特許第6124811号(P6124811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6124811
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/00 20060101AFI20170424BHJP
【FI】
   F16H61/00
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-6773(P2014-6773)
(22)【出願日】2014年1月17日
(65)【公開番号】特開2015-135155(P2015-135155A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2016年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082337
【弁理士】
【氏名又は名称】近島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】白坂 治樹
(72)【発明者】
【氏名】岩鶴 優児
(72)【発明者】
【氏名】丸山 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山本 晃象
(72)【発明者】
【氏名】中田 博文
【審査官】 瀬川 裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−267505(JP,A)
【文献】 特開2013−241992(JP,A)
【文献】 特開2012−172766(JP,A)
【文献】 米国特許第6350108(US,B1)
【文献】 特開2004−183714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝動装置を収納するケースと、
前記ケース内に配置され、内燃エンジンにより駆動される機械式オイルポンプと、
前記ケース内に配置され、電動により駆動される電動オイルポンプと、
前記ケースに対して接合されて取付けられ、前記機械式オイルポンプ及び前記電動オイルポンプにより発生する油圧に基づき前記伝動装置を油圧制御する油圧制御装置と、
前記ケースの内部に配置されたストレーナと、
前記機械式オイルポンプが吐出する油圧を前記油圧制御装置に供給する第1吐出油路と、
前記電動オイルポンプが吐出する油圧を前記油圧制御装置に供給する第2吐出油路と、
前記油圧制御装置で余剰した油圧を前記機械式オイルポンプ及び前記電動オイルポンプに戻すサクション油路と、を備え、
前記サクション油路は、前記油圧制御装置から前記ケースの内部まで延びる共通油路と、前記共通油路から前記機械式オイルポンプと前記電動オイルポンプとに分岐させる分岐部と、前記分岐部から前記機械式オイルポンプまでの第1油路と、前記分岐部から前記電動オイルポンプまでの第2油路と、からなり、前記共通油路、前記分岐部、前記第1油路、前記第2油路は、前記ケースに形成され、
前記機械式オイルポンプは、油圧を発生する油圧発生部と、前記油圧発生部を内包すると共に、油溜りから前記ストレーナを介して油を吸入する吸入口、前記第1吐出油路に連通する吐出口、及び前記サクション油路の第1油路に連通するサクション接続口、が形成されたポンプボディと、を有し、
前記ポンプボディの内部に、前記吸入口と前記サクション接続口とを合流させる合流部を有する、
ことを特徴とする車両用駆動装置。
【請求項2】
前記ケースと前記油圧制御装置との接合部分にあって、前記サクション油路の共通油路を前記第1吐出油路及び前記第2吐出油路よりも中心側を通過するように配置した、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記サクション油路の分岐部を挟んで、前記伝動装置の軸方向の一方側に前記機械式オイルポンプを配置し、前記軸方向の他方側に電動オイルポンプを配置した、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記機械式オイルポンプの吸入口及びサクション接続口は、前記油圧発生部に対して前記サクション油路の分岐部の側に配置された、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記ケースと前記油圧制御装置との接合部分にあって、前記第1吐出油路及び前記第2吐出油路を外縁側を通過するように配置した、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばアイドルストップ機能付き車両に搭載される自動変速機などの車両用駆動装置に係り、特に内燃エンジンにより駆動される機械式オイルポンプと電動により駆動される電動オイルポンプとを備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の燃費向上等を図るために、停車時などに内燃エンジンを停止するアイドルストップ機能付き車両の開発が進められている。このようなアイドルストップ機能付きの車両に搭載される自動変速機にあっては、内燃エンジンを始動して車両を発進させる際に、クラッチやブレーキ等の係合圧の供給が遅れないように、内燃エンジンにより駆動される機械式オイルポンプとは独立して電動で駆動する電動オイルポンプを設け、内燃エンジンの停止中にあっても、電動オイルポンプから油圧供給を行うように構成している。
