(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6124885
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】クリーニング装置
(51)【国際特許分類】
B08B 6/00 20060101AFI20170424BHJP
B08B 1/04 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
B08B6/00
B08B1/04
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-519822(P2014-519822)
(86)(22)【出願日】2013年5月27日
(86)【国際出願番号】JP2013003343
(87)【国際公開番号】WO2013183248
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2014年11月25日
(31)【優先権主張番号】特願2012-129341(P2012-129341)
(32)【優先日】2012年6月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096080
【弁理士】
【氏名又は名称】井内 龍二
(72)【発明者】
【氏名】松本 英樹
【審査官】
村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−005599(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/109755(WO,A1)
【文献】
実開昭56−046015(JP,U)
【文献】
特開2002−244522(JP,A)
【文献】
実開昭55−119197(JP,U)
【文献】
特開2003−225625(JP,A)
【文献】
特開平08−203851(JP,A)
【文献】
特開2006−251492(JP,A)
【文献】
特開昭64−068206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 6/00
B08B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被クリーニング体表面に存在する塵埃を静電気力を利用して除去するクリーニング装置であって、
前記被クリーニング体表面に接触し、前記塵埃を静電気力により吸着するクリーニングローラと、
前記被クリーニング体に接触せずに前記クリーニングローラに接触して該クリーニングローラ表面の塵埃を除去するブラシ体と、
前記クリーニングローラ及び前記ブラシ体のそれぞれに対して電荷を直接付与する電荷付与機構とを備え、
前記被クリーニング体表面に存在する塵埃を、静電気を利用して前記クリーニングローラの表面に吸着させるための電荷が、前記クリーニングローラに付与されるように構成されていることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
前記電荷付与機構が、
前記クリーニングローラ及び前記ブラシ体の各回転軸が取り付けられる各取付孔に組み込まれた軸受と、
これら軸受に電気的に接触する電極部とを含んで構成されていることを特徴とする請求項1記載のクリーニング装置。
【請求項3】
さらに、前記ブラシ体に接触して該ブラシ体から塵埃を受取る金属ローラと、
該金属ローラに付着した塵埃を除去するブレード体とを備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のクリーニング装置。
【請求項4】
前記クリーニングローラの回転方向が前記被クリーニング体の搬送方向と同じであり、
前記ブラシ体の回転方向が前記クリーニングローラの連れ回り方向であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載のクリーニング装置。
【請求項5】
前記クリーニングローラの回転方向が前記被クリーニング体の搬送方向と同じであり、
前記ブラシ体の回転方向が前記クリーニングローラの回転方向と接触位置で逆方向であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載のクリーニング装置。
【請求項6】
前記ブラシ体の回転速度が任意に設定可能となっていることを特徴とする請求項4又は請求項5記載のクリーニング装置。
【請求項7】
前記クリーニングローラに対して前記ブラシ体が複数個装備されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載のクリーニング装置。
【請求項8】
複数個の前記ブラシ体が互いに逆方向に回転するように構成され、前記ブラシ体の回転速度がそれぞれ所定の回転速度に設定可能となっていることを特徴とする請求項7記載のクリーニング装置。
