(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パイロット圧制御手段は、前記弁装置を制御して前記準備液圧に対応する予め設定された液量の作動液を前記パイロット室に供給する請求項2に記載の制動制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来、上記のようなプリチャージを行う装置は、ある所定の制御により一律でプリチャージが行われていた。したがって、乗員の車室内の快適性については、向上の余地がある。本発明者は、これまで着目されていなかった上記課題を発見し、本発明を完成させた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、プリチャージ制御において、必要な応答性を確保しつつ、乗員の快適性を向上させることができる制動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の様相1に係る制動制御装置は、車両の車輪に制動力を付与するホイールシリンダと、サーボ室に入力されているサーボ圧によりマスタピストンが駆動されて前記ホイールシリンダにマスタ圧を出力するマスタシリンダと、前記サーボ室に所望の液圧を出力する液圧発生装置と、を備える液圧制動力発生装置に適用される制動制御装置であって、前記液圧発生装置が前記サーボ圧の発生に寄与するパイロット室を有する場合、前記パイロット室に準備液圧を発生させ、前記液圧発生装置が前記パイロット室を有しない場合、前記サーボ室に前記準備液圧を発生させる液圧制御手段と、車両状態を検出する検出手段と、前記準備液圧を発生させる際に生じる作動音の抑制よりもブレーキ操作部材の操作に対する前記制動力の付与の応答性を優先する応答性優先モード、及び前記応答性よりも前記作動音の抑制を優先する静粛性優先モードの少なくとも2つの制御モードを含む制御モード群から、前記検出手段の検出結果に基づいて1つの前記制御モードを選択する制御モード選択手段と、を有し、前記液圧制御手段は、前記制御モード選択手段が選択した前記制御モードに応じて前記液圧発生装置を制御して前記準備液圧を発生させることを特徴とする。
【0008】
車両状態は、制動力の必要性を判断する要素として考えることができる。車両状態には、車両自体の状態や車両への操作状態(運転手の操作意図)が含まれる。上記様相1によれば、車両状態を検出し、当該車両状態に応じて、準備液圧の発生方法、すなわち応答性を優先する応答性優先モードか静粛性を優先する静粛性優先モードかが選択される。上記様相1では、制動力の必要性が高い場合に応答性優先モードで応答性を高め、制動力の必要性が低い場合には静粛性優先モードで作動音の抑制を優先する。これにより、準備液圧の発生により応答性が確保され、且つ制御モードの選択により運転手の快適性が向上する。
【0009】
本発明の様相2に係る制動制御装置は、上記様相1において、前記液圧発生装置は、前記パイロット室に入力されているパイロット圧に応じた前記サーボ圧を前記サーボ室に出力する機械式の調圧装置と、前記パイロット室に所望の液圧を出力する弁装置と、を備え、前記液圧制御手段は、前記ブレーキ操作部材のストロークが所定値以下であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により前記ブレーキ操作部材のストロークが所定値以下であることが判定されている場合に、前記弁装置を制御して前記パイロット室に前記準備液圧を発生させるパイロット圧制御手段と、を備える。
【0010】
この構成によれば、液圧発生装置はパイロット室を備え、準備液圧は当該パイロット室に発生する。これによっても、上記様相1同様の効果が発揮される。また、判定手段により、確実にブレーキ操作部材の操作の初期段階でプリチャージすることができる。
【0011】
本発明の様相3に係る制動制御装
置において
、前記検出手段は、前記ブレーキ操作部材のストロークに関する値を測定する第一センサを有し、前記制御モード選択手段は、前記ストローク
が所定値以下である際において、前記第一センサの測定結果に基づく前記ストロークの変化速度に基づいて、前記制御モードを選択する。
【0012】
ストロークの変化速度は、制動力の必要性の尺度と考えられる。上記様相3によれば、ストロークの変化速度に基づいて制御モードが選択されるため、運転手が求める適切で且つ快適性の向上可能なプリチャージ制御が可能となる。具体的に、静粛性優先モードは、作動液の流速を小さくする制御であり、この制御モードが選択されることで、作動液が配管等を流れる音や圧力の小さい部屋に流れ込む音の発生が抑制される。
【0013】
本発明の様相4に係る制動制御装
置において
、前記検出手段は、車速に関する値を測定する
速度センサを有し、前記制御モード選択手段は、前記
速度センサの測定結果に基づいて、前記制御モードを選択する。
【0014】
車速に関する値は車両自体の状態を推測する指標となる。例えば、低速走行時は比較的走行音は小さく、ブレーキの応答性は比較的要求されないが、高速走行中は比較的走行音が大きく且つブレーキの応答性の必要性が比較的高い。上記様相4によれば、車速に関する値に基づいて制御モードが選択されるため、車両状態に応じた適切で且つ快適性の向上可能なプリチャージ制御が可能となる。
【0015】
本発明の様相5に係る制動制御装
置において
、前記検出手段は、ドアの開錠、イグニションのオン、及び乗員の着座の少なくとも1つである特定動作を検出する
動作センサを有し、前記制御モード選択手段は、前記
動作センサが前記特定動作を検出した場合、前記制御モードとして前記静粛性優先モードを選択する。
【0016】
特定動作が行われる際は、運転手が車両を運転する直前であることが多い。特定動作は、運転手が車両を運転しようとする際の動作といえる。上記様相5によれば、特定動作を検知し予め静粛性優先モードで静かに準備液圧を発生させることにより、発進前の運転手によるブレーキ操作に対し、作動音の発生を抑制することができる。
【0017】
本発明の様相6に係る制動制御装置は、上記様相1又は2において、前記静粛性優先モードは、前記準備液圧を維持する制御モードであり、前記検出手段は、前記ブレーキ操作部材のストロークに関する値を測定する第一センサを有し、前記制御モード選択手段は、前記第一センサの測定結果に基づいて前記ストロークが減少しているか否かを判定し、前記ストロークが減少し且つ前記ストロークが前記所定値まで低下した場合に、前記静粛性優先モードを選択する。
【0018】
本発明の様相7に係る制動制御装
置において、前記制御モード群は、前記準備液圧を維持する第二静粛性優先モードを含み
、前記制御モード選択手段は、前記第一センサの測定結果に基づいて前記ストロークが減少しているか否かを判定し、前記ストロークが減少し且つ前記ストロークが前記所定値まで低下した場合に、前記第二静粛性優先モードを選択する。
【0019】
上記様相6及び7によれば、ブレーキ操作部材を踏んで車両が停止した後、ブレーキ操作部材の操作が解除された際、制御モード選択手段がストロークの減少とストロークが所定値まで低下したことを認識し、ストロークが所定値以下となっても準備液圧が維持される。つまり、ブレーキ操作部材から足が離れた後でも、プリチャージ状態が維持される。これにより、例えばシフトレバーをパーキングとし、一度ブレーキ操作部材から足を離した運転手が、再度ブレーキを踏んだ際、作動音を発生させることなく準備液圧を発生させることができる。これにより、乗員の快適性は向上する。
【0020】
本発明の様相8に係る制動制御装置は、上記様相1〜7の何れか一項において、前記準備液圧は、前記ホイールシリンダ内の液圧が実質的に大気圧に維持されるような値に設定されている。この構成によれば、ブレーキパッドの移動による引き摺り(不要な制動力)の発生が抑制される。
【0021】
本発明の様相9に係る制動制御装置は、上記様相8において、前記液圧発生装置が前記パイロット室を有する場合、前記サーボ圧が変化しない値、あるいは前記サーボ圧が前記マスタピストンをその初期位置に向けて付勢する付勢部材のセット荷重以下となる値に設定され、前記液圧発生装置が前記パイロット室を有しない場合、前記サーボ圧が前記マスタピストンをその初期位置に向けて付勢する付勢部材のセット荷重以下となる値に設定される。