【0003】
一方で、自動変速機は、従来の一般的な車両、即ちアイドルストップ機能を有していない車両に搭載されているものが主流であったため、電動オイルポンプを搭載することを前提として設計されてなく、このような自動変速機をアイドルストップ機能付き車両に搭載する場合には、電動オイルポンプを自動変速機のミッションケースに外付けするものが主流であった(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−236581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、車両等の開発にあっては、アイドルストップ機能を前提とした開発が主流になりつつあるので、上述したようなアイドルストップ機能付き車両に搭載する自動変速機にあっても、電動オイルポンプを搭載することを前提として設計する方が好ましい。そのため、自動変速機のミッションケースの内部に電動オイルポンプを内蔵するように設計することが考えられるが、電動オイルポンプをミッションケースに内蔵すると、電動オイルポンプ自体のスペースだけでなく、電動オイルポンプに連通する各種油路のスペースもミッションケース内部に設ける必要があるため、自動変速機の肥大化を招く虞がある。
【0006】
そこで本発明は、機械式オイルポンプ及び電動オイルポンプをケース内に配置するものでありながら、油路を適宜に配策することによって、肥大化の防止を図ることが可能な車両用駆動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両用駆動装置(1)は(例えば図1乃至図10参照)、伝動装置(2)を収納するケース(6)と、
前記ケース(6)内に配置され、内燃エンジンにより駆動される機械式オイルポンプ(60)と、
前記ケース(6)内に配置され、電動により駆動される電動オイルポンプ(70)と、
前記ケース(6)に対して接合されて取付けられ、前記機械式オイルポンプ(60)及び前記電動オイルポンプ(70)により発生する油圧に基づき前記伝動装置(2)を油圧制御する油圧制御装置(90)と、
前記ケース(6)の内部に配置されたストレーナ(80)と、
前記機械式オイルポンプ(60)が吐出する油圧を前記油圧制御装置(90)に供給する第1吐出油路(c1,c2)と、
前記電動オイルポンプ(70)が吐出する油圧を前記油圧制御装置(90)に供給する第2吐出油路(d1)と、
前記油圧制御装置(90)で余剰した油圧を前記機械式オイルポンプ(60)及び前記電動オイルポンプ(70)に戻すサクション油路(b1,b2,b3)と、を備え、
前記サクション油路は、前記油圧制御装置(90)から前記ケース(6)の内部まで延びる共通油路(b1)と、前記共通油路(b1)から前記機械式オイルポンプ(60)と前記電動オイルポンプ(70)とに分岐させる分岐部(B)と、前記分岐部(B)から前記機械式オイルポンプ(60)までの第1油路(b2)と、前記分岐部(B)から前記電動オイルポンプ(70)までの第2油路(b3)と、からなり、前記共通油路(b1)、前記分岐部(B)、前記第1油路(b2)、前記第2油路(b3)は、前記ケース(6)に形成され、
前記機械式オイルポンプ(60)は、油圧を発生する油圧発生部(63)と、前記油圧発生部(63)を内包すると共に、油溜りから前記ストレーナ(80)を介して油を吸入する吸入口(60a)、前記第1吐出油路(c1,c2)に連通する吐出口(60b)、及び前記サクション油路の第1油路(b2)に連通するサクション接続口(60c)、が形成されたポンプボディ(60B)と、を有し、
前記ポンプボディ(60B)の内部に、前記吸入口(60a)と前記サクション接続口(60c)とを合流させる合流部(C)を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る車両用駆動装置(1)は(例えば図6参照)、前記ケース(6)と前記油圧制御装置(90)との接合部分(H)にあって、前記サクション油路の共通油路(b1)を前記第1吐出油路(c1,c2)及び前記第2吐出油路(d1)よりも中心側を通過するように配置したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る車両用駆動装置(1)は(例えば図2乃至図7参照)、前記サクション油路の分岐部(B)を挟んで、前記伝動装置(2)の軸方向の一方側に前記機械式オイルポンプ(60)を配置し、前記軸方向の他方側に電動オイルポンプ(70)を配置したことを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明に係る車両用駆動装置(1)は(例えば図7乃至図9参照)、前記機械式オイルポンプ(60)の吸入口(60a)及びサクション接続口(60c)は、前記油圧発生部(63)に対して前記サクション油路の分岐部(B)の側に配置されたことを特徴とする。