【請求項9】
複数個の前記ブラシ体が同方向に回転するように構成され、前記ブラシ体の回転速度がそれぞれ所定の回転速度に設定可能となっていることを特徴とする請求項7記載のクリーニング装置。
【請求項10】
上記請求項1〜9のいずれかの項に記載のクリーニング装置が2つ用いられ、前記被クリーニング体表面に接触して塵埃を除去するクリーニングローラが、前記被クリーニング体上面側及び前記被クリーニング体下面側の上下両面側に配置されていることを特徴とするクリーニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被クリーニング体表面に存在する塵埃を静電気力を利用して除去するクリーニング装置に関し、より詳細には、被クリーニング体が、例えばガラス基板、プリント基板(PCB、PCBAなど)、フィルム、シート、プラスチック板などの比較的表面平滑性の高いものである場合に好適なクリーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被クリーニング体の表面にクリーニングローラを接触させつつ回転させながら、被クリーニング体の表面に付着する塵埃などの異物を静電気力を利用して除去するクリーニングシステムが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
そのようなクリーニングシステムでは、クリーニングローラの表面に塵埃が順次蓄積されていくので、その表面より塵埃を取り除くためのメンテナンス作業を定期的に行う必要があった。そこで、本件出願人は、メンテナンス作業を定期的に行うことなく、クリーニングローラによる塵埃の吸着除去動作を、長期に亘って安定して継続できるように、クリーニングローラに接触する転写ローラや帯電制御ローラなどを別途設けたクリーニング装置を先に出願した(特許文献2参照)。
【0004】
図8は、従来のクリーニング装置100を構成する要部のレイアウトを模式的に示した側面図である。クリーニング装置100は、クリーニングローラ111、転写ローラ112、帯電制御ローラ113、ブラシローラ114、金属ローラ115、及びクリーニングブレード116を含んで構成されている。
【0005】
クリーニングローラ111は、被クリーニング体Sの表面S1上に付着している塵埃を静電気力を利用して吸着させるための電荷を表面に帯電し得るものである。クリーニングローラ111の被クリーニング体Sとの反対側には、クリーニングローラ111の表面に接触しながら回転する転写ローラ112と、この転写ローラ112の表面に接触しながら回転する帯電制御ローラ113とが設けられている。
【0006】
転写ローラ112は、クリーニングローラ111の表面に付着している塵埃を静電気力を利用して吸着させるための電荷を表面に帯電し得る材料を用いて形成されている。転写ローラ112は、クリーニングローラ111の表面に接触しながら回転することで、クリーニングローラ111と転写ローラ112との表面特性の違いに応じた電位差をクリーニングローラ111との間に生じる。
【0007】
帯電制御ローラ113の芯金113aには外部電源120が接続されており、被クリーニング体Sの表面S1上に付着している塵埃を静電気力により吸着するための電荷を、クリーニングローラ111および転写ローラ112に対して付与できるようになっている。
【0008】
また、ブラシローラ114は、転写ローラ112の連れ回り方向と逆方向に回転して転写ローラ112の表面に付着している塵埃を掻き取るためのものであり、転写ローラ112に接触して回転可能に設けられている。
【0009】
金属ローラ115はブラシローラ114に接触して設置され、ブラシローラ114の連れ回り方向に回転するようになっている。金属ローラ115には外部電源121が接続され、転写ローラ112との間に電位差を生じるように、電圧が印加されるようになっている。また、金属ローラ115の近傍には、塵埃を掻き取るためのクリーニングブレード116が設けられている。
【0010】
上記したクリーニング装置100では、クリーニングローラ111表面に付着している塵埃が静電気力により転写ローラ112に転写(移動)され、転写ローラ112に転写された塵埃がブラシローラ114によって掻き取られる。このブラシローラ114により掻き取られた塵埃が静電気力により金属ローラ115に吸着され、金属ローラ115に吸着した塵埃がクリーニングブレード116によって金属ローラ115から掻き取られるようになっている。
【0011】
しかしながら、クリーニング装置100では、クリーニングローラ111表面に付着している塵埃を転写ローラ112に転写させているため、クリーニングローラ111から転写ローラ112への塵埃の転写効率が低下しないように、転写ローラ112の材質や表面特性等を適切に選択、設定しなければならない。これら条件が適切でない場合には、クリーニングローラ111から転写ローラ112への塵埃の転写効率が低下し、クリーニングローラ111の清浄度が低下してしまう虞があった。