【0022】
この構成によれば、マスタピストンが駆動されず、ブレーキ操作によるマスタ圧(マスタシリンダの圧力)の発生、ひいてはホイール圧(ホイールシリンダの圧力)の発生が抑制される。したがって、より確実にホイール圧が大気圧となり、引き摺りの発生が抑制される。
【0023】
本発明の様相10に係る制動制御装置は、上記様相2において、前記パイロット圧制御手段は、前記弁装置を制御して前記準備液圧に対応する予め設定された液量の作動液を前記パイロット室に供給する。
【0024】
この構成によれば、パイロット室を準備液圧とするために必要な作動液の液量は予め計算することができ、当該必要な液量を供給するための制御は、予め設定することができるため、ホイール圧やサーボ圧やパイロット圧を検出する必要がない。すなわち、上記様相10によれば、圧力センサあるいはセンサによる圧力監視が不要となり、簡易な制御が可能となる。
【0025】
本発明の様相11に係る制動制御装置は、上記様相1〜7の何れか一項において、前記マスタシリンダの液圧であるマスタ圧を検出するマスタ圧検出手段を有し、前記パイロット圧制御手段は、前記マスタ圧検出手段の検出結果に基づいて、前記ホイールシリンダが車輪に付与する制動力が所定制動力以下となるように前記準備液圧を前記サーボ室又は前記液圧発生装置に発生させる。
【0026】
この構成によれば、ホイールシリンダにおける無効ストローク(例えばブレーキパッドとブレーキロータの離間距離)も、準備液圧により詰めることができ、さらに応答性が向上する。所定制動力は0でも良く、準備液圧により、例えばブレーキパッドとブレーキロータが当接する直前まで接近させても良い。
【0027】
本発明の様相12に係る制動制御装置は、車両の車輪に制動力を付与するホイールシリンダと、サーボ室に入力されているサーボ圧によりマスタピストンが駆動されて前記ホイールシリンダにマスタ圧を出力するマスタシリンダと、パイロット室に入力されているパイロット圧に応じた前記サーボ圧を前記サーボ室に出力する機械式の調圧装置と、前記パイロット室に所望の液圧を出力する弁装置と、を備える液圧制動力発生装置に適用される制動制御装置であって、ブレーキ操作部材のストロークを検出する第一センサと、前記ブレーキ操作部材の
前記ストロークが所定範囲内であるか否かを判定する判定手段と、前記所定範囲内における前記ストロークの変化速度に関する値を算出する変化速度算出手段と、前記判定手段により前記ブレーキ操作部材の
前記ストロークが
前記所定範囲内であることが判定されている場合に、前記弁装置を制御して前記パイロット室に準備液圧を発生させるパイロット圧制御手段と、前記準備液圧を発生させるための複数の制御モードを含む制御モード群を記憶し、前記変化速度算出
手段の算出結果に基づいて前記制御モード群から1つの前記制御モードを選択する制御モード選択手段と、を有し、前記パイロット圧制御手段は、前記制御モード選択手段が選択した前記制御モードに応じて前記弁装置を制御し、前記パイロット室に前記準備液圧を発生させる。
【0028】
この構成によれば、ブレーキ操作部材のストロークの変化速度に基づいてプリチャージの制御モードが選択され、ストロークが所定範囲内にある際に当該制御モードでプリチャージが実行される。上記様相12では、運転手の車両操作の意図を直接的に表すストロークの変化速度に着目し、当該変化速度に基づいてプリチャージの制御モードを複数の制御モードから選択することで、運転手の意図に応じたプリチャージ制御が可能となる。すなわち、運転手の快適性の向上が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。また、説明に用いる各図は概念図であり、各部の形状は必ずしも厳密なものではない場合がある。
【0031】
<第一実施形態>
図1に示すように、制動装置は、車輪5FR,5FL,5RR,5RLに液圧制動力を発生させる液圧制動力発生装置BFと、液圧制動力発生装置BFを制御するブレーキECU(「制動制御装置」に相当する)6と、を備えている。
【0032】
(液圧制動力発生装置BF)
液圧制動力発生装置BFは、マスタシリンダ1と、反力発生装置2と、第一制御弁22と、第二制御弁23と、サーボ圧発生装置(「液圧発生装置」に相当する)4と、液圧制御部5と、各種センサ71〜76等により構成されている。
【0033】
(マスタシリンダ1)
マスタシリンダ1は、ブレーキペダル10の操作量に応じて作動液を液圧制御部5に供給する部位であり、メインシリンダ11、カバーシリンダ12、入力ピストン13、第1マスタピストン14、および第2マスタピストン15等により構成されている。ブレーキペダル10は、運転手がブレーキ操作可能なブレーキ操作手段であれば良い。また、マスタピストンは1つであっても良い。
【0034】
メインシリンダ11は、前方が閉塞されて後方に開口する有底略円筒状のハウジングである。メインシリンダ11の内周側の後方寄りに、内向きフランジ状に突出する内壁部111が設けられている。内壁部111の中央は、前後方向に貫通する貫通孔111aとされている。また、メインシリンダ11の内部の内壁部111よりも前方に、内径がわずかに小さくなっている小径部位112(後方)、113(前方)が設けられている。つまり、小径部位112、113は、メインシリンダ11の内周面から内向き環状に突出している。メインシリンダ11の内部には、小径部位112に摺接して軸方向に移動可能に第1マスタピストン14が配設されている。同様に、小径部位113に摺接して軸方向に移動可能に第2マスタピストン15が配設されている。
【0035】
カバーシリンダ12は、略円筒状のシリンダ部121、蛇腹筒状のブーツ122、およびカップ状の圧縮スプリング123で構成されている。シリンダ部121は、メインシリンダ11の後端側に配置され、メインシリンダ11の後側の開口に同軸的に嵌合されている。シリンダ部121の前方部位121aの内径は、内壁部111の貫通孔111aの内径よりも大とされている。また、シリンダ部121の後方部位121bの内径は、前方部位121aの内径よりも小とされている。
【0036】
防塵用のブーツ122は蛇腹筒状で前後方向に伸縮可能であり、その前側でシリンダ部121の後端側開口に接するように組み付けられている。ブーツ122の後方の中央には貫通孔122aが形成されている。圧縮スプリング123は、ブーツ122の周りに配置されるコイル状の付勢部材であり、その前側がメインシリンダ11の後端に当接し、後側はブーツ122の貫通孔122aに近接するように縮径されている。ブーツ122の後端および圧縮スプリング123の後端は、操作ロッド10aに結合されている。圧縮スプリング123は、操作ロッド10aを後方に付勢している。
【0037】
入力ピストン13は、ブレーキペダル10の操作に応じてカバーシリンダ12内を摺動するピストンである。入力ピストン13は、前方に底面を有し後方に開口を有する有底略円筒状のピストンである。入力ピストン13の底面を構成する底壁131は、入力ピストン13の他の部位よりも径が大きくなっている。入力ピストン13は、シリンダ部121の後方部位121bに軸方向に摺動可能かつ液密的に配置され、底壁131がシリンダ部121の前方部位121aの内周側に入り込んでいる。
【0038】
入力ピストン13の内部には、ブレーキペダル10に連動する操作ロッド10aが配設されている。操作ロッド10aの先端のピボット10bは、入力ピストン13を前側に押動できるようになっている。操作ロッド10aの後端は、入力ピストン13の後側の開口およびブーツ122の貫通孔122aを通って外部に突出し、ブレーキペダル10に接続されている。ブレーキペダル10が踏み込み操作されたときに、操作ロッド10aは、ブーツ122および圧縮スプリング123を軸方向に押動しながら前進する。操作ロッド10aの前進に伴い、入力ピストン13も連動して前進する。
【0039】