そして、本発明に係る車両用駆動装置(1)は(例えば図6参照)、前記ケース(6)と前記油圧制御装置(90)との接合部分(H)にあって、前記第1吐出油路(c1,c2)及び前記第2吐出油路(d1)を外縁側を通過するように配置したことを特徴とする。
【0011】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る本発明によると、サクション油路の共通油路、分岐部、第1油路、第2油路がケースに形成されており、かつ機械式オイルポンプのポンプボディの内部に、ストレーナを介して油を吸入する吸入口とサクション油路の第1油路に連通するサクション接続口とを合流させる合流部を有しているので、機械式オイルポンプのサクション油路と電動オイルポンプの吸入油路との一部を共通化することができ、その分、自動変速機の肥大化の防止を図ることができる。また、機械式オイルポンプのポンプボディの内部に、吸入口とサクション接続口とを合流させる合流部を有しているので、例えば機械式オイルポンプにストレーナから油を導く吸入用の油路をサクション油路まで迂回させて接続する場合に比して、ケースの内部の油路配策が良好となって、自動変速機の肥大化の防止を図ることができる。
【0013】
請求項2に係る本発明によると、ケースと油圧制御装置との接合部分にあって、サクション油路の共通油路を第1吐出油路及び第2吐出油路よりも中心側を通過するように配置したので、圧力が低いサクション油路を中心側に配置することができる。これにより、シール性が低くても足りるサクション油路を中心側に配置できると共に、サクション油路を接合部分の外縁側に配置しないことで、接合部分の外縁側に配置する油路の本数を減らすことができて、ケースと油圧制御装置との接合部分の面積を減らすことができ、それによって、自動変速機の肥大化の防止を図ることができる。
【0014】
また、サクション油路の共通油路を接合部分の中心側に配置することで、サクション油路の分岐部をケース内における中心付近に配置できるので、サクション油路の分岐部から機械式オイルポンプまでの第1油路と、該分岐部から電動オイルポンプまでの第2油路とが長くなることを防止でき、ケースの内部の油路配策が良好となって、自動変速機の肥大化の防止を図ることができる。
【0015】
請求項3に係る本発明によると、サクション油路の分岐部を挟んで、伝動装置の軸方向の一方側に機械式オイルポンプを配置し、軸方向の他方側に電動オイルポンプを配置したので、サクション油路の分岐部から機械式オイルポンプまでの第1油路と、該分岐部から電動オイルポンプまでの第2油路とが長くなることを防止でき、ケースの内部の油路配策が良好となって、自動変速機の肥大化の防止を図ることができる。
【0016】
請求項4に係る本発明によると、機械式オイルポンプの吸入口及びサクション接続口が、油圧発生部に対してサクション油路の分岐部の側に配置されているので、ポンプボディの内部の油路配策が簡易化でき、機械式オイルポンプのポンプボディをコンパクト化できるので、それによって、自動変速機の肥大化の防止を図ることができる。
請求項5に係る本発明によると、ケースと油圧制御装置との接合部分にあって、第1吐出油路及び第2吐出油路を外縁側を通過するように配置したので、つまり圧力が高い第1吐出油路及び第2吐出油路を接合部分の外縁側に配置できる。これにより、ケースに対して油圧制御装置を外縁側で締結した際に、締結力によりシール性が高まる位置に第1吐出油路及び第2吐出油路を配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を適用し得る自動変速機のスケルトン図。
図2】本自動変速機のトルクコンバータを取外した状態を示す模式正面図。
図3図2の機械式オイルポンプを取外した状態を示す模式正面図。
図4】本自動変速機のリヤカバーを取外した状態を示す模式背面図。
図5図4の電動オイルポンプを取外した状態を示す模式背面図。
図6】本自動変速機の油圧制御装置を取外した状態を示す模式側面図。
図7図6のX−X矢視断面図。
図8】機械式オイルポンプを示す模式図。
図9】機械式オイルポンプを示す模式断面図。
図10】本自動変速機の油路構造を示す模式図。
図11】従来の自動変速機の油路構造を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施の形態を、図に沿って説明する。まず、本発明を適用し得る自動変速機(車両用駆動装置)1の概略構成を図1に沿って説明する。
【0019】
自動変速機1は、第1軸AX1〜第4軸AX4までの互いに平行な4本軸状に構成されており、内燃エンジンの出力軸(クランクシャフト)と同軸である第1軸AX1上には、該出力軸に連結される自動変速機1の入力軸3、ロックアップクラッチ付のトルクコンバータ4、変速機構(伝動装置)2の入力軸7、前後進切換え装置としてのプラネタリギヤDP、クラッチC、ブレーキB、ベルト式無段変速装置10のプライマリプーリ11が配置されている。
【0020】
また、第2軸AX2上には、ベルト式無段変速装置10のセカンダリプーリ13が配置されており、第3軸AX3上には、カウンタシャフト部40が配置され、さらに、第4軸AX4上には、ディファレンシャル装置50、左右ドライブシャフト52l,52rが配置されている。