【0012】
また、クリーニング装置100では、転写ローラ112を設けている分、部品コストがかかると共に、配置スペースも要していたところ、より一層の装置のコスト削減と構造のコンパクト化のための改良が望まれていた。
【0013】
また、上記クリーニング装置100は、被クリーニング体Sが一方向へ搬送される場合を想定して構成されているが、被クリーニング体Sが一方向だけでなく、双方向へ搬送される場合においても適切に使用できるクリーニング装置の実現が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2010−99565号公報
【特許文献2】特許第4886097号公報
【発明の概要】
【0015】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、クリーニングローラ表面に付着している塵埃の除去効率を高め、クリーニングローラの清浄度を高めることができ、装置のコスト削減、及び構造のコンパクト化を図ることができ、しかも、被クリーニング体が一方向だけでなく、双方向へ搬送される場合においても好適に使用することができる利便性の高いクリーニング装置を提供することを目的としている。
【0016】
上記目的を達成するために本発明に係るクリーニング装置(1)は、被クリーニング体表面に存在する塵埃を静電気力を利用して除去するクリーニング装置であって、前記被クリーニング体表面に接触させるクリーニングローラと、該クリーニングローラに接触して該クリーニングローラ表面の塵埃を除去するブラシ体とを備えていることを特徴としている。
【0017】
上記クリーニング装置(1)によれば、前記クリーニングローラに前記ブラシ体を接触させているので、前記クリーニングローラ表面に存在する塵埃を前記ブラシ体で除去することが可能となり、従来の転写ローラが設けられた装置よりも前記塵埃の除去効率を高めることができ、前記クリーニングローラ表面の清浄度を高めることができる。ここで、被クリーニング体表面とは、被クリーニング体と外部空間との境界をなす面を意味し、一方(上側)の面の場合だけでなく、他方(下側)の面の場合も含まれる。
【0018】
また、本発明に係るクリーニング装置(2)は、上記クリーニング装置(1)において、さらに、前記ブラシ体に接触して該ブラシ体から塵埃を受取る金属ローラと、該金属ローラに付着した塵埃を除去するブレード体と、前記クリーニングローラ、前記ブラシ体、及び前記金属ローラに電荷を付与する電荷付与機構とを備えていることを特徴としている。
【0019】
上記クリーニング装置(2)によれば、前記クリーニングローラ表面に静電気力で付着している塵埃が前記ブラシ体によって掻き取られ、該ブラシ体により掻き取られた塵埃が静電気力により前記金属ローラに吸着され、該金属ローラに吸着された塵埃が前記ブレード体によって前記金属ローラから掻き取られるようになっている。従って、前記クリーニングローラによる塵埃の吸着除去動作が安定的に維持されるとともに、従来使用されていた転写ローラが省略された構造とすることで、装置のコスト削減、及び構造のコンパクト化を図ることができる。
【0020】
また、本発明に係るクリーニング装置(3)は、上記クリーニング装置(1)又は(2)において、前記ブラシ体が複数個装備されていることを特徴としている。
【0021】
上記クリーニング装置(3)によれば、前記ブラシ体が複数個装備されているので、前記クリーニングローラに対してブラシ体を複数箇所で摺接させることができ、前記クリーニングローラ表面に付着している塵埃の除去効率を高めることができ、前記クリーニングローラの清浄度を高めることができる。
ここで、前記ブラシ体が複数個装備されている形態とは、前記クリーニングローラと略同じ長さの前記ブラシ体が複数個装備されている形態だけでなく、前記クリーニングローラよりも短い(例えば、半分程度の)長さの複数の前記ブラシ体が、前記クリーニングローラの軸方向にずらされた位置に配設された形態なども含まれる。
【0022】
また、本発明に係るクリーニング装置(4)は、上記クリーニング装置(3)において、複数個の前記ブラシ体が互いに逆方向に回転するように構成されていることを特徴としている。
【0023】
上記クリーニング装置(4)によれば、複数個の前記ブラシ体が互いに逆方向に回転するように構成されているので、例えば、2本のブラシ体を用いた場合、各ブラシ体の回転速度に差を設けることにより、前記クリーニングローラを、回転速度が大きい方のブラシ体の連れ回り方向に回転させることができる。従って、各ブラシ体の回転速度の設定によって、前記クリーニングローラを一方向だけでなく、逆方向にも回転させることが可能となり、被クリーニング体の搬送方向を選ばない、すなわち、何れの搬送方向でも対応可能な利便性の高い装置とすることができる。