第1マスタピストン14は、メインシリンダ11の内壁部111に軸方向に摺動可能に配設されている。第1マスタピストン14は、前方側から順番に加圧筒部141、フランジ部142、および突出部143が一体となって形成されている。加圧筒部141は、前方に開口を有する有底略円筒状に形成され、メインシリンダ11の内周面との間に間隙を有し、小径部位112に摺接している。加圧筒部141の内部空間には、第2マスタピストン15との間にコイルばね状の付勢部材144が配設されている。付勢部材144により、第1マスタピストン14は後方に付勢されている。換言すると、第1マスタピストン14は、設定された初期位置に向けて付勢部材144により付勢されている。
【0040】
フランジ部142は、加圧筒部141よりも大径で、メインシリンダ11の内周面に摺接している。突出部143は、フランジ部142よりも小径で、内壁部111の貫通孔111aに液密に摺動するように配置されている。突出部143の後端は、貫通孔111aを通り抜けてシリンダ部121の内部空間に突出し、シリンダ部121の内周面から離間している。突出部143の後端面は、入力ピストン13の底壁131から離間し、その離間距離dは変化し得るように構成されている。
【0041】
ここで、メインシリンダ11の内周面、第1マスタピストン14の加圧筒部141の前側、および第2マスタピストン15の後側により、「第1マスタ室1D」が区画されている。また、メインシリンダ11の内周面(内周部)と小径部位112と内壁部111の前面、および第1マスタピストン14の外周面により、第1マスタ室1Dよりも後方の後方室が区画されている。第1マスタピストン14のフランジ部142の前端部および後端部は後方室を前後に区分しており、前側に「第二液圧室1C」が区画され、後側に「サーボ室(「出力室」に相当する)1A」が区画されている。さらに、メインシリンダ11の内周部、内壁部111の後面、シリンダ部121の前方部位121aの内周面(内周部)、第1マスタピストン14の突出部143(後端部)、および入力ピストン12の前端部により「第一液圧室1B」が区画されている。
【0042】
第2マスタピストン15は、メインシリンダ11内の第1マスタピストン14の前方側に、小径部位113に摺接して軸方向に移動可能に配置されている。第2マスタピストン15は、前方に開口を有する筒状の加圧筒部151、および加圧筒部151の後側を閉塞する底壁152が一体となって形成されている。底壁152は、第1マスタピストン14との間に付勢部材144を支承している。加圧筒部151の内部空間には、メインシリンダ11の閉塞された内底面111dとの間に、コイルばね状の付勢部材153が配設されている。付勢部材153により、第2マスタピストン15は後方に付勢されている。換言すると、第2マスタピストン15は、設定された初期位置に向けて付勢部材153により付勢されている。メインシリンダ11の内周面、内底面111d、および第2マスタピストン15により、「第2マスタ室1E」が区画されている。
【0043】
マスタシリンダ1には、内部と外部を連通させるポート11a〜11iが形成されている。ポート11aは、メインシリンダ11のうち内壁部111よりも後方に形成されている。ポート11bは、ポート11aと軸方向の同様の位置に、ポート11aに対向して形成されている。ポート11aとポート11bは、メインシリンダ11の内周面とシリンダ部121の外周面との間の環状空間を介して連通している。ポート11aおよびポート11bは、配管161に接続され、かつリザーバ171に接続されている。
【0044】
また、ポート11bは、シリンダ部121および入力ピストン13に形成された通路18により第一液圧室1Bに連通している。通路18は入力ピストン13が前進すると遮断され、これによって第一液圧室1Bとリザーバ171とが遮断される。
【0045】
ポート11cは、内壁部111より後方かつポート11aよりも前方に形成され、第一液圧室1Bと配管162とを連通させている。ポート11dは、ポート11cよりも前方に形成され、サーボ室1Aと配管163とを連通させている。ポート11eは、ポート11dよりも前方に形成され、第二液圧室1Cと配管164とを連通させている。
【0046】
ポート11fは、小径部位112の両シール部材91、92の間に形成され、リザーバ172とメインシリンダ11の内部とを連通している。ポート11fは、第1マスタピストン14に形成された通路145を介して第1マスタ室1Dに連通している。通路145は、第1マスタピストン14が前進するとポート11fと第1マスタ室1Dが遮断される位置に形成されている。ポート11gは、ポート11fよりも前方に形成され、第1マスタ室1Dと配管51とを連通させている。
【0047】
ポート11hは、小径部位113の両シール部材93、94の間に形成され、リザーバ173とメインシリンダ11の内部とを連通させている。ポート11hは、第2マスタピストン15の加圧筒部151に形成された通路154を介して第2マスタ室1Eに連通している。通路154は、第2マスタピストン15が前進するとポート11hと第2マスタ室1Eが遮断される位置に形成されている。ポート11iは、ポート11hよりも前方に形成され、第2マスタ室1Eと配管52とを連通させている。
【0048】
また、マスタシリンダ1内には、適宜、Oリング等のシール部材(図面黒丸部分)が配置されている。シール部材91、92は、小径部位112に配置され、第1マスタピストン14の外周面に液密的に当接している。同様に、シール部材93、94は、小径部位113に配置され、第2マスタピストン15の外周面に液密的に当接している。また、入力ピストン13とシリンダ部121との間にもシール部材95、96が配置されている。
【0049】
ストロークセンサ(「検出手段」及び「第一センサ」に相当する)71は、運転者によりブレーキペダル10が操作された操作量(ストローク量)を検出するセンサであり、検出信号をブレーキECU6に送信する。ブレーキストップスイッチ72は、運転者によるブレーキペダル10の操作の有無を2値信号で検出するスイッチであり、検出信号をブレーキECU6に送信する。
【0050】
(反力発生装置2)
反力発生装置2は、ブレーキペダル10が操作されたとき操作力に対抗する反力を発生する装置であり、ストロークシミュレータ21を主にして構成されている。ストロークシミュレータ21は、ブレーキペダル10の操作に応じて第一液圧室1Bおよび第二液圧室1Cに反力液圧を発生させる。ストロークシミュレータ21は、シリンダ211にピストン212が摺動可能に嵌合されて構成されている。ピストン212は圧縮スプリング213によって
後方に付勢されており、ピストン212の
後面側に反力液圧室214が形成される。反力液圧室214は、配管164およびポート11eを介して第二液圧室1Cに接続され、さらに、反力液圧室214は、配管164を介して第一制御弁22および第二制御弁23に接続されている。
【0051】
(第一制御弁22)
第一制御弁22は、非通電状態で閉じる構造の電磁弁であり、ブレーキECU6により開閉が制御される。第一制御弁22は、配管164と配管162との間に接続されている。ここで、配管164はポート11eを介して第二液圧室1Cに連通し、配管162はポート11cを介して第一液圧室1Bに連通している。また、第一制御弁22が開くと第一液圧室1Bが開放状態になり、第一制御弁22が閉じると第一液圧室1Bが密閉状態になる。したがって、配管164および配管162は、第一液圧室1Bと第二液圧室1Cとを連通するように設けられている。
【0052】
第一制御弁22は通電されていない非通電状態で閉じており、このとき第一液圧室1Bと第二液圧室1Cとが遮断される。これにより、第一液圧室1Bが密閉状態になって作動液の行き場がなくなり、入力ピストン13と第1マスタピストン14とが一定の離間距離dを保って連動する。また、第一制御弁22は通電された通電状態では開いており、このとき第一液圧室1Bと第二液圧室1Cとが連通される。これにより、第1マスタピストン14の進退に伴う第一液圧室1Bおよび第二液圧室1Cの容積変化が、作動液の移動により吸収される。
【0053】