【0021】
上記入力軸3は、トルクコンバータ4のポンプインペラ4aに接続されている。トルクコンバータ4は、大まかに、ポンプインペラ4aと、該ポンプインペラ4aに対向配置され、変速機構2の入力軸7に接続されたタービンランナ4bと、それらの間に配置され、ミッションケース(ケース)6に支持されたワンウェイクラッチに接続されているステータ4cと、係合することで上記入力軸3と上記入力軸7と直結状態にするロックアップクラッチ5と、を有しており、内部にオイルが満たされて油密状となるように構成されている。また、ポンプインペラ4aは、チェーン61及び駆動軸62を介して詳しくは後述する機械式オイルポンプ60に接続されている。
【0022】
上記入力軸7は、プラネタリギヤDPのサンギヤSに接続されている。該プラネタリギヤDPは、サンギヤS、リングギヤR、該サンギヤSに噛合するピニオンP1及び該リングギヤRに噛合するピニオンP2を回転自在に支持するキャリヤCRを有している、いわゆるダブルピニオンプラネタリギヤで構成されている。このうちのリングギヤRは、ブレーキBによりミッションケース6に対して回転を係止自在となるように構成されている。また、サンギヤSは、入力軸7に直接的に連結され、キャリヤCRは、クラッチCを介して入力軸7に接続自在に構成されている。
【0023】
一方、上記ベルト式無段変速装置10は、上記キャリヤCRに接続された中心軸8と一体回転するプライマリプーリ11と、セカンダリプーリ13と、該プライマリプーリ11及び該セカンダリプーリ13に巻き掛けられた無端状のベルト15とを備えて構成されている。プライマリプーリ11は、それぞれが対向する円錐状に形成された壁面を有し、上記中心軸8に対して軸方向移動不能に固定された固定シーブ11aと、該中心軸8に対して軸方向移動可能に支持された可動シーブ11bとを有しており、これら固定シーブ11aと可動シーブ11bとによって形成された断面V字状となる溝部によりベルト15を挟持している。同様に、セカンダリプーリ13は、それぞれが対向する円錐状に形成された壁面を有し、中心軸16に対して軸方向移動不能に固定された固定シーブ13aと、該中心軸16に対して軸方向移動可能に支持された可動シーブ13bとを有しており、これら固定シーブ13aと可動シーブ13bとによって形成された断面V字状となる溝部によりベルト15を挟持している。これらプライマリプーリ11の固定シーブ11aとセカンダリプーリ13の固定シーブ13aは、ベルト15に対して軸方向反対側となるように配置されている。
【0024】
また、プライマリプーリ11の可動シーブ11bの背面側には、油圧サーボ12が配置されており、セカンダリプーリ13の可動シーブ13bの背面側には、油圧サーボ14が配置されている。そして、これら油圧サーボ12,14は、作動油圧が供給されることにより負荷トルクに対応するベルト挟圧力を発生させると共に、変速比を変更又は固定するための挟圧力を発生させるように構成されている。
【0025】
上記中心軸16の軸方向トルクコンバータ4側の端部にはカウンタギヤ33が固定されており、カウンタシャフト部40のドライブギヤ41に噛合されている。カウンタシャフト部40は、カウンタシャフト42と、該カウンタシャフト42に固定されて連結されたドライブギヤ41と、該カウンタシャフト42に固定されて連結されたドリブンギヤ43と、を有して構成されており、ドリブンギヤ43は、ディファレンシャル装置50のデフリングギヤ51に噛合されている。
【0026】
上記ディファレンシャル装置50は、デフリングギヤ51の回転をそれぞれ左右ドライブシャフト52l,52rにそれらの差回転を吸収しつつ伝達するように構成されており、左右ドライブシャフト52l,52rは、それぞれ図示を省略した左右車輪に連結されている。なお、デフリングギヤ51がドリブンギヤ43に噛合し、ドライブギヤ41がカウンタギヤ33に噛合していることから、中心軸16、カウンタシャフト部40のカウンタシャフト42、ディファレンシャル装置50は、左右ドライブシャフト52l,52rを介して車輪と駆動連結されており、つまり常に車輪に連動していることになる。
【0027】
続いて、自動変速機1の動作について説明する。例えば自動変速機1を搭載した車両が前進方向に前進走行する際は、ブレーキBが解放されると共に、クラッチCが係合される。これにより、トルクコンバータ4或いはロックアップクラッチ5を介して入力軸7に入力された内燃エンジンからの入力回転は、直結状態となったプラネタリギヤDPを介してプライマリプーリ11に伝達され、プライマリプーリ11からベルト15を介してセカンダリプーリ13に無段変速されつつ無段変速回転として伝達され、さらに、中心軸16からカウンタギヤ33に伝達される。カウンタギヤ33に伝達された無段変速回転は、カウンタシャフト部40のドライブギヤ41に伝達され、ドリブンギヤ43によって減速されつつディファレンシャル装置50のデフリングギヤ51に伝達され、これにより、無段変速モードとしての可変変速比の正転回転が左右ドライブシャフト52l,52rを介して車輪に出力される。
【0028】
