。Stimulator細胞のMMC処理後、siRNA処理を行ったこと、Responder細胞は細胞数計数後、無処理でMLR開始まで氷冷保存していること以外は、上記操作準じて行った。MLRの条件を表12に示す。
【0112】
【表12】
【0113】
その結果、dA40(s)-siCD40/SPG複合体で処理したResponder細胞のMLRでは、対照であるsiMockに比べて、約60%の細胞増殖抑制が確認された。また、dA40(s)-siCD40/SPG複合体で処理したStimulator細胞のMLRでは、対照であるsiMockに比べて、約50%の細胞増殖抑制が確認された。即ち、dA40(s)-siCD40/SPG複合体添加群を、Stimulaor脾臓細胞に添加しても、Responder脾臓細胞に添加しても、Allogenic MLR応答を Syngenic MLR応答まで抑制することが確認された。これらのことからdA40(s)-siCD40/SPG複合体が有意にリンパ球の活性化を抑制していることが明らかになった。
【0114】
(9-B)ex vivo MLR
本試験では、ResponderマウスにdA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体を尾静脈注射(i.v.)により投与して4時間経過後に脾臓細胞を採取し、Stimulatorマウス脾臓細胞とのMLRを行って、生体内におけるsiRNAの挙動を確認した。細胞の調製方法は以下の通りである。
【0115】
マウス(stimulator:Balb/c(雄8週齢;3匹)、responder:C57BL/6(雄8週齢;3匹))から脾臓細胞を回収した。Responderマウスには、脾臓細胞を回収する4時間前にsiRNA/SPG複合体を静脈注射で投与した。溶血剤(塩化アンモニウム、カリウム)を添加して赤血球を溶解させた(溶血剤 5 ml, RPMI 5ml)。10% FBS(DSファーマバイオメディカル社)、RPMI 5mlで細胞を懸濁し(4×10
5/ウェル)、stimulator側の脾臓細胞にマイトマイシンC(MMC)処理を行った(最終10
7細胞に対して25μgのMMC添加)。MLR条件を下表13に示す。
【0116】
【表13】
【0117】
結果を、
図4に示す。
図4には、コントロールのアロジェニック反応の数値からシンジェニック反応の数値を差し引いた値(splenocyte Activity)(試料6の細胞数から試料2の細胞数を引いた値)を100%としてプロットされており、アロジェニック反応によってリンパ球が増殖する反応をdA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体の投与でどれほど抑制できたかを示している。この結果より、dA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体は、生体内投与においてリンパ球の活性化を有意に抑制することが明らかとなった。
【0118】
実施例10:Dectin-1発現細胞に特異的な細胞内への取り込み
本試験では、Alexa647標識dA40(s)-siLuc(21nt)/SPG複合体について、Dectin-1発現細胞への特異的な取り込みについて評価した。試験方法は次の通りである。
【0119】
4 well chamber に collagen Type I-Pをコーティングした。次いで、HEK293T細胞及びdHEK細胞1×10
5個/mlの濃度でを 500μl添加し、終夜培養(37℃、5%CO
2)した。その後、培地交換を行い、10nM及び100nMのAlexa647標識dA40(s)-siLuc(21nt)/SPG複合体を含む培地を添加し、2〜8時間インキュベート37℃、5% CO
2)した。次いで、PBSで2回洗浄し、10%平衡化ホルムアルデヒドで固定した。固定した細胞について、レーザー共焦点顕微鏡(Carl Zeiss LSM710 NLO System)で細胞を観察し、更に、フローサイトメトリーにて細胞が呈するAlexa647の蛍光強度を測定した。更に、固定した細胞について、FITC標識抗体を用いて細胞表面に発現しているDectin-1量をフローサイトメトリーにて測定した。
【0120】
なお、本試験に使用したHEK293T細胞は、Dectin-1未発現のヒト胎児腎臓上皮細胞であり、dHEK細胞は、HEK293T細胞にDectin-1を発現するように形質転換が行われた細胞である。
【0121】
得られた結果を
図5及び6に示す。
図5には、Alexa647標識dA40(s)-siLuc(21nt)/SPG複合体で処理した細胞を観察した像を示し、
図6のAには、Alexa647標識dA40(s)-siLuc(21nt)で処理した細胞についてAlexa647の蛍光強度を測定した結果を示し、