圧力センサ73は、第二液圧室1Cおよび第一液圧室1Bの反力液圧を検出するセンサであり、配管164に接続されている。圧力センサ73は、第一制御弁22が閉状態の場合には第二液圧室1Cの圧力を検出し、第一制御弁22が開状態の場合には連通された第一液圧室1Bの圧力も検出することになる。圧力センサ73は、検出信号をブレーキECU6に送信する。
【0054】
(第二制御弁23)
第二制御弁23は、非通電状態で開く構造の電磁弁であり、ブレーキECU6により開閉が制御される。第二制御弁23は、配管164と配管161との間に接続されている。ここで、配管164はポート11eを介して第二液圧室1Cに連通し、配管161はポート11aを介してリザーバ171に連通している。したがって、第二制御弁23は、第二液圧室1Cとリザーバ171との間を非通電状態で連通して反力液圧を発生させず、通電状態で遮断して反力液圧を発生させる。
【0055】
(サーボ圧発生装置4)
サーボ圧発生装置4は、減圧弁(「弁装置」に相当する)41、増圧弁(「弁装置」に相当する)42、圧力供給部43、およびレギュレータ44等で構成されている。減圧弁41は、非通電状態で開く構造の電磁弁であり、ブレーキECU6により流量が制御される。減圧弁41の一方は配管411を介して配管161に接続され、減圧弁41の他方は配管413に接続されている。つまり、減圧弁41の一方は、配管411、161、およびポート11a、11bを介してリザーバ(低圧力源)171に連通している。なお、配管411は、リザーバ171ではなく、後述するリザーバ434に接続されていても良い。この場合、リザーバ434が低圧力源に相当する。また、リザーバ171とリザーバ434が同一のリザーバであっても良い。
【0056】
増圧弁42は、非通電状態で閉じる構造の電磁弁であり、ブレーキECU6により流量が制御されている。増圧弁42の一方は配管421に接続され、増圧弁42の他方は配管422に接続されている。減圧弁41及び増圧弁42は、パイロット液圧発生装置に相当する。
【0057】
圧力供給部43は、レギュレータ44に主に高圧の作動液を供給する部位である。圧力供給部43は、アキュムレータ(高圧力源)431、液圧ポンプ432、モータ433、およびリザーバ434等で構成されている。
【0058】
アキュムレータ431は、高圧の作動液を蓄積するタンクである。アキュムレータ431は、配管431aによりレギュレータ44および液圧ポンプ432に接続されている。液圧ポンプ432は、モータ433によって駆動され、リザーバ434に貯留された作動液を、アキュムレータ431に圧送する。配管431aに設けられた圧力センサ75は、アキュムレータ431のアキュムレータ液圧を検出し、検出信号をブレーキECU6に送信する。アキュムレータ液圧は、アキュムレータ431に蓄積された作動液の蓄積量に相関する。
【0059】
アキュムレータ液圧が所定値以下に低下したことが圧力センサ75によって検出されると、ブレーキECU6からの指令に基づいてモータ433が駆動される。これにより、液圧ポンプ432は、アキュムレータ431に作動液を圧送して、アキュムレータ液圧を所定値以上に回復する。
【0060】
レギュレータ(「調圧装置」に相当する)44は、
図2に示すように、シリンダ441、ボール弁442、付勢部443、弁座部444、制御ピストン445、およびサブピストン446等で構成されている。
【0061】
シリンダ441は、一方(図面右側)に底面をもつ略有底円筒状のシリンダケース441aと、シリンダケース441aの開口(図面左側)を塞ぐ蓋部材441bと、で構成されている。シリンダケース441aには、内部と外部を連通させる複数のポート4a〜4hが形成されている。蓋部材441bも、略有底円筒状に形成されており、筒状部の複数のポート4
d〜4hに対向する各部位に各ポートが形成されている。
【0062】
ポート4aは、配管431aに接続されている。ポート4bは、配管422に接続されている。ポート4cは、配管163に接続されている。配管163は、サーボ室1Aと出力ポート4cとを接続している。ポート4dは、配管414を介して配管161に接続されている。ポート4eは、配管424に接続され、さらにリリーフバルブ423を経由して配管422に接続されている。ポート4fは、配管413に接続されている。ポート4gは、配管421に接続されている。ポート4hは、配管51から分岐した配管511に接続されている。なお、配管414は、配管161ではなく、リザーバ434に接続されていても良い。
【0063】
ボール弁442は、ボール型の弁であり、シリンダ441内部のシリンダケース441aの底面側(以下、シリンダ底面側とも称する)に配置されている。付勢部443は、ボール弁442をシリンダケース441aの開口側(以下、シリンダ開口側とも称する)に付勢するバネ部材であって、シリンダケース441aの底面に設置されている。弁座部444は、シリンダケース441aの内周面に設けられた壁部材であり、シリンダ開口側とシリンダ底面側を区画している。弁座部444の中央には、区画したシリンダ開口側とシリンダ底面側を連通させる貫通路444aが形成されている。弁部材444は、付勢されたボール弁442が貫通路444aを塞ぐ形で、ボール弁442をシリンダ開口側から保持している。貫通路444aのシリンダ底面側の開口部には、ボール弁442が離脱可能に着座(当接)する弁座面444bが形成されている。
【0064】
ボール弁442、付勢部443、弁座部444、およびシリンダ底面側のシリンダケース441aの内周面で区画された空間を「第1室4A」とする。第1室4Aは、作動液で満たされており、ポート4aを介して配管431aに接続され、ポート4bを介して配管422に接続されている。
【0065】
制御ピストン445は、略円柱状の本体部445aと、本体部445aよりも径が小さい略円柱状の突出部445bとからなっている。本体部445aは、シリンダ441内において、弁座部444のシリンダ開口側に、同軸的且つ液密的に、軸方向に摺動可能に配置されている。本体部445aは、図示しない付勢部材によりシリンダ開口側に付勢されている。本体部445aのシリンダ軸方向略中央には、両端が本体部445a周面に開口した径方向(図面上下方向)に延びる通路445cが形成されている。通路445cの開口位置に対応したシリンダ441の一部の内周面は、ポート4dが形成されているとともに、凹状に窪んでいる。この窪んだ空間を「第3室4C」とする。
【0066】
突出部445bは、本体部445aのシリンダ底面側端面の中央からシリンダ底面側に突出している。突出部445bの径は、弁座部444の貫通路444aよりも小さい。突出部445bは、貫通路444aと同軸上に配置されている。突出部445bの先端は、ボール弁442からシリンダ開口側に所定間隔離れている。突出部445bには、突出部445bのシリンダ底面側端面中央に開口したシリンダ軸方向に延びる通路445dが形成されている。通路445dは、本体部445a内にまで延伸し、通路445cに接続している。
【0067】
本体部445aのシリンダ底面側端面、突出部445bの外周面、シリンダ441の内周面、弁座部444、およびボール弁442によって区画された空間を「第2室4B」とする。第2室4Bは、突出部445bとボール弁442とが当接していない状態で、通路445d,445c、および第3室4Cを介してポート4d、4eに連通している。
【0068】
サブピストン446は、サブ本体部446aと、第1突出部446bと、第2突出部446cとからなっている。サブ本体部446aは、略円柱状に形成されている。サブ本体部446aは、シリンダ441内において、本体部445aのシリンダ開口側に、同軸的且つ液密的、軸方向に摺動可能に配置されている。
【0069】
第1突出部446bは、サブ本体部446aより小径の略円柱状であり、サブ本体部446aのシリンダ底面側の端面中央から突出している。第1突出部446bは、本体部445aのシリンダ開口側端面に当接している。第2突出部446cは、第1突出部446bと同形状であり、サブ本体部446aのシリンダ開口側の端面中央から突出している。第2突出部446cは、蓋部材441bと当接している。
【0070】