一方、例えば自動変速機1を搭載した車両が後進方向に後進走行する際は、クラッチCが解放されると共に、ブレーキBが係止される。すると、トルクコンバータ4或いはロックアップクラッチ5を介して入力軸7に入力された内燃エンジンからの入力回転は、プラネタリギヤDPにおいてブレーキBの係合により、サンギヤSの入力回転が固定されたリングギヤRによって反転されてキャリヤCRから逆転回転として出力されるため、その逆転回転がプライマリプーリ11に伝達され、プライマリプーリ11からベルト15を介してセカンダリプーリ13に無段変速されつつ逆転された無段変速回転として伝達され、さらに、中心軸16からカウンタギヤ33に伝達される。カウンタギヤ33に伝達された逆転の無段変速回転は、カウンタシャフト部40のドライブギヤ41に伝達され、ドリブンギヤ43によって減速されつつディファレンシャル装置50のデフリングギヤ51に伝達され、これにより、後進モードとしての可変変速比の逆転回転が左右ドライブシャフト52l,52rを介して車輪に出力される。
【0029】
ついで、本自動変速機1における機械式オイルポンプ60、電動オイルポンプ70、及び各油路の配置について説明する。まず、従来の自動変速機における配置構造について図11に沿って説明する。
【0030】
従来の自動変速機にあっては、図11に示すように、ミッションケース106の内部に内燃エンジンにより駆動される機械式オイルポンプ160が配置されており、ミッションケース106の側面に電動により駆動される電動オイルポンプ170が外付けで取り付けられ、また、ミッションケース106の下方側に油圧制御装置(V/B)190が接合されて取付けられている。さらに、油圧制御装置190の下方には不図示のオイルパンに収納されたストレーナ180が取り付けられている。
【0031】
このような従来の自動変速機にあっては、ストレーナ180の吸入油路a11から油を吸入し、該吸入油路a11で吸入した油は、ミッションケース106の内部を通って、機械式オイルポンプ160の吸入油路a12と電動オイルポンプ170の吸入油路a13に送られる。一方、例えばプライマリレギュレータバルブやセカンダリレギュレータバルブの余剰圧を排出するサクション油路は、油路b11から油圧制御装置190の内部で油路b12と油路b13とに分岐され、それぞれ機械式オイルポンプ160の吸入油路a12と電動オイルポンプ170の吸入油路a13とに合流される。
【0032】
内燃エンジンが駆動中であって機械式オイルポンプ160が駆動されている際は、吸入油路a12から余剰圧を含めた形で油を吸入し、該機械式オイルポンプ160で油圧を発生させた後、吐出油路c11を介して油圧制御装置190に油圧を供給する。また、例えば内燃エンジンが停止中であって機械式オイルポンプ160が停止され、電動オイルポンプ170が駆動されている際は、吸入油路a13から余剰圧を含めた形で油を吸入し、該電動オイルポンプ170で油圧を発生させた後、吐出油路d11を介して油圧制御装置190に油圧を供給する。
【0033】
このような従来の自動変速機では、ストレーナ180から吸入した油を、油圧制御装置190を通過させるため、油圧制御装置190から機械式オイルポンプ160及び電動オイルポンプ170まで導くための2本の吸入油路a12,a13が配置され、さらに、サクション油路として油路b11〜b13が油圧制御装置190内部に配置される。このような構造で、電動オイルポンプ170をミッションケース106の内部に収納しようとすると、吸入油路a13と吐出油路d11とが油圧制御装置190とミッションケース106との接合部分を通過することになり、該接合部分の面積が大きくなる。また、油圧制御装置190内部のサクション油路の配策も複雑となり、油圧制御装置190のコンパクト化の妨げとなる。
【0034】
続いて、本実施の形態に係る自動変速機1の配置構造について図10に沿って説明する。本自動変速機1にあっては、図10に示すように、ストレーナ80をミッションケース6の内部に配置することで、機械式オイルポンプ60にストレーナ80からの油を、吸入油路a1を介して直接的に供給する。また、例えばプライマリレギュレータバルブやセカンダリレギュレータバルブからの余剰圧(余剰した油圧)を機械式オイルポンプ60及び電動オイルポンプ70に戻すサクション油路は、共通油路b1によって油圧制御装置90からミッションケース6の内部まで導かれ、分岐部Bで分岐して、一方は機械式オイルポンプ60に第1油路b2により導かれ、他方は電動オイルポンプ70に第2油路b3により導かれる。第1油路b2は、吸入油路a1に機械式オイルポンプ60のポンプボディ60B(図9参照)の内部の合流部Cで合流し、ストレーナ80で吸入された油は余剰圧と相俟って機械式オイルポンプ60の吸入用の油として用いられる。また、吸入油路a1は、第1油路b2に合流しているため、ストレーナ80で吸入された油は余剰圧と相俟って第2油路b3を介して電動オイルポンプ70の吸入用の油として用いられる。
【0035】