図6のBには、Alexa647標識dA40(s)-siLuc(21nt)で処理した細胞についてFITCの蛍光強度を測定した結果を示す。この結果から、Dectin-1を発現しているdHEK細胞においてのみ、Alexa647標識dA40(s)-siLuc(21nt)/SPG複合体の取り込みが確認され、本発明の核酸多糖複合体は、Dectin-1発現細胞においてエンドサイトーシスにより取り込まれることが明らかとなった。また、dHEK細胞に発現しているDectin-1量は、dA40(s)-siLuc(21nt)/SPG複合体の取り込みに伴って減少しており、Dectin-1はdA40(s)-siLuc(21nt)/SPG複合体と共に細胞内に取り込まれることも明らかとなった。
【0122】
実施例11
(11-A)
本試験では、ResponderマウスにdA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体を尾静脈注射(i.v.)により投与して4時間経過後に脾臓細胞を採取し、Stimulatorマウス脾臓細胞とのMLRを行って、生体内におけるsiRNAの挙動を確認した。細胞の調製方法は以下の通りである。
【0123】
マウス(stimulator:Balb/c(雄8週齢;3匹)、responder:C57BL/6(雄8週齢;3匹))から脾臓細胞を回収した。Responderマウスには、脾臓細胞を回収する4時間前にsiRNA/SPG複合体を静脈注射で投与した。溶血剤(塩化アンモニウム、カリウム)を添加して赤血球を溶解させた(溶血剤 5 ml, RPMI 5ml)。10% FBS(DSファーマバイオメディカル社)、RPMI 5mlで細胞を懸濁し(4×10
5/ウェル)、stimulator側の脾臓細胞にマイトマイシンC(MMC)処理を行った(最終10
7細胞に対して25μgのMMC添加)。MLR条件を表14に示す。
【0124】
【表14】
【0125】
得られた結果を
図7に示す。
図7には、コントロールのアロジェニック反応の数値からシンジェニック反応の数値を差し引いた値(splenocyte Activity)(試料6の細胞数から試料2の細胞数を引いた値)を100%としてプロットされており、アロジェニック反応によってリンパ球が増殖する反応をdA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体の投与でどれほど抑制できたかを示している。この結果から、dA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体は、生体内投与においてリンパ球の活性化を有意に抑制することが明らかとなった。
【0126】
(11-B)
本試験では、ResponderマウスおよびStimulatorマウスの双方に、dA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体を尾静脈注射(i.v.)により投与して12時間経過後に脾臓細胞を採取し、Stimulatorマウス脾臓細胞とのMLRを行って、生体内におけるsiRNAの挙動を確認した。細胞の調製方法は以下の通りである。
【0127】
マウス(stimulator:Balb/c(雄8週齢;3匹)、responder:C57BL/6(雄8週齢;3匹))から脾臓細胞を回収した。StimulatorマウスとResponderマウスの双方に、脾臓細胞を回収する12時間前にsiRNA/SPG複合体を静脈注射で投与した。溶血剤(塩化アンモニウム、カリウム)を添加して赤血球を溶解させた(溶血剤 5 ml, RPMI 5ml)。10% FBS(DSファーマバイオメディカル社)、RPMI 5mlで細胞を懸濁し(4×10
5/ウェル)、stimulator側の脾臓細胞にマイトマイシンC(MMC)処理を行った(最終10
7細胞に対して25μgのMMC添加)。MLR条件を表15に示す。
【0128】
【表15】
【0129】
得られた結果を、
図8に示す。
図8は、コントロールのアロジェニック反応の数値からシンジェニック反応の数値を差し引いた値(splenocyte Activity)(試料6の細胞数から試料2の細胞数を引いた値)を100%としてプロットされており、アロジェニック反応によってリンパ球が増殖する反応をdA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体の投与でどれほど抑制できたかを示している。この結果からも、上記(9-A)の結果と同様に、dA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体は、生体内投与においてリンパ球の活性化を有意に抑制することが確認された。
【0130】
実施例12
Balb/cマウスから脾臓細胞を回収した。24穴プレート上に5×10
6/wellで細胞を播種して1 ml/wellになるように10容量%FBSを含むRPMI培地を加えた。そのプレートに、ビオチンを側鎖修飾したSPGを用いたdA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体をsiRNA量として300ng/well、又はsiMockとしてのPBSを含むコントールサンプルを添加し、CO