サブ本体部446aのシリンダ底面側の端面、第1突出部446bの外周面、制御ピストン445のシリンダ開口側の端面、およびシリンダ441の内周面で区画された空間を「第1パイロット室(「パイロット室」に相当する)4D」とする。第1パイロット室4Dは、ポート4fおよび配管413を介して減圧弁41に連通し、ポート4gおよび配管421を介して増圧弁42に連通している。
【0071】
一方、サブ本体部446aのシリンダ開口側の端面、第2突出部446cの外周面、蓋部材441b、およびシリンダ441の内周面で区画された空間を「第2パイロット室4E」とする。第2パイロット室4Eは、ポート4hおよび配管511、51を介してポート11gに連通している。各室4A〜4Eは、作動液で満たされている。圧力センサ74は、サーボ室1Aに供給されるサーボ圧を検出するセンサであり、配管163に接続されている。圧力センサ74は、検出信号をブレーキECU6に送信する。
【0072】
このように、レギュレータ44は、第1パイロット室4Dの圧力(「パイロット圧」とも称する)に対応する力とサーボ圧に対応する力との差によって駆動される制御ピストン445を有し、第1パイロット室4Dに流入出する液体の流量が増大すると、パイロット圧に対応する力とサーボ圧に対応する力とが釣り合っている平衡状態における制御ピストン445の位置を基準とする同制御ピストン445の移動量が増大して、サーボ室1Aに流入出する液体の流量が増大するように構成されている。
【0073】
レギュレータ44は、アキュムレータ431から第1パイロット室4Dに流入する液体の流量が増大するほど、第1パイロット室4Dが拡大するとともにアキュムレータ431からサーボ室1Aに流入する液体の流量が増大し、第1パイロット室4Dからリザーバ171に流出する液体の流量が増大するほど、第1パイロット室4Dが縮小するとともにサーボ室1Aからリザーバ171に流出する液体の流量が増大するように構成されている。
【0074】
また、制御ピストン445は、第1パイロット室4Dに面する壁部にダンパ装置Zを有している。ダンパ装置Zは、ストロークシミュレータのような構成であり、付勢部材で第1パイロット室4Dに向けて付勢されたピストン部を有する。ダンパ装置Zが設けられることで、第1パイロット室4Dの剛性が設定される。
【0075】
(液圧制御部5)
マスタシリンダ液圧(マスタ圧)を発生する第1マスタ室1D、第2マスタ室1Eには、配管51、52、ABS(Antilock Brake System)53を介してホイールシリンダ541〜544が連通されている。ホイールシリンダ541〜544は、車輪5FR〜5RLのブレーキを構成している。具体的には、第1マスタ室1Dのポート11g及び第2マスタ室1Eのポート11iには、それぞれ配管51、52を介して、公知のABS53が連結されている。ABS53には、車輪5FR〜5RLを制動するブレーキを作動させるホイールシリンダ541〜544が連結されている。
【0076】
ABS53は、車輪速度を検出する車輪速度センサ(「検出手段」及び「
速度センサ」に相当する)76を各輪に備えている。車輪速度センサ76により検出された車輪速度を示す検出信号はブレーキECU6に出力されるようになっている。
【0077】
このように構成されたABS53において、ブレーキECU6は、マスタ圧、車輪速度の状態、及び前後加速度に基づき、各保持弁、減圧弁の開閉を切り換え制御し、モータを必要に応じて作動して各ホイールシリンダ541〜544に付与するブレーキ液圧すなわち各車輪5FR〜5RLに付与する制動力を調整するABS制御(アンチロックブレーキ制御)を実行する。ABS53は、マスタシリンダ1から供給された作動液を、ブレーキECU6の指示に基づいて、量やタイミングを調整して、ホイールシリンダ541〜544に供給する装置である。
【0078】
後述する「ブレーキ制御」では、サーボ圧発生装置4のアキュムレータ431から送出された液圧が増圧弁42及び減圧弁41によって制御されてサーボ圧がサーボ室1Aに発生することにより、第1マスタピストン14及び第2マスタピストン15が前進して第1マスタ室1D及び第2マスタ室1Eが加圧される。第1マスタ室1D及び第2マスタ室1Eの液圧はポート11g、11iから配管51、52及びABS53を経由してホイールシリンダ541〜544へマスタ圧として供給され、車輪5FR〜5RLに液圧制動力が付与される。
【0079】
(ブレーキECU6)
ブレーキECU6は、電子制御ユニットであり、マイクロコンピュータを有している。マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続された入出力インターフェース、CPU、RAM、ROM、不揮発性メモリー等の記憶部を備えている。
【0080】
ブレーキECU6は、各電磁弁22、23、41、42、及びモータ433等を制御するため、各種センサ71〜76と接続されている。ブレーキECU6には、ストロークセンサ71から運転者によりブレーキペダル10の操作量(ストローク量)が入力され、ブレーキストップスイッチ72から運転者によるブレーキペダル10の操作の有無が入力され、圧力センサ73から第二液圧室1Cの反力液圧又は第一液圧室1Bの圧力(又は反力液圧)が入力され、圧力センサ74からサーボ室1Aに供給されるサーボ圧が入力され、圧力センサ75からアキュムレータ431のアキュムレータ液圧が入力され、車輪速度センサ76から各車輪5FR,5FL,5RR,5RLの速度が入力される。
【0081】
(ブレーキ制御)
ここで、ブレーキECU6のブレーキ制御について説明する。ブレーキ制御は、通常のブレーキ制御である。すなわち、ブレーキECU6は、第一制御弁22に通電して開弁し、第二制御弁23に通電して閉弁した状態とする。第二制御弁23が閉状態となることで第二液圧室1Cとリザーバ171とが遮断され、第一制御弁22が開状態となることで第一液圧室1Bと第二液圧室1Cとが連通する。このように、ブレーキ制御は、第一制御弁22を開弁させ、第二制御弁23を閉弁させた状態で、減圧弁41及び増圧弁42を制御してサーボ室1Aのサーボ圧を制御するモードである。減圧弁41及び増圧弁42は、第1パイロット室4Dに流入出させる作動液の流量を調整する弁装置ともいえる。このブレーキ制御において、ブレーキECU6は、ストロークセンサ71で検出されたブレーキペダル10の操作量(入力ピストン13の移動量)またはブレーキペダル10の操作力から、運転者の要求制動力を算出する。そして、目標サーボ圧が設定され、実サーボ圧を目標サボ圧に近づけるように減圧弁41及び増圧弁42が制御される。
【0082】
詳細に説明すると、ブレーキペダル10が踏まれていない状態では、上記のような状態、すなわちボール弁442が弁座部444の貫通路444aを塞いでいる状態となる。また、減圧弁41は開状態、増圧弁42は閉状態となっている。つまり、第1室4Aと第2室4Bは隔離されている。
【0083】
第2室4Bは、配管163を介してサーボ室1Aに連通し、互いに同圧力に保たれている。第2室4Bは、制御ピストン445の通路445c、445dを介して第3室4Cに連通している。したがって、第2室4B及び第3室4Cは、配管414、161を介してリザーバ171に連通している。第1パイロット室4Dは、一方が増圧弁42で塞がれ、他方が減圧弁41を介してリザーバ171に連通している。第1パイロット室4Dと第2室4Bとは同圧力に保たれる。第2パイロット室4Eは、配管511、51を介して第1マスタ室1Dに連通し、互いに同圧力に保たれる。
【0084】
この状態から、ブレーキペダル10が踏まれると、ブレーキECU6は、目標摩擦制動力、具体的には目標サーボ圧に基づいて、減圧弁41及び増圧弁42を制御する。すなわち、ブレーキECU6は、減圧弁41を閉じる方向に制御し、増圧弁42を開ける方向に制御する。
【0085】