内燃エンジンが駆動中であって機械式オイルポンプ60が駆動されている際は、吸入油路a1及び第1油路b2から余剰圧を含めた形で油を吸入し、該機械式オイルポンプ60で油圧を発生させた後、第1吐出油路c1,c2を介して油圧制御装置90に油圧を供給する。また、例えば内燃エンジンが停止中であって機械式オイルポンプ60が停止され、電動オイルポンプ70が駆動されている際は、吸入油路a1、第1油路b1、及び第2油路b3から油を吸入し、該電動オイルポンプ70で油圧を発生させた後、第2吐出油路d1を介して油圧制御装置90に油圧を供給する。
【0036】
ついで、本自動変速機1の詳細な構造を図2乃至図9に沿って説明する。図2は本自動変速機1のトルクコンバータ4やそれを収納するハウジングケース(不図示)を取外した状態を示す模式正面図(内燃エンジン側から軸方向視の図)である。図2に示すように、本自動変速機1は、ミッションケース6の内部にあって、上述した変速機構2の第1軸AX1〜第4軸AX4が軸方向視で略コの字状に配列されている。第1軸AX1の下方側には、チェーン61にスプロケットを介して連結される駆動軸62を有する機械式オイルポンプ60が配置されている。また、ミッションケース6の内部の下方部分は、封入された油の油溜りが形成され、機械式オイルポンプ60と第4軸AX4との間にあって油溜りに浸かる形でストレーナ80が配置されている。一方、ミッションケース6の車両前方側となる側面には、接合部分Hで油圧制御装置90がミッションケース6に対して接合されて取付けられている。なお、本自動変速機1では、油圧制御装置90がミッションケース6における車両前方側の側面に接合されているが、これに限らず、油圧制御装置90は、ミッションケース6の車両後方側の側面に接合されていてもよく、特に油溜りがミッションケース6の内部に形成される構造にあっては、油圧制御装置90は、ミッションケース6の下方以外の部位に取付けられていればよい。
【0037】
図3図2に示す状態から機械式オイルポンプ60を取外した状態を示す模式正面図である。図3に示すように、ストレーナ80からは、吸入油路a1が機械式オイルポンプ60に直接的に接続される。また、ミッションケース6には、サクション油路の第1油路b2の接続部分が機械式オイルポンプ60に向けて(軸方向の内燃エンジン側に向かって)形成されていると共に、第1吐出油路c1,c2の接続部分が機械式オイルポンプ60に向けて(軸方向の内燃エンジン側に向かって)形成されている。
【0038】
図8は機械式オイルポンプ60を示す模式図であり、図9は機械式オイルポンプを示す模式断面図である。図8及び図9に示すように、機械式オイルポンプ60は、油圧発生部としての内接ギヤ式ポンプ63を内包するポンプボディ60Bを有しており、ポンプボディ60Bの一方側の端部には、ストレーナ80からの吸入油路a1が接続される吸入口60aが形成されている。また、ポンプボディ60Bの他方側には、機械式オイルポンプ60が自動変速機1に搭載された際に該自動変速機1の中心側に向くように(軸方向の内燃エンジンとは反対側に向くように)、サクション油路の第1油路b2に接続されるサクション接続口60cと、第1吐出油路c1,c2にそれぞれ接続される吐出口60b,60bが形成されている。
【0039】
機械式オイルポンプ60の吸入口60a及びサクション接続口60cは、内接ギヤ式ポンプ63に対してサクション油路の分岐部Bの側に配置されており、ポンプボディ60Bの内部に、吸入油路a1とサクション油路の第1油路b2とを合流される合流部Cが形成されている。即ち、図9に示すように、吸入口60a及びサクション接続口60cが内接ギヤ式ポンプ63の一方側に集約されているので、吸入油路a1やサクション油路の第1油路b2を迂回させることなく、吸入油路a1及びサクション油路の第1油路b2が短距離で接続されている。また、内接ギヤ式ポンプ63に対して合流部Cとは反対側は、該内接ギヤ式ポンプ63から第1吐出油路c1,c2が延びており、かつ吐出口60bは、サクション接続口60cと同方向、つまり自動変速機1の中心側に向かって形成されている。これにより、ミッションケース6の内部に形成する第1吐出油路c1,c2の短縮化が図られている。
【0040】
図4は本自動変速機1のリヤカバー(不図示)を取外した状態を示す模式背面図(内燃エンジンとは反対側から軸方向視の図)である。図4に示すように、ミッションケース6の内部にあって、変速機構2の第1軸AX1の下方側、つまり機械式オイルポンプ60と軸方向に対向する位置に、電動オイルポンプ70が配置されている。なお、電動オイルポンプ70は、油圧発生部として例えばベーンポンプを有している。
【0041】
図5図4に示す状態から電動オイルポンプ70を取外した状態を示す模式背面図である。図5に示すように、ミッションケース6には、サクション油路の第2油路b3の接続部分が電動オイルポンプ70に向けて(軸方向の内燃エンジンとは反対側に向けて)形成されていると共に、第2吐出油路d1の接続部分が電動オイルポンプ70に向けて形成されている。
【0042】
図6は本自動変速機1の油圧制御装置90を取外した状態を示す側面図(軸方向に対して直交する方向から視た図)である。図6に示すように、ミッションケース6は、油圧制御装置90が接合される接合部分Hにおいて、該油圧制御装置90に向けてサクション油路の共通油路b1、機械式オイルポンプ60からの第1吐出油路c1,c2、電動オイルポンプ70からの第2吐出油路d1、の各接続部分が開口されている。