【0024】
また、本発明に係るクリーニング装置(5)は、上記クリーニング装置(3)において、複数個の前記ブラシ体が同じ方向に回転するように構成されていることを特徴としている。
【0025】
上記クリーニング装置(5)によれば、被クリーニング体の搬送方向が一方向でよい場合には、クリーニングローラは一方向にだけ回転させればよいので、複数個の前記ブラシ体を同方向に回転させる構成とすることにより、装置の構成をより簡単なものとしてコストの削減を図ることができる
【0026】
また、本発明に係るクリーニング装置(6)は、上記クリーニング装置(1)〜(5)のいずれかにおいて、前記ブラシ体の回転速度が任意に設定可能となっていることを特徴としている。
【0027】
上記クリーニング装置(6)によれば、前記ブラシ体の回転速度が任意に設定可能となっているので、前記ブラシ体の回転速度の設定、及びその回転方向によって、前記クリーニングローラの回転速度、及び回転方向を調整することが可能となる。
例えば、複数のブラシ体が互いに同一方向に回転するように構成した場合、各ブラシ体の連れ回り方向に前記クリーニングローラを容易に回転させることが可能となる。一方、各ブラシ体が互いに逆方向に回転するように構成した場合、例えば、2本のブラシ体、各々の回転速度を同じ速度に設定すれば、前記クリーニングローラの回転を停止させる制御が可能となり、各ブラシ体の回転速度を異なる速度に設定することで、前記クリーニングローラを所望の方向へ回転させる制御も可能となる。
【0028】
例えば、各ブラシ体の回転速度を数段階(例えば、低速、中速、高速)に設定できるようにし、各ブラシ体の回転速度が中速に設定されると、前記クリーニングローラの回転が停止されるように制御され、また、一方のブラシ体の回転速度が低速、他方のブラシ体の回転速度が高速に設定されると、前記クリーニングローラが他方のブラシ体の連れ回り方向に回転するように制御される。
逆に、一方のブラシ体の回転速度が高速、他方のブラシ体の回転速度が低速に設定されると、前記クリーニングローラが一方のブラシ体の連れ回り方向に回転するように制御される。このように、被クリーニング体の搬送方向を、適宜切り換えることが可能となり、双方向の搬送が必要な搬送システムに対応させることができ、利便性の高い装置とすることができる。
【0029】
また、本発明に係るクリーニング装置(7)は、上記クリーニング装置(1)又は(2)において、前記ブラシ体が単数個装備されていることを特徴としている。
【0030】
上記クリーニング装置(7)によれば、前記ブラシ体が前記クリーニングローラと逆方向に回転するようにし、前記ブラシ体による前記クリーニングローラ表面からの塵埃の掻き取りが効率的に行える構成とすることにより、装置の構成をより簡単なものとしてコストの削減を図ることができる。
【0031】
また、本発明に係るクリーニング装置(8)は、上記クリーニング装置(7)において、前記ブラシ体の回転速度が任意に設定可能となっていることを特徴としている。
【0032】
上記クリーニング装置(8)によれば、前記被クリーニング体表面に存在する塵埃の状況に応じて前記回転速度を最適なものに設定することができる。
【0033】
また、本発明に係るクリーニング装置(9)は、上記クリーニング装置(1)〜(8)のいずれか2つの装置を用い、前記被クリーニング体表面に接触して塵埃を除去するクリーニングローラが、前記被クリーニング体上面側及び前記被クリーニング体下面側の上下両面側に配置されていることを特徴としている。
【0034】
上記クリーニング装置(9)によれば、前記被クリーニング体の上下両表面に存在する塵埃を一度の操作で同時に除去することができ、極めて作業効率の高いクリーニング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の実施の形態に係るクリーニング装置を構成する要部のレイアウトを模式的に示す側面図である。
【
図2】実施の形態に係る潔浄装置を正面下方から見た斜視図である。
【
図3】実施の形態に係るクリーニング装置を背面下方から見た斜視図である。
【
図4】
図3におけるIV−IV線要部断面図である。
【
図5】別の実施の形態に係るクリーニング装置を構成する要部のレイアウトを模式的に示した側面図である。
【
図6】さらに別の実施の形態に係るクリーニング装置を構成する要部のレイアウトを模式的に示した側面図である。
【
図7】さらに別の実施の形態に係るクリーニング装置を構成する要部のレイアウトを模式的に示した側面図である。
【
図8】従来のクリーニング装置を構成する要部のレイアウトを模式的に示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係るクリーニング装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、実施の形態に係るクリーニング装置を構成する要部のレイアウトを模式的に示した側面図である。