増圧弁42が開くことでアキュムレータ431と第1パイロット室4Dとが連通する。減圧弁41が閉じることで、第1パイロット室4Dとリザーバ171とが遮断される。アキュムレータ431から供給される高圧の作動液により、第1パイロット室4Dの圧力を上昇させることができる。第1パイロット室4Dの圧力が上昇することで、制御ピストン445がシリンダ底面側に摺動する。これにより、制御ピストン445の突出部445b先端がボール弁442に当接し、通路445dがボール弁442により塞がれる。そして、第2室4Bとリザーバ171とは遮断される。
【0086】
さらに、制御ピストン445がシリンダ底面側に摺動することで、突出部445bによりボール弁442がシリンダ底面側に押されて移動し、ボール弁442が弁座面444bから離間する。これにより、第1室4Aと第2室4Bは弁座部444の貫通路444aにより連通する。第1室4Aには、アキュムレータ431から高圧の作動液が供給されており、連通により第2室4Bの圧力が上昇する。なお、ボール弁442の弁座面444bからの離間距離が大きくなる程、作動液の流路が大きくなり、ボール弁442の下流の流路の液圧が高くなる。つまり、第1パイロット室4Dの圧力(パイロット圧)が大きくなる程、制御ピストン445の移動距離が大きくなり、ボール弁442の弁座面444bからの離間距離が大きくなり、第2室4Bの液圧(サーボ圧)が高くなる。
【0087】
ブレーキECU6は、ストロークセンサ71で検知された入力ピストン13の移動量(ブレーキペダル10の操作量)が大きくなる程、第1パイロット室4Dのパイロット圧が高くなるように増圧弁42を制御する。つまり、入力ピストン13の移動量(ブレーキペダル10の操作量)が大きくなる程、パイロット圧が高くなり、サーボ圧も高くなる。サーボ圧は、圧力センサ74により取得でき、パイロット圧に換算することができる。
【0088】
第2室4Bの圧力上昇に伴って、それに連通するサーボ室1Aの圧力も上昇する。サーボ室1Aの圧力上昇により、第1マスタピストン14が前進し、第1マスタ室1Dの圧力が上昇する。そして、第2マスタピストン15も前進し、第2マスタ室1Eの圧力が上昇する。第1マスタ室1Dの圧力上昇により、高圧の作動液が後述するABS53及び第2パイロット室4Eに供給される。第2パイロット室4Eの圧力は上昇するが、第1パイロット室4Dの圧力も同様に上昇しているため、サブピストン446は移動しない。このように、ABS53に高圧(マスタ圧)の作動液が供給され、摩擦ブレーキが作動して車両が制動される。「ブレーキ制御」において第1マスタピストン14を前進させる力は、サーボ圧に対応する力に相当する。
【0089】
ブレーキ操作を解除する場合、反対に、減圧弁41を開状態とし、増圧弁42を閉状態として、リザーバ171と第1パイロット室4Dとを連通させる。これにより、制御ピストン445が後退し、ブレーキペダル10を踏む前の状態に戻る。
【0090】
本実施形態のブレーキ制御は、ブレーキペダル10の操作及びストロークに応じて目標サーボ圧を設定し、サーボ圧が目標サーボ圧に達するように、減圧弁41及び増圧弁42を制御してパイロット圧を変化させる制御である。目標サーボ圧は、マップ等に基づいて設定される。また、本実施形態において、減圧弁41及び増圧弁42は、一端と他端との差圧によって開弁電流が変化する電磁弁である。
【0091】
(プリチャージ制御)
ブレーキECU6は、所定条件の下で、第1パイロット室4Dに準備液圧を発生させるプリチャージ制御を実行する。本実施形態の準備液圧は、サーボ圧が第1マスタピストン14をその初期位置に向けて付勢する付勢部材144のセット荷重以下となる値に設定されている。ブレーキECU6は、予め設定された目標パイロット圧とそれを達成するための制御電流値、あるいは圧力センサ74の測定値に基づいて、減圧弁41及び増圧弁42を制御し、準備液圧(サーボ圧が上記セット荷重以下となる値)を第1パイロット室4Dに発生させる。
【0092】
ここで、ブレーキECU6は、機能として、第一ストローク判定部(「判定手段」に相当する)61と、第二ストローク判定部(「判定手段」に相当する)62と、上記ブレーキ制御を実行するパイロット圧制御部(「パイロット圧制御手段」に相当する)63と、制御モード選択部(「制御モード選択手段」に相当する)64と、を備えている。
【0093】
第一ストローク判定部61は、ストロークセンサ71の測定結果を受信し、当該測定結果に基づいて、ブレーキペダル10のストロークが第一所定値(ここでは5mm)以下であるか否かを判定する。
図3に示すように、本実施形態の第一所定値は、ブレーキペダル10の踏み込み時に、目標サーボ圧が上昇し始める値に設定されている。
【0094】
第二ストローク判定部62は、ストロークセンサ71の測定結果を受信し、当該測定結果に基づいて、ブレーキペダル10のストロークが第二所定値(ここでは3mm)以上であるか否かを判定する。本実施形態の第二所定値は、車両の揺れ等により、ブレーキペダル10が振動するストロークより大きい値に設定されている。つまり、第二所定値は、運転手の操作によらないブレーキペダル10のストロークを排除するために設定されている。第二所定値から第一所定値までの間(所定範囲)は、運転手の意思による操作によっても目標サーボ圧が変化しないいわゆる遊び区間といえる。第一ストローク判定部61及び第二ストローク判定部62は、判定手段として、ストロークが所定範囲内であるか否かを判定している。
【0095】
パイロット圧制御部63は、上記ブレーキ制御を実行する。つまり、パイロット圧制御部63は、上述のとおり、実サーボ圧(圧力センサ74の測定値)が目標サーボ圧に達するように、減圧弁41及び増圧弁42を制御する。また、パイロット圧制御部63は、第一ストローク判定部61がストロークが第一所定値以下であると判定し且つ第二ストローク判定部62がストロークが第二所定値以上である判定している場合、目標サーボ圧にかかわらず、第1パイロット室4Dに準備液圧を発生させる。つまり、パイロット圧制御部63は、ストローク判定部61、62によりストロークが所定範囲(第二所定値〜第一所定値)内であることが判定されている場合、プリチャージ制御を実行する。具体的に、パイロット圧制御部63は、ストロークが第二所定値に達した際に、プリチャージ制御を開始する。ここで、パイロット圧制御部63は、後述する制御モード選択部64が選択した制御モードに基づいてプリチャージ制御を実行する。
【0096】
制御モード選択部64は、車両状態に応じて、複数の制御モードからなる制御モード群のうちから1つの制御モードを選択する。本実施形態の制御モード選択部64は、「応答性優先モード」と「静粛性優先モード」の少なくとも2つの制御モードを記憶している。応答性優先モードは、準備液圧を発生させる際に生じる作動音の抑制よりもブレーキペダル10の操作に対する制動力の付与の応答性を優先する制御モードである。静粛性優先モードは、応答性よりも作動音の抑制を優先する制御モードである。
【0097】
具体的に、応答性優先モードは、増圧弁42の開度を静粛性優先モードよりも大きくし、第1パイロット室4Dに流入する作動液(ブレーキ液)の流速を静粛性優先モードよりも大きくする制御モードである。反対に、静粛性優先モードは、増圧弁42の開度を応答性優先モードよりも小さくし、第1パイロット室4Dに流入する作動液(ブレーキ液)の流速を応答性優先モードよりも小さくする制御モードである。つまり、応答性優先モードは、準備液圧を発生させる際の作動液が配管を流れる音や第1パイロット室4Dに流入する音の抑制を優先するものではなく、第1パイロット室4Dに素早く準備液圧を発生させるための制御である。一方、静粛性優先モードは、第1パイロット室4Dに徐々にゆっくり準備液圧を発生させ、作動液が配管を流れる音や第1パイロット室4Dに流入する音を抑制するための制御である。
図4に示すように、応答性優先モードのほうが静粛性優先モードよりも早く準備液圧を発生させる。
図3は、静粛性優先モードの一例を表し、
図4は応答性優先モードの一例を表している。
【0098】
制御モード選択部64は、上記所定範囲(第二所定値〜第一所定値)において、ストロークセンサ71の測定結果を受信し、当該測定結果に基づいてストロークの変化速度(例えばストロークの微分値)を検出する。制御モード選択部64は、機能として、ストロークの変化速度を算出する「変化速度算出手段」を備えているといえる。