【0043】
詳細には、接合部分Hは、外周部分が油圧制御装置90に密着してシールされる締結面6aと、該締結面6aよりも内側で接合部分Hの外縁側に配置され、複数のボルト穴6Bに螺合される不図示のボルトによって油圧制御装置90に接合されることで第1吐出油路c1,c2及び第2吐出油路d1を含む各種油路がシールされて形成される接合面6b,6bと、第1吐出油路c1,c2及び第2吐出油路d1が通過する接合面6b,6bよりも中心側に配置され、油圧制御装置90に接合されることでサクション油路の共通油路b1がシールされて形成される接合面6cと、有している。
【0044】
なお、接合面6b,6bを通過する油路は、第1吐出油路c1,c2及び第2吐出油路d1の他に、クラッチCの係合圧、ブレーキBの係合圧、プライマリプーリ11の可動シーブ11bを押圧する油圧サーボ12のプライマリシーブ圧、セカンダリプーリ13の可動シーブ13bを押圧する油圧サーボ14のセカンダリシーブ圧、などの比較的高圧となる油圧を導通する油路である。これらの油路は高圧となるが、接合面6b,6bが接合部分Hにおける締結面6aに近い外縁側に配置されており、複数のボルト穴6Bに螺合される不図示のボルトによって締結面6aで締結された締結力によって比較的強く密着されるので、シール性を確保することができる。一方、サクション油路の共通油路b1は、余剰圧が導通される程度の比較的低圧であるので、締結面6aよりも遠くて締結力が弱い中心側であっても、特にシール性に影響はない。
【0045】
図7図6のX−X矢視断面図である。図7に示すように、サクション油路の共通油路b1は、油圧制御装置90から1本の油路だけでミッションケース6の内部まで車両搭載状態で前後方向(軸方向と直交する方向)に延びるように形成されており、共通油路b1の先端部分に分岐部Bが形成され、該分岐部Bから変速機構2の軸方向に対し、第1油路b2と第2油路b3が延びるように形成されている。即ち、第1油路b2における開口部分に形成された接合面6dに機械式オイルポンプ60が接合されて配置され、第2油路b3における開口部分に形成された接合面6eに電動オイルポンプ70が接合されて配置される。このようにサクション油路の分岐部Bは、ミッションケース6の中心側、つまり機械式オイルポンプ60と電動オイルポンプ70との軸方向の間に配置されることになる。
【0046】
従って、サクション油路は、その分岐部Bがミッションケース6の内部に配置されているので、ミッションケース6の内部まで1本の共通油路b1で余剰圧が導かれ、分岐部Bから第1油路b2を介して機械式オイルポンプ60の吸入側に導かれ、また、分岐部Bから第2油路b3を介して電動オイルポンプ70の吸入側に導かれる。また、内燃エンジンの停止前にあって電動オイルポンプ70が駆動される際や内燃エンジンの停止中にあって電動オイルポンプ70が駆動されている際には、ストレーナ80から吸入された油は、機械式オイルポンプ60のポンプボディ60Bの内部を通り(図9参照)、第1油路b2、分岐部B、及び第2油路b3を通って電動オイルポンプ70の吸入側まで導かれる。
【0047】
以上説明したように本自動変速機1によると、サクション油路の共通油路b1、分岐部B、第1油路b2、第2油路b3がミッションケース6に形成されており、かつ機械式オイルポンプ60のポンプボディ60Bの内部に、ストレーナ80を介して油を吸入する吸入口60aとサクション油路の第1油路b2に連通するサクション接続口60cとを合流させる合流部Cを有しているので、機械式オイルポンプ60のサクション油路と電動オイルポンプ70の吸入油路との一部を、特に第1油路b2の部分で共通化することができ、その分、自動変速機1の肥大化の防止を図ることができる。また、機械式オイルポンプ60のポンプボディ60Bの内部に、吸入口60aとサクション接続口60cとを合流させる合流部Cを有しているので、例えば機械式オイルポンプ60にストレーナ80から油を導く吸入用の油路をサクション油路まで迂回させて接続する場合に比して、ミッションケース6の内部の油路配策が良好となって、自動変速機1の肥大化の防止を図ることができる。
【0048】
また、ミッションケース6と油圧制御装置90との接合部分Hにあって、第1吐出油路c1,c2及び第2吐出油路d1を外縁側を通過するように配置し、サクション油路の共通油路b1を第1吐出油路c1,c2及び第2吐出油路d1よりも中心側を通過するように配置したので、つまり圧力が高い第1吐出油路c1,c2及び第2吐出油路d1を接合部分Hの外縁側に配置でき、圧力が低いサクション油路の共通油路b1を中心側に配置することができる。これにより、ミッションケース6に対して油圧制御装置90を外縁側で締結した際に、締結力によりシール性が高まる位置に第1吐出油路c1,c2及び第2吐出油路d1を配置でき、シール性が低くても足りるサクション油路の共通油路b1を中心側に配置できると共に、サクション油路の共通油路b1を接合部分Hの外縁側に配置しないことで、接合部分Hの外縁側に配置する油路(接合面6bを通る油路)の本数を減らすことができて、ミッションケース6と油圧制御装置90との接合部分Hの面積を減らすことができ、それによって、自動変速機1の肥大化の防止を図ることができる。