【0037】
クリーニング装置1は、被クリーニング体Sの表面(この場合、下面)S1にクリーニングローラ2の表面を接触させつつ回転させながら、被クリーニング体Sに対して相対移動させ、被クリーニング体Sの表面S1上に付着している塵埃(例えば、導体あるいは誘電体などの微小な塵埃)を、クリーニングローラ2に付与された静電気力を利用して取り除くものである。
【0038】
クリーニング装置1は、被クリーニング体Sの表面S1に接触させるクリーニングローラ2と、このクリーニングローラ2に接触してクリーニングローラ2表面の塵埃を除去する2本のブラシローラ3A、3Bと、これらブラシローラ3A、3Bに接触して各ブラシローラ3A、3Bから塵埃を受取る金属ローラ4と、この金属ローラ4に付着した塵埃を除去するブレード5とを含んで構成されている。
【0039】
これらクリーニングローラ2、ブラシローラ3A、3B、金属ローラ4は、絶縁性を有する部材(図示せず)に回転可能に支持され、また、クリーニング装置1には、クリーニングローラ2、ブラシローラ3A、3B、金属ローラ4に電荷を付与するための、後述する電荷付与機構が設けられている。
【0040】
クリーニングローラ2は、被クリーニング体Sの表面S1上に付着している塵埃を静電気力を利用して吸着させる電荷を表面に帯電し得るものであり、クリーニングローラ2表面の帯電性を利用して塵埃を静電気力により吸着するものである。
【0041】
クリーニングローラ2の斜め下方には、クリーニングローラ2の表面に接触しながら相互に逆方向に回転し、クリーニングローラ2の表面の塵埃を除去する左右一対のブラシローラ3A、3Bが設けられている。ブラシローラ3A、3Bは、個別に回転速度を設定することが可能な構成となっており、ブラシローラ3A、3Bは、クリーニングローラ2との間で電位差が生じるように、クリーニング時にクリーニングローラ2の表面に帯電させる電荷と同符号の電位が印加される構成となっている。
【0042】
ブラシローラ3A、3Bは、芯金3aに、合成樹脂製のブラシ部(毛部)3bを有するものである。ブラシ部3bの断面外形状は、特に限定されるものではなく、例えば、円形状、楕円形状、多角形形状、波曲線形状、又は曲線と直線とが組み合わされて構成された形状のものなどが採用され得る。
【0043】
ブラシローラ3A、3Bの回転方向は、互いに逆方向に回転する方向に固定されている。回転方向が切り換わる構成にすると、クリーニングローラ2などと摺接するブラシ部3bの接触方向が変わることとなり、その際の毛先の跳ね返り等により塵埃が飛び散り、また、クリーニングローラ2との摺接状態の変化により塵埃除去効率が低下する虞があるからである。
【0044】
ブラシローラ3A、3Bの下方には、ブラシローラ3Aに対し連れ回り方向に接触しながら回転する一方、ブラシローラ3Bに対し連れ回り方向と逆方向に接触しながら回転する金属ローラ4が配設されている。この金属ローラ4も、クリーニングローラ2との間で所定の電位差が生じるように、クリーニング時にクリーニングローラ2の表面に帯電させる電荷と同符号の電位が印加される構成となっている。この金属ローラ4は、ブラシローラ3A、3Bから塵埃を取り除くものである。
【0045】
金属ローラ4の近傍には、金属ローラ4の表面上に付着する塵埃を先端掻き取り部にて掻き取るブレード5が配設され、ブレード5によって金属ローラ4の表面上に付着する塵埃が掻き取られ、図示しない塵埃回収部に回収されるようになっている。ブレード5は、例えば、合成樹脂製(例えば、熱硬化性ウレタン樹脂)の弾性体などで形成され、保持具(図示せず)により保持されている。
【0046】
上記したクリーニング装置1では、ブラシローラ3A、3Bそれぞれの回転速度を任意の回転速度に設定(変速)することが可能に構成されているため、ブラシローラ3A、3Bの回転速度の設定状態によって、クリーニングローラ2を一方向だけでなく、逆方向にも回転させることが可能となっている。
【0047】
例えば、ブラシローラ3Aの回転速度をブラシローラ3Bの回転速度よりも高めた場合、クリーニングローラ2を、回転速度が大きい方のブラシローラ3Aの連れ回り方向(矢印α´方向)に回転させることができ、被クリーニング体Sを矢印α方向に搬送しながらクリーニングを行うことが可能となっている。
【0048】
一方、ブラシローラ3Bの回転速度をブラシローラ3Aの回転速度よりも高めた場合、クリーニングローラ2を、回転速度が大きい方のブラシローラ3Bの連れ回り方向(矢印β´方向)に回転させることができ、被クリーニング体Sを矢印β方向に搬送しながらクリーニングを行うことが可能となっている。
また、ブラシローラ3Aとブラシローラ3Bとの回転速度を同じ速度に設定して、クリーニングローラ2の回転を停止させる制御も可能となっている。