【0099】
本実施形態では、制御モード選択部64は、ストロークが第二所定値を通過した際のストロークの変化速度(例えば第二所定値と第二所定値直後のストローク差)に基づいて、制御モードを選択する。制御モード選択部64は、ストロークの変化速度が、第一閾値以上である場合、応答性優先モードを選択し、第一閾値未満である場合、静粛性優先モードを選択する。本実施形態では、制御モード選択部64が、ストロークセンサ71の測定結果から、ストロークが増大しているか否かを判定し、増大している場合に当該変化速度に基づいて制御モードを選択する。
【0100】
制御モード選択部64により応答性優先モードが選択されている場合、パイロット圧制御部63は、増圧弁42に対して開口面積が大きくなるように静粛性優先モード時より大きい制御電流を印加する。一方、制御モード選択部64により静粛性優先モードが選択されている場合、パイロット圧制御部63は、増圧弁42に対して開口面積が小さくなるように応答性優先モードより小さい制御電流を印加する。なお、パイロット圧の制御にあたり、目標パイロット圧を設定し、予めアキュムレータ圧と増圧弁42の開度及び第1パイロット室4Dの剛性により算出される制御電流とパイロット圧の関係から、目標パイロット圧を発生させるための制御電流を決定する制御方法を採用しても良い。つまり、目標パイロット圧に応じて増圧弁42が制御される。この場合、目標パイロット圧の傾きや増大の仕方は、制御モードにより決定される。また、パイロット圧制御部63は、増圧弁42に対して、アキュムレータ圧とパイロット圧から所望の流量となるような電流制御を行っても良い。
【0101】
ここで、ブレーキECU6によるプリチャージ制御の流れを説明する。
図5に示すように、ブレーキECU6は、ブレーキペダル10のストロークが第二所定値(第一所定値以下の値)であるか否かを判定する(S101)。ストロークが第二所定値である場合(S101:Yes)、ブレーキECU6は、ストロークの変化速度が第一閾値以上であるか否かを判定する(S102)。S102は、車両状態に応じて制御モードを選択するステップといえる。
【0102】
変化速度が第一閾値以上である場合(S102:Yes)、ブレーキECU6は、応答性優先モードを選択し、増圧弁42の開度を静粛性優先モードより大きくしてプリチャージを実行する(S103)。一方、変化速度が第一閾値未満である場合(S102:No)、ブレーキECU6は、静粛性優先モードを選択し、増圧弁42の開度を応答性優先モードよりも小さくしてプリチャージを実行する(S104)。
【0103】
第一実施形態によれば、ブレーキペダル10が踏み込まれた際、第二所定値におけるストロークの変化速度(ブレーキペダル10の踏み込み速さ)に応じて、複数の制御モードから制御モードが選択され、ストロークが所定範囲内である際に、当該選択された制御モードに基づきプリチャージ制御が実行される。ストロークの変化速度は、制動力の付与の必要性に大きく関係する要素であり、当該変化速度に応じて、応答性を優先する応答性優先モードか静粛性を優先する静粛性優先モードかが選択されることで、運転手の快適性が向上する。
【0104】
具体的に、第一実施形態では、ストロークの変化速度が第一閾値以上である場合、緊急性が高いと推測し、応答性優先モードにより、作動液の流速を大きくして素早くプリチャージ制御を実行する。一方、ストロークの変化速度が第一閾値未満である場合、緊急性が低いと推測し、静粛性優先モードにより、作動音を小さくするために作動液の流速を小さくする。これにより、運転手が応答性を求める際に迅速なプリチャージにより制動力が素早く発生し、運転手が応答性を求めていない際には、ゆっくりプリチャージが行われ、作動音による不快感は抑制される。すなわち、第一実施形態によれば、プリチャージによる応答性が確保されるとともに、乗員の快適性の向上が可能となる。
【0105】
また、第一実施形態では、準備液圧はサーボ圧が付勢部材144のセット荷重以下となる値に設定されている。このため、プリチャージにおいて、第一マスタピストン14は駆動されず、ホイール圧は実質的に大気圧に保持される。これにより、ホイール圧を上昇させずに、パイロット液圧室の無効液量を少なくすることができる。無効液量とは、液を入れてもサーボ圧が変化しない液量である。そのため、制動力の応答性を確保しつつ、引き摺りの発生を確実に抑制することができる。例えば、装置個体間でのブレーキパッドとブレーキロータとの離間距離のばらつき、ノックバックによる当該離間距離のばらつき、又はホイール圧の検出値と実際のホイール圧との誤差などにより、プリチャージ時に引き摺り(不要な制動力)が発生するおそれがあるが、上記プリチャージ制御により確実に引き摺り発生が抑制される。なお、ブレーキECU6は、サーボ室1A又はパイロット室4Dに準備液圧を発生させる液圧制御手段を備えるともいえる。
【0106】
<第二実施形態>
第二実施形態における制動装置は、第一実施形態に対して、制御モードを車速(車両速度)に基づいて選択する点で異なっている。したがって、異なっている部分を説明する。
【0107】
制御モード選択部64は、車輪速度センサ(「検出手段」及び「
速度センサ」に相当する)76の検出結果、すなわち車速に基づいて、制御モードを選択する。制御モード選択部64は、ストロークが第二所定値である際において、車速が第二閾値以上である場合、応答性優先モードを選択し、車速が第二閾値未満(0を含む)である場合、静粛性優先モードを選択する。第二実施形態では、第二閾値は、極低速(例えば徐行速度以下)の値に設定されている。
【0108】
車速が大きいほど制動力の応答性の必要性が高いと推測でき、車速が小さいほど制動力の応答性の必要性は低いと推測できる。第二実施形態のブレーキECU6は、制動力の応答性が求められ走行音も比較的大きい高速走行時には素早くプリチャージを実行し、応答性の要求が低く走行音も小さい低速走行時には、ゆっくりプリチャージを行い、作動音を抑制する。第二実施形態の制御フローは、
図5において、S102を「車速が第二閾値以上?」に置き換えたものに相当する。
【0109】
第二実施形態によれば、低速時又は停車時にブレーキ操作がなされた場合、作動液が流れる音などの作動音を抑制しつつプリチャージを行う。これにより、ブレーキ操作時の作動音による乗員の不快感発生は抑制される。つまり、第二実施形態によれば、第一実施形態同様、プリチャージによる応答性を確保しつつ、乗員の快適性を向上させることができる。車速は、他のセンサ(例えば加速度センサ等)から算出しても良い。
【0110】
<第三実施形態>
第三実施形態における制動装置は、第一実施形態に対して、特定動作(第三実施形態ではドアの開錠動作)に基づいて制御モードを選択する点で異なっている。したがって、異なっている部分を説明する。
【0111】
第三実施形態の制動装置は、
図6に示すように、ドア(図示せず)が開錠されたことを検出するドアセンサ(「検出手段」及び「
動作センサ」に相当する)77を備えている。ドアセンサ77は、ドアの開錠を検出すると、検出結果をブレーキECU6に送信する。制御モード選択部64は、停車中(車速が0の際)、ドアセンサ77の検出結果に基づいて制御モードを選択する。
【0112】
具体的に、制御モード選択部64は、ドアセンサ77によりドアの開錠が検出されると、静粛性優先モードを選択する。パイロット圧制御部63は、静粛性優先モードが選択されると、ブレーキ操作の有無に関わらず、静粛性優先モードで第1パイロット室4Dに準備液圧を発生させる。これにより、車両の発進前に運転手によりブレーキ操作が為された際、すでに準備液圧が発生しているあるいは静粛性優先モードで発生させている最中であるため、作動音による乗員の不快感発生は抑制される。
【0113】
なお、パイロット圧制御部63は、静粛性優先モードが選択された後、ブレーキペダル10のストロークが所定範囲内となってからプリチャージを実行しても良い。また、特定動作は、ドアの開錠に限られない。特定動作は、例えば、イグニションのオン、又は乗員の着座であっても良い。イグニションのオンは、例えばイグニションセンサにより検出することができる。また、乗員の着座は、例えば、乗員検知センサ又はバックルセンサなどで検出することができる。特定動作とは、車両が停止している状態において、乗員が今後ブレーキ操作を行うことが推測される動作である。