2インキュベーター(37℃)で一晩培養した。培地を吸引除去後、100 mM NaCl及び1 mM EDTAを含む10 mM Tris-HCl(pH7.5)に再懸濁し、ソニケーターで細胞を15秒間破砕し、50 mlのstreptavidin labeled magnetic particles (Roche Applied Science社、cat# 11641778001)を加え、室温で撹拌しながら15分間反応した。遠心分離を行い沈殿を回収し、得られた沈殿を100μlのSDS(ドデシル酸ナトリウム)バッファーに再懸濁し、SDS-ポリアクリルアミド電気泳動に供して、ニトロセルロースメンブレンに転写した。次いで、マウス抗TRBP2抗体及びペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG抗体でTRBP2を検出した。
【0131】
その結果、SPGと複合体を形成しているdA40(s)-siCD40(21nt)は、TRBP2と複合体を形成していることが分かった。
【0132】
実施例13
異所心移植モデルマウスを利用し、心臓同種移植におけるdA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体の効果を試験した。
【0133】
具体的には、dA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体2μg/headをDonorマウス(C57/BL10、male)及びRecipientマウス(CBA、male)に尾静脈より投与した。投与スケジュールは、次の通りである。donorマウスには心臓摘出の3日前(day -3)及び1日前(day -1)に一回当たり2μg/headで投与し、Recipient マウスには移植の3日前(day -3)及び1日前(day -1)に同じく一回当たり2mg/headで投与した。day 0に、Donorマウスから心臓を摘出し、Recipientマウスに外科的に異所移植した。移植後、Recipientマウスに対して、更に心臓移植の1日後(day 1)、3日後(day 3)、5日後(day 5)、及び7日後(day 7)にdA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体を一回当たり2μg/head ずつ、尾静脈より投与した。投与終了後、経時的にRecipientマウスの移植心臓の拍動を観察した。また、比較として、dA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体の代わりに、dA40(s)-siGAPDH(Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)(21nt)/SPG複合体を同量投与した場合、及びdA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体を投与しなかった場合についても、上記と同様に試験を行った。
【0134】
得られた結果を
図9に示す。
図9中、「siCD40/SPG複合体」はdA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体を示し、「siGAPDH/SPG複合体」はdA40(s)-siGAPDH(21nt)/SPG複合体を示す。
図9から明らかなように、dA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体を投与した場合には、移植後全てのRecipientマウスにおいて移植心臓が長期に亘り正常に拍動しており、移植90日後でも全てのRecipientマウスの生存が確認された。一方、dA40(s)-siGAPDH(21nt)/SPG複合体を投与した場合、または何も投与しなかった場合には、移植後10日でRecipientマウスの生存率が0%になった。
【0135】
更に、dA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体 2μg/headをdonorマウス(C57/BL10、male)のみ、またはRecipientマウス(CBA、male)のみに投与し、移植心臓の拍動を観察した結果、Donorのみ、またはRecipientのみに投与した場合であっても、移植心臓の拍動が長時間にわたって観察された。
【0136】
本結果から、 dA40(s)-siCD40(21nt)が、効果的に抗原提示細胞に導入されておりCD40の発現を抑制し、抗原特異的なT細胞の活性化を抑制したと考えられる。
【0137】
なお、実施例1〜13において使用したsiLuc及びsiCD40のヌクレオチド配列は、下表16に示される通りである。
【0138】
【表16】