【0049】
ブラシローラ3A、3Bの回転速度の設定方法は、種々の方法が採用され得るが、例えば、それぞれ3段階(低速、中速、高速)に設定(変速)切換ができるように構成し、これら回転速度の組み合わせ、すなわち、ブラシローラ3Aを高速、ブラシローラ3Bを低速とする組み合わせ、ブラシローラ3Aを低速、ブラシローラ3Bを高速とする組み合わせ、又はブラシローラ3A、3Bをともに中速とする組み合わせ等により、上記したクリーニングローラ2の回転方向の切換制御を容易に行える構成となっている。
【0050】
上記クリーニング装置1によれば、クリーニングの対象である被クリーニング体Sに付着している塵埃にクリーニングローラ2が接触すると、塵埃が被クリーニング体Sの表面S1から除去され、クリーニングローラ2の表面に吸着される。
【0051】
このクリーニングローラ2が回転して、クリーニングローラ2の表面に吸着されている塵埃がブラシローラ3A、3Bと接触すると、塵埃はブラシローラ3A、3Bによってクリーニングローラ2の表面から掻き取られ、その後、金属ローラ4の表面に吸着される。この金属ローラ4の回転に伴い、金属ローラ4の表面に付着している塵埃はやがてブレード5によって掻き取られる。
【0052】
上記構成により、塵埃はクリーニングローラ2の表面上から効率良くブラシローラ3A、3Bによって掻き取られ、被クリーニング体Sの表面S1上に戻されることがない。従って、長期間に亘って塵埃の吸着動作を継続して行うことが可能になっている。
【0053】
図2は、実施の形態に係るクリーニング装置1を正面下方から見た斜視図であり、
図3は、背面下方から見た斜視図である。また、
図4は、
図3におけるIV−IV線要部断面図である。
【0054】
クリーニング装置1は、フレームユニット10により一体構造としてユニット化されている。フレームユニット10は、クリーニングローラ2、ブラシローラ3A、3B、及び金属ローラ4を回転可能に支持する矩形形状をした左右の側板部11、12と、これら側板部11、12の四隅を互いに連結する上側アングル部材13、14と下側アングル部材15、16とを含んで構成されている。
【0055】
側板部11、12は、絶縁性(例えば、ポリアセタ―ルなどの樹脂)の材質で構成され、側板部11、12には、クリーニングローラ2、ブラシローラ3A、3B、及び金属ローラ4の各回転軸を取り付けるための取付孔が所定の位置にそれぞれ形成されている。
【0056】
これら各取付孔には、クリーニングローラ2、ブラシローラ3A、3B、及び金属ローラ4の回転軸が挿着される軸受17aがそれぞれ組み込まれ、これら各軸受17aの外輪部に電極部17bが電気的に接触するように組み込まれている。また、これら各取付孔の外側面には、軸受17aが取付孔から外れないように固定するための絶縁性の輪状の蓋部材17cが取り付けられている。
【0057】
電極部17bから軸受17aを介して、クリーニングローラ2、ブラシローラ3A、3B、及び金属ローラ4に対し、それぞれ所定の電荷を与えることが可能になっている。これら各貫通孔に組み込まれた軸受17a及び電極部17bを含んで電荷付与機構が構成されている。
【0058】
側板部11に挿着されたブラシローラ3A、3Bの回転軸の端部には、それぞれ絶縁体で形成されたプーリー18、19が装着されている。また、側板部12に挿着された金属ローラ4の回転軸の端部には、絶縁体で形成されたプーリー20が装着されている。
【0059】
下側アングル部材15、16の一端側底面には、略L字形状をした取付板21の一辺側が固定され、取付板21の他辺側に、補助板22を介して、ブラシ駆動モータ23A、23Bが取り付けられている。取付板21の他辺側には、ブラシ駆動モータ23A、23Bの回転軸を挿通させる挿通孔21aが、左右2箇所に長孔形状で形成され、また、補助板22を固定する固定部材(ボルト)41を取り付けるため取付孔21bが、挿通孔21aの両側にそれぞれ長孔形状で形成されている。取付板21の挿通孔21aに挿通されたブラシ駆動モータ23A、23Bの回転軸の先端部にそれぞれ絶縁体で形成されたプーリー24、25が装着されている。
【0060】
ブラシローラ3Aのプーリー18とブラシ駆動モータ23Aのプーリー24とが伝動ベルト26で巻回され、同様にブラシローラ3Bのプーリー19とブラシ駆動モータ23Bのプーリー25とが伝動ベルト27で巻回されている。ブラシ駆動モータ23A、23Bの個々を駆動制御することによりブラシローラ3A、3Bの回転速度をそれぞれ所定の速度に設定(変速)することが可能となっている。
【0061】
また、下側アングル部材15、16の他端側底面には、略L字形状をした取付板28の一辺側が固定され、取付板28の他辺側に、金属ローラ駆動モータ30が取り付けられた補助板29が固定部材(ボルト)42で取り付けられている。取付板28の他辺側には、補助板29を固定部材(ボルト)42で固定するための取付孔28aが左右に数か所形成され、補助板29の上部には、固定部材42を挿着するための挿着孔29aが、左右2箇所に長孔形状で形成されている。