【0049】
また、サクション油路の共通油路b1を接合部分Hの中心側に配置することで、サクション油路の分岐部Bをミッションケース6内における中心付近に配置できるので、サクション油路の分岐部Bから機械式オイルポンプ60までの第1油路b2と、該分岐部Bから電動オイルポンプ70までの第2油路b3とが長くなることを防止でき、ミッションケース6の内部の油路配策が良好となって、自動変速機1の肥大化の防止を図ることができる。
【0050】
さらに、サクション油路の分岐部Bを挟んで、変速機構2の軸方向の一方側に機械式オイルポンプ60を配置し、軸方向の他方側に電動オイルポンプ70を配置したので、サクション油路の分岐部Bから機械式オイルポンプ60までの第1油路b2と、該分岐部Bから電動オイルポンプ70までの第2油路b3とが長くなることを防止でき、ミッションケース6の内部の油路配策が良好となって、自動変速機1の肥大化の防止を図ることができる。
【0051】
さらに、機械式オイルポンプ60の吸入口60a及びサクション接続口60cが、内接ギヤ式ポンプ63に対してサクション油路の分岐部Bの側に配置されているので、ポンプボディ60Bの内部の油路配策が簡易化でき、機械式オイルポンプ60のポンプボディ60Bをコンパクト化できるので、それによって、自動変速機1の肥大化の防止を図ることができる。
【0052】
また、ストレーナ80から油圧制御装置90を介して油を吸入する場合は吸入用の油路が油圧制御装置90やミッションケース6と油圧制御装置90との接合部分Hを通過することになって油圧制御装置90や自動変速機1の肥大化を招く虞があるが、油圧制御装置90がミッションケース6の側面に取付けられ、ストレーナ80がミッションケース6の内部に配置されているので、ストレーナ80から機械式オイルポンプ60や電動オイルポンプ70に直接的に油を吸引させることができ、吸引用の油路が油圧制御装置90を通過しない分、油圧制御装置90の肥大化の防止を図れ、それによって、自動変速機1の肥大化の防止を図ることができる。
【0053】
なお、以上説明した本実施の形態においては、車両用駆動装置の一例として、ベルト式無段変速機構と減速ギヤ機構とを有するFF(フロントエンジン、フロントドライブ)タイプ(エンジン横置き型)の車両に用いて好適な自動変速機1を用いて説明したが、これに限らず、例えば多段式自動変速機、ベルト式やトロイダル式の無段変速機などでもよく、さらに、FFタイプに限らず、FR(フロントエンジン、リヤドライブ)タイプ(エンジン縦置き型)の車両に用いて好適な自動変速機であってもよく、つまりアイドルストップ機能付き車両に用いられ、電動オイルポンプを搭載する自動変速機であればどのようなものでも本発明を適用し得る。さらに、本発明は、機械式オイルポンプと電動オイルポンプとを備えているものであれば適用できるので、例えばハイブリッド駆動装置などの車両用駆動装置であってもよい。
【0054】
また、本実施の形態では、機械式オイルポンプとして内接ギヤ式ポンプを用いたもの、電動オイルポンプとしてベーンポンプを用いたものを一例としたが、これらに限らず、油圧発生部として、外接ギヤ式、クレセント型内接ギヤ式など、どのようなタイプのポンプであってもよい。
【0055】
また、本実施の形態では、機械式オイルポンプ60から油圧制御装置90に油圧を吐出する第1吐出油路c1,c2が2本で構成されているものを説明したが、勿論、1本だけで構成されているものであってもよい。
【0056】
また、本実施の形態では、図2乃至図9に示すような機械式オイルポンプ、電動オイルポンプ、各種油路の配置を具体例として説明したが、これに限らず、これらの配置構造は設計変更が可能なものであり、例えば機械式オイルポンプと電動オイルポンプとを軸方向に平行な位置に並設したり、機械式オイルポンプと電動オイルポンプとの軸方向位置を入れ替えたり、それらの向きを入れ替えたりすることも考えられる。
【0057】
また、本実施の形態では、ストレーナ80をミッションケース6の内部に配置するものを説明したが、ストレーナをミッションケースの外部、即ち、油圧制御装置をミッションケースの下方に取付けて、さらにその下方にオイルパンを取付けて、オイルパンの内部にストレーナを配置するような構造であっても、本発明を適用し得る。この場合は、ストレーナから油を吸入する吸入油路をサクション油路の共通油路に合流させて、1本の共通油路をミッションケース6の内部まで導くことが考えられる。
【符号の説明】
【0058】
1 車両用駆動装置(自動変速機)
2 伝動装置(変速機構)
6 ケース(ミッションケース)
60 機械式オイルポンプ
60B ポンプボディ
60a 吸入口
60b 吐出口
60c サクション接続口
63 油圧発生部(内接ギヤ式ポンプ)
70 電動オイルポンプ
80 ストレーナ
90 油圧制御装置
B 分岐部
C 合流部
H 接合部分
b1 サクション油路、共通油路
b2 サクション油路、第1油路
b3 サクション油路、第2油路
c1,c2 第1吐出油路
d1 第2吐出油路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11