【0114】
<第四実施形態>
第四実施形態における制動装置は、第一実施形態に対して、静粛性優先モードの制御内容及びその選択基準が異なっている。したがって、異なっている部分を説明する。
【0115】
第四実施形態の静粛性優先モードは、準備液圧(準備液圧が発生している状態)を維持する制御モードである。換言すると、静粛性優先モードは、パイロット圧を準備液圧で維持させる制御モードである。静粛性優先モードは、パイロット圧が準備液圧以上である状態から、減圧される際に、例えば圧力センサ74の測定結果に基づいて、準備液圧となるように減圧を止め、パイロット圧を準備液圧で維持する制御である。
【0116】
制御モード選択部64は、動作中、ストロークセンサ71の検出結果に基づいて、ストロークが減少しているか否かを判定している。制御モード選択部64は、ストロークが減少しており且つストロークが第一所定値となった場合に、静粛性優先モードを選択する。パイロット圧制御部63は、ストロークに応じて減圧制御をしている際に、静粛性優先モードが選択されると、パイロット圧が準備液圧となるようにパイロット圧の減圧を停止し、圧力を維持する。つまり、パイロット圧制御部63は、圧力センサ74に基づき、パイロット圧が準備液圧となるように減圧弁41を閉弁する。
【0117】
車両が走行中、車両が減速して停止した場合、その後、例えばシフトレバーをパーキングにし、ブレーキペダル10から足を外した際、目標サーボ圧が減少して減圧弁41が開弁され、パイロット圧が減少していく。第四実施形態によれば、制御モード選択部64がストロークの減少及びストロークが所定値になったことを認識すると、制御モードとして静粛性優先モードを選択し、当該選択に伴いパイロット圧制御部63がパイロット圧を準備液圧で維持するように減圧弁41を閉弁する。これにより、ブレーキペダル10が踏まれていない状態で、準備液圧が第1パイロット室4Dに発生している状態、すなわちプリチャージされている状態となる。この状態が維持され、その後、車両を発進させるために(シフトレバーをドライブにするために)、ブレーキペダル10を再度踏み込んだ際、すでにプリチャージされており流速が0(流速が小さいともいえる)となり、プリチャージに伴う作動音は発生しない。つまり、静粛性が優先されたプリチャージ制御により、作動音による乗員の不快感発生は防止される。
【0118】
静粛性優先モードの解除、すなわち準備液圧を維持する制御の停止は、例えばエンジンが停止された場合(イグニションがオフされた場合)、又は車両が発進した場合(車速が0より大きくなった場合)などにより実行される。
【0119】
なお、第四実施形態の静粛性優先モードは、第二静粛性優先モードとして第一〜第三実施形態の制御モード群に加えられても良い。この場合、第一〜第三実施形態の制御モード選択部64は、ストロークが減少し且つストロークが所定値であることを認識すると、第二静粛性優先モードを選択する。これによっても、上記効果は発揮される。
【0120】
<その他の変形態様>
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、ストロークの変化速度は、ストロークセンサ71に限らず、ブレーキペダル10に対する反力圧(本実施形態では圧力センサ73の測定値)に基づいて検出しても良い。反力圧の変化は、ストロークの変化に換算できる。このように、車両状態の検出の1方法として、ストロークに関する値を測定するセンサの測定結果を用いることができる。
【0121】
また、応答性優先モード及び静粛性優先モードの少なくとも一方は、多段的に複数の制御モードに分割されていても良い。例えば、制御モード群は、第一応答性優先モード、第二応答性優先モード、第三応答性優先モード、第一静粛性優先モード、及び第二静粛性優先モードを含んでも良い。各制御モードは、車両状態に応じて選択され、例えば流速の大小関係が、第一応答性優先モード>第二応答性優先モード>第三応答性優先モード>第一静粛性優先モード>第二静粛性優先モードとなるように設定されていても良い。この場合、車両状態について複数の閾値(所定値)が設定される。
【0122】
また、本発明は、上記第一〜第四実施形態を、それぞれ互いに組み合わせたものでも良い。例えば、第一実施形態と第二実施形態を組み合わせると、制御モード選択部64は、ストロークの変化速度と車速に基づいて制御モードを選択することとなる。この場合、例えば、ストロークの変化速度に対して車速を優位と設定すると、制御モード選択部64は、車速が高速の際には、ストロークの変化速度によらず応答性優先モードを選択し、低速の際には、ストロークの変化速度に応じて制御モードを選択するように設定できる。制御モード選択部64は、車両状態を表す複数の組み合わせパターン、例えばストロークの変化速度の大小と車速の大小の4つのパターンに対して、予め選択する制御モードを当てはめて、選択するようにしても良い。これによれば、さらに詳細な制御が可能になり、乗員の快適性は向上する。第一〜第四実施形態をすべて組み合わせた場合、制動装置は、車両状態を検出する検出手段として、ストロークセンサ71と、車輪速度センサ76と、特定動作を検出するセンサ(例えばドアセンサ77)と、を備える。
【0123】
また、準備液圧は、ホイールシリンダ541〜544が車輪5FR、5FL、5RR、5RLに付与する制動力が所定制動力以下となる値に設定されても良い。この場合、第1マスタ室1D(又は第2マスタ室1E)に対して、マスタ圧を測定する圧力センサ(図示せず)が設けられる。この圧力センサは、例えば配管51に対して設置される。これによれば、制動力が0から上昇する寸前までパイロット圧を上昇させることができる。つまり、ブレーキパッドとブレーキロータの離間距離を詰めることができる。これにより、応答性はさらに向上する。
【0124】
また、パイロット圧制御部64は、準備液圧を発生させる際、準備パイロット液圧に対応する予め設定された液量の作動液を第1パイロット室4Dに供給するように設定されていても良い。制御モードにより、その液量の供給完了までの時間が変更される。これによれば、第1パイロット室4Dを準備液圧とするために必要な作動液の液量は予め計算することができ、当該必要な液量を供給するための制御は、予め設定することができるため、ホイール圧やサーボ圧やパイロット圧を検出する必要がない。すなわち、圧力センサあるいはセンサによる圧力監視が不要となり、簡易な制御が可能となる。
【0125】
また、制御モードは、上記に限られない。制御モード選択部64は、複数の制御モードからなる制御モード群の中から、ストロークの変化速度に応じて、制御モードを選択するように設定しても良い。ストロークの変化速度を制御モードの選択基準とすることで、より運転手の意図に即したプリチャージを実行することができる。これによっても、乗員の快適性の向上が可能となる。第二所定値は、上記実施形態に限らず、第一所定値未満の値であれば良い。
【0126】
また、本発明は、レギュレータ44(パイロット室4D)を有しない液圧制動力発生装置に対しても適用できる。この場合、プリチャージ制御は、直接サーボ室1Aに対して行われる。例えば、サーボ圧発生装置4は、アキュムレータ431から増圧弁42を介してサーボ室1Aに作動液を供給する構成であっても良い。ブレーキECU6は、増圧弁42を制御してサーボ室1Aに準備液圧を発生させる。ブレーキECU6は、車両の状態に応じて制御モードを選択し、選択した制御モードに応じてサーボ室1Aに準備液圧を発生させる。これにより、上記実施形態同様、プリチャージ制御における応答性の確保及び乗員の快適性の向上が実現する。また、サーボ圧発生装置4がパイロット室4Dを有しない場合であっても、ブレーキECU6は判定手段(61、62)を有しても良い。この場合、ブレーキECU6は、判定手段によりストロークが所定値以下と判定されている場合に、弁装置(41、42)を制御してサーボ室1Aに準備液圧を発生させるサーボ圧制御手段を備えても良い。