【0062】
補助板29の略中央部付近には、金属ローラ駆動モータ30の回転軸30aを通す挿通孔29bが形成され、挿通孔29bに挿通された金属ローラ駆動モータ30の回転軸30aの先端部に絶縁体で形成されたプーリー31が装着されている。そして、金属ローラ4のプーリー20と金属ローラ駆動モータ30のプーリー31とが、伝動ベルト32で巻回され、金属ローラ駆動モータ30を駆動制御することにより金属ローラ4の回転速度を所定の速度に設定することが可能となっている。
【0063】
図4に示すように、ブレード5は、ブレード取付部33に固定されている。このブレード5により剥離された塵埃を収集する塵埃回収部(図示せず)が、ブレード5の下側に取り付けられている。
【0064】
次に、
図4に基づいて実施の形態に係るクリーニング装置1のクリーニング動作を説明する。本実施の形態では、ブラシローラ3A、3Bの回転速度が、それぞれ3段階(低速、中速、高速の所定値)に設定切換ができるように構成されているものとして説明する。ただし、ブラシローラ3A、3Bの回転速度の設定(変速)方法は、この形態に限定されるものではない。
【0065】
まず、被クリーニング体Sを矢印α方向に搬送しながらクリーニングする場合、ブラシローラ3Aの回転速度が高速となるように、他方、ブラシローラ3Bの回転速度が低速となるように、ブラシ駆動モータ23A、23Bの駆動切換制御を行う。当該駆動切換制御は、例えば、被クリーニング体Sを搬送する搬送用コンベア(図示せず)の動作(搬送方向の切換動作)と連動するように構成することが望ましい。
【0066】
上記駆動切換制御により、ブラシローラ3Aの回転速度がブラシローラ3Bの回転速度よりも大きくなるので、クリーニングローラ2が、ブラシローラ3Aの連れ回り方向(矢印α´方向)に回転することとなり、被クリーニング体Sを矢印α方向に搬送しながらクリーニングを行うことが可能となる。
【0067】
また、被クリーニング体Sの搬送を一時中断する場合等、搬送用コンベア(図示せず)の流れを一時停止させる場合においては、ブラシローラ3Aの回転速度が中速となるように、同時にブラシローラ3Bの回転速度も中速となるように、ブラシ駆動モータ23A、23Bの駆動切換制御を行う。
【0068】
上記駆動切換制御により、ブラシローラ3Aの回転速度とブラシローラ3Bの回転速度とが同じ速度になるので、クリーニングローラ2の回転を停止させることができ、被クリーニング体Sの搬送を、一時中断させることが可能となる。
【0069】
また、被クリーニング体Sを矢印α方向とは逆方向の矢印β方向に搬送しながらクリーニングする場合、ブラシローラ3Aの回転速度が低速となるように、他方、ブラシローラ3Bの回転速度が高速となるように、ブラシ駆動モータ23A、23Bの駆動切換制御を行う。当該駆動切換制御も、例えば、被クリーニング体Sを搬送する搬送用コンベア(図示せず)の動作(搬送方向の切換動作)と連動するように構成することが望ましい。
【0070】
上記駆動切換制御により、ブラシローラ3Bの回転速度がブラシローラ3Aの回転速度よりも大きくなるので、クリーニングローラ2が、ブラシローラ3Bの連れ回り方向(矢印β´方向)に回転することとなり、被クリーニング体Sを矢印β方向に搬送しながらクリーニングを行うことが可能となる。
【0071】
上記実施の形態に係るクリーニング装置1によれば、クリーニングローラ2にブラシローラ3A、3Bを接触させているので、クリーニングローラ2表面に存在する塵埃を複数個のブラシローラ3A、3Bで除去することが可能となり、従来の転写ローラが設けられた装置(
図8参照)よりも塵埃の除去効率を高めることができ、クリーニングローラ2表面の清浄度を高めることができる。
【0072】
また、上記クリーニング装置1によれば、クリーニングローラ2表面に静電気力で吸着された塵埃がブラシローラ3A、3Bによって掻き取られ、ブラシローラ3A、3Bにより掻き取られた塵埃が静電気力により金属ローラ4に吸着され、金属ローラ4に吸着された塵埃がブレード5によって金属ローラ4から掻き取られるので、クリーニングローラ2による塵埃の吸着動作が安定的に永く維持されるとともに、従来使用されていた転写ローラが省略された構造とすることで、装置のコスト削減、及び構造のコンパクト化を図ることができる。
【0073】
また、上記クリーニング装置1によれば、複数個のブラシローラ3A、3Bが互いに逆方向に回転するように構成され、ブラシローラ3A、3Bの回転速度が任意に設定可能となっているので、ブラシローラ3A、3Bの回転速度に差を設けることにより、クリーニングローラ2を一方向だけでなく、逆方向にも回転させることが可能であり、被クリーニング体Sを一方向だけでなく、逆方向にも搬送することができる。ブラシローラ3A、3Bの回転速度を同じにすることで、クリーニングローラ2の回転を停止させることもでき、何れの搬送方向でも対応可能な利便性の高い装置とすることができる。
【0074】
上記実施の形態では、クリーニングローラ2表面の塵埃を除去するブラシ体として、2本のブラシローラ3A、3Bを用いた場合について説明したが、ブラシローラを3本以上用いた構成とすることもできる。
例えば、2の倍数のローラ(4本、6本など)をクリーニングローラ2に対して左右対称に配設し、右側の複数のブラシローラ群と、左側の複数のブラシローラ群とで、これらブラシローラ群を互いに逆方向に回転するように構成することで、上記と同様な制御を行うことができる。この場合は、左右のブラシローラ群に対応する金属ローラを適宜配設(増設)することが好ましい。
【0075】
また、上記実施の形態では、2本のブラシローラ3A、3Bが配設され、互いに逆方向に回転するように構成されているが、クリーニングローラ2の回転方向が一方向のみでよい(すなわち、被クリーニング体Sの搬送方向が一方向のみでよい)場合には、ブラシローラ3A、3Bを同一方向に回転させる構成とすればよい。
【0076】
また、クリーニングローラ2の回転方向が一方向のみでよい場合には、ブラシローラを1本で構成してもよく、この場合には、
図5に示したようなクリーニング装置1Aの構成とし、ブラシローラ3がクリーニングローラ2と逆方向に回転するようにし、ブラシローラ3によるクリーニングローラ2表面からの塵埃の掻き取りが効率的に行える構成とする。
図5に示したようなクリーニング装置1Aの構成とすれば、装置の構成を簡単なものとしてさらなるコストの削減を図ることができる。
また、逆にブラシローラを3本以上使用した構成とすることもできる。
【0077】
また、上記実施の形態では、クリーニングローラ2と略同じ長さのブラシローラ3A、3Bを使用した場合について説明したが、クリーニングローラ2とは異なる長さのブラシローラを複数本組み合わせて使用する構成としてもよい。例えば、クリーニングローラ2よりも短い(例えば、半分程度の)長さの複数のブラシローラを採用して、クリーニングローラ2の軸方向にずらした位置に配設する形態としてもよい。かかる形態によれば、短いブラシローラを使用することで部品コストを削減することができ、また、構造のコンパクト化を図ることができる。
【0078】
また、上記実施の形態では、クリーニング装置1を被クリーニング体Sの下側に配設し、被クリーニング体Sの下面をクリーニングする場合について説明したが、
図6に示したように、クリーニング装置1Bを被クリーニング体Sの上側に配設し、被クリーニング体Sの上面をクリーニングする構成とすることもできる。
【0079】
また、
図7に示したように、クリーニング装置1Aを被クリーニング体Sの下側に配設し、クリーニング装置1Bを上側に配設し、被クリーニング体Sの上下面を同時にクリーニングするクリーニング装置1Cを構成してもよい。クリーニングローラ2が、被クリーニング体S上面側及び前記被クリーニング体S下面側の上下両面側に配置されることにより、被クリーニング体Sの上下両表面に存在する塵埃を一度の操作で同時に除去することができ、極めて作業効率の高いクリーニング装置1Cを提供することができる。
【0080】
クリーニング装置をクリーニング装置1Bのように被クリーニング体Sの上側に配設する場合には、被クリーニング体Sの表面の凹凸等の形状に応じて上面を適切に押圧できるように、クリーニングローラ2を上下に揺動可能な構成としておくことが好ましい。例えば、フレームユニット10全体を上下に揺動可能とする構成、又はクリーニングローラ2を円弧に沿って揺動可能とする回動支持機構(図示せず)をフレームユニット10に別途設け、該回動支持機構の回転軸を中心にクリーニングローラ2を上下方向に回動(揺動)させる構成などが採用され得る。
【0081】
また、ブレード5の取付位置は、
図4に示した位置に限定されるものではなく、フレームユニット10の構造などを考慮して、金属ローラ4から塵埃を掻き取るのに適した位置に配設することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
ガラス基板、プリント基板、フィルム、シート、プラスチック板など半導体装置搭載用として多く使用される基板の塵埃を除去するクリーニング装置であって、半導体装置分野に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 クリーニング装置
1A,1B,1C クリーニング装置
2 クリーニングローラ
3A、3B ブラシローラ
3 ブラシローラ
4 金属ローラ
5 ブレード
10 フレームユニット
11、12 側板部
13、14 上側アングル部材
15、16 下側アングル部材
23A、23B ブラシ駆動モータ
30 金属ローラ駆動モータ
S 被クリーニング体
S1